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特開2022-166901ポリエステルポリオ-ル、ポリエステルポリウレタン、それらを用いた接着剤、および積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166901
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】ポリエステルポリオ-ル、ポリエステルポリウレタン、それらを用いた接着剤、および積層体
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/06 20060101AFI20221027BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20221027BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20221027BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20221027BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20221027BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221027BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
C08G63/06
C09J175/06
C09J7/30
C09J7/20
C08G18/42 080
B32B27/00 M
B32B27/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072305
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光人
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 豪
(72)【発明者】
【氏名】榮 優介
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J029
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK41A
4F100AK51A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CB00A
4F100GB15
4F100JA05A
4F100JA06B
4F100JA07A
4F100JC00B
4F100JK06
4J004CA03
4J004CA06
4J004FA08
4J029AA01
4J029AB01
4J029AC02
4J029AD01
4J029AD02
4J029AD03
4J029AD07
4J029AE13
4J029BA04
4J029CA04
4J029EG09
4J029EH01
4J029KE03
4J034BA03
4J034DC05
4J034DF01
4J034DF12
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034RA08
4J040EF111
4J040EF281
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA27
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA35
4J040KA42
4J040LA06
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA06
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、市場からの要求品質を満たす生分解性を発現することができ、かつ良好なハンドリング性(流動性)を有するポリエステルポリオ-ル、ポリエステルポリウレタン、およびそれを用いた接着性に優れた接着剤、積層体を提供することにある。
【解決手段】
本発明の課題は、分岐構造を有するジオ-ル(a)を含む水酸基成分(A)と、炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b)を含むカルボン酸成分(B)との反応生成物であるポリエステルポリオ-ル(AB)と、ラクチド(C)と環状モノマ-(D)とを含み、60℃で液状であるポリエステルポリオ-ル(ABCD)によって解決される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が300~3,000のポリエステルポリオ-ル(AB)と、ラクチド(C)と、環状モノマ-(D)(ただし、ラクチド(C)を除く)との重合体であるポリエステルポリオールであって、
ポリエステルポリオ-ル(AB)は、分岐構造を有するジオ-ル(a)を含む水酸基成分(A)、および炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b)を含むカルボン酸成分(B)の反応生成物である、
ポリエステルポリオ-ル。
【請求項2】
環状モノマ-(D)は、ε-カプロラクトンを含む、請求項1記載のポリエステルポリオ-ル。
【請求項3】
分岐構造を有するジオ-ル(a)は、1,2-プロピレングリコ-ル、3-メチル-1,5-ペンタンジオ-ル、ネオペンチルグリコ-ル、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオ-ル、1,3-ブタンジオ-ル、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオ-ル、および2-エチル-1,3-ヘキサンジオ-ルからなる群より選ばれる一種を含む、請求項1または2記載のポリエステルポリオ-ル。
【請求項4】
分岐構造を有するジオ-ル成分(a)の含有率は、水酸基成分(A)100モル%中、15~100モル%である、請求項1~3いずれか1項記載のポリエステルポリオ-ル。
【請求項5】
炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b)は、コハク酸、セバシン酸、およびアゼライン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1~4いずれか1項記載のポリエステルポリオ-ル。
【請求項6】
炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b)の含有率は、カルボン酸成分(B)100モル%中、30~100モル%である、請求項1~5いずれか1項記載のポリエステルポリオ-ル。
【請求項7】
請求項1~6いずれか1記載のポリエステルポリオ-ルと、ポリイソシアネ-ト(E)との反応生成物である、イソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)。
【請求項8】
請求項1~6いずれか1項記載のポリエステルポリオールを含む接着剤。
【請求項9】
請求項7記載のイソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)を含む接着剤。
【請求項10】
シ-ト状基材上に、請求項8または9記載の接着剤から形成してなる接着剤層を備える積層体。
【請求項11】
シ-ト状基材は、生分解性である請求項10記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルポリオ-ル、ポリエステルポリウレタン、それらを用いた接着剤、および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックの需要増大に対応するため、プラスチックの大量生産を余儀なくされているが、同時に大量消費及び大量廃棄を引き起こし社会問題になっている。焼却処理や埋め立て処理されたプラスチックは、地球温暖化や土壌や海洋汚染の原因になっている。このような問題に配慮した生分解性樹脂が開発され、企業や大学等研究機関での実証試験が進んでいる。さらに、枯渇性資源でない産業資源として、化石資源を除く生物由来資源のバイオマスが注目されている。特に植物は、太陽光をエネルギ-とした光合成により大気中の二酸化炭素(CO)を吸収して成長するため、植物由来原料を製品化した製品(バイオマスプラスチックや合成繊維等)は、植物の成長過程における光合成によるCOの吸収量と、植物の焼却によるCOの排出量が相殺され、大気中のCOの増減に影響を与えないと考えられ(カ-ボンニュ-トラル)、その開発が期待されている。
【0003】
このような環境意識の高まりを受け、これまでの生態系への影響が大きいとされた石油化学由来のプラスチック製品から、生分解性樹脂からなるプラスチック製品への置き換えが、特に消費財分野で進みつつある。生分解性樹脂は、紫外線や水分の影響による樹脂分解、特に加水分解によって樹脂の分子量が小さくなり、分子量が小さくなった樹脂の一部は、微生物の酵素の働きにより、水と二酸化炭素にまで分解される。しかし、消費財分野では、実際に消費される期間までは耐久性、特に耐加水分解性が必要であり、生分解性樹脂からなるプラスチック製品には適度な耐久性と生分解性が求められる。
【0004】
消費財における食品包装や化粧用パウチの分野では、各種包装材は機能発現のため多層構造となっている。これまでに包装材や内包される食品トレイは生分解性プラスチック製品に置き換えがなされているものの、各層を接合させる接着剤は従来の石油化学由体のものが使用され、包装材やパウチ全体として生分解性を付与するまでには至っていない。代表的な生分解性樹脂は、植物由来である乳酸を原料とするポリ乳酸である。しかし、ポリ乳酸は、樹脂のガラス転移温度が高く柔軟性に劣るため、積層体を製造するときの生産性や、シ-ト状基材への接着性が不十分である。
【0005】
消費財における食品包装や化粧用パウチの分野に用いられる接着剤として、特許文献1には特定のポリオ-ルと末端にイソシアネ-ト基を有するポリイソシアネ-ト化合物と平均粒子径が1×10-4mm以上0.2mm未満である粉体とを含有する無溶剤型接着剤組成物が開示されている。
【0006】
また特許文献2には、乳酸を脱水縮合した構造単位と、ジカルボン酸とジオ-ルを脱水縮合したポリエステル構造単位を含む、重量平均分子量が2万から40万、DSCでの融点が70℃から200℃である乳酸系ポリエステルと紙から成る乳酸系ポリエステルラミネ-ト紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-162579号公報
【特許文献2】特開平08-300570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これらの接着剤では、近年の市場からの要求水準を満たす生分解性と、接着性とを両立することはできていないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は前記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載のポリエステルポリオ-ルを用いることで解決することを見出し、本発明に至った。
【0010】
本発明は、以下の発明〔1〕~〔11〕に関する。
【0011】
〔1〕数平均分子量が300~3,000、かつポリエステルポリオ-ル(AB)と、ラクチド(C)と、環状モノマ-(D)(ただし、ラクチド(C)を除く)との重合体であるポリエステルポリオールであって、を重合させてなり、ポリエステルポリオ-ル(AB)は、分岐構造を有するジオ-ル(a)を含む水酸基成分(A)、および炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b)を含むカルボン酸成分(B)の反応物である、ポリエステルポリオ-ル。
【0012】
〔2〕環状モノマ-(D)は、カプロラクトンを含む、〔1〕記載のポリエステルポリオ-ル。
【0013】
〔3〕分岐構造を有するジオ-ル(a)は、1,2-プロピレングリコ-ル、3-メチル-1,5-ペンタンジオ-ル、ネオペンチルグリコ-ル、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオ-ル、1,3-ブタンジオ-ル、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオ-ル、および2-エチル-1,3-ヘキサンジオ-ルからなる群より選ばれる一種を含む、〔1〕または〔2〕記載のポリエステルポリオ-ル
【0014】
〔4〕分岐構造を有するジオ-ル成分(a)の含有率は、水酸基成分(A)100モル%中、15~100モル%である、〔1〕~〔3〕いずれか記載のポリエステルポリオ-ル。
【0015】
〔5〕炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b)は、コハク酸、セバシン酸、およびアゼライン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、〔1〕~〔4〕いずれか記載のポリエステルポリオ-ル。
【0016】
〔6〕炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b)の含有率は、カルボン酸成分(B)100モル%中、30~100モル%である、〔1〕~〔5〕いずれか記載のポリエステルポリオ-ル。
【0017】
〔7〕〔1〕~〔6〕記載のポリエステルポリオ-ルと、ポリイソシアネ-ト(E)との反応生成物である、イソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)。
【0018】
〔8〕〔1〕~〔6〕記載のポリエステルポリオ-ルを含む接着剤。
【0019】
〔9〕〔7〕記載のイソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)を含む接着剤。
【0020】
〔10〕シ-ト状基材上に、〔8〕または〔9〕記載の接着剤から形成してなる接着剤層を備える積層体。
【0021】
〔11〕シ-ト状基材は、生分解性基材である〔10〕記載の積層体。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、市場からの要求水準を満たす生分解性を発現することができ、かつ良好なハンドリング性(流動性)を有するポリエステルポリオ-ル、ポリエステルポリウレタン、およびそれを用いた接着性に優れたラミネ-ト接着剤、積層体の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0024】
本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
また本明細書の数平均分子量は、東ソ-製GPC(ゲルパ-ミエ-ションクロマトグラフィ-)「HPL-8420GPC」を用いて測定した値であり、粘度は、コ-ンプレ-ト粘度計(東亜工業株式会社製:CV-S1)を用いて測定した値である。詳細は実施例の欄に記載する。
【0025】
本発明のポリエステルポリオ-ルは、本明細書中においてポリエステルポリオ-ル(ABCD)と表記することがある。また、ポリエステルポリオール(ABCD)はポリエステルポリオール(X)である場合は除く。
【0026】
《ポリエステルポリオ-ル(ABCD)》
本発明のポリエステルポリオ-ル(ABCD)は、数平均分子量が300~3,000のポリエステルポリオ-ル(AB)と、ラクチド(C)と、環状モノマ-(D)(ただし、ラクチド(C)を除く)との共重合体である。
なお、ポリエステルポリオ-ル(AB)は、分岐構造を有するジオ-ル(a)を含む水酸基成分(A)、および炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b)を含むカルボン酸成分(B)の反応生成物である。
【0027】
本発明のポリエステルポリオ-ル(ABCD)は、ポリエステルポリオ-ル(ABCD)と架橋剤とを混合することにより、生分解性と接着性に優れた積層体を形成可能な接着剤組成物とすることができる。架橋剤と混合する工程におけるハンドリング性の点から、本発明のポリエステルポリオ-ル(ABCD)は、流動性を有することが好ましい。
すなわち、本発明のポリエステルポリオ-ル(ABCD)は、60℃において流動性を有することが好ましい。60℃におけるポリエステルポリオ-ル(ABCD)の粘度は、好ましくは1,000~20,000mPa・s、より好ましくは1,000~10,000mPa・sである。さらに好ましくは1,000~5,000mPa・sである。60℃におけるポリエステルポリオ-ル(ABCD)の粘度範囲が1,000~20,000mPa・sであることにより、適度な流動性を有し、架橋剤と均一に混合された接着剤組成物が得られるとともに、シ-ト状基材上に均一な接着剤層を形成することが可能になる。
【0028】
<ポリエステルポリオ-ル(AB)>
ポリエステルポリオ-ル(AB)は、分岐構造を有するジオ-ル(a)を含む水酸基成分(A)と、炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b)を含むカルボン酸成分(B)との反応生成物である。ただし、ポリエステルポリオール(ABCD)である場合は除く。
ポリエステルポリオ-ル(AB)の数平均分子量は、300~3,000であり、好ましくは400~2,500である。ポリエステルポリオ-ル(AB)の数平均分子量が、300~3,000であることで、基材への親和性が高まり、接着性が良好となる。
【0029】
[水酸基成分(A)]
水酸基成分(A)は、分岐構造を有するジオ-ル(a)を含む。分岐構造を有することで、得られるポリエステルポリオール(AB)に分岐構造を導入し、ガラス転移温度を下げることが可能となる。その結果、本発明のポリエステルポリオール(ABCD)のガラス転移温度が下がり、流動性が向上することで基材との接着性が良好となる。
【0030】
(分岐構造を有するジオ-ル(a))
分岐構造を有するジオ-ル(a)としては、例えば、1,2-プロピレングリコ-ル、ジプロピレングリコ-ル、ポリオキシプロピレングリコ-ル、1,2-ブチレングリコ-ル、1,3-ブチレンジオ-ル、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオ-ル、ネオペンチルグリコ-ル、ジネオペンチルグリコ-ル、3-メチル-1,5-ペンタンジオ-ル、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオ-ル、3,3′-ジメチロ-ルヘプタン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオ-ル、ポリエ-テルジオ-ル、ポリカ-ボネ-トジオ-ル、ポリオレフィンジオ-ル、アクリルジオ-ル、ポリウレタンジオ-ル等のジオ-ル類が挙げられる。
これらの中でも、1,2-プロピレングリコ-ル、3-メチル-1,5-ペンタンジオ-ル、1,3-ブタンジオ-ル、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオ-ル、2-エチル-1,3-ヘキサンジオ-ル、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオ-ル、およびネオペンチルグリコ-ルの少なくとも一種を含むことが生分解性の点で好ましい。
また、1,2-プロピレングリコ-ル、およびネオペンチルグリコ-ルは植物由来原料であるため、生分解性だけでなく、バイオマス度を高くすることができるために好ましい。
【0031】
(その他水酸基成分)
また水酸基成分(A)は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、分岐構造を有するジオ-ル成分(a)以外のポリオ-ルを使用でき、例えば、エチレングリコ-ル、ジエチレングリコ-ル、ポリオキシエチレングリコ-ル、1,3-プロピレングリコ-ル、ブチレングリコ-ル、1,6-ヘキサンジオ-ル、1,4-ブタンジオ-ル、1,9-ノナンジオ-ル、トリメチロ-ルプロパン、グリセリン、ペンタエリスリト-ル、ソルビト-ル、ポリテトラメチレンエ-テルグリコ-ル、ポリエ-テルポリオ-ル、ポリカ-ボネ-トポリオ-ル、ポリオレフィンポリオ-ル、アクリルポリオ-ル、ポリウレタンポリオ-ル等が挙げられる。
これらの中でも、ジオ-ルとしては、エチレングリコ-ル、1,3-プロピレングリコ-ル、1,4-ブタンジオ-ル、1,6-ヘキサンジオ-ルが生分解性の点で好ましく、中でも1,3-プロピレングリコ-ル、1,4-ブタンジオ-ルは、入手が容易である上に植物由来原料であることから、得られるポリエステルのバイオマス度を高くすることができるため、より好ましい。水酸基数が3以上のポリオ-ルとしては、グリセリン、ペンタエリスリト-ル、ソルビト-ルが、植物由来原料であり、得られるポリエステルのバイオマス度を高くすることができるため好ましい。
【0032】
分岐構造を有するジオ-ル成分(a)の含有率は、水酸基成分(A)100モル%中、15~100モル%であることが好ましく、15~85モル%であることがさらに好ましく、30~70モル%であることが特に好ましい。
分岐構造を有するジオ-ル成分(a)の含有率が前記範囲であることで、本発明のポリエステルポリオ-ル(ABCD)におけるポリエステルポリオ-ル(AB)部位の流動性が得られ、接着剤組成物の製造におけるハンドリング性が向上し、さらには生分解性を高くすることが可能となる。
【0033】
[カルボン酸成分(B)]
カルボン酸成分(B)は、炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b)を含む。炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b)を含むことで、水酸基成分(A)との反応生成物であるポリエステル成分(AB)は、適度な生分解性を有するとともに、十分な接着性を得ることができる。
【0034】
(炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b))
例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、イタコン酸等二塩基酸若しくはそれらの無水物、ジアルキルエステル等が挙げられる。これらの中でも、コハク酸、セバシン酸、およびアゼライン酸が生分解性の点で好ましく、中でもコハク酸またはセバシン酸は、入手が容易であるだけでなく、さらに植物由来原料であるため、バイオマス度を高くすることができるためにより好ましい。
【0035】
(その他カルボン酸成分)
またカルボン酸成分(B)は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b)以外のその他カルボン酸を含んでも良く、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,5-フランジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、長鎖脂肪二酸、トリメリット酸等が挙げられる。
【0036】
炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b)の含有率は、カルボン酸成分(B)100モル%中、30~100モル%であることが好ましい。炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b)を適量含むことで生分解性が良好になるとともに、十分な接着性が得られる。
炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b)の含有率は高いほど好ましく、炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b)の含有率の下限としては、30モル%以上がより好ましく、40モル%以上がさらに好ましい。30モル%以上とすることで生分解性と接着力がともに良好となるためである。
【0037】
[ポリエステルポリオ-ル(AB)の製造方法]
ポリエステルポリオ-ル(AB)は、水酸基成分(A)とカルボン酸成分(B)を反応させて製造する。
本発明のポリエステルポリオ-ル(AB)の製造には、公知の反応促進剤を用いることができる。 反応促進剤としては、例えば、ジブチルチンジアセテ-ト、ジブチルチンジラウレ-ト、ジオクチルチンジラウレ-ト、ジブチルチンジマレ-ト、2-エチルヘキサン酸スズ等金属系触媒;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の3級アミン;トリエタノ-ルアミンのような反応性3級アミン等が挙げられ、有機チタン化合物の具体例としては、テトライソプロピルチタネ-ト、テトラ-n-ブチルチタネ-ト、テトラ-2-エチルヘキシルチタネ-ト、テトラステアリルチタネ-トなどのテトラアルコキシチタン化合物;ポリヒドロキシチタンステアレ-トなどのチタンアシレ-ト化合物;チタンアセチルアセトナ-ト、トリエタノ-ルアミンチタネ-ト、チタンアンモニウムラクテ-ト、チタンエチルラクテ-ト、チタンオクチレングリコ-ルなどのチタンキレ-ト化合物などを挙げることができる。またアルミ系化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトナ-ト、酢酸アルミニウム、などが挙げられる。
【0038】
上記反応促進剤は、反応終了後、失活剤で不活性化しておくことが好ましい。不活性化させておくことにより、ポリ乳酸の分子量の低下を防止するのに有利である。
かかる失活剤としては、例えばリン系化合物が好適に使用される。例えばイミノ基を有し且つ重合金属触媒に配位し得るキレ-ト配位子の群からなる有機リガンド及びジヒドリドオキソリン(I)酸、ジヒドリドテトラオキソ二リン(II,II)酸、ヒドリドトリオキソリン(III)酸、ジヒドリドペンタオキソ二リン(III)酸、ヒドリドペンタオキソ二(II,IV)酸、ドデカオキソ六リン(III)III、ヒドリドオクタオキソ三リン(III,IV,IV)酸、オクタオキソ三リン(IV,III,IV)酸、ヒドリドヘキサオキソ二リン(III,V)酸、ヘキサオキソ二リン(IV)酸、デカオキソ四リン(IV)酸、ヘンデカオキソ四リン(IV)酸、エネアオキソ三リン(V,IV,IV)酸等の酸価数5以下の低酸化数リン酸、式 xH2O.yP2O5で表され、x/y=3のオルトリン酸、2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸及びこれらの混合物、x/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸、1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部を残した網目構造を有するウルトラリン酸(これらを総称してメタ燐酸系化合物と呼ぶことがある。)、及びこれらの酸の酸性塩、一価、多価のアルコ-ル類、あるいはポリアルキレングリコ-ル類の部分エステル、完全エスエテル、亜リン酸エステル、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体などが例示される。
【0039】
ポリエステルポリオ-ル(AB)を得る際、系内の樹脂を適度な粘度に調整するために有機溶剤が含まれてもよい。有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系化合物、ジエチルエ-テル、エチレングリコ-ルジメチルエ-テル等のエ-テル系化合物、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族化合物、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物等が挙げられる。これら溶剤は単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
ポリエステルポリオ-ル(AB)は、60℃において流動性を有することが好ましく、その粘度が好ましくは50~10,000mPa・s、より好ましく300~4,000mPa・sである。ポリエステルポリオ-ル(AB)の粘度範囲を50~10,000mPa・sとすることで、次工程であるポリエステルポリオ-ル(AB)とラクチド(C)と環状モノマ-(D)とを重合させる工程において、ポリエステルポリオ-ル(AB)の取り扱いが容易になる。
【0041】
ポリエステルポリオ-ル(AB)は、生分解性の点から、酸価は好ましくは0~10(mgKOH/g)、より好ましくは0~5(mgKOH/g)である。
酸価が10(mgKOH/g)より高い場合、ポリエステルポリオ-ル(AB)が加水分解されやすくなり、消費財分野で必要な耐久性が得られなくなる。
【0042】
ポリエステルポリオ-ル(AB)のバイオマス度はより高い方が好まれる。好ましくは、10~100(%)、より好ましくは、20~100%、特に好ましくは、30~100%である。
【0043】
<ラクチド(C)>
ラクチド(C)は、2分子のヒドロキシ酸においてそれぞれのヒドロキシ基とカルボキシル基が脱水縮合した分子内にエステル結合を2個有する環状化合物であり、例えば、グリコリド、3,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)由来)、1,6-ジオキサシクロデカン-2,7-ジオン(4-ヒドロキシブタン酸由来)等が挙げられる。これらの中でも、いわゆる乳酸由来のラクチドは光学活性物質である場合もあり、L-ラクチド、D-ラクチド、meso-ラクチドがある。これらの中でも、L-ラクチド、meso-ラクチドは、入手がしやすいだけでなく、植物由来原料であるため、生分解性だけでなく、バイオマス度を高くすることができるために好ましい。
【0044】
このような乳酸骨格を有するポリエステルは、土壌中において微生物から分泌される酵素により分解されるため、環境への負荷が小さいものとすることができる。
【0045】
ラクチド(C)は、meso-ラクチドを含むことが好ましい。meso-ラクチドを適量含むことでポリエステルポリオール(ABCD)のガラス転移温度が低下し、ポリエステルポリオール(ABCD)の流動性が良好となり、接着剤組成物の製造時における架橋剤との混合性や、接着力を確保することが可能となる。
meso-ラクチドの含有率は、ラクチド(C)100モル%中、40モル%~100モル%が好ましく、50モル%~100モル%がさらに好ましい。
【0046】
<環状モノマ-(D)>
環状モノマ-(D)は、環状ラクトン、環状ラクタム、環状エ-テル等のモノマ-である。ただし、ラクチド(C)は除く。
ラクチド(C)と環状モノマ-(D)とを重合させることで、得られるポリエステルポリオ-ル(ABCD)のガラス転移温度が低下し、接着剤製造時における架橋剤との混合性や、接着力を確保することが可能となる。
【0047】
環状ラクトンは、例えば、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-ノナラクトン等が挙げられる。
環状ラクタムは、例えば、β-ラクタム、γ-ラクタム、δ-ラクタム等が挙げられる。
環状エ-テルは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
これらの中でも、ε-カプロラクトンが生分解性の点で好ましい。
【0048】
環状モノマ-(D)100モル%中、ε-カプロラクトンを10~100モル%含むことが好ましい。ε-カプロラクトンを適量含むことで、ポリエステルの60℃における流動性が良好となり、ハンドリング性に優れたものとすることができるためである。
ε-カプロラクトンの割合は大きいほど好ましい。ε-カプロラクトンの割合の下限としては、40モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましい。
【0049】
<ポリエステルポリオ-ル(ABCD)の製造方法>
ポリエステルポリオ-ル(ABCD)は、ポリエステルポリオ-ル(AB)とラクチド(C)と環状モノマ-(D)を含んでいれば製造方法は特に限定されないが、ポリエステルポリオ-ル(AB)の末端水酸基から、ラクチド(C)と環状モノマ-(D)とを反応させる製造方法が簡便であり、好ましい。さらに、未反応のラクチド(C)と環状モノマ-(D)を留去するため、減圧する工程を製造方法に含めることが好ましい。
ラクチド成分(C)/環状モノマ-成分(D)の重量比率により、ガラス転移温度を制御することが可能となる。ラクチド成分(C)/環状モノマ-成分(D)の重量比率として、C/D=0.05~19が好ましく、0.2~10がさらに好ましく、0.5~3が特に好ましい。
また、本発明のポリエステルポリオ-ル(ABCD)は、AB/CDの重量比率により、その分子量を制御することが可能である。AB/CDの重量比率はAB/CD=0.05~1が好ましく、0.2~0.8がさらに好ましい。
【0050】
反応触媒、反応停止剤、反応溶剤については、ポリエステルポリオ-ル(AB)の製造方法と同じものを用いることができる。
【0051】
本発明のポリエステルポリオ-ル(ABCD)は接着力と流動性の点から、数平均分子量(Mn)が1,000~20,000であることが好ましく、より好ましくは2,000~10,000である。
数平均分子量(Mn)が1,000以上であると、接着力を発揮することができ、20,000以下であると60℃における流動性が向上するため好ましい。
ここで、本発明のポリエステルポリオ-ル(ABCD)はポリエステルポリオ-ル(AB)とラクチド(C)と環状モノマ-(D)を含むポリエステルポリオ-ルである。したがって、本発明のポリエステルポリオ-ル(ABCD)の数平均分子量は、ポリエステルポリオ-ル(AB)の数平均分子量よりも必ず大きくなり、両者が重複することはない。
【0052】
ポリエステルポリオ-ル(ABCD)は接着力と流動性の点から、ガラス転移温度(Tg)が好ましくは-70℃~0℃、より好ましくは-60℃~-15℃である。ポリエステルポリオ-ル(ABCD)のガラス転移温度(Tg)が-70℃~0℃の範囲であることで、流動性が良好となり、接着剤組成物の製造時における架橋剤との混合性が向上する。さらに、シ-ト状基材との貼合時に基材への親和性が高まり、エ-ジング後の接着力も向上する。
【0053】
前述したとおり、ポリエステルポリオ-ル(ABCD)は、60℃において流動性を有することが好ましく、60℃におけるポリエステルポリオ-ル(ABCD)の粘度は、好ましくは1,000~20,000mPa・s、より好ましくは1,000~10,000mPa・sである。さらに好ましくは1,000~5,000mPa・sである。60℃におけるポリエステルポリオ-ル(ABCD)の粘度範囲を1,000~20,000mPa・sとすることにより、適度な流動性を有し、架橋剤と均一に混合された接着剤組成物が得られるとともに、シ-ト状基材上に均一な接着剤層を形成することが可能になる。
【0054】
ポリエステルポリオ-ル(ABCD)のバイオマス度はより高い方が好まれる。好ましくは、10~100(%)、より好ましくは、20~100%、特に好ましくは30~100%である。
【0055】
ポリエステルポリオ-ル(ABCD)の生分解度は、環境問題の解決の点から、より高い方が好まれる。好ましくは、20~100(%)、より好ましくは40~100%、特に好ましくは、60~100%である。生分解度が高い方ほど、最終的に水と二酸化炭素へ分解される割合が大きく、より環境に良い。
【0056】
《イソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)》
本発明のイソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)は、数平均分子量が300~3,000のポリエステルポリオ-ル(AB)、ラクチド(C)、および環状モノマ-(D)(ただし、ラクチド(C)を除く)を重合させてなるポリエステルポリオ-ル(ABCD)と、ポリイソシアネ-ト(E)との反応生成物である。
なお、ポリエステルポリオ-ル(AB)は、分岐構造を有するジオ-ル(a)を含む水酸基成分(A)、および炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b)を含むカルボン酸成分(B)の反応生成物である。
【0057】
<ポリイソシアネ-ト(E)>
ポリイソシアネ-ト(E)は、従来公知のポリイソシアネ-トから選択することができる。ポリイソシアネ-ト(E)としては、脂肪族、芳香脂肪族、および芳香族系ポリイソシアネ-ト等のいずれであってもよく、周知のジイソシアネ-ト又はジイソシアネ-トから誘導された化合物を用いることもできる。
【0058】
脂肪族ポリイソシアネ-トは、例えば、トリメチレンジイソシアネ-ト、テトラメチレンジイソシアネ-ト、ヘキサメチレンジイソシアネ-ト、1,2-プロピレンジイソシアネ-ト、1,2-ブチレンジイソシアネ-ト、2,3-ブチレンジイソシアネ-ト、1,3-ブチレンジイソシアネ-ト、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネ-ト、2,6-ジイソシアネ-トメチルカプロエ-ト、1,5-ペンタメチレンジイソシアネ-ト等の脂肪族ジイソシアネ-ト;1,4-シクロヘキサンジイソシアネ-ト、1,3-シクロヘキサンジイソシアネ-ト、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネ-ト、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネ-ト)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネ-ト、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネ-ト、1,4-ビス(イソシアネ-トメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネ-トメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネ-ト;又は、上記脂肪族ジイソシアネ-ト又は脂環式ジイソシアネ-トから誘導された、アロファネ-トタイプ、ヌレ-トタイプ、ビウレットタイプ、アダクトタイプの誘導体、若しくはその複合体等のポリイソシアネ-ト;が挙げられる。
【0059】
芳香脂肪族系イソシアネートは、例えば、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネ-ト若しくはその混合物、ω,ω′-ジイソシアネ-ト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネ-ト-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物、
芳香族系ジイソシアネ-トは、例えば、トルエンジイソシアネ-ト、ジフェニニルメタンジイソシアネ-ト等の芳香族系ジイソシアネ-トが挙げられる。
1,5-ペンタメチレンジイソシアネ-トもしくはヘキサメチレンジイソシアネ-トから誘導されたポリイソシアネ-トが、結晶性が低く、ハンドリング性が良いため好ましい。特に1,5-ペンタメチレンジイソシアネ-トは一部植物由来原料であり、得られるポリエステルポリウレタンのバイオマス度を高くすることができるため好ましい。
【0060】
<イソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)の製造方法>
本発明のポリエステルポリウレタンは、本発明のポリエステルポリオ-ル(ABCD)の構成単位とポリイソシアネ-ト(E)由来の構成単位を有していれば、製造方法は特に限定されないが、ポリエステルポリオ-ル(ABCD)が有する末端水酸基に対し、ポリイソシアネ-ト(E)が有するイソシアネ-ト基を反応させる製造方法が簡便であり好ましい。
末端にイソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)を得るためには、ポリエステルポリオ-ル(ABCD)中の水酸基の数に対するポリイソシアネ-ト(E)のイソシアネ-ト基の数の比率は適宜選択されるが、イソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)を得るためには、ポリエステルポリオ-ル(ABCD)由来の水酸基よりもポリイソシアネ-ト(E)由来のイソシアネ-ト基を過剰にする必要がある。イソシアネ-ト基の数/水酸基の数の比は、好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1.2~4である。1~6の範囲であることで、接着性に優れた末端にイソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)を得ることがきる。
【0061】
《接着剤組成物》
接着剤組成物は、本発明のポリエステルポリオ-ル(ABCD)およびイソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)の少なくともいずれかを含む組成物であり、その他成分を併用してもよい。
【0062】
その他成分は、ポリエステルポリオ-ル(ABCD)に配合してもよいし、イソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)に配合してもよい。
【0063】
その他成分としては、有機溶剤、架橋剤、ポリオ-ル、任意成分、等が挙げられる。
【0064】
ポリエステルポリオ-ル(ABCD)およびイソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)が60℃で液状である場合には、無溶剤型接着剤とすることができる。また、レベリング性を上げるために、有機溶剤で希釈して用いてもよい。有機溶剤としては、例えば酢酸エチル等のエステル系、メチルエチルケトン等のケトン系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系等が好適に用いられ、適宜選択して使用できる。
【0065】
《ポリエステルポリオ-ル(ABCD)を含む接着剤組成物の例》
本発明のポリエステルポリオ-ル(ABCD)を含む接着剤組成物の場合は、ポリエステルポリオ-ル(ABCD)と、必要に応じて架橋剤を含むことができる。架橋剤とは、ポリマ-同士を反応させ、化学的に変化させるための化合物である。架橋剤を含むことにより、ポリエステルポリオ-ル(ABCD)同士を反応させ、化学的に変化させる。例えば、ポリエステルポリオ-ル(ABCD)に対し、架橋剤として、上述したポリイソシアネ-ト(E)を配合し、2液硬化型のウレタン系接着剤とすることができる。
ポリエステルポリオ-ル(ABCD)中の水酸基に対するポリイソシアネ-トのイソシアネ-ト基の重量比は適宜選択されるが、好ましくは、ポリエステルポリオ-ル(ABCD)/ポリイソシアネ-ト(E)=100/80~100/3、さらに好ましくは、100/40~100/5になるよう配合する。
【0066】
《イソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)を含む接着剤組成物の例-1》
本発明のイソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)を含む接着剤組成物の場合、必要に応じて架橋剤を含むことができる。架橋剤を含むことにより、イソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)同士を反応させ、化学的に変化させる。架橋剤としては、水酸基成分を含むジオ-ル、トリオ-ル、ポリオ-ル等が挙げられる。具体的には、
1,2-プロピレングリコ-ル、ジプロピレングリコ-ル、ポリオキシプロピレングリコ-ル、1,2-ブチレングリコ-ル、1,3-ブチレンジオ-ル、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオ-ル、ネオペンチルグリコ-ル、ジネオペンチルグリコ-ル、3-メチル-1,5-ペンタンジオ-ル、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオ-ル、3,3′-ジメチロ-ルヘプタン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオ-ル
エチレングリコ-ル、ジエチレングリコ-ル、ポリオキシエチレングリコ-ル、1,3-プロピレングリコ-ル、ブチレングリコ-ル、1,6-ヘキサンジオ-ル、1,4-ブタンジオ-ル、1,9-ノナンジオ-ル等のジオ-ル類、
トリメチロ-ルプロパン、グリセリン等のトリオ-ル類、
ペンタエリスリト-ル、ソルビト-ル、ポリテトラメチレンエ-テルグリコ-ル、ポリエステルポリオ-ル(本発明のポリエステルポリオ-ル(AB)、ポリエステルポリオ-ル(ABCD)を除く)、ポリカ-ボネ-トポリオ-ル、ポリオレフィンポリオ-ル、アクリルポリオ-ル、ポリウレタンポリオ-ル、本発明のポリエステルポリオ-ル(AB)、ポリエステルポリオ-ル(ABCD)等を配合することで、2液硬化型のウレタン系接着剤とすることができる。
イソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)の末端イソシアネ-ト基に対する水酸基末端架橋剤の重量比は適宜選択されるが、好ましくは、イソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)/水酸基末端架橋剤=100/80~100/3さらに好ましくは、100/40~100/5になるよう配合する。また、架橋剤を含まない場合は、イソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)の末端イソシアネ-ト基の一部が大気中の水分によりアミンへと変化し、水分と未反応のイソシアネ-ト基と反応することにより架橋して、接着剤となる。
【0067】
《イソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)を含む接着剤組成物の例-2》
さらに、イソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)を架橋剤として接着剤組成物に含むこともできる。例えば、ポリエステルポリオ-ル(本発明のポリエステルポリオ-ル(AB)、ポリエステルポリオ-ル(ABCD)を除く)、ポリカ-ボネ-トポリオ-ル、ポリオレフィンポリオ-ル、アクリルポリオ-ル、ポリウレタンポリオ-ル、本発明のポリエステルポリオ-ル(AB)、ポリエステルポリオ-ル(ABCD)等に対し、架橋剤としてイソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)を配合し、2液硬化型のウレタン系接着剤とすることができる。
ポリオ-ル成分中の水酸基に対するイソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)のイソシアネ-ト基の重量比は適宜選択されるが、好ましくは、ポリオ-ル成分/イソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X)=100/80~100/3、さらに好ましくは、100/40~100/5になるよう配合する。
【0068】
<その他ポリオ-ル>
また、本発明の接着剤組成物は、上記ポリエステルポリオ-ル(ABCD)以外のポリオ-ルを接着剤中に含有してもよい。
ポリオ-ル成分としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリカ-ボネ-トポリオ-ル、ポリカプロラクトンポリオ-ル、ポリエ-テルポリオ-ル、ポリオレフィンポリオ-ル、アクリルポリオ-ル、シリコ-ンポリオ-ル、ヒマシ油系ポリオ-ル、フッ素系ポリオ-ル等を用いることができる。
【0069】
<任意成分>
本発明の接着剤は、さらに、任意成分として、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、防黴剤、増粘剤、可塑剤、顔料、充填剤等の添加剤を必要に応じて含有することができる。
【0070】
顔料としては、無機化合物または有機化合物のいずれかの粉体を用いることができる。
平均粒子径は、1×10-4mm以上0.2mm未満、好ましくは1×10-3mm以上1×10-1mm以下である粉体を用いることができる。
【0071】
無機化合物の粉体としては、例えば、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナホワイト、硫酸カリウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、ゼオライト、活性炭、カオリン、タルク、ロウ石クレ-、けい石、マイカ、グラファイト、セリサイト、モンモリロナイト、セリサイト、セピオライト、ベントナイト、パ-ライト、ゼオライト、ワラストナイト、蛍石、ドロマイトなどの粉体が挙げられる。これらのなかでもシリカやタルクが用いられる。
【0072】
有機化合物の粉体としては、例えば、ベンゾグアナミン樹脂、シリコン系樹脂、スチレン樹脂、架橋ポリスチレン、エポキシ樹脂、フェノ-ル樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタ-ル樹脂、ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル共重合系樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ナイロン6 、ナイロン1 2 、セルロ-ス、アクリル樹脂、メタクリル樹脂などの粉体が挙げられる。これらのなかでもベンゾグアナミン樹脂が用いられる。
【0073】
本発明の接着剤に顔料を含有することにより優れた塗装外観及び良好な接着性能が得られる。顔料成分の粉体を含有してなる接着剤はチクソトロピックな流動特性を示し、塗工する際の塗工ロ-ル上で強い剪断力を受け低粘度となり、ロ-ルから基材へ転移する。基材へ転移した接着剤組成物は急速に構造粘性を発揮し、素早く基材へ定着し良好な外観を得ることができる。
【0074】
本発明では顔料の含有率は要求性能、接着方法等によって適宜選択されるが、接着剤の総量当たり0.01~10質量% であることが好ましい。
【0075】
顔料成分は、ポリエステル成分に配合しても、 ポリイソシアネ-ト化合物に配合しても、ポリエステル及びポリイソシアネ-ト化合物の両方に配合しても、さらにはポリエステルとポリイソシアネ-ト化合物の混合時に配合してもよい。
また、接着性能を更に高めるために、シランカップリング剤、リン酸、リン酸誘導体、酸無水物、粘着性樹脂等の接着助剤を使用することができる。また、硬化反応を調節するため公知の触媒、添加剤等を使用することができる。
【0076】
《積層体》
本発明の積層体(以下、「複合フィルム」ともいう)は、シ-ト状基材上に、本発明のポリエステル、またはポリウレタンポリエステルを含む接着剤から形成してなる接着剤層を備える。
本発明の複合フィルムは、接着剤が特定の条件下において生分解性を示し、接着剤層を分解させることができる。
また、本発明積層体の構成は特に限定されないが接着剤層のみならず積層体を構成する一部または全ての基材において生分解性を有することが好ましい。
本発明の接着層、または積層体そのものが生分解性を有することから、食品包装用パウチのほか、洗剤、薬剤等の詰め替え用パウチ等の消費財に好適に用いることができる
【0077】
<シ-ト状基材>
シ-ト状基材としては、包装用積層体に一般的に使用されている、プラスチックフィルム、紙及び金属箔等のガスバリア基材、並びにシ-ラント等が挙げられる。
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリエチレンナフタレ-ト(PEN)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネ-ト(PBS)等のポリエステル樹脂フィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等のポリアミド樹脂フィルム;ポリカ-ボネ-ト樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;セルロ-スフィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコ-ル共重合体/ナイロン6)や混合体等が用いられる。中でも、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。
紙としては、天然紙や合成紙等が挙げられる。
ガスバリア基材としては、アルミニウム箔の他、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の蒸着層を有するプラスチックフィルムが好ましい。例えばアルミニウム箔の場合は、経済的な面から3~50μmの範囲の厚みが好ましい。
【0078】
シ-ラントとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテ-ト共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマ-等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。中でもレトルト時の耐熱性の観点から、ポリプロピレン系樹脂が好ましく、ヒ-トシ-ル性の観点から未延伸ポリプロピレンが特に好ましい。
シ-ラントの厚みは特に限定されないが、包装材料への加工性やヒ-トシ-ル性等を考慮して10~60μmの範囲が好ましく、15~40μmの範囲がより好ましい。また、シ-ラントに高低差5~20μmの凸凹を設けることで、シ-ラントに滑り性や包装材料の引き裂き性を付与することが可能である。
なお、シ-ラントを積層する方法は、特に限定されない。例えば、後述する接着剤層とシ-ラントフィルムとを熱によってラミネ-トする方法(熱ラミネ-ト、ドライラミネ-ト)や、シ-ラント樹脂を溶融させて接着剤層上に押出し、冷却固化させて積層する方法(押出ラミネ-ション法)等が挙げられる。
本発明における積層体を生分解させるためにも、シ-ト状基材は生分解性を有することが好ましく、特に好ましくは、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネ-ト、セロハン、紙である。
【0079】
<積層構成>
積層体の構成は特に限定されないが、1層以上のシ-ト状基材の最表層に接着剤層を備える構成、または1層以上のシ-ト状基材と、シ-ラントとを積層した構成であることが好ましい。
具体的な積層体構成としては、OPP/接着剤層、PET/接着剤層、紙/接着剤層、PBS/接着剤層、セルロ-ス/接着剤層、PLA/接着剤層、PBS/接着剤層/セルロ-ス、PLA/接着剤層/PBS、PBS/接着剤層/アルミ蒸着セルロ-ス、PBS/接着剤層/紙、OPP/接着剤層/CPP、OPP/接着剤層/AL蒸着CPP、NY/接着剤層/PE、NY/接着剤層/CPP、PET/接着剤層/NY/接着剤層/CPP、透明蒸着PET/接着剤層/NY/接着剤層/CPP、PET/接着剤層/AL/接着剤層/CPP、PET/接着剤層/AL/接着剤層/PE、PET/接着剤層/NY/接着剤層/AL/接着剤層/CPP、PET/接着剤層/AL/接着剤層/NY/接着剤層/CPP、PBS/接着剤層/セルロ-ス、PBS/接着剤層/アルミ蒸着セルロ-ス、PBS/接着剤層/紙等が挙げられる。これら積層体は、必要に応じて、印刷層やトップコ-ト層等を有していても構わない。
本発明における積層体が生分解性を有するためには、シ-ト状基材も生分解性基材であることが好ましい。特に好ましくは、紙/接着剤層、PBS/接着剤層、セルロ-ス/接着剤層、PLA/接着剤層、PBS/接着剤層/セルロ-ス、PLA/接着剤層/PBS、PBS/接着剤層/アルミ蒸着セルロ-ス、およびPBS/接着剤層/紙である。
【0080】
なお、OPPは2軸延伸ポリプロピレン、PETはポリエチレンテレフタレ-ト、PBSはポリブチレンサクシネ-ト、CPPは無延伸ポリプロピレン、NYはナイロン、PEはポリエチレン、ALはアルミ、PLAはポリ乳酸である。
【0081】
<接着剤層>
接着剤層は、本発明の接着剤から形成された層であり、シ-ト状基材上に接着剤を塗布すること等により接着剤層を形成することができる。
また、本発明の接着剤を用いてシ-ト状基材を積層してなる積層体とする場合、一般的には、接着剤を、第1のシ-ト状基材の一方の面に塗布し、必要に応じて乾燥工程を経た後に、第2のシ-ト状基材の一方の面と貼り合せることで形成することができる。
【0082】
接着剤層の量は任意であるが、接着面の面積に対して、0.1~6g/mの範囲であることが好ましく、乾燥後で0.5~4g/mの範囲であることが好ましい。本発明の接着剤は、ポリエステルまたはポリエステルポリウレタンが生分解性であるため、必要に応じて含まれる架橋剤との反応後においても、接着剤層は生分解性を有する。
【実施例0083】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、合成例および実施例において材料の配合部数は、溶剤を除き、不揮発分換算であり、空欄は配合していないことを表す。
また、下記実施例および比較例中、「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0084】
ガラス転移温度、数平均分子量、酸価、水酸基価、および60℃における粘度は、次の方法で測定した。
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量計)により測定した。
具体的には、ポリエステル(PES-1)等を約2mg、アルミニウムパン上で秤量し、該アルミニウムパンをDSC測定ホルダ-にセットし、5℃/分の昇温条件にて得られるチャ-トの吸熱ピ-クを読み取った。このときのピ-ク温度をガラス転移温度とした。
【0085】
<数平均分子量の測定>
数平均分子量は、東ソ-製GPC(ゲルパ-ミエ-ションクロマトグラフィ-)「HPL-8420GPC」より求め、標準ポリスチレン換算値として算出した。なお、GPCの測定溶媒にはテトラヒドロフランを用いた。また測定用サンプルは、試料濃度が0.5%~1%となるようテトラヒドロフランを用いて希釈し、GPC分子量測定用サンプルを成製した。
機種:TOSOH HLC-8420GPC
カラム:TSKGEL SuperHZM-N
溶媒:THF溶液、流出速度:0.35ml毎分、温度:40℃、
検出器:示差屈折計
分子量標準:ポリスチレン換算
【0086】
<酸価の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(ポリエステルポリオ-ル溶液)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノ-ル(容量比:トルエン/エタノ-ル=2/1)混合液100mlを加えて溶解し、フェノ-ルフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコ-ル性水酸化カリウム溶液で滴定し、次式により酸価を求めた。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコ-ル性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコ-ル性水酸化カリウム溶液のファクタ-
【0087】
<水酸基価>
水酸基価はJIS K-0070の試験方法に従って測定した。
【0088】
<60℃における粘度測定>
60℃における粘度は、コ-ンプレ-ト粘度計(東亜工業株式会社製:CV-S1)を使用し、下記条件で測定した。
温度:60℃
試料量:0.2ml
ロ-タ-No.:20Pコ-ン
ロ-タ-回転数:188rpm
回転時間:30秒
【0089】
<ポリエステルポリオ-ル(AB)の製造>
[ポリエステルポリオ-ル(合成例1:AB-1)]
分岐構造を有するジオ-ル(a)として、分岐構造を有する植物由来の1,2-プロピレングリコ-ル83.7g(1.1mol)、炭素数が2~12の脂肪族ジカルボン酸(b)として、脂肪族ジカルボン酸を有する植物由来のコハク酸118g(1.0mol)を反応容器に入れ、窒素気流下で攪拌しながら160~240℃まで徐々に加熱し、酸価が15以下になるまで240℃でエステル化反応を行ない、次いで徐々に1~2ト-ルまで減圧し、過剰の水酸基成分を留去し、ポリエステル(AB-1)を得た。過剰の水酸基成分がほぼ均等に留去したと仮定し、カルボン酸成分と水酸基成分との合計を200モル%とすると、得られたポリエステルポリオ-ル(AB-1)の組成は、コハク酸:1,2-プロピレングリコ-ル=100:100(mol%)となる。
得られたポリエステルポリオ-ル(AB-1)の数平均分子量は1009、水酸基価は111.2mgKOH/g、酸価は0.5mgKOH/g、60℃における粘度は1,600mPa・sであった。
【0090】
[ポリエステルポリオ-ル(合成例2~18:AB-2~AB-18)]
表1、2に示す通りに、ジオ-ル成分及びジカルボン酸成分とその組成を変更した以外は、合成例1と同様にしてポリエステルポリオ-ル(AB-2~AB-18)を得た。ただし、AB-2~AB-15はポリエステルポリオール(AB)であり、AB-16~AB-18はポリエステルポリオール(AB)ではないポリエステルポリオールである。
それぞれの酸価、水酸基価、数平均分子量、および60℃における粘度を表1に示した。
【0091】
【表1】
【0092】
表1中の略語は下記の通りである。
<分岐構造を有するジオ-ル(a)>
a-1;1,2-プロピレングリコ-ル
a-2;ネオペンチルグリコ-ル
a-3;2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオ-ル
a-4;3-メチル-1,5-ペンタンジオ-ル
a-5;天然高級不飽和脂肪酸を二量体化して得られる環式及び非環式ダイマ-酸(C=36を主成分とする)を還元して得られるダイマ-ジオ-ル: (クロ-ダ製:プリポ-ル2033)
<その他水酸基成分>
a’-1;エチレングリコ-ル
a’-2;1,3-プロピレングリコ-ル
a’-3;1,4-ブタンジオ-ル
a’-4;1,6-ヘキサンジオ-ル
a’-5;トリメチロ-ルプロパン
【0093】
[実施例1]
<ポリエステルポリオ-ル(ABCD-1)>
目的の数平均分子量3,000となるよう、ポリエステルポリオ-ル(AB-1)33.3g、ラクチド(C)として植物由来成分からなるmeso-ラクチド46.7g、および環状モノマ-(D)としてε-カプロラクトン20.0g、触媒として、2-エチルヘキサン酸スズ0.02gを反応容器に入れ、窒素気流下で攪拌しながら170℃まで加熱し反応させた。反応から5時間後に徐々に1~2ト-ルまで減圧し、未反応のラクチド(C)および環状モノマ-(D)を留去し、ポリエステルポリオ-ル(ABCD-1)を得た。
得られたポリエステルポリオ-ル(ABCD-1)は、数平均分子量3,000、水酸基価37.5mgKOH/g、ガラス転移温度-28℃、60℃における粘度7,800mPa・sであった。
【0094】
[実施例2~25、比較例1~5]
表2、表3に示す通りに、ポリエステルポリオ-ル(AB-2~AB-18)、ラクチド(C)、および環状モノマ-(D)の組成、およびモル比となるように重合を行い、ポリエステルポリオ-ル(ABCD-2~ABCD-25、PES-1~PES-5)を得た。
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】

【0097】
[実施例31]
<接着剤組成物>
続いて、得られたポリエステルポリオ-ル(ABCD-1)を100部反応容器に仕込み、撹拌しながら、架橋剤として東洋モ-トン製TSN-4864B-3(脂肪族/ポリエ-テル系架橋剤:NCO末端)を15部加え、接着剤組成物を得た。
【0098】
[実施例32~55、比較例6~12]
表4、表5に示す通りに、得られたポリエステルポリオ-ルを用いて、実施例31と同様にして、接着剤組成物を得た。なお、ラクチド(C)としては、植物由来成分である、meso-ラクチド、L-ラクチド、D-ラクチド、およびグリコリドを用いた。
【0099】
表4、表5の略語は下記の通りである。
<架橋剤>
TSN-4864B-3:(東洋モ-トン製 脂肪族/ポリエ-テル系架橋剤:NCO末端)EA-N373A:(東洋モ-トン製 芳香族/ポリエ-テル系架橋剤:NCO末端)
EA-N373B:(東洋モ-トン製 芳香族/ポリエ-テル系架橋剤:OH末端)
【0100】
【表4】
【0101】
【表5】
【0102】
[実施例56]
<イソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X-1)>
ポリエステルポリオ-ル(ABCD-1:水酸基価37.5mgKOH/g)を100g、1,5-ペンタメチレンジイソシアネ-ト(NCO%:25%)10.3gを反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら100℃~120℃で50分間加熱し、イソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X-1)を得た。得られたイソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X-1)は、数平均分子量3,500、ガラス転移温度-20℃、60℃における粘度8,000mPa・sであった。
【0103】
[実施例58]
<接着剤組成物>
続いて、本発明のポリエステルポリオ-ルABCD-10を100部反応器に仕込み、撹拌しながら架橋剤として、イソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X-1)を10部加え、接着剤組成物を得た。
【0104】
[実施例57、59]
表6に示す通りに、ポリエステルポリオ-ル(ABCD-1)、および1,5-ペンタメチレンジイソシアネ-トの重合を行い、イソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X-2)を得た。得られたイソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X-2)は、数平均分子量13,000、ガラス転移温度-10℃、60℃における粘度20,000mPa・sであった。
続いて、表7に示す通りに、得られたイソシアネ-ト基を有するポリエステルポリウレタン(X-2)を用いて、接着剤を得た。
【0105】
【表6】
【0106】
【表7】
【0107】
<接着剤の評価>
得られた接着剤組成物について、生分解性の評価およびバイオマス度を算出した。また、得られた接着剤組成物を用いて、下記の方法で積層体(複合フィルム)を作製した。なお、生分解ポリエステルもしくは生分解ポリエステルポリウレタンの60℃における粘度が5,000mPa・s以上の場合には、レベリング性を上げるため、酢酸エチルで希釈した接着剤組成物を用いて積層体を作成した。
得られた積層体について、接着力の評価を下記の通り行った。結果を表4、表5、および表7に示す。
【0108】
<生分解性の評価>
表4、表5、および表7記載の接着剤組成物について、JIS K 6953-1に準拠し、生分解性を評価した。
5:生分解度百分率80%以上
4:生分解度百分率60%以上~80%未満
3:生分解度百分率40%以上~60%未満
2:生分解度百分率20%以上~40%未満
1:生分解度百分率20%未満
【0109】
<バイオマス度(植物由来成分)>
表3、表5記載の接着剤組成物について植物由来成分の含有量(質量%)を算出して求めた。
【0110】
(複合フィルム(積層体)の作製)
ポリブチレンサクシネ-ト(PBS)フィルム(三菱化学社製FZ91PM:基材厚み30μm)の表面に接着剤組成物をテストコ-タ-で塗布し、(塗布量:3.0g/m)、この塗布面にセロハン(フタムラ化学社製:MST G-8基材厚み23μm)を積層した。なお、溶剤を用いて接着剤を希釈した場合は、溶剤乾燥後の塗布量が3.0g/m2となるように接着剤を塗布した。
これら積層体を40℃の恒温槽にいれ、3日間静置して複合フィルム(積層体)を作製した。用いる基材を変更した以外は同様の方法で、各複合フィルムを作製した。得られた各複合フィルム(積層体)について、接着力を下記要領で測定し、それらの結果を表3、表5に示した。
ポリブチレンサクシネ-ト(PBS)フィルム:三菱化学社製FZ91PM基材厚み30μm
セルロ-スフィルム:フタムラ化学社製:MST G-8基材厚み23μm
2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム:東洋紡社製 P2161 基材厚み20μm
無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム:フタムラ化学社製 FHK2 基材厚み25μm
生分解フィルム:フタムラ化学社製 アルミ蒸着ネイチャ-フレックス23NM
紙:日本製紙社製 キャピタルラップ 片艶クラフト紙(晒)100g/m
【0111】
(接着力)
複合フィルム(積層体)を長さ300mm、幅15mmに切り取り、テストピ-スとした。インストロン型引張試験機を使用し、剥離速度300mm/分の剥離速度で引張り、各種基材間のT型剥離強度(N/15mm)を測定した。この試験を5回行い、その平均値を求め、下記の基準に従い評価した。なお、接着力は2以上であれば実用上問題なく、基準値が大きいほど良好である。
4:2.5N/15mm以上~基材破断
3:1.7N/15mm以上~2.5N/15mm未満
2:1.0N/15mm以上~1.7N/15mm未満
1:1.0N/15mm未満