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特開2022-166941超音波診断装置及び超音波診断装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166941
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】超音波診断装置及び超音波診断装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
A61B8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072391
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000189486
【氏名又は名称】上田日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸林 俊文
(72)【発明者】
【氏名】花岡 佑飛
(72)【発明者】
【氏名】藤木 俊昭
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE13
4C601HH22
4C601JB02
4C601JB06
4C601JB08
4C601JB10
(57)【要約】
【課題】超音波診断装置の回路規模を小さくし、消費電力を低減する。
【解決手段】超音波ビームを送信又は受信するための振動素子が複数並べられた振動素子部10と、振動素子部10に含まれる振動素子の組み合わせから1つの振動素子を選択する選択器12aと、を含み、選択器12aを複数備え、複数の選択器12aにおいて選択された振動素子によって超音波ビームを送信又は受信するための開口が構成され、複数の選択器12aを組み合わせたブロックを複数構成し、ブロックの各々に含まれる選択器12aではブロックの各々における遅延差が変化しないように振動素子が選択される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波ビームを送信又は受信するための振動素子が複数並べられた振動素子部と、
前記振動素子部に含まれる前記振動素子の組み合わせから1つの前記振動素子を選択する選択器と、
を含み、
前記選択器を複数備え、複数の前記選択器において選択された前記振動素子によって超音波ビームを送信又は受信するための開口が構成され、
複数の前記選択器を組み合わせたブロックを複数構成し、前記ブロックの各々に含まれる前記選択器では前記ブロックの各々における遅延差が変化しないように前記振動素子が選択されることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、
前記ブロックの各々に割り当てられている前記選択器では前記振動素子部において連続して並べられた前記振動素子が選択されることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の超音波診断装置であって、
前記ブロック間に亘って、前記振動素子部において連続して並べられた前記振動素子が選択されることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の超音波診断装置であって、
前記選択器において選択された前記振動素子によって受信された超音波ビームを遅延させた後、前記ブロック毎に整相加算する遅延加算器を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の超音波診断装置であって、
前記振動素子部において前記振動素子が番号順に並べられており、
前記振動素子部に含まれる前記振動素子の個数X及び前記選択器の個数Yである場合、
第1番目の前記選択器において選択可能な前記振動素子は、基準番号であるM番に前記個数Yの倍数を加算した番号及びそれに1つの前記選択器で選択可能な振動素子の数Aをそれぞれ減算した番号の前記振動素子であり、
第N番目(ただし、Nは1以上の整数)の前記選択器において選択可能な前記振動素子は、前記第1番目の前記選択器において選択可能な前記振動素子の番号にそれぞれ(N-1)を加えた番号の前記振動素子であることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
超音波ビームを送信又は受信するための振動素子が複数並べられた振動素子部と、
前記振動素子部に含まれる前記振動素子の組み合わせから1つの前記振動素子を選択する選択器と、を含む超音波診断装置の制御方法であって、
複数の前記選択器において選択された前記振動素子によって超音波ビームを送信又は受信するための開口を構成し、複数の前記選択器を組み合わせたブロックの各々に含まれる前記選択器では前記ブロックの各々における遅延差が変化しないように前記振動素子を選択させることを特徴とする超音波診断装置の制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波診断装置の制御方法であって、
前記ブロックの各々に対して前記開口を構成する前記振動素子を前記振動素子部における並び順に沿って割り当てる第1のステップと、
前記ブロックの全体において前記振動素子部の並び順に沿って割り当てられる前記振動素子をシフトさせるチャンネルローテーションを繰り返す第2のステップと、
前記ブロックの各々に割り当てられている前記振動素子の数だけチャンネルローテーションを行った後、最初のブロックが最後のブロックとなるように前記ブロックのローテーションを行う第3のステップと、
を含み、
前記第3のステップの後、前記第1のステップから処理を繰り返すことを特徴とする超音波診断装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置及び超音波診断装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置が広く用いられている。超音波診断装置は、被検体に対して超音波を送受信することで被検体の断層画像を生成し、ディスプレイに表示する。断層画像は、被検体の診断の他、被検体に対する施術にも用いられる。超音波診断装置では、測定用のプローブに回路を組み込むことにより小型化したハンディ型超音波プローブが開発されている。
【0003】
ハンディ型超音波プローブでは、消費電力削減(アナログ/デジタル変換器の削減等)、信号線の削減などのために、送受信開口を複数のブロックに分割して整相加算を行う処理が行われている。図10は、整相加算処理を行う整相加算回路の構成例を示す。整相加算回路では、各ブロック内にて部分的な整相加算を行い、その後、ブロック間の整相加算を行う処理が行われている。このような整相加算処理を行う場合、消費電力削減のためにはできるだけ後段の整相加算回路を削減し、前段の加算数(各ブロックの大きさ)を大きくした方が有利である。前段の整相加算には、図11に示すようなアナログ遅延回路(ADL)が用いられる。アナログ遅延回路では、最大遅延量と分解能により、必要なタップ数(遅延回路の大きさ)が決定される。したがって、アナログ遅延を大きくしようとすると、アナログ遅延回路の回路規模は大きくなる。そこで、プローブにおいて遅延差が少ない近傍の領域の振動素子をブロックとしてアナログ遅延を施し、ブロック間では容易に遅延を大きくできるデジタル遅延を適用する方法が採用されている。
【0004】
リニアプローブ又はコンベックスプローブでは、図12に示すように、プローブの振動素子アレイの中でビームの位置に応じて使用する振動素子を走査する。この使用する振動素子の範囲を開口という。開口は、送信・受信独立に設定できる。そして、開口(開口1、開口2・・・開口n)の各々から得られた信号を合成することによって画像を生成する。送信及び受信では、各開口内において各振動素子のチャンネルに対して遅延を施すことによってフォーカシングを行う(特許文献1)。この場合、開口分の遅延回路を備え、走査に応じて振動素子を切り替えて各開口を構成する振動素子を遅延回路に接続する。このとき、各開口に対応する遅延回路に振動素子と接続するために、図13に示すように、遅延回路に接続される振動素子を選択するための選択器(MUX)が用いられる。図13の例では、128個の振動素子からなるプローブに対して、それぞれ4つの入力信号から1つの信号を選択して出力する選択器(MUX)を32個設け、選択器(MUX)の各々から出力される信号を組み合わせて遅延回路に入力する構成を示している。
【0005】
例えば、選択器(MUX1)では第1番目の振動素子の信号、選択器(MUX2)では第2番目の振動素子の信号・・・選択器(MUX32)では第32番目の振動素子の信号を選択して出力させることで、プローブにおいて近接する第1番目~第32番目の振動素子を1つの開口としてそれらの振動素子から出力された信号を遅延回路に入力して処理することができる。次に、選択器(MUX1)では第33番目の振動素子の信号、選択器(MUX2)では第2番目の振動素子の信号・・・選択器(MUX32)では第32番目の振動素子の信号を選択して出力させることで、プローブにおいて近接する第2番目~第33番目の振動素子を1つの開口としてそれらの振動素子から出力された信号を遅延回路に入力して処理することができる。このように、各開口に含まれる振動素子を切り替えながら走査し、物理的な開口チャンネルの切り替えに合わせて遅延回路で使用する遅延情報をずらして設定することによって各開口に応じた遅延処理を適用する。このような処理を、チャンネルローテーションという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-503459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
超音波ビームを傾けた状態においてチャンネルローテーションによって開口に含まれる振動素子を切り替えながら各振動素子からの出力信号に遅延を与える場合、図14(a)に示すように、連続して配置されている各振動素子の出力信号に対して直線的に変化する遅延差を与えられるようにアナログ遅延回路を構成する必要がある。
【0008】
例えば、プローブにおいて近接する第1番目~第32番目の振動素子を1つの開口とした場合、第1番目の振動素子の出力信号は遅延させず、第2番目の振動の出力信号は遅延時間tだけ遅延させ、第3番目の振動の出力信号は遅延時間2tだけ遅延させ、・・・第32番目の振動素子の出力信号は遅延時間31tだけ遅延させる処理を施す。ここで、アナログ遅延回路を4つのブロック(BLK1~BLK4)に分けた場合、各ブロックにおける最大の遅延量は図14(a)において「ブロック内遅延差」と示す値となる。
【0009】
ところが、図13に示したような従来の遅延回路において近接する第2番目~第33番目の振動素子を1つの開口とした場合、第2番目の振動素子の出力信号は遅延させず、第3番目の振動の出力信号は遅延時間tだけ遅延させ、第4番目の振動の出力信号は遅延時間2tだけ遅延させ、・・・第33番目の振動素子の出力信号は遅延時間32tだけ遅延させる処理を施す必要がある。このとき、第33番目の振動素子の出力信号は、図14(b)に示すように、遅延回路における4つのブロック(BLK1~BLK4)のうち第1番目のブロック(BLK1)に入力されることになるため、第1番目のブロック(BLK1)における最大の遅延量は図14(b)において「ブロック内遅延差」と示す値となる。以下、同様にチャンネルローテーションが行われ、第8番目~第39番目の振動素子を1つの開口とした場合、第1番目のブロック(BLK1)における最大の遅延量は図14(c)において「ブロック内遅延差」と示す値となる。そして、第9番目~第40番目の振動素子を1つの開口とした場合、第1番目のブロック(BLK1)における最大の遅延量は図14(d)において「ブロック内遅延差」と示す値に戻る。
【0010】
このように、プローブの超音波ビームを傾けると開口における両端において1つのブロックとして選択される振動素子が不連続となり、大きな遅延量の差が必要となり、アナログ遅延回路の各ブロックにおいて大きな遅延量を与えられるように回路を構成しなければならない。したがって、図11に示したアナログ遅延回路の構成において、コンデンサ及び選択スイッチの組み合わせ数を増加させる必要があり、各ブロックにおけるアナログ遅延回路の回路規模が大きくなり、アナログ遅延回路を含む集積回路(IC)も大きくなってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの態様は、超音波ビームを送信又は受信するための振動素子が複数並べられた振動素子部と、前記振動素子部に含まれる前記振動素子の組み合わせから1つの前記振動素子を選択する選択器と、を含み、前記選択器を複数備え、複数の前記選択器において選択された前記振動素子によって超音波ビームを送信又は受信するための開口が構成され、複数の前記選択器を組み合わせたブロックを複数構成し、前記ブロックの各々に含まれる前記選択器では前記ブロックの各々における遅延差が変化しないように前記振動素子が選択されることを特徴とする超音波診断装置である。
【0012】
ここで、前記ブロックの各々に含まれる前記選択器では前記振動素子部において連続して並べられた前記振動素子が選択されることが好適である。
【0013】
また、前記ブロック間に亘って、前記振動素子部において連続して並べられた前記振動素子が選択されることが好適である。
【0014】
また、前記選択器において選択された前記振動素子によって受信された超音波ビームを遅延させた後、前記ブロック毎に整相加算する遅延加算器を備えることが好適である。
【0015】
また、前記振動素子部において前記振動素子が番号順に並べられており、前記振動素子部に含まれる前記振動素子の個数X及び前記選択器の個数Yである場合、第1番目の前記選択器において選択可能な前記振動素子は、基準番号であるM番に前記個数Yの倍数を加算した番号及びそれに1つの前記選択器で選択可能な振動素子の数Aをそれぞれ減算した番号の前記振動素子であり、第N番目(ただし、Nは1以上の整数)の前記選択器において選択可能な前記振動素子は、前記第1番目の前記選択器において選択可能な前記振動素子の番号にそれぞれ(N-1)を加えた番号の前記振動素子であることが好適である。
【0016】
本発明の別の態様は、超音波ビームを送信又は受信するための振動素子が複数並べられた振動素子部と、前記振動素子部に含まれる前記振動素子の組み合わせから1つの前記振動素子を選択する選択器と、を含む超音波診断装置の制御方法であって、複数の前記選択器において選択された前記振動素子によって超音波ビームを送信又は受信するための開口を構成し、複数の前記選択器を組み合わせたブロックの各々に含まれる前記選択器では前記ブロックの各々における遅延差が変化しないように前記振動素子を選択させることを特徴とする超音波診断装置の制御方法である。
【0017】
ここで、前記ブロックの各々に対して前記開口を構成する前記振動素子を前記振動素子部における並び順に沿って割り当てる第1のステップと、前記ブロックの全体において前記振動素子部の並び順に沿って割り当てられる前記振動素子をシフトさせるチャンネルローテーションを繰り返す第2のステップと、前記ブロックの各々に割り当てられている前記振動素子の数だけチャンネルローテーションを行った後、最初のブロックが最後のブロックとなるように前記ブロックのローテーションを行う第3のステップと、を含み、前記第3のステップの後、前記第1のステップから処理を繰り返すことが好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、超音波診断装置の回路規模を小さくし、超音波診断装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る送受信部の構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る送受信部における選択器と振動素子との関係及び送受信部における処理を説明する図である。
図4】本発明の実施形態に係る送受信部における選択器と振動素子との関係及び送受信部における処理を説明する図である。
図5】本発明の実施形態に係る送受信部における選択器と振動素子との関係及び送受信部における処理を説明する図である。
図6】本発明の実施形態に係る送受信部における選択器と振動素子との関係及び送受信部における処理を説明する図である。
図7】本発明の実施形態に係る送受信部における遅延加算器での処理を説明する図である。
図8】本発明の実施形態に係る送受信部における選択器と振動素子との関係の別例を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る送受信部における選択器と振動素子との関係の別例を示す図である。
図10】整相加算回路の構成例を示す図である。
図11】アナログ遅延回路の構成例を示す図である。
図12】プローブの振動素子における走査を説明する図である。
図13】従来の送受信部の構成を示す図である。
図14】従来の送受信部における遅延加算器での処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る超音波診断装置100は、図1に示すように、超音波プローブ102及び表示部104を含んで構成される。超音波プローブ102は、振動素子部10、送受信部12、アナログ/デジタル変換回路14、信号処理部16、制御部18及び操作部20を含んで構成される。
【0021】
振動素子部10は、複数の振動素子を備える。振動素子部10において、複数の振動素子は1次元又は2次元に配置される。振動素子部10では、振動素子は1次元又は2次元に番号順に並べてアレイ状に配置されているものとする。振動素子部10の各振動素子は、送受信部12から出力された送信信号に応じて、送信信号を超音波に変換して被検体に送信する。また、振動素子部10の各振動素子は、被検体で反射された超音波を受信し、電気信号に変換して送受信部12に出力する。
【0022】
本実施の形態では、振動素子部10に含まれる複数の振動素子の中でビームの位置に応じて使用する振動素子を含む開口を走査するチャンネルローテーションを行う。本実施の形態におけるチャンネルローテーションについては後述する。
【0023】
送受信部12は、振動素子部10の各振動素子に対して超音波を送信させるための送信信号を生成して出力する。送受信部12は、振動素子部10において送信超音波ビームを出力する開口部となる振動素子を選択する。送受信部12によって送信のための開口を構成する振動素子は走査され、チャンネルローテーションが行われる。また、送受信部12は、開口を構成する各振動素子から発せられる超音波が被検体内の特定の位置で強め合うように、各振動素子に出力する送信信号の遅延時間を調整して振動素子部10へ出力する。送信超音波ビームを出力するタイミングは、信号処理部16から入力される送信タイミング信号STによって設定される。これによって、振動素子部10の各振動素子からその特定の位置に向けて超音波による送信超音波ビームが出力される。
【0024】
また、送受信部12は、被検体で反射され、振動素子部10の各振動素子において受信された超音波の受信信号を受けて、受信信号に処理を施してアナログ/デジタル変換回路14へ出力する。送受信部12は、受信においても超音波ビームを受信する開口部となる振動素子を選択する。すなわち、送受信部12によって受信のための開口を構成する振動素子は走査され、チャンネルローテーションが行われる。開口を構成する振動素子は、送信及び受信においてそれぞれ独立に選択することができる。送受信部12は、受信された超音波に基づく電気信号が強め合うように、各振動素子から出力された電気信号をアナログ整相加算して出力信号を生成する。送受信部12は、当該出力信号をアナログ/デジタル変換回路14へ出力する。すなわち、送受信部12における整相加算によって受信超音波ビームが形成され、その受信超音波ビームに応じた出力信号SRが送受信部12からアナログ/デジタル変換回路14に出力される。
【0025】
なお、以下の説明では、送信超音波ビーム及び受信超音波ビームを総称して「超音波ビーム」とする。
【0026】
アナログ/デジタル変換回路14は、送受信部12からの出力信号SRをアナログ信号からデジタル信号に変換して出力する。アナログ/デジタル変換回路14の出力信号SDは、信号処理部16に入力される。アナログ/デジタル変換回路14での処理は、信号処理部16から制御される。
【0027】
信号処理部16は、アナログ/デジタル変換回路14から入力された信号に対してデジタル処理を施す。信号処理部16は、例えば、デジタル信号を処理するデジタル回路やプログラムによって処理を実行するコンピュータ、これらの組み合わせとして構成することができる。
【0028】
信号処理部16は、送受信部12においてアナログ整相加算された信号について、さらにデジタル整相加算処理を適用する。また、信号処理部16は、デジタル整相加算された信号に対して、ビームプロセスを適用することによって画像の輝度データを生成し、カラープロセスを適用することによって画像の流速データ及び分散データを生成する。ビームプロセス及びカラープロセスには、既存の超音波診断装置の画像処理技術を適用することができる。信号処理部16によって生成された輝度データ、流速データ及び分散データは、データ圧縮処理等された後に制御部18を介して表示部104へ出力される。
【0029】
さらに、信号処理部16は、送受信部12及びアナログ/デジタル変換回路14に対して制御信号を生成して出力する。信号処理部16は、送受信部12に対して開口を構成する振動素子を設定するための選択情報を出力する。また、信号処理部16は、アナログ/デジタル変換回路14におけるアナログ整相加算を行う際にどれだけ信号をさせるかを設定するための遅延情報を出力する。また、信号処理部16は、アナログ/デジタル変換回路14におけるアナログ信号からデジタル信号への変換のためのパラメータを設定する制御信号を出力する。
【0030】
制御部18は、超音波プローブ102の各部の制御を統合的に行う。制御部18は、プログラムによって処理を実行するコンピュータにより構成することができる。制御部18は、操作部20を用いたユーザの操作情報に基づいて超音波プローブ102の全体的な制御を行う。例えば、操作部20の診断ボタンがオンにされると信号処理部16に対して超音波ビームを送出して診断を開始するように制御信号を出力し、診断ボタンがオフにされると信号処理部16に対して超音波ビームを停止するように制御信号を出力する。また、制御部18は、信号処理部16から輝度データ、流速データ及び分散データを受信し、表示部104へ転送する処理を行う。表示部104との通信は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。
【0031】
操作部20は、超音波プローブ102に対するユーザの操作を受け付ける。操作部20は、スイッチ、ボタン、回転ツマミ、レバー等を含むことができる。操作部20は、ユーザの操作に基づく操作情報を制御部18に出力する。
【0032】
表示部104は、超音波診断の画像を表示する。表示部104は、ディスプレイ装置を含んで構成される。表示部104は、信号処理部16において生成された輝度データ、流速データ及び分散データに基づいて被検体から得られた超音波画像を表示する。
【0033】
[チャンネルローテーション処理]
以下、超音波診断装置100におけるチャンネルローテーション処理について説明する。図2は、超音波プローブ102の送受信部12に含まれる選択器(MUX)12aと遅延加算器(ADL)12bの構成を示す。なお、図2では、送受信部12においてチャンネルローテーションに必要な構成のみを示しており、送受信部12には必要に応じて他の構成を含んでもよい。
【0034】
本実施の形態におけるチャンネルローテーションは、振動素子部10に含まれる128個の振動素子から互いに隣り合う32個の振動素子を開口に含まれるように選択していく例で説明する。すなわち、開口1として第1番目~第32番目の振動素子、次に開口2として第2番目~第33番目の振動素子・・・と、順に1つずつ振動素子をシフトさせながら開口チャンネルをローテーションさせるための構成及び処理について説明する。
【0035】
図3図6は、32個の選択器12a(12a-1~12a-32)について選択可能な振動素子と選択情報との関係を示す。図3図6において、各行は選択器12aの各々において選択可能な振動素子を示す。選択器12aの各々は、それぞれ8個の振動素子のうち1つを選択して、選択された振動素子において受信された超音波信号を出力する。
【0036】
第1番目の選択器12a-1は、選択情報に応じて第121番目、第17番目、第25番目、第49番目、第57番目、第81番目、第89番目及び第113番目のうち1つを選択できるように構成する。そして、第1番目の選択器12a-1は、選択された振動素子に受信された超音波信号を出力信号1-1として出力する。また、第2番目の選択器12a-2は、第1番目の選択器12a-1で選択可能な第121番目、第17番目、第25番目、第49番目、第57番目、第81番目、第89番目及び第113番目のそれぞれについて1ずつ増加させた第122番目、第18番目、第26番目、第50番目、第58番目、第82番目、第90番目及び第114番目のうち1つを選択できるように構成する。そして、第2番目の選択器12a-2は、選択された振動素子に受信された超音波信号を出力信号1-2として出力する。
【0037】
以下、同様に、第3番目の選択器12a-2~第32番目の選択器12a-32について第1番目~第128番目の振動素子をサイクリックに順にずらして選択できるように構成する。ここで、サイクリックに順にずらすとは、ある範囲内の番号をずらす際に、当該範囲の最大の番号からさらにずらす場合には最初の番号に戻すことを意味する。例えば、第1番目から第128番目の範囲を対象とした場合、第128番目からさらに番号をずらすときに第1番目に戻すようにずらすことを意味する。
【0038】
また、本実施の形態では、4個の遅延加算器12b(12b-1~12b-4)を用いて、32個の選択器12a(12a-1~12a-32)で選択された32個の振動素子の出力信号を遅延及び整相加算する。したがって、32個の振動素子の出力信号を4つのブロックに分割して、4個の遅延加算器12b(12b-1~12b-4)の各々においてそれぞれ8個の振動素子の出力信号を遅延及び整相加算する構成とする。
【0039】
具体的には、第1番目~第8番目の選択器12a-1~12a-8からの出力を出力信号1-1~1-8として第1番目の遅延加算器12b-1で処理する。また、第9番目~第16番目の選択器12a-9~12a-16からの出力を出力信号2-1~2-8として第2番目の遅延加算器12b-2で処理する。また、第17番目~第24番目の選択器12a-17~12a-24からの出力を出力信号3-1~3-8として第3番目の遅延加算器12b-3で処理する。また、第1番目~第8番目の選択器12a-1~12a-8からの出力を出力信号1-1~1-8として第1番目の遅延加算器12b-1で処理する。
【0040】
以下、図3の網掛けした部分に示すように、開口チャンネルとして第49番目~第80番目の振動素子が選択された状態から、図6の網掛けした部分に示すように、開口チャンネルとして第57番目~第88番目の振動素子が選択された状態までチャンネルローテーションを行う処理を例として説明する。
【0041】
図3に示すように、信号処理部16から選択情報“3”が出力され、第1番目~第32番目の選択器12a-1~12a-32へ選択情報“3”が入力される。これによって、第1番目の選択器12a-1では、第121番目、第17番目、第25番目、第49番目、第57番目、第81番目、第89番目及び第113番目の振動素子のうち第49番目の振動素子が選択される。また、第2番目の選択器12a-2では、第122番目、第18番目、第26番目、第50番目、第58番目、第82番目、第90番目及び第114番目の振動素子のうち第50番目の振動素子が選択される。同様に、第3番目の選択器12a-3では第51番目の振動素子、第4番目の選択器12a-4では第52番目の振動素子・・・と、図3において網掛けで示した振動素子が第1番目~第32番目の選択器12a-1~12a-32の各々において選択される。
【0042】
これによって、第1番目のブロックBLK1として第49番目~第56番目の振動素子によって受信された超音波信号がそれぞれ出力信号1-1~1-8として出力され、第1番目の遅延加算器12b-1に入力される。また、第2番目のブロックBLK2として第57番目~第64番目の振動素子によって受信された超音波信号がそれぞれ出力信号2-1~2-8として出力され、第2番目の遅延加算器12b-2に入力される。また、第3番目のブロックBLK3として第65番目~第72番目の振動素子によって受信された超音波信号がそれぞれ出力信号3-1~3-8として出力され、第3番目の遅延加算器12b-3に入力される。同様に、第4番目のブロックBLK4として第73番目~第80番目の振動素子によって受信された超音波信号がそれぞれ出力信号4-1~4-8として出力され、第4番目の遅延加算器12b-4に入力される。
【0043】
遅延加算器12b-1~12b-4では、図7(a)に示すように、信号処理部16からの遅延情報に応じて遅延処理が施される。第1番目のブロックBLK1の遅延加算器12b-1では、第49番目~第56番目の振動素子によって受信された超音波信号がそれぞれ出力信号1-1~1-8として遅延処理が施された後、アナログ整相加算が行われる。具体的には、遅延情報が時間“t”ずつ遅延させるという情報である場合、第49番目の振動素子の出力信号1-1は遅延させず、第50番目の振動の出力信号1-2は遅延時間tだけ遅延させ、第51番目の振動の出力信号1-3は遅延時間2tだけ遅延させ、・・・第56番目の振動素子の出力信号1-8は遅延時間7tだけ遅延させる処理を施す。そして、遅延後の出力信号1-1~1-8をアナログ整相加算して出力信号SR1として出力する。第2番目のブロックBLK2の遅延加算器12b-2では、第57番目~第64番目の振動素子によって受信された超音波信号がそれぞれ出力信号2-1~2-8として遅延処理が施された後、アナログ整相加算が行われる。具体的には、遅延情報が時間“t”ずつ遅延させるという情報である場合、第57番目の振動素子の出力信号2-1は遅延させず、第58番目の振動の出力信号2-2は遅延時間tだけ遅延させ、第59番目の振動の出力信号2-3は遅延時間2tだけ遅延させ、・・・第64番目の振動素子の出力信号2-8は遅延時間7tだけ遅延させる処理を施す。そして、遅延後の出力信号2-1~2-8をアナログ整相加算して出力信号SR2として出力する。第3番目のブロックBLK3の遅延加算器12b-3では、第65番目~第72番目の振動素子によって受信された超音波信号がそれぞれ出力信号3-1~3-8として遅延処理が施された後、アナログ整相加算が行われる。具体的には、遅延情報が時間“t”ずつ遅延させるという情報である場合、第65番目の振動素子の出力信号3-1は遅延させず、第66番目の振動の出力信号3-2は遅延時間tだけ遅延させ、第67番目の振動の出力信号3-3は遅延時間2tだけ遅延させ、・・・第72番目の振動素子の出力信号3-8は遅延時間7tだけ遅延させる処理を施す。そして、遅延後の出力信号3-1~3-8をアナログ整相加算して出力信号SR3として出力する。第4番目のブロックBLK4の遅延加算器12b-4では、第73番目~第80番目の振動素子によって受信された超音波信号がそれぞれ出力信号4-1~4-8として遅延処理が施された後、アナログ整相加算が行われる。具体的には、遅延情報が時間“t”ずつ遅延させるという情報である場合、第73番目の振動素子の出力信号4-1は遅延させず、第74番目の振動の出力信号4-2は遅延時間tだけ遅延させ、第75番目の振動の出力信号4-3は遅延時間2tだけ遅延させ、・・・第80番目の振動素子の出力信号4-8は遅延時間7tだけ遅延させる処理を施す。そして、遅延後の出力信号4-1~4-8をアナログ整相加算して出力信号SR4として出力する。
【0044】
ここで、各ブロックBLK1~BLK4における最大の遅延量は図7(a)において「ブロック内遅延差」と示す値となる。例えば、遅延情報が時間“t”ずつ遅延させるという情報である場合、各ブロックBLK1~BLK4における最大の遅延量は7tとなる。
【0045】
なお、送受信部12において、選択器12aの前段にタイム・ゲイン・コントロール回路(TGC)を設けて、各振動素子における超音波信号の受信タイミングに応じて、当該超音波信号の振幅を調整する処理を施してもよい。また、遅延加算器12bの後段にハイパスフィルタ(HPF)やローパスフィルタ(LPF)を設けて、出力信号SR1~SR4に対してフィルタ処理を施してもよい。
【0046】
また、ブロックBLK1~BLK4の間の遅延の調整は、信号処理部16におけるデジタル整相加算処理にて行われる。例えば、遅延情報が時間“t”ずつ遅延させるという情報である場合、図7(a)に示すように、開口チャンネルとして選択されている第57番目~第88番目の振動素子からの出力信号が全体として時間“t”ずつ遅延されて加算されるようにブロックBLK1~BLK4の間の遅延時間を調整したうえでデジタル整相加算処理を施す。
【0047】
次に、開口チャンネルとして選択する振動素子を1つずらすチャンネルローテーションが行われる。すなわち、図3の網掛けした部分に示すように、開口チャンネルとして第49番目~第80番目の振動素子が選択された状態から、図4の網掛けした部分に示すように、開口チャンネルとして第50番目~第81番目の振動素子が選択された状態となるようにチャンネルローテーションが行われる。
【0048】
図4に示すように、信号処理部16から第2番目~第8番目の選択器12a-2~12a-8、第10番目~第16番目の選択器12a-10~12a-16、第18番目~第24番目の選択器12a-18~12a-24、第26番目~第32番目の選択器12a-26~12a-32に対して選択情報“3”が出力される。また、信号処理部16から第1番目の選択器12a-1、第9番目の選択器12a-9、第17番目の選択器12a-17、第25番目の選択器12a-25に対して選択情報“4”が出力される。
【0049】
これによって、第1番目の選択器12a-1では、第121番目、第17番目、第25番目、第49番目、第57番目、第81番目、第89番目及び第113番目の振動素子のうち第57番目の振動素子が選択される。また、第2番目の選択器12a-2では、第122番目、第18番目、第26番目、第50番目、第58番目、第82番目、第90番目及び第114番目の振動素子のうち第50番目の振動素子が選択される。同様に、第3番目の選択器12a-3では第51番目の振動素子、第4番目の選択器12a-4では第52番目の振動素子・・・と、図4において網掛けで示した振動素子が第1番目~第32番目の選択器12a-1~12a-32の各々において選択される。
【0050】
これによって、第1番目のブロックBLK1として第57番目、第50番目~第56番目の振動素子によって受信された超音波信号がそれぞれ出力信号1-1~1-8として出力され、第1番目の遅延加算器12b-1に入力される。また、第2番目のブロックBLK2として第65番目、第58番目~第64番目の振動素子によって受信された超音波信号がそれぞれ出力信号2-1~2-8として出力され、第2番目の遅延加算器12b-2に入力される。また、第3番目のブロックBLK3として第73番目、第66番目~第72番目の振動素子によって受信された超音波信号がそれぞれ出力信号3-1~3-8として出力され、第3番目の遅延加算器12b-3に入力される。同様に、第4番目のブロックBLK4として第81番目、第74番目~第80番目の振動素子によって受信された超音波信号がそれぞれ出力信号4-1~4-8として出力され、第4番目の遅延加算器12b-4に入力される。
【0051】
遅延加算器12b-1~12b-4では、図7(b)に示すように、信号処理部16からの遅延情報に応じて遅延処理が施される。第1番目のブロックBLK1の遅延加算器12b-1では、第57番目、第50番目~第56番目の振動素子によって受信された超音波信号がそれぞれ出力信号1-1~1-8として遅延処理が施された後、アナログ整相加算が行われる。具体的には、遅延情報が時間“t”ずつ遅延させるという情報である場合、第57番目の振動素子の出力信号1-1は遅延時間7tだけ遅延させ、第50番目の振動素子の出力信号1-2は遅延させず、第51番目の振動の出力信号1-3は遅延時間tだけ遅延させ、第52番目の振動の出力信号1-4は遅延時間2tだけ遅延させ、・・・第56番目の振動素子の出力信号1-8は遅延時間6tだけ遅延させる処理を施す。そして、遅延後の出力信号1-1~1-8をアナログ整相加算して出力信号SR1として出力する。すなわち、第50番目~第57番目の振動素子によって受信された超音波信号に対してそれぞれ時間tずつ順に遅延させて、整相加算するという処理が行われる。第2番目のブロックBLK2の遅延加算器12b-2では、第65番目、第58番目~第64番目の振動素子によって受信された超音波信号がそれぞれ出力信号2-1~2-8として遅延処理が施された後、アナログ整相加算が行われる。具体的には、遅延情報が時間“t”ずつ遅延させるという情報である場合、第65番目の振動素子の出力信号2-1は遅延時間7tだけ遅延させ、第58番目の振動の出力信号2-2は遅延させず、第59番目の振動の出力信号2-3は遅延時間tだけ遅延させ、・・・第64番目の振動素子の出力信号2-8は遅延時間6tだけ遅延させる処理を施す。そして、遅延後の出力信号2-1~2-8をアナログ整相加算して出力信号SR2として出力する。すなわち、第58番目~第65番目の振動素子によって受信された超音波信号に対してそれぞれ時間tずつ順に遅延させて、整相加算するという処理が行われる。第3番目のブロックBLK3の遅延加算器12b-3では、第73番目、第66番目~第72番目の振動素子によって受信された超音波信号がそれぞれ出力信号3-1~3-8として遅延処理が施された後、アナログ整相加算が行われる。具体的には、遅延情報が時間“t”ずつ遅延させるという情報である場合、第73番目の振動素子の出力信号3-1は遅延時間7fだけ遅延され、第66番目の振動の出力信号3-2は遅延させず、第67番目の振動の出力信号3-3は遅延時間tだけ遅延させ、・・・第72番目の振動素子の出力信号3-8は遅延時間6tだけ遅延させる処理を施す。そして、遅延後の出力信号3-1~3-8をアナログ整相加算して出力信号SR3として出力する。すなわち、第66番目~第73番目の振動素子によって受信された超音波信号に対してそれぞれ時間tずつ順に遅延させて、整相加算するという処理が行われる。第4番目のブロックBLK4の遅延加算器12b-4では、第81番目、第74番目~第80番目の振動素子によって受信された超音波信号がそれぞれ出力信号4-1~4-8として遅延処理が施された後、アナログ整相加算が行われる。具体的には、遅延情報が時間“t”ずつ遅延させるという情報である場合、第81番目の振動素子の出力信号4-1は遅延時間7tだけ遅延させ、第74番目の振動の出力信号4-2は遅延させず、第75番目の振動の出力信号4-3は遅延時間tだけ遅延させ、・・・第80番目の振動素子の出力信号4-8は遅延時間6tだけ遅延させる処理を施す。そして、遅延後の出力信号4-1~4-8をアナログ整相加算して出力信号SR4として出力する。すなわち、第74番目~第81番目の振動素子によって受信された超音波信号に対してそれぞれ時間tずつ順に遅延させて、整相加算するという処理が行われる。
【0052】
ここで、各ブロックBLK1~BLK4における最大の遅延量は図7(b)において「ブロック内遅延差」と示す値となる。例えば、遅延情報が時間“t”ずつ遅延させるという情報である場合、各ブロックBLK1~BLK4における最大の遅延量は7tに保たれる。
【0053】
次に、図4の網掛けした部分に示すように開口チャンネルとして第50番目~第81番目の振動素子が選択された状態から、第51番目~第82番目の振動素子が選択された状態にチャンネルローテーションが行われる。具体的には、図4に示した状態から、第2番目の選択器12a-2、第10番目の選択器12a-10、第18番目の選択器12a-18、第26番目の選択器12a-26に対する選択情報を“3”から“4”に変更することで第51番目~第82番目の振動素子が選択された状態とする。この状態で、各ブロックBLK1~BLK4の遅延加算器12b-1~12b-4で遅延整相加算処理が行われる。さらに、第3番目の選択器12a-3、第11番目の選択器12a-11、第19番目の選択器12a-19、第27番目の選択器12a-27に対する選択情報を“3”から“4”に変更することで第52番目~第83番目の振動素子が選択された状態とする。この状態で、各ブロックBLK1~BLK4の遅延加算器12b-1~12b-4で遅延整相加算処理が行われる。
【0054】
このように、開口チャンネルとして選択する振動素子を順に1つずらすチャンネルローテーションが行われる。図3に示した状態から、7回のチャンネルローテーションが行われると、図5の網掛けした部分に示すように、開口チャンネルとして第56番目~第87番目の振動素子が選択された状態となる。この状態で、図7(c)に示すように、各ブロックBLK1~BLK4の遅延加算器12b-1~12b-4で遅延整相加算処理が行われる。
【0055】
そして、図3に示した状態から8回目のチャンネルローテーションにおいて、図6に示すように、選択器12a-1~12a-8に対して選択信号“5”が入力され、選択器12a-9~12a-32に対して選択信号“3”が入力される。これによって、開口チャンネルとして第57番目~第88番目の振動素子が選択された状態となる。この状態で、図7(d)に示すように、各ブロックBLK1~BLK4の遅延加算器12b-1~12b-4で遅延整相加算処理が行われる。
【0056】
図3に示した第49番目~第80番目の振動素子が選択された状態から、図6に示した第57番目~第88番目の振動素子が選択された状態に至るまで、各ブロックBLK1~BLK4の遅延加算器12b-1~12b-4では連続して隣り合う8個の振動素子において受信された超音波信号に対して遅延処理が行われる。したがって、各ブロックBLK1~BLK4の遅延加算器12b-1~12b-4において最大の遅延量は一定に保つことができる。
【0057】
以下、同様に、開口チャンネルとして選択する振動素子を順に1つずらすチャンネルローテーションを行うことができる。すなわち、ブロックBLK1の選択器12a-1~12a-4については1つずつ順に選択信号“5”から“6”へ変更し、ブロックBLK2の選択器12a-9~12a-16、ブロックBLK3の選択器12a-17~12a-24、ブロックBLK4の遅延加算器12b-25~12b-32についてはそれぞれ1つずつ順に選択信号“3”から“4”へ変更し、その都度、各ブロックBLK1~BLK4の遅延加算器12b-1~12b-4で遅延整相加算処理が行われる。そして、図6に示した状態から8回目のチャンネルローテーションにおいて、選択器12a-1~12a-16に対して選択信号“5”が入力され、選択器12a-17~12a-32に対して選択信号“3”が入力される。これによって、開口チャンネルとして第65番目~第96番目の振動素子が選択された状態となる。この状態で、各ブロックBLK1~BLK4の遅延加算器12b-1~12b-4で遅延整相加算処理が行われる。
【0058】
また、ブロックBLK1の選択器12a-1~12a-8及びブロックBLK2の選択器12a-9~12a-16についてはそれぞれ1つずつ順に選択信号“5”から“6”へ変更し、ブロックBLK3の選択器12a-17~12a-24及びブロックBLK4の遅延加算器12b-25~12b-32についてはそれぞれ1つずつ順に選択信号“3”から“4”へ変更するチャンネルローテーションが行われる。その都度、各ブロックBLK1~BLK4の遅延加算器12b-1~12b-4で遅延整相加算処理が行われる。そして、8回目のチャンネルローテーションにおいて、選択器12a-1~12a-24に対して選択信号“5”が入力され、選択器12a-25~12a-32に対して選択信号“3”が入力される。これによって、開口チャンネルとして第73番目~第104番目の振動素子が選択された状態となる。この状態で、各ブロックBLK1~BLK4の遅延加算器12b-1~12b-4で遅延整相加算処理が行われる。
【0059】
さらに、ブロックBLK1の選択器12a-1~12a-8、ブロックBLK2の選択器12a-9~12a-16、ブロックBLK3の選択器12a-17~12a-24についてはそれぞれ1つずつ順に選択信号“5”から“6”へ変更し、ブロックBLK4の遅延加算器12b-25~12b-32についてはそれぞれ1つずつ順に選択信号“3”から“4”へ変更するチャンネルローテーションが行われる。その都度、各ブロックBLK1~BLK4の遅延加算器12b-1~12b-4で遅延整相加算処理が行われる。そして、8回目のチャンネルローテーションにおいて、選択器12a-1~12a-32に対して選択信号“5”が入力される。これによって、開口チャンネルとして第81番目~第112番目の振動素子が選択された状態となる。この状態で、各ブロックBLK1~BLK4の遅延加算器12b-1~12b-4で遅延整相加算処理を行う。
【0060】
以降も同様に、ブロックBLK1~BLK4の選択器12a-1~12a-32の選択信号を順に1ずつずらすようにチャンネルローテーションを行っていくことができる。すなわち、上記処理において選択信号“3”,“4”,“5”をそれぞれ“5”,“6”,“7”と読み替えて処理を行うことによって、開口チャンネルとして第81番目~第112番目の振動素子が選択された状態から第113番目~第128番目,第1番目~第16番目の振動素子が選択された状態となるように開口チャンネルのチャンネルローテーションを行うことができる。また、上記処理において選択信号“3”,“4”,“5”をそれぞれ“7”,“0”,“1”と読み替えて処理を行うことによって、開口チャンネルとして第113番目~第128番目,第1番目~第16番目の振動素子が選択された状態から第17番目~第48番目の振動素子が選択された状態となるように開口チャンネルのチャンネルローテーションを行うことができる。さらに、上記処理において選択信号“7”,“0”,“1”をそれぞれ“1”,“2”,“3”と読み替えて処理を行うことによって、開口チャンネルとして第17番目~第48番目の振動素子が選択された状態から第49番目~第80番目の振動素子が選択された状態となるように開口チャンネルのチャンネルローテーションを行うことができる。
【0061】
上記処理は、以下のように説明することもできる。ブロックBLK1~BLK4の各々には、開口を構成する振動素子が振動素子部10における並び順(第49番目~第80番目)に沿って割り当てられる。そして、ブロックBLK1~BLK2の全体において振動素子部10の並び順に沿って振動素子をシフトさせる処理を繰り返す。すなわち、ブロックBLK1~BLK2の全体において第49番目~第80番目の振動素子が並び順に沿って割り当てられている状態から、第50番目~第81番目の振動素子が並び順に沿って割り当てられている状態、第51番目~第82番目の振動素子が並び順に沿って割り当てられている状態・・・と振動素子部10の並び順に沿って振動素子をシフトさせる処理を繰り返してチャンネルローテーションを行う。そして、ブロックBLK1~BLK4の各々に割り当てられている振動素子の数だけチャンネルローテーションを行った後、最初のブロックBLK1を最後のブロックとしてブロックBLK2,BLK3,BLK4,BLK1の順となるようにブロックのローテーションを行い、このブロックBLK2,BLK3,BLK4,BLK1の各々に開口を構成する振動素子が振動素子部10における並び順(第58番目~第88番目)に沿って割り当てる。このように、ブロック全体に対する振動素子のチャンネルローテーションと、ブロック間のローテーションとを繰り返す。
【0062】
以上のチャンネルローテーションでは、いずれの状態においても各ブロックBLK1~BLK4の遅延加算器12b-1~12b-4では連続して隣り合って配置された8個の振動素子において受信された超音波信号に対して遅延処理が行われる。すなわち、ブロックBLK1~BLK4の各々に含まれる選択器12aではブロックBLK1~BLK4の各々において選択された振動素子における遅延差が変化しないように振動素子が選択される。したがって、各ブロックBLK1~BLK4の遅延加算器12b-1~12b-4において最大の遅延量は小さく、一定に保つことができる。各ブロック内における遅延量を小さく保つことによって、図11に示したようなアナログ遅延回路のコンデンサやスイッチの数を少なくすることができ、アナログ遅延回路の回路規模を小さくし、製造コストも抑えることができる。また、超音波プローブ102のサイズもコンパクトにすることができる。
【0063】
本実施の形態では、振動素子部10に含まれる128個の振動素子に対して、32個の選択器12a(12a-1~12a-32)と4個の遅延加算器12b(12b-1~12b-4)を設けた例を示している。ただし、振動素子部10に含まれる振動素子の数、選択器12aの数、遅延加算器12bの数はこれらに限定されるものではない。
【0064】
振動素子部10に含まれる振動素子の個数Xに対して、個数Yの選択器12aと個数Zの遅延加算器12b(ブロックの個数Z)によって送受信部12を構成する場合には以下の条件を満たすことが好適である。
【0065】
[条件1]
(振動素子部10に含まれる振動素子の個数X)≦(選択器12aの個数Y)×(遅延加算器12bの個数Z)
【0066】
[条件2]
(1つの選択器12aで選択可能な振動素子の数A)=2×(振動素子部10に含まれる振動素子の個数X)/(選択器12aの個数Y)
【0067】
[条件3]
第1番目の選択器12aにおいて選択可能な振動素子の番号は、基準の番号をM番とすると、M番、(M+Y-A)番、(M+Y)番、(M+2Y-A)番、(M+2Y)番、(M+3Y-A)番、(M+3Y)番・・・とする。すなわち、基準の番号を第1選択番号とし、第1選択番号に1つの選択器12aで選択可能な選択器12aの個数Yを足し振動素子の数Aを引いた番号を第2選択番号、第2選択番号に振動素子の数Aを足した番号を第3選択番号、第3選択番号に選択器12aの個数Yを足し振動素子の数Aを引いた番号を第4選択番号、第4選択番号に振動素子の数Aを足した番号を第5選択番号・・・と、前の選択番号に選択器12aの個数Yを足し1つの選択器12aで選択可能な振動素子の数Aを引く、又は、1つの選択器12aで選択可能な振動素子の数Aを足す、を交互に行った番号を次の選択番号とする。ただし、振動素子の番号は、振動素子部10に含まれる振動素子の個数Xに対してサイクリックにカウントするものとする。
【0068】
言い換えると、M番を基準として、選択器12aの個数Yの倍数を足した(M+Y)番、(M+2Y)番、(M+3Y)番・・・、これらに1つの選択器12aで選択可能な振動素子の数Aをそれぞれ引いた(M+Y-A)番、(M+2Y-A)番、(M+3Y-A)番・・・を第1番目の選択器12aにおいて選択可能な振動素子の番号とする。すなわち、基準番号のM番に選択器12aの個数Y×K(Kは、0以上の整数)を足した番号を第(1+2K)選択番号とすると共に、基準番号のM番に選択器12aの個数Y×(K+1)を足し1つの選択器12aで選択可能な振動素子の数Aを引いた番号を第(2+2K)番号とする。
【0069】
[条件4]
第N番目(Nは、1以上の整数)の選択器12aにおいて選択可能な振動素子の番号は、第1番目の選択器12aにおいて選択可能な振動素子の番号にそれぞれ(N-1)を加えた番号とする。例えば、第1番目の選択器12aにおいて選択可能な振動素子の番号がM番、(M+Y-A)番、(M+Y)番、(M+2Y-A)番、(M+2Y)番、(M+3Y-A)番、(M+3Y)・・・である場合、第2番目の選択器12aにおいて選択可能な振動素子の番号は(M+1)番、(M+Y-A+1)番、(M+Y+1)番、(M+2Y-A+1)番、(M+2Y+1)番、(M+3Y-A+1)番、(M+3Y+1)・・・とする。
【0070】
例えば、振動素子部10に含まれる振動素子が64個であり、選択器12aが16個及び遅延加算器12bが4個である場合、図8に示すように、送受信部12を構成することが好適である。また、例えば、振動素子部10に含まれる振動素子が32個であり、選択器12aが16個及び遅延加算器12bが4個である場合、図9に示すように、送受信部12を構成することが好適である。ただし、これらは一例であり、選択器12aの構成はこれらに限定されるものではない。
【0071】
上記条件を満たすように送受信部12を構成することによって、いずれの状態においても各ブロックBLKの遅延加算器12b-1~12b-Zの各々において連続して隣り合って配置された振動素子を処理の対象とすることができる。すなわち、ブロックBLK1~BLK4の各々に含まれる選択器12aではブロックBLK1~BLK4の各々において選択された振動素子の遅延差が変化しないように振動素子が選択される。したがって、各ブロックBLK1~BLK4の遅延加算器12b-1~12b-4において最大の遅延量は小さく、一定に保つことができる。各ブロック内における遅延量を小さく保つことによって、アナログ遅延回路におけるコンデンサ及び選択スイッチの組み合わせ数を低減させることができる。したがって、アナログ遅延回路の回路規模を小さくでき、消費電力も低減することができる。また、超音波プローブのサイズをコンパクトにすることができる。
【0072】
なお、本実施の形態では、振動素子部10において選択された振動素子によって超音波ビームを受信する際の開口チャンネルのチャンネルローテーションについて説明したが、振動素子部10において選択された振動素子によって超音波ビームを送信する際の開口チャンネルのチャンネルローテーションも同様に行うことができる。
【符号の説明】
【0073】
10 振動素子部、12 送受信部、12a 選択器、12b 遅延加算器、14 アナログ/デジタル変換回路、16 信号処理部、18 制御部、20 操作部、100 超音波診断装置、102 超音波プローブ、104 表示部。
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