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特開2022-166892炭素繊維の分離回収方法及び分離回収装置
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  • 特開-炭素繊維の分離回収方法及び分離回収装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166892
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】炭素繊維の分離回収方法及び分離回収装置
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/00 20060101AFI20221027BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B29B17/00
C08J11/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072288
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】521176352
【氏名又は名称】澤木 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤木 直彦
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA27
4F401AC01
4F401AC05
4F401AC06
4F401AD08
4F401BA13
4F401CA13
4F401CA25
4F401CA28
4F401CA33
4F401CA48
4F401CA70
4F401CA91
4F401CB01
4F401CB14
4F401CB32
4F401DA07
(57)【要約】
【課題】均質な炭素繊維から成るシート状の炭素繊維不織布を形成でき、樹脂残渣の分離に伴う粉塵の飛散を低減しつつ回収できる炭素繊維の分離回収方法を提供する。
【解決手段】炭素繊維強化樹脂TJを加熱して形成した樹脂残渣12を含む炭素繊維細片TS1を開繊して炭素繊維11と樹脂残渣とを分離し、シート状の炭素繊維不織布THを形成する炭素繊維の分離回収方法である。開繊シリンダ2と吸引ケージ3と撹拌室4と粉塵回収装置5とを有する分離回収装置10を備え、開繊シリンダにて開繊された炭素繊維を、撹拌室にて撹拌しながら炭素繊維に付着した樹脂残渣を分離させ、上下一対の吸引ケージにて外周に積層された炭素繊維を上下重ね合せてシート状の炭素繊維不織布を形成すると共に、吸引ケージを通過した樹脂残渣を含む粉塵を粉塵回収装置にて回収する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維強化樹脂を加熱して形成した樹脂残渣を含む炭素繊維細片を開繊して炭素繊維と樹脂残渣とを分離し、シート状の炭素繊維不織布を形成する炭素繊維の分離回収方法であって、
前記炭素繊維細片を開繊する開繊シリンダと、開繊されて前記樹脂残渣が分離された前記炭素繊維を外周から吸引する上下一対の吸引ケージと、前記開繊シリンダと前記吸引ケージとの間で前記炭素繊維を空中で撹拌させる撹拌室と、前記吸引ケージに連通され前記樹脂残渣を含む粉塵を回収する粉塵回収装置と、を有する分離回収装置を備え、
前記開繊シリンダにて開繊された前記炭素繊維を、前記撹拌室にて撹拌しながら前記炭素繊維に付着した前記樹脂残渣を分離させ、上下一対の前記吸引ケージにて外周に積層された前記炭素繊維を上下重ね合せてシート状の前記炭素繊維不織布を形成すると共に、前記吸引ケージを通過した前記樹脂残渣を含む粉塵を前記粉塵回収装置にて回収することを特徴とする炭素繊維の分離回収方法。
【請求項2】
請求項1に記載された炭素繊維の分離回収方法において、
複数の前記分離回収装置を直列状に連結し、上流側の前記分離回収装置における前記吸引ケージから送出された前記炭素繊維不織布は、下流側の前記分離回収装置における前記開繊シリンダの投入口に投入されることを特徴とする炭素繊維の分離回収方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された炭素繊維の分離回収方法において、
前記開繊シリンダにて開繊された前記炭素繊維を前記撹拌室の上方へ浮遊させる風を送風する送風口が、前記撹拌室の底板に形成された送風装置を備えたことを特徴とする炭素繊維の分離回収方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された炭素繊維の分離回収方法において、
前記粉塵回収装置の排気管は、前記送風装置の吸気口に接続されていることを特徴とする炭素繊維の分離回収方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された炭素繊維の分離回収方法に使用する分離回収装置であって、
前記分離回収装置には、前記炭素繊維細片を開繊する前記開繊シリンダと、開繊されて前記樹脂残渣が分離された前記炭素繊維を外周から吸引する上下一対の前記吸引ケージと、前記開繊シリンダと前記吸引ケージとの間で前記炭素繊維を空中で撹拌させる前記撹拌室と、前記吸引ケージに連通され前記樹脂残渣を含む粉塵を回収する前記粉塵回収装置とを有することを特徴とする炭素繊維の分離回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維の分離回収方法及び分離回収装置に関し、より詳しくは、炭素繊維強化樹脂(CFRP)から炭素繊維とマトリックス樹脂とを分離して、再利用可能なシート状の炭素繊維不織布を形成する炭素繊維の分離回収方法及び分離回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や航空機等には、車体、機体の軽量化及び高強度化を目的として、炭素繊維強化樹脂(CFRP)が用いられている。炭素繊維強化樹脂は、OA機器や家電製品にも適用拡大される傾向があり、これら製品の使用後又は成形過程で生じる廃材、端材の再利用方法の開発が求められている。炭素繊維強化樹脂を再利用するためは、炭素繊維の性能を維持しながら、所定の長さに切断した炭素繊維をマトリックス樹脂から分離して回収する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、炭素繊維およびマトリックス樹脂を含む炭素繊維強化樹脂から炭素繊維を再生炭素繊維として得る方法であり、炭素繊維強化樹脂を加熱することによってマトリックス樹脂を熱分解して、樹脂残渣含有率が0.01~30.0質量%である加熱処理物を得て、加熱処理物をカッターミル等の切断機で切断する、再生炭素繊維製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-75493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された再生炭素繊維製造方法は、マトリックス樹脂を熱分解して、樹脂残渣含有率が0.01~30.0質量%である加熱処理物を得て、加熱処理物をカッターミル等の切断機で切断する方法であるので、炭素繊維に所定量の樹脂残渣が付着した状態で再生されることになる。この再生炭素繊維を炭素繊維強化樹脂の原料として再利用したとき、付着した樹脂残渣が不純物として混入され、再利用後の製品(炭素繊維強化樹脂製品)の機械的性能が低下するという問題があった。そのため、樹脂残渣が付着された炭素繊維を、従来のカード機を用いて開繊しながら樹脂残渣を分離する方法が考えられるが、樹脂残渣を分離させる際に、炭素繊維が折損してその長さや厚さが不揃いとなると共に、樹脂残渣等が粉塵として飛散する問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、均質な炭素繊維から成るシート状の炭素繊維不織布を形成でき、樹脂残渣の分離に伴う粉塵の飛散を低減しつつ回収できる炭素繊維の分離回収方法及び分離回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る炭素繊維の分離回収方法及び分離回収装置は、次のような構成を有している。
(1)炭素繊維強化樹脂を加熱して形成した樹脂残渣を含む炭素繊維細片を開繊して炭素繊維と樹脂残渣とを分離し、シート状の炭素繊維不織布を形成する炭素繊維の分離回収方法であって、
前記炭素繊維細片を開繊する開繊シリンダと、開繊されて前記樹脂残渣が分離された前記炭素繊維を外周から吸引する上下一対の吸引ケージと、前記開繊シリンダと前記吸引ケージとの間で前記炭素繊維を空中で撹拌させる撹拌室と、前記吸引ケージに連通され前記樹脂残渣を含む粉塵を回収する粉塵回収装置と、を有する分離回収装置を備え、
前記開繊シリンダにて開繊された前記炭素繊維を、前記撹拌室にて撹拌しながら前記炭素繊維に付着した前記樹脂残渣を分離させ、上下一対の前記吸引ケージにて外周に積層された前記炭素繊維を上下重ね合せてシート状の前記炭素繊維不織布を形成すると共に、前記吸引ケージを通過した前記樹脂残渣を含む粉塵を前記粉塵回収装置にて回収することを特徴とする。
【0008】
本発明においては、炭素繊維細片を開繊する開繊シリンダと、開繊されて樹脂残渣が分離された炭素繊維を外周から吸引する上下一対の吸引ケージと、開繊シリンダと吸引ケージとの間で炭素繊維を空中で撹拌させる撹拌室と、吸引ケージに連通され樹脂残渣を含む粉塵を回収する粉塵回収装置と、を有する分離回収装置を備え、開繊シリンダにて開繊された炭素繊維を、撹拌室にて撹拌しながら炭素繊維に付着した樹脂残渣を分離させるので、開繊された炭素繊維に樹脂残渣が付着していても、撹拌室にて撹拌された炭素繊維が空中で浮遊しながら互いに接触し擦り合うことによって、炭素繊維の折損を伴うことなく、炭素繊維に付着している樹脂残渣を分離させることができる。また、分離された樹脂残渣が撹拌室にて炭素繊維と共に撹拌されることによって、炭化されて硬くなった樹脂残渣自身が研磨剤の作用をして、炭素繊維に付着した樹脂残渣の分離を促進させることができる。したがって、炭素繊維の長さの均一化を図りながら、炭素繊維から樹脂残渣を効果的に分離できる。
【0009】
また、上下一対の吸引ケージにて外周に積層された炭素繊維を上下重ね合せてシート状の炭素繊維不織布を形成するので、炭素繊維不織布の厚さの均一化を図ることができる。すなわち、吸引ケージの外周に炭素繊維が薄く積層された個所では、炭素繊維が厚く積層された箇所に比較して、吸引ケージの吸引力が相対的に高まり、炭素繊維の補充が自動的に行われる。また、吸引ケージの外周に積層された炭素繊維の厚さに多少のバラツキがあっても、上下一対の吸引ケージにて外周に積層された炭素繊維を上下重ね合せることによって、炭素繊維不織布における炭素繊維の厚さのバラツキを低減できる。したがって、シート状の炭素繊維不織布を形成したとき、積層した炭素繊維の厚さの均一化が図られる。
【0010】
また、吸引ケージを通過した樹脂残渣を含む粉塵を粉塵回収装置にて回収するので、炭素繊維に付着した樹脂残渣の分離に伴う粉塵を飛散させずに回収できる。したがって、良好な作業環境の下で、炭素繊維強化樹脂を再利用するための炭素繊維不織布を形成することができる。
【0011】
よって、本発明によれば、均質な炭素繊維から成るシート状の炭素繊維不織布を形成でき、樹脂残渣の分離に伴う粉塵の飛散を低減しつつ回収できる炭素繊維の分離回収方法を提供することができる。
【0012】
(2)(1)に記載された炭素繊維の分離回収方法において、
複数の前記分離回収装置を直列状に連結し、上流側の前記分離回収装置における前記吸引ケージから送出された前記炭素繊維不織布は、下流側の前記分離回収装置における前記開繊シリンダの投入口に投入されることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、複数の分離回収装置を直列状に連結し、上流側の分離回収装置における吸引ケージから送出された炭素繊維不織布は、下流側の分離回収装置における開繊シリンダの投入口に投入されるので、開繊シリンダにて炭素繊維を開繊する行為と、開繊された炭素繊維を撹拌室にて撹拌しながら炭素繊維に付着した樹脂残渣を分離させる行為とを、複数回繰り返すことによって、炭素繊維の長さを所定の長さに揃えながら、炭素繊維の開繊度合いを高めることができる。また、炭素繊維に付着した樹脂残渣をより確実に分離させることができる。そのため、より均質な炭素繊維から成るシート状の炭素繊維不織布を形成できる。
【0014】
(3)(1)又は(2)に記載された炭素繊維の分離回収方法において、
前記開繊シリンダにて開繊された前記炭素繊維を前記撹拌室の上方へ浮遊させる風を送風する送風口が、前記撹拌室の底板に形成された送風装置を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明においては、開繊シリンダにて開繊された炭素繊維を撹拌室の上方へ浮遊させる風を送風する送風口が、撹拌室の底板に形成された送風装置を備えたので、送風装置の送風口から送風される風によって撹拌室の上方へ浮遊された炭素繊維が、より一層長い時間、空中で浮遊しながら互いに接触し擦り合うことによって、炭素繊維に付着している樹脂残渣を、より確実に分離させることができる。そのため、炭素繊維の長さの均一化を図りながら、炭素繊維から樹脂残渣をより確実に分離できる。また、開繊した炭素繊維を撹拌室に長時間浮遊させることによって、撹拌室内に分散される炭素繊維の均一化を図り、吸引ケージの外周に積層する炭素繊維の厚さのバラツキを低減できる。そのため、炭素繊維不織布の均質化をより一層向上させることができる。
【0016】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された炭素繊維の分離回収方法において、
前記粉塵回収装置の排気管は、前記送風装置の吸気口に接続されていることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、粉塵回収装置の排気管は、送風装置の吸気口に接続されているので、粉塵回収装置にて捕捉できなかった樹脂残渣を含む微細な粉塵を撹拌室に戻すことができ、これによって、分離回収装置の外部へ粉塵が飛散する恐れをより一層低減できる。また、樹脂残渣を含む微細な粉塵を送風装置によって撹拌室内に戻すことによって、戻された樹脂残渣を含む粉塵が撹拌室にて炭素繊維と共に撹拌されることによって、微細な研磨剤の作用をして、炭素繊維に付着した樹脂残渣の分離をより一層促進させることができる。さらに、粉塵回収装置の排気管から排出される空気が送風装置に供給されるので、送風装置の消費電力を低減させることもできる。そのため、より省エネに寄与しつつ、クリーンな作業環境を確保して、再利用しやすい、より均質な炭素繊維から成る炭素繊維不織布を形成することができる。
【0018】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された炭素繊維の分離回収方法に使用する分離回収装置であって、
前記分離回収装置には、前記炭素繊維細片を開繊する前記開繊シリンダと、開繊されて前記樹脂残渣が分離された前記炭素繊維を外周から吸引する上下一対の前記吸引ケージと、前記開繊シリンダと前記吸引ケージとの間で前記炭素繊維を空中で撹拌させる前記撹拌室と、前記吸引ケージに連通され前記樹脂残渣を含む粉塵を回収する前記粉塵回収装置とを有することを特徴とする。
【0019】
本発明においては、分離回収装置には、炭素繊維細片を開繊する開繊シリンダと、開繊されて樹脂残渣が分離された炭素繊維を外周から吸引する上下一対の吸引ケージと、開繊シリンダと吸引ケージとの間で炭素繊維を空中で撹拌させる撹拌室と、吸引ケージに連通され樹脂残渣を含む粉塵を回収する粉塵回収装置とを有するので、開繊シリンダにて開繊された炭素繊維を、撹拌室にて撹拌しながら炭素繊維に付着した樹脂残渣を分離させることができる。また、開繊シリンダにて開繊された炭素繊維に樹脂残渣が付着していても、撹拌室にて撹拌された炭素繊維が空中で浮遊しながら互いに接触し擦り合うことによって、炭素繊維の折損を伴うことなく、炭素繊維に付着している樹脂残渣を分離させることができる。また、分離された樹脂残渣が撹拌室にて炭素繊維と共に撹拌されることによって、炭化されて硬くなった樹脂残渣自身が研磨剤の作用をして、炭素繊維に付着した樹脂残渣の分離を促進させることができる。したがって、炭素繊維の長さの均一化を図りながら、炭素繊維から樹脂残渣を効果的に分離できる。
【0020】
また、開繊されて樹脂残渣が分離された炭素繊維を外周から吸引する上下一対の吸引ケージを有するので、上下一対の吸引ケージの外周に形成され撹拌室側に位置する炭素繊維吸着面を互いに近接する方向へ回転させることによって、上下一対の吸引ケージにて外周に積層された炭素繊維を上下重ね合せてシート状の炭素繊維不織布を形成することができる。これによって、炭素繊維不織布の厚さの均一化を図ることができる。すなわち、吸引ケージの外周に炭素繊維が薄く積層された個所では、炭素繊維が厚く積層された他の箇所に比較して、吸引力が相対的に高まり、炭素繊維の補充が自動的に行われる。また、吸引ケージの外周に積層された炭素繊維の厚さに多少のバラツキがあっても、上下一対の吸引ケージにて外周に積層された炭素繊維を上下重ね合せることによって、炭素繊維不織布における炭素繊維の厚さのバラツキを低減できる。したがって、シート状の炭素繊維不織布の均質化を向上させることができる。
【0021】
また、吸引ケージに連通され樹脂残渣を含む粉塵を回収する粉塵回収装置を有するので、吸引ケージを通過した樹脂残渣を含む粉塵を粉塵回収装置にて回収することができる。そのため、炭素繊維に付着した樹脂残渣の分離に伴う粉塵を飛散させずに回収できる。したがって、良好な作業環境の下で、炭素繊維強化樹脂を再利用するためのシート状の炭素繊維不織布を形成することができる。
【0022】
よって、本発明によれば、均質な炭素繊維から成るシート状の炭素繊維不織布を形成でき、樹脂残渣の分離に伴う粉塵の飛散を低減しつつ回収できる炭素繊維の分離回収装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、均質な炭素繊維から成るシート状の炭素繊維不織布を形成でき、樹脂残渣の分離に伴う粉塵の飛散を低減しつつ回収できる炭素繊維の分離回収方法及び分離回収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係る炭素繊維の分離回収方法に関係する工程の模式的断面図であって、(A)は、炭素繊維強化樹脂を所定の温度で加熱する加熱工程を示し、(B)は、加熱して形成された樹脂残渣を含む炭素繊維集合体を長手方向に沿って分割して炭素繊維長尺体を形成する分割工程を示し、(C)は、炭素繊維長尺体を所定の長さに切断して炭素繊維細片を形成する切断工程を示し、(D)は、炭素繊維細片を開繊して炭素繊維から樹脂残渣を分離し、シート状の炭素繊維不織布を形成する分離回収工程を示す。
図2図1に示す分離回収装置の拡大断面図である。
図3図1に示す分離回収工程における詳細断面図であって、(A)は、上流側の分離回収装置におけるA部詳細断面図を示し、(B)は、下流側の分離回収装置におけるB部詳細断面図を示す。
図4図1に示す吸引ケージの外周に形成された炭素繊維吸着面に炭素繊維を積層した状態の模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本実施形態に係る炭素繊維の分離回収方法及び分離回収装置について、図面を参照して詳細に説明する。ここでは、本実施形態に係る炭素繊維の分離回収方法を実施する前段階で行う工程(加熱工程、分割工程、切断工程)を、図1(A)~(C)を用いて簡単に説明した後に、本実施形態に係る炭素繊維の分離回収方法(分離回収工程)及び分離回収装置を、図1(D)、図2図4を用いて詳細に説明する。
【0026】
(加熱工程)
加熱工程は、図1(A)に示すように、炭素繊維強化樹脂TJを加熱炉KRに収納し所定の温度で加熱して、炭素繊維強化樹脂TJにおいて炭素繊維同士を接合するマトリックス樹脂を熱分解(炭化、蒸発)させて、炭素繊維からマトリックス樹脂を分離・減少させる工程である。ここで、炭素繊維強化樹脂TJは、例えば、自動車、航空機、OA機器や家電製品等における製品の一部として使用された後に廃棄された廃材、又は上記製品の成形過程で生じる端材等から回収された物を使用することができる。炭素繊維強化樹脂TJの加熱温度は、マトリックス樹脂の熱分解に伴って発生する反応ガスが炭素繊維の劣化に影響しない程度の温度(例えば、400~500℃程度)が好ましく、また、長時間加熱し過ぎると、炭素繊維の劣化が生じ易いことから、加熱時間も限定されている。そのため、加熱工程で形成された炭素繊維集合体TSには、マトリックス樹脂が熱分解された樹脂残渣(炭化物)を所定量(一般に、20~30%程度)含むことになる。
【0027】
(分割工程)
分割工程は、図1(B)に示すように、加熱工程で形成された樹脂残渣を含む炭素繊維集合体TSを炭素繊維の長手方向に沿って分割して細長い炭素繊維長尺体TTを形成する工程である。この分割工程では、例えば、山部と谷部とが外周に螺旋状に形成されたローラ体RT(RT1、RT2)が、炭素繊維集合体TSを上下面から挟圧しながら回転することによって、炭素繊維集合体TSを炭素繊維の長手方向へ移動させながら分割して炭素繊維長尺体TTを形成する。このローラ体RT(RT1、RT2)は、上方のローラ体RT1の山部と下方のローラ体RT2の谷部とが対向して配置されているので、山部が隣接する谷部の間で炭素繊維集合体TSに食い込むことによって、炭素繊維を接合する樹脂残渣を炭素繊維に沿って破断させて、細長い炭素繊維長尺体TTを形成する。なお、熱分解された樹脂残渣は、炭化されて硬度が硬く、破断されやすくなっている。
【0028】
(切断工程)
切断工程は、図1(C)に示すように、炭素繊維長尺体TTを切断刃SHによって所定の長さに切断して炭素繊維細片TS1を形成する工程である。この炭素繊維細片TS1における炭素繊維11の長さは、後述する分離回収工程においてシート状の炭素繊維不織布THを形成するために適した長さ(例えば、7~10mm程度)が好ましい。なお、炭素繊維11は、アクリル繊維を原料とするPAN系炭素繊維でも、ピッチ(石油、石炭、コールタール等の副生成物)を原料とするピッチ系炭素繊維でも良い。ここでは、上記炭素繊維の単繊維が複数集合したもの(一般に、「フィラメント」と呼ぶ)を、炭素繊維11と言う。
【0029】
(本炭素繊維の分離回収方法及び分離回収装置)
本実施形態に係る炭素繊維の分離回収方法(分離回収工程)は、図1(D)、図2図4に示すように、炭素繊維強化樹脂TJを加熱して形成した樹脂残渣12を含む炭素繊維細片TS1を開繊して炭素繊維11と樹脂残渣12とを分離し、シート状の炭素繊維不織布THを形成する炭素繊維11の分離回収方法であって、炭素繊維細片TS1を開繊する開繊シリンダ2(2A、2B)と、開繊されて樹脂残渣12が分離された炭素繊維11を外周から吸引する上下一対の吸引ケージ3(3A、3B)と、開繊シリンダ2と吸引ケージ3との間で炭素繊維11を空中で撹拌させる撹拌室4(4A、4B)と、吸引ケージ3に連通され樹脂残渣12を含む粉塵HZを回収する粉塵回収装置5(5A、5B)と、を有する分離回収装置10(10A、10B)を備えている。
【0030】
また、開繊シリンダ2にて開繊された炭素繊維11を、撹拌室4にて撹拌しながら炭素繊維11に付着した樹脂残渣12を分離させ、上下一対の吸引ケージ3にて外周に積層された炭素繊維11を上下重ね合せてシート状の炭素繊維不織布THを形成すると共に、吸引ケージ3を通過した樹脂残渣12を含む粉塵HZを粉塵回収装置5にて回収する。
【0031】
ここで、開繊シリンダ2は、円筒状に形成され、その外周に複数の開繊針22が等間隔に突設されている。また、開繊シリンダ2は、開繊針22と干渉しない位置に形成された円弧状のカバー部材23(23A、23B)によって覆設されている。開繊シリンダ2の投入口21(21A、21B)には、カバー部材23が切り欠かれ、投入ローラが設置されている。搬送コンベア71で搬送されてきた炭素繊維細片TS1は、投入口21Aの投入ローラから開繊シリンダ2Aの下方に投入される。開繊シリンダ2Aが、反時計回り(矢印P1の方向)へ回転することにより、投入された炭素繊維細片TS1は、開繊針22によって開繊される。開繊された炭素繊維11は、開繊シリンダ2Aの回転により発生する風によって、後方に飛ばされる。
【0032】
また、撹拌室4(4A、4B)は、開繊シリンダ2と吸引ケージ3との間に設けられている。撹拌室4は、開繊シリンダ2によって開繊され、後方に飛ばされた炭素繊維11を、内部に浮遊させながら撹拌させるための空間である。撹拌室4は、底板41(41A、41B)と天井板42(42A、42B)とを有し、天井板42には、浮遊する炭素繊維11を撹拌させる攪拌装置43(43A、43B)が設置されていることが好ましい。攪拌装置43には、駆動モータ431と、駆動モータ431の出力軸とギア等で連結され撹拌室4内に延設された回転軸433と、回転軸433の先端部に形成された回転翼432(432A、432B)とを備えている。この場合、開繊シリンダ2の回転によって起こす風に加えて、回転翼432の回転によって起こす風によって、炭素繊維11は、撹拌室4内で均等に分散して浮遊し、互いに接触しながら擦り合うことができる。
【0033】
そして、撹拌室4にて撹拌された炭素繊維11が空中で浮遊しながら互いに接触し擦り合うことによって、炭素繊維11の折損を伴うことなく、炭素繊維11に付着している樹脂残渣12を分離させることができる。また、分離された樹脂残渣12が撹拌室4にて炭素繊維11と共に撹拌されることによって、炭化されて硬くなった樹脂残渣12自身が研磨剤の作用をして、炭素繊維11に付着した樹脂残渣12の分離を促進させることができる。
【0034】
また、開繊シリンダ2にて開繊された炭素繊維11を撹拌室4の上方へ浮遊させる風を送風する送風口61(61A、61B)が、撹拌室4の底板41に形成された送風装置6(6A、6B)を備えたことが好ましい。この場合、送風装置6の送風口61から送出される風によって撹拌室4の上方へ浮遊された炭素繊維11が、より一層長い時間、空中で浮遊しながら互いに接触し擦り合うことによって、炭素繊維11に付着している樹脂残渣12を、より確実に分離させることができる。そのため、炭素繊維11の長さの均一化を図りながら、炭素繊維11から樹脂残渣12をより確実に分離できる。また、開繊した炭素繊維11を撹拌室4に長時間浮遊させることによって、吸引ケージ3の外周に積層する炭素繊維11の厚さのバラツキを低減できる。そのため、炭素繊維不織布THの均質化をより一層向上させることができる。
【0035】
また、上下一対の吸引ケージ3(31、32)にて外周に積層された炭素繊維11を上下重ね合せてシート状の炭素繊維不織布THを形成するので、炭素繊維不織布THの厚さの均一化を図ることができる。なお、上方の吸引ケージ31(31A、31B)と下方の吸引ケージ32(32A、32B)は、略同一外径の円筒体に形成され、所定の隙間を空けて平行に配置されている。各吸引ケージ31、32は、回転中心で軸支され、撹拌室4側の外周面がお互いに近接する方向に回転する。すなわち、図2に示すように、上方の吸引ケージ31は反時計回り(矢印P2の方向)に回転し、下方の吸引ケージ32は、時計回り(矢印P3の方向)に回転する。上方の吸引ケージ31と下方の吸引ケージ32の回転速度はお互いに等しく、開繊シリンダ2の回転速度より遅くなるように制御されている。
【0036】
また、吸引ケージ3の外周には、網状フィルタによって形成された炭素繊維吸着面311、321を備えている。例えば、図4に示すC部では、炭素繊維吸着面321に積層された炭素繊維11の薄い個所が発生しているが、このC部では、炭素繊維11の厚い箇所(C部の周辺)に比較して、吸引ケージ3の吸引力が相対的に高まり、炭素繊維11の補充が自動的に行われる。これによって、吸引ケージ3の外周に積層された炭素繊維11の厚さの均一化が図られる。その結果、炭素繊維不織布THの厚さの均一化を図ることができる。
【0037】
また、吸引ケージ3の外周に積層された炭素繊維11の厚さに多少のバラツキがあっても、上下一対の吸引ケージ3(31、32)にて外周に積層された炭素繊維11を上下重ね合せることによって、炭素繊維不織布THにおける炭素繊維11の厚さのバラツキを低減できる。したがって、シート状の炭素繊維不織布THを形成したとき、積層した炭素繊維11の厚さの均一化が図られる。なお、シート状の炭素繊維不織布THは、吸引ケージ3の出口に形成されたデリバリローラ33(33A、33B)を介して搬出コンベア72、73に移送される。搬出コンベア73には、加圧ローラ34を備え、移送されるシート状の炭素繊維不織布TH(TH2)の厚さを加圧ローラ34によって調整する。
【0038】
また、吸引ケージ3の網状フィルタを通過した樹脂残渣12を含む粉塵HZを粉塵回収装置5にて回収するので、炭素繊維11に付着した樹脂残渣12の分離に伴う粉塵HZを外部へ飛散させずに回収できる。したがって、良好な作業環境の下で、炭素繊維強化樹脂TJを再利用するためのシート状の炭素繊維不織布THを形成することができる。
【0039】
なお、吸引ケージ3(31、32)の側端部には、角筒状の吸引筒52(52A、52B)が接続されている。吸引筒52の先端部には、吸引ファン53が装着され、吸引筒52及び吸引ファン53を経由して粉塵回収装置5と吸引ケージ3とが連通されている。
【0040】
また、粉塵回収装置5は、上下方向に延びる同芯状に形成された外筒54(54A、54B)と内筒56(56A、56B)とを備えたサイクロン式の集塵機が好ましい。ここで、外筒54は、内筒56が上下方向に貫通する上蓋から下方に向けて徐々に内径が縮小する略円錐体状に形成され、その下端部に円筒状の粉塵収納部55が形成されている。外筒54の側壁上部に形成された投入口には、吸引ファン53が接続されている。吸引ファン53によって外筒54内に投入された粉塵HZは、外筒54の内壁に沿って螺旋状に回転しながら下降して粉塵収納部55に分離、回収される。粉塵HZが分離、回収された空気は、内筒56の下端部から内筒56内を通って上昇し、内筒56の上端部に接続された排気管51(51A、51B)に排出される。
【0041】
また、粉塵回収装置5の排気管51は、送風装置6の吸気口62に接続されていることが好ましい。この場合、粉塵回収装置5にて捕捉できなかった樹脂残渣12を含む微細な粉塵HZを撹拌室4に戻すことができる。これによって、分離回収装置10の外部へ粉塵HZが飛散する恐れをより一層低減できる。また、樹脂残渣12を含む微細な粉塵HZを送風装置6によって撹拌室4内に戻すことによって、戻された樹脂残渣12を含む粉塵HZが撹拌室4にて炭素繊維11と共に撹拌されることによって、微細な研磨剤の作用をして、炭素繊維11に付着した樹脂残渣12の分離をより一層促進させることができる。
【0042】
さらに、粉塵回収装置5の排気管51から排出される空気が送風装置6に供給されるので、送風装置6の消費電力を低減させることもできる。そのため、より省エネに寄与しつつ、クリーンな作業環境を確保して、再利用しやすい、より均質な炭素繊維11から成る炭素繊維不織布THを形成することができる。
【0043】
また、複数の分離回収装置10(10A、10B)を直列状に連結し、上流側の分離回収装置10Aにおける吸引ケージ3Aから送出された炭素繊維不織布TH1は、下流側の分離回収装置10Bにおける開繊シリンダ2Bの投入口21Bに投入されることが好ましい。ここでは、2台の分離回収装置10(10A、10B)を直列状に連結しているが、3台以上の分離回収装置10を直列状に連結しても良い。
【0044】
この場合、開繊シリンダ2(2A、2B)にて炭素繊維11を開繊する行為と、開繊された炭素繊維11を撹拌室4(4A、4B)にて撹拌しながら炭素繊維11に付着した樹脂残渣12を分離させる行為とを、連続して複数回繰り返すことができる。すなわち、上流側の分離回収装置10Aと下流側の分離回収装置10Bとを同期して作動させ、炭素繊維11の長さを所定の長さに揃えながら、図3(A)、図3(B)に示すように、下流側へ進むにしたがって炭素繊維11の開繊度合いを高め、また、炭素繊維11に付着した樹脂残渣12をより確実に分離させることができる。そのため、生産性を高めながら、より均質な炭素繊維11から成るシート状の炭素繊維不織布TH(TH2)を形成できる。
【0045】
なお、1台の分離回収装置10で炭素繊維不織布THを形成する場合には、開繊シリンダ2Aにて炭素繊維11を開繊した後、開繊された炭素繊維11を撹拌室4Aにて所定時間の間、撹拌することによって、図3(B)に示すように、炭素繊維11の開繊度合いを十分高め、炭素繊維11に付着した樹脂残渣12を十分分離させることができる。その後、上下一対の吸引ケージ3A(31、32)にて外周に積層された炭素繊維11を上下重ね合せることによって、均質なシート状の炭素繊維不織布THを形成することができる。
【0046】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る炭素繊維の分離回収方法によれば、炭素繊維細片TS1を開繊する開繊シリンダ2(2A、2B)と、開繊されて樹脂残渣12が分離された炭素繊維11を外周から吸引する上下一対の吸引ケージ3(3A、3B)と、開繊シリンダ2と吸引ケージ3との間で炭素繊維11を空中で撹拌させる撹拌室4(4A、4B)と、吸引ケージ3に連通され樹脂残渣12を含む粉塵HZを回収する粉塵回収装置5(5A、5B)と、を有する分離回収装置10(10A、10B)を備え、開繊シリンダ2にて開繊された炭素繊維11を、撹拌室4にて撹拌しながら炭素繊維11に付着した樹脂残渣12を分離させるので、開繊された炭素繊維11に樹脂残渣12が付着していても、撹拌室4にて撹拌された炭素繊維11が空中で浮遊しながら互いに接触し擦り合うことによって、炭素繊維11の折損を伴うことなく、炭素繊維11に付着している樹脂残渣12を分離させることができる。また、分離された樹脂残渣12が撹拌室4にて炭素繊維11と共に撹拌されることによって、炭化されて硬くなった樹脂残渣12自身が研磨剤の作用をして、炭素繊維11に付着した樹脂残渣12の分離を促進させることができる。したがって、炭素繊維11の長さの均一化を図りながら、炭素繊維11から樹脂残渣12を効果的に分離できる。
【0047】
また、上下一対の吸引ケージ3にて外周に積層された炭素繊維11を上下重ね合せてシート状の炭素繊維不織布THを形成するので、炭素繊維不織布THの厚さの均一化を図ることができる。すなわち、吸引ケージ3の外周に炭素繊維11が薄く積層された個所では、炭素繊維11が厚く積層された箇所に比較して、吸引ケージ3の吸引力が相対的に高まり、炭素繊維11の補充が自動的に行われる。また、吸引ケージ3の外周に積層された炭素繊維11の厚さに多少のバラツキがあっても、上下一対の吸引ケージ3(31、32)にて外周に積層された炭素繊維11を上下重ね合せることによって、炭素繊維不織布THにおける炭素繊維11の厚さのバラツキを低減できる。したがって、シート状の炭素繊維不織布THを形成したとき、積層した炭素繊維11の厚さの均一化が図られる。
【0048】
また、吸引ケージ3を通過した樹脂残渣12を含む粉塵HZを粉塵回収装置5にて回収するので、炭素繊維11に付着した樹脂残渣12の分離に伴う粉塵HZを飛散させずに回収できる。したがって、良好な作業環境の下で、炭素繊維強化樹脂TJを再利用するための炭素繊維不織布THを形成することができる。
【0049】
よって、本実施形態によれば、均質な炭素繊維11から成るシート状の炭素繊維不織布THを形成でき、樹脂残渣12の分離に伴う粉塵HZの飛散を低減しつつ回収できる炭素繊維の分離回収方法を提供することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、複数の分離回収装置10(10A、10B)を直列状に連結し、上流側の分離回収装置10Aにおける吸引ケージ3Aから送出された炭素繊維不織布TH1は、下流側の分離回収装置10Bにおける開繊シリンダ2Bの投入口21Bに投入されるので、開繊シリンダ2(2A、2B)にて炭素繊維11を開繊する行為と、開繊された炭素繊維11を撹拌室4(4A、4B)にて撹拌しながら炭素繊維11に付着した樹脂残渣12を分離させる行為とを、複数回繰り返すことによって、炭素繊維11の長さを所定の長さに揃えながら、炭素繊維11の開繊度合いを高めることができる。また、炭素繊維11に付着した樹脂残渣12をより確実に分離させることができる。そのため、より均質な炭素繊維11から成るシート状の炭素繊維不織布TH(TH2)を形成できる。
【0051】
また、本実施形態によれば、開繊シリンダ2にて開繊された炭素繊維11を撹拌室4の上方へ浮遊させる風を送風する送風口61が、撹拌室4の底板41に形成された送風装置6を備えたので、送風装置6の送風口61から送風される風によって撹拌室4の上方へ浮遊された炭素繊維11が、より一層長い時間、空中で浮遊しながら互いに接触し擦りあうことによって、炭素繊維11に付着している樹脂残渣12を、より確実に分離させることができる。そのため、炭素繊維11の長さの均一化を図りながら、炭素繊維11から樹脂残渣12をより確実に分離できる。また、開繊した炭素繊維11を撹拌室4に長時間浮遊させることによって、撹拌室4内における炭素繊維11の均一化を図り、吸引ケージ3の外周に積層する炭素繊維11の厚さのバラツキを低減できる。そのため、炭素繊維不織布THの均質化をより一層向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、粉塵回収装置5の排気管51は、送風装置6の吸気口62に接続されているので、粉塵回収装置5にて捕捉できなかった樹脂残渣12を含む微細な粉塵HZを撹拌室4に戻すことができ、これによって、分離回収装置10の外部へ粉塵HZが飛散する恐れをより一層低減できる。また、樹脂残渣12を含む微細な粉塵HZを送風装置6によって撹拌室4内に戻すことによって、戻された樹脂残渣12を含む粉塵HZが撹拌室4にて炭素繊維11と共に撹拌されることによって、微細な研磨剤の作用をして、炭素繊維11に付着した樹脂残渣12の分離をより一層促進させることができる。さらに、粉塵回収装置5の排気管51から排出される空気が送風装置6に供給されるので、送風装置6の消費電力を低減させることもできる。そのため、より省エネに寄与しつつ、クリーンな作業環境を確保して、再利用しやすい、より均質な炭素繊維11から成る炭素繊維不織布THを形成することができる。
【0053】
また、他の実施形態に係る分離回収装置10によれば、炭素繊維細片TS1を開繊する開繊シリンダ2と、開繊されて樹脂残渣12が分離された炭素繊維11を外周から吸引する上下一対の吸引ケージ3と、開繊シリンダ2と吸引ケージ3との間で炭素繊維11を空中で撹拌させる撹拌室4と、吸引ケージ3に連通され樹脂残渣12を含む粉塵HZを回収する粉塵回収装置5とを有するので、開繊シリンダ2にて開繊された炭素繊維11を、撹拌室4にて撹拌しながら炭素繊維11に付着した樹脂残渣12を分離させることができる。また、開繊シリンダ2にて開繊された炭素繊維11に樹脂残渣12が付着していても、撹拌室4にて撹拌された炭素繊維11が空中で浮遊しながら互いに接触し擦り合うことによって、炭素繊維11の折損を伴うことなく、炭素繊維11に付着している樹脂残渣12を分離させることができる。また、分離された樹脂残渣12が撹拌室4にて炭素繊維11と共に撹拌されることによって、樹脂残渣12が研磨剤の作用をして、炭素繊維11に付着した樹脂残渣12の分離を促進させることができる。したがって、炭素繊維11の長さの均一化を図りながら、炭素繊維11から樹脂残渣12を効果的に分離できる。
【0054】
また、開繊されて樹脂残渣12が分離された炭素繊維11を外周から吸引する上下一対の吸引ケージ3(31、32)を有するので、上下一対の吸引ケージ3の外周に形成された炭素繊維吸着面311、321を互いに近接する方向(P2、P3)に回転させることによって、上下一対の吸引ケージ3にて外周に積層された炭素繊維11を上下重ね合せてシート状の炭素繊維不織布THを形成することができる。これによって、炭素繊維不織布THの厚さの均一化を図ることができる。すなわち、吸引ケージ3の外周に炭素繊維11が薄く積層された個所では、炭素繊維11が厚く積層された箇所に比較して、吸引力が相対的に高まり、炭素繊維11の補充が自動的に行われる。また、吸引ケージ3の外周に積層された炭素繊維11の厚さに多少のバラツキがあっても、上下一対の吸引ケージ3にて外周に積層された炭素繊維11を上下重ね合せることによって、炭素繊維不織布THにおける炭素繊維11の厚さのバラツキを低減できる。したがって、シート状の炭素繊維不織布THを形成したとき、積層した炭素繊維11の厚さの均一化が図られる。
【0055】
また、吸引ケージ3に連通され樹脂残渣12を含む粉塵HZを回収する粉塵回収装置5を有するので、吸引ケージ3を通過した樹脂残渣12を含む粉塵HZを粉塵回収装置5にて回収することができる。そのため、炭素繊維11に付着した樹脂残渣12の分離に伴う粉塵HZを飛散させずに回収できる。したがって、良好な作業環境の下で、炭素繊維強化樹脂TJを再利用するためのシート状の炭素繊維不織布THを形成することができる。
【0056】
よって、本他の実施形態によれば、均質な炭素繊維11から成るシート状の炭素繊維不織布THを形成でき、樹脂残渣12の分離に伴う粉塵HZの飛散を低減しつつ回収できる炭素繊維11の分離回収装置10を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、炭素繊維強化樹脂(CFRP)から炭素繊維とマトリックス樹脂とを分離して、再利用可能なシート状の炭素繊維不織布を形成する炭素繊維の分離回収方法及び分離回収装置として利用できる。
【符号の説明】
【0058】
2、2A、2B 開繊シリンダ
3、3A、3B 吸引ケージ
4、4A、4B 撹拌室
5、5A、5B 粉塵回収装置
6、6A、6B 送風装置
10、10A、10B 分離回収装置
11 炭素繊維
12 樹脂残渣
21、21A、21B 投入口
31、31A、32、32B 吸引ケージ
41、41A、41B 底板
51、51A、51B 排気管
61、61A、61B 送風口
62、62A、62B 吸気口
HZ 粉塵
TH 炭素繊維不織布
TJ 炭素繊維強化樹脂
TS1 炭素繊維細片
図1
図2
図3
図4