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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166860
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2475 20160101AFI20221026BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20221026BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20221026BHJP
   C22C 30/06 20060101ALI20221026BHJP
   C22C 28/00 20060101ALI20221026BHJP
   C22C 25/00 20060101ALI20221026BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20221026BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221026BHJP
   C22C 23/00 20060101ALN20221026BHJP
【FI】
H01M8/2475
H01M8/00 Z
H01M8/0206
C22C30/06
C22C28/00 A
C22C25/00
H01M8/12 101
H01M8/10 101
H01M8/12 102A
H01M8/12 102B
C22C23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127126
(22)【出願日】2022-08-09
(62)【分割の表示】P 2021071663の分割
【原出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】521172376
【氏名又は名称】合同会社テクノロジーオンデマンド
(74)【代理人】
【識別番号】100173679
【弁理士】
【氏名又は名称】備後 元晴
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 総一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆彦
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA28
5H126BB06
5H126CC02
5H126DD05
5H126FF10
5H126GG02
5H126GG08
5H126GG12
5H126HH00
5H126JJ05
5H126JJ08
5H126JJ09
(57)【要約】
【課題】軽量であることと耐久性に優れることとを両立し、宇宙空間で利用可能な燃料電池を提供する。
【解決手段】本発明の燃料電池1は、燃料を用いて発電可能な2以上のセル4と、2以上のセル4を隔てるセパレータ3と、2以上のセル4とセパレータ3とを収容可能な筐体2と、を備え、セパレータ3及び/又は筐体2は、ベリリウム及び/又はベリリウム合金を含む。上記のベリリウム合金は、ベリリウムを原子比で90%以上含むことが好ましい。上記のベリリウム合金は、比重がチタンの比重と略同じかチタンの比重以下である元素を含むことが好ましい。本発明の燃料電池1は、惑星及び/又は衛星を探査可能な探査車、惑星、衛星及び/又は小天体を探査可能な探査機、ロケット、並びに人工衛星から選択される少なくとも1以上で利用可能であることが好ましい。セパレータ3及び/又は筐体2は、金属3Dプリンタによる積層造形体であることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を用いて発電可能な2以上のセルと、
2以上の前記セルを隔てるセパレータと、
前記2以上のセルと前記セパレータとを収容可能な筐体と、
を備え、
前記セパレータ及び/又は前記筐体は、ベリリウム及び/又はベリリウム合金を含む、
燃料電池。
【請求項2】
前記ベリリウム合金は、ベリリウムを原子比で90%以上含む、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記ベリリウム合金は、単体としての温度25℃、圧力1013hPaでの比重がチタンの比重と略同じかチタンの比重以下である元素を含む、請求項1又は2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記セパレータ及び/又は前記筐体は、
5種類以上の元素を有するハイエントロピー合金と、
セラミックとアルミニウムとを有する複合材料と、
の1以上をさらに含み、
前記ハイエントロピー合金は、前記5種類以上の元素それぞれの原子比が50%以下の合金である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項5】
惑星及び/又は衛星を探査可能な探査車、惑星、衛星及び/又は小天体を探査可能な探査機、ロケット、並びに人工衛星から選択される少なくとも1以上で利用可能である、請求項1から4のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記セパレータ及び/又は前記筐体が金属3Dプリンタによる積層造形体である、請求項1から5のいずれか1項に記載の燃料電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池(fuel cell)に関する。
【背景技術】
【0002】
還元剤として機能する燃料と酸化剤として機能する気体とを外部から連続的に供給し、燃料と気体とを電気化学的に反応させて電気エネルギーを取り出す装置である燃料電池が利用されている。燃料電池は、タービン等を介さない発電を行うことにより、重量及び/又は体積あたりの発電効率を他の発電方式より高くし得る。
【0003】
化学反応を用いて電気エネルギーを取り出す装置として、一次電池(primary battery)及び二次電池(secondary battery、rechargeable battery)が知られている。一次電池及び二次電池では、使用に伴って生じた放電生成物が内部に蓄積される。この放電生成物の増加により、一次電池及び二次電池の放電電圧は、徐々に低下する。したがって、一次電池及び二次電池では、連続的に取り出し可能な電力量が制限される。
【0004】
燃料電池は、使用に伴って生じた放電生成物が内部に蓄積されることがない。このため、燃料電池では、使用に伴って放電電圧が低下することがない。したがって、燃料電池は、連続的に取り出し可能な電力量を一次電池及び/又は二次電池より大きくし得る。
【0005】
惑星及び/又は衛星を探査可能な探査車、ロケット、及び人工衛星等によって例示される宇宙空間で利用される装置に用いる電源では、これらの装置を地上から打上げるときのコスト等により、連続的に取り出せる電力量の大きいことが求められ得る。燃料電池は、連続的に取り出せる電力量を一次電池及び/又は二次電池より大きくし得ることから、宇宙空間で利用される装置に用いる電源として、好適に利用し得る。
【0006】
燃料電池に関し、特許文献1は、銅又は銅合金からなる金属基体と、該金属基体を被覆するように銅薄膜層を介して配設された中間層と、該中間層を被覆するように電着により形成された導電性の樹脂層とを備え、前記中間層はスズめっき層又はスズ合金めっき層であり、前記樹脂層は導電材料を含有することを特徴とするセパレータを有する燃料電池を開示している。特許文献1によれば、強度及び耐食性に優れ、接続抵抗が小さいセパレータを有する燃料電池を提供し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-34029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、宇宙空間で利用される装置では、装置を地上から打上げるロケット等における積載量の制限から、軽量であることが求められる。銅は、比重が8.96g/cmであり、鉄(比重7.87g/cm)等より重い。特許文献1は、燃料電池を軽量に構成する点において、さらなる改良の余地がある。
【0009】
宇宙空間は、高温又は低温の極端な温度条件となる。また、宇宙空間で利用される装置は、地上で利用される装置より修理等が難しい。これらの事由により、宇宙空間で利用される装置では、耐久性に優れていることが求められる。特許文献1は、耐久性に優れた燃料電池を構成する点においても、さらなる改良の余地がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽量であることと耐久性に優れることとを両立し、宇宙空間で利用可能な燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、セパレータ及び/又は筐体がベリリウム及び/又はベリリウム合金を含むよう構成することで、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0012】
第1の特徴に係る発明は、燃料を用いて発電可能な2以上のセルと、2以上の前記セルを隔てるセパレータと、前記2以上のセルと前記セパレータとを収容可能な筐体と、を備え、前記セパレータ及び/又は前記筐体は、ベリリウム及び/又はベリリウム合金を含む、燃料電池を提供する。
【0013】
第1の特徴に係る発明によれば、燃料を用いて発電可能な2以上のセルを備えるため、燃料を用いて発電する燃料電池を提供できる。
【0014】
ところで、宇宙空間で利用される燃料電池では、燃料電池を地上から打上げるロケット等における積載量の制限から、軽量であることが求められる。また、宇宙空間は、高温又は低温の極端な温度条件となり、かつ、宇宙空間で利用される燃料電池は、地上で利用される装置より修理等が難しい。これらの事由により、宇宙空間で利用される燃料電池では、耐久性に優れていることが求められる。
【0015】
したがって、宇宙空間で利用される燃料電池では、軽量であることと耐久性に優れることとの両立が求められる。
【0016】
ベリリウムは、温度25℃、圧力1013hPaでの比重が1.85g/cmであり、銅(同じ条件での比重8.96g/cm)に比較して非常に軽量な元素である。すなわち、ベリリウムを含む筐体及び/又はセパレータは、軽量に構成し得る。ベリリウム合金を含む筐体及び/又はセパレータについても、同様の特性を期待できる。
【0017】
ベリリウムのヤング率は、287GPaであり、銅(ヤング率100~128GPa)のヤング率より高い。したがって、ベリリウムは、高い曲げ強さを有する。すなわち、ベリリウムを含む筐体及び/又はセパレータは、曲げによって破壊されることを防ぎ得る優れた耐久性を有する。ベリリウム合金を含む筐体及び/又はセパレータについても、同様の特性が期待できる。
【0018】
ベリリウムの剛性率は、132GPaであり、銅(剛性率48GPa)の剛性率より高い。したがって、ベリリウムは、外部からの力等による変形が生じにくい。すなわち、ベリリウムを含む筐体及び/又はセパレータは、外部からの力等によって変形して機能が損なわれることを防ぎ得る優れた耐久性を有する。ベリリウム合金を含む筐体及び/又はセパレータについても、同様の特性を期待できる。
【0019】
ベリリウムのビッカース硬度は、1670MPaであり、銅(369MPa)のビッカース硬度より高い。したがって、ベリリウムは、銅より硬い。また、ベリリウムを含む筐体及び/又はセパレータは、銅の筐体及び/又はセパレータより傷つきにくい、優れた耐久性を有する。ベリリウム合金を含む筐体及び/又はセパレータについても、同様の特性を期待できる。
【0020】
ベリリウムの融点は、1560Kであり、銅(1357.77K)の融点より高い。したがって、ベリリウムを含む筐体及び/又はセパレータは、銅の筐体及び/又はセパレータより高温に強い、優れた耐久性を有する。ベリリウム合金を含む筐体及び/又はセパレータについても、同様の特性を期待できる。
【0021】
ベリリウムの熱膨張率は、25℃で11.3×10-6[1/K]であり、銅(16.5×10-6[1/K])の熱膨張率より低い。したがって、ベリリウムを含む筐体及び/又はセパレータは、銅の筐体及び/又はセパレータより温度変化による変形が生じにくい、優れた耐久性を有する。ベリリウム合金についても、同様の特性を期待できる。
【0022】
第1の特徴に係る発明によれば、セパレータ及び/又は筐体がベリリウム及び/又はベリリウム合金を含むため、セパレータ及び/又は筐体を、銅を用いて構成した燃料電池より、軽量かつ耐久性に優れた燃料電池を構成し得る。軽量かつ耐久性に優れた燃料電池は、宇宙空間で利用可能である。
【0023】
したがって、第1の特徴に係る発明によれば、軽量であることと耐久性に優れることとを両立し、宇宙空間で利用可能な燃料電池を提供できる。
【0024】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、前記ベリリウム合金は、ベリリウムを原子比で90%以上含む、燃料電池を提供する。
【0025】
第2の特徴に係る発明によれば、ベリリウム合金がベリリウムを原子比で90%以上含むため、ベリリウム合金をベリリウムと同様のよりいっそう軽い合金とし得る。したがって、ベリリウム合金を含む筐体及び/又はセパレータをよりいっそう軽量にし得る。
【0026】
また、第2の特徴に係る発明によれば、ベリリウム合金がベリリウムを原子比で90%以上含むため、ベリリウム合金をベリリウムと同様のよりいっそう耐久性に優れた合金とし得る。したがって、ベリリウム合金を含む筐体及び/又はセパレータの耐久性をよりいっそう高め得る。
【0027】
したがって、第2の特徴に係る発明によれば、軽量であることと耐久性に優れることとを両立し、宇宙空間で利用可能な燃料電池を提供できる。
【0028】
第3の特徴に係る発明は、第1又は第2の特徴に係る発明であって、前記ベリリウム合金は、単体としての温度25℃、圧力1013hPaでの比重がチタンの比重と略同じかチタンの比重以下である元素を含む、燃料電池を提供する。
【0029】
第3の特徴に係る発明によれば、ベリリウム合金が単体としての温度25℃、圧力1013hPaでの比重がチタンの比重と略同じかチタンの比重以下である元素を含むため、ベリリウム合金をよりいっそう軽い合金とし得る。したがって、ベリリウム合金を含む筐体及び/又はセパレータをよりいっそう軽量にし得る。
【0030】
したがって、第3の特徴に係る発明によれば、軽量であることと耐久性に優れることとを両立し、宇宙空間で利用可能な燃料電池を提供できる。
【0031】
第4の特徴に係る発明は、第1の特徴から第3の特徴のいずれかに係る発明であって、前記セパレータ及び/又は前記筐体は、5種類以上の元素を有するハイエントロピー合金と、セラミックとアルミニウムとを有する複合材料と、の1以上をさらに含み、前記ハイエントロピー合金は、前記5種類以上の元素それぞれの原子比が50%以下の合金である、燃料電池を提供する。
【0032】
5種類以上の元素を有し、5種類以上の元素それぞれの原子比が50%以下の合金であるハイエントロピー合金が知られている。ハイエントロピー合金は、耐熱性、高温強度、耐腐食性等に優れた合金であることが知られている。すなわち、ハイエントロピー合金は、耐久性に優れる合金である。
【0033】
セラミックとアルミニウムとを有する複合材料が知られている。セラミックとアルミニウムとを有する複合材料は、軽量、高いヤング率、低い熱膨張率、高い熱伝導率、及び高い破壊靭性を両立可能であることが知られている。すなわち、セラミックとアルミニウムとを有する複合材料は、軽量かつ耐久性に優れる複合材料である。
【0034】
第4の特徴に係る発明によれば、セパレータ及び/又は筐体がハイエントロピー合金と、セラミックとアルミニウムとを有する複合材料と、の1以上をさらに含むため、セパレータ及び/又は筐体の耐久性をよりいっそう高め得る。また、セパレータ及び/又は筐体をより軽量にすることも期待できる。
【0035】
したがって、第4の特徴に係る発明によれば、軽量であることと耐久性に優れることとを両立し、宇宙空間で利用可能な燃料電池を提供できる。
【0036】
第5の特徴に係る発明は、第1の特徴から第4の特徴のいずれかに係る発明であって、惑星及び/又は衛星を探査可能な探査車、惑星、衛星及び/又は小天体を探査可能な探査機、ロケット、並びに人工衛星から選択される少なくとも1以上で利用可能である、燃料電池を提供する。
【0037】
惑星及び/又は衛星を探査可能な探査車、惑星、衛星及び/又は小天体を探査可能な探査機、ロケット、並びに人工衛星は、いずれも地球外の宇宙空間で利用される装置である。地球外で利用される装置では、装置を地上から打上げるロケット等における積載量の制限から、軽量であることが求められる。
【0038】
宇宙空間は、高温又は低温の極端な温度条件となり得る。また、宇宙空間で利用される装置は、地上で利用される装置より修理等が難しい。これらの事由により、宇宙空間で利用される装置では、耐久性に優れていることが求められる。
【0039】
したがって、宇宙空間で利用される装置では、軽量であることと耐久性に優れることとを両立可能であることが求められる。
【0040】
第5の特徴に係る発明によれば、セパレータ及び/又は筐体がベリリウム及び/又はベリリウム合金を含むため、燃料電池は、軽量であることと耐久性に優れることとを両立し得る。したがって、第5の特徴に係る燃料電池は、惑星及び/又は衛星を探査可能な探査車、惑星、衛星及び/又は小天体を探査可能な探査機、ロケット、並びに人工衛星から選択される少なくとも1以上で利用可能である。
【0041】
したがって、第5の特徴に係る発明によれば、軽量であることと耐久性に優れることとを両立し、宇宙空間で利用可能な燃料電池を提供できる。
【0042】
第6の特徴に係る発明は、第1の特徴から第5の特徴のいずれかに係る発明であって、前記セパレータ及び/又は前記筐体が金属3Dプリンタによる積層造形体である、燃料電池を提供する。
【0043】
筐体内部にセパレータで隔てられた複数のセルを有する燃料電池は、筐体、セパレータ及び/又はセルが複雑な形状を有し得る。比較的単純な形状を有する複数の部品を溶接して複雑な形状の造型体を形成する技術が知られている。溶接して形成する技術により、張り出しがある形状、内部に凹部及び/又は孔がある形状等の複雑な形状の造型体を形成し得る。しかし、溶接して形成する技術では、溶接した箇所の強度が他の箇所より低くなり得る。したがって、溶接して形成する技術は、耐久性においてさらなる改良の余地がある。
【0044】
金属粉末をレーザ及び/又は電子ビームで焼結して積層する技術、シート状の金属を切断して積層する技術、金属ワイヤをレーザ及び/又は電子ビームで焼結して積層する技術等の技術を用いて金属の積層造型体を形成する金属3Dプリンタが知られている。金属3Dプリンタを用いることにより、溶接を行わずに金属の積層造型体を形成し、溶接した箇所の強度が他の箇所より低くなることを避け得る。したがって、金属3Dプリンタにより形成された金属の積層造型体は、溶接して形成した造型体より、優れた耐久性を実現し得る。
【0045】
第6の特徴に係る発明によれば、セパレータ及び/又は筐体が金属3Dプリンタによる積層造形体であるため、セパレータ及び/又は筐体は、溶接して形成したセパレータ及び/又は筐体より、優れた耐久性を実現し得る。
【0046】
したがって、第6の特徴に係る発明によれば、軽量であることと耐久性に優れることとを両立し、宇宙空間で利用可能な燃料電池を提供できる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、軽量であることと耐久性に優れることとを両立し、宇宙空間で利用可能な燃料電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、本実施形態の燃料電池1を正面からみたときの概略を模式的に示す概略模式図である。
図2図2は、図1に示す燃料電池1のセル4周辺を拡大して示す拡大模式図である。
図3図3は、平板型に構成された固体酸化物形燃料電池のセル4周辺を拡大して示す拡大模式図である。
図4図4は、円筒型に構成された固体酸化物形燃料電池のセル4周辺を拡大して示す拡大模式図である。
図5図5は、アルカリ電解質形燃料電池のセル4周辺を拡大して示す拡大模式図である。
図6図6は、溶融炭酸塩形燃料電池のセル4周辺を拡大して示す拡大模式図である。
図7図7は、りん酸形燃料電池のセル4周辺を拡大して示す拡大模式図である。
図8図8は、本実施形態の燃料電池1を斜め上方向からみたときの概略を模式的に示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明を実施するための好適な形態の一例について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0050】
<燃料電池1>
図1は、本実施形態の燃料電池1を正面からみたときの概略を模式的に示す概略模式図である。燃料電池1は、少なくとも、筐体2と、1以上のセパレータ3(例えば、図1の第1セパレータ3a~第7セパレータ3g)と、2以上のセル4(例えば、図1の第1セル4a~第6セル4f)と、を備える。
【0051】
〔筐体2〕
筐体2は、セパレータ3とセル4とを所定の位置関係において収容する。筐体2は、特に限定されず、従来技術の燃料電池の筐体でよい。筐体2を備えることにより、セパレータ3とセル4とを燃料電池が好適に動作する所定の位置関係において収容できる。
【0052】
筐体2は、ベリリウム及び/又はベリリウム合金を含むことが好ましい。宇宙空間で利用される燃料電池では、燃料電池を地上から打上げるロケット等における積載量の制限から、軽量であることが求められる。宇宙空間は、高温又は低温の極端な温度条件となり得る。また、宇宙空間で利用される燃料電池は、地上で利用される装置より修理等が難しい。これらの事由により、宇宙空間で利用される燃料電池では、耐久性に優れていることが求められる。
【0053】
ベリリウムは、温度25℃、圧力1013hPaでの比重が1.85g/cmであり、銅(同じ条件での比重8.96g/cm)との比較において非常に軽量な元素である。すなわち、ベリリウムを含む筐体2は、軽量に構成し得る。ベリリウム合金を含む筐体2についても、同様の特性を期待できる。
【0054】
ベリリウムのヤング率は、287GPaであり、銅のヤング率(100~128GPa)より高い。したがって、ベリリウムは、高い曲げ強さを有する。すなわち、ベリリウムを含む筐体2は、曲げによって破壊されることを防ぎ得る優れた耐久性を有する。ベリリウム合金を含む筐体2についても、同様の特性を期待できる。
【0055】
ベリリウムの剛性率は、132GPaであり、銅の剛性率(48GPa)より高い。したがって、ベリリウムは、外部からの力等による変形が生じにくい。すなわち、ベリリウムを含む筐体2は、外部からの力等によって変形して機能が損なわれることを防ぎ得る優れた耐久性を有する。ベリリウム合金を含む筐体2についても、同様の特性を期待できる。
【0056】
宇宙空間で利用される燃料電池では、燃料電池をロケット等で打ち上げるため、例えば、縦方向に4G、横方向に2G等の大きな加速度が加わり得る。この打ち上げにおける加速度により、筐体が変形して機能が損なわれ得る。ベリリウム及び/又はベリリウム合金を含む筐体2は、剛性率が高いため、この加速度によって変形して機能が損なわれることを防ぎ得る。したがって、筐体2がベリリウム及び/又はベリリウム合金を含むことにより、宇宙空間で利用可能な燃料電池1を提供し得る。
【0057】
宇宙空間は、実質的に真空であるため、宇宙空間で利用される燃料電池では、筐体内部と筐体外部との間に筐体内部の燃料及び/又は酸素を含む気体と筐体外部の真空との間の圧力差に起因する力が加えられ得る。ベリリウム及び/又はベリリウム合金を含む筐体2は、剛性率が高いため、この圧力差によって変形して機能が損なわれることを防ぎ得る。したがって、筐体2がベリリウム及び/又はベリリウム合金を含むことにより、宇宙空間で利用可能な燃料電池1を提供し得る。
【0058】
ベリリウムのビッカース硬度は、1670MPaであり、銅のビッカース硬度(369MPa)より高い。したがって、ベリリウムは、銅より硬い。また、ベリリウムを含む筐体2は、銅の筐体より傷つきにくい、優れた耐久性を有する。ベリリウム合金を含む筐体2についても、同様の特性を期待できる。
【0059】
宇宙空間で利用される燃料電池は、高速で飛来するデブリと衝突するリスクがあり得る。ベリリウム及び/又はベリリウム合金を含む筐体2は、ビッカース硬度が高いため、デブリによって傷ついて機能が損なわれることを防ぎ得る。したがって、筐体2がベリリウム及び/又はベリリウム合金を含むことにより、宇宙空間で利用可能な燃料電池1を提供し得る。
【0060】
ベリリウムの融点は、1560Kであり、銅の融点(1357.77K)より高い。これにより、燃料電池1における電気化学反応が高温で行われる反応であっても、筐体2が融解することを防ぎ得る。したがって、ベリリウムを含む筐体2は、銅の筐体より高温に強い、優れた耐久性を有する。ベリリウム合金を含む筐体2についても、同様の特性を期待できる。
【0061】
ベリリウムの熱膨張率は、25℃で11.3×10-6[1/K]であり、銅の熱膨張率(16.5×10-6[1/K])より低い。したがって、ベリリウムを含む筐体2は、銅の筐体より温度変化による変形が生じにくい、優れた耐久性を有する。ベリリウム合金についても、同様の特性を期待できる。
【0062】
宇宙空間で利用される燃料電池は、太陽光を浴びる場合に120℃の高温となり得る。また、宇宙空間で利用される燃料電池は、太陽光を浴びない場合に-170℃の低温となり得る。したがって、宇宙空間で利用される燃料電池は、低温と高温との両方を含む広い温度範囲で利用され得る。広い温度範囲で利用される燃料電池は、温度変化によって変形して機能が損なわれるリスクがあり得る。
【0063】
ベリリウム及び/又はベリリウム合金を含む筐体2は、熱膨張率が低いため、温度変化によって変形して機能が損なわれることを防ぎ得る。したがって、筐体2がベリリウム及び/又はベリリウム合金を含むことにより、宇宙空間で利用可能な燃料電池1を提供し得る。
【0064】
鉄、ニッケル、クロム、及び銅等は、ヤング率及び剛性率等に優れるものの、温度25℃、圧力1013hPaでの比重が大きく(鉄7.87g/cm、ニッケル8.90g/cm、クロム7.20g/cm、銅8.96g/cm)、ベリリウム(比重1.85g/cm)との比較において軽量でない。
【0065】
リチウム及びナトリウム等によって例示されるアルカリ金属並びにマグネシウム及びカルシウム等によって例示されるアルカリ土類金属は、酸素及び/又は水に対する反応性が高く、燃料電池が利用する酸素を含む気体及び/又は燃料電池における電気化学反応の生成物である水と反応するリスクが生じ得る。また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、ヤング率、剛性率等がベリリウムより低く、靭性も低い。
【0066】
ベリリウムは、比重が小さく、軽量である。ベリリウムは、酸素雰囲気において表面が不働態化するため、酸素と反応するリスクを軽減し得る。ベリリウムは、水と接触した場合において表面が水酸化ベリリウムで覆われる。水酸化ベリリウムは、水に対する溶解度が低いため、水と反応するリスクを軽減し得る。また、ベリリウムは、上述のとおり、耐久性に関する各種の指標が優れている。
【0067】
したがって、筐体2がベリリウム及び/又はベリリウム合金を含むため、銅を用いて筐体を構成した燃料電池より、軽量かつ耐久性に優れた燃料電池1を構成し得る。
【0068】
必須の態様ではないが、筐体2が含むベリリウム合金は、ベリリウムを原子比で90%以上含むことが好ましい。筐体2が含むベリリウム合金がベリリウムを原子比で90%以上含むため、ベリリウム合金をベリリウムと同様のよりいっそう軽い合金とし得る。したがって、ベリリウム合金を含む筐体2をよりいっそう軽量にし得る。
【0069】
また、筐体2が含むベリリウム合金がベリリウムを原子比で90%以上含むため、ベリリウム合金をベリリウムと同様のよりいっそう耐久性に優れた合金とし得る。したがって、ベリリウム合金を含む筐体2の耐久性をよりいっそう高め得る。
【0070】
必須の態様ではないが、筐体2が含むベリリウム合金は、単体としての温度25℃、圧力1013hPaでの比重がチタンの比重と略同じかチタンの比重以下である元素を含むことが好ましい。
【0071】
筐体2が含むベリリウム合金が単体としての温度25℃、圧力1013hPaでの比重がチタンの比重と略同じかチタンの比重以下である元素を含むため、ベリリウム合金をよりいっそう軽い合金とし得る。したがって、ベリリウム合金を含む筐体2をよりいっそう軽量にし得る。
【0072】
必須の態様ではないが、筐体2は、5種類以上の元素を有し、5種類以上の元素それぞれの原子比が50%以下であるハイエントロピー合金を含むことが好ましい。
【0073】
ハイエントロピー合金は、耐熱性、高温強度、耐腐食性等に優れた合金であることが知られている。すなわち、ハイエントロピー合金は、耐久性に優れる合金である。したがって、筐体2がハイエントロピー合金を含むことにより、筐体2の耐久性をよりいっそう高め得る。
【0074】
筐体2が含む合金に関し、軽量な実用合金として、例えば、Mg系の合金がある。しかし、Mg系の合金は、通常、強度においてさらなる改善の余地がある。
【0075】
Mg系の合金の高強度化に関し、河村能人は、「LPSO型マグネシウム合金の特徴と今後の展望」(まてりあ、第54巻、第2号(2015)pp.44-49.)において、LPSO構造(Long Poriod StaCking Ordered Structurce:長周期積層型規則構造)と命名された結晶構造を有する、比較的高強度のMg合金を開示している。上述の文献は、高圧ガスアトマイズ法で作製した急冷凝固粉末を押出し固化成形して得られるMg97Zn(at%)合金が降伏強度610MPaを示すと記載している。
【0076】
上述の文献は、同様のLPSO型Mg合金として、同程度の高強度特性を示すMg-M-RE系の合金を開示している。ここで、Mは金属元素(Co、Nl、Cu、Zn)を示し、REはレアアース元素(Y、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm)を示す。
【0077】
また、主にダイカスト材として規格化されているMg-Al-Ca合金のAl及びCaの添加量を低く抑えることで、高難燃性・高強度・高延性を兼ね添えたMg合金を実現する試みもある。しかし、該合金は、社会実装するための大型化技術の開発が研究途上にあり、実用化においてさらなる改良の余地がある。
【0078】
Michael C.Cao、Jien Wei Yeh、Peler K.Liaw、及びYong Zhangiは、「High-Entropy Alloys: Fundamentals and Applications」(ISBN 978-3-319-27011-1、DOI 10.1007/978-3-319-27013-5、Springer International Publishins、Switzerland、(2016))において、5種類以上の主元素から構成されるハイエントロピー合金(High―Entropy A1loy)等の金属系材料を開示している。
【0079】
実用耐熱合金(Ni基超合金)の一例であるインコネル718合金は、600℃以上の高温で強度が減少し、1000℃を超えると降伏強度は200MPaを下回ることが知られている。上述の文献は、ハイエントロピー合金V20Nb20Mo20Ta2020に関し、高温における強度減少がわずかであり、インコネル718合金に比較して、800℃では約1.5倍、1000℃では約5.5倍の降伏強度を有すると記載している。したがって、5種類以上の主元素から構成されるハイエントロピー合金を用いることにより、よりいっそう高い強度を実現し得る。
【0080】
しかしながら、ハイエントロピー合金V20Nb20Mo20Ta2020は、常温付近での密度が10g/cm以上の元素を複数含む比較的重い合金であり、密度を下げる点でさらなる改良の余地がある。
【0081】
必須の態様ではないが、筐体2は、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、P、S、K、Ca、Sc、Ti、Rb、Sr、Y、Ba、Zn、Sn、Ce、Nd、Sm、及びGdのうち5種類以上の元素を有し、5種類以上の元素それぞれの原子比が略同じであるか、5種類以上の元素のうちいずれか1元素以上の原子比が5~35%の範囲であり、密度が2.5g/cm以下であるハイエントロピー合金を含むことが好ましい。
【0082】
Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、P、S、K、Ca、Sc、Ti、Rb、Sr、Y、Ba、Zn、Sn、Ce、Nd、Sm、及びGdは、比較的軽量な元素である。ハイエントロピー合金が上述の軽量な元素のうち5種類以上の元素を有することにより、2.5g/cm以下の低い密度を達成できる。
【0083】
ハイエントロピー合金が5種類以上の元素を有し、5種類以上の元素それぞれの原子比が略同じであるか、5種類以上の元素のうちいずれか1元素以上の原子比が5~35%の範囲であることにより、合金中の原子の混合状態が安定化し、異種原子の相互の影響により高い格子歪みが得られる。そして、高い格子歪みにより、高温領域までにおける熱拡散率(温度拡散係数)が低くなる。また、高い格子歪みは、原子拡散を遅延し、硬度(強度)を高め、その温度依存性を下げる。したがって、筐体2が上述のハイエントロピー合金を含むことにより、筐体2の耐久性及び/又は軽量性をよりいっそう高め得る。
【0084】
必須の態様ではないが、筐体2は、Al、Ca、Zn、及びSnのうち3種類以上の元素を有し、密度が2.5g/cm以下のMg-Li合金であって、LiをMgとの比率で8~11質量%有し、稠密六方格子結晶構造を有する組織と体心立方格子結晶構造を含む組織の混合組織又は体心立方格子結晶構造からなる組織を有するMg-Li合金を含むことが好ましい。
【0085】
Mg-Li合金が上述の特徴を有することにより、希少なLiの使用量を抑えつつ、2.5g/cm以下の低い密度を達成できる。また、耐久性をも高め得る。したがって、筐体2が上述のMg-Li合金を含むことにより、筐体2の耐久性及び/又は軽量性をよりいっそう高め得る。
【0086】
上述のハイエントロピー合金及び/又はMg-Li合金は、鋳造材、鍛造材、圧延材、加工熱処理材及び粉末材であり、密度2.5g/cm以下であることが好ましい。
【0087】
ハイエントロピー合金及び/又はMg-Li合金が軽量かつ上述した各種の態様であることにより、筐体2を容易に構成し得る。
【0088】
必須の態様ではないが、筐体2は、セラミックとアルミニウムとを有する複合材料を含むことが好ましい。
【0089】
セラミックとアルミニウムとを有する複合材料は、軽量、高いヤング率、低い熱膨張率、高い熱伝導率、及び高い破壊靭性を両立可能であることが知られている。すなわち、セラミックとアルミニウムとを有する複合材料は、軽量かつ耐久性に優れる複合材料である。筐体2がセラミックとアルミニウムとを有する複合材料を含むことにより、筐体2をよりいっそう軽量にし、また、耐久性をよりいっそう高め得る。
【0090】
筐体内部にセパレータで隔てられた複数のセルを有する燃料電池は、筐体、セパレータ及び/又はセルが複雑な形状を有し得る。複雑な形状の造型体を形成することに関し、比較的単純な形状を有する複数の部品を溶接して造型体を形成する技術が利用されている。溶接して造型体を形成する技術により、張り出しがある形状、内部に凹部及び/又は孔がある形状等の複雑な形状の造型体を形成し得る。しかし、溶接して造型体を形成する技術では、溶接した箇所の強度が他の箇所より低くなり得る。したがって、溶接して造型体を形成する技術は、耐久性においてさらなる改良の余地がある。
【0091】
金属粉末をレーザ及び/又は電子ビームで焼結して積層する技術、シート状の金属を切断して積層する技術、金属ワイヤをレーザ及び/又は電子ビームで焼結して積層する技術等の技術を用いて金属の積層造型体を形成する金属3Dプリンタが知られている。金属3Dプリンタを用いることにより、溶接を行わずに金属の積層造型体を形成し、溶接した箇所の強度が他の箇所より低くなることを避け得る。したがって、金属3Dプリンタにより形成された金属の積層造型体は、溶接して形成した造型体より、優れた耐久性を実現し得る。
【0092】
必須の態様ではないが、筐体2は、金属3Dプリンタによる積層造形体であることが好ましい。これにより、筐体2は、溶接して形成した筐体より、優れた耐久性を実現し得る。金属3Dプリンタは、特に限定されず、例えば、球状粉末又は棒状のワイヤを用いて3D積層造形する方式、粉末焼結方式、粉末溶融方式、粉末接着方式、シートラミネーション方式、DMD(Directed Metal DepositiOn)方式、及びワイヤ繰り出し方式のいずれか1以上を含む方式でよい。
【0093】
該球状粉末を作る方法は、特に限定されず、例えば、3D積層造形用の粉末を作製するガス及び水アトマイザー、プラズマ回転電極式粉末製造機、回転ディスク方式アトマイザー、並びにその他の球状粉末を作製する粉末製造機の1以上を用いる方法でよい。
【0094】
〔セパレータ3〕
セパレータ3は、筐体2に収容され、2以上のセル4を隔てるセパレータである。セパレータ3は、特に限定されず、従来技術の燃料電池のセパレータでよい。セパレータ3を備えることにより、2以上のセル4を隔てることができる。これにより、2以上のセル4それぞれは、互いの動作を阻害することなく、燃料を用いて発電し得る。
【0095】
セパレータ3は、1のセパレータによって2以上のセル4を隔てるセパレータでもよく、複数のセパレータによって2以上のセル4を隔てるセパレータでもよい。セパレータ3が1のセパレータによって2以上のセル4を隔てるセパレータであることにより、セパレータ3の構造を簡易にし得る。セパレータ3が複数のセパレータによって2以上のセル4を隔てるセパレータであることにより、セパレータの一部を交換すること等を容易にし得る。
【0096】
必須の態様ではないが、セパレータ3は、1以上のセル4と筐体2等によって例示される燃料電池1の構成要素の1以上とを隔てるセパレータでもよい(例えば、図1の第1セパレータ3a等)。これにより、燃料電池1の構成要素とセル4とを隔て、これらが互いの動作を阻害することなく、燃料を用いて発電し得る。
【0097】
セパレータ3は、ベリリウム及び/又はベリリウム合金を含むことが好ましい。宇宙空間で利用される燃料電池では、燃料電池を地上から打上げるロケット等における積載量の制限から、軽量であることが求められる。宇宙空間は、高温又は低温の極端な温度条件となり得る。また、宇宙空間で利用される燃料電池は、地上で利用される装置より修理等が難しい。これらの事由により、宇宙空間で利用される燃料電池では、耐久性に優れていることが求められる。
【0098】
ベリリウムを含む筐体2と同様に、ベリリウムを含むセパレータ3は、軽量に構成し得る。ベリリウム合金を含むセパレータ3についても、同様の特性を期待できる。
【0099】
ベリリウムを含む筐体2と同様に、ベリリウムを含むセパレータ3は、曲げによって破壊されることを防ぎ得る優れた耐久性を有する。ベリリウム合金を含むセパレータ3についても、同様の特性を期待できる。
【0100】
ベリリウムを含む筐体2と同様に、ベリリウムを含むセパレータ3は、外部からの力等によって変形して機能が損なわれることを防ぎ得る優れた耐久性を有する。ベリリウム合金を含むセパレータ3についても、同様の特性を期待できる。
【0101】
ベリリウムを含む筐体2と同様に、ベリリウムを含むセパレータ3は、銅のセパレータより傷つきにくい、優れた耐久性を有する。ベリリウム合金を含むセパレータ3についても、同様の特性を期待できる。
【0102】
ベリリウムを含む筐体2と同様に、ベリリウムを含むセパレータ3は、銅のセパレータより高温に強い、優れた耐久性を有する。ベリリウム合金を含むセパレータ3についても、同様の特性を期待できる。
【0103】
ベリリウムを含む筐体2と同様に、ベリリウムを含むセパレータ3は、銅のセパレータより温度変化による変形が生じにくい、優れた耐久性を有する。ベリリウム合金についても、同様の特性を期待できる。
【0104】
したがって、セパレータ3がベリリウム及び/又はベリリウム合金を含むため、銅を用いてセパレータを構成した燃料電池より、軽量かつ耐久性に優れた燃料電池1を構成し得る。
【0105】
必須の態様ではないが、セパレータ3が含むベリリウム合金は、ベリリウムを原子比で90%以上含むことが好ましい。セパレータ3が含むベリリウム合金がベリリウムを原子比で90%以上含むため、ベリリウム合金をベリリウムと同様のよりいっそう軽い合金とし得る。したがって、ベリリウム合金を含むセパレータ3をよりいっそう軽量にし得る。
【0106】
また、セパレータ3が含むベリリウム合金がベリリウムを原子比で90%以上含むため、ベリリウム合金をベリリウムと同様のよりいっそう耐久性に優れた合金とし得る。したがって、ベリリウム合金を含むセパレータ3の耐久性をよりいっそう高め得る。
【0107】
必須の態様ではないが、セパレータ3が含むベリリウム合金は、単体としての温度25℃、圧力1013hPaでの比重がチタンの比重と略同じかチタンの比重以下である元素を含むことが好ましい。
【0108】
セパレータ3が含むベリリウム合金が単体としての温度25℃、圧力1013hPaでの比重がチタンの比重と略同じかチタンの比重以下である元素を含むため、ベリリウム合金をよりいっそう軽い合金とし得る。したがって、ベリリウム合金を含むセパレータ3をよりいっそう軽量にし得る。
【0109】
必須の態様ではないが、セパレータ3は、ハイエントロピー合金を含むことが好ましい。セパレータ3がハイエントロピー合金を含むことにより、セパレータ3の耐久性をよりいっそう高め得る。ハイエントロピー合金は、特に限定されず、筐体2と同じでよい。
【0110】
必須の態様ではないが、セパレータ3は、Al、Ca、Zn、及びSnのうち3種類以上の元素を有し、密度が2.5g/cm以下のMg-Li合金であって、LiをMgとの比率で8~11質量%有し、稠密六方格子結晶構造を有する組織と体心立方格子結晶構造を含む組織の混合組織又は体心立方格子結晶構造からなる組織を有するMg-Li合金を含むことが好ましい。セパレータ3がこのようなMg-Li合金を含むことにより、セパレータ3の耐久性をよりいっそう高め得る。
【0111】
必須の態様ではないが、セパレータ3は、セラミックとアルミニウムとを有する複合材料を含むことが好ましい。セパレータ3がセラミックとアルミニウムとを有する複合材料を含むことにより、セパレータ3をよりいっそう軽量にし、また、耐久性をよりいっそう高め得る。
【0112】
必須の態様ではないが、セパレータ3は、金属3Dプリンタによる積層造形体であることが好ましい。これにより、セパレータ3は、溶接して形成したセパレータより、優れた耐久性を実現し得る。金属3Dプリンタは、特に限定されず、例えば、球状粉末又は棒状のワイヤを用いて3D積層造形する方式、粉末焼結方式、粉末溶融方式、粉末接着方式、シートラミネーション方式、DMD(Directed Metal DepositiOn)方式、及びワイヤ繰り出し方式のいずれか1以上を含む方式でよい。
【0113】
該球状粉末を作る方法は、特に限定されず、例えば、3D積層造形用の粉末を作製するガス及び水アトマイザー、プラズマ回転電極式粉末製造機、回転ディスク方式アトマイザー、並びにその他の球状粉末を作製する粉末製造機の1以上を用いる方法でよい。
【0114】
〔セル4〕
セル4は、燃料を用いて発電可能なセルである。セル4は、特に限定されず、従来技術における燃料電池のセルでよい。セル4の数は、2以上であれば、特に限定されない。2以上のセル4を含むことにより、1のセル4を用いて発電する場合より大きな電位差で発電し得る。
【0115】
セル4は、例えば、固体酸化物形燃料電池(Solid oxide fuel cell、SOFC)のセル、アルカリ電解質形燃料電池(Alkaline Fuel Cell、AFC)のセル、溶融炭酸塩型燃料電池(Molten-carbonate fuel cells、MCFC)のセル、りん酸形燃料電池(Phosphoric acid fuel cell、PAFC)のセル、固体高分子形燃料電池(Proton-exchange membrane fuel cells、PEMFC、polymer electrolyte membrane、PEM)のセル、及びこれらのセルの1以上を含むセルでよい。
【0116】
図2は、図1に示す燃料電池1のセル4周辺を拡大して示す拡大模式図である。図3は、平板型に構成された固体酸化物形燃料電池のセル4周辺を拡大して示す拡大模式図である。図4は、円筒型に構成された固体酸化物形燃料電池のセル4周辺を拡大して示す拡大模式図である。図5は、アルカリ電解質形燃料電池のセル4周辺を拡大して示す拡大模式図である。図6は、溶融炭酸塩形燃料電池のセル4周辺を拡大して示す拡大模式図である。図7は、りん酸形燃料電池のセル4周辺を拡大して示す拡大模式図である。以下、必要に応じて図2-7を参照して、セル4の構成について説明する。
【0117】
セル4は、燃料流路41、燃料極42、電解質43、酸素極44、及び酸素流路45を有する。
【0118】
セル4の形状は、特に限定されず、平板型(図2図3図6図7)でもよく、円筒型(図4図5)でもよい。
【0119】
セル4が固体酸化物形燃料電池のセルである場合、セル4は、平板型のセル4(図3)及び/又は円筒型のセル4(図4)を含むことが好ましい。セル4が図3に示す平板型のセル4を含むことにより、平板型のセル4を積層する手順で燃料電池1を構成できる。これにより、燃料電池1をよりいっそう容易に製造し得る。セル4が図4に示す円筒型のセル4を含むことにより、燃料極42、電解質43、酸素極44、及び酸素流路45の形状を耐圧性が高い形状である円筒型とし得る。これにより、燃料及び/又は酸素の圧力が高い場合における耐久性を高め得る。
【0120】
セル4がアルカリ電解質形燃料電池のセルである場合、セル4は、円筒型のセル4(図5)を含むことが好ましい。セル4が図5に示す円筒型のセル4を含むことにより、2以上のセパレータ3等によって画定される空間にアルカリ電解質を入れて電解質43’を構成し、該空間に円筒型の燃料極42及び酸素極44を配置する手法でセル4を構成できる。これにより、電解質43’が液体のアルカリ電解質であっても、燃料電池1をよりいっそう容易に製造し得る。
【0121】
セル4が溶融炭酸塩形燃料電池のセルである場合、セル4は、多孔質体を含む燃料極42’、多孔質体を含む電解質43”、及び多孔質体を含む酸素極44’を有する平板型のセル4(図6)を含むことが好ましい。セル4を構成する各部材が多孔質体を含むことにより、液体の溶融炭酸塩である電解質43”であっても、電解質43”をより確実に保持できる。これにより、燃料電池1の性能を高め得る。
【0122】
セル4がりん酸形燃料電池のセルである場合、セル4は、リブ付きの燃料極42及びリブ付きの酸素極44を有する平板型のセル4(図7)を含むことが好ましい。燃料極42及び酸素極44がリブ付きであることにより、液体のりん酸溶液である電解質43’と燃料及び/又は酸素との接触面積を大きくし得る。これにより、燃料電池1の性能を高め得る。
【0123】
セル4が固体高分子形燃料電池のセルである場合、セル4は、平板型のセル4(図2)を含むことが好ましい。セル4が図2に示す平板型のセル4を含むことにより、平板型のセル4を積層する手順で燃料電池1を構成できる。これにより、燃料電池1をよりいっそう容易に製造し得る。
【0124】
[燃料流路41]
燃料流路41は、セル4における電気化学反応を用いた発電において還元剤として機能する燃料の流路である。燃料流路41は、燃料極42と、筐体2、セパレータ3、及び電解質43によって例示される燃料電池1の構成要素の1以上とによって画定される。セル4が燃料流路41を有することにより、燃料極42に燃料を供給できる。
【0125】
燃料流路41は、外部から供給される燃料を燃料極42に供給可能に構成される。これにより、セル4は、外部から供給される燃料を用いて、連続的に発電し得る。したがって、一次電池及び/又は二次電池より大きい電力量を連続的に取り出すことが可能な燃料電池1を提供できる。
【0126】
燃料流路41は、発電後の燃料を燃料流路41の外部に排出可能に構成されることが好ましい。これにより、発電後の燃料が燃料流路41に残り、セル4の発電効率が低下することを防ぎ得る。
【0127】
セル4が固体酸化物形燃料電池、アルカリ電解質形燃料電池、及び/又は溶融炭酸塩型燃料電池のセルである場合、燃料流路41は、燃料極42で生じる水を排出可能な流路であることが好ましい。これにより、固体酸化物形燃料電池、アルカリ電解質形燃料電池、及び/又は溶融炭酸塩型燃料電池のセル4における燃料極42で生じる水によって発電効率が低下することを防ぎ得る。
【0128】
セル4が固体酸化物形燃料電池のセルである場合、燃料流路41は、燃料極42に一酸化炭素を供給可能な流路であることが好ましい。これにより、固体酸化物形燃料電池の燃料極42において一酸化炭素と酸素イオンとを反応させ得る。
【0129】
セル4が溶融炭酸塩型燃料電池のセルである場合、燃料流路41は、燃料極42で生じる二酸化炭素を排出可能な流路であることが好ましい。これにより、溶融炭酸塩型燃料電池のセル4における燃料極42で生じる二酸化炭素によって発電効率が低下することを防ぎ得る。
【0130】
セル4が固体高分子形燃料電池のセルである場合、燃料流路41は、燃料極42に水を供給可能な流路であることが好ましい。これにより、固体高分子形燃料電池のセル4における燃料極42が乾燥し、発電効率が低下することを防ぎ得る。
【0131】
[燃料極42]
燃料極42は、電解質43及び酸素極44と協働することで、燃料流路41から供給された燃料を用いて電子を外部に供給する反応を実現可能なアノードである。燃料極42は、特に限定されず、従来技術の燃料電池の燃料極でよい。セル4が燃料極42を有することにより、燃料流路41から供給された燃料を用いて電子を外部に供給することができる。これにより、セル4は、燃料を用いて発電できる。
【0132】
燃料極42は、燃料を用いて電子を外部に供給する反応を促す触媒を含むことが好ましい。これにより、セル4における発電効率をよりいっそう高めることができる。触媒は、特に限定されず、従来技術の燃料電池の燃料極で用いる触媒でよい。
【0133】
燃料極42は、燃料を拡散可能な拡散構造を含むことが好ましい。これにより、燃料を拡散し、燃料を用いて電子を外部に供給する反応をよりいっそう効率的に行い得る。そして、セル4における発電効率をよりいっそう高めることができる。
【0134】
セル4が固体酸化物型燃料電池のセルである場合、燃料極42は、電解質43を介して酸素極44から酸素イオンを受け取ることが可能であることが好ましい。これにより、酸素極44から負の電荷を有する酸素イオンを受け取り、燃料によって酸素イオンを還元することで電子を外部に供給し得る。セル4が固体酸化物型燃料電池のセルであり、燃料流路41が燃料極42に一酸化炭素を供給可能な流路である場合、燃料極42は、一酸化炭素と酸素イオンとを反応させることが可能であることが好ましい。これにより、一酸化炭素と酸素イオンとを反応させることで電子を外部に供給し得る。
【0135】
セル4がアルカリ電解質形燃料電池のセルである場合、燃料極42は、電解質43を介して酸素極44から水酸化物イオンを受け取ることが可能であることが好ましい。これにより、酸素極44から負の電荷を有する水酸化物イオンを受け取り、燃料によって水酸化物イオンを還元することで電子を外部に供給し得る。
【0136】
セル4がアルカリ電解質形燃料電池のセルである場合、燃料極42は、ベリリウム及び/又はベリリウム合金を含んでもよい。これにより、燃料極42を軽量にし、その耐久性を高め得る。ベリリウムの電気抵抗率は、100℃で55.3[nΩ・m]であり、鉄の電気抵抗率(147[nΩ・m])より低い。したがって、燃料極42は、ベリリウムを含むことにより、燃料極42の電気抵抗を鉄の燃料極より低くし、発電効率を向上し得る。ベリリウム合金についても、同様の効果を期待できる。
【0137】
セル4が溶融炭酸塩型燃料電池のセルである場合、燃料極42は、電解質43を介して酸素極44から炭酸イオンを受け取ることが可能であることが好ましい。これにより、酸素極44から負の電荷を有する炭酸イオンを受け取り、燃料によって炭酸イオンを還元することで電子を外部に供給し得る。
【0138】
セル4がりん酸形燃料電池及び/又は固体高分子形燃料電池のセルである場合、燃料極42は、燃料を還元することで生成した水素イオンを、電解質43を介して酸素極44に供給可能であることが好ましい。これにより、酸素極44に正の電荷を有する水素イオンを供給し、電子を外部に供給し得る。
【0139】
[電解質43]
電解質43は、燃料極42と酸素極44との間におけるイオンの移動を媒介可能な電解質である。電解質43は、特に限定されず、従来技術の燃料電池の電解質でよい。セル4が電解質43を有することにより、燃料極42と酸素極44との間におけるイオンの移動を媒介し、燃料極42が電子を外部に供給するようにし得る。
【0140】
セル4が固体酸化物型燃料電池のセルである場合、電解質43は、イットリア安定化ジルコニア、スカンジア安定化ジルコニア、及びガドリニウムドープセリア等によって例示される酸素イオンの移動を媒介可能な固体酸化物を含むことが好ましい。これにより、固体酸化物によって酸素イオンの移動を媒介し、燃料極42が電子を外部に供給するようにし得る。
【0141】
セル4がアルカリ電解質形燃料電池のセルである場合、電解質43は、水酸化カリウム水溶液等によって例示されるアルカリ性の水溶液を含むことが好ましい。これにより、アルカリ性の水溶液によって水酸化物イオンの移動を媒介し、燃料極42が電子を外部に供給するようにし得る。
【0142】
セル4が溶融炭酸塩型燃料電池のセルである場合、電解質43は、炭酸リチウム及び炭酸ナトリウム等によって例示される炭酸塩の1以上を溶融したものを含むことが好ましい。これにより、溶融した炭酸塩によって炭酸イオンの移動を媒介し、燃料極42が電子を外部に供給するようにし得る。
【0143】
セル4がりん酸形燃料電池のセルである場合、電解質43は、リン酸水溶液を含むことが好ましい。これにより、リン酸水溶液によって水素イオンの移動を媒介し、燃料極42が電子を外部に供給するようにし得る。
【0144】
セル4が固体高分子形燃料電池のセルである場合、電解質43は、イオン伝導性を有する高分子(イオン交換樹脂)を含むことが好ましい。これにより、イオン交換樹脂によって水素イオンの移動を媒介し、燃料極42が電子を外部に供給するようにし得る。イオン交換樹脂は、イオン交換樹脂を膜状にしたイオン交換膜であることが好ましい。これにより、水素イオンの移動距離を短くし、水素イオンがよりいっそう容易に移動し得る。したがって、セル4の発電効率を高め得る。
【0145】
[酸素極44]
酸素極44は、燃料極42及び電解質43と協働することで、酸素流路45から供給された酸素を用いた電気化学反応によって電流を生成可能なカソードである。酸素極44は、特に限定されず、従来技術の燃料電池の酸素極でよい。セル4が酸素極44を有することにより、酸素流路45から供給された酸素を用いた電気化学反応によって電流を生成することができる。これにより、セル4は、燃料を用いて発電できる。
【0146】
酸素極44は、酸素を用いた電気化学反応を促す触媒を含むことが好ましい。これにより、セル4における発電効率をよりいっそう高めることができる。触媒は、特に限定されず、従来技術の燃料電池の酸素極で用いる触媒でよい。
【0147】
酸素極44は、酸素を拡散可能な拡散構造を含むことが好ましい。これにより、酸素を拡散し、酸素を用いた電気化学反応をよりいっそう効率的に行い得る。そして、セル4における発電効率をよりいっそう高めることができる。
【0148】
セル4が固体酸化物型燃料電池のセルである場合、酸素極44は、電解質43を介して燃料極42に酸素イオンを供給可能であることが好ましい。これにより、燃料極42に負の電荷を有する酸素イオンを供給し、電流を生成し得る。
【0149】
セル4がアルカリ電解質形燃料電池のセルである場合、酸素極44は、電解質43を介して燃料極42に水酸化物イオンを供給可能であることが好ましい。これにより、燃料極42に負の電荷を有する水酸化物イオンを供給し、電流を生成し得る。
【0150】
セル4がアルカリ電解質形燃料電池のセルである場合、酸素極44は、ベリリウム及び/又はベリリウム合金を含んでもよい。これにより、酸素極44を軽量にし、その耐久性を高め得る。ベリリウムの電気抵抗率は、100℃で55.3[nΩ・m]であり、鉄の電気抵抗率(147[nΩ・m])より低い。したがって、酸素極44は、ベリリウムを含むことにより、酸素極44の電気抵抗を鉄の酸素極より低くし、発電効率を向上し得る。ベリリウム合金についても、同様の効果を期待できる。
【0151】
セル4が溶融炭酸塩型燃料電池のセルである場合、酸素極44は、電解質43を介して燃料極42に炭酸イオンを供給可能であることが好ましい。これにより、燃料極42に負の電荷を有する炭酸イオンを供給し、電流を生成し得る。
【0152】
セル4がりん酸形燃料電池及び/又は固体高分子形燃料電池のセルである場合、酸素極44は、電解質43を介して燃料極42から水素イオンを受け取ることが可能であることが好ましい。これにより、燃料極42から正の電荷を有する水素イオンを受け取り、電流を生成し得る。
【0153】
[酸素流路45]
酸素流路45は、セル4における電気化学反応を用いた発電において酸化剤として機能する酸素を含む気体の流路である。酸素流路45は、酸素極44と、筐体2、セパレータ3、及び電解質43によって例示される燃料電池1の構成要素の1以上とによって画定される。セル4が酸素流路45を有することにより、酸素極44に酸素を供給できる。
【0154】
酸素流路45は、外部から供給される気体に含まれる酸素を酸素極44に供給可能に構成される。これにより、セル4は、外部から供給される気体に含まれる酸素を用いて、連続的に発電し得る。したがって、一次電池及び/又は二次電池より大きい電力量を連続的に取り出すことが可能な燃料電池1を提供できる。
【0155】
酸素流路45は、発電後の気体を酸素流路45の外部に排出可能に構成されることが好ましい。これにより、発電後の気体が酸素流路45に残り、セル4の発電効率が低下することを防ぎ得る。
【0156】
セル4がアルカリ電解質形燃料電池のセルである場合、酸素流路45は、酸素極44に二酸化炭素を含まない気体を供給可能な流路であることが好ましい。これにより、電解質43に含まれるアルカリ性の水溶液が二酸化炭素と反応し、セル4の発電効率が低下することを防ぎ得る。
【0157】
セル4が溶融炭酸塩型燃料電池のセルである場合、酸素流路45は、酸素極44に二酸化炭素を供給可能な流路であることが好ましい。これにより、溶融炭酸塩型燃料電池の電解質43に炭酸イオンを供給し得る。
【0158】
セル4がりん酸形燃料電池及び/又は固体高分子形燃料電池のセルである場合、酸素流路45は、酸素極44で生じる水を排出可能な流路であることが好ましい。これにより、りん酸形燃料電池及び/又は固体高分子形燃料電池のセル4における酸素極44で生じる水によって発電効率が低下することを防ぎ得る。
【0159】
[燃料]
燃料は、特に限定されず、従来技術の燃料電池の燃料でよい。燃料は、メタン及びメタノール等によって例示される水素を含む化合物及び/又は単体の水素を含むことが好ましい。これにより、燃料極42において水素及び/又は水素を含む化合物を還元し、電解質43に水素イオンを供給し得る。
【0160】
〔電力取出端子〕
燃料電池1は、セル4で発電された電力を取り出し可能な電力取出端子(図示せず)を備えることが好ましい。これにより、セル4で発電された電力を取り出し、各種の装置等で利用し得る。
【0161】
必須の態様ではないが、電力取出端子は、ベリリウム及び/又はベリリウム合金を含むことが好ましい。これにより、電力取出端子を軽量にし、その耐久性を高め得る。また、電力取出端子は、ベリリウムを含むことにより、電力取出端子の電気抵抗を鉄の電力取出端子より低くし、発電効率を向上し得る。ベリリウム合金についても、同様の効果を期待できる。
【0162】
〔その他の構成要素〕
図8は、本実施形態の燃料電池1を斜め上方向からみたときの概略を模式的に示す概略模式図である。必須の態様ではないが、燃料電池1は、燃料流路41に燃料を供給可能な燃料供給部(例えば、図8の符号F)を備えることが好ましい。これにより、燃料流路41に燃料を供給し、連続的に発電し得る。燃料供給部は、特に限定されず、例えば、従来技術の燃料容器を含む燃料供給部でよい。必須の態様ではないが、燃料供給部は、ベリリウム及び/又はベリリウム合金を含むことが好ましい。これにより、燃料供給部を軽量にし、その耐久性を高め得る。
【0163】
必須の態様ではないが、燃料電池1は、酸素流路45に酸素を含む気体を供給可能な酸素供給部(例えば、図8の符号A)を備えることが好ましい。宇宙空間は、実質的に真空であり、酸素を含む気体の取得が難しい。燃料電池1が酸素供給部を備えることにより、宇宙空間であっても、酸素流路45に酸素を含む気体を供給し得る。酸素供給部は、特に限定されず、例えば、従来技術の酸素容器を含む酸素供給部でよい。
【0164】
必須の態様ではないが、燃料電池1は、燃料流路41に供給する燃料をセル4での発電に適した態様に改質する燃料改質器(図示せず)を備えることが好ましい。これにより、改質された燃料によってセル4での発電効率を高め得る。
【0165】
必須の態様ではないが、燃料電池1は、酸素流路45に供給する酸素を含む気体をセル4での発電に適した態様に改質する酸素改質器(図示せず)を備えることが好ましい。これにより、改質された気体によってセル4での発電効率を高め得る。
【0166】
宇宙空間で利用される燃料電池は、太陽光を浴びる場合に高温となり得る。また、宇宙空間で利用される燃料電池は、太陽光を浴びない場合に低温となり得る。したがって、宇宙空間で利用される燃料電池は、低温と高温との両方を含む広い温度範囲で利用され得る。
【0167】
燃料電池は、セルの温度によって発電効率が変化することが知られている。燃料電池が広い温度範囲で利用され得る場合、セルの温度によって発電効率が変化し、低下し得る。
【0168】
必須の態様ではないが、燃料電池1は、セル4等によって例示される燃料電池1の構成要素の温度を制御する温度制御部(例えば、図8の符号C)を備えることが好ましい。これにより、燃料電池1が宇宙空間で利用される場合であっても、燃料電池1の構成要素の温度を発電効率が高い所定の範囲に制御し得る。したがって、燃料電池1の発電効率を高め得る。
【0169】
必須の態様ではないが、燃料電池1は、発電後の燃料を排気可能な排気部(例えば、図8の符号E)を備えることが好ましい。これにより、発電後の燃料を排気し、新たな燃料をセル4に供給し得る。
【0170】
<使用例>
本実施形態における燃料電池1の使用例を説明する。
【0171】
〔宇宙空間へ移動〕
燃料電池1を利用する利用者は、ロケット等を用いて燃料電池1及び燃料電池1が発電する電力を利用する装置等(例えば、惑星及び/又は衛星を探査可能な探査車、惑星、衛星及び/又は小天体を探査可能な探査機、並びに人工衛星)を打ち上げ、宇宙空間へ移動させる。筐体2及び/又はセパレータ3がベリリウム及び/又はベリリウム合金を含むことにより、ロケットが打ち上げ可能な重量が制限されていても、燃料電池1及び装置等を宇宙空間へ移動させることができる。
【0172】
〔温度制御〕
燃料電池1は、温度制御部を用いて、セル4の温度を発電効率が高い所定の範囲に制御する。これにより、宇宙空間にある燃料電池1の温度が低温及び/又は高温であっても、セル4の温度を発電効率が高い所定の範囲に制御できる。
【0173】
〔燃料及び酸素を供給〕
燃料電池1は、燃料流路41に燃料を供給する。燃料電池1は、酸素流路45に酸素を含む気体を供給する。これにより、燃料極42、電解質43、及び酸素極44で燃料と酸素とを用いた電気化学反応が起こり、電力が発電される。
【0174】
〔電力を利用〕
燃料電池1が発電する電力を利用する利用する装置等は、電力取出端子から発電された電力を取り出し、利用する。筐体2及び/又はセパレータ3がベリリウム及び/又はベリリウム合金を含むことにより、温度変化による変形やデブリによる破損等を防ぎ、長期間に渡って装置に電力を提供し得る。
【0175】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限るものではない。また、上述の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したものに過ぎず、本発明による効果は、上述の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。また、上述の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0176】
1 燃料電池
2 筐体
3 セパレータ
4 セル
41 燃料流路
42 燃料極
43 電解質
44 酸素極
45 酸素流路
A 空気供給部
E 排気部
F 燃料供給部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8