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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166884
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】スクリュー圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/16 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
F04C18/16 L
F04C18/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072268
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 豪
(72)【発明者】
【氏名】千葉 紘太郎
(72)【発明者】
【氏名】永田 修平
(72)【発明者】
【氏名】頼金 茂幸
(72)【発明者】
【氏名】森田 謙次
(72)【発明者】
【氏名】梶江 雄太
(57)【要約】      (修正有)
【課題】作動媒体の加速損失を低減させて、高いエネルギー効率で作動媒体を圧縮し得るスクリュー圧縮機を提供する。
【解決手段】吸込口から吸い込んだ作動媒体を圧縮して吐出口から吐出するスクリュー圧縮機において、互いに噛み合いながら回転する雄ロータ及び雌ロータと、雄ロータ及び雌ロータが収納され、雄ロータ及び雌ロータと共に作動媒体を圧縮するための作動室を形成するボアが設けられたケーシングと、雄ロータ及び雌ロータの少なくとも一方を回転駆動する駆動部と、作動媒体を作動室に吸い込むための吸込ポートを形成し、作動室が所定容量となるときに当該作動室を閉止する作動室閉止部と、吸込口及び吸込ポート間を連通する吸込空間とを設け、吸込ポートに対して雄ロータ及び雌ロータの反対側の雄ロータの軸部及び雌ロータの軸部間に、吸込空間及び吸込ポート間を連通する開放空間を設けるようにした。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口から吸い込んだ作動媒体を圧縮して吐出口から吐出するスクリュー圧縮機において、
互いに噛み合いながら回転する雄ロータ及び雌ロータと、
前記雄ロータ及び前記雌ロータが収納され、前記雄ロータ及び前記雌ロータと共に前記作動媒体を圧縮するための作動室を形成するボアが設けられたケーシングと、
前記雄ロータ及び前記雌ロータの少なくとも一方を回転駆動する駆動部と、
前記作動媒体を前記作動室に吸い込むための吸込ポートを形成し、前記作動室が所定容量となるときに当該作動室を閉止する作動室閉止部と、
前記吸込口及び前記吸込ポート間を連通する吸込空間と
を備え、
前記吸込ポートに対して前記雄ロータ及び雌ロータの反対側の前記雄ロータの軸部及び前記雌ロータの軸部間に、前記吸込空間及び前記吸込ポート間を連通する開放空間が設けられた
ことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項2】
前記雄ロータ及び前記雌ロータは、
それぞれ螺旋状に延在する複数の歯が設けられた歯部を有し、それぞれ歯部の歯が噛み合った状態で前記ケーシングの前記ボアに収納され、
前記吸込ポートは、
前記雄ロータ及び前記雌ロータの軸方向における、前記雄ロータ及び前記雌ロータを介して前記吐出口と反対側の前記雄ロータの前記歯部及び前記雌ロータの前記歯部の端面を含む平面上に設けられた
ことを特徴とする請求項1に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項3】
前記吸込空間は、
前記雄ロータ側と、前記雌ロータ側とに分離して設けられ、
前記吸込口から吸い込まれ、前記吸込空間における前記雄ロータの前記軸部の外側を経由して流動する前記作動媒体と、前記吸込口から吸い込まれ、前記雌ロータの前記軸部の外側を経由して流動する前記作動媒体との双方が流入するように前記開放空間が形成された
ことを特徴とする請求項1に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項4】
前記開放空間は、
前記雄ロータ側と、前記雌ロータ側とに分けて設けられ、
前記吸込空間における前記雄ロータの前記軸部の外側を経由して流動する前記作動媒体が前記雄ロータ側の前記開放空間に流入し、前記吸込空間における前記雌ロータの前記軸部の外側を経由して流動する前記作動媒体が前記雌ロータ側の前記開放空間に流入するよう形成された
ことを特徴とする請求項1に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項5】
前記開放空間は、
前記雄ロータ側と、前記雌ロータ側とに分けて設けられ、
前記雄ロータ側の前記開放空間と、前記雌ロータ側の前記開放空間との双方が、前記雄ロータ及び前記雌ロータのロータ軸の方向から見て前記ボアの内壁面と滑らかに接合する曲面状に形成された
ことを特徴とする請求項1に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項6】
前記作動室閉止部は、
前記雄ロータの軸部及び前記雌ロータの軸部間に設けられ、前記開放空間を前記雄ロータ側及び前記雌ロータ側に分離し、
前記雄ロータの前記軸部との対向部位に、当該軸部よりも一定程度大きい径を有する円弧状の第1の窪みが形成されると共に、前記雌ロータの前記軸部との対向部位に、当該雌ロータと同軸でかつ当該軸部よりも一定程度大きい径を有する円弧状の第2の窪みが形成された
ことを特徴とする請求項1に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項7】
前記第1の窪みは、前記雄ロータのロータ軸の中心を中心とする円弧状に形成され、
前記第2の窪みは、前記雌ロータのロータ軸の中心を中心とする円弧状に形成された
ことを特徴とする請求項6に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項8】
前記第1及び第2の窪みの少なくとも一方は、
対向する前記雄ロータの軸部又は前記雌ロータの前記軸部の回転方向に進むに従って曲率が大きくなるよう形成された
ことを特徴とする請求項6又は7に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項9】
前記第1及び第2の窪みの半径は、
前記雄ロータ及び前記雌ロータの歯低半径よりも小さく、かつ前記雄ロータ及び前記雌ロータの前記軸部の半径よりも大きく選定された
ことを特徴とする請求項6に記載のスクリュー圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮動作中に油や水等の冷却媒体を注入する注入式のスクリュー圧縮機のほか、何も注入しないドライ式のスクリュー圧縮機など、種々のスクリュー圧縮機に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリュー圧縮機に関する発明として、特許文献1に開示されたスクリュー圧縮機が知られている。このスクリュー圧縮機は、ロータケーシングと、本体ケーシングとを連結する連結部を設け、吸気口を本体ケーシングの側部に配置すると共に、吸気ポートをスクリューロータの軸方向のロータケーシングの端部に配置した軸方向吸気ポートであるようにスクリュー圧縮機を構成したものである。
【0003】
このような構成によれば、連結部を吸込空間に配置してロータケーシングと本体ケーシングとを連結しているため、製造コストを大幅に増加させることなく、スクリュー圧縮機の作動時にロータケーシングが大きく振動することを防止することができる。すなわち、スクリュー圧縮機の作動時の振動を低減して性能低下及び破損を防止することができ、振動対策として本体ケーシングの厚みを増加させる必要性を排除することができる。
【0004】
この結果、かかるスクリュー圧縮機によれば、部品を追加することにより本体ケーシングの剛性を高める必要性を排除することができるため、製造コストを大幅に増加させることなく、スクリュー圧縮機の作動時の振動を低減し、性能低下及び破損を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-8509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スクリュー圧縮機は、空気圧縮機や冷凍空調用圧縮機として広く普及している。これに伴って、スクリュー圧縮機は、省エネ化が強く求められており、高エネルギー効率、大風量(高能力)であることが益々重要になってきている。この場合において、注入式のスクリュー圧縮機では、低コスト化を図るために小形化を実現するにあったては、作動媒体を作動室に吸い込む速度の高速化が避けられない。
【0007】
一方で、ドライ式のスクリュー圧縮機は、作動室内での冷却媒体によるシール効果を期待できないことから、作動室内での作動媒体の漏れ損失を低減させるために毎分で1万回転を超える高速回転で運転する。すなわち、高エネルギー効率化の観点では、高速運転になればなるほど作動室に流入する作動媒体が急加速されることになるため、作動媒体の作動室への吸込をスムーズに行うことができないと作動媒体の加速損失が増大するという問題がある。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、作動媒体の加速損失を低減させて、高いエネルギー効率で作動媒体を圧縮し得るスクリュー圧縮機を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明においては、吸込口から吸い込んだ作動媒体を圧縮して吐出口から吐出するスクリュー圧縮機において、互いに噛み合いながら回転する雄ロータ及び雌ロータと、前記雄ロータ及び前記雌ロータが収納され、前記雄ロータ及び前記雌ロータと共に前記作動媒体を圧縮するための作動室を形成するボアが設けられたケーシングと、前記雄ロータ及び前記雌ロータの少なくとも一方を回転駆動する駆動部と、前記作動媒体を前記作動室に吸い込むための吸込ポートを形成し、前記作動室が所定容量となるときに当該作動室を閉止する作動室閉止部と、前記吸込口及び前記吸込ポート間を連通する吸込空間とを設け、前記吸込ポートに対して前記雄ロータ及び雌ロータの反対側の前記雄ロータの軸部及び前記雌ロータの軸部間に、前記吸込空間及び前記吸込ポート間を連通する開放空間を設けるようにした。
【0010】
本発明のスクリュー圧縮機によれば、吸込口から吸い込まれた作動媒体の流動抵抗が少なく、作動室への作動媒体の吸い込みをスムーズに行わせることができる。これにより雄ロータ及び雌ロータの高速回転時には、作動媒体が作動室に流入する際にも減速されないため作動媒体を加速するためのエネルギーを抑制してスクリュー圧縮機のエネルギー効率を向上させることができる一方で、雄ロータ及び雌ロータの低速回転時にも、作動媒体の吸込抵抗の低減に伴って作動媒体の流量を増加させることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作動媒体の加速損失を低減させて、高いエネルギー効率で作動媒体を圧縮し得るスクリュー圧縮機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施の形態によるスクリュー圧縮機の構成を示す断面図である。
図2】第1の実施の形態によるスクリュー圧縮機の構成を示す断面図(図1のA-A矢視図)である。
図3】第1の実施の形態によるスクリュー圧縮機の構成を示す断面図(図1のB-B矢視図)である。
図4】第1の実施の形態によるスクリュー圧縮機の構成を示す断面図(図1のC-C矢視図)である。
図5】従来のスクリュー圧縮機の構成例を示す断面図である。
図6図2に対応する従来のスクリュー圧縮機の構成を示す断面図である。
図7図1のC-C矢視図に相当する第2の実施の形態によるスクリュー圧縮機の構成を示す断面図である。
図8図1のC-C矢視図に相当する第3の実施の形態によるスクリュー圧縮機の構成を示す断面図である。
図9図1のC-C矢視図に相当する第4の実施の形態によるスクリュー圧縮機の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0014】
(1)第1の実施の形態
図1図4は、第1の実施の形態によるスクリュー圧縮機を示す。図1図2におけるD-D矢視図、図2図1におけるA-A矢視図、図3図1及び図2におけるB-B矢視図、図4図1及び図2におけるC-C矢視図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施の形態のスクリュー圧縮機1は、スクリューロータである雄ロータ2及び雌ロータ3と、雄ロータ2及び雌ロータ3を収納するケーシング4とを備えて構成される。
【0016】
雄ロータ2は、螺旋状に延在する複数(本実施の形態においては4つ)の歯2AA(図3及び図4)が設けられた歯部2Aと、歯部2Aのロータ軸方向の一端側(図1及び図2の左側)に接続された吸込側軸部2Bと、歯部2Aのロータ軸方向の他端側(図1及び図2の右側)に接続された吐出側軸部2Cとを備えて構成される。雄ロータ2の吸込側軸部2Bは吸込側軸受5により回転自在に支持され、雄ロータ2の吐出側軸部2Cは吐出側軸受7により回転自在に支持されている。
【0017】
同様に、雌ロータ3は、螺旋状に延在する複数(本実施の形態においては6つ)の歯3AA(図3及び図4)が設けられた歯部3Aと、歯部3Aのロータ軸方向の一端側に接続された吸込側軸部3Bと、歯部3Aのロータ軸方向の他端側に接続された吐出側軸部3Cとを備えて構成される。雌ロータ3の吸込側軸部3Bは吸込側軸受6により回転自在に支持され、雌ロータ3の吐出側軸部3Cは、吐出側軸受8により回転自在に支持されている。
【0018】
雄ロータ2の吸込側軸部2Bは、ケーシング4を貫通して駆動部9を構成するモータ9Aの回転軸9Bに連結されている。これによりモータ9Aを駆動させることによって雄ロータ2をモータ9Aの回転軸9Bと一体に回転駆動させることができ、さらには雄ロータ2の歯部2Aと雌ロータ3の歯部3Aとの噛み合いによって雌ロータ3も雄ロータ2と一体に回転駆動させることができる。ただし、スクリュー圧縮機1の駆動に当たっては、雄ロータ2及び雌ロータ3のいずれを駆動させるようにしてもよい。また雄ロータ2及び雌ロータ3を同期させて双方をモータにより駆動させるようにしてもよい。
【0019】
ケーシング4は、メインケーシング10と、メインケーシング10のロータ軸方向の他端側(図1及び図2の右側)に連結されたDケーシング11とから構成される。Dケーシング11には、雄ロータ2の歯部2A及び雌ロータ3の歯部3Aよりもロータ径方向の外側(図1の下側)に位置する吐出口11Aと、吐出口11A及び後述の作動室間を接続するように形成された吐出経路11Bとが形成される。
【0020】
またメインケーシング10には、図3に示すように、雄ロータ2の歯部2A及び雌ロータ3の歯部3Aを収納するボア10Aが形成される。ボア10Aは、雄ロータ2の歯部2A及び雌ロータ3の歯部3Aを噛み合った状態で収納する2つの円筒状の穴が部分的に重なった形状を有する空間である。
【0021】
ボア10Aの内壁面と、雄ロータ2の歯溝2AB(図3及び図4)及び雌ロータ3の歯溝3AB(図3及び図4)とにより作動室が形成される。作動室は、ロータ軸方向の一方側(図1及び図2の左側)から他方側(図1及び図2の右側)に行くに従って容積が徐々に減少するよう形成される。これにより吸込口12から吸い込まれた空気等の作動媒体が作動室において徐々に圧縮されて吐出経路11Bを介して吐出口11Aから吐出される。
【0022】
吸込口12は、メインケーシング10における雄ロータ2の歯部2A及び雌ロータ3の歯部3Aよりもロータ径方向の外側(図1の上側)に形成される。吸込口12は、図1及び図2に示すように、吸込空間13を介して吸込ポートと連通しており、吸込口12から吸い込まれた作動媒体がこれら吸込空間13及び吸込ポートを順次経由して作動室に吸い込まれる。なお、吸込ポートは、ボア10A内における雄ロータ2の歯部2Aのロータ軸方向の一端側の端面と、雌ロータ3の歯部3Aのロータ軸方向の一端側の端面とを含む、雄ロータ2及び雌ロータ3の軸方向と垂直な平面上に設けられたポートである。
【0023】
吸込ポートには、作動室が最大容量となったときに雄ロータ2の歯部2Aの一端側の端面と、雌ロータ3の歯部3Aの一端側の端面とを閉じる(作動室を閉止する)ように板状の作動室閉止部材14が配置されている。実際上、作動室閉止部材14は、雄ロータ2の歯部2Aのロータ軸方向の一端側の端面や、雌ロータ3の歯部3Aのロータ軸方向の一端側の端面と対向する一面(以下、これをロータ対向面と呼ぶ)14A側が吸込ポート上に位置するように、雄ロータ2の吸込側軸部2B及び雌ロータ3の吸込側軸部3B間に配置される。
【0024】
また吸込ポートに対して雄ロータ2及び雌ロータ3の反対側で、作動室閉止部材14における雄ロータ2の吸込側軸部2Bとの対向部位には、当該吸込側軸部2Bと同軸で(雄ロータ2のロータ軸の中心を中心とし)、かつ当該吸込側軸部2Bよりも一定程度大きい径(半径)を有する円弧状の窪み14Cが形成されている。これにより雄ロータ2の吸込側軸部2Bと作動室閉止部材14の窪み14Cとの間に一定大きさの空間(以下、これを雄ロータ側開放空間と呼ぶ)15Aが形成されている。
【0025】
同様に、作動室閉止部材14における雌ロータ3の吸込側軸部3Bとの対向部位には、当該吸込側軸部3Bと同軸で(雌ロータ3のロータ軸の中心を中心とし)、かつ当該吸込側軸部3Bよりも一定程度大きい径を有する円弧状の窪み14Dが形成されている。これにより雌ロータ3の吸込側軸部3Bと作動室閉止部材14の窪み14Dとの間に一定大きさの空間(以下、これを雌ロータ側開放空間と呼ぶ)15Bが形成されている。
【0026】
この場合、作動室閉止部材14の窪み14C,14Dの径は、作動室を閉止できるように、雄ロータ2や雌ロータ3の歯低半径よりも小さく、かつ雄ロータ2の吸込側軸部2Bや雌ロータ3の吸込側軸部3Bの半径よりも大きく選定されている。
【0027】
さらに作動室閉止部材14のロータ対向面14Aと反対側の他面(以下、これを反ロータ対向面と呼ぶ)14B側には、雄ロータ2の吸込側軸部2Bと、雌ロータ3の吸込側軸部3Bとの間に位置し、吸込空間13と、雄ロータ側開放空間15A及び雌ロータ側開放空間15Bの双方とそれぞれ連通する開放空間(以下、これをモータ側開放空間と呼ぶ)15Cが設けられている。
【0028】
なお以下においては、適宜、このモータ側開放空間15Cと、雄ロータ側開放空間15A及び雌ロータ側開放空間15Bとを合わせて開放空間15と呼ぶ。この開放空間15は、雄ロータ2の吸込側軸部2Bよりも外側に存在する吸込空間13と、雌ロータ3の吸込側軸部3Bよりも外側に存在する吸込空間13とを吸込ポートと連通する区間である。
【0029】
ここで、図2及び図4との対応部分に同一符号にダッシュ(「´」)を付して示す図5及び図6は、それぞれ従来のスクリュー圧縮機1´における図2図4に対応する部分の構造を示す。この図5及び図6からも明らかなように、従来のスクリュー圧縮機1´では、本実施の形態の作動室閉止部材14に対応する作動室閉止部16のロータ対向面16Aの反対側に本実施の形態の開放空間15Cと同様の空間が設けられておらず、この開放空間15Cに該当する部分を埋め尽くすように作動室閉止部16がメインケーシング10´と一体に形成されている。
【0030】
また、かかる従来のスクリュー圧縮機1´では、作動室閉止部16における雄ロータ2´の吸込側軸部2B´との対向部位に当該吸込側軸部2B´と同軸に円弧状の窪み16Bが形成されてはいるものの、この窪み16Bの径は、雄ロータ2の吸込側軸部2B´の回転を妨げない程度に選定されている。このため作動室閉止部16及び雄ロータ2´の吸込側軸部2B´間には、微小な隙間が形成されているだけで、本実施の形態のスクリュー圧縮機1の雄ロータ側開放空間15A(図4)のような空間は存在していない。
【0031】
同様に、従来のスクリュー圧縮機1´では、作動室閉止部16における雌ロータ3の吸込側軸部3Bとの対向部位に当該吸込側軸部3B´と同軸に円弧状の窪み16Cが形成されてはいるものの、この窪み16Cの径は、雌ロータ3´の吸込側軸部3B´の回転を妨げない程度に選定されている。このため作動室閉止部16及び雌ロータ3´の吸込側軸部3B´間には、微小な隙間が形成されているだけで、本実施の形態のスクリュー圧縮機1の雌ロータ側開放空間15B(図4)のような空間は存在していない。
【0032】
このような構成を有する従来のスクリュー圧縮機1´では、吸込口から吸い込まれた作動媒体が、雄ロータ2´の吸込側軸部2B´よりも外側に存在する吸込空間13´と、雌ロータ3´の吸込側軸部3B´よりも外側に存在する吸込空間13´とをそれぞれ経由してスクリュー圧縮機1´内に流入するが、これらの吸込空間13´を流動する作動媒体の流れが作動室閉止部16によりせき止められるため、吸込空間13´内での流動抵抗が増大して作動媒体の作動室への吸込が阻害される。
【0033】
一方、本実施の形態のスクリュー圧縮機1では、従来のスクリュー圧縮機1´と同様に、吸込口12から吸い込まれた作動媒体が、吸込空間13のうちの雄ロータ2の吸込側軸部2Bよりも外側に存在する空間部分と、雌ロータ3の吸込側軸部3Bよりも外側に存在する空間部分とをそれぞれ経由してスクリュー圧縮機1内に流入する。この場合において、吸込空間13のこれらの空間部分をそれぞれ流動する作動媒体が雄ロータ側開放空間15A、雌ロータ側開放空間15B及びモータ側開放空間15Cからなる開放空間15に流れ込むため、雄ロータ2の吸込側軸部2Bよりも外側に存在する吸込空間13の空間部分と、雌ロータ3の吸込側軸部3Bよりも外側に存在する吸込空間13の空間部分とをそれぞれ経由してスクリュー圧縮機1内に流入する作動媒体の流動が作動室閉止部材14によってせき止められることがない。
【0034】
そして雄ロータ2の吸込側軸部2Bよりも外側に存在する吸込空間13の空間部分を流動してきた作動媒体の一部は、作動室閉止部材14の雄ロータ2側の側面に衝突した後に、作動室閉止部材14の窪み14Cと雄ロータ2の吸込側軸部2Bとの間の雄ロータ側開放空間15Aを経由して、雄ロータ2の吸込側軸部2Bの周りを当該吸込側軸部2Bの回転方向(図4において矢印aで示す回転方向)と同じ方向に回転するように吸込空間13及び開放空間15内を流動しながらやがて吸込ポートを介して作動室に吸い込まれる。
【0035】
また残りの作動媒体は、雌ロータ3の吸込側軸部3Bよりも外側に存在する吸込空間13の空間部分を経由して流動してきた作動媒体とモータ側開放空間15Cにおいて衝突した後に、雄ロータ2の吸込側軸部2Bの周りを当該吸込側軸部2Bの回転方向と同じ方向に回転するように吸込空間13及び開放空間15内を流動しながらやがて吸込ポートを介して作動室に吸い込まれる。
【0036】
同様に、雌ロータ3の吸込側軸部3Bよりも外側に存在する吸込空間13の空間部分を流動してきた作動媒体の一部は、作動室閉止部材14の雌ロータ3側の側面に衝突した後に、作動室閉止部材14の窪み14Dと雌ロータ3の吸込側軸部3Bとの間の雌ロータ側開放空間15Bを経由して、雌ロータ3の吸込側軸部3Bの周りを当該吸込側軸部3Bの回転方向(図4において矢印bで示す方向)と同じ方向に回転するように吸込空間13及び開放空間15内を流動しながらやがて吸込ポートを介して作動室に吸い込まれる。
【0037】
また残りの作動媒体は、雄ロータ2の吸込側軸部2Bよりも外側に存在する吸込空間13の空間部分を経由して流動してきた作動媒体とモータ側開放空間15Cにおいて衝突した後に、雌ロータ3の吸込側軸部3Bの周りを当該吸込側軸部3Bの回転方向と同じ方向に回転するように吸込空間13及び開放空間15内を流動しながらやがて吸込ポートを介して作動室に吸い込まれる。
【0038】
よって、本実施の形態のスクリュー圧縮機1によれば、雄ロータ側開放空間15A、雌ロータ側開放空間15B及びモータ側開放空間15Cからなる開放空間15を設けた分、従来のスクリュー圧縮機1´に比べて吸込口12から吸い込まれた作動媒体の流動抵抗が少なく、作動室への作動媒体の吸い込みがスムーズに行われることになる。
【0039】
これにより雄ロータ2及び雌ロータ3の高速回転時には、作動媒体が作動室に流入する際にも減速されないため作動媒体を加速するためのエネルギーを抑制してスクリュー圧縮機のエネルギー効率を向上させることができる一方で、雄ロータ2及び雌ロータ3の低速回転時にも、作動媒体の吸込抵抗の低減に伴って作動媒体の流量を増加させることが可能となる。従って、本スクリュー圧縮機1によれば、作動媒体の加速損失を低減させて、高いエネルギー効率で作動媒体を圧縮することができる。
【0040】
(2)第2の実施の形態
図4との対応部分に同一符号又は同一符号に添え字「X」を付して示す図7は、第2の実施の形態によるスクリュー圧縮機の一部構成を示ものであり、図1のC-C矢視図に対応する。本実施の形態のスクリュー圧縮機は、第1の実施の形態の作動室閉止部材14(図1図2図4)に代えて、図6について上述した従来の作動室閉止部16と同じ位置に当該作動室閉止部16と同じ大きさの作動室閉止部20がメインケーシング10Xと一体形成されている点を除いて第1の実施の形態のスクリュー圧縮機1と同様に構成されている。
【0041】
この場合、本実施の形態のスクリュー圧縮機の作動室閉止部20には、ロータ軸方向のモータ9A(図1)側の一端部からロータ対向面(雄ロータ2の歯部2Aの端部や雌ロータ3の歯部3Aと対向する面)の近傍にまで至るように雄ロータ2と対向する側部及び雌ロータ3と対向する側部をそれぞれ削ることにより雄ロータ側凹部20A及び雌ロータ側凹部20Bが形成されている。また雄ロータ側凹部20A及び雌ロータ側凹部20Bは、雄ロータ2及び雌ロータ3のロータ軸の方向から見てそれぞれボア10AXの内壁面と滑らかに接合する曲線状に形成されている。
【0042】
そして、このように作動室閉止部20に雄ロータ側凹部20A及び雌ロータ側凹部20Bを形成することにより、雄ロータ側凹部20A及び雌ロータ側凹部20Bを隔離する作動室閉止部20の隔離壁20Cと、雄ロータ2の吸込側軸部2Bとの間に雄ロータ側凹部20Aと同形状の第1の雄ロータ側開放空間21Aが形成されると共に、かかる隔離壁20Cと、雌ロータ3の吸込側軸部3Bとの間に雌ロータ側凹部20Bと同形状の第1の雌ロータ側開放空間22Aが形成されている。
【0043】
また作動室閉止部20には、ロータ対向面側における雄ロータ2の吸込側軸部2Bとの対向部位に、雄ロータ2の吸込側軸部2Bと同軸で、かつ当該吸込側軸部2Bよりも一定程度大きい径を有する円弧状の窪み20Dが形成されている。これにより雄ロータ2の吸込側軸部2Bと作動室閉止部20との間に第1の雄ロータ側開放空間21Aと連通し、当該第1の雄ロータ側開放空間21Aと共に第1の開放空間21を構成する一定大きさの第2の雄ロータ側開放空間21Bが形成されている。
【0044】
同様に、作動室閉止部20には、ロータ対向面側における雌ロータ3の吸込側軸部3Bとの対向部位に、雌ロータ3の吸込側軸部3Bと同軸で、かつ当該吸込側軸部3Bよりも一定程度大きい径を有する円弧状の窪み20Eが形成されている。これにより雌ロータ3の吸込側軸部3Bと作動室閉止部20との間に第2の雌ロータ側開放空間22Aと連通し、当該第1の雌ロータ側開放空間22Aと共に第2の開放空間22を構成する一定大きさの第2の雌ロータ側開放空間22Bが形成されている。
【0045】
この場合、作動室閉止部20の窪み20D,20Eの径は、作動室を閉止できるように、雄ロータ2や雌ロータ3の歯低半径よりも小さく、かつ雄ロータ2の吸込側軸部2Bや雌ロータ3の吸込側軸部3Bの半径よりも大きく選定されている。
【0046】
以上の構成を有する本実施の形態のスクリュー圧縮機では、雄ロータ2の吸込側軸部2Bよりも外側に存在する吸込空間13(図1及び図2)の空間部分を流動してきた作動媒体が、作動室閉止部20の雄ロータ側凹部20Aの壁面に沿って、雄ロータ2の吸込側軸部2Bの周りを当該吸込側軸部2Bの回転方向(矢印aで示す回転方向)と同じ方向に回転するように吸込空間13及び第1の開放空間21内を流動しながらやがて吸込ポートを介して作動室に吸い込まれる。
【0047】
また雄ロータ2の吸込側軸部2Bよりも外側に存在する吸込空間13の空間部分を流動してきた作動媒体の一部は、作動室閉止部20のロータ対向面側の側壁に衝突するものの、その後、作動室閉止部20の第2の雄ロータ側開放空間21Bを経由して、雄ロータ2の吸込側軸部2Bの周りを当該吸込側軸部2Bの回転方向と同じ方向に回転するように吸込空間13及び第1の開放空間21内を流動しながらやがて吸込ポートを介して作動室に吸い込まれる。
【0048】
同様に、本スクリュー圧縮機では、雌ロータ3の吸込側軸部3Bよりも外側に存在する吸込空間13(図1及び図2)の空間部分を流動してきた作動媒体が、作動室閉止部20の雌ロータ側凹部20Bの壁面に沿って、雌ロータ3の吸込側軸部3Bの周りを当該吸込側軸部3Bの回転方向(矢印bで示す回転方向)と同じ方向に回転するように吸込空間13及び第2の開放空間22内を流動しながらやがて吸込ポートを介して作動室に吸い込まれる。
【0049】
また雌ロータ3の吸込側軸部3Bよりも外側に存在する吸込空間13の空間部分を流動してきた作動媒体の一部は、作動室閉止部20のロータ対向面側の側壁に衝突するものの、その後、作動室閉止部20の第2の雌ロータ側開放空間22Bを経由して、雌ロータ3の吸込側軸部3Bの周りを当該吸込側軸部3Bの回転方向と同じ方向に回転するように吸込空間13及び第2の開放空間22内を流動しながらやがて吸込ポートを介して作動室に吸い込まれる。
【0050】
このように本実施の形態のスクリュー圧縮機では、第1の開放空間21と第2の開放空間22とを分離した構成としているため、雄ロータ2や雌ロータ3の回転に伴って吸込空間13内等を流動する作動媒体を整流する効果を発揮する。特に、雄ロータ2や雌ロータ3の高速回転時にはこの整流効果が有効であり、低速運転比率の少ないスクリュー圧縮機の場合では吸込抵抗の効果が高い。また本スクリュー圧縮機では、作動室閉止部20の雄ロータ側凹部20A及び雌ロータ側凹部20Bがそれぞれボア10AXの内壁面と滑らかに接合する曲線状に形成されているため、吸込空間13内等で流動する作動媒体の流れを一層乱さない効果を発揮する。
【0051】
よって、本実施の形態のスクリュー圧縮機によれば、従来のスクリュー圧縮機に比べて吸込口12(図1)から吸い込まれた作動媒体の流動抵抗が少なく、作動室への作動媒体の吸い込みがスムーズに行われることになる。これにより雄ロータ2及び雌ロータ3の高速回転時には、作動媒体が作動室に流入する際にも減速されないため作動媒体を加速するためのエネルギーを抑制してスクリュー圧縮機のエネルギー効率を向上させることができ、雄ロータ2及び雌ロータ3の低速回転時にも、作動媒体の吸込抵抗の低減に伴って作動媒体の流量を増加させることが可能となる。
【0052】
(3)第3の実施の形態
図4との対応部分に同一符号又は同一符号に添え字「Y」を付して示す図8は、第3の実施の形態によるスクリュー圧縮機の一部構成を示ものであり、図1のC-C矢視図に対応する。本実施の形態のスクリュー圧縮機は、作動室閉止部30の構成が異なる点を除いて第2の実施の形態のスクリュー圧縮機と同様に構成されている。
【0053】
実際上、本実施の形態のスクリュー圧縮機では、図6について上述した従来の作動室閉止部16と同じ位置に、当該作動室閉止部16と同じ大きさの作動室閉止部30がメインケーシング10Yと一体に形成されている。
【0054】
この作動室閉止部30には、ロータ軸方向のモータ9A(図1)側の端部からロータ対向面(雄ロータ2の歯部2Aの端部や雌ロータ3の歯部3Aと対向する面)の近傍にまで至るように雄ロータ2と対向する側部及び雌ロータ3と対向する側部にそれぞれ雄ロータ側凹部30A及び雌ロータ側凹部30Bが形成されている。
【0055】
そして、このように作動室閉止部30に雄ロータ側凹部30A及び雌ロータ側凹部30Bを形成することにより、雄ロータ側凹部30A及び雌ロータ側凹部30Bを隔離する作動室閉止部30の隔離壁30Cと、雄ロータ2の吸込側軸部2Bとの間に雄ロータ側凹部30Aと同形状の第1の雄ロータ側開放空間31Aが形成されると共に、かかる隔離壁30Cと、雌ロータ3の吸込側軸部3Bとの間に雌ロータ側凹部30Bと同形状の第1の雌ロータ側開放空間32Aが形成されている。
【0056】
この場合、雄ロータ側凹部30Aは、その側面が、後述のように第1の雄ロータ側開放空間31Aに流入する作動媒体の当該第1の雄ロータ側開放空間31Aへの入口側から出口側に進むに従って曲率が大きくなる円弧状に形成されており、これにより第1の雄ロータ側開放空間31Aの曲率が、雄ロータ2の吸込側軸部2Bの回転方向に進むに従って大きくなるように設計されている。
【0057】
同様に、雌ロータ側凹部30Bは、その側面が、後述のように第1の雌ロータ側開放空間32Aに流入する作動媒体の当該第1の雌ロータ側開放空間32Aへの入口側から出口側に進むに従って曲率が大きくなる円弧状に形成されており、これにより第1の雌ロータ側開放空間32Aの曲率が、雌ロータ3の吸込側軸部3Bの回転方向に進むに従って大きくなるように設計されている。
【0058】
また作動室閉止部30には、ロータ対向面側における雄ロータ2の吸込側軸部2Bとの対向部位に、雄ロータ2の吸込側軸部2Bと同軸で、かつ当該吸込側軸部2Bよりも一定程度大きい径を有する円弧状の窪み30Dが形成されている。これにより雄ロータ2の吸込側軸部2Bと作動室閉止部30との間に第1の雄ロータ側開放空間31Aと連通し、当該第1の雄ロータ側開放空間31Aと共に第1の開放空間31を構成する一定大きさの第2の雄ロータ側開放空間31Bが形成されている。
【0059】
同様に、作動室閉止部30には、ロータ対向面側における雌ロータ3の吸込側軸部3Bとの対向部位に、雌ロータ3の吸込側軸部3Bと同軸で、かつ当該吸込側軸部3Bよりも一定程度大きい径を有する円弧状の窪み30Eが形成されている。これにより雌ロータ3の吸込側軸部3Bと作動室閉止部30との間に第2の雌ロータ側開放空間32Aと連通し、当該第1の雌ロータ側開放空間32Aと共に第2の開放空間32を構成する一定大きさの第2の雌ロータ側開放空間32Bが形成されている。
【0060】
なお作動室閉止部30の窪み30D,30Eの径は、作動室を閉止できるように、雄ロータ2や雌ロータ3の歯低半径よりも小さく、かつ雄ロータ2の吸込側軸部2Bや雌ロータ3の吸込側軸部3Bの半径よりも大きく選定されている。
【0061】
以上の構成を有する本実施の形態のスクリュー圧縮機では、雄ロータ2の吸込側軸部2Bよりも外側に存在する吸込空間13(図1及び図2)の空間部分を流動してきた作動媒体が、作動室閉止部30の雄ロータ側凹部30Aの壁面に沿って、雄ロータ2の吸込側軸部2Bの周りを当該吸込側軸部2Bの回転方向(矢印aで示す回転方向)と同じ方向に回転するように吸込空間13及び第1の開放空間31内を流動しながらやがて吸込ポートを介して作動室に吸い込まれる。
【0062】
また雄ロータ2の吸込側軸部2Bよりも外側に存在する吸込空間13を流動してきた作動媒体の一部は、作動室閉止部30のロータ対向面側の側面に衝突するものの、その後、作動室閉止部30の第2の雄ロータ側開放空間31Bを経由して、雄ロータ2の吸込側軸部2Bの周りを当該吸込側軸部2Bの回転方向と同じ方向に回転するように吸込空間13及び第1の雄ロータ側開放空間31A内を流動しながらやがて吸込ポートを介して作動室に吸い込まれる。
【0063】
同様に、本スクリュー圧縮機では、雌ロータ3の吸込側軸部3Bよりも外側に存在する吸込空間13(図1及び図2)の空間部分を流動してきた作動媒体が、作動室閉止部30の雌ロータ側凹部30Bの壁面に沿って、雌ロータ3の吸込側軸部3Bの周りを当該吸込側軸部3Bの回転方向(矢印bで示す回転方向)と同じ方向に回転するように吸込空間13及び第2の開放空間32内を流動しながらやがて吸込ポートを介して作動室に吸い込まれる。
【0064】
また雌ロータ3の吸込側軸部3Bよりも外側に存在する吸込空間13の空間部分を流動してきた作動媒体の一部は、作動室閉止部30のロータ対向面側の側壁に衝突するものの、その後、作動室閉止部30の第2の雌ロータ側開放空間32Bを経由して、雌ロータ3の吸込側軸部3Bの周りを当該吸込側軸部3Bの回転方向と同じ方向に回転するように吸込空間13及び第2の開放空間32内を流動しながらやがて吸込ポートを介して作動室に吸い込まれる。
【0065】
このように本実施の形態のスクリュー圧縮機では、第1の開放空間31と第2の開放空間32とを分離した構成としていることから、第2の実施の形態のスクリュー圧縮機と同様に、雄ロータ2や雌ロータ3の回転に伴って吸込空間13内等を流動する作動媒体を整流する効果を発揮する。
【0066】
よって、本実施の形態のスクリュー圧縮機によれば、第2の実施の形態のスクリュー圧縮機と同様に、従来のスクリュー圧縮機に比べて吸込口12(図1)から吸い込まれた作動媒体の流動抵抗が少なく、作動室への作動媒体の吸い込みがスムーズに行われることになる。これにより雄ロータ2及び雌ロータ3の高速回転時には、作動媒体が作動室に流入する際にも減速されないため作動媒体を加速するためのエネルギーを抑制してスクリュー圧縮機のエネルギー効率を向上させることができ、雄ロータ2及び雌ロータ3の低速回転時にも、作動媒体の吸込抵抗の低減に伴って作動媒体の流量を増加させることが可能となる。
【0067】
加えて、本スクリュー圧縮機では、第1の雄ロータ側開放空間31Aや第1の雌ロータ側開放空間32Aの出口側が入口側よりも大きな曲率の円弧状としているため、第1の雄ロータ側開放空間31A内や第1の雌ロータ側開放空間31B内を流動する作動媒体の流路面積が出口側で絞られることになる。これにより、これら第1の雄ロータ側開放空間31Aや第1の雌ロータ側開放空間31Bの出口側から流出する作動媒体を増速させることができ、当該作動媒体の加速損失を低減することができる。
【0068】
また本スクリュー圧縮機では、雄ロータ側凹部30Aの側面形状や雌ロータ側凹部30Bの側面形状をほぼ円筒形状としているため作動室閉止部30の加工が容易となり、スクリュー圧縮機の製造効率の向上や製造コストの低減を図ることができる。
【0069】
(4)第4の実施の形態
図4との対応部分に同一符号又は同一符号に添え字「Z」を付して示す図9は、第4の実施の形態によるスクリュー圧縮機の一部構成を示ものであり、図1のC-C矢視図に対応する。本実施の形態のスクリュー圧縮機は、作動室閉止部40の構成が異なる点を除いて第3の実施の形態のスクリュー圧縮機と同様に構成されている。
【0070】
実際上、本実施の形態のスクリュー圧縮機では、図6について上述した従来の作動室閉止部16と同じ位置に、当該作動室閉止部16とロータ軸方向に同じ長さの作動室閉止部40がメインケーシング10Zと一体に形成されている。
【0071】
この作動室閉止部40には、ロータ軸方向のモータ9A(図1)側の端部からロータ対向面にまで至るように雄ロータ2側の側部及び雌ロータ3側の側部にそれぞれ雄ロータ側凹部40A及び雌ロータ側凹部40Bが形成されている。
【0072】
そして、このように作動室閉止部40に雄ロータ側凹部40A及び雌ロータ側凹部40Bを形成することにより、雄ロータ側凹部40Aと、雄ロータ2の吸込側軸部2Bとの間に雄ロータ側開放空間41Aが形成されると共に、雌ロータ側凹部40Bと、雌ロータ3の吸込側軸部3Bとの間に雌ロータ側開放空間41Bが形成されている。
【0073】
この場合、作動室閉止部40の雄ロータ側凹部40A及び雌ロータ側凹部40Bの径は、作動室を閉止できるように、雄ロータ2や雌ロータ3の歯低半径よりも小さく、かつ雄ロータ2の吸込側軸部2Bや雌ロータ3の吸込側軸部3Bの半径よりも大きく選定されている。
【0074】
また作動室閉止部40の雄ロータ側凹部40Aは、その側面が、後述のように雄ロータ側開放空間41Aに流入する作動媒体の当該雄ロータ側開放空間41Aへの入口側から出口側に進むに従って曲率が大きくなる円弧状に形成されており、これにより雄ロータ側開放空間41Aの曲率が、雄ロータ2の吸込側軸部2Bの回転方向に進むに従って大きくなるように設計されている。
【0075】
同様に、作動室閉止部40の雌ロータ側凹部40Bは、その側面が、後述のように雌ロータ側開放空間41Bに流入する作動媒体の当該雌ロータ側開放空間41Bへの入口側から出口側に進むに従って曲率が大きくなる円弧状に形成されており、これにより雌ロータ側開放空間41Bの曲率が、雌ロータ3の吸込側軸部3Bの回転方向に進むに従って大きくなるように設計されている。
【0076】
以上の構成を有する本実施の形態のスクリュー圧縮機では、雄ロータ2の吸込側軸部2Bよりも外側に存在する吸込空間13(図1及び図2)の空間部分を流動してきた作動媒体が、作動室閉止部40の側面に衝突した後に、雄ロータ側開放空間41Aを経由して雄ロータ2の吸込側軸部2Bの周りを当該吸込側軸部2Bの回転方向(矢印aで示す回転方向)と同じ方向に回転するように吸込空間13内や雄ロータ側開放空間41A内を流動しながらやがて吸込ポートを介して作動室に吸い込まれる。
【0077】
同様に、本スクリュー圧縮機では、雌ロータ3の吸込側軸部3Bよりも外側に存在する吸込空間13の空間部分を流動してきた作動媒体が、作動室閉止部40の側面に衝突した後に、雌ロータ側開放空間41Bを経由して、雌ロータ3の吸込側軸部3Bの周りを当該吸込側軸部3Bの回転方向(矢印bで示す回転方向)と同じ方向に回転するように吸込空間13内や雌ロータ側開放空間41B内を流動しながらやがて吸込ポートを介して作動室に吸い込まれる。
【0078】
このように本実施の形態のスクリュー圧縮機では、第2及び第3の実施の形態のスクリュー圧縮機と同様に、雄ロータ側開放空間41Aと雌ロータ側開放空間41Bとを分離した構成としているため、雄ロータ2や雌ロータ3の回転に伴って吸込空間13内等を流動する作動媒体を整流する効果を発揮する。
【0079】
よって、本実施の形態のスクリュー圧縮機によれば、従来のスクリュー圧縮機に比べて吸込口12(図1)から吸い込まれた作動媒体の流動抵抗が少なく、作動室への作動媒体の吸い込みがスムーズに行われることになる。これにより雄ロータ2及び雌ロータ3の高速回転時には、作動媒体が作動室に流入する際にも減速されないため作動媒体を加速するためのエネルギーを抑制してスクリュー圧縮機のエネルギー効率を向上させることができ、雄ロータ2及び雌ロータ3の低速回転時にも、作動媒体の吸込抵抗の低減に伴って作動媒体の流量を増加させることが可能となる。
【0080】
加えて、本スクリュー圧縮機では、第3の実施の形態と同様に、作業室閉止部40の雄ロータ側凹部40Aの側面形状や雌ロータ側凹部40Bの側面形状が、雄ロータ側開放空間41Aや雌ロータ側開放空間41Bの出口側を入口側よりも大きな曲率の円筒形状としているため、雄ロータ側開放空間41Aや雌ロータ側開放空間41Bの出口側から吸込空間13等に流出する作動媒体を増速させることができ、当該作動媒体の加速損失を低減することができる。
【0081】
また本スクリュー圧縮機では、作動室閉止部40の雄ロータ側凹部40Aの側面形状や雌ロータ側凹部40Bの側面形状をほぼ円筒形状としているため作動室閉止部40の加工が容易となり、スクリュー圧縮機の製造効率の向上や製造コストの低減を図ることができる。
【0082】
(5)他の実施の形態
なお上述の第1~第4の実施の形態においては、本発明を、雄ロータ2の歯部2Aの歯数が4つ、雌ロータ3の歯部3Aの歯数が6つのスクリュー圧縮機1に適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の構成のスクリュー圧縮機に広く適用することができる。
【0083】
また上述の第1~第4の実施の形態においては、作動室閉止部材14や作動室閉止部20,30,40の各窪み14C,14D,20D,20E,30D,30E,40A,40Bを雄ロータ2や雌ロータ3と同軸の円弧状に形成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、かかる窪み14C,14D,20D,20E,30D,30E,40A,40Bは雄ロータ2や雌ロータ3と同軸でない円弧状であっても、また円弧状以外の形状であってもよい。
【0084】
さらに上述の第1の実施の形態においては、作動室閉止部材14のモータ9A側にモータ側開放空間15Cを設けると共に、作動室閉止部材14の側部に雄ロータ側開放空間15Aや雌ロータ側開放空間15Bを設け、第2及び第3の実施の形態においては、作動室閉止部20,30の雄ロータ2側に第1及び第2の雄ロータ側開放空間21A,21Bを設け、作動室閉止部20,30の雌ロータ3側に第1及び第2の雌ロータ側開放空間22A,22Bを設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、第1の実施の形態においてはモータ側開放空間15Cと、ロータ側開放空間15A及び雌ロータ側開放空間15Bとのいずれか一方のみを設け、第2及び第3の実施の形態においては、第1の雄ロータ側開放空間21A及び第1の雌ロータ側開放空間22Aのみを設けるようにしてもよい。なお、第2及び第3の実施の形態において、第2の雄ロータ側開放空間21B及び第2の雌ロータ側開放空間22Bのみを設けるようにしたのが第4の実施の形態である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、種々の構成のスクリュー圧縮機に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1……スクリュー圧縮機、2……雄ロータ、2A,3A……歯部、2B,3B……吸込側軸部、2C,3C……吐出側軸部、3……雌ロータ、4……ケーシング、9……駆動部、9A……モータ、10,10X~10Z……メインケーシング、10A,10AX~10AZ……ボア、12……吸込口、13……吸込空間、14……作動室閉止部材、14C,14D,20D,20E,30D,30E,40A,40B……窪み、15,21,22,31,32……開放空間、15A,21A,21B,31A,31B,41A……雄ロータ側開放空間、15B,22A,22B,32A,32B,41B……雌ロータ側開放空間、15C……モータ側開放空間、20,30,40……作動室閉止部、20A,30A……雄ロータ側凹部、20B,30B……雌ロータ側凹部、20C……隔離壁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9