(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166965
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】AC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20221027BHJP
H02M 7/06 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072431
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秦野 裕之
【テーマコード(参考)】
5H006
5H730
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006CA07
5H006CB01
5H730AA18
5H730AS01
5H730BB23
5H730BB57
5H730CC04
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730EE59
5H730FD01
5H730FF19
5H730FG01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】1コンバータ方式で力率改善と出力安定化を両立することのできるAC/DCコンバータを提供する。
【解決手段】AC/DCコンバータ1は、一次巻線Lp及び二次巻線Lsを備えるトランスTXと、交流入力電圧Vinを全波整流または半波整流することにより脈流電圧VBを生成して一次巻線Lpに出力する整流器DBと、トランスTXをフライバック方式で駆動する第1スイッチS11と、トランスTXのキックバック電圧で充電されるキャパシタC10と、キャパシタC10の充電電圧VHを用いてトランスTXをフォワード方式で駆動する第2スイッチS12と、二次巻線Lsに現れる誘起電圧Vdを整流及び平滑して直流出力電圧Voutを生成する整流平滑部RSと、第1スイッチS11及び第2スイッチS12それぞれのオン/オフ制御を行うように構成されたコントローラ100を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻線及び二次巻線を備えるように構成されたトランスと、
交流入力電圧を全波整流または半波整流することにより脈流電圧を生成して前記一次巻線に出力するように構成された整流器と、
前記トランスをフライバック方式で駆動するように構成された第1スイッチと、
前記トランスのキックバック電圧で充電されるように構成されたキャパシタと、
前記キャパシタの充電電圧を利用して前記トランスをフォワード方式で駆動するように構成された第2スイッチと、
前記二次巻線に現れる誘起電圧を整流及び平滑して直流出力電圧を生成するように構成された整流平滑部と、
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチそれぞれのオン/オフ制御を行うように構成されたコントローラと、
を有する、AC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記第1スイッチは、前記一次巻線と基準電位端との間に直列接続されており、前記キャパシタと前記第2スイッチは、前記一次巻線の両端間に直列接続されている、請求項1に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記整流平滑部は、第1ダイオード及び第2ダイオードと、インダクタと、出力キャパシタと、を含み、
前記第1ダイオードのアノードは、前記二次巻線の第1端に接続されており、
前記第2ダイオードのアノードと前記出力キャパシタの第1端は、いずれも前記二次巻線の第2端に接続されており、
前記第1ダイオード及び前記第2ダイオードそれぞれのカソードは、いずれもインダクタの第1端に接続されており、
前記インダクタ及び前記出力キャパシタそれぞれの第2端は、いずれも前記直流出力電圧の出力端に接続されている、請求項1または2に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記一次巻線から基準電位端に向けて一次電流が流れる第1フェイズと、
前記一次巻線に蓄えられたエネルギが前記二次巻線から二次電流として放出されると共に前記一次巻線から前記キャパシタに向けて充放電電流が流れる第2フェイズと、
前記キャパシタから前記一次巻線に向けて前記充放電電流が流れると共に前記二次巻線から前記二次電流が放出される第3フェイズと、
前記基準電位端から前記一次巻線に向けて前記一次電流が回生すると共に前記整流平滑部のインダクタに蓄えられたエネルギが前記二次電流として放出される第4フェイズと、
を所定の周期で順次切り替えるように前記第1スイッチ及び前記第2スイッチそれぞれのオン/オフ制御を行う、請求項1~3のいずれか一項に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記コントローラは、前記脈流電圧に応じた入力監視信号、前記直流出力電圧に応じた第1出力帰還信号、前記第1出力帰還信号を鈍らせた第2出力帰還信号、及び、前記一次電流に応じた検出信号に基づいて、力率改善と出力安定化を両立するように前記第1スイッチ及び前記第2スイッチそれぞれのオン/オフ制御を行う、請求項4に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記入力監視信号、前記第2出力帰還信号及び前記検出信号に基づいて前記第1スイッチのオフタイミングを設定するための第1内部信号を生成するように構成された第1内部信号生成部と、
前記入力監視信号と前記第1出力帰還信号に基づいて前記第2スイッチのオン時間を設定するための第2内部信号を生成するように構成された第2内部信号生成部と、
少なくとも前記第1内部信号及び前記第2内部信号に基づいて前記第1スイッチ及び前記第2スイッチそれぞれの駆動信号を生成するように構成されたロジック部と、
を含む、請求項5に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項7】
前記第1内部信号生成部は、或る周期における前記一次電流の回生量が大きいほど次の周期における前記第1スイッチのオフタイミングを遅らせるように前記第1内部信号を生成する、請求項6に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項8】
前記第1内部信号生成部は、
前記入力監視信号と前記第2出力帰還信号を掛け合わせて乗算信号を生成するように構成された第1乗算器と、
前記検出信号の極性を反転させて反転検出信号を生成するように構成された第1極性反転器と、
前記検出信号の回生ピーク値をサンプル/ホールドして回生ピーク検出信号を生成するように構成されたサンプル/ホールド回路と、
前記乗算信号と前記回生ピーク検出信号とを足し合わせて加算信号を生成するように構成された加算器と、
前記反転検出信号と前記加算信号とを比較して前記第1内部信号を生成するように構成されたコンパレータと、
を含む、請求項7に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項9】
前記第2内部信号生成部は、
前記入力監視信号の極性を反転させて反転入力監視信号を生成するように構成された第2極性反転器と、
前記反転入力監視信号と前記第1出力帰還信号を掛け合わせて前記第2内部信号を生成するように構成された第2乗算器と、
を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項10】
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチは、ワイドバンドギャップ半導体を用いたパワーデバイスである、請求項1~9のいずれか一項に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項11】
前記一次巻線に直列接続されたインダクタをさらに有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のAC/DCコンバータ。
【請求項12】
前記トランスは、漏れインダクタンス成分を持つ漏洩トランスである、請求項1~11のいずれか一項に記載のAC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、AC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流入力電圧から直流出力電圧を生成するAC/DCコンバータは、ACアダプタ及び充電器などの様々なアプリケーションで利用されている(例えば、本願出願人による特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PFC[power factor correction]機能とDC/DC機能を単一のコンバータで実現する1コンバータ方式のAC/DCコンバータでは、力率改善と出力安定化(出力リップル低減及び負荷応答性向上)を両立することが困難であった。
【0005】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者により見出された上記課題に鑑み、1コンバータ方式で力率改善と出力安定化を両立することのできるAC/DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例えば、本明細書中に開示されているAC/DCコンバータは、一次巻線及び二次巻線を備えるように構成されたトランスと、交流入力電圧を全波整流または半波整流することにより脈流電圧を生成して前記一次巻線に出力するように構成された整流器と、前記トランスをフライバック方式で駆動するように構成された第1スイッチと、前記トランスのキックバック電圧で充電されるように構成されたキャパシタと、前記キャパシタの充電電圧を利用して前記トランスをフォワード方式で駆動するように構成された第2スイッチと、前記二次巻線に現れる誘起電圧を整流及び平滑して直流出力電圧を生成するように構成された整流平滑部と、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチそれぞれのオン/オフ制御を行うように構成されたコントローラと、を有する。
【0007】
なお、その他の特徴、要素、ステップ、利点、及び、特性については、以下に続く発明を実施するための形態及びこれに関する添付の図面によって、さらに明らかとなる。
【発明の効果】
【0008】
本明細書中に開示されている発明によれば、1コンバータ方式で力率改善と出力安定化を両立することのできるAC/DCコンバータを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、AC/DCコンバータの比較例を示す図である。
【
図2】
図2は、AC/DCコンバータの第1実施形態を示す図である。
【
図3】
図3は、AC/DCコンバータの一動作例(低入力時)を示す図である。
【
図4】
図4は、第1フェイズの電流経路を示す図である。
【
図5】
図5は、第2フェイズの電流経路を示す図である。
【
図6】
図6は、第3フェイズの電流経路を示す図である。
【
図7】
図7は、第4フェイズの電流経路を示す図である。
【
図8】
図8は、力率改善動作を説明するための図である。
【
図9】
図9は、出力安定化動作を説明するための図である。
【
図11】
図11は、サンプル/ホールド回路の一構成例を示す図である。
【
図12】
図12は、脈流電圧及び充電電圧の挙動を示す図である。
【
図13】
図13は、AC/DCコンバータの第2実施形態を示す図である。
【
図14】
図14は、AC/DCコンバータの第3実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<AC/DCコンバータ(比較例)>
図1は、AC/DCコンバータの比較例(=後出の実施形態と対比される2コンバータ方式の一般的な回路構成例)を示す図である。本比較例のAC/DCコンバータ1は、一次回路系1p(GND1系)と二次回路系1s(GND2系)との間を電気的に絶縁しつつ、交流入力電圧Vinから直流出力電圧Voutを生成する絶縁型スイッチング電源であり、整流器DBと、PFCコンバータ10と、DC/DCコンバータ20とを有する。
【0011】
整流器DBは、一次回路系1pに設けられており、交流電源ACから供給される交流入力電圧Vinを全波整流または半波整流して脈流電圧VBを生成する。整流器DBとしては、例えば、4つのダイオードD1~D4を組み合わせたダイオードブリッジを好適に用いることができる。
【0012】
本図に即してダイオードD1~D4の接続関係について述べる。ダイオードD1のアノードとダイオードD3のカソードは、整流器DBの第1入力端として、例えば、交流電源ACのライブノード(=非接地側ノード)に接続されている。ダイオードD2のアノードとダイオードD4のカソードは、整流器DBの第2入力端として、例えば、交流電源ACのニュートラルノード(=接地側ノード)に接続されている。ダイオードD1及びD2それぞれのカソードは、整流器DBの第1出力端として、いずれも脈流電圧VBの印加端に接続されている。ダイオードD3及びD4それぞれのアノードは、整流器DBの第2出力端として、いずれも一次回路系1pの接地端GND1に接続されている。なお、交流電源ACと整流器DBとの間には、各種保護素子(ヒューズなど)及び各種フィルタ(Xキャパシタ並びにコモンモードフィルタなど)を設けてもよい。
【0013】
PFCコンバータ10は、交流入力電圧Vinの位相と交流入力電流Iinの位相を合わせ込んで力率を1に近付けつつ、脈流電圧VBから所望の直流電圧VDCを生成する電力変換装置の一種であり、PFCコントローラCTRL1と、種々のディスクリート部品(スイッチS1、抵抗R1~R5、キャパシタC1並びにC2、ダイオードD5並びにD6、及び、インダクタL1)を含む。なお、PFCコンバータ10は、一次回路系1pに設けられている。
【0014】
キャパシタC1、抵抗R1及びインダクタL1それぞれの第1端は、いずれも脈流電圧VBの印加端に接続されている。抵抗R1の第2端と抵抗R2の第1端は、互いに接続されており、相互間の接続ノードから入力監視信号VBm(=脈流電圧VBの分圧電圧に相当)が引き出されている。キャパシタC1及び抵抗R2それぞれの第2端は、いずれも接地端GND1に接続されている。なお、キャパシタC1の容量値は小さいので、脈流電圧VBは、交流入力電圧Vinの正ピーク電位と接地電位(=接地端GND1の電位)との間を所定の周波数(例えば100Hz又は120Hz)で上下する全波整流波形となる。
【0015】
スイッチS1(本図ではNMOSFET[N-channel type metal oxide semiconductor field effect transistor])のドレインとダイオードD6のカソードは、いずれもインダクタL1の第2端とダイオードD5のアノードに接続されている。スイッチS1のソース、ダイオードD6のアノード及び抵抗R5の第1端は、互いに接続されており、それらの接続ノードから検出信号Vs1が引き出されている。抵抗R5の第2端は、接地端GND1に接続されている。スイッチS1のゲートには、ゲート駆動信号G1が入力されている。例えば、スイッチS1は、ゲート駆動信号G1がハイレベルであるときにオンして、ゲート駆動信号G1がローレベルであるときにオフする。
【0016】
ダイオードD5のカソードとキャパシタC2及び抵抗R3それぞれの第1端は、いずれも直流電圧VDCの印加端に接続されている。抵抗R3の第2端と抵抗R4の第1端は、互いに接続されており、相互間の接続ノードから出力監視信号VDCm(=直流電圧VDCの分圧電圧に相当)が引き出されている。キャパシタC2及び抵抗R4それぞれの第2端は、いずれも接地端GND1に接続されている。
【0017】
このように接続された種々のディスクリート部品のうち、特に、スイッチS1、インダクタL1、ダイオードD5及びキャパシタC2は、スイッチS1をオン/オフすることによりインダクタL1を駆動して脈流電圧VBから所望の直流電圧VDCを生成する昇圧型スイッチング出力段として機能する。
【0018】
PFCコントローラCTRL1は、電源電圧VCCの供給を受けて動作する半導体集積回路装置(いわゆる電源制御IC)であり、直流電圧VDCを目標値に合わせ込みながら力率を1に近付けるようにゲート駆動信号G1を生成する。本図に即して述べると、PFCコントローラCTRL1は、入力監視信号VBmと検出信号Vs1に応じた力率改善制御を行いつつ、出力監視信号VDCmに応じた出力帰還制御を行うことにより、スイッチS1のゲート駆動信号G1を生成する。
【0019】
上記構成から成るPFCコンバータ10の電力変換動作について簡単に説明する。スイッチS1がオンすると、脈流電圧VBの印加端からインダクタL1、スイッチS1及び抵抗R5を介して接地端GND1に向けた電流が流れるので、インダクタL1にエネルギが蓄えられる。このとき、スイッチS1のドレイン電圧は、スイッチS1を介して接地端GND1とほぼ同電位まで低下する。従って、ダイオードD5が逆バイアスとなるので、キャパシタC2からスイッチS1に向けて電流が逆流することはない。
【0020】
一方、スイッチS1がオフすると、インダクタL1に蓄積されていたエネルギが逆起電圧として放出される。このとき、ダイオードD5は順バイアスとなるので、ダイオードD5を介して流れる電流は、後段のDC/DCコンバータ20へ流れると共にキャパシタC2を介して接地端GND1にも流れ込み、キャパシタC2を充電する。
【0021】
上記のスイッチング動作が繰り返されることにより、PFCコンバータ10では、脈流電圧VBを昇圧した直流電圧VDCが生成される。なお、PFCコントローラCTRL1による力率改善制御及び出力帰還制御については、周知の技術を適用すれば足りるので、詳細な説明を省略する。
【0022】
DC/DCコンバータ20は、一次回路系1p(GND1系)と二次回路系1s(GND2系)との間を電気的に絶縁しつつ直流電圧VDCから所望の直流出力電圧Voutを生成する電力変換装置の一種であり、DC/DCコントローラCTRL2と、種々のディスクリート部品(スイッチS2、抵抗R6~R11、キャパシタC3~C5、ダイオードD7~D9、トランスTX、フォトカプラPC及びシャントレギュレータSR)を含む。なお、フォトカプラPCは、例えば、二次回路系1sに設けられた発光ダイオードLEDと、一次回路系1pに設けられたフォトトランジスタPTと、を組み合わせて成る。
【0023】
トランスTXは、一次回路系1pと二次回路系1sとの間を電気的に絶縁しつつ互いに磁気結合された一次巻線Lp(巻数Np)と二次巻線Ls(巻数Ns)を含む。また、本図では明示していないが、トランスTXは、PFCコントローラCTRL1及びDC/DCコントローラCTRL2それぞれの電源電圧VCCを生成するための手段として、一次回路系1pに設けられた補助巻線を含んでいてもよい。
【0024】
一次巻線Lpの第1端(巻始端)と抵抗R7及びキャパシタC3それぞれの第1端は、いずれも直流電圧VDCの印加端に接続されている。抵抗R7及びキャパシタC3それぞれの第2端は、いずれもダイオードD7のカソードに接続されている。ダイオードD7のアノードは、一次巻線Lpの第2端(巻終端)に接続されている。このように接続された抵抗R7、キャパシタC3及びダイオードD7は、アクティブクランパとして機能する。
【0025】
スイッチS2(本図ではNMOSFET)のドレインとダイオードD8のカソードは、いずれも一次巻線Lpの第2端とダイオードD7のアノードに接続されている。スイッチS2のソース、ダイオードD8のアノード及び抵抗R6の第1端は、互いに接続されており、相互間の接続ノードから検出信号Vs2が引き出されている。抵抗R6の第2端は、接地端GND1に接続されている。スイッチS2のゲートには、ゲート駆動信号G2が入力されている。例えば、スイッチS2は、ゲート駆動信号G2がハイレベルであるときにオンして、ゲート駆動信号G2がローレベルであるときにオフする。
【0026】
二次巻線Lsの第1端(巻始端)とキャパシタC4の第1端は、いずれも二次回路系1sの接地端GND2に接続されている。二次巻線Lsの第2端(巻終端)は、ダイオードD9のアノードに接続されている。ダイオードD9のカソードとキャパシタC4の第2端は、いずれも直流出力電圧Voutの印加端に接続されている。
【0027】
このように接続された種々のディスクリート部品のうち、特に、スイッチS2、トランスTX、ダイオードD9及びキャパシタC4は、直流電圧VDCから直流出力電圧Voutを生成するフライバック方式の絶縁型スイッチング出力段として機能する。また、その中でも、ダイオードD9及びキャパシタC4は、二次巻線Lsに現れる誘起電圧Vdを整流及び平滑して直流出力電圧Voutを生成する整流平滑部RSとして機能する。
【0028】
なお、トランスTXの巻数比n(=Np/Ns)は、直流電圧VDCから所望の直流出力電圧Voutが得られるように任意に調整すればよい。より具体的に述べると、巻数比nが大きいほど直流出力電圧Voutは低くなり、巻数比nが小さいほど直流出力電圧Voutは高くなる。
【0029】
フォトトランジスタPTのコレクタは、出力帰還信号FB(=後述する一次側帰還電流Ifb1)の印加端として、DC/DCコントローラCTRL2に接続されている。フォトトランジスタPTのエミッタは、一次回路系1pの接地端GND1に接続されている。発光ダイオードLEDのアノードと抵抗R8の第1端は、いずれも直流出力電圧Voutの印加端に接続されている。発光ダイオードLEDのカソードと抵抗R8の第2端は、いずれもシャントレギュレータSRのカソードに接続されている。
【0030】
シャントレギュレータSRのアノードは、接地端GND2に接続されている。シャントレギュレータSRの制御端REFは、直流出力電圧Voutの印加端と接地端GND2との間に直列接続された抵抗R9及びR10相互間の接続ノード、すなわち、分圧電圧Vdiv(={R10/(R9+R10)}×Vout)の印加端に接続されている。キャパシタC5と抵抗R11は、シャントレギュレータSRの制御端REFとカソードとの間に直列接続されている。
【0031】
シャントレギュレータSRは、制御端REFに印加される分圧電圧Vdivと所定の内部基準電圧Vrefとがイマジナリショートするように、発光ダイオードLEDに流れる二次側帰還電流Ifb2を制御する。
【0032】
具体的に述べると、Vdiv>Vrefであるときには、両者の差分値(=|Vdiv-Vref|)が大きいほど二次側帰還電流Ifb2が増大される。その結果、発光ダイオードLEDの発光が強くなるので、フォトトランジスタPTに流れる一次側帰還電流Ifb1が増大する。一方、Vdiv<Vrefであるときには、両者の差分値(=|Vdiv-Vref|)が大きいほど二次側帰還電流Ifb2が低減される。その結果、発光ダイオードLEDの発光が弱くなるので、フォトトランジスタPTに流れる一次側帰還電流Ifb1が減少する。
【0033】
このように、上記の回路要素群(抵抗R8~R10、キャパシタC5、シャントレギュレータSR及びフォトカプラPC)は、直流出力電圧Voutとその目標値(={(R9+R10)/R10}×Vref)との差分値に応じた一次側帰還電流Ifb1(延いては出力帰還信号FB)を生成する出力帰還信号生成部FBGNRとして機能する。
【0034】
DC/DCコントローラCTRL2は、電源電圧VCCの供給を受けて動作する半導体集積回路装置(いわゆる電源制御IC)であり、直流電圧VDCから所望の直流出力電圧Voutが得られるようにゲート駆動信号G2を生成する。本図に即して述べると、DC/DCコントローラCTRL2は、出力帰還信号FBに応じた出力帰還制御を行うことにより、スイッチS2のゲート駆動信号G2を生成する。
【0035】
上記構成から成るDC/DCコンバータ20の電力変換動作について簡単に説明する。スイッチS2がオンされているときには、直流電圧VDCの印加端から一次巻線Lp、スイッチS2及び抵抗R6を介して接地端GND1に向けた一次電流Iswが流れるので、一次巻線Lpにエネルギが蓄えられる。
【0036】
その後、スイッチS2がオフされると、一次巻線Lpと磁気結合された二次巻線Lsに誘起電圧Vdが発生する。このとき、ダイオードD9は順バイアスとなるので、ダイオードD9を介して流れる二次電流Iodは、直流出力電圧Voutの印加端へ流れると共にキャパシタC4を介して接地端GND2にも流れ込み、キャパシタC4を充電する。
【0037】
上記のスイッチング動作が繰り返されることにより、DC/DCコンバータ20では、一次回路系1pと二次回路系1sとの間を電気的に絶縁しつつ、直流電圧VDCから所望の直流出力電圧Voutが生成される。
【0038】
本比較例のAC/DCコンバータ1では、PFCコンバータ10とDC/DCコンバータ20を別個独立に設けた2コンバータ方式が採用されているので、力率改善と出力安定化(出力リップル低減及び負荷応答性向上)を比較的容易に両立することができる。
【0039】
ただし、2コンバータ方式を採用するためには、大型のインダクタL1(例えば100~数百μH)と、複数の電源制御IC(例えばPFCコントローラCTRL1とDC/DCコントローラCTRL2)が必要になる。そのため、AC/DCコンバータ1の大型化及びコストアップが問題となり得る。
【0040】
上記の問題を解消するための手段として、従来、PFC機能とDC/DC機能を単一のコンバータで実現する1コンバータ方式のAC/DCコンバータも種々提案されている。しかしながら、基本的に相反する2つの特性(力率改善と出力安定化)を同時に満足することは決して容易ではなく、仮にコンバータを一つに集約することができても、多くの追加構成要素(補助巻線または絶縁ゲートドライバなど)を別途必要とする場合があった。
【0041】
そこで、以下では、1コンバータ方式で力率改善と出力安定化を両立することのできる新規な実施形態を提案する。
【0042】
<AC/DCコンバータ(第1実施形態)>
図2は、AC/DCコンバータの第1実施形態を示す図である。本実施形態のAC/DCコンバータ1は、先出の比較例(
図1)と同じく、交流入力電圧Vinから直流出力電圧Voutを生成する絶縁型スイッチング電源であるが、2コンバータ方式ではなく1コンバータ方式を採用している点で先出の比較例(
図1)と大きく異なる。
【0043】
比較例(
図1)と対比して述べると、本実施形態のAC/DCコンバータ1では、先出のスイッチS1並びにS2、抵抗R3~R7、キャパシタC2並びにC3、ダイオードD5~D8、インダクタL1、PFCコントローラCTRL1、及び、DC/DCコントローラCTRL2がそれぞれ省略される一方、これらの構成要素に代えて、スイッチS11並びにS12、抵抗R12並びにR13、キャパシタC10~C14、ダイオードD10~D12、インダクタL2、及び、コントローラ100が新たに設けられている。
【0044】
そこで、既出の構成要素については、
図1と同一の符号を付すことで重複した説明を省略し、以下では、本実施形態の新規部分について重点的な説明を行う。
【0045】
AC/DCコンバータ1の一次回路系1pにおいて、一次巻線Lpの第1端(巻始端)とキャパシタC10の第1端は、いずれも脈流電圧VBの印加端に接続されている。このように、本実施形態のAC/DCコンバータ1では、比較例(
図1)のインダクタL1及びダイオードD5が省略されたことに伴い、整流器DBから一次巻線Lpに対して脈流電圧VBが直接的に出力されている。
【0046】
キャパシタC10の第2端は、スイッチS12(本図ではNMOSFET)のドレインとダイオードD12のカソードに接続されている。スイッチS12のソースとダイオードD12のアノードは、いずれも一次巻線Lpの第2端(巻終端)に接続されている。すなわち、キャパシタC10とスイッチS12は、一次巻線Lpの両端間に直列接続されている。スイッチS12のゲートには、ゲート駆動信号G12が入力されている。例えば、スイッチS12は、ゲート駆動信号G12がハイレベルであるときにオンして、ゲート駆動信号G12がローレベルであるときにオフする。ダイオードD12は、スイッチS12のボディダイオードであってもよい。
【0047】
スイッチS11(本図ではNMOSFET)のドレインとダイオードD11のカソードは、いずれも一次巻線Lpの第2端に接続されている。スイッチS11のソースとダイオードD11のアノードは、いずれも接地端GND1(=基準電位端に相当)に接続されている。すなわち、スイッチS11は、一次巻線Lpと接地端GND1との間に直列接続されている。スイッチS11のゲートには、ゲート駆動信号G11が入力されている。例えば、スイッチS11は、ゲート駆動信号G11がハイレベルであるときにオンして、ゲート駆動信号G11がローレベルであるときにオフする。ダイオードD11は、スイッチS11のボディダイオードであってもよい。
【0048】
スイッチS11のドレイン・ソース間(=一次巻線Lpの第2端と接地端GND1との間)には、キャパシタC11及びC12が直列接続されており、相互間の接続ノードから第1検出信号Vs(=スイッチ電圧Vswの分圧電圧に相当)が引き出されている。なお、本図では、スイッチ電圧Vswの分圧手段としてキャパシタC11及びC12を用いたが、スイッチ電圧Vswは抵抗で分圧してもよい。また、スイッチ電圧Vswを別方式で検出する場合(例えばトランスTXの補助巻き線を用いる場合)には、キャパシタC11及びC12を省略することも可能である。
【0049】
なお、詳細は後述するが、スイッチS11は、トランスTXをフライバック方式で駆動するように構成された第1スイッチに相当する。また、スイッチS12は、キャパシタC10の充電電圧VHを利用してトランスTXをフォワード方式で駆動するように構成された第2スイッチに相当する。なお、キャパシタC10は、トランスTXをフライバック方式で駆動したときに一次巻線Lpに生じるキックバック電圧VORを用いて充電される。
【0050】
整流器DBの第2出力端(=ダイオードD3及びD4それぞれのアノード)と接地端GND1との間には、抵抗R13が接続されており、両者の接続ノードから第2検出信号Isが引き出されている。なお、整流器DBの第1出力端(=ダイオードD1及びD2それぞれのカソード)から一次巻線Lp、スイッチS11及び抵抗R13を介して整流器DBの第2出力端に向かう方向に一次電流Iswが流れているときには、第2検出信号Isが負極性(<GND1)となる。一方、上記とは逆の方向に一次電流Iswが回生しているときには、第2検出信号Isが正極性(>GND1)となる。
【0051】
また、AC/DCコンバータ1の一次回路系1pにおいて、フォトトランジスタPTのコレクタは、抵抗R12及びキャパシタC14それぞれの第1端に接続されている。抵抗R12の第2端とキャパシタC13の第1端は、互いに接続されており、相互間の接続ノードから平滑出力帰還信号SSが引き出されている。キャパシタC13及びC14それぞれの第2端は、いずれも接地端GND1に接続されている。
【0052】
このように、本実施形態のAC/DCコンバータ1では、直流出力電圧Voutに応じた出力帰還信号FB(=時定数の小さい第1出力帰還信号に相当)のほかに、出力帰還信号FBを鈍らせた平滑出力帰還信号SS(=時定数の大きい第2出力帰還信号に相当)が生成されており、2重時定数の出力帰還ループが形成されている。言い換えると、1系統の一次側帰還電流Ifb1から時定数の異なる2系統の出力帰還信号FB及び平滑出力帰還信号SSが生成されており、コントローラ100では、両信号を用いて出力帰還制御が行われる。
【0053】
なお、詳細は後述するが、時定数が比較的小さい出力帰還信号FBは、主として出力安定化(出力リップル低減及び負荷応答性向上)を目的としたスイッチS12のオン/オフ制御に用いられる。これに対して、時定数が比較的大きい平滑出力帰還信号SSは、主として力率改善を目的としたスイッチS11のオン/オフ制御に用いられる。
【0054】
一方、AC/DCコンバータ1の二次回路系1sにおいて、二次巻線Lsの第1端(巻始端)とキャパシタC4及びダイオードD10それぞれの第1端は、いずれも二次回路系1sの接地端GND2に接続されている。二次巻線Lsの第2端(巻終端)は、ダイオードD9のアノードに接続されている。ダイオードD9及びD10それぞれのカソードは、いずれもインダクタL2の第1端に接続されている。インダクタL2及びキャパシタC4それぞれの第2端は、いずれも直流出力電圧Voutの印加端に接続されている。
【0055】
このように、本実施形態のAC/DCコンバータ1では、二次回路系1sに設けられた整流平滑部RSの構成要素として、先出のダイオードD9及びキャパシタC4のほか、フォワード方式の絶縁型スイッチング出力段に倣い、ダイオードD10(=フライホイールダイオードに相当)とインダクタL2(=チョークコイルに相当)が追加されている。
【0056】
なお、二次回路系1sに追加されたインダクタL2は、比較例(
図1)のインダクタL1と比べて非常に小さいインダクタンス(例えば数μH)で足りるので、その素子サイズも遥かに小型で済む。
【0057】
コントローラ100は、先出のPFCコントローラCTRL1及びDC/DCコントローラCTRL2と同様、電源電圧VCCの供給を受けて動作する半導体集積回路装置(いわゆる電源制御IC)である。本図に即して述べると、コントローラ100は、脈流電圧VBに応じた入力監視信号VBm、直流出力電圧Voutに応じた出力帰還信号FB並びに平滑出力帰還信号SS、及び、一次電流Iswに応じた第1検出信号Vs並びに第2検出信号Isに基づいてゲート駆動信号G11及びG12を生成することにより、力率改善と出力安定化を両立するようにスイッチS11及びS12それぞれのオン/オフ制御を行う。また、コントローラ100は、一次巻線Lpの第2端(=スイッチS11のドレイン)から引き出されるスイッチ電圧Vswを用いて、AC/DCコンバータ1の起動時に電源電圧VCCを立ち上げるための起動回路を備えている。
【0058】
図3は、AC/DCコンバータ1による電力変換動作の一例(交流入力電圧Vinの絶対値が比較的低い状態)を示す図であり、上から順に、ゲート駆動信号G11並びにG12、一次電流Isw(実線)並びにキャパシタC10の充放電電流Ic(破線)、及び、二次電流Iodが描写されている。
【0059】
なお、一次電流Iswの極性については、一次巻線LpからスイッチS11を介して接地端GND1に向かう方向を正とし、接地端GND1からスイッチS11またはダイオードD11を介して一次巻線Lpに向かう方向を負とする。一方、充放電電流Icの極性については、キャパシタC10からスイッチS12を介して一次巻線Lpに向かう方向を正とし、一次巻線LpからスイッチS12またはダイオードD12を介してキャパシタC10に向かう方向を負とする。
【0060】
また、
図4~
図7は、それぞれ、
図3における第1フェイズ(=時刻t1~t2)、第2フェイズ(=時刻t2~t3)、第3フェイズ(=時刻t3~t4)及び第4フェイズ(=時刻t4~t5)の電流経路を示す図である。
【0061】
まず、
図3(特に時刻t1~t2)及び
図4を参照しながら、AC/DCコンバータ1の第1フェイズについて説明する。第1フェイズでは、スイッチS11がオンしてスイッチS12がオフしている(G11=H、G12=L)。このとき、整流器DBの第1出力端(=脈流電圧VBの印加端)から一次巻線Lp及びスイッチS11を介して接地端GND1に向かう方向に正極性の一次電流Iswが流れる。その結果、一次巻線Lpにエネルギが蓄えられる。なお、第1フェイズでは、ダイオードD9が逆バイアスとなるので、二次電流Iodは流れない。
【0062】
次に、
図3(特に時刻t2~t3)及び
図5を参照しながら、AC/DCコンバータ1の第2フェイズについて説明する。第2フェイズでは、スイッチS11がオフされて、一次電流Iswが遮断される(G11=H→L)。このとき、一次巻線Lpと磁気結合された二次巻線Lsに誘起電圧Vdが発生して、ダイオードD9が順バイアスとなる。その結果、ダイオードD9及びインダクタL2を介する二次電流Iodは、直流出力電圧Voutの印加端へ流れると共にキャパシタC4を介して接地端GND2にも流れ込み、キャパシタC4を充電する。このように、第2フェイズでは、フライバック方式により一次回路系1pから二次回路系1sに電力が伝達される。
【0063】
また、第2フェイズでは、スイッチS11のオフに伴い、一次巻線Lpにキックバック電圧VOR(=n×(Vout+VL+Vf)、ただしVL及びVfはそれぞれインダクタL2の両端間電圧及びダイオードD9の順方向降下電圧)が生じる。従って、一次巻線Lpの第2端に現れるスイッチ電圧Vswは、脈流電圧VBにキックバック電圧VORを足し合わせた電圧値VB+VORまで急峻に跳ね上がる。
【0064】
なお、スイッチS11のオフ直後には、スイッチS12が未だオフしているが、スイッチ電圧Vswの上昇に伴い、ダイオードD12が順バイアスとなる。従って、一次巻線LpからダイオードD12を介してキャパシタC10に向かう方向に負極性の充放電電流Ic(=充電電流に相当)が流れるので、キャパシタC10が充電される。
【0065】
その後、スイッチS11がオフしてから所定のデッドタイム(数十ns~数百ns)が経過すると、
図5で示したように、スイッチS12がオンする(G12=L→H)。その結果、ダイオードD12を介して流れていた充放電電流IcがスイッチS12を介して流れるようになるので、ダイオードD12での電力損失が抑制される。これら一連の充電動作により、キャパシタC10の第2端に現れる充電電圧VHは、スイッチ電圧Vswとほぼ同電位(VB+VOR)まで上昇する。すなわち、キャパシタC10の両端間電圧(=VH-VB)は、ほぼキックバック電圧VORまで上昇する。
【0066】
このように、第2フェイズでは、一次巻線Lpに蓄えられたエネルギが二次巻線Lsから二次電流Iodとして放出されると共に、一次巻線LpからキャパシタC10に向けて負極性の充放電電流Ic(=充電電流に相当)が流れる。すなわち、フライバック方式のキックバック電圧VORを利用してキャパシタC10の充電が行われる。
【0067】
次に、
図3(特に時刻t3~t4)及び
図6を参照しながら、AC/DCコンバータ1の第3フェイズについて説明する。第3フェイズでは、スイッチS11がオフしてスイッチS12がオンしている(G11=L、G12=H)。このとき、キックバック電圧VORにより充電されたキャパシタC10が電源のように振る舞い、キャパシタC10からスイッチS12を介して一次巻線Lpに向かう方向に正極性の充放電電流Ic(=放電電流に相当)が流れ始める。その結果、ダイオードD9が順バイアスとなるので、インダクタL2を介して二次電流Iodが流れる。
【0068】
このように、第3フェイズでは、キャパシタC10から一次巻線Lpに向けて正極性の充放電電流Ic(=放電電流に相当)が流れると共に、二次巻線Lsから二次電流Iodが放出される。すなわち、第3フェイズでは、スイッチS11のオフに伴うフライバック動作(=フライバック方式での電力伝達)に加えて、スイッチS12のオンに伴うフォワード動作(=フォワード方式での電力伝達)が併用された状態となる。その結果、フライバック方式の単独使用時(=スイッチS12の常時オフ時)と比べて出力安定化を図ることが可能となる(詳細は後述)。
【0069】
なお、脈流電圧VBが周期的に接地電位近傍まで低下しているときには、第2フェイズでキャパシタC10を充電することができない場合もあり得る。そのような場合であっても第3フェイズのフォワード動作に破綻(=キャパシタC10に蓄えられた電荷の枯渇)を来さないためには、フライバック方式の単独使用時と比べてスイッチS11のオン期間(=或る周期の第4フェイズ開始タイミングから次の周期の第1フェイズ終了タイミングまで)を長めに設定し、一次巻線Lpに余剰な一次電流Iswを流しておくことが望ましい。このようなオン期間の設定によれば、脈流電圧VBが比較的高いときに第2フェイズでキャパシタC10に十分な量(=一周期では放電し切らない量)の電荷を備蓄しておくことができるので、脈流電圧VBの低下時でもフォワード動作に破綻を来しにくくなる。
【0070】
次に、
図3(特に時刻t4~t5)及び
図7を参照しながら、AC/DCコンバータ1の第4フェイズについて説明する。第4フェイズでは、スイッチS12がオフされて、充放電電流Icが遮断される(G12=L→H)。このとき、一次巻線Lpは、第3フェイズと同じ向きに一次電流Iswを流し続けようとする。
【0071】
なお、スイッチS12のオフ直後には、スイッチS11が未だオフしているが、スイッチ電圧Vswの低下に伴い、ダイオードD11が順バイアスとなる。従って、接地端GND1からダイオードD11を介して一次巻線Lpに向かう方向に負極性の一次電流Iswが回生する。
【0072】
その後、
図7で示したように、電流臨界モード(または電流連続モード)によりスイッチS11がオンする(G11=L→H)。その結果、ダイオードD11を介して流れていた一次電流IswがスイッチS11を介して流れるようになるので、ダイオードD11での電力損失が抑制される。これら一連の回生動作により、キャパシタC1には一次電流Iswの回生量に相当する電荷が蓄えられる。すなわち、或る周期のフォワード動作で流れた電流(電荷)の一部を回生して次の周期のフライバック動作に利用することができる。
【0073】
また、一次回路系1pで一次電流Iswが回生している間、二次回路系1sでは、インダクタL2に蓄えられたエネルギの放出により二次電流Iodが流れ続ける。
【0074】
このように、第4フェイズでは、接地端GND1から一次巻線Lpに向けて一次電流Iswが回生すると共に、インダクタL2に蓄えられたエネルギが二次電流Iodとして放出される。従って、AC/DCコンバータ1の変換効率を高めることが可能となる。
【0075】
さらに、第4フェイズは、フォワード方式で必要となるトランスTXのリセット動作も兼ねている。フォワード方式では、トランスTXを一方向にのみ励磁するので、スイッチS12のオフ期間において、一次巻線Lpに蓄えられたエネルギを速やかに放出しなければ、行き場を無くした電荷によりスイッチ電圧Vswが大きく跳ね上がってしまう。そのため、フォワード方式のコンバータには、一般にスナバ回路(リセット回路)またはアクティブクランパが設けられている。
【0076】
一方、本実施形態のAC/DCコンバータ1では、スイッチS12がオフされた後、スイッチS11又はダイオードD11を介して一次電流Iswが回生する。このとき、スイッチ電圧Vswは、接地電位(=接地端GND1の電位)を基準としてクランプされる。従って、スナバ回路またはアクティブクランパが不要となる。
【0077】
なお、スイッチS11は、時刻t5において、一次巻線Lpに蓄えられたエネルギが尽きて一次電流Iswが負極性から正極性に転じた後もオン状態に維持される。すなわち、AC/DCコンバータ1は、第4フェイズから先出の第1フェイズに戻る。
【0078】
コントローラ100は、
図3で示したように、上記の第1フェイズ~第4フェイズを所定の周期で順次切り替えるように、スイッチSW11及びSW12それぞれのオン/オフ制御を行う。その結果、AC/DCコンバータ1では、1コンバータ方式でPFC機能とDC/DC機能を実現することが可能となる。
【0079】
以下では、本実施形態の特長をまとめて述べる。第1の特長として、本実施形態のAC/DCコンバータ1は、サブ電源を要することなくトランスTXの逆起電力(=フライバック動作時のキックバック電圧VOR)を利用してフライバック方式とフォワード方式を併用した電力伝達を行うことが可能である。このような動作によれば、PFC機能とDC/DC機能の双方を単一のコンバータで実現することができる。従って、2コンバータ方式で必須となるPFC用のインダクタ(
図1のインダクタL1)が不要となる。
【0080】
特に、PFC用のインダクタには、電力変換用のトランスTXと電力的に同等のスペックが要求されるので、トランスTXとほぼ同じサイズ(体積)が必要となる。そのため、PFC用のインダクタを省略することにより、AC/DCコンバータ1を大幅に小型化することが可能となる。
【0081】
第2の特長として、本実施形態のAC/DCコンバータ1は、スイッチS11を主にPFC用とし、スイッチS12を主に出力安定化用として、それぞれを使い分けることにより、力率改善と出力安定化という相反する2つの特性を単一のコンバータで両立する。
【0082】
なお、本実施形態のAC/DCコンバータ1では、スイッチS11のオン/オフによりフライバック動作とこれに伴うキャパシタC10の充電が行われて、スイッチS12のオン/オフによりキャパシタC10の放電とこれに伴うフォワード動作が行われる。
【0083】
一般に、1コンバータ方式では、PFC機能を実現するために出力帰還信号の時定数を下げることが多く、これが出力安定化の阻害要因となっている。これに対して、本実施形態のAC/DCコンバータ1では、力率改善を主目的としたスイッチS11のオン/オフ制御に時定数が比較的大きい平滑出力帰還信号SSが用いられており、出力安定化を主目的としたスイッチS12のオン/オフ制御に時定数が比較的小さい出力帰還信号FBが用いられている。このように、2重時定数の出力帰還ループを形成することにより、力率改善と出力安定化の両立が可能となる(詳細は後述)。
【0084】
第3の特長として、本実施形態のAC/DCコンバータ1は、或る周期のフォワード動作で流れた電流(電荷)の一部を回生して、入力側のキャパシタC1に蓄えることができる。従って、交流入力電圧Vinの絶対値が低下したときには、或る周期のフライバック動作で回生された電流(電荷)を次の周期のフライバック動作に利用することができるので、AC/DCコンバータ1の高効率化に寄与し得る。
【0085】
次に、本実施形態の補足的な説明を行う。本実施形態のAC/DCコンバータ1において、一次回路系1pのトポロジは、先出の
図2を一見すると、フライバック方式の絶縁型スイッチング出力段にアクティブクランパを加えた回路構成(=
図1におけるDC/DCコンバータ20の一次側に相当)と同様であるかのように見える。
【0086】
しかしながら、本実施形態のAC/DCコンバータ1では、二次回路系1sのトポロジとして、フォワード方式と同様の整流平滑部RSが組み合わされており、AC/DCコンバータ1全体の動作としては、先にも説明したように、単なるフライバック方式のコンバータと全く異なっている。
【0087】
また、このような動作の違いにより、AC/DCコンバータ1を形成する回路素子の物性値も大きく異なる。例えば、比較例(
図1)のアクティブクランパでは、トランスTXの漏洩分に相当する電荷を一周期毎にクランプすることができれば足りるので、キャパシタC3としては、非常に小容量(例えば1nF)で足りる。
【0088】
一方、本実施形態のAC/DCコンバータ1では、先にも述べたように、フライバック動作と併用されるフォワード動作が脈流電圧VBの低下時に破綻してしまわないように、キャパシタC10に十分な電荷を蓄えておく必要がある。そのため、キャパシタC10としては、キャパシタC3と比べて遥かに大きい容量値(キャパシタC3の103~105倍、例えば1~100μF)が必要となる。
【0089】
なお、キャパシタC10の充電電圧VH(≒VB+VOR)は、一般に数百Vを超える高電圧(例えば700V)となる。そのため、スイッチS11及びS12としては、上記の高電圧に耐えることのできる高耐圧素子(例えば800V耐圧)が必要となる。また、二次回路系1sに設けられるインダクタL2を小型化するためには、スイッチS11及びS12それぞれのスイッチング周波数を高める方が有利である(例えば数十kHz~数百kHz)。これらを鑑みると、スイッチSW11及びSW12としては、高耐圧で高周波数駆動が可能なデバイス、例えば、ワイドバンドギャップ半導体を用いたパワーデバイス(GaNデバイスまたはSiCデバイスなど)を用いることが望ましい。
【0090】
図8は、本実施形態のAC/DCコンバータ1による力率改善動作を説明するための図であり、交流入力電圧Vin(実線)と交流入力電流Iin(破線)が描写されている。本図で示すように、本実施形態のAC/DCコンバータ1では、交流入力電圧Vinと交流入力電流Iinがほぼ相似波形となっており、PFC制御が適切に実施されていることが分かる。このようなPFC制御によれば、例えば、交流入力電流Iinの第3次高調波成分(例えば、商用交流周波数が50Hzの場合には150Hz)を規格の範囲内に抑えることが可能となる。
【0091】
図9は、本実施形態のAC/DCコンバータ1による出力安定化動作(特に出力リップル低減動作)を説明するための図である。なお、図中の実線は、フライバック方式及びフォワード方式の併用時における直流出力電圧Voutの挙動を示している。一方、図中の破線は、フライバック方式の単独使用時における直流出力電圧Voutの挙動(=スイッチS12を常にオフさせた場合の挙動)を対比のために示している。
【0092】
AC/DCコンバータ1の力率を1に近付けるためには、交流入力電圧Vinと交流入力電流Iin(延いては一次電流Isw)が相似波形となるようにPFC制御を行う必要がある。そのため、フライバック方式の単独使用時には、交流入力電圧Vin(延いては脈流電圧VB)の低下時に直流出力電圧Voutも低下するので、出力リップル(=直流出力電圧Voutの周期的な変動)が生じてしまう。
【0093】
一方、本実施形態のAC/DCコンバータ1であれば、フライバック方式及びフォワード方式を併用することにより、交流入力電圧Vinの低下時における直流出力電圧Voutの低下分をキャパシタC10の放電により補填することができる(図中のハッチング領域を参照)。従って、負荷が一定であるときには、直流出力電圧Voutをフラット化して出力リップルを低減することが可能となる(例えば目標値±5%以内)。
【0094】
また、本実施形態のAC/DCコンバータ1であれば、交流入力電圧Vinの低下時だけでなく、負荷の変動時にも直流出力電圧Voutを高速に応答させることができる。従って、力率改善と出力安定化という相反する2つの特性を単一のコンバータで両立することが可能となる。
【0095】
<コントローラ>
図10は、コントローラ100の要部構成を示す図である。本構成例のコントローラ100は、第1内部信号生成部110と、第2内部信号生成部120と、ロジック部130と、を含む。なお、コントローラ100には、上記回路ブロックのほかにも異常保護回路などを適宜組み込むことが可能である。
【0096】
第1内部信号生成部110は、入力監視信号VBm、平滑出力帰還信号SS及び第2検出信号Isに基づいてスイッチSW11のオフタイミングを設定するための第1内部信号S110を生成する回路ブロックであり、乗算器111と、加算器112と、極性反転器113と、コンパレータ114と、サンプル/ホールド回路115と、を含む。
【0097】
乗算器111は、入力監視信号VBmと平滑出力帰還信号SSを掛け合わせて乗算信号S111(=VBm×SS)を生成する。なお、平滑出力帰還信号SSは、出力帰還信号FBを時定数τ(=R12×C13)で鈍らせた信号であり、負荷が一定であればほぼDC信号となる。従って、乗算信号S111は、入力監視信号VBmと相似する全波整流波形となる。また、乗算信号S111の波高値(ピーク値)は、平滑出力帰還信号SSに応じた可変値となる。具体的に述べると、乗算信号S111の波高値は、平滑出力帰還信号SSが高いほど高くなり、逆に、平滑出力帰還信号SSが低いほど低くなる。
【0098】
加算器112は、乗算器111から出力される乗算信号S111と、サンプル/ホールド回路115から出力される回生ピーク検出信号S115とを足し合わせて加算信号S112(=S111+S115)を生成する。なお、加算信号S112は、乗算信号S111と同じく、入力監視信号VBmと相似する全波整流波形となる。
【0099】
極性反転器113は、第2検出信号Is(=Isw×R13)の極性を反転させて反転検出信号S113を生成する。先にも述べた通り、スイッチS11のオン期間において、一次巻線LpからスイッチS11を介して接地端GND1に向かう方向に正極性の一次電流Iswが流れているときには、第2検出信号Isが負極性(<GND1)となる。そのため、第2検出信号Isをそのままコンパレータ114に入力することはできないので、極性反転器113による極性反転処理が必要となる。なお、反転検出信号S113は、一次電流Iswの増大に伴って上昇する。
【0100】
コンパレータ114は、極性反転器113から非反転入力端(+)に入力される反転検出信号S113と、加算器112から反転入力端(-)に入力される加算信号S112を比較して比較信号S114を生成する。従って、比較信号S114は、S113>S112であるときにハイレベルとなり、S113<S112であるときにローレベルとなる。つまり、スイッチS11のオン期間に流れる一次電流Iswが増大して反転検出信号S113が加算信号S112よりも高くなると比較信号S114がハイレベルに立ち上がる。
【0101】
なお、比較信号S114は、第1内部信号S110(=スイッチS11のオフタイミング設定信号)としてロジック部130に出力されている。ロジック部130は、第1内部信号S110がハイレベルに立ち上がったときにスイッチS11をオフして一次電流Iswを遮断する。これを鑑みると、加算信号S112は、一次電流Iswの正ピーク値(最大値)を設定するための閾値信号として理解することができる。
【0102】
また、加算信号S112は、先にも述べたように入力監視信号VBmと相似するので、一次電流Iswの正ピーク値も入力監視信号VBmに追従して変化していく。従って、第1内部信号S110に応じてスイッチS11のオフタイミングを設定してやれば、交流入力電圧Vinと交流入力電流Iinを相似波形に近付ける、すなわち、PFC制御を実現することが可能となる。
【0103】
サンプル/ホールド回路115は、第2検出信号Isの回生ピーク値(=負ピーク値)をサンプル/ホールドして回生ピーク検出信号S115を生成する。なお、接地端GND1からスイッチS11またはダイオードD11を介して一次巻線Lpに向かう方向に負極性の一次電流Iswが回生しているときには、第2検出信号Isが正極性(>GND1)となる。従って、サンプル/ホールド回路115には、第2検出信号Isを直接的に入力することができる。
【0104】
図11は、サンプル/ホールド回路115の一構成例を示す図である。本構成例のサンプル/ホールド回路115は、バッファ115aと、ダイオード115bと、キャパシタ115cと、抵抗115dと、を含む。
【0105】
バッファ115aの非反転入力端(+)は、第2検出信号Isの印加端に接続されている。バッファ115aの反転入力端(-)及び出力端は、いずれもダイオード115bのアノードに接続されている。ダイオード115bのカソード、及び、キャパシタ115c並びに抵抗115dそれぞれの第1端は、いずれも回生ピーク検出信号S115の印加端に接続されている。キャパシタ115c及び抵抗115dそれぞれの第2端は、いずれも接地端GND1に接続されている。
【0106】
本構成例のサンプル/ホールド回路115において、ダイオード115bは、第2検出信号Isが正極性であるとき(すなわち一次電流Iswが回生しているとき)に順バイアスとなり、第2検出信号Isが負極性であるとき(すなわち一次電流Iswが回生していないとき)に逆バイアスとなる。従って、複雑なサンプリング制御を要することなく第2検出信号Isの回生ピーク値をサンプル/ホールドすることが可能となる。
【0107】
次に、加算器112及びサンプル/ホールド回路115の導入意義について説明する。
【0108】
交流入力電圧Vinが0V付近である場合には、交流入力電圧Vinを全波整流した脈流電圧VBが0V付近となり、さらには、脈流電圧VBを分圧した入力監視信号VBmが0V付近となる。従って、入力監視信号VBmに平滑出力帰還信号SSを掛け合わせた乗算信号S111も0V付近となる。そのため、仮に乗算信号S111にオフセットを与えていなければ、正極性の一次電流Iswが流れていなくても比較信号S114がハイレベルに立ち上がってしまう。その結果、スイッチS11のオン時間が短くなり過ぎるので、脈流電圧VBが接地電位から大きく浮き上がってしまい、力率悪化の要因となり得る。
【0109】
そこで、本実施形態のAC/DCコンバータ1では、加算器112及びサンプル/ホールド回路115を導入し、第2検出信号Isの回生ピーク値(=或る周期における一次電流Iswの回生量に相当)を回生ピーク検出信号S115として乗算信号S111に足し合わせている。
【0110】
本構成を採用することにより、第1内部信号生成部110では、或る周期における一次電流Iswの回生量が大きいほど次の周期におけるスイッチS11のオフタイミングを遅らせるように第1内部信号S110を生成することができる。従って、一次電流Iswの回生分を放電し切るまでスイッチS11のオン時間を確保することができる。
【0111】
図12は、本実施形態のAC/DCコンバータ1における脈流電圧VB及び充電電圧VHそれぞれの挙動(交流入力電圧Vinの絶対値が比較的低い状態)を示す図である。
【0112】
仮に、加算器112及びサンプル/ホールド回路115が未導入である場合、脈流電圧VBの浮き上がり量Vfloatは、100V近くに達し得る。一方、本実施形態のAC/DCコンバータ1であれば、本図で示すように、脈流電圧VBの浮き上がり量Vfloatを数十V程度にまで抑制することができる。従って、一次電流Iswの回生に伴う力率の悪化を招かずに済む。
【0113】
特に、一次電流Iswの回生量が多いほど本構成が有効となり得る。逆に、一次電流Iswの回生量がさほど大きくないのであれば、加算器112及びサンプル/ホールド回路115を省略し、乗算信号S111をコンパレータ114の非反転入力端(+)に直接入力することも可能である。
【0114】
図10に戻り、コントローラ100の要部構成について説明を続ける。第2内部信号生成部120は、入力監視信号VBmと出力帰還信号FBに基づいてスイッチS12のオン時間を設定するための第2内部信号S120を生成する回路ブロックであり、極性反転器121と、乗算器122と、を含む。
【0115】
極性反転器121は、入力監視信号VBmの極性を反転させて反転入力監視信号S121を生成する。
【0116】
乗算器122は、反転入力監視信号S121と出力帰還信号FBを掛け合わせて乗算信号S122(=S121×FB)を生成する。従って、乗算信号S122の波高値(ピーク値)は、出力帰還信号FBに応じた可変値となる。具体的に述べると、乗算信号S122の波高値は、出力帰還信号FBが高いほど高くなり、逆に、出力帰還信号FBが低いほど低くなる。なお、乗算信号S122は、第2内部信号S120(=スイッチS12のオン時間設定信号)としてロジック部130に出力されている。
【0117】
ロジック部130は、第2内部信号S120に応じてスイッチS12のオン時間を設定する。より具体的に述べると、スイッチS12のオン時間は、第2内部信号S120が高いほど長くなり、第2内部信号S120が低いほど短くなる。このようなオン時間制御によれば、直流出力電圧Voutのリップル成分を補填するようにキャパシタC10の放電制御を行うことができる(先出の
図9を参照)。
【0118】
上記動作について補足する。直流出力電圧Voutのリップル成分は、脈流電圧VBがボトム値となるタイミングでボトム値となる。つまり、直流出力電圧Voutがボトム値となるタイミングは、脈流電圧VBに応じた入力監視信号VBmから知ることができる。そこで、入力監視信号VBmがボトム値となるタイミングでピーク値となる反転入力監視信号S121を用意し、この反転入力監視信号S121に基づいてスイッチS12のオン時間を設定すれば、仮に出力帰還信号FBがフラットであっても、直流出力電圧Voutのリップル成分を補填するようにスイッチS12のオン時間を調整することができる。
【0119】
具体的には、入力監視信号VBm(延いては脈流電圧VB)が高いほどスイッチS12のオン時間を短縮し、逆に、入力監視信号VBm(延いては脈流電圧VB)が低いほどスイッチS12のオン時間を延長すればよい。
【0120】
ロジック部130は、第1内部信号S110並びに第2内部信号S120、及び、第1検出信号Vsに基づいて、スイッチS11及びS12それぞれのゲート駆動信号G11及びG12を生成する。
【0121】
例えば、ロジック部130は、第1検出信号Vsに基づいて電流臨界モード(または電流連続モード)によりスイッチS11のオンタイミングを決定してもよい。また、ロジック部130は、第1内部信号S110がハイレベルに立ち上がったときにスイッチS11をオフしてもよい。また、ロジック部130は、スイッチS11をオフしてから所定のデッドタイムが経過したときにスイッチS12をオンしてもよい。また、ロジック部130は、スイッチS12をオンしてから第2内部信号S120に応じて設定されるオン時間が経過したときにスイッチS12をオフしてもよい。
【0122】
<AC/DCコンバータ(第2実施形態)>
図13は、AC/DCコンバータの第2実施形態を示す図である。本実施形態のAC/DCコンバータ1は、先出の第1実施形態(
図2)を基本としつつ、二次回路系1sのインダクタL2及びダイオードD10を無くす代わりに、一次巻線Lpに直列接続されたインダクタL3を有する。本図に即して述べると、インダクタL3は、例えば、一次巻線Lpの第2端(巻終端)とスイッチS11のドレインとの間に接続してもよい。このような構成であれば、先出の第1実施形態(
図2)と同じく、1コンバータ方式で力率改善と出力安定化を両立することのできるAC/DCコンバータを形成することができる。
【0123】
<AC/DCコンバータ(第3実施形態)>
図14は、AC/DCコンバータの第3実施形態を示す図である。本実施形態のAC/DCコンバータ1は、先出の第2実施形態(
図13)の変形例として、インダクタL3の代わりに、トランスTXとして漏れインダクタンス成分L4を持つ漏洩トランスが用いられている。このような構成であれば、先出の第1実施形態(
図2)及び第2実施形態(
図13)と同じく、1コンバータ方式で力率改善と出力安定化を両立することのできるAC/DCコンバータを形成することができる。
【0124】
第2実施形態(
図13)及び第3実施形態(
図14)について補足する。先出の第1実施形態(
図2)で用いられているインダクタL2の役割は、フォワード時の電流過大防止及び効率改善となる。また、ダイオードD10は、インダクタL2の電流経路用に用いられている。このダイオードD10も効率改善に寄与している。第2実施形態(
図13)及び第3実施形態(
図14)の目的は、これら2つの部品を削減することにある。
【0125】
具体的に述べると、第2実施形態(
図13)では、上記2つの部品を無くしてその代わりに一次回路系1pにインダクタL3を挿入することで、フォワード時の電流過大防止の役割を持たせている。また、第3実施形態(
図14)では、第2実施形態(
図13)から更に素子削減を進めて、一次回路系1pにインダクタL3を追加する代わりにその機能を漏洩トランスで実現している。
【0126】
<総括>
以下では、上記で説明した種々の実施形態について総括的に述べる。
【0127】
例えば、本明細書中に開示されているAC/DCコンバータは、一次巻線及び二次巻線を備えるように構成されたトランスと、交流入力電圧を全波整流または半波整流することにより脈流電圧を生成して前記一次巻線に出力するように構成された整流器と、前記トランスをフライバック方式で駆動するように構成された第1スイッチと、前記トランスのキックバック電圧で充電されるように構成されたキャパシタと、前記キャパシタの充電電圧を利用して前記トランスをフォワード方式で駆動するように構成された第2スイッチと、前記二次巻線に現れる誘起電圧を整流及び平滑して直流出力電圧を生成するように構成された整流平滑部と、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチそれぞれのオン/オフ制御を行うように構成されたコントローラと、を有する構成(第1の構成)とされている。
【0128】
上記第1の構成によるAC/DCコンバータにおいて、前記第1スイッチは、前記一次巻線と基準電位端との間に直列接続されており、前記キャパシタと前記第2スイッチは、前記一次巻線の両端間に直列接続されている構成(第2の構成)にしてもよい。
【0129】
上記第1または第2の構成によるAC/DCコンバータにおいて、前記整流平滑部は、第1ダイオード及び第2ダイオードと、インダクタと、出力キャパシタと、を含み、前記第1ダイオードのアノードは、前記二次巻線の第1端に接続されており、前記第2ダイオードのアノードと前記出力キャパシタの第1端は、いずれも前記二次巻線の第2端に接続されており、前記第1ダイオード及び前記第2ダイオードそれぞれのカソードは、いずれもインダクタの第1端に接続されており、前記インダクタ及び前記出力キャパシタそれぞれの第2端は、いずれも前記直流出力電圧の出力端に接続されている構成(第3の構成)にしてもよい。
【0130】
上記第1~第3いずれかの構成によるAC/DCコンバータにおいて、前記コントローラは、前記一次巻線から基準電位端に向けて一次電流が流れる第1フェイズと、前記一次巻線に蓄えられたエネルギが前記二次巻線から二次電流として放出されると共に前記一次巻線から前記キャパシタに向けて充放電電流が流れる第2フェイズと、前記キャパシタから前記一次巻線に向けて前記充放電電流が流れると共に前記二次巻線から前記二次電流が放出される第3フェイズと、前記基準電位端から前記一次巻線に向けて前記一次電流が回生すると共に前記整流平滑部のインダクタに蓄えられたエネルギが前記二次電流として放出される第4フェイズと、を所定の周期で順次切り替えるように前記第1スイッチ及び前記第2スイッチそれぞれのオン/オフ制御を行う構成(第4の構成)にしてもよい。
【0131】
上記第4の構成によるAC/DCコンバータにおいて、前記コントローラは、前記脈流電圧に応じた入力監視信号、前記直流出力電圧に応じた第1出力帰還信号、前記第1出力帰還信号を鈍らせた第2出力帰還信号、及び、前記一次電流に応じた検出信号に基づいて、力率改善と出力安定化を両立するように前記第1スイッチ及び前記第2スイッチそれぞれのオン/オフ制御を行う構成(第5の構成)にしてもよい。
【0132】
上記第5の構成によるAC/DCコンバータにおいて、前記コントローラは、前記入力監視信号、前記第2出力帰還信号及び前記検出信号に基づいて前記第1スイッチのオフタイミングを設定するための第1内部信号を生成するように構成された第1内部信号生成部と、前記入力監視信号と前記第1出力帰還信号に基づいて前記第2スイッチのオン時間を設定するための第2内部信号を生成するように構成された第2内部信号生成部と、少なくとも前記第1内部信号及び前記第2内部信号に基づいて前記第1スイッチ及び前記第2スイッチそれぞれの駆動信号を生成するように構成されたロジック部を含む構成(第6の構成)にしてもよい。
【0133】
上記第6の構成によるAC/DCコンバータにおいて、前記第1内部信号生成部は、或る周期における前記一次電流の回生量が大きいほど次の周期における前記第1スイッチのオフタイミングを遅らせるように前記第1内部信号を生成する構成(第7の構成)にしてもよい。
【0134】
上記第7の構成によるAC/DCコンバータにおいて、前記第1内部信号生成部は、前記入力監視信号と前記第2出力帰還信号を掛け合わせて乗算信号を生成するように構成された第1乗算器と、前記検出信号の極性を反転させて反転検出信号を生成するように構成された第1極性反転器と、前記検出信号の回生ピーク値をサンプル/ホールドして回生ピーク検出信号を生成するように構成されたサンプル/ホールド回路と、前記乗算信号と前記回生ピーク検出信号とを足し合わせて加算信号を生成するように構成された加算器と、前記反転検出信号と前記加算信号とを比較して前記第1内部信号を生成するように構成されたコンパレータと、を含む構成(第8の構成)にしてもよい。
【0135】
上記第6~第8いずれかの構成によるAC/DCコンバータにおいて、前記第2内部信号生成部は、前記入力監視信号の極性を反転させて反転入力監視信号を生成するように構成された第2極性反転器と、前記反転入力監視信号と前記第1出力帰還信号を掛け合わせて前記第2内部信号を生成するように構成された第2乗算器とを含む構成(第9の構成)にしてもよい。
【0136】
上記第1~第9いずれかの構成によるAC/DCコンバータにおいて、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチは、ワイドバンドギャップ半導体を用いたパワーデバイスである構成(第10の構成)にしてもよい。
【0137】
上記第1~第10いずれかの構成によるAC/DCコンバータは、前記一次巻線に直列接続されたインダクタをさらに有する構成(第11の構成)にしてもよい。
【0138】
また、上記第1~第11いずれかの構成によるAC/DCコンバータにおいて、前記トランスは、漏れインダクタンス成分を持つ漏洩トランスである構成(第12の構成)にしてもよい。
【0139】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0140】
1 AC/DCコンバータ
1p 一次回路系
1s 二次回路系
10 PFCコンバータ
20 DC/DCコンバータ
100 コントローラ
110 第1内部信号生成部
111 乗算器
112 加算器
113 極性反転器
114 コンパレータ
115 サンプル/ホールド回路
115a バッファ
115b ダイオード
115c キャパシタ
115d 抵抗
120 第2内部信号生成部
121 極性反転器
122 乗算器
130 ロジック部
AC 交流電源
C1~C5、C10~C14 キャパシタ
CTRL1 PFCコントローラ
CTRL2 DC/DCコントローラ
D1~D12 ダイオード
DB 整流器(ダイオードブリッジ)
FBGNR 出力帰還信号生成部
L1、L2 インダクタ
L3 インダクタ
L4 漏れインダクタンス成分
LED 発光ダイオード
Lp 一次巻線
Ls 二次巻線
PC フォトカプラ
PT フォトトランジスタ
R1~R13 抵抗
RS 整流平滑部
S1、S2、S11、S12 スイッチ
SR シャントレギュレータ
TX トランス