IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本製鋼所の特許一覧

<>
  • 特開-粉末積層造形装置および造形方法 図1
  • 特開-粉末積層造形装置および造形方法 図2
  • 特開-粉末積層造形装置および造形方法 図3
  • 特開-粉末積層造形装置および造形方法 図4
  • 特開-粉末積層造形装置および造形方法 図5
  • 特開-粉末積層造形装置および造形方法 図6
  • 特開-粉末積層造形装置および造形方法 図7
  • 特開-粉末積層造形装置および造形方法 図8
  • 特開-粉末積層造形装置および造形方法 図9
  • 特開-粉末積層造形装置および造形方法 図10
  • 特開-粉末積層造形装置および造形方法 図11
  • 特開-粉末積層造形装置および造形方法 図12
  • 特開-粉末積層造形装置および造形方法 図13
  • 特開-粉末積層造形装置および造形方法 図14
  • 特開-粉末積層造形装置および造形方法 図15
  • 特開-粉末積層造形装置および造形方法 図16
  • 特開-粉末積層造形装置および造形方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166895
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】粉末積層造形装置および造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/171 20170101AFI20221027BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20221027BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20221027BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20221027BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221027BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20221027BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20221027BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20221027BHJP
   B22F 12/60 20210101ALI20221027BHJP
   B22F 12/30 20210101ALI20221027BHJP
   B22F 12/90 20210101ALI20221027BHJP
   B22F 12/84 20210101ALI20221027BHJP
【FI】
B29C64/171
B29C64/245
B29C64/153
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B22F10/28
B22F12/60
B22F12/30
B22F12/90
B22F12/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072291
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL35
4F213WL73
4F213WL85
(57)【要約】
【課題】所望の製品を効率よく製造する粉末積層造形装置および造形方法を提供する。
【解決手段】粉末積層造形装置1は、複数の造形ステージ11、ステージ搬送機構12および複数の昇降制御機構17を有する。造形ステージ11は、加工対象物である粉末を積載可能な主面を有する。ステージ搬送機構12は、複数の前記造形ステージが工程の進行方向に沿って配列された複数の加工区を有する加工領域A11において複数の造形ステージ11を進行方向に搬送する。複数の昇降制御機構17は、加工領域A11における複数の造形ステージ11のそれぞれの高さを制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物である粉末を積載可能な主面を有する造形ステージと、
複数の前記造形ステージが工程の進行方向に沿って配列された複数の加工区を有する加工領域において複数の前記造形ステージを前記進行方向に搬送するステージ搬送機構と、
前記加工領域における複数の前記造形ステージのそれぞれの高さを制御する複数の昇降制御機構と、を備える
粉末積層造形装置。
【請求項2】
前記ステージ搬送機構は、環状に構成され循環して前記造形ステージを搬送する搬送部と、前記搬送部を駆動する搬送駆動部と、を含む、
請求項1に記載の粉末積層造形装置。
【請求項3】
前記ステージ搬送機構は、前記搬送部が鉛直面に沿って循環するように構成されている、
請求項2に記載の粉末積層造形装置。
【請求項4】
前記ステージ搬送機構は、前記加工領域における前記搬送部の高さが、工程の上流側から下流側に向かって低くなるように配置されている、
請求項2または3に記載の粉末積層造形装置。
【請求項5】
前記加工領域において、前記搬送部と前記造形ステージとが前記進行方向に連動するように、前記搬送部と前記造形ステージとのそれぞれに連結する連結部をさらに備える、
請求項2~4のいずれか一項に記載の粉末積層造形装置。
【請求項6】
前記連結部は、前記加工領域において、上下方向の相対的な位置関係が変化可能に前記搬送部と前記造形ステージとのそれぞれに連結する、
請求項5に記載の粉末積層造形装置。
【請求項7】
前記連結部は、前記搬送部に連結する部分と前記造形ステージに連結する部分との間に屈曲する関節部を有する、
請求項5または6に記載の粉末積層造形装置。
【請求項8】
前記加工領域において、隣接する2つの前記加工区に跨って前記進行方向に延伸し、一の前記造形ステージを水平方向に案内する複数の水平ガイドを備える、
請求項1~7のいずれか一項に記載の粉末積層造形装置。
【請求項9】
前記水平ガイドは、工程の上流側に配置された第1の前記水平ガイドにおける下流側部分の下方に、工程の下流側に配置された第2の前記水平ガイドの上流側部分が配置される、
請求項8に記載の粉末積層造形装置。
【請求項10】
前記水平ガイドは、前記造形ステージが着脱可能に係合する、
請求項8または9に記載の粉末積層造形装置。
【請求項11】
前記昇降制御機構は、前記加工領域における工程の上流側に配置された第1の前記水平ガイドと下流側に配置された第2の前記水平ガイドとの間を昇降可能に配置され、第1の前記水平ガイドから離脱した前記造形ステージを第2の前記水平ガイドと係合可能に下降させる、
請求項8~10のいずれか一項に記載の粉末積層造形装置。
【請求項12】
前記加工領域において、前記進行方向に沿って前記造形ステージの側部に接し、且つ、前記造形ステージの前記主面から上端部までの高さが可変可能に立設する側板と、
前記加工領域において、前記進行方向に直交する方向に沿って、且つ、前記造形ステージの側部に接するように立設する仕切板と、をさらに備え、
前記側板と前記仕切板とは、前記造形ステージに敷き詰められる前記粉末を支持する枠体を形成する、
請求項1~11のいずれか一項に記載の粉末積層造形装置。
【請求項13】
前記側板は、隣接する複数の工程に跨って延伸し、前記上端部が水平に形成されている、
請求項12に記載の粉末積層造形装置。
【請求項14】
上下方向にそれぞれ独立して直動可能に複数の前記仕切板を支持するとともに、水平面に沿って環状に循環するように前記仕切板を搬送する仕切板搬送機構をさらに備える、
請求項12または13に記載の粉末積層造形装置。
【請求項15】
前記仕切板搬送機構は、前記加工領域において前記進行方向に沿って前記仕切板を搬送し、前記仕切板が前記加工領域を離脱した後には、前記進行方向と異なる方向に前記仕切板を搬送する、
請求項14に記載の粉末積層造形装置。
【請求項16】
前記仕切板搬送機構は、前記加工領域における前記造形ステージの動きに前記仕切板を連動させる、
請求項14または15に記載の粉末積層造形装置。
【請求項17】
前記加工領域において、複数の前記造形ステージのそれぞれに対して前記粉末を並行して敷き詰める複数のリコータをさらに備える、
請求項1~16のいずれか一項に記載の粉末積層造形装置。
【請求項18】
前記リコータは、前記進行方向に直交する方向に往復運動を行うことにより前記粉末を前記造形ステージに敷き詰める、
請求項17に記載の粉末積層造形装置。
【請求項19】
加工対象物である粉末を積載可能な主面を有する造形ステージを複数有し、複数の前記造形ステージを工程の進行方向に沿って配列した加工領域において連続して造形物を造形する造形方法であって、
(a)工程の進行方向に沿って配列した複数の前記造形ステージを前記進行方向に搬送する工程と、
(b)複数の前記造形ステージをそれぞれ下降させる工程と、
(c)複数の前記造形ステージのそれぞれに前記粉末を敷き詰める工程と、
(d)複数の前記造形ステージに敷き詰めた前記粉末に対してレーザ光を照射する工程と、
(e)工程(a)~工程(d)を繰り返す工程と、
を備える
造形方法。
【請求項20】
前記造形方法は、工程(b)~工程(d)を予め設定された回数繰り返す、
請求項19に記載の造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末積層造形装置および造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末積層造形装置は、金属や樹脂などの材料粉末を粉末床に敷きつめ、敷きつめた粉末床に対してレーザを照射し、かかる粉末を融解および凝固させ、これを積み重ねることにより三次元の造形体を得る。
【0003】
例えば特許文献1は、金属用3Dプリンタにおける製造の手順として、以下の工程(a)、(b)、(c)および(d)を繰り返す技術が開示されている。(a)粉末供給槽に母材金属粉末とそれに対する異質核粒子とからなる混合粉末を充填し、チャンバ内を真空場にする。(b)積層1ピッチ分だけ造形テーブルを下降させて、粉末供給層を積層1ピッチ分だけ上昇させた後、ブレードによって造形テーブル上に混合粉末を敷きつめる。(c)レーザを照射することにより1層分の混合粉末の余熱および融解と凝固を行う。母材金属粉末のみが融解し凝固するため、異質核粒子が異質核生成の際に凝固の核として働き、等軸晶の晶出および結晶粒が微細化する。(d)混合粉末を積層1ピッチ分だけ造形物上に積層し、レーザを照射することにより混合粉末の余熱および融解と凝固を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-222899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粉末積層造形装置においては、1つの装置において上述のような異なる複数の工程を1つずつ順番に実行して所望の製品を製造するバッチ式が採用される。しかし、粉末積層造形方法における生産性を向上させる技術が期待されている。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、所望の製品を効率よく製造する粉末積層造形装置等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる粉末積層造形装置は、複数の造形ステージ、ステージ搬送機構および複数の昇降制御機構を有する。造形ステージは、加工対象物である粉末を積載可能な主面を有する。ステージ搬送機構は、複数の前記造形ステージが工程の進行方向に沿って配列された複数の加工区を有する加工領域において複数の前記造形ステージを前記進行方向に搬送する。複数の昇降制御機構は、前記加工領域における複数の前記造形ステージのそれぞれの高さを制御する。
【0008】
本開示にかかる造形方法は、加工対象物である粉末を積載可能な主面を有する造形ステージを複数有し、複数の前記造形ステージを工程の進行方向に沿って配列した加工領域において連続して造形物を造形する粉末積層造形装置が実行する造形方法である。
粉末積層造形装置は、工程(a)として、工程の進行方向に沿って配列した複数の前記造形ステージを前記進行方向に搬送する。
粉末積層造形装置は、工程(b)として、複数の前記造形ステージをそれぞれ下降させる。
粉末積層造形装置は、工程(c)として、複数の前記造形ステージのそれぞれに前記粉末を敷き詰める。
粉末積層造形装置は、工程(d)として、複数の前記造形ステージに敷き詰めた前記粉末に対してレーザ光を照射する。
粉末積層造形装置は、工程(e)として、工程(a)~工程(d)を繰り返す。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、所望の製品を効率よく製造する粉末積層造形装置および造形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態にかかる粉末積層造形装置の側面図である。
図2】実施の形態にかかる粉末積層造形装置の上面図である。
図3】粉末積層造形装置1における光学ブロックの構成例を示す側面図である。
図4】加工領域における水平ガイドの配置図である。
図5】連結部および昇降制御機構の構成を説明するための図である。
図6】造形ステージの構成を説明するための図である。
図7】仕切板制御ブロックの斜視図である。
図8】粉末積層造形装置が実行する造形方法を示すフローチャートである。
図9】粉末積層造形装置の動作を説明するための第1の図である。
図10】粉末積層造形装置の動作を説明するための第2の図である。
図11】粉末積層造形装置の動作を説明するための第3の図である。
図12】粉末積層造形装置の動作を説明するための第4の図である。
図13】粉末積層造形装置の動作を説明するための第5の図である。
図14】粉末積層造形装置の動作を説明するための第6の図である。
図15】粉末積層造形装置の動作を説明するための第7の図である。
図16】粉末積層造形装置の動作を説明するための第8の図である。
図17】粉末積層造形装置の動作を説明するための第9の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
<実施の形態>
まず、図1および図2を参照しながら、本実施の形態にかかる粉末積層造形装置の概要について説明する。図1は、実施の形態にかかる粉末積層造形装置の側面図である。図2は、実施の形態にかかる粉末積層造形装置の上面図である。本実施の形態にかかる粉末積層造形装置1は、いわゆる3Dプリンタの一種であって、3次元の設計データを基にして、薄くスライスされた2次元の層を1枚ずつ形成して積層することによって、所望の3次元形状を有する製造品を製造する。また本実施の形態における粉末積層造形装置1は、複数の加工区において異なる工程を並行して行うことにより、連続的に製造品を製造する連続式の造形装置である。なお、図1および図2において、理解容易のために一部の構成を省略して示している。
【0013】
粉末積層造形装置1は、予熱領域A10、加工領域A11および排出領域A12を有している。予熱領域A10は、加工領域A11の手前において、粉末を敷き詰める造形ステージを予熱する。
【0014】
加工領域A11は、上述した各構成がそれぞれの機能を発揮することにより粉末を加工して所望の3次元形状物を製造する領域である。加工領域A11は、図2に示すように4か所の加工区(第1加工区A111、第2加工区A112、第3加工区A113および第4加工区A114)を含む。4か所の加工区は、それぞれに造形ステージが設置され、設置された造形ステージに対して異なる工程が行われる。より具体的には、4か所の加工区において、粉末積層造形装置1は、粉末床を形成し、形成した粉末床にレーザ光を照射する。造形ステージが4つの加工区を順次通過することにより、造形ステージ上には、製造品を含有する造形ブロックが生成される。排出領域A12は、加工領域A11を通過した造形ブロックを搬送および排出する領域である。
【0015】
以下に、粉末積層造形装置1の各構成について説明する。粉末積層造形装置1は、主な構成として、造形ブロック10、仕切板制御ブロック20、粉末供給ブロック30および光源ブロック40を有している。
【0016】
なお、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものとして、図1は、右手系の直交座標系が付されている。また、図2以降において、直交座標系が付されている場合、図1のX軸、Y軸、およびZ軸方向と、これらの直交座標系のX軸、Y軸、およびZ軸方向はそれぞれ一致している。
【0017】
(造形ブロック10)
造形ブロック10は、主な構成として、造形ステージ11、ステージ搬送機構12、連結部13、水平ガイド16、昇降制御機構17および側板18を有している。
【0018】
造形ステージ11は、加工対象物である粉末を積載可能な矩形状の主面を有する。造形ステージ11は連結部13を介してステージ搬送機構12に係合しており、ステージ搬送機構12により搬送される。造形ステージ11は、加工領域A11において主面が上に向くように構成されている。
【0019】
ステージ搬送機構12は、連結部13を介して複数の造形ステージ11を支持し、この造形ステージ11を工程の進行方向に順次搬送する。工程の進行方向とは、図1および図2におけるX軸マイナス側からX軸プラス側へ向かう方向である。ステージ搬送機構12は主な構成として、搬送部121および搬送駆動部122を有する。
【0020】
搬送部121は、環状に構成されており、環に沿って造形ステージ11を支持している。また搬送部121は、搬送駆動部122によって駆動される。これにより搬送部121は、環状に循環して造形ステージ11を搬送する。搬送部121は例えば、環状に構成されたチェーンやベルトである。
【0021】
搬送駆動部122は、搬送部を駆動するためのモータを含み、搬送部121と係合して搬送部121を環状に循環させる。搬送駆動部122は1つであってもよいし、複数存在していてもよい。図1に示すステージ搬送機構12は、搬送部121の右端および左端のそれぞれに搬送駆動部122を有している。また図1に示すように、搬送駆動部122はX軸に平行な軸を中心として右回転(つまり時計回りに回転)をするように構成されている。これにより、搬送駆動部122は、搬送部121の上側を左から右へと搬送する。また搬送駆動部122は、搬送部121の下側を右から左へと搬送する。なお、ステージ搬送機構12は上述の構成に加えて、搬送部121の動きを規制し、または搬送駆動部122の動作を補助するためのガイド部材を含んでいてもよい。図に示す搬送駆動部122は、一方が駆動し、他方が従動するものであってもよい。
【0022】
本実施の形態における搬送部121は、鉛直面に沿って循環するように構成されている。より具体的には、図1に示す搬送部121は、鉛直面であるYZ面に沿って環状に循環する。また搬送部121は、左右端に円形部を有する略長円形状を呈している。さらに、ステージ搬送機構12は、加工領域A11における搬送部121の高さが、工程の上流側から下流側に向かって低くなるように配置されている。図1に示す例の場合、加工領域A11において、搬送部121は搬送駆動部122によって、左から右に搬送される。よって、加工領域A11における工程の上流側は、図の左側であって、工程の下流側は、図の右側である。そのため、図1に示す搬送部121は、左上から右下に向かって低くなっている。
【0023】
水平ガイド16は、加工領域A11において、隣接する2つの工程に跨って進行方向に延伸し、係合した1つの造形ステージ11を水平方向に案内する。水平ガイド16は例えばリニアガイドにより構成されていてもよい。造形ブロック10は、加工領域A11において複数の水平ガイド16を有している。複数の水平ガイド16は、傾斜して延伸する搬送部121に沿って、カスケード状または階段状に配置されている。
【0024】
昇降制御機構17は、加工領域A11の、それぞれの工程に配置されており、配置されている工程に搬送されてくる造形ステージ11を支持する。また昇降制御機構17は、粉末供給ブロック30に粉末床を形成させるために、支持する造形ステージ11の高さを制御する。さらに昇降制御機構17は、造形ステージ11に敷き詰められた粉末にレーザ光が照射された後に、造形ステージ11と、造形ステージ11の下方に位置する水平ガイド16とが係合可能な位置に、造形ステージ11を降下させる。
【0025】
側板18は、加工領域A11において、進行方向に沿って造形ステージ11の側部に接する面を有する。側板18は、造形ステージ11の側部に接することにより、造形ステージ11に敷き詰められる粉末を支持する。本実施の形態における側板18は、隣接する複数の加工区に跨って延伸し、その上端部は、水平に形成されており、位置が変化しないように固定されている。したがって、ステージ搬送機構12により搬送される造形ステージ11の主面から側板18の上端部までの高さは4か所の加工区ごとに異なる。すなわち、側板18は、加工領域A11において、進行方向に沿って造形ステージ11の側部に接し、且つ、造形ステージ11の主面から上端部までの高さが可変可能に立設する。また側板18は上端部において粉末供給ブロック30を支持する。
【0026】
(仕切板制御ブロック20)
仕切板制御ブロック20は、造形ブロック10と連動することにより、複数の仕切板21の配置を制御する。仕切板制御ブロック20は、仕切板21、仕切板搬送機構22仕切板搬送ベルト23およびリニアガイド24を有する。
【0027】
仕切板21は、上下方向に延伸するように設けられた板状の部材であって、加工領域A11において、造形ステージ11の進行方向に直交する方向に沿って、且つ、造形ステージ11の側部に接するように立設する。また仕切板21は、加工領域A11において、隣接する造形ステージ11の間に介在したまま造形ステージ11の動きに連動する。これにより、仕切板21は、造形ステージ11に敷き詰められる粉末を支持する。すなわち造形ステージ11の主面上は上述した側板18と仕切板21とにより四方が支持されている。換言すると、側板18および仕切板21は、造形ステージ11の主面上において枠体を形成している。
【0028】
また仕切板21は、リニアガイド24により上下方向に直動可能に支持されている。これにより、仕切板21は、加工領域A11において階段状に配置され、且つ、進行方向に加工しながら搬送される造形ステージ11の動きに追従する。
【0029】
仕切板搬送機構22は、上下方向に中心軸を有する円筒状の回転部材である。仕切板搬送機構22は、仕切板搬送ベルト23に係合し、仕切板搬送ベルト23の動きを支持する。具体的には、図2に示す仕切板搬送機構22は、長円形を呈する仕切板搬送ベルト23の両端の円形部分の内側に係合している。仕切板搬送機構22は、仕切板搬送ベルト23を能動的に循環させるための駆動部を含んでいてもよい。また仕切板搬送機構22は、駆動部を含まず、造形ブロック10と連動して従動するように構成されていてもよい。
【0030】
仕切板搬送ベルト23は、水平面(すなわちXY面)に沿って環状に形成され、仕切板搬送機構22により循環可能に支持される。仕切板搬送ベルト23は外周に複数のリニアガイド24が固定されている。図2に示す仕切板搬送ベルト23は、左右方向に延伸する長円形を呈しており、左右端の円形部の内側に仕切板搬送機構22が係合している。なお、仕切板搬送ベルト23の形状は、図2に示すような長円形に限定されない。
【0031】
リニアガイド24は、レール部と可動部とを有する。レール部は上下方向に平行になるように仕切板搬送ベルト23に固定される。可動部は、上下方向に移動可能に仕切板21を保持する。
【0032】
以上、仕切板制御ブロック20について説明した。上述のように、仕切板制御ブロック20は、上下方向にそれぞれ独立して直動可能に複数の仕切板21を支持する。また仕切板制御ブロック20は、水平面に沿って環状に循環するように仕切板21を搬送する仕切板搬送機構22を有する。
【0033】
また仕切板搬送機構22は、加工領域A11において進行方向に沿って仕切板21を搬送し、仕切板21が加工領域A11を離脱した後には、進行方向と異なる方向に仕切板21を搬送する。また仕切板搬送機構22は、加工領域A11における造形ステージ11の動きに仕切板21を連動させる。
【0034】
(粉末供給ブロック30)
粉末供給ブロック30は主な構成として、リコータ31および供給粉末32を有する。リコータ31は、供給粉末32を造形ステージ11に敷き詰めるための部材である。リコータ31は一般的にブレード状の形態またはローラ状の形態を有する。図2に示すように、リコータ31例えば造形ステージ11の側部において側板18の上面に配置され、造形ステージ11の進行方向(X軸方向)に対して直交する方向(Y方向)に往復運動する。
【0035】
供給粉末32は、リコータ31により造形ステージ11に敷き詰められる粉末である。供給粉末32は、所定の粉末供給装置によりリコータ31と造形ステージ11との間に供給される。所定の粉末供給装置は、例えば下方に貯留された粉末のうちの予め設定された量をリコータ31により移動可能に上昇させる装置である。また所定の粉末供給装置は、例えば、リコータ31と造形ステージ11との間の面上に予め設定された量の粉末を上方から落下させて供給する装置であってもよい。
【0036】
上述のとおり、複数のリコータ31は、加工領域A11において、複数の造形ステージ11のそれぞれに対して供給粉末32を並行して敷き詰める。またリコータ31は、進行方向に直交する方向(図2のY方向)に往復運動を行う。これによりリコータ31は、供給粉末32を造形ステージ11に敷き詰める。
【0037】
(光源ブロック40)
図1に示す光源ブロック40は、加工領域A11の、それぞれの加工区において、リコータ31により敷き詰められた粉末に対してレーザ光を照射する。これにより光源ブロック40は、粉末を所望の形状に溶融および固化させる。
【0038】
以上、粉末積層造形装置1の概要について説明した。なお、上述の例において、粉末積層造形装置1は加工領域A11に、4つの加工区(第1加工区A111~第4加工区A114)を有する。しかしながら、加工領域A11が有する加工区は4つに限定されない。加工領域A11は2つ以上の加工区を有していればよい。
【0039】
次に、図3を参照して光源ブロック40の構成例について説明する。図3は、粉末積層造形装置1における光学ブロックの構成例を示す側面図である。図3は、加工領域A11において、加工区ごとに設置されている造形ステージ11に粉末床90が敷き詰められた状態を示している。また図3は、光源ブロック40が複数の粉末床90に対してレーザ光を照射して製品91を製造している状況を示している。
【0040】
図3に示す光源ブロック40は主な構成として、レーザ発振部41、半反射ミラー42、全反射ミラー43およびガルバノユニット44を有する。レーザ発振部41は例えば炭酸ガスレーザを出力するレーザ発振器である。半反射ミラー42は入力されるレーザ光の一部を反射し、残りのレーザ光を透過する。全反射ミラー43は、入力されるレーザ光を反射する。
【0041】
ガルバノユニット44は、入力されるレーザ光を所定の角度に反射させるミラーと、このミラーを駆動するガルバノモータと、を含む。ガルバノユニット44はこの構成により、入力されるレーザ光を、造形ステージ11の主面上に敷き詰められた粉末床90に対して照射し、粉末を所望の形状に溶融および固化させ、製品91を形成する。
【0042】
光源ブロック40は、複数の半反射ミラー42および全反射ミラー43を組み合わせることにより、複数の加工区のそれぞれに設けられたガルバノユニット44に対して、1つのレーザ発振部41が生成したレーザ光を分岐させて供給する。このような構成により、光源ブロック40は、複数の異なる加工区に対して照射するレーザパワーのばらつきを抑制することができる。
【0043】
次に、図4を参照して水平ガイドの配置について説明する。図4は、加工領域における水平ガイドの配置図である。図4は、搬送部121の一部と、搬送部121の上方に固定されている複数の水平ガイド16と、を示している。なお、図4において、搬送部121は左から右へ搬送される。すなわち図4の左側は工程の上流側であり、図4の右側は工程の下流側である。
【0044】
図に示すように、水平ガイド16は、加工領域A11において、隣接する2つの加工区に跨って進行方向に延伸する。また水平ガイド16は水平ガイド溝160を有する。水平ガイド16の水平ガイド溝160は、造形ステージ11が着脱可能に係合する。水平ガイド溝160に造形ステージ11が係合した場合に、水平ガイド16は、係合した造形ステージ11を隣接する加工区に案内する。
【0045】
また水平ガイド16は、工程の上流側に配置された第1の水平ガイドにおける下流側部分の下方に、工程の下流側に配置された第2の前記水平ガイドの上流側部分が配置される。具体的には例えば、第1加工区A111には、第1の水平ガイド161と第2の水平ガイド162とが配置されている。第1の水平ガイド161は、右側(下流側部分)が第1加工区A111に配置されている。また第2の水平ガイド162は、左側(上流側部分)が第1加工区A111において第1の水平ガイド161の下方に配置されている。なお、第1の水平ガイド161と第2の水平ガイド162とは高さH10の距離を有している。
【0046】
次に、図5を参照して、連結部13および昇降制御機構17について説明する。図5は、連結部および昇降制御機構の構成を説明するための図である。図5の左側は、第2連結部15が屈曲した状態の連結部13が、造形ステージ11と搬送部121とを連結する状態を示している。図5の中央は、加工領域A11において搬送部121が斜めに延伸する場合に連結部13が造形ステージ11と搬送部121とを連結する状態を示している。図5の右側は、造形ステージ11が昇降制御機構17に支持されながら下降した状態を示している。
【0047】
まず、連結部13について説明する。搬送部121と造形ステージ11とを連結する連結部13は、第1連結部14と第2連結部15とを有する。第1連結部14は一端部が造形ステージ11の上流側において造形ステージ11と係合し、且つ、他端部が搬送部121に係合することにより、造形ステージ11と搬送部121とを連結する。第1連結部14は主な構成として、第1連結軸141および第1ガイド溝142を有する。第1連結軸141は、搬送部121に係合している。第1連結部14は、第1連結軸141を中心に回動可能に搬送部121に支持されている。第1ガイド溝142はガイド溝であって、造形ステージ11の側部に突出しているガイド軸112を直動可能に支持している。
【0048】
第2連結部15は、一端部が造形ステージ11の下流側において造形ステージ11と係合し、且つ、他端部が搬送部121に係合することにより、造形ステージ11と搬送部121とを連結する。第2連結部15は主な構成として、第2連結軸151、第2ガイド溝152および関節部153を有する。第2連結軸151は、搬送部121に係合している。
【0049】
第2連結部15は、第2連結軸151を中心に回動可能に搬送部121に支持されている。第2ガイド溝152はガイド溝であって、造形ステージ11の側部に突出しているガイド軸112を直動可能に支持している。関節部153は、第2連結軸151と第2ガイド溝152との間に設けられた関節であって、第2連結部15の形状を、屈曲状態または直線状態のいずれかに変形可能に構成されている。第2連結部15は屈曲状態または直線状態を維持するためのロック機構を備えていてもよい。
【0050】
図の左側に示すように、連結部13は、搬送部121が水平方向に延伸する場合は、第2連結部15の関節部153を屈曲させる。また図の中央に示すように、連結部13は、搬送部121が斜めに延伸する場合には、関節部153が屈曲しない伸長状態となる。このように、搬送部121の延伸方向に応じて第2連結部15の状態を変化させることにより、連結部13は搬送部121が水平に延伸する場合も、搬送部121が斜めに延伸する場合も、造形ステージ11の姿勢を水平面に平行に保つことができる。また図の右側に示すように、連結部13は、造形ステージ11が水平面に平行な姿勢を維持したまま高さH10の寸法を下降できるように構成されている。上述の構成により、連結部13は、加工領域A11において、上下方向の相対的な位置関係が変化可能に搬送部121と造形ステージ11とのそれぞれに連結する。
【0051】
次に昇降制御機構17について説明する。昇降制御機構17は主な構成として、昇降用モータ171、駆動軸172および昇降ブロック173を有する。昇降用モータ171は螺旋状の溝を有する駆動軸172を所望の方向に回転させる。駆動軸172は昇降用モータ171により回転する軸であって、駆動軸172に係合している。昇降ブロック173は、駆動軸172に係合するとともに、造形ステージ11の下部を支持する。
【0052】
例えば昇降制御機構17は、昇降用モータ171が駆動軸172を右回転させると、昇降ブロック173を上昇させる。また昇降制御機構17は例えば、昇降用モータ171が駆動軸172を左回転させると、昇降ブロック173を下降させる。このように、昇降制御機構17は、昇降ブロック173が造形ステージ11を支持する場合に、上述の動きに応じて造形ステージ11の高さを制御する。
【0053】
上述の構成により昇降制御機構17は、加工区における工程の上流側に配置された第1の水平ガイド16(例えば図4の第1の水平ガイド161)と下流側に配置された第2の水平ガイド16(例えば図4の第2の水平ガイド162)との間を昇降可能に配置される。これにより昇降制御機構17は、第1の水平ガイド16から離脱した造形ステージ11を第2の水平ガイド16と係合可能に下降させる。
【0054】
次に、図6を参照して造形ステージ11の構成について説明する。図6は、造形ステージの構成を説明するための図である。図6には、2つの対向する水平ガイド16の間に介在する造形ステージ11が左右に2つ示されている。それぞれの造形ステージ11は理解容易の為に一部が透過されて示されている。造形ステージ11は、プランジャ111およびガイド軸112を含む。
【0055】
プランジャ111は、ガイド軸112を駆動してアキシャル方向に繰り出したり、引き込んだりする。造形ステージ11は、両側の側部(Y方向の側部)において前後方向に離間して配置されているプランジャ111をそれぞれ2つ、すなわち合計で4つ有している。またプランジャ111が駆動するガイド軸112は、第1連結部14と第2連結部15とにそれぞれ係合している。
【0056】
図6の左側に示す造形ステージ11は、4つのプランジャ111がそれぞれガイド軸112を繰り出している状態である。ガイド軸112は、プランジャ111に繰り出されることにより、水平ガイド16が有する水平ガイド溝160に係合する。この場合、造形ステージ11は水平ガイド16に案内されて、主面が水平面に平行な姿勢を維持したまま、水平方向に移動可能である。一方、この場合には、造形ステージ11は水平ガイド溝160に拘束されているため、上下方向に移動することができない。
【0057】
図6の右側に示す造形ステージ11は、4つのプランジャ111がそれぞれガイド軸112を引き込んでいる状態である。ガイド軸112は、プランジャ111に引き込まれることにより、水平ガイド溝160から離脱する。この場合、造形ステージ11は第1連結部14および第2連結部15に案内されて上下方向に移動可能である。なおこの場合、図6の右側において点線により示すように、造形ステージ11は下方から昇降制御機構17により支持されることにより、上下方向に移動する。
【0058】
以上、造形ステージ11の構成について説明した。上述のように、本実施の形態における造形ステージ11は、水平ガイド16に着脱可能に係合する。これにより粉末積層造形装置1は、複数の造形ステージ11の位置および姿勢を制御する。
【0059】
次に、図7を参照して仕切板制御ブロックについて説明する。図7は、仕切板制御ブロックの斜視図である。図7に示す仕切板制御ブロック20は、上方から観察した場合に、仕切板搬送ベルト23が反時計回りに循環している。仕切板搬送ベルト23の外周には、複数のリニアガイド24が上下方向に沿って固定されている。リニアガイド24は上下方向に直動可能に、仕切板21を有している。仕切板搬送ベルト23は、造形ステージ11の動きに対応して循環している。これにより仕切板21は、造形ステージ11と連動する。
【0060】
造形ステージ11は、対向する2つの側板18の間を通過する。このとき、2つの側板18の間は距離W18である。また距離W18を通過する造形ステージ11は幅W11を有する。ここで、幅W11は、距離W18をがたつきなく通過可能な大きさとなっている。また、仕切板21は、造形ステージ11に接する部分の寸法として幅W21を有している。ここで、造形ステージ11が有する幅W11と、仕切板21が有する幅W21とは、略同一である。そのため、加工領域A11において形成される粉末床90は、側板18と仕切板21とに囲まれ支持された状態を維持しながら、工程の進行方向に順次搬送される。
【0061】
加工領域A11において加工が行われた粉末は、四角柱状の粉末ブロック92を形成する。粉末ブロック92は、加工領域A11を通過すると、排出領域A12に搬送される。排出領域A12は、側板18が存在せず、且つ、工程の下流側の仕切板21は仕切板搬送ベルト23に沿って移動するため造形ステージ11から離れる。そのため、排出領域A12において、粉末ブロック92は工程の上流側に存在する仕切板21とは接しているものの、それ以外の周囲の面は支持されない。そして、この状態からさらに造形ステージ11および仕切板21が進行方向に移動すると、仕切板21は仕切板搬送ベルト23に沿って矢印A21の方向に旋回しながら移動する。すると、粉末ブロック92は旋回する仕切板21により、造形ステージ11の進行方向とは異なる方向に押し出されることになる。このように、仕切板21は、排出領域A12において、加工された粉末ブロック92を排出する機能を有する。
【0062】
次に、図9を参照して粉末積層造形装置1が実行する処理について説明する。図9は、粉末積層造形装置が実行する造形方法を示すフローチャートである。図9に示すフローチャートは、粉末積層造形装置1が加工領域A11において行う処理について示している。本開示にかかる造形方法は、加工対象物である粉末を積載可能な主面を有する造形ステージを複数有し、複数の造形ステージを工程の進行方向に沿って配列した加工領域において連続して造形物を造形する粉末積層造形装置が実行する造形方法である。
【0063】
まず粉末積層造形装置1は、工程(a)として、工程の進行方向に沿って配列した複数の造形ステージ11を進行方向に搬送する(ステップS11)。
【0064】
次に、粉末積層造形装置1は、工程(b)として、複数の造形ステージ11をそれぞれ下降させる(ステップS12)。
【0065】
次に、粉末積層造形装置1は、工程(c)として、複数の造形ステージ11のそれぞれに粉末を敷き詰める(ステップS13)。
【0066】
次に、粉末積層造形装置1は、工程(d)として、複数の造形ステージ11に敷き詰めた粉末に対してレーザ光を照射する(ステップS14)。
【0067】
次に、粉末積層造形装置1は、工程(b)~工程(d)が所定回数に到達したか否かを判定する(ステップS15)。すなわち粉末積層造形装置1は、工程(b)~工程(d)を所定回数実行する。所定回数は、1回でもよいし、2回以上であってもよい。工程(b)~工程(d)が所定回数に到達したと判定しない場合(ステップS15:NO)、粉末積層造形装置1はステップS12に戻り、工程(b)を行う。一方、工程(b)~工程(d)が所定回数に到達したと判定した場合(ステップS15:YES)、粉末積層造形装置1は、ステップS16に進む。
【0068】
次に、粉末積層造形装置1は、一連の処理を終了するか否かを判定する(ステップS16)。換言すると、粉末積層造形装置1は、一連の処理を終了すると判定しない場合(ステップS16:NO)、工程(e)として、工程(a)~工程(d)を繰り返す。そして、粉末積層造形装置1は、一連の処理を終了すると判定する場合(ステップS16:YES)、一連の処理を終了する。一連の処理を終了する場合とは、例えばユーザによる停止の支持を受け取った場合や、粉末床に敷き詰めるための粉末が供給されなかった場合などである。
【0069】
以上、粉末積層造形装置1が実行する処理について説明した。上述の粉末積層造形方法によれば、所望の製品を効率よく製造することができる。
【0070】
次に、上述した粉末積層造形方法について、具体的例と共に説明する。図9は、粉末積層造形装置の動作を説明するための第1の図である。図9において、実線により示された造形ステージ11は、予熱領域A10に位置している。以降の説明において、1つの造形ステージ11の動作について着目するために、着目する1つの造形ステージ11を実線により示し、その他の造形ステージ11等は、点線により示す。また理解容易のため、適宜構成を省略して表示する。
【0071】
図9において実線により示されている造形ステージ11は、ステージ搬送機構12により予熱領域A10から加工領域A11に搬送される(工程(a))。このときガイド軸112は、水平ガイド溝160に係合している。そのため造形ステージ11は、主面が水平状態を維持しながら第1加工区A111に搬送される。なお、この時点では造形ステージ11に係合する第2連結部15の関節部153は屈曲状態である。
【0072】
図10は、粉末積層造形装置の動作を説明するための第2の図である。図10において、造形ステージ11は第1加工区A111に到達している。この時点で、ガイド軸112は水平ガイド溝160に係合した状態である。また第2連結部15は屈曲状態から伸長状態に変化している。
【0073】
造形ステージ11は第1加工区A111に到達すると、第1加工区A111に設置されている昇降制御機構17は、造形ステージ11を支持するために昇降ブロック173を上昇させる。なお、昇降制御機構17は、造形ステージ11が第1加工区A111に到達する前から昇降ブロック173の上昇を開始していてもよい。
【0074】
図11は、粉末積層造形装置の動作を説明するための第3の図である。図11において、造形ステージ11は、昇降制御機構17により支持されている。またガイド軸112は、水平ガイド16から離脱している。よって、造形ステージ11は上下方向に移動可能な状態となっている。ここからは昇降ブロック173を下降させる。そのため、造形ステージ11は第1ガイド溝142および第2ガイド溝152に沿って昇降ブロック173とともに下降する。
【0075】
図12は、粉末積層造形装置の動作を説明するための第4の図である。図12において、造形ステージ11は、図11に示した位置から高さH11下降している(工程(b))。高さH11は、この後に生成される粉末床の厚さに対応している。
【0076】
図13は、粉末積層造形装置の動作を説明するための第5の図である。図13において、造形ステージ11の主面には、粉末床90が敷き詰められ(工程(c))、そしてガルバノユニット44からレーザ光が照射されている(工程(d))。粉末床に対するレーザ光による加工が終了すると、昇降制御機構17は再び高さH11の下降(工程(b))を行う。そして、ガルバノユニット44が粉末床にレーザ光を照射する(工程(c)、工程(d))。粉末積層造形装置1は、所定の回数この処理を繰り返す。
【0077】
図14は、粉末積層造形装置の動作を説明するための第6の図である。図14に示す造形ステージ11は、所定回数の工程(b)~工程(d)を繰り返した状態である。この後に、昇降制御機構17は、造形ステージ11を工程の下流側の水平ガイド16に係合させるため、ガイド軸112が水平ガイド溝160に係合可能な位置に造形ステージ11を移動させる。
【0078】
図15は、粉末積層造形装置の動作を説明するための第7の図である。図15において、造形ステージ11は、ガイド軸112が水平ガイド溝160に係合した状態である。そのためこの後に、ステージ搬送機構12は搬送部121を駆動して、造形ステージ11を次の工程に進めるために、第1加工区A111から第2加工区A112に搬送する(工程(a))。
【0079】
図16は、粉末積層造形装置の動作を説明するための第8の図である。図16において、造形ステージ11は第2加工区A112に搬送された状態である。この後に、造形ステージ11は、水平ガイド16との係合から離脱する。さらに造形ステージ11は、昇降制御機構17により下降する(工程(b))。そして、粉末供給ブロック30が造形ステージ11の主面に粉末床を生成する(工程(c))。そしてガルバノユニット44は粉末床にレーザ光を照射する(工程(d))。
【0080】
図17は、粉末積層造形装置の動作を説明するための第9の図である。図17において、造形ステージ11は、第2加工区A112において、所定の工程が行われた状態である。そのため、第2加工区A112において、造形ステージ11の上には第1加工区A111において形成された造形物の上に、さらに粉末床が重ねられ、レーザ光によりさらに造形物が形成されている。第2加工区A112における工程が終了すると、造形ステージ11は第3加工区A113に搬送され、同様の工程を繰り返す。また、図17に示すように、それぞれの加工区において、並行して処理が実行されている。そのため、粉末積層造形装置1は、所望の製品を連続して製造することができる。
【0081】
以上、粉末積層造形装置1について説明したが、実施の形態にかかる粉末積層造形装置1は、上述の構成に限られない。例えばステージ搬送機構12が有する搬送部121は、鉛直面に沿って循環するものではなく、水平面に沿って循環する形態を呈していてもよい。また昇降制御機構17は、それぞれの加工区に固定されているものではなく、造形ステージ11に連動して進行方向に移動してもよい。また搬送部121は、昇降制御機構17を搬送するものであってもよい。
【0082】
側板18は、加工領域A11に固定されているものではなく、造形ステージ11のそれぞれに付随して上下動可能に構成されていてもよい。仕切板21は、仕切板制御ブロック20により制御されるものではなく、造形ステージ11に係合し、造形ステージ11と共に搬送されるものであってもよい。光源ブロック40は、1つのレーザ光源を分岐してレーザ光を生成するものではなく、それぞれの加工区に対してそれぞれの光源を有していてもよい。
【0083】
以上、実施の形態によれば、所望の製品を効率よく製造する粉末積層造形装置および造形方法を提供することができる。
【0084】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 粉末積層造形装置
10 造形ブロック
11 造形ステージ
12 ステージ搬送機構
13 連結部
14 第1連結部
15 第2連結部
16 水平ガイド
17 昇降制御機構
18 側板
20 仕切板制御ブロック
21 仕切板
22 仕切板搬送機構
23 仕切板搬送ベルト
24 リニアガイド
30 粉末供給ブロック
31 リコータ
32 供給粉末
40 光源ブロック
41 レーザ発振部
42 半反射ミラー
43 全反射ミラー
44 ガルバノユニット
90 粉末床
91 製品
92 粉末ブロック
111 プランジャ
112 ガイド軸
121 搬送部
122 搬送駆動部
141 第1連結軸
142 第1ガイド溝
151 第2連結軸
152 第2ガイド溝
153 関節部
160 水平ガイド溝
171 昇降用モータ
172 駆動軸
173 昇降ブロック
A11 加工領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17