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  • 特開-車両構造 図1
  • 特開-車両構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166943
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20221027BHJP
   B60N 3/00 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
B60H1/00 102T
B60H1/00 102Z
B60N3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072395
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】平野 聖門
(72)【発明者】
【氏名】山木 晨太郎
【テーマコード(参考)】
3B088
3L211
【Fターム(参考)】
3B088CA15
3L211BA02
3L211DA14
3L211DA16
(57)【要約】
【課題】冷風戻りによる冷風が乗員に向かうのを防止すると共に、ドアトリムを介して車外に逃げる熱量を低減することのできる車両構造の提供。
【解決手段】フロントシート2a、2bの下側に遮板7a、7bを設ける。前方から吹き出された温風5の一部を遮板7aで車両前方にUターンさせる。Uターンした温風6aは、温風5よりも車幅方向内側を流れ、その内側に冷風戻りによる冷風11が流れる。冷風11が内側へ寄るので、乗員8に当たらない。前方から吹き出された温風5の残部を遮板7bで車両前方にUターンさせる。Uターンした温風6bは、温風5よりも車幅方向外側を流れ、その外側に冷風戻りによる冷風12が流れる。冷風12とドアトリム13との温度差が小さく、車室内外の熱交換が抑えられる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席の前方に位置する吹出口から車両後方に向けて温風が吹き出される車両構造であって、前記座席の下側に、前記温風を車幅方向内側及び車幅方向外側の少なくとも一方に方向変換させて車両前方にUターンさせる遮板が設けられたことを特徴とする車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席の前方に位置する吹出口から車両後方に向けて温風が吹き出される車両構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の暖房システム(HVAC)101は、インストルメントパネル102の内部に装備され、そのパネル表面に設定された吹出口103からフロントシート104に座った乗員105の足下106に向けて温風107を吹き出すようにしている(図2参照)。
【0003】
ただ、図2(a)に示すように、前方から車両後方に向けて温風107を吹き出すことにより、その温風107の周囲に生じる負圧が温風107とは逆向きの流れを生じさせたり、車両後方で跳ね返った温風107が周囲の空気を同じ方向に誘導したりして、車両後方の冷気が前方に向かって流れるいわゆる冷風戻りという現象を生じさせることがある。
【0004】
このような冷風戻りによる冷風108が乗員105に当たる場合、温風107の風量を増加させて乗員105を温めようとしても、却って、冷風戻りが強められ、暖房フィーリングを悪化させると共に、乗員105の近くの室温低下を生じさせるおそれがある。
【0005】
また、図2(b)に示すように、吹出口103から乗員105の足下106に向けて吹き出した温風107がその上方に冷風戻りによる冷風108を生じさせることがある。この場合、別の位置に吹出口109を設定し、乗員105の足全体に満遍なく当たる温風110を吹き出すようにして、冷風戻りの影響を小さくすることも考えられるが、意匠面で吹出口109の位置が制約を受けるなど、車両の構造上、乗員105の足の上部まで温めることのできる温風110を吹き出すのが難しくなりやすい。
【0006】
これに対して、特許文献1は、後部座席111の下面に遮板112を取り付け、リヤヒータが吹き出す温風が後部座席111の下部を通り抜けるのを遮断すると共に、後部座席111の後方からの冷風が足下に吹き付けられるのを遮断する技術を開示している(図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭58-132714号公報(第5頁下から第2行目-第6頁第12行目)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1の遮板112は、車室内のほぼ全幅を遮断する長さに設定されて、長椅子状の後部座席111に取り付けられたものであり、温風を後部座席111の前方に留めておくことができる。
【0009】
しかしながら、図2(a)に示すように、例えば、フロントシート104として運転席と助手席とが並設されている場合、各シートに遮板を取り付けたとしても、冷風戻りによる冷風108のうち、シート下方を流れる冷風108を遮断することはできるものの、シート間の隙間を流れる冷風108を遮断することができない。
【0010】
また、乗員105の外側の足下106に向けて吹き出した温風107がドアトリム113に沿って流れることにより、外気で冷やされたドアトリム113に熱が逃げて、エネルギーロスを生じさせるおそれがある。この場合、温風107の風量を増加させて乗員105を温めようとすると、冷風戻りが強められて乗員105に向かう強い冷風108を生じさせるおそれがある。
【0011】
本発明は、冷風戻りによる冷風が乗員に向かうのを防止すると共に、ドアトリムを介して車外に逃げる熱量を低減することのできる車両構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両構造は、座席の前方に位置する吹出口から車両後方に向けて温風が吹き出されるものであり、その座席の下側に、温風を車幅方向内側及び車幅方向外側の少なくとも一方に方向変換させて車両前方にUターンさせる遮板を設けたものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のとおり、本発明によると、座席の下側に遮板を設けて、前方の吹出口から吹き出された温風を車幅方向内側及び車幅方向外側の少なくとも一方に方向変換させて車両前方にUターンさせるようにしている。
【0014】
車幅方向内側への方向転換によってUターンした温風は、前方から吹き出された温風よりも車幅方向内側に位置して前方に向かう流れとなり、この前方に向かう温風の車幅方向内側に沿うように、冷風戻りによる冷風を流すことができる。これにより、冷風戻りによって例えば運転席と助手席との間を前方に流れる冷風の位置を車幅方向内側へ寄せるように誘導して、冷風が乗員に当たらないようにすることができ、乗員が冷風を感じないようにすることができる。
【0015】
また、車幅方向外側への方向転換によってUターンした温風は、前方から吹き出された温風よりも車幅方向外側に位置して前方に向かう流れとなり、この前方に向かう温風の車幅方向外側に沿うように、冷風戻りによる冷風を流すことができる。これにより、例えば運転席や助手席とドアトリムとの間に冷風戻りによる冷風の流れを形成することができ、ドアトリムとこれに沿って流れる空気との温度差を小さくして熱交換を抑え、ドアトリムを介して車外に逃げる熱量を低減することができる。
【0016】
前方の吹出口から吹き出された温風は、車幅方向内側及び車幅方向外側のうちの一方に方向変換させることもできるが、一部を車幅方向内側に方向変換させると共に、残りを車幅方向外側に方向変換させて、車両前方にUターンさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る車両構造におけるシート配置と風の流れを示す図で、(a)は平面図、(b)は側面図
図2】従来の車両構造におけるシート配置と風の流れを示す図で、(a)は平面図、(b)は側面図
図3】従来の遮板を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る車両構造を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0019】
図1に示すように、本発明に係る車両構造1は、運転席及び助手席として並設されたフロントシート2a、2bの前方に暖房システム(HVAC)3が装備され、その延長ダクト4に設定された吹出口から車両後方に向けて温風5を吹き出すものであり、各フロントシート2a、2bの下側に、車両後方に向かう温風5をUターンさせて車両前方に向かう温風6a、6bとする二枚の遮板7a、7bを設けたものである。
【0020】
暖房システム(HVAC)3は、その吹出口をインストルメントパネルのパネル表面に設定され、フロントシート2a、2bに座った乗員8の足下9に向けて温風5を吹き出すようになっている。
【0021】
遮板7a、7bは、平面視及び側面視で前方が凹の湾曲板とされ、その後面を支持部材10で支持されて、各フロントシート2a、2bの下側に二枚の遮板7a、7bが車幅方向に並設されている。この遮板7a、7bは、暖房システム(HVAC)3から吹き出されて乗員8の足下9を暖めながら後方に通過する温風5がフロントシート2a、2bの下部を通り抜けるのを遮断すると共に、車両後部から前方に流れる冷風11、12が足下9に吹き付けられるのを阻止する。
【0022】
車両後部から前方に流れる冷風11、12は、いわゆる冷風戻りという現象によるものであり、車両前方に向かう温風6a、6bの周囲に生じる負圧が車両後方の冷気を前方に誘導することによって生じる。
【0023】
温風6aは、遮板7a、7bが平面視で前方が凹に湾曲していることにより、温風5のうちの車幅方向内側の遮板7aに当たった部分が車幅方向内側に方向変換してUターンしたものであり、温風6bは、温風6aと同様、温風5のうちの車幅方向外側の遮板7に当たった部分が車幅方向外側に方向変換してUターンしたものである。
【0024】
温風6aは、前方から吹き出された温風5よりも車幅方向内側に位置し、乗員8の足下9を暖めつつ、この温風6aの車幅方向内側に沿うように、冷風戻りによる冷風11を流し、冷風戻りによってフロントシート2a、2bの間を前方に流れる冷風11を車幅方向内側へ寄せるように誘導して、冷風11が乗員に当たらないようにする。
【0025】
温風6bは、前方から吹き出された温風5よりも車幅方向外側に位置し、乗員8の足下9を暖めつつ、この温風6bの車幅方向外側に沿うように、冷風戻りによる冷風12を流し、フロントシート2a、2bとドアトリム13との間に冷風戻りによる冷風12の流れを形成する。冷風12の流れを形成することにより、ドアトリム13とこれに沿って流れる空気との温度差が小さくなって熱交換が抑えられ、ドアトリム13を介して車外に逃げる熱量が低減される。
【0026】
温風6a、6bは、遮板7a、7bが側面視で前方が凹に湾曲していることにより、真上に逃げることなく前方にUターンし、乗員8の足下9の上部まで暖めつつ頭寒足熱を達成し、しかも、温風6a、6bに伴って足下9の臭いが上昇するのを防止する。
【0027】
上記構成によれば、各フロントシート2a、2bの下側に遮板7a、7bを設けて、車両後方に向かう温風5をUターンさせて車両前方に向かう温風6a、6bとするようにしている。これにより、冷風戻りによる冷風11、12を乗員8から離れた特に暖める必要のない位置に誘導して、乗員8の近くを温風6、6a、6bのたまり場とし、乗員8の周囲を効率よく暖めることができる。その結果、暖房のためのエネルギーのロスを大きく低減することができ、例えば、EV車の航続可能距離の増大と乗員の快適性の向上とを両立させることができる。
【0028】
また、上記の空気の流れは、外気モードを使用して窓曇りを解消しようとする場合、窓曇りに影響しない足下の空気が内気モードにおけるのと同様に循環する一方、窓曇りに影響するガラス近傍については、従来と同様、湿度の低い空気がガラスに沿って流れるものであり、大きなシステム変更を伴うことなく、暖房性能及び防曇性能の両立を達成することができる。
【0029】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、フロントシート2a、2bに遮板7a、7bを取り付けて、その前方から温風5を吹き出すだけでなく、リアシートに遮板7a、7bを取り付けて、その前方から温風5を吹き出すようにしてもよい。また、各シートの下側に二枚の遮板7a、7bを取り付けるだけでなく、一枚あるいは三枚以上の遮板を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 車両構造
2a、2b フロントシート
3 暖房システム(HVAC)
4 延長ダクト
5、6a、6b 温風
7a、7b 遮板
8 乗員
9 足下
10 支持部材
11、12 冷風
13 ドアトリム
図1
図2
図3