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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166932
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】3次元計測装置及び3次元計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20221027BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20221027BHJP
   G01B 11/245 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
G01B11/24 A
G01B11/26 H
G01B11/245 H
G01B11/24 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072368
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚田 豊
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA35
2F065AA37
2F065AA53
2F065BB05
2F065BB28
2F065DD03
2F065FF01
2F065FF05
2F065FF09
2F065FF61
2F065JJ03
2F065JJ05
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065MM02
2F065PP15
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065SS02
2F065SS13
(57)【要約】
【課題】物体の姿勢が変化しても、計測精度の低下を抑制すること。
【解決手段】3次元計測装置は、物体の基準平面の3次元データを取得する基準データ取得部と、基準平面の反対方向を向く物体の測定平面の3次元データを取得する測定データ取得部と、基準平面の3次元データに基づいて、基準平面と物体の直線成分との交点を示す基準点を算出する基準点算出部と、測定平面の3次元データに基づいて、測定平面と物体の直線成分との交点を示す測定点を算出する測定点算出部と、基準平面の3次元データに基づいて、基準平面の傾斜角度を算出する傾斜角度算出部と、傾斜角度に基づいて、基準点を通り基準平面と基準角度で交差する基準線を設定する基準線設定部と、基準線と測定平面との交点を示す参照点を算出する参照点算出部と、測定点と参照点とのずれ量を算出するずれ量算出部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の基準平面の3次元データを取得する基準データ取得部と、
前記基準平面の反対方向を向く前記物体の測定平面の3次元データを取得する測定データ取得部と、
前記基準平面の3次元データに基づいて、前記基準平面と前記物体の直線成分との交点を示す基準点を算出する基準点算出部と、
前記測定平面の3次元データに基づいて、前記測定平面と前記物体の直線成分との交点を示す測定点を算出する測定点算出部と、
前記基準平面の3次元データに基づいて、前記基準平面の傾斜角度を算出する傾斜角度算出部と、
前記傾斜角度に基づいて、前記基準点を通り前記基準平面と基準角度で交差する基準線を設定する基準線設定部と、
前記基準線と前記測定平面との交点を示す参照点を算出する参照点算出部と、
前記測定点と前記参照点とのずれ量を算出するずれ量算出部と、を備える、
3次元計測装置。
【請求項2】
前記基準平面と前記測定平面とは、平行である、
請求項1に記載の3次元計測装置。
【請求項3】
前記基準角度は、90°である、
請求項1又は請求項2に記載の3次元計測装置。
【請求項4】
前記物体の直線成分は、前記基準平面と前記測定平面とを貫くように前記物体に設けられた孔又はピンである、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の3次元計測装置。
【請求項5】
前記ずれ量が閾値以下であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を出力する出力部と、を備える、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の3次元計測装置。
【請求項6】
前記物体を支持する支持部材と、
前記支持部材に支持されている前記物体の前記基準平面と対向可能な位置に配置される第1撮像装置と、
前記支持部材に支持されている前記物体の前記測定平面と対向可能な位置に配置される第2撮像装置と、を備え、
前記基準データ取得部は、前記第1撮像装置から前記基準平面の3次元データを取得し、
前記測定データ取得部は、前記第2撮像装置から前記測定平面の3次元データを取得する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の3次元計測装置。
【請求項7】
第1特徴点と第2特徴点とを有する治具が前記支持部材に支持され、
前記第1撮像装置により、前記第1特徴点が撮像され、
前記第2撮像装置により、前記第2特徴点が撮像され、
前記第1特徴点の3次元データと、前記第2特徴点の3次元データとに基づいて、前記支持部材が配置される3次元空間座標系と前記第1撮像装置のローカル座標系及び前記第2撮像装置のローカル座標系との変換パラメータを算出する補正部を備える、
請求項6に記載の3次元計測装置。
【請求項8】
物体の基準平面の3次元データを取得することと、
前記基準平面の反対方向を向く前記物体の測定平面の3次元データを取得することと、
前記基準平面の3次元データに基づいて、前記基準平面と前記物体の直線成分との交点を示す基準点を算出することと、
前記測定平面の3次元データに基づいて、前記測定平面と前記物体の直線成分との交点を示す測定点を算出することと、
前記基準平面の3次元データに基づいて、前記基準平面の傾斜角度を算出することと、
前記傾斜角度に基づいて、前記基準点を通り前記基準平面と基準角度で交差する基準線を設定することと、
前記基準線と前記測定平面との交点を示す参照点を算出することと、
前記測定点と前記参照点とのずれ量を算出することと、を含む、
3次元計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3次元計測装置及び3次元計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場の生産ライン又は検査ラインにおいて、3次元計測装置が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5477658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3次元計測装置で複数の物体を順次計測する場合、物体ごとに物体の姿勢が変化する可能性がある。物体ごとに物体の姿勢が変化すると、3次元計測装置の計測精度が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、物体の姿勢が変化しても、計測精度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、物体の基準平面の3次元データを取得する基準データ取得部と、前記基準平面の反対方向を向く前記物体の測定平面の3次元データを取得する測定データ取得部と、前記基準平面の3次元データに基づいて、前記基準平面と前記物体の直線成分との交点を示す基準点を算出する基準点算出部と、前記測定平面の3次元データに基づいて、前記測定平面と前記物体の直線成分との交点を示す測定点を算出する測定点算出部と、前記基準平面の3次元データに基づいて、前記基準平面の傾斜角度を算出する傾斜角度算出部と、前記傾斜角度に基づいて、前記基準点を通り前記基準平面と基準角度で交差する基準線を設定する基準線設定部と、前記基準線と前記測定平面との交点を示す参照点を算出する参照点算出部と、前記測定点と前記参照点とのずれ量を算出するずれ量算出部と、を備える、3次元計測装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、物体の姿勢が変化しても、計測精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る3次元計測装置を示す模式図である。
図2図2は、実施形態に係る物体を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る処理装置を示す機能ブロック図である。
図4図4は、実施形態に係る処理装置の処理方法を説明するための模式図である。
図5図5は、実施形態に係る判定部の処理を説明するための模式図である。
図6図6は、実施形態に係る変換パラメータの算出方法を説明するための模式図である。
図7図7は、実施形態に係る検査方法を示すフローチャートである。
図8図8は、実施形態に係るコンピュータシステムを示すブロック図である。
図9図9は、比較例に係る3次元計測装置を説明するための模式図である。
図10図10は、実施形態に係る物体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
実施形態においては、3次元空間座標系であるXYZ直交座標系を規定し、XYZ直交座標系を参照しながら各部の位置関係について説明する。XYZ直交座標系は、3次元計測装置1に設定されたローカル座標系である。水平面内のX軸と平行な方向をX軸方向とする。X軸と直交する水平面内のY軸と平行な方向をY軸方向とする。水平面と直交するZ軸と平行な方向をZ軸方向とする。X軸を中心とする回転又は傾斜方向をθX方向とする。Y軸を中心とする回転又は傾斜方向をθY方向とする。Z軸を中心とする回転又は傾斜方向をθZ方向とする。X軸及びY軸を含む平面を適宜、XY平面、と称する。XY平面は、水平面と平行である。Z軸は鉛直線と平行である。Z軸方向は上下方向である。+Z方向は上方向であり、-Z方向は下方向である。Z軸は、XY平面と直交する。
【0011】
[3次元計測装置]
図1は、実施形態に係る3次元計測装置1を示す模式図である。3次元計測装置1は、物体10を計測して、物体10の3次元データを取得する。物体10は、3次元計測装置1の計測対象である。物体10は、立体物である。実施形態において、物体10は、製品である。3次元計測装置1は、物体10の検査に使用される。
【0012】
3次元計測装置1は、支持部材2と、搬送装置3と、第1撮像装置4と、第2撮像装置5と、処理装置6と、表示装置7とを備える。
【0013】
支持部材2は、物体10を支持する。支持部材2は、物体10を支持する支持面2Sを有する。支持面2Sは、上方向を向く。支持面2Sは、XY平面と平行である。
【0014】
搬送装置3は、物体10を搬送する。搬送装置3は、支持部材2に物体10を搬入する搬入部3Aと、支持部材2から物体10を搬出する搬出部3Bとを有する。搬入部3Aにより、物体10が支持部材2に順次搬入される。搬出部3Bにより、物体10が支持部材2から順次搬出される。
【0015】
第1撮像装置4は、支持部材2に支持されている物体10を撮像する。第1撮像装置4は、物体10の3次元データを取得可能である。第1撮像装置4は、支持部材2の下方に配置される。第1撮像装置4は、物体10の下方から物体10を撮像する。支持部材2は、開口2Mを有する。第1撮像装置4は、開口2Mを介して物体10を撮像する。
【0016】
第2撮像装置5は、支持部材2に支持されている物体10を撮像する。第2撮像装置5は、物体10の3次元データを取得可能である。第2撮像装置5は、支持部材2の上方に配置される。第2撮像装置5は、物体10の上方から物体10を撮像する。
【0017】
第1撮像装置4及び第2撮像装置5のそれぞれは、ステレオ法、光切断法、及び位相シフト法のような公知の3次元計測方法を用いて、物体10の3次元データを取得可能である。
【0018】
第1撮像装置4と第2撮像装置5とは、支持部材2に支持されている物体10を同時に撮像する。複数の物体10が支持部材2に順次搬入される。第1撮像装置4及び第2撮像装置5のそれぞれは、支持部材2に搬入された複数の物体10を順次撮像する。
【0019】
複数の物体10は、相互に接触しながら、支持部材2に順次搬入される。複数の物体10が密接した状態で支持部材2に搬入されることにより、3次元計測装置1は、複数の物体10を効率良く計測することができる。複数の物体10が相互に接触しながら支持部材2に順次搬入されることにより、支持部材2において、物体10ごとに物体10の姿勢が変化する可能性がある。物体10の姿勢とは、XY平面(支持面2S)に対する物体10の傾きをいう。
【0020】
処理装置6は、コンピュータシステムを含む。処理装置6は、第1撮像装置4及び第2撮像装置5のそれぞれにより取得された物体10の3次元データに基づいて、物体10を検査する。
【0021】
表示装置7は、処理装置6の検査結果を表示する。表示装置7として、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)又は有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electroluminescence Display)のようなフラットパネルディスプレイが例示される。作業者は、表示装置7に表示される処理装置6の検査結果を確認することができる。
【0022】
[物体]
図2は、実施形態に係る物体10を示す図である。図2(A)は、物体10を示す側面図である。図2(B)は、物体10を示す上面図である。図2に示すように、物体10の外形は、直方体状である。物体10は、基準平面11と、測定平面12と、直線成分13とを有する。
【0023】
基準平面11は、平坦面である。測定平面12は、平坦面である。測定平面12は、基準平面11の反対方向を向く。実施形態において、基準平面11は、物体10の下面である。測定平面12は、物体10の上面である。基準平面11と測定平面12とは、平行である。
【0024】
図1に示すように、第1撮像装置4は、支持部材2に支持されている物体10の基準平面11と対向可能な位置に配置される。第2撮像装置5は、支持部材2に支持されている物体10の測定平面12と対向可能な位置に配置される。
【0025】
図2に示すように、物体10の直線成分13は、基準平面11と測定平面12とを貫くように物体10に設けられた孔(貫通孔)である。孔は、ストレート状である。実施形態において、直線成分13は、物体10に2つ設けられる。
【0026】
実施形態において、直線成分13は、基準平面11と直交するように物体10に設けられる。一方の直線成分13と他方の直線成分13とは、平行になるように設けられる。
【0027】
以下の説明において、基準平面11と直線成分13との交点を適宜、基準点14、と称する。測定平面12と直線成分13との交点を適宜、測定点15、と称する。
【0028】
実施形態において、基準点14は、直線成分13である孔の下端部の中心である。測定点15は、直線成分13である孔の上端部の中心である。
【0029】
[処理装置]
図3は、実施形態に係る処理装置6を示す機能ブロック図である。図4は、実施形態に係る処理装置6の処理方法を説明するための模式図である。
【0030】
処理装置6は、基準データ取得部61と、測定データ取得部62と、基準点算出部63と、測定点算出部64と、傾斜角度算出部65と、基準線設定部66と、参照点算出部67と、ずれ量算出部68と、判定部69と、出力部70と、補正部71とを有する。
【0031】
基準データ取得部61は、第1撮像装置4から物体10の基準平面11の3次元データを取得する。基準データ取得部61により取得される3次元データは、画像データである。上述のように、第1撮像装置4は、物体10の基準平面11と対向可能な位置に配置される。第1撮像装置4は、物体10の基準平面11を撮像して、基準平面11の3次元データを取得する。第1撮像装置4は、基準平面11の3次元データを処理装置6に出力する。基準データ取得部61は、第1撮像装置4から出力された基準平面11の3次元データを取得する。
【0032】
測定データ取得部62は、第2撮像装置5から物体10の測定平面12の3次元データを取得する。測定データ取得部62により取得される3次元データは、画像データである。上述のように、第2撮像装置5は、物体10の測定平面12と対向可能な位置に配置される。第2撮像装置5は、物体10の測定平面12を撮像して、測定平面12の3次元データを取得する。第2撮像装置5は、測定平面12の3次元データを処理装置6に出力する。測定データ取得部62は、第2撮像装置5から出力された測定平面12の3次元データを取得する。
【0033】
基準点算出部63は、基準データ取得部61により取得された基準平面11の3次元データに基づいて、基準平面11と直線成分13との交点を示す基準点14を算出する。基準点算出部63は、XYZ直交座標系における基準点14の位置を算出する。図4に示すように、実施形態において、基準点14は、直線成分13である孔の下端部の中心である。
【0034】
測定点算出部64は、測定データ取得部62により取得された測定平面12の3次元データに基づいて、測定平面12と直線成分13との交点を示す測定点15を算出する。測定点算出部64は、XYZ直交座標系における測定点15の位置を算出する。図4に示すように、実施形態において、測定点15は、直線成分13である孔の上端部の中心である。
【0035】
傾斜角度算出部65は、基準データ取得部61により取得された基準平面11の3次元データに基づいて、XY平面に対する基準平面11の傾斜角度αを算出する。図1を参照して説明したように、複数の物体10は、相互に接触しながら支持部材2に順次搬入される。その結果、支持部材2において、物体10ごとに物体10の姿勢が変化する可能性がある。すなわち、XY平面に対する基準平面11の傾斜角度αが、物体10ごとに変化する可能性がある。傾斜角度算出部65は、複数の物体10のそれぞれの基準平面11の傾斜角度αを算出する。
【0036】
基準線設定部66は、基準点14を通り基準平面11と基準角度βで交差する基準線16を設定する。基準線16は、直線である。実施形態において、基準角度βは、90°である。すなわち、基準線16は、基準点14を通る基準平面11の法線である。XY平面に対する基準平面11の傾斜角度αは、傾斜角度算出部65により算出される。基準線設定部66は、傾斜角度算出部65により算出された傾斜角度αに基づいて、基準点14を通り基準平面11と基準角度βで交差する基準線16を設定することができる。
【0037】
参照点算出部67は、基準線設定部66により設定された基準線16と測定平面12との交点を示す参照点17を算出する。参照点算出部67は、XYZ直交座標系における参照点17の位置を算出する。実施形態において、基準平面11と測定平面12とは、平行である。基準平面11と測定平面12との距離は、物体10の設計データなどから導出可能な既知データである。したがって、参照点算出部67は、基準線16と測定平面12との交点を示す参照点17を算出することができる。
【0038】
なお、参照点算出部67は、基準データ取得部61により取得された基準平面11の3次元データ及び測定データ取得部62により取得された測定平面12の3次元データに基づいて、参照点17を算出してもよい。XYZ直交座標系における基準平面11の位置及びXY平面に対する基準平面11の傾斜角度αは、第1撮像装置4により取得された基準平面11の3次元データに基づいて算出可能である。XYZ直交座標系における測定平面12の位置及びXY平面に対する測定平面12の傾斜角度は、第2撮像装置5により取得された測定平面12の3次元データに基づいて算出可能である。そのため、参照点算出部67は、基準平面11と測定平面12との相対角度及び基準平面11と測定平面12との距離を算出可能である。したがって、基準平面11と測定平面12とが平行でなくても、参照点算出部67は、基準線16と測定平面12との交点を示す参照点17を算出することができる。
【0039】
ずれ量算出部68は、測定点15と参照点17とのずれ量δを算出する。ずれ量δは、XYZ直交座標系における測定点15と参照点17との距離である。なお、ずれ量δは、基準点14と測定点15とを結ぶ直線18と基準線16とがなす角度でもよい。
【0040】
実施形態において、ずれ量δは、基準平面11に対する直線成分13の直角度を示す。実施形態において、3次元計測装置1は、基準平面11に対する直線成分13の直角度を計測する。直角度とは、基準平面11の法線に対する直線成分13のずれ量δをいう。ずれ量δが小さいほど直角度は良く、ずれ量δが大きいほど直角度は悪い。
【0041】
判定部69は、ずれ量算出部68により算出されたずれ量δが予め定められている閾値以下であるか否かを判定する。
【0042】
図5は、実施形態に係る判定部69の処理を説明するための模式図である。図2を参照して説明したように、物体10は、基準平面11と直線成分13とが直交するように製造される。すなわち、物体10は、直線成分13の直角度を示すずれ量δが小さくなるように製造される。例えば製造不良に起因して、図5に示すように、基準平面11と直線成分13とが直交せず、直線成分13が基準平面11に対して傾斜するように、物体10が製造されてしまう場合がある。すなわち、直線成分13のずれ量δが大きくなってしまう場合がある。判定部69は、ずれ量δが閾値以下であるか否かを判定する。ずれ量δが閾値以下である物体10は、良品であると判定される。ずれ量δが閾値を超える物体10は、不良品であると判定される。
【0043】
出力部70は、判定部69の判定結果を出力する。出力部70は、判定部69において物体10の直線成分13のずれ量δが閾値以下であると判定された場合、物体10が良品であることを示す検査結果を出力する。出力部70は、判定部69において物体10の直線成分13のずれ量δが閾値を超えると判定された場合、物体10が不良品であることを示す検査結果を出力する。実施形態において、出力部70は、物体10の検査結果を表示装置7に出力する。表示装置7は、物体10の検査結果を表示する。
【0044】
補正部71は、物体10を支持する支持部材2が配置される3次元空間座標系(XYZ直交座標系)と第1撮像装置4のローカル座標系及び第2撮像装置5のローカル座標系との変換パラメータを算出する。第1撮像装置4のローカル座標系は、第1撮像装置4が有するイメージセンサに設定されるカメラ座標系である。第2撮像装置5のローカル座標系は、第2撮像装置5が有するイメージセンサに設定されるカメラ座標系である。
【0045】
図6は、実施形態に係る変換パラメータの算出方法を説明するための模式図である。図6に示すように、キャリブレーション用の治具20が支持部材2に支持される。治具20は、直方体状のボディ23と、ボディ23の下面に設けられた第1特徴点21と、ボディ23の上面に設けられた第2特徴点22とを有する。実施形態において、第1特徴点21は、ボディ23の下面に設けられた一対の凸部である。第2特徴点22は、ボディ23の上面に設けられた一対の凸部である。第1特徴点21の一対の凸部の相対距離は、治具20の設計データから導出可能な既知データである。第2特徴点22の一対の凸部の相対距離は、治具20の設計データから導出可能な既知データである。第1特徴点21の一対の凸部の相対距離と、第2特徴点22の一対の凸部の相対距離とは、等しい。
【0046】
第1撮像装置4により、第1特徴点21が撮像される。第2撮像装置5により、第2特徴点22が撮像される。補正部71は、第1撮像装置4により取得された第1特徴点21の3次元データと、第2撮像装置5により取得された第2特徴点22の3次元データとに基づいて、支持部材2が配置される3次元空間座標系(XYZ直交座標系)と第1撮像装置4のローカル座標系及び第2撮像装置5のローカル座標系との変換パラメータを算出する。
【0047】
補正部71は、第1撮像装置4により取得された第1特徴点21の3次元データに基づいて、XYZ直交座標系における第1特徴点21の位置を算出する。補正部71は、第1特徴点21の3次元データから算出した第1特徴点21の一対の凸部の相対距離と、既知データである第1特徴点21の一対の凸部の相対距離とに基づいて、第1撮像装置4の内部パラメータをキャリブレーションする。
【0048】
同様に、補正部71は、第2撮像装置5により取得された第2特徴点22の3次元データに基づいて、XYZ直交座標系における第2特徴点22の位置を算出する。補正部71は、第2特徴点22の3次元データから算出した第2特徴点22の一対の凸部の相対距離と、既知データである第2特徴点22の一対の凸部の相対距離とに基づいて、第2撮像装置5の内部パラメータをキャリブレーションする。
【0049】
補正部71は、第1撮像装置4の内部パラメータ及び第2撮像装置5の内部パラメータのそれぞれをキャリブレーションした後、支持部材2が配置されるXYZ直交座標系と第1撮像装置4のローカル座標系及び第2撮像装置5のローカル座標系との変換パラメータを算出する。
【0050】
補正部71により変換パラメータが算出されることにより、基準データ取得部61は、変換パラメータに基づいて、第1撮像装置4により取得された第1撮像装置4のローカル座標系の位置を、XYZ直交座標系の位置に変換することができる。同様に、測定データ取得部62は、変換パラメータに基づいて、第2撮像装置5により取得された第2撮像装置5のローカル座標系の位置を、XYZ直交座標系の位置に変換することができる。
【0051】
[検査方法]
図7は、実施形態に係る検査方法を示すフローチャートである。計測対象である物体10が搬送装置3の搬入部3Aにより支持部材2に搬入される。支持部材2は、物体10を支持する。第1撮像装置4は、支持部材2に支持されている物体10の基準平面11を撮像する。第2撮像装置5は、支持部材2に支持されている物体10の測定平面12を撮像する。
【0052】
基準データ取得部61は、第1撮像装置4から基準平面11の3次元データを取得する(ステップS1)。測定データ取得部62は、第2撮像装置5から測定平面12の3次元データを取得する(ステップS2)。
【0053】
基準点算出部63は、ステップS1において取得された基準平面11の3次元データに基づいて、基準平面11と物体10の直線成分13との交点を示す基準点14を算出する(ステップS3)。
【0054】
測定点算出部64は、ステップS2において取得された測定平面12の3次元データに基づいて、測定平面12と物体10の直線成分13との交点を示す測定点15を算出する(ステップS4)。
【0055】
傾斜角度算出部65は、ステップS1において取得された基準平面11の3次元データに基づいて、基準平面11の傾斜角度αを算出する(ステップS5)。
【0056】
基準線設定部66は、ステップS5において算出された傾斜角度αに基づいて、基準点14を通り基準平面11と基準角度βで交差する基準線16を設定する(ステップS6)。実施形態において、基準線設定部66は、基準点14を通る基準平面11の法線を基準線16として設定する。
【0057】
参照点算出部67は、ステップS6において設定された基準線16とステップS2において取得された測定平面12との交点を示す参照点17を算出する(ステップS7)。
【0058】
ずれ量算出部68は、測定点15と参照点17とのずれ量δを算出する(ステップS8)。
【0059】
判定部69は、ステップS8において算出されたずれ量δが閾値以下であるか否かを判定する(ステップS9)。
【0060】
ステップS9において、ずれ量δが閾値以下であると判定された場合(ステップS9:Yes)、出力部70は、物体10が良品であることを示す検査結果を出力する(ステップS10)。
【0061】
ステップS9において、ずれ量δが閾値以下ではないと判定された場合(ステップS9:No)、出力部70は、物体10が不良品であることを示す検査結果を出力する(ステップS11)。
【0062】
[コンピュータシステム]
図8は、実施形態に係るコンピュータシステム1000を示すブロック図である。上述の処理装置6は、コンピュータシステム1000を含む。コンピュータシステム1000は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ1001と、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ1002と、ストレージ1003と、入出力回路を含むインターフェース1004とを有する。処理装置6の機能は、コンピュータプログラムとしてストレージ1003に記憶されている。プロセッサ1001は、コンピュータプログラムをストレージ1003から読み出してメインメモリ1002に展開し、コンピュータプログラムに従って上述の処理を実行する。なお、コンピュータプログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム1000に配信されてもよい。
【0063】
コンピュータプログラムは、上述の実施形態に従って、コンピュータシステム1000に、物体10の基準平面11の3次元データを取得することと、基準平面11の反対方向を向く物体10の測定平面12の3次元データを取得することと、基準平面11の3次元データに基づいて、基準平面11と物体10の直線成分13との交点を示す基準点14を算出することと、測定平面12の3次元データに基づいて、測定平面12と物体10の直線成分13との交点を示す測定点15を算出することと、基準平面11の3次元データに基づいて、基準平面11の傾斜角度αを算出することと、傾斜角度αに基づいて、基準点14を通り基準平面11と基準角度βで交差する基準線16を設定することと、基準線16と測定平面12との交点を示す参照点17を算出することと、測定点15と参照点17とのずれ量δを算出することと、を実行させることができる。
【0064】
[効果]
以上説明したように、実施形態によれば、基準平面11に対する直線成分13の直角度を示すずれ量δを計測する場合において、支持部材2において物体10ごとに物体10の姿勢が変化しても、計測制度の低下が抑制される。
【0065】
図9は、比較例に係る3次元計測装置1Jを説明するための模式図である。比較例に係る3次元計測装置1Jは、物体10の上方に配置される撮像装置5Jを有し、物体10の下方に配置される撮像装置を有しない。比較例に係る3次元計測装置1Jは、一対の直線成分13の距離Dに基づいて、直線成分13の直角度を計測する。
【0066】
複数の物体10が相互に接触しながら支持部材2に順次搬入されることにより、支持部材2において、物体10ごとに物体10の姿勢が変化する可能性がある。物体10の姿勢が変化した場合、撮像装置5Jによって取得される3次元データのみでは、直角度が悪いにも関わらず良いと誤判定されたり、直角度が良いにも関わらず悪いと誤判定されたりする可能性がある。
【0067】
例えば、図9に示す物体10Aの直線成分13の直角度は良い。図9に示す物体10Bの直線成分13の直角度は悪い。図9に示すように、物体10Bの姿勢が変化すると、直角度が悪くても、撮像装置5Jにより計測される一対の測定点15の距離Dは、物体10Aにおける距離Dと等しい値になる可能性がある。すなわち、物体10Bは不良品であるにも関わらず、良品であると誤判定される可能性がある。また、図示は省略するが、物体10Aの姿勢が変化すると、撮像装置5Jにより計測される一対の測定点15の距離Dが小さくなり、物体10Aは良品であるにも関わらず、不良品であると誤判定される可能性がある。
【0068】
実施形態においては、第2撮像装置5のみならず、第1撮像装置4が設けられる。第1撮像装置4は、基準平面11の3次元データを取得する。傾斜角度算出部65は、基準平面11の3次元データに基づいて、基準平面11の傾斜角度αを算出する。基準線設定部66は、傾斜角度算出部65により算出された基準平面11の傾斜角度αに基づいて、直線成分13の直角度の判定の基準となる基準線16を適正に設定することができる。参照点算出部67は、適正に設定された基準線16に基づいて、参照点17を適正に算出することができる。これにより、ずれ量算出部68は、直線成分13の直角度を示すずれ量δを高精度に算出することができる。
【0069】
[その他の実施形態]
図10は、実施形態に係る物体10を示す図である。上述の実施形態において、物体10の直線成分13は、基準平面11と測定平面12とを貫くように物体10に設けられたストレート状の孔であることとした。図10に示すように、物体10の直線成分13は、基準平面11と測定平面12とを貫くように物体10に設けられたストレート状のピンでもよい。
【0070】
上述の実施形態において、直線成分13は、物体10に2つ設けられることとした。直線成分13は、1つでもよいし、3つ以上の任意の複数でもよい。
【0071】
上述の実施形態において、基準角度βは、90°であり、3次元計測装置1は、基準平面11に対する直線成分13の直角度を計測することとした。基準角度βは、90°よりも小さい角度でもよい。すなわち、3次元計測装置1は、直線成分13の傾斜度を計測してもよい。
【0072】
上述の実施形態において、基準平面11と測定平面12とは、平行でなくてもよい。基準平面11と測定平面12との相対位置が既知データであればよい。
【符号の説明】
【0073】
1…3次元計測装置、2…支持部材、2M…開口、2S…支持面、3…搬送装置、3A…搬入部、3B…搬出部、4…第1撮像装置、5…第2撮像装置、6…処理装置、7…表示装置、10…物体、11…基準平面、12…測定平面、13…直線成分、14…基準点、15…測定点、16…基準線、17…参照点、18…直線、20…治具、21…第1特徴点、22…第2特徴点、23…ボディ、61…基準データ取得部、62…測定データ取得部、63…基準点算出部、64…測定点算出部、65…傾斜角度算出部、66…基準線設定部、67…参照点算出部、68…ずれ量算出部、69…判定部、70…出力部、71…補正部、1000…コンピュータシステム、1001…プロセッサ、1002…メインメモリ、1003…ストレージ、1004…インターフェース、α…傾斜角度、β…基準角度、δ…ずれ量。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10