(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166854
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】手術装置および手術器具へ電力を供給する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 90/00 20160101AFI20221026BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20221026BHJP
H01M 50/227 20210101ALI20221026BHJP
H01M 50/231 20210101ALI20221026BHJP
H01M 50/224 20210101ALI20221026BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20221026BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221026BHJP
H01M 50/24 20210101ALI20221026BHJP
H01M 50/296 20210101ALI20221026BHJP
A61B 17/00 20060101ALN20221026BHJP
【FI】
A61B90/00
H01M10/48 301
H01M50/227
H01M50/231
H01M50/224
H01M50/204 401D
H02J7/00 301B
H01M50/24
H01M50/296
A61B17/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101591
(22)【出願日】2022-06-24
(62)【分割の表示】P 2020154582の分割
【原出願日】2016-01-28
(31)【優先権主張番号】62/108,749
(32)【優先日】2015-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518281993
【氏名又は名称】メディカル エンタープライゼス ディストリビューション、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(72)【発明者】
【氏名】ペディチニ、クリストファー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】筐体の中に封入された再充電可能な電池セルと共にオートクレーブ処理をすることができる断熱性電池筐体を提供する。
【解決手段】組電池アセンブリ100又は筐体は、電気化学セルを有する1つ以上の電池110及び電池110の周囲に実質的に密閉空間容積を生成するように構成された少なくとも1つの外壁130を有する筐体を含む。空間容積160の雰囲気は、0.018W/m℃未満の熱伝導率を有するガスを含む。このようなガスの雰囲気は、筐体の外壁130及び電池110の間に断熱層を提供する。このような断熱層によって、組電池アセンブリ100は電池110を損傷することなくオートクレーブ処理を受けることができる。組電池アセンブリ100は、オートクレーブ処理される手術器具又は他のデバイスに電力を提供するために使用されてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術システムであって、
少なくとも1つの電池と、
前記少なくとも1つの電池が配置されている密閉空間容積を画定する筐体であって、前記密閉空間容積が雰囲気を含む筐体と、
前記雰囲気の熱伝導率を検出するように構成された熱伝導率センサと、
前記少なくとも1つの電池に作動可能に接続するように構成された手術器具であって、それにより前記少なくとも1つの電池が前記手術器具に電力を提供することを可能にするように構成された手術器具と、
を含み、
前記雰囲気が破損していない場合、前記雰囲気の熱伝導率は、0.002から0.018W/m℃の範囲であり、
前記雰囲気の熱伝導率が0.002から0.018W/m℃の範囲外である場合、前記雰囲気の破損を示す情報を操作者へ提供する、手術システム。
【請求項2】
組電池アセンブリであって、
電気化学セルを含む少なくとも1つの電池と、
通信インターフェースと、
密閉空間容積を生成するように構成された少なくとも外壁を有する筐体と、
前記組電池アセンブリの破損を示す熱情報を検出するためのセンサであって、前記熱情報が前記密閉空間容積内で検出された状態に基づいて前記通信インターフェースに提供されるセンサと、
を含み、
前記空間容積の雰囲気はガスを含み、前記雰囲気が破損していない場合、前記雰囲気の熱伝導率は0.002から0.018W/m℃の範囲であり、
前記密閉空間容積は前記外壁の内面から前記少なくとも1つの電池の実質的に周囲の領域まで含み、前記センサは熱伝導率センサであり、
前記雰囲気の熱伝導率が0.002から0.018W/m℃の範囲外である場合、前記雰囲気の破損を示す情報を前記通信インターフェースへ提供する、組電池アセンブリ。
【請求項3】
前記空間容積中の前記ガスの前記熱伝導率は、0.016W/m℃未満である、請求項2に記載の組電池アセンブリ。
【請求項4】
前記空間容積の雰囲気は、前記空間容積中の前記ガスの前記熱伝導率を0.018W/m℃未満にするのに十分な不完全真空を含む、請求項2に記載の組電池アセンブリ。
【請求項5】
前記空間容積の雰囲気は、クリプトン、キセノン、アルゴン、及びフレオンからなる群から選択される少なくとも25%の不活性ガスを含む、請求項2に記載の組電池アセンブリ。
【請求項6】
前記空間容積の雰囲気は、クリプトン、キセノン、アルゴン、及びフレオンからなる群から選択される少なくとも33%の不活性ガスを含む、請求項2に記載の組電池アセンブリ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの電池を前記筐体の前記外壁から分離させる複数のスタンドオフをさらに含む、請求項2に記載の組電池アセンブリ。
【請求項8】
前記筐体は、前記少なくとも1つの電池を少なくとも部分的に囲む内壁をさらに含み、前記複数のスタンドオフは、前記内壁を前記外壁から分離させる、請求項7に記載の組電池アセンブリ。
【請求項9】
前記筐体の前記外壁は、複合プラスチックで形成される、請求項2に記載の組電池アセンブリ。
【請求項10】
前記筐体の前記外壁の外面及び内面のうち少なくとも1つは、前記外壁の浸透率を低減するコーティングを含む、請求項9に記載の組電池アセンブリ。
【請求項11】
前記コーティングは、メタライズ層を含む、請求項10に記載の組電池アセンブリ。
【請求項12】
電池端子をさらに含み、前記電池端子は、前記少なくとも1つの電池から前記外壁の外部に延設される、請求項2に記載の組電池アセンブリ。
【請求項13】
前記電池端子が正端子及び負端子を含む、請求項12に記載の組電池アセンブリ。
【請求項14】
オートクレーブサイクル中に前記少なくとも1つの電池が到達する最高温度を検出する第2センサをさらに含み、前記第2センサは、検出された最高温度の情報を通信端子を介して提供する、請求項13に記載の組電池アセンブリ。
【請求項15】
前記正端子及び前記負端子に結合された電気接点をさらに含む、請求項13に記載の組電池アセンブリ。
【請求項16】
前記電気接点は、充電ステーションに接続されるように構成される、請求項15に記載の組電池アセンブリ。
【請求項17】
前記通信インターフェースは、前記少なくとも1つの電池の温度に関する情報を提供する、請求項2に記載の組電池アセンブリ。
【請求項18】
前記少なくとも1つの電池の温度は、前記外壁が4分間132℃にさらされたときに70℃未満に保たれる、請求項2に記載の組電池アセンブリ。
【請求項19】
前記少なくとも1つの電池の温度は、前記外壁が30分間121℃にさらされたときに70℃未満に保たれる、請求項2に記載の組電池アセンブリ。
【請求項20】
手術器具であって、
電気化学セルを含む少なくとも1つの電池を有する、前記手術器具に電力を提供する組電池アセンブリと、
通信端子と、
前記組電池アセンブリの破損を示す熱情報を検出するためのセンサと、
外壁の内面から前記少なくとも1つの電池、前記通信端子、及び前記センサの実質的に周囲の領域に延設される密閉空間容積を生成するように構成された少なくとも前記外壁を含む筐体と、
を含み、
前記センサは、熱伝導率センサであり、前記密閉空間容積内で検出された状態に基づいて、前記通信端子を介して前記組電池アセンブリの破損を示す前記熱情報を提供し、
前記空間容積の雰囲気は、ガスを含み、前記雰囲気が破損していない場合、前記雰囲気の熱伝導率は、0.002から0.018W/m℃の範囲であり、
前記雰囲気の熱伝導率が0.002から0.018W/m℃の範囲外である場合、前記雰囲気の破損を示す熱情報を前記通信端子を介して提供する、手術器具。
【請求項21】
手術器具を滅菌する方法であって、
オートクレーブサイクルを含む滅菌工程を使用して前記手術器具を滅菌し、
電気化学セルと、
その中の空間容積を密閉する筐体であって、前記電気化学セルが前記空間容積中に配置される筐体と、
を含み、
前記オートクレーブサイクル中に、前記筐体内の雰囲気の熱伝導率をセンサで感知し、
前記雰囲気の熱伝導率は、少なくとも前記オートクレーブサイクルの前は、0.002から0.018W/m℃の範囲であり、
前記雰囲気の熱伝導率が0.002から0.018W/m℃の範囲外である場合、前記雰囲気の破損を示す情報を操作者へ提供する、方法。
【請求項22】
前記オートクレーブサイクルは、前記手術器具を121℃から132℃の範囲の温度にさらす、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記滅菌工程は、前記手術器具を80℃を超える温度にさらす、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記感知した熱伝導率を操作者に伝達することをさらに含む、請求項21に記載の方法
。
【請求項25】
前記オートクレーブサイクル中に、第2センサで前記筐体内の温度を感知することをさらに含み、
前記感知した温度を前記操作者に伝達する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記空間容積は、不完全真空及び不活性ガスのうち少なくとも1つを含む雰囲気を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記電気化学セルは、前記空間容積の前記雰囲気にさらされる、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記筐体内の内壁が、前記電気化学セルが前記空間容積の前記雰囲気にさらされるのを防ぐ、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記手術器具は、整形外科用手術器具である、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
手術器具を滅菌する方法であって、
オートクレーブサイクルを含む滅菌工程を使用して手術器具を滅菌し、
電気化学セルと、
前記電気化学セルと前記手術器具の外部の空気との間の断熱層であって、前記断熱層が少なくとも前記オートクレーブサイクルの前に0.002から0.018W/m℃の範囲の熱伝導率を有する断熱層と、
を含み、
前記オートクレーブサイクル中に、前記断熱層の前記熱伝導率をセンサで感知し、
前記熱伝導率が0.002から0.018W/m℃の範囲外である場合、前記断熱層の破損を示す情報を操作者へ提供する、方法。
【請求項31】
前記オートクレーブサイクルが、121℃から132℃の範囲の温度に前記手術器具をさらす、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記滅菌工程は、前記手術器具を80℃を超える温度にさらす、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記感知した熱伝導率を操作者に伝達することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記オートクレーブサイクル中に、第2センサで前記断熱層の温度を感知することをさらに含み、
前記感知した温度を操作者に伝達する、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記断熱層が、不完全真空及び不活性ガスのうち少なくとも1つを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記手術器具は、その内部に雰囲気を有する筐体をさらに含み、前記雰囲気は、前記断熱層を提供する、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記電気化学セルが前記雰囲気にさらされる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記筐体内の内壁は、前記電気化学セルが前記雰囲気にさらされるのを防ぐ、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
電源アセンブリであって、
電源と、
その中の空間容積を密閉する筐体であって、前記電源が前記空間容積中に配置され、前記空間容積が前記電源と前記筐体の外部の空気との間に断熱層を提供する雰囲気を有する筐体と、
前記電源が前記空間容積の前記雰囲気にさらされるのを防ぐ前記筐体内の内壁と、
前記雰囲気の熱伝導率を検出するように構成された熱伝導率センサと、
を含み、
前記雰囲気の熱伝導率は、前記筐体の前記外部の空気の熱伝導率よりも低く、
前記雰囲気が破損していない場合、前記雰囲気の熱伝導率は、0.002から0.01
8W/m℃の範囲であり、
前記雰囲気の熱伝導率が0.002から0.018W/m℃の範囲外である場合、前記雰囲気の破損を示す情報を操作者へ提供する、電源アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許法第119条(e)項の下での米国仮特許出願第62/108,749号に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、電池筐体の断熱に関し、例えば作動中に高温にさらされる電池セルを含む筐体の断熱に関する。
【背景技術】
【0003】
電池式器具は、外科手術の環境において医療従事者に利便性と生産性を向上させた。このような手術器具及びそれらの関連する電池は、利用前に、例えば手術室の滅菌領域内で殺菌される。電池で作動する手術器具は、一般に手術器具又は装備を滅菌するためのオートクレーブサイクルに関連する温度に耐えられるように設計されている。その温度は、例えば、プレ真空滅菌器内で数分間132℃に、又は重力置換滅菌器内で30分以上の間121℃に到達し得る。
【0004】
手術器具及び装備と同様に、それらの器具の電池筐体もまた滅菌される。このような滅菌は、70℃を超過する温度にさらされる場合、充電式電池セルの性能が低下させる可能性があり問題となる。性能の低下を超え、80℃を超過する温度にさらされると電池セル自体が永久的に損傷する危険性がある。
【0005】
電池セルが臨界温度に達するのを防止する1つの手法は、電池セルなしで電池筐体を滅菌する方法である。その後、電池セルはシールド及び密閉可能なカバーを使用して筐体に追加され、セルが滅菌領域にさらされるのを防ぐ。別の手法は、微多孔性ケイ酸塩(米国特許第6,756,766号)又はシリカ(二酸化珪素)又はシリカセラミック窒化炭素又はシリカエアロゲル(米国特許第8,486,560号)などの断熱材料を使用して電池セルを断熱することである。
【0006】
さらに別の手法は、電池セルと共に電池筐体を滅菌するために化学材料及びガスを使用することである。このタイプの滅菌工程は、電池セルが損傷する可能性のある温度が発生しないようにする。しかし、このような手法は、病院、外科センター及び他の医療機関には通常存在しない滅菌施設を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
簡単な低価格の、密閉された電池筐体及び関連する製造方法が提供される。例示的な実施形態では、筐体はその中に封入された再充電可能な電池(電気化学)セルと共にオートクレーブ処理をすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例示的な実施形態の一態様によれば、組電池アセンブリは、電気化学セルを含む少なくとも1つの電池、及び少なくとも1つの電池の周囲に実質的に密閉空間容積を生成するように構成された少なくとも1つの外壁を有する筐体を含む。空間容積の雰囲気はガスを含む。空間容積中のガスの熱伝導率は、0.018W/m℃(ワット毎メートル毎度)未満である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の例示的な実施形態の一態様による組電池アセンブリの斜視図である。
【
図2】本発明の例示的な実施形態の他の態様による組電池アセンブリの斜視図である。
【
図3】本発明の例示的な実施形態の一態様による充電ステーションに結合された組電池アセンブリの斜視図である。
【
図4】本発明の例示的な実施形態の一態様による手術装置に結合された組電池アセンブリの斜視図である。
【
図5】本発明の例示的な実施形態の一態様によるディスプレイを含む組電池アセンブリを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で説明する例示的な実施形態は、単に例示の目的のために提供されるものであって、本発明の範囲を制限するものではない。当業者に周知のように、状況は提案や適切な提示によって同等の構造の様々な省略及び代替を考慮できることが理解され得る。さらに、以下は実質的に物理的設計の例示的な実施形態に関連するが、本発明の思想を逸脱することなく、材料、部品の説明及び幾何学的構造に対する変更を行うことができることは、当業者には理解されるであろう。
【0011】
本発明の例示的な実施形態の一態様では、組電池アセンブリ又は筐体は、電気化学セルを有する1つ以上の電池及び電池の周囲に実質的に密閉空間容積を生成するように構成された少なくとも1つの外壁を有する筐体を含む。空間容積の雰囲気は、0.018W/m℃未満の熱伝導率を有するガスを含む。このガスの雰囲気は、筐体の外壁と電池との間に断熱層を提供する。この断熱層によって、組電池アセンブリは、電池を損傷することなくオートクレーブ処理を受けることができる。
【0012】
空間容積中のガスの熱伝導率は、さらに低くすることができ、例えば0.016W/m℃より低くすることができる。さらに、空間容積の雰囲気は、空間容積中のガスの熱伝導率を0.018W/m℃より低くするのに十分な不完全真空を含むことができる。空間容積の雰囲気中に含まれたガスは、クリプトン、キセノン、アルゴン、及びフレオンからなる群から選択される少なくとも25%又は少なくとも33%の不活性ガスであってもよい。
【0013】
組電池アセンブリはまた、電池を筐体の外壁から分離させる複数のスタンドオフを含むことができる。さらに、電池を少なくとも部分的に囲む内壁を含んでもよい。筐体の外壁は、外壁の透過率を低減するメタライズ(金属化)層などのコーティングで覆うことができる複合プラスチックで形成される。
【0014】
電力を提供するために、組電池アセンブリは、電池から外壁の外部に延設される電池端子を含む。電池端子は、電気接点に結合された正端子及び負端子を含み、これらは手術器具に接続して電力を供給し、充電ステーションに接続して充電されるように構成される。
【0015】
図1に示すように、組電池筐体又は組電池アセンブリ100は、電池セル110、電池端子120、第1壁又は外壁130、及び第2壁又は内壁140を含む。電池セル110は、鉛酸、ニッケルカドミウム(NiCd)、ニッケル水素(NiMH)、リチウムイオン(Li-ion)、又は、リチウムイオンポリマ(Li-ion polymer)などの再充電可能な、電気化学的電池とすることができる。
【0016】
外壁130は、内壁140及び電池セル110の周囲に連続する、密閉区画を形成する。外壁130の内面と内壁140の外面との間の空間は、ガス、不完全真空、又は、両方を含む雰囲気を有する空間容積160を示す。内壁140は、電池セル110の周囲に連
続又は非連続する壁であってもよい。非連続する壁で実施をする場合、内壁140は電池セル110を部分的に又は実質的に覆うことができ、電池セルを外壁130の内面から分離させることができる。内壁140は、好ましくは外壁130の外部領域の少なくとも25%未満の断面積を有する。外壁130に対する内壁140の断面積を減らすことは、組電池筐体100を介した外壁130から電池セル110への伝導熱の伝達を最小にするのに役立つ。
【0017】
外壁130を内壁140から分離させるために、組電池筐体100は内壁140から外壁130の分離を保持する複数のスタンドオフ、間隔保持材、又はセパレータ150を含んでもよい。例示的な実施形態において、間隔保持材は、電池セル110が外壁130と接触するのを防止する個別のスタンドオフ150で形成される。もちろん、別個の構造的な「スタンドオフ」の代わりにフィラー又は連続した間隔を提供する代替的な配置が意図される。代替的に、
図2に示すように、組電池筐体100は内壁140なしで設計することもできる。このような構成では、電池セル110は空間容積160内の雰囲気にさらされる。
図2に示すように、内壁140がない場合、スタンドオフ150は外壁130を電池セル110から分離するように配置される。
【0018】
スタンドオフ150は、好ましくは、低熱伝導率の材料で形成され、外壁130から内壁140及び電池セル110への熱伝導を低減するのに役立つ。さらに、スタンドオフ150の断面積は最小化されることが好ましい。例えば、断面積は、電池セル110の表面積の一部、例えば10%未満とすることができる。組電池筐体100内に含まれるスタンドオフ150の数は、電池セル110の特定の構成に依存するが、スタンドオフ150の数は、好ましくは、外壁130から離れて外壁130内に電池セル110(又は含まれる場合は内壁140)の位置を保持するのに十分な数にされる。
【0019】
外壁130の外面が環境にさらされるのに対し、外壁130の内面は、外壁130と内壁140又は電池セル110との間の空間容積160内の雰囲気にさらされる。このような雰囲気は、外壁130と電池セル110との間に断熱層を提供する。ガスの雰囲気は、例えば、少なくとも25%の低熱伝導率ガスを含んでもよい。低熱伝導率ガスは、空間容積160内の雰囲気の少なくとも33%、少なくとも50%、又は全ての雰囲気のように大部分の雰囲気を含むことができる。低熱伝導率ガスは、好ましくはアルゴン、クリプトン、キセノン、又は、フレオンのような不活性ガスである。
【0020】
低熱伝導率ガスに加えて、又は低熱伝導率ガスの代替として、空間容積160内の雰囲気は不完全真空を含むことができる。不完全真空は、好ましくは空間容積160内の雰囲気の少なくとも25%になる。不完全真空は、空間容積160内の雰囲気のより大きい部分、例えば、少なくとも33%、少なくとも50%、又は、全てを含むことができる。
【0021】
雰囲気圧での熱伝導は、ガス分子間衝突時の直接的移動、又は分子運動対流のいずれかによって主に影響を受けるため、不完全真空は外壁130から電池セル110への熱伝達を低減するのに役立つ。外壁130及び電池セル110のような2つの物体が異なる温度にあり、雰囲気圧のチャンバ内に置かれた場合、熱はガス分子を介してより熱いものからより冷たいものに流れる。このような圧力が、ガス分子の一部を除去することによって、例えば、不完全真空を導入することによって減少すると、分子間の距離がより大きくなって分子衝突回数が減少し、それによって熱流が減少する。熱伝達媒体(ガス分子など)の熱伝導率を低下させることにより、より熱い物体がその熱を保持できるようになる。さらに、もし圧力が連続的に低下すると、熱流は同様に連続的に減少する。従って、熱い物体及び冷たい物体(例えば、外壁130及び電池セル110)の間に少なくとも不完全真空を導入することによって断熱が形成される。不完全真空によって提供される断熱量は、熱い物体と冷たい物体との間の真空の量(即ち、分子の不足)によって決まる。
【0022】
空間容積160内の雰囲気が低熱伝導率ガス、不完全真空、又はそれらの組み合わせを含むかに関わらず、雰囲気の熱伝導率は、好ましくはオートクレーブサイクル間の電池セル110が損傷するのを防ぐために、十分に電池セルを断熱するように構成される。空気の熱伝導率は、0.024W/m℃である。低熱伝導率ガス及び/又は不完全真空を使用することにより、空間容積160内の雰囲気の熱伝導率は、空気の熱伝導率よりも低くなる。電池セル110を保護するために、熱伝導率が十分に小さいガス及び/又は不完全真空が、好ましくは雰囲気中に提供され、雰囲気の熱伝導率の範囲は、例えば0.002から0.018W/m℃で作られる。より好ましくは、雰囲気の熱伝導率は、0.018W/m℃未満、0.016W/m℃未満、0.012W/m℃未満、0.009W/m℃未満、又は0.007W/m℃未満である。例示的な実施形態において、低熱伝導率ガスは、フレオン(熱伝導率が0.007)又はクリプトン(熱伝導率が0.009)のような0.012W/m℃未満の熱伝導率を有する。低熱伝導率を有するように構成された空間容積160の雰囲気によって、組電池筐体100は、例えば外壁が4分間132℃に、又は30分間121℃にさらされるときに、内壁130及び電池セル110が70℃に達するのを防止する。
【0023】
空間容積160内の雰囲気によって提供される断熱層を超えて電池セル110をさらに保護するために、組電池筐体100の壁は、窒素、酸素、及び雰囲気中に存在する他のガスを含むガスに対して、非常に低い透過率を有する材料を含むことができる。この材料は、好ましくは、室温、及び例えば132℃のオートクレーブ温度の両方で非常に低い透過率を有する。外壁130及び内壁140の材料は、例えば透過性を減少させるために異なるウェブ及び層を有する複合プラスチックであってもよい。外壁130の厚さは、好ましくは、底への落下による損傷に耐えるのに充分であり、プラスチックなどの使用する材料の衝撃及び成形特性を考慮するのに充分である。
【0024】
組電池筐体100の壁のための材料に加えて、膜、コーティング、共押出、又はめっきが外壁130の内部又は外部に提供されてもよく、内壁140にも任意に提供されてもよい。コーティングは、スクラッチなどの損傷から保護するために、好ましくは、少なくとも外壁130の内部に配置される。例えば、メタライズ層にすることができるコーティングは、壁の透過率を、好ましくは少なくとも90%まで低下させるのに役立つ。所望の低透過率は、一般に組電池筐体100の外壁130内の「自由気体体積」の関数である。好ましい実施形態では、例えば、外壁130及びコーティングの材料は、23℃で保管したときに空間容積160の雰囲気中の自由体積の10%以下の移動を1年以内に可能にするように設計される。そのような低い透過率では、空間容積160内の雰囲気は、時間とともに組電池筐体100から消滅することがない。
【0025】
電池端子120は、電気接点170に接続することができる正及び負のリードを含むことができる。電気接点170は、
図4に示すように、手術器具のようなデバイスに接続して電力を提供するように構成される。手術器具は、例えば、米国特許第8,936,106号に記載されるような整形外科電動道具であってもよい。電気接点170はまた、
図3に示すように電池セル110を充電するために充電器に接続することができる。外壁130及び内壁140を通過する電池端子120は、好ましくはガス漏れを最小限に抑えるために、低透過性ポッティング化合物、Oリング又は他の密閉方法によって密閉される。シール材は、例えば20~2350のポリウレタンとすることができる。さらに、電気接点170の断面積は、電池セル110への伝導熱の伝達を低減するために最小限に保たれる。
【0026】
正及び負のリードに加えて、電池端子120はまた、1つ以上の通信端子を含むことができる。このような通信端子は、雰囲気の破損(breach)、電池セル110の温度
、電池セルの充電レベルに関する情報、及び電池セル110を含む組電池筐体100の作動又は状態に関連する異なる情報を提供するように構成することができる。この情報を通信端子を介して提供するために、組電池筐体100は、組電池筐体100及び電池セル110の作動に関連するパラメータ及び状態を検出するように構成された回路、検出器、及びトランスデューサを含むことができる。通信端子は、
図5に示すように、通信端子によって提供される情報を表示するように構成されたディスプレイ180に結合してもよい。また、電気化学的電池セルの代わりに、燃料電池を使用することもできる。
【0027】
温度を検出するために、組電池筐体100は、電池セル110又は電池セル110の周囲の領域の温度を監視する熱電対を含むことができる。外壁の外面上に取り付けられたスピーカからの音又は外壁130の外面上に見える表示灯は、例えば温度が許容可能なレベルにあるか、臨界レベルに近づいているか、又は臨界レベルに達したかのように、温度の状態を示すために使用されてもよい。表示灯及び音を使用して、電池の使用準備ができているかを表示することもできる。電池セル110が安全な作動温度にあるかを色又は他の変化によって示すサーモクロミックストリップを提供することもできる。
【0028】
温度の検出と表示をする他に、組電池筐体100は、起動時に電池が使用されないようにするフェイルセーフを含むことができる。フェイルセーフは、例えば、接続中にヒューズを溶断することによって実現してもよい。電池セル110が十分に冷却されるまで放電を防止するために、PTC素子のような業界で一般的に使用されている追加の安定装置を組電池筐体100に組み込んでもよい。組電池筐体100はまた、内部ガス室領域の熱伝導性を検出するためのセンサと、オートクレーブサイクル中に組電池筐体100内の電池セル110によって到達される最高温度を検出するためのセンサとを含むことができる。検出された情報に基づいて、センサは断熱システム内の破損、又は例えば電池セル110が充電されないなどの電池セル110の不具合に関する情報を伝達することができる。
【0029】
本開示の特定の実施形態について説明したが、そのような参照は、本発明の範囲に対する限定として解釈されることを意図するものではない。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術装置であって、
オートクレーブサイクルを含む滅菌工程で滅菌されるように構成された組電池アセンブリと、
複数の電池セルと、
筐体であって、前記筐体の外壁が、実質的に前記複数の電池セルの周りに密閉空間容積を作成するように構成され、前記密閉空間容積の雰囲気が、前記筐体の前記外壁と前記複数の電池セルとの間に断熱層を提供するように構成されている筐体と、
正端子と、
前記正端子に結合された第1電気接点と、
負端子と、
前記負端子に結合された第2電気接点と、
を含み、
前記第1電気接点及び前記第2電気接点は、手術器具に接続して電力を供給するように構成され、
前記第1電気接点及び前記第2電気接点は、前記複数の電池セルを再充電するように構成された充電ステーションに接続するように構成される、
手術装置。
【請求項2】
前記組電池アセンブリは、雰囲気の熱伝導率を検出するように構成された熱伝導率センサをさらに備え、
前記組電池アセンブリは、ディスプレイに結合するように構成され、前記ディスプレイに表示するために検出された熱伝導率に関する情報を通信するように構成された通信端子をさらに備える、
請求項1に記載の手術装置。
【請求項3】
前記組電池アセンブリは、筐体内の温度を感知するように構成された温度センサをさらに備え、
前記組電池アセンブリは、ディスプレイに結合されるように構成され、前記ディスプレイに表示するために感知された温度に関する情報を通信するように構成された通信端子をさらに備える、
請求項1に記載の手術装置。
【請求項4】
前記組電池アセンブリが、前記複数の電池セルの温度を感知するように構成された温度センサをさらに備え、
前記組電池アセンブリは、ディスプレイに結合されるように構成され、前記ディスプレイに表示するために感知された温度に関する情報を通信するように構成された通信端子をさらに備える、
請求項1に記載の手術装置。
【請求項5】
前記組電池アセンブリは、ディスプレイに結合されるように構成され、前記ディスプレイに表示するための前記複数の電池セルの充電レベルに関する情報を通信するように構成される通信端子をさらに備える、請求項1に記載の手術装置。
【請求項6】
前記組電池アセンブリは、ディスプレイに結合されるように構成され、前記ディスプレイに表示するための情報を通信するように構成された通信端子をさらに備え、
前記情報は、雰囲気の熱伝導率、前記電池セルの温度、前記筐体内の温度、及び前記複数の電池セルの充電レベルに関する情報の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の手術装置。
【請求項7】
前記通信端子が前記空間容積内に配置され、
前記密閉空間容積の前記雰囲気は、不完全真空と不活性ガスの少なくとも1つを含み、
前記筐体内の内壁は、前記通信端子が前記密閉空間容積の前記雰囲気にさらされることを防ぐ、
請求項6に記載の手術装置。
【請求項8】
セルの電池は、前記密閉空間容積内の前記雰囲気にさらされる、請求項1に記載の手術装置。
【請求項9】
前記筐体内の内壁は、前記複数の電池セルを前記筐体の外壁の内面から分離し、
前記密閉空間容積は、前記内壁の外面と前記外壁の前記内面との間にある、
請求項1に記載の手術装置。
【請求項10】
前記手術器具は、整形外科用手術器具である、請求項1に記載の手術装置。
【請求項11】
前記手術器具をさらに含む、請求項1に記載の手術装置。
【請求項12】
手術器具へ電力を供給する方法であって、
組電池アセンブリの第1電気接点と前記組電池アセンブリの第2電気接点とを手術器具に接続して前記手術器具に電力を供給することと、
前記手術器具に電力を供給する前又は後に、前記第1電気接点と前記第2電気接点とを充電ステーションに接続して前記組電池アセンブリの複数の電池セルを再充電することと、
を含み、
前記組電池アセンブリが、オートクレーブサイクルを含む滅菌工程で滅菌されるように構成され、
前記組電池アセンブリが、
前記複数の電池セルと、
筐体であって、前記筐体の外壁が、実質的に前記複数の電池セルの周りに密閉空間容積を作成し、前記密閉空間容積の雰囲気が、前記筐体の前記外壁と前記複数の電池セルとの間に断熱層を提供する筐体と、
正端子と、
前記正端子に結合された前記第1電気接点と、
負端子と、
前記負端子に結合された第2電気接点と、を含む、
方法。
【請求項13】
前記組電池アセンブリは、ディスプレイに結合された通信端子をさらに含み、
前記方法は、前記通信端子を使用して、前記ディスプレイに表示するための情報を通信することをさらに含み、
前記情報は、前記雰囲気の熱伝導率、前記電池セルの温度、前記筐体内の温度、及び前記複数の電池セルの充電レベルに関する情報の少なくとも1つを含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
手術器具へ電力を供給する方法であって、
オートクレーブサイクルを含む滅菌工程で組電池アセンブリを滅菌することを含み、
前記組電池アセンブリは、
複数の電池セルと、
筐体であって、前記筐体の外壁が、実質的に前記複数の電池セルの周りに密閉空間容積を作成するように構成され、前記密閉空間容積の雰囲気が、前記筐体の前記外壁と前記複数の電池セルとの間に断熱層を提供するように構成されている筐体と、
正端子と、
前記正端子に結合され、手術器具に接続するように構成された第1電気接点と、
負端子と、
前記負端子に結合され、手術器具に接続するように構成された第2電気接点と、を含み、
前記第1電気接点及び前記第2電気接点は、前記手術器具が滅菌された後に前記手術器具に接続して電力を供給するように構成され、
前記第1電気接点及び前記第2電気接点は、前記手術器具が滅菌された後に前記複数の電池セルを再充電するように構成された充電ステーションに接続するように構成される、
方法。
【請求項15】
前記組電池アセンブリは、ディスプレイに結合された通信端子をさらに含み、
前記方法は、前記滅菌中に、前記通信端子を使用して、前記ディスプレイに表示するための情報を通信することをさらに含み、
前記情報は、前記雰囲気の熱伝導率、前記電池セルの温度、及び前記筐体内の温度に関する情報の少なくとも1つを含む、
請求項14に記載の方法。