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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166940
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】足場ユニットおよび躯体構築方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20221027BHJP
   E04G 1/36 20060101ALI20221027BHJP
   E04G 3/28 20060101ALI20221027BHJP
   E01D 19/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
E01D21/00 A
E04G1/36 302Z
E04G3/28 303Z
E01D19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072389
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 正樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅義
(72)【発明者】
【氏名】西脇 一樹
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 武寛
【テーマコード(参考)】
2D059
2E003
【Fターム(参考)】
2D059AA03
2D059EE10
2E003AC02
2E003CA01
2E003DA05
2E003EB04
(57)【要約】
【課題】内側に中空部を形成する壁部を備えた既設構造物における壁部の上面に躯体を構築する際に、足場ユニットの設置および撤去を容易に行えるようにする。
【解決手段】足場ユニット100は、内側に中空部92を形成する壁部91を備えた既設構造物90に使用される。この足場ユニット100は、支柱10と、上部支持体31と、吊材21と、下部支持体51と、下部足場体54とを備える。支柱10は、対向する壁部91の上面93に立設されている。上部支持体31は、支柱10に支持されている。吊材21は、上部支持体31から垂下されている。下部支持体51は、吊材21に吊り下げられている。下部足場体54は、下部支持体51に載置されている。そして、支柱10の根元側が埋設されるように壁部91の上面93に躯体94を構築した状態において、支柱10の上部支持体31との接続部が外部に露出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に中空部を形成する壁部を備えた既設構造物に使用される足場ユニットであって、
対向する前記壁部の上面に立設された支柱と、
前記支柱に支持された上部支持体と、
前記上部支持体から垂下された吊材と、
前記吊材に吊り下げられた下部支持体と、
前記下部支持体に載置された下部足場体と、を備え、
前記支柱の根元側が埋設されるように前記壁部の上面に躯体を構築した状態において、前記支柱の前記上部支持体との接続部が外部に露出すること、を特徴とする足場ユニット。
【請求項2】
前記上部支持体は、前記支柱に接続された上部梁材と、前記上部梁材に載置された上部桁材と、を有し、
前記下部支持体は、前記吊材に接続された下部梁材と、前記下部梁材に載置された下部桁材と、を有すること、を特徴とする請求項1に記載の足場ユニット。
【請求項3】
前記上部支持体に載置された上部足場体を備えること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の足場ユニット。
【請求項4】
前記下部足場体は、平面視における前記下部足場体の外形面積が小さくなるように端部が折り畳み可能に構成されていること、を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の足場ユニット。
【請求項5】
前記下部足場体は、前記壁部の上面よりも下方に位置すること、を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の足場ユニット。
【請求項6】
内側に中空部を形成する壁部を備えた既設構造物における前記壁部の上面に躯体を構築する躯体構築方法であって、
対向する前記壁部の上面に支柱を立設し、
上部支持体と、前記上部支持体の下方に位置するとともに下部足場体が載置された下部支持体と、を吊材によって接続した作業架台を作製し、
前記支柱に前記上部支持体を接続することで、前記作業架台を前記支柱に支持させ、
前記支柱の根元側が埋設されるとともに前記支柱の前記上部支持体との接続部が外部に露出するように、前記壁部の上面に前記躯体を構築すること、を特徴とする躯体構築方法。
【請求項7】
前記躯体を構築した後、前記下部足場体の端部を、平面視における前記下部足場体の外形面積が小さくなるように折り畳み、
前記支柱と前記上部支持体とを分離して前記作業架台を撤去すること、を特徴とする請求項6に記載の躯体構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足場ユニットおよび躯体構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、内側に中空部を形成する壁部を備えた既設構造物に使用される足場ユニットとして、筒型コンクリート構造物1内に複数の足場枠体3を連結して設置される作業足場ユニット8が提案されている。この作業足場ユニット8では、足場枠体3は、4本の支柱4が矩形の角部に位置するように立てられ、隣り合う支柱4は横架材5を上下方向に複数段設けて連結され、横架材5の上に足場板6が載置されている。
また、下記特許文献2には、開口12が形成された天井部11を備える中空構造物10の内部に配置される足場の支持構造2が提案されている。この支持構造2は、天井部11の上面に配置される外支持体30と、中空構造物10の内側に配置される内支持体31と、開口12を介して外支持体30と内支持体31とを連結する連結体とを備える。そして、内支持体31に、足場を吊るすための係止手段40が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-90633号公報
【特許文献2】特開2015-59303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された作業足場ユニット8では、支柱4は、筒型コンクリート構造物1の底面に立てられており、作業足場ユニット8の支持力を筒型コンクリート構造物1の底面から確保している。このため、筒型コンクリート構造物1の上面から底面までの距離(深さ)が大きい場合には、足場板6の数量が膨大になり、作業足場ユニット8の設置および撤去に手間がかかる。
また、特許文献2に記載された足場の支持構造2では、開口12が形成された天井部11が必要であるとともに、天井部11の上面に、外支持体30を別途配置しなければならない。
本発明は、前記した課題を解決し、内側に中空部を形成する壁部を備えた既設構造物における壁部の上面に躯体を構築する際に、足場ユニットの設置および撤去を容易に行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、内側に中空部を形成する壁部を備えた既設構造物に使用される足場ユニットである。この足場ユニットは、支柱と、上部支持体と、吊材と、下部支持体と、下部足場体とを備える。前記支柱は、対向する前記壁部の上面に立設されている。前記上部支持体は、前記支柱に支持されている。前記吊材は、前記上部支持体から垂下されている。前記下部支持体は、前記吊材に吊り下げられている。前記下部足場体は、前記下部支持体に載置されている。そして、前記支柱の根元側が埋設されるように前記壁部の上面に躯体を構築した状態において、前記支柱の前記上部支持体との接続部が外部に露出する。
この発明では、上部支持体と、下部足場体が載置された下部支持体とを吊材によって接続したものを、作業架台として予め作製できる。また、この作業架台を例えばクレーン等の揚重装置によって吊り上げて移動させて、支柱に上部支持体を接続することで、容易に足場ユニットを設置できる。さらに、足場ユニットは、支柱の根元側が躯体に埋設されるが、支柱と上部支持体とを分離すれば支柱以外の部材は揚重装置によって吊り上げて容易に撤去できるため、他の既設構造物に転用可能となる。
このように、本発明によれば、内側に中空部を形成する壁部を備えた既設構造物における壁部の上面に躯体を構築する際に、足場ユニットの設置および撤去を容易に行うことが可能となる。
【0006】
前記足場ユニットにおいては、前記上部支持体は、前記支柱に接続された上部梁材と、前記上部梁材に載置された上部桁材と、を有することが好ましい。また、前記下部支持体は、前記吊材に接続された下部梁材と、前記下部梁材に載置された下部桁材と、を有することが好ましい。
この構成では、上部支持体および下部支持体は、一般的な鋼材を用いて簡単に構成できるとともに強度を十分に確保できる。
前記足場ユニットは、前記上部支持体に載置された上部足場体を備えることが好ましい。
この構成では、上部支持体の上も各種作業の際に使用される作業床として使用することができる。
【0007】
前記足場ユニットにおいては、前記下部足場体は、平面視における前記下部足場体の外形面積が小さくなるように端部が折り畳み可能に構成されていることが好ましい。
この構成では、壁部の上面に構築する躯体の開口が既設構造物の開口よりも小さい場合でも、躯体の構築後において、下部足場体が躯体に接触することなく足場ユニットを揚重装置によって吊り上げて撤去できる。
前記足場ユニットにおいては、前記下部足場体は、前記壁部の上面よりも下方に位置することが好ましい。
この構成では、例えば壁部の上面に躯体を構築するための型枠の組立て等の作業がしやすくなる。
【0008】
また、本発明は、内側に中空部を形成する壁部を備えた既設構造物における前記壁部の上面に躯体を構築する躯体構築方法である。この躯体構築方法では、対向する前記壁部の上面に支柱を立設する。また、上部支持体と、前記上部支持体の下方に位置するとともに下部足場体が載置された下部支持体と、を吊材によって接続した作業架台を作製する。続いて、前記支柱に前記上部支持体を接続することで、前記作業架台を前記支柱に支持させる。続いて、前記支柱の根元側が埋設されるとともに前記支柱の前記上部支持体との接続部が外部に露出するように、前記壁部の上面に前記躯体を構築する。
前記躯体構築方法においては、前記躯体を構築した後、前記下部足場体の端部を、平面視における前記下部足場体の外形面積が小さくなるように折り畳むことが好ましい。続いて、前記支柱と前記上部支持体とを分離して前記作業架台を撤去する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内側に中空部を形成する壁部を備えた既設構造物における壁部の上面に躯体を構築する際に、足場ユニットの設置および撤去を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る足場ユニットを示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る躯体構築方法の内容を示すフローチャートである。
図3】支柱を立設する様子を説明するための斜視図である。
図4】作業架台のうちの下部架台を作製する様子を説明するための斜視図である。
図5】下部梁材の端部の連結構造を説明するための正面図である。
図6図4から続く、作業架台のうちの下部架台を作製する様子を説明するための斜視図である。
図7】作業架台のうちの上部架台を作製する様子を説明するための斜視図である。
図8図7から続く、作業架台のうちの上部架台を作製する様子を説明するための斜視図である。
図9】上部架台と下部架台とを吊材によって接続した作業架台を作製する様子を説明するための斜視図である。
図10】作業架台を支柱に支持させる様子を説明するための斜視図である。
図11】躯体を構築する様子を説明するための斜視図である。
図12】下部梁材および下部桁材の端部を下部足場体の端部とともに折り畳む様子を説明するための斜視図である。
図13】作業架台を撤去する様子を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照して説明する。なお、以下に示す図面において、同一または同種の部材については、同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する。また、部材の形状およびサイズは、説明の便宜のため、変形、誇張または省略して模式的に表す場合がある。
図1は、本発明の実施形態に係る足場ユニット100を示す斜視図である。なお、以下においては、説明の便宜上、足場ユニット100における上下前後左右の各方向として、図1に示す各方向を使用する場合がある。
【0012】
足場ユニット100は、既設構造物90に使用される足場ユニットである。既設構造物90は、筒状の構造物であり、内側に中空部92を形成する壁部91を備えている。足場ユニット100は、具体的には、既設構造物90における壁部91の上面93に躯体94を構築する際に使用される。なお、壁部91の上面93の上に存在する鉄筋は図示を省略した。
ここでは、既設構造物90は、橋梁の上部構造を支える橋脚本体であり、躯体94は、既に施工された橋脚本体である既設構造物90の上に形成される脚頭部である。そして、脚頭部である躯体94の上に、例えば橋脚頂版部や柱頭部が形成される。
【0013】
図1に示すように、足場ユニット100は、支柱10と、作業架台20とを備えている。支柱10は、対向する壁部91の上面93に立設されている。支柱10は、ここでは、前側の壁部91および後側の壁部91の上面93に、それぞれ複数本ずつ鉛直方向に延びて配置されている。作業架台20は、高所作業のための足場として作られる台であり、支柱10に支持されている。作業架台20は、上部架台30と、上部架台30の下方に位置する下部架台50と、上部架台30と下部架台50とを接続する吊材21とを備える。
【0014】
上部架台30は、上部支持体31と、上部足場体34とを備える。上部支持体31は、支柱10に支持されている。上部支持体31は、支柱10の上端部に接続された上部梁材32と、上部梁材32の上に載置された上部桁材33とを有している。上部梁材32は、前後方向に沿って延在しており、互いに平行となるように複数本配置されている。上部桁材33は、上部梁材32に対して直交する方向、すなわち左右方向に沿って延在しており、互いに平行となるように複数本配置されている。上部梁材32と上部桁材33とは、互いに接合されている。上部足場体34は、上部支持体31の上に載置されている。上部足場体34は、例えば前後方向に延びる複数の長尺の板状部材から構成されている。吊材21は、上部支持体31から垂下されている。ここでは、上部支持体31の上部梁材32に、吊材21の上端部が接続されている。
【0015】
下部架台50は、下部支持体51と、下部足場体54とを備える。下部支持体51は、吊材21に吊り下げられている。下部支持体51は、吊材21の下端部に接続された下部梁材52と、下部梁材52の上に載置された下部桁材53とを有している。下部梁材52は、左右方向に沿って延在しており、互いに平行となるように複数本配置されている。下部桁材53は、下部梁材52に対して直交する方向、すなわち前後方向に沿って延在しており、互いに平行となるように複数本配置されている。下部梁材52と下部桁材53とは、互いに接合されている。下部足場体54は、下部支持体51の上に載置されている。下部足場体54は、壁部91の上面93よりも下方に位置している。下部足場体54は、平面視で中央に位置する中央部55と、中央部55の周辺に位置する端部56とを有している。中央部55は、例えば左右方向に延びる複数の長尺の板状部材から構成されている。
作業架台20を構成する上部梁材32、上部桁材33、下部梁材52、下部桁材53、吊材21等の部材や、支柱10などの構造部材には、H形鋼、溝形鋼(C形鋼)、L形鋼等の形鋼が使用され得る。これらの構造部材同士の接続(接合)は、ねじ締結、クランプ、溶接、専用接合具等の各種の接続手段によって行われ得る。
【0016】
本実施形態では、支柱10の根元側が埋設されるように壁部91の上面93に躯体94が構築される。すなわち、足場ユニット100を利用し、躯体94用の型枠を組んでその内側にコンクリートを打設することで、橋脚本体である既設構造物90の上に躯体94が形成される。そして、躯体94を構築した状態において、支柱10の上部支持体31との接続部が外部に露出するように設定されている。
【0017】
次に、このように構成される足場ユニット100を用いて、既設構造物90における壁部91の上面93に躯体94を構築する躯体構築方法について、図2図13を参照して説明する。図2は、本発明の実施形態に係る躯体構築方法の内容を示すフローチャートである。
最初に、図3に示すように、既設構造物90の対向する壁部91の上面93に、支柱10が立設される(図2のステップS1)。すなわち、複数の支柱10が、中空部92を挟んで対向するように立設される。支柱10の基端部(下端部)は、壁部91の上面93にアンカー固定される。なお、支柱10は、図3では前側の壁部91および後側の壁部91の上面93に立設されているが、左側の壁部91および右側の壁部91の上面93に立設されてもよい。
【0018】
また、図9に示すように、作業架台20が、例えば資材等の運搬通路や工事用の作業桟台として利用される仮桟橋80上で、作製される(図2のステップS2)。すなわち、上部支持体31と、上部支持体31の下方に位置するとともに下部足場体54が載置された下部支持体51と、を吊材21によって接続した作業架台20が作製される。なお、ステップS1とステップS2とは、同時または逆順序で実施されてもよい。
【0019】
図4に示すように、ステップS2において、作業架台20のうちの下部架台50が仮桟橋80上で作製される。すなわち、仮桟橋80上で、下部梁材52の上に下部桁材53が載置され、両者が接合されて下部支持体51が形成される。下部梁材52には、吊材21の下端部が接続される。
下部支持体51は、平面視における下部支持体51の外形面積(外接矩形面積)が小さくなるように、下部梁材52および下部桁材53の端部52a,53aが折り畳み可能に構成されている。すなわち、図5に示すように、下部梁材52は、長手方向の中央に位置する本体部52bと、本体部52bの長手方向の両側に軸52cを中心として回動可能に連結された端部52aとを有している。下部梁材52の端部52aは、本体部52bの延在方向(図5に実線で示す)と本体部52bの延在方向に略直交する方向(図5に二点鎖線で示す)との間を向く範囲で回動可能である。ここでは、端部52aは、本体部52bの延在方向を向いた状態で端部52aの下フランジ52a1が本体部52bの下フランジ52b1に当接することで、回動が規制される。また、下部桁材53の端部53aも、下部梁材52の端部52aと同様な所定範囲内で回動可能な連結構造を有している。なお、これらの端部52a,53aの連結構造は、前記した構成に限定されるものではなく適宜変更可能である。
【0020】
続いて、図6に示すように、下部支持体51の上に、下部足場体54が載置される。下部足場体54は、平面視における下部足場体54の外形面積が小さくなるように、端部56が折り畳み可能に構成されている。端部56は、例えば複数の鋼板56a~56dを備えている。下部足場体54の端部56は、下部梁材52および下部桁材53の端部52a,53aが折り畳まれることによって一緒に折り畳まれるように構成されている。吊材21には、複数の吊材21の外周を囲うように手摺57が取り付けられている。
【0021】
また、ステップS2において、作業架台20のうちの上部架台30(図1参照)が仮桟橋80上で作製される。すなわち、図7に示すように、仮桟橋80上で、上部梁材32の上に上部桁材33が載置され、両者が接合されて上部支持体31が形成される。
続いて、図8に示すように、上部支持体31の上に、上部足場体34が載置される。上部足場体34には、開口部35が形成されており、開口部35には、開閉可能な扉36が設置されている。作業者は、開口部35を通り、梯子(図示省略)を介して上部足場体34と下部足場体54との間を行き来可能となっている。上部足場体34の周囲には、手摺37が配置されている。上部梁材32の長手方向(前後方向)の両端部には、クレーン等の揚重装置101(図9参照)によって吊り上げる際にワイヤロープ102(図9参照)が係止される吊用梁38がそれぞれ取り付けられている。
そして、図9に示すように、揚重装置101が上部架台30を吊り上げて、下部架台50の上方に移動させる。続いて、下部架台50の下部支持体51に下端部が接続された吊材21の上端部に、上部架台30の上部支持体31を接続することで、作業架台20の作製が完了する。
【0022】
次に、図10に示すように、作製された作業架台20が、支柱10に支持させられる(図2のステップS3)。すなわち、揚重装置101が作業架台20を吊り上げて、既設構造物90の対向する壁部91の上面93に立設された支柱10の上方に移動させる。続いて、支柱10の上端部に上部支持体31の上部梁材32を接続することで作業架台20が支柱10に支持させられて、足場ユニット100の設置が完了する。なお、本実施形態では、作業架台20を支柱10に設置した際、下部足場体54の上面は、壁部91の上面93の下方に位置する。
【0023】
次に、図11に示すように、支柱10の根元側が埋設されるとともに支柱10の上部支持体31との接続部が外部に露出するように、既設構造物90の壁部91の上面93に躯体94が構築される(図2のステップS4)。具体的には、まず、作業架台20の下部架台50と、既設構造物90の周囲に設けられた外周足場(図示省略)とを主に用いて、型枠(図示省略)が組み立てられる。続いて、作業架台20の上部架台30を主に用いて、組み立てられた型枠内にコンクリートを打設することで、躯体94の構築が完了する。このとき、足場ユニット100のうち、支柱10の根元側のみが躯体94に埋設される。
【0024】
躯体94には、下側の開口95a(図12,13参照)と上側の開口95bとを有する中空部95が形成される。躯体94の下側の開口95aは、既設構造物90の開口92a(図3,12,13参照)と同じ形状である。躯体94の上側の開口95bは、既設構造物90の開口92aよりも開口面積が小さい。すなわち、躯体94の上側の開口95bの左右方向寸法A2(図12,13参照)は、既設構造物90の開口92a(図12参照)の左右方向寸法A1(図3,12参照)よりも小さい。また、躯体94の上側の開口95bの前後方向寸法B2(図12,13参照)は、既設構造物90の開口92aの前後方向寸法B1(図3,12参照)よりも小さい。なお、躯体94の構築後には、例えば橋脚頂版部を構築するための支保工ブラケット(図示省略)が躯体94に設置される。
【0025】
次に、下部足場体54の端部56が、平面視における下部足場体54の外形面積が小さくなるように折り畳まれる(図2のステップS5;図13参照)。具体的には、図12に示すように、下部桁材53の端部53aが、その先端が略上方を向くように折り畳まれ、続いて、下部梁材52の端部52aが、その先端が略上方を向くように折り畳まれる。結果的に、複数の下部桁材53のうち、左右両側に位置する下部桁材53の端部53aは、その先端が水平方向内側を向く。こうして、下部架台50の下部支持体51の端部52a,53aが折り畳まれる。なお、図12では、説明の便宜上、下部支持体51および吊材21以外の部材は図示省略した。そして、下部足場体54の端部56は、下部梁材52および下部桁材53の端部52a,53aが折り畳まれるのに伴って、これらの端部52a,53aとともに折り畳まれる(図13参照)。
【0026】
次に、図13に示すように、作業架台20が撤去される(図2のステップS6)。具体的には、揚重装置101が作業架台20を支持した状態で、まず、支柱10と上部支持体31とが分離される。つまり、躯体94の外部に露出している支柱10と上部支持体31との接続部における接合状態が解除される。続いて、揚重装置101が作業架台20を吊り上げて移動させることで、作業架台20を撤去する。
【0027】
前記したように、本実施形態に係る足場ユニット100は、内側に中空部92を形成する壁部91を備えた既設構造物90に使用される。この足場ユニット100は、支柱10と、上部支持体31と、吊材21と、下部支持体51と、下部足場体54とを備える。支柱10は、対向する壁部91の上面93に立設されている。上部支持体31は、支柱10に支持されている。吊材21は、上部支持体31から垂下されている。下部支持体51は、吊材21に吊り下げられている。下部足場体54は、下部支持体51に載置されている。そして、支柱10の根元側が埋設されるように壁部91の上面93に躯体94を構築した状態において、支柱10の上部支持体31との接続部が外部に露出する。
本実施形態では、上部支持体31と、下部足場体54が載置された下部支持体51とを吊材21によって接続したものを、作業架台20として予め作製できる。また、この作業架台20を例えばクレーン等の揚重装置101によって吊り上げて移動させて、支柱10に上部支持体31を接続することで、容易に足場ユニット100を設置できる。さらに、足場ユニット100は、支柱10の根元側が躯体94に埋設されるが、支柱10と上部支持体31とを分離すれば支柱10以外の部材は揚重装置101によって吊り上げて容易に撤去できる。このため、足場ユニット100は、他の既設構造物90に転用可能となる。
このように、本実施形態によれば、内側に中空部92を形成する壁部91を備えた既設構造物90における壁部91の上面93に躯体94を構築する際に、足場ユニット100の設置および撤去を容易に行うことができる。
【0028】
また、本実施形態では、上部支持体31は、支柱10に接続された上部梁材32と、上部梁材32に載置された上部桁材33とを有する。下部支持体51は、吊材21に接続された下部梁材52と、下部梁材52に載置された下部桁材53とを有する。この構成では、上部支持体31および下部支持体51は、一般的な鋼材を用いて簡単に構成できるとともに強度を十分に確保できる。
また、本実施形態では、足場ユニット100は、上部支持体31に載置された上部足場体34を備える。この構成では、上部支持体31の上も例えばコンクリート打設等の各種作業の際に使用される作業床として使用することができる。
【0029】
また、本実施形態では、下部足場体54は、平面視における下部足場体54の外形面積が小さくなるように端部56が折り畳み可能に構成されている。この構成では、躯体94の開口95bが既設構造物90の開口92aよりも小さい場合でも、躯体94の構築後において、下部足場体54が躯体94に接触することなく足場ユニット100を吊り上げて撤去できる。
また、本実施形態では、下部足場体54は、壁部91の上面93よりも下方に位置する。この構成では、例えば壁部91の上面93に躯体94を構築するための型枠の組立て等の作業がしやすくなる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
上部支持体31や下部支持体51の構成は、図4図7に示すものに限定されるものではなく、形鋼の種類や使用本数は適宜変更され得る。
吊材21は、上部支持体31の上部桁材33に接続されていてもよい。
下部足場体54の折り畳み可能な端部56は、図6に示す折り畳み線で折り畳む場合に限定されるものではなく、折り畳み線の位置は適宜変更され得る。なお、下部足場体54が折り畳み可能な端部56を有していない構成が採用されてもよい。
また、足場ユニット100は、内側に中空部92を形成する壁部91を備えた既設構造物90であれば、橋脚本体以外の既設構造物にも使用され得る。
【符号の説明】
【0031】
10 支柱
20 作業架台
21 吊材
30 上部架台
31 上部支持体
32 上部梁材
33 上部桁材
34 上部足場体
50 下部架台
51 下部支持体
52 下部梁材
53 下部桁材
54 下部足場体
56 端部
90 既設構造物
91 壁部
92 中空部
93 上面
94 躯体
100 足場ユニット
図1
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