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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166980
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】吹付機
(51)【国際特許分類】
   B05B 7/04 20060101AFI20221027BHJP
   B05B 7/24 20060101ALI20221027BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B05B7/04
B05B7/24
E04G23/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072452
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】林 進
【テーマコード(参考)】
2E176
4F033
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176BB18
4F033QA01
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB18
4F033QD02
4F033QD14
4F033QE06
4F033QE21
4F033QE22
4F033QF04X
(57)【要約】
【課題】軽量化、小型化、及び取扱性に優れ、作業者に対する十分な作業性を確保することが可能な吹付機を提供する。
【解決手段】吹付材を流体によりノズルから吐出させる吹付機であって、吹付材を収容するホルダ、流体供給口、ON/OFF操作が可能なトリガ、シリンダチューブ内を前段部と後段部に分画するピストン、ホルダ内に配置され、吹付材をノズルへ押し出すプランジャ、及び、それらを連結するピストンロッドを有するシリンダ、(1)トリガOFF時、流体供給口と前段部とを連通し、後段部と外部とを連通するとともに、プランジャが第1位置のとき前段部と外部とが連通するように切り替え、(2)トリガON時、流体供給口と後段部とを連通し、後段部と外部との連通を遮断するとともに、ピストンが第2位置のとき前段部と外部との連通を遮断するように切り替える流路切替部6を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹付材を流体により押し出してノズルから吐出させる吹付機であって、
前記吹付材を収容するホルダと、
前記流体が供給される流体供給口と、
ON/OFF操作が可能なトリガと、
前記ホルダの後段に配置されたシリンダチューブと、前記シリンダチューブの内周面に沿って摺動可能に設けられ、且つ、前記シリンダチューブ内を前段部と後段部に分画するピストンと、前記シリンダチューブ外であって前記ホルダ内に配置され、且つ、前記吹付材を前記ノズルへ押し出すプランジャと、前記プランジャと前記ピストンとを連結するピストンロッドとを有するシリンダと、
(1)前記トリガがOFFのとき、前記流体供給口と前記前段部とを連通し、前記後段部と前記シリンダチューブ外である外部とを連通するとともに、前記プランジャが第1位置に位置するとき前記前段部と前記外部とが連通するように切り替え、(2)前記トリガがONのとき、前記流体供給口と前記後段部とを連通し、前記後段部と前記外部との連通を遮断するとともに、前記ピストンが第2位置に位置するとき前記前段部と前記外部との連通を遮断するように切り替える流路切替部と、
を備える吹付機。
【請求項2】
前記第1位置は、前記プランジャが前記シリンダチューブに対して最も縮んだときの前記プランジャの移動終点位置を含む、
請求項1に記載の吹付機。
【請求項3】
前記第2位置は、前記プランジャが前記シリンダチューブに対して最も伸長したときの前記ピストンの移動終点位置を含む、
請求項1又は2に記載の吹付機。
【請求項4】
前記流路切替部は、前記流体供給口に接続される第1切替部と、前記前段部に接続される第2切替部と、前記第1切替部と前記第2切替部とを接続する第1流路とを有し、
前記第1切替部は、前記トリガがOFFのとき、前記流体供給口と前記第1流路とを連通するとともに前記後段部と前記外部とを連通し、前記トリガがONのとき、前記流体供給口と前記後段部とを連通するとともに前記後段部と前記外部との連通を遮断し、
前記第2切替部は、前記プランジャが前記第1位置に位置するとき、前記前段部と前記外部とを連通し、前記ピストンが前記第2位置に位置するとき、前記前段部と前記外部との連通を遮断するとともに、前記前段部と前記外部とが連通するとき、前記第1流路と前記前段部との連通を遮断し、前記前段部と前記外部との連通が遮断されるとき、前記第1流路と前記前段部とを連通する、
請求項1から3のいずれかに記載の吹付機。
【請求項5】
前記第2切替部は、
前記前段部と前記外部とを連通し、又は、前記前段部と前記外部との連通を遮断する第1バルブと、
前記前段部と前記外部とが連通するとき、前記第1流路と前記前段部との連通を遮断し、前記前段部と前記外部との連通が遮断されるとき、前記第1流路と前記前段部とを連通する第2バルブと、を有する、
請求項4に記載の吹付機。
【請求項6】
前記第1バルブは、前記ホルダと前記前段部とを区画する前記シリンダチューブの端壁を貫通し、前記プランジャが前記第1位置に位置するとき、前記プランジャに当接して前記前段部と前記外部とを連通する位置に移動し、前記ピストンが前記第2位置に位置するとき、前記ピストンに当接して前記前段部と前記外部との連通を遮断する位置に移動する、
請求項5に記載の吹付機。
【請求項7】
前記第2バルブは、前記第1バルブの移動に伴い移動し、前記第1バルブが前記前段部と前記外部とを連通する位置に移動したとき、前記第1流路と前記前段部との連通を遮断する位置に移動し、前記第1バルブが前記前段部と前記外部との連通を遮断する位置に移動したとき、前記第1流路と前記前段部とを連通する位置に移動する、
請求項6に記載の吹付機。
【請求項8】
前記第1バルブは、前記ピストンロッドの延伸方向に沿う方向に延びる軸状を成し、前記延伸方向と直交する方向に窪む凹部を含み、
前記第2バルブは、前記第1バルブが前記前段部と前記外部との連通を遮断する位置にあるとき、前記凹部に嵌入して前記第1流路と前記前段部とを連通する位置に移動し、前記第1バルブが前記前段部と前記外部とを連通する位置にあるとき、前記凹部に嵌入せずに前記第1流路と前記前段部との連通を遮断する位置に移動する、
請求項5乃至7の何れかに記載の吹付機。
【請求項9】
前記流路切替部は、前記ノズルに接続される第2流路を備え、
前記第1切替部は、前記トリガがONのとき、前記流体供給口と前記第2流路とを連通し、前記トリガがOFFのとき、前記流体供給口と前記第2流路との連通を遮断する、
請求項4乃至8の何れかに記載の吹付機。
【請求項10】
前記流体は、圧縮空気である、
請求項1乃至9の何れかに記載の吹付機。
【請求項11】
前記ホルダは、前記吹付材が収容された容器を収容可能に構成される、
請求項1乃至10の何れかに記載の吹付機。
【請求項12】
前記第1バルブは、該第1バルブの一端側の先端部に設けられて、該第1バルブの径方向に突出するプレートと、前記プレートの一側面と摺動可能に干渉する干渉部が設けられたレバーと、を有し、
前記レバーは、前記干渉部が前記プレートと干渉することで前記第1バルブを移動可能に設けられている、
請求項5、又は、請求項5を引用する請求項6乃至11の何れかに記載の吹付機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建造物の施工時や経年劣化によって生じ得る隙間、空間、クラック(ひび割れ)等に、充填材、シール材、接着剤、断熱材等の適宜の吹付材を吹き付けることが可能な吹付機に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物に生じた隙間、空間、クラック等は、通常、作業者(ユーザ)が、いわゆる手塗りで、或いは、手動操作式のコーキングガンを用いて、例えば耐火性を有する充填材(吹付材)等で埋め込むように施工することが多く行われている。しかし、このような作業者の手動操作による作業では、工期の増大を招き、また、作業者の負担も多大となってしまうため、専用の機器を用いた施工処理が望まれている。一方、耐火性を有する充填材として、例えば、近時、難燃性、耐火性、及び取扱性に優れた発泡ウレタンが実用化されてきている。この発泡ウレタンは、複数の材料原液(樹脂の主剤と硬化剤)が混合されることで硬化する性質を有する。そのため、一般に、それぞれ個別のタンクやドラム缶に収容した複数の材料原液を車両で現場へ運び、作業位置までホースで取り回してから、コンプレッサからの圧縮空気と吹付機によって、混合された材料原液が壁面等の大面積に吹き付けられて発泡ウレタンとして硬化形成される。
【0003】
ところが、隙間、空間、クラック等の充填に、そのような比較的大型の機器を用いることは、作業の自由度が制約され、非常に不便であり、手間が掛かかってしまう。そこで、作業者が簡便に取り扱うことができ、作業自体の負担を軽減することができる吹付機が切望されている。このような吹付機の候補として、例えば特許文献1及び2等には、充填材の2種類の材料原液カートリッジを搭載し、それら2液をシリンダで押し出してノズル先端部で混合し、圧縮空気によってその混合物を対象部位に吹き付ける可搬型(ハンディタイプ)の吹付機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国公開特許第10625293号公報
【特許文献2】特許第5819872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者が、上記特許文献1等に記載された従来タイプの吹付機の実機について、鋭意検討を行ったところ、まず、軽量化及び小型化の点で未だ十分ではないことから、機器の取り回しが難しく、取扱いに相当な労力が必要であり、作業者の作業性(特に足場の良くない高所での作業性)を確保する観点からも問題があることが確認された。
【0006】
また、従来タイプの吹付機の実機のなかには、作業者による煩雑な操作が必要なものもあり、作業現場での操作性の観点からも更なる改善が望まれる。例えば、上記従来タイプの吹付機では、作業者が、シリンダ圧力及び吹付圧の調整、シリンダの前進・後退の切替バルブ及び吹付バルブの調整を行いながら、吹付けを行う必要がある。また、シリンダの前進にはトリガが用いられるが、シリンダの後退は手動又は別途のボタン操作で行ったり、シリンダの前進・後退をボタン操作でその都度切り替えたりすることが必要なものもある。さらに、混合液の吹付けに、トリガ操作だけではなく、吹付用の切替バルブの開閉操作を行うことが必要なものもある。このような複雑な操作を片手で行うことは極めて困難であり、この点においても、作業者の作業性を十分に確保することは困難であると推察される。
【0007】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、軽量化、小型化、及び取扱性に優れ、これらにより、作業者に対する十分な作業性を確保することが可能な吹付機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0009】
〔1〕本開示に係る吹付機の一例は、吹付材を流体により押し出してノズルから吐出させる吹付機であって、前記吹付材を収容するホルダと、前記流体が供給される流体供給口と、ON/OFF操作が可能なトリガと、前記ホルダの後段に配置されたシリンダチューブと、前記シリンダチューブの内周面に沿って摺動可能に設けられ、且つ、前記シリンダチューブ内を前段部と後段部に分画するピストンと、前記シリンダチューブ外であって前記ホルダ内に配置され、且つ、前記吹付材を前記ノズルへ押し出すプランジャと、前記プランジャと前記ピストンとを連結するピストンロッドとを有するシリンダとを有する。また、本開示に係る吹付機の一例は、 (1)前記トリガがOFFのとき、前記流体供給口と前記前段部とを連通し、前記後段部と前記シリンダチューブ外である外部とを連通するとともに、前記プランジャが第1位置に位置するとき前記前段部と前記外部とが連通するように切り替え、(2)前記トリガがONのとき、前記流体供給口と前記後段部とを連通し、前記後段部と前記外部との連通を遮断するとともに、前記ピストンが第2位置に位置するとき前記前段部と前記外部との連通を遮断するように切り替える流路切替部とを備える。
【0010】
なお、「吹付材」とは、建造物の施工時や経年劣化によって生じ得る隙間、空間、クラック(ひび割れ)、その他の用途に用いられる充填材、シール材、接着剤、断熱材等の適宜の部材を含み、本開示においては、容器の押圧によって外部へ押し出される少なくとも1種の液体原料(液状物や半固体状物を含む)から形成される部材であれば、特に限定されない。また、かかる液体原料が収容される容器としては、大別して、液体原料が直接収容される柔軟性を有するフィルムパック等を用いた変形可能な容器(フィルムパック型容器)と、そのようなフィルムパック型容器がより剛性の高い(比較的硬質な)別の容器(リテーナ型容器)に内包された二重容器(カートリッジ型容器)が実用化され、広く用いられている。本開示の吹付機は、何れのタイプの容器にも対応可能である。
【0011】
かかる構成では、トリガのON/OFF操作による流体圧駆動によって、ピストンとプランジャを前後に移動させ、ホルダに収容された吹付材を外部に自動的に吐出させることができる。より具体的には、上記(1)のとおり、トリガがOFFのとき、流体供給口をシリンダチューブの前段部に連通し、その後段部をシリンダチューブの外部に連通する。これにより、流体圧によってピストンとともにプランジャがシリンダチューブ側に後退するので、ホルダへの吹付材の(容器の)装填や交換が可能となる。そして、プランジャが第1位置に位置すると、シリンダチューブの前段部と外部が連通するような流路切替動作が行われる。それから、上記(2)のとおり、トリガがONのとき、流体供給口をシリンダチューブの後段部に連通し、その後段部と外部との連通を遮断する。これにより、流体圧によってピストンとともにプランジャがホルダ内を前進するので、ホルダ内の吹付材を外部へ吐出させることができる。そして、ピストンが第2位置に位置すると、前段部と外部との連通を遮断するような流路切替動作が行われる。このとおり、本開示の吹付機では、吹付材の一連の吹付動作をトリガのON/OFF操作によって簡便に実施することができ、また、従来の複雑な操作のために必要であった各種部品を削減することができる。
【0012】
〔2〕上記構成において、より具体的には、前記第1位置は、前記プランジャが前記シリンダチューブに対して最も縮んだときの前記プランジャの移動終点位置(初期位置、最後端位置)を含んでもよく、例えば、プランジャが後述する第1バルブを押圧し始めてからシリンダチューブに対して最も縮んだときのプランジャの移動終点位置までの間(の位置)が挙げられる。
【0013】
〔3〕上記構成において、より具体的には、前記第2位置は、前記プランジャが前記シリンダチューブに対して最も伸長したときの前記ピストンの移動終点位置(終点位置、最前端位置)を含んでもよく、例えば、ピストンが後述する第1バルブを押圧し始めてからプランジャがシリンダチューブに対して最も伸長したときのピストンの移動終点位置までの間(の位置)が挙げられる。
【0014】
〔4〕上記構成において、前記流路切替部は、前記流体供給口に接続される第1切替部と、前記前段部に接続される第2切替部と、前記第1切替部と前記第2切替部とを接続する第1流路とを有し、前記第1切替部は、前記トリガがOFFのとき、前記流体供給口と前記第1流路とを連通するとともに前記後段部と前記外部とを連通し、前記トリガがONのとき、前記流体供給口と前記後段部とを連通するとともに前記後段部と前記外部との連通を遮断し、前記第2切替部は、前記プランジャが前記第1位置に位置するとき、前記前段部と前記外部とを連通し、前記ピストンが前記第2位置に位置するとき、前記前段部と前記外部との連通を遮断するとともに、前記前段部と前記外部とが連通するとき、前記第1流路と前記前段部との連通を遮断し、前記前段部と前記外部との連通が遮断されるとき、前記第1流路と前記前段部とを連通する。かかる構成では、トリガのON/OFF操作と第1切替部及び第2切替部との協働により、流路切替部による各流路の連通及び遮断(流路切替動作)が確実に且つ効率的に実行される。
【0015】
〔5〕上記構成において、前記第2切替部は、前記前段部と前記外部とを連通し、又は、前記前段部と前記外部との連通を遮断する第1バルブと、前記前段部と前記外部とが連通するとき、前記第1流路と前記前段部との連通を遮断し、前記前段部と前記外部との連通が遮断されるとき、前記第1流路と前記前段部とを連通する第2バルブとを有するように構成してもよい。かかる構成では、第2切替部における第1バルブと第2バルブとの協働により、流路切替部による各流路の連通及び遮断(流路切替動作)が確実に且つ効率的に実行され、また、流路切替部の構成を簡略化することができる。
【0016】
〔6〕上記構成において、前記第1バルブは、前記ホルダと前記前段部とを区画する前記シリンダチューブの端壁を貫通し、前記プランジャが前記第1位置に位置するとき、前記プランジャに当接して(又は押圧されて)前記前段部と前記外部とを連通する位置に移動し、前記ピストンが前記第2位置に位置するとき、前記ピストンに当接して(又は押圧されて)前記前段部と前記外部との連通を遮断する位置に移動するように構成してもよい。かかる構成では、第1バルブがプランジャとピストンの両方に当接して移動するので、プランジャとピストンの動きに応じて、前段部と外部の連通及び遮断が簡便に且つ確実に行われ、また、流路切替部の構成をより簡略化することができる。
【0017】
〔7〕上記構成において、前記第2バルブは、前記第1バルブの移動に伴い移動し、前記第1バルブが前記前段部と前記外部とを連通する位置に移動したとき、前記第1流路と前記前段部との連通を遮断する位置に移動し、前記第1バルブが前記前段部と前記外部との連通を遮断する位置に移動したとき、前記第1流路と前記前段部とを連通する位置に移動するように構成してもよい。かかる構成では、第2バルブが第1バルブの移動に伴って移動するので、第1バルブの動きに応じて、第1通路と前段部の連通及び遮断が簡便に且つ確実に行われ、また、流路切替部の構成を一層簡略化することができる。
【0018】
〔8〕上記構成において、より具体的には、前記第1バルブは、前記ピストンロッドの延伸方向に沿う方向に延びる軸状を成し、前記延伸方向と直交する方向に窪む凹部を含み、前記第2バルブは、前記第1バルブが前記前段部と前記外部との連通を遮断する位置にあるとき、前記凹部に嵌入して前記第1流路と前記前段部とを連通する位置に移動し、前記第1バルブが前記前段部と前記外部とを連通する位置にあるとき、前記凹部に嵌入せずに前記第1流路と前記前段部との連通を遮断する位置に移動するように構成してもよい。かかる構成では、第1バルブと第2バルブの構造的な特徴により、流路切替部の構成を更に一層簡略化しつつ、流路切替部による各流路の連通及び遮断(流路切替動作)をより確実ならしめることができる。
【0019】
〔9〕上記構成において、前記流路切替部は、前記ノズルに接続される第2流路を備え、前記第1切替部は、前記トリガがONのとき、前記流体供給口と前記第2流路とを連通し、前記トリガがOFFのとき、前記流体供給口と前記第2流路との連通を遮断するように構成してもよい。かかる構成では、トリガのON/OFF操作と第1切替部との協働により、第2流路を通してのノズルへの流体の供給及び遮断が行われ、吹付材をノズルから簡便に且つ確実に吐出させることができる。
【0020】
〔10〕上記構成において、より具体的には、前記流体が圧縮空気であると、流体の取扱性、機器のメンテナンス(保守)性、経済性、吹付材の吐出力の調整容易性等の観点から好適である。
【0021】
〔11〕上記構成において、更に具体的には、前記ホルダは、前記吹付材が収容された容器を収容可能に構成されると、吹付材の取り扱いやメンテナンス(保守)が容易となり、また、吹付材の交換時の作業効率が高められるので好適である。
【0022】
〔12〕上記構成において、前記第1バルブは、該第1バルブの一端側の先端部に設けられて、該第1バルブの径方向に突出するプレートと、前記プレートの一側面と摺動可能に干渉する干渉部が設けられたレバーとを有し、前記レバーは、前記干渉部が前記プレートと干渉することで前記第1バルブを移動可能に設けられているように構成してもよい。かかる構成では、レバーを操作して、その干渉部とプレートを干渉させると、第1バルブがプレートとともに、例えばホルダ側へ移動され得る。これにより、シリンダの前段部と外部との連通が遮断されるので、この状態でトリガをOFFにすることにより、第1流路と前段部が連通する。よって、ピストンの動作が途中で停止したような場合でも、プランジャを第1位置へ強制的に復帰させることができる。
【0023】
なお、本開示において、1つの「部」、「機(器)」、「装置」、及びそれらの構成部品や構成要素が有する機能が、2つ以上の物理的手段や装置等によって実現されてもよく、或いは、2つ以上の「部」、「機(器)」、「装置」、及びそれらの構成部品や構成要素の機能が1つの物理的手段や装置等によって実現されてもよい。さらに、「部」、「機(器)」、及び「装置」とは、例えば「手段」や「システム」等と言い換えることも可能な概念である。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、一連の吹付動作をトリガのON/OFF操作によって簡便に実施することができ、また、従来の複雑な操作のために必要であった各種部品を削減することができる。従って、吹付機の軽量化及び小型化を実現することでき、作業者による片手での操作が可能となり、且つ、吹付機及び容器の取扱性を向上させることもできる。その結果、作業者に対する十分な作業性(特に足場の良くない高所作業における作業性)を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態に係る吹付機の一例に吹付材の原料溶液容器の一例を装着した状態の概略構成を示す側面図である。
図2】吹付材の原料溶液容器の一例の概略構成を示す斜視図(前方斜め上方から視認)である。
図3図1に示す吹付機に図2に示す吹付材の原料溶液容器を挿入している状態を概略的に示す斜視図(前方斜め下方から視認:一部省略)である。
図4図1に示す概略構成の斜視図(前方斜め上方から視認:一部省略)である。
図5A図1に示す概略構成の側断面図(一部省略)である。
図5B図5Aの一部を拡大して示す概略断面図である。
図5C図5Aに示す動作状態を模式的に示す平面図である。
図6A図1に示す概略構成の側断面図(一部省略)である。
図6B図6Aの一部を拡大して示す概略断面図である。
図6C図6Aに示す動作状態を模式的に示す平面図である。
図7A図1に示す概略構成の側断面図(一部省略)である。
図7B図7Aの一部を拡大して示す概略断面図である。
図7C図7Aに示す動作状態を模式的に示す平面図である。
図8A図1に示す概略構成の側断面図(一部省略)である。
図8C図8Aに示す動作状態を模式的に示す平面図である。
図9A】他の一本実施形態に係る吹付機の一例の概略構成の一部を拡大して示す側面図である。
図9B図9Aの更に一部を拡大して示す斜視図である。
図9C】他の一本実施形態に係る吹付機の一例の概略構成の一部を拡大して示す側面図である。
図9D図9Cに示す動作状態を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の一例に係る実施形態について、図面を参照して説明する。但し、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図ではない。すなわち、本開示の一例は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付しており、図面は模式的なものであって、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。さらに、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。また、以下に説明する実施形態は本開示の一部の実施形態であって、全ての実施形態ではないことは言うまでもない。さらに、本開示の実施形態に基づいて、当業者が創造性のある行為を必要とせずに得られる他の実施形態は、いずれも本開示の保護範囲に含まれる。
【0027】
[実施形態]
図1は、一実施形態に係る吹付機の一例に吹付材の原料溶液容器の一例を装着した状態の概略構成を示す側面図である。また、図2は、吹付材の原料溶液容器の一例の概略構成を示す斜視図(前方斜め上方から視認)である。さらに、図3は、図1に示す吹付機に図2に示す吹付材の原料溶液容器を挿入している状態を概略的に示す斜視図(前方斜め下方から視認:一部省略)である。また、図4は、図1に示す概略構成の斜視図(前方斜め上方から視認:一部省略)である。なお、各図中に示す両矢印に付した符号「F」は、吹付機の前方又は前段方向であることを示し、符号「B」は、吹付機の後方又は後段方向であることを示す(他図において同様とする。)。
【0028】
(構成例1)
本実施形態に係る吹付機100は、吹付材を圧縮空気(流体)により押し出してノズル52から吐出させるものであって、主として、シリンダチューブ20を有するシリンダ2と、略長尺状を成し、且つ、吹付材が収容されるリテーナ33を保持するホルダ3とを有する本体部1と、圧縮空気が流通する後述する各流路の切り替えを行うための流路切替部6とを備える。本体部1には、作業者が把持する中空状を成すグリップ10と、グリップ10の前段において作業者の指を掛け易い位置に、作業者の操作によりON/OFFの切替が可能なトリガ11が設けられている。また、グリップ10の底部には、圧縮空気を送出するエアコンプレッサ(図示せず)のホースが接続されるエアプラグ等の流体供給口12が設けられている。さらに、本体部1におけるグリップ10の後段には、シリンダ2へ供給される圧縮空気の流量調整ダイヤルD1が装備され、グリップ10の前段には、後述するミキシングノズル(ノズル)5へ供給される圧縮空気の流量調整ダイヤルD2が装備されている。
【0029】
シリンダ2は、本体部1の上部後方に配置されており、例えば透光性を有する円筒状部材であるシリンダチューブ20は、ホルダ3の後段に配置され、一端(前端)及び他端(後端)に、それぞれシリンダ蓋部21,22が設けられている。それらのシリンダ蓋部21,22は、複数の固定ロッド23で締結されている。なお、シリンダチューブ20とシリンダ蓋部21は、後述する図5A等に示すとおり、シール部S21によって閉止されている。また、シリンダチューブ20の内部には、シリンダチューブ20の内周面に沿って摺動可能に設けられ、且つ、シリンダチューブ20内を、前段部20Fと後段部20Bに分画する円盤状を成すピストン24が配置されている。シリンダチューブ20における前段部20F及び後段部20Bの内容積は、シリンダチューブ20内でピストン24が前後方向に移動することにより変化する。
【0030】
また、ピストン24の前面からは、シリンダチューブ20の前端を覆うシリンダ蓋部21、及び、ホルダ筐体30の後端を覆うホルダ蓋部32を貫通するように、ピストンロッド25が延在している。さらに、シリンダチューブ20外であってホルダ3内には、吹付材をノズル52へ押し出すプランジャ26が配置されている。このプランジャ26とピストン24は、ピストンロッド25によって連結されている。すなわち、ピストンロッド25の前端には、円盤状を成すプランジャ26が接合されている。これによりシリンダチューブ20内に配置されたピストン24と、シリンダチューブ20外に配置されたプランジャ26とが、ピストンロッド25とともに一体的に移動するように構成されている。
【0031】
一方、ホルダ3は、吹付材の容器の一例として後述する原料溶液容器(フィルムパック型容器4)を収容する。ホルダ3は、壁部及び側壁の一部のそれぞれに開口H1,H2が設けられた略円筒状を成すホルダ筐体30を有している。ホルダ筐体30の一端31(前端)は開口しており、他端(後端)には、ホルダ蓋部32が設けられている。また、両端が開放された略筒状を成し、且つ、例えば透光性部材で形成されたリテーナ33は、ボルトや板バネ等の適宜の固定手段によって、ホルダ3に着脱可能に装着されている。さらに、ホルダ筐体30の一端31側において、ホルダ筐体30とリテーナ33との間に、両端が開放された略筒状を成しリテーナ33よりも短尺である緩衝ガイド部材34が設けられている。
【0032】
また、ホルダ3は、後述するフィルムパック型容器4に取り付けられるミキシングノズル(ノズル)5の一部、及び、ミキシングノズル5へ圧縮空気を供給するためのエアチューブ35の一部を保持して固定するためのノズルガイド36と、ホルダ筐体30の一端31における開口部の所定部分を覆う(閉止する)ように形成されたストッパ37とを有する。これらのノズルガイド36とストッパ37は、一体に接続されており、両者の境界部において、ホルダ筐体30の一端31側の下部に蝶番38で回動可能に固定されている。
【0033】
ここで、吹付機100で用いられる吹付材としては、例えば、2種類の液体原料M1,M2(樹脂原料液及び硬化剤液)から形成されるいわゆる2液混合タイプの不燃性ポリウレタン材等が挙げられる(ただし、これに限定されない。)。この場合、図2に示すように液体原料M1,M2が、それぞれ個別に、柔軟性を有する袋状のフィルムパック40,40に収容される。これらのフィルムパック40,40は、2つの円形蓋が接合された封止具41で開放端が封止され、これによりフィルムパック型容器4として一体化される。また、封止具41の中央部には、雄ネジ42nを有する中空のノズル取付部42が設けられている。
【0034】
また、図2及び図3に示すように、フィルムパック型容器4のノズル取付部42には、供給される液体原料M1,M2の混合機能を有するノズルの一例としての公知のミキシングノズル(ノズル)5が、ノズル取付部42の先端を覆うように嵌め込まれ、雄ネジ42nと雌ネジ部材51との螺合により固定される。ミキシングノズル5の先端には、ノズルの一例としてのスプレーノズル(ノズル)52が嵌着される。スプレーノズル52は、吹付材の吐出口52s、及び、胴部から分岐して設けられた接続部52aを有している。この接続部52aには、圧縮空気を供給するためのエアチューブ35が接続される。このようにミキシングノズル5及びスプレーノズル52が取り付けられたフィルムパック型容器4は、ノズルガイド36及びストッパ37を下側に回動させた状態、つまりホルダ筐体30の一端31が開口した状態で、その一端31からリテーナ33に、図3に示すように内挿される。
【0035】
また、図4に示すように、フィルムパック型容器4がリテーナ33内に完全に収容されると、ノズルガイド36及びストッパ37を上側に回動させ、ストッパ37の側端部をロックレバー39に嵌着させることにより、ホルダ筐体30の一端31を閉止するようにして、フィルムパック型容器4がホルダ筐体30に保持固定される。
【0036】
なお、図4においては、視認のし易さの観点から、胴壁の図示上部がカットされて開口した状態のリテーナ33を示した。また、吹付機100においては、2つのフィルムパック40,40に対応して2つのプランジャ26,26が装備されており、それらのプランジャ26,26に1つのピストンロッド25を介して1つのピストン24が結合されている。但し、2つのフィルムパック40,40に対応して2つのピストンロッド25,25及び2つのピストン24,24を備えていてもよい。
【0037】
(動作例1)
次に、図5A乃至図8C図8Bは欠番)を用い、本実施形態に係る吹付機100による吹付材の吐出を行う流路切替部6の構成及び動作について説明するとともに、吹付機100における一連の基本動作について説明する。ここで、図5A図6A図7A、及び図8Aは、図1に示す概略構成の側断面図(一部省略)である。また、図5B図6B、及び図7Bは、それぞれ、図5A図6A、及び図7Aの一部を拡大して示す概略断面図である。さらに、図5C図6C図7C、及び図8Cは、それぞれ、図5A図6A図7A、及び図8Aに示す動作状態を模式的に示す平面図である。なお、図5B図6B、及び図7Bにおいては、図面開示の都合上、それぞれ図5A図6A、及び図7Aにおいて図示を省略した一部の部材(要素)を表示したが、かかる部材については、後記の「構成例2及び動作例2」において説明する。
【0038】
まず、吹付機100に備わる流路切替部6は、流体供給口12に接続されるバルブシステム(第1切替部)7と、シリンダチューブ20の前段部20Fに接続されるステムシステム(第2切替部)8と、バルブシステム7とステムシステム8とを接続する第1流路KT1と、ノズル52に接続される第2流路KT2を含んで構成される。
【0039】
バルブシステム7は、図5A等に示すように、本体部1の内部に画成された所定の配置空間に設けられている。また、バルブシステム7は、中空又は中実の略棒状を成し、軸方向に沿って種々の異なる径を有する部分が連接され、所定の位置に複数のシール部S7(S71~S74)が形成されたものである。このバルブシステム7は、後端に当接するバネ71によって、前端がトリガ11に当接且つ付勢されており、トリガ11のON/OFF操作により、その付勢方向に沿って前後に移動可能に設けられている。
【0040】
そして、バルブシステム7は、かかる構成により、以下のように作動する。
(7a)トリガ11がOFFのとき、流体供給口12と第1流路KT1とを連通する。
(7b)トリガ11がOFFのとき、シリンダチューブ20の後段部20Bとシリンダチューブ20外である外部(以下同様)とを連通する。
(7c)トリガ11がOFFのとき、流体供給口12と第2流路KT2との連通を遮断する。
(7d)トリガ11がONのとき、流体供給口12とシリンダチューブ20の後段部20Bとを連通する。
(7e)トリガ11がONのとき、シリンダチューブ20の後段部20Bと外部との連通を遮断する。
(7f)トリガ11がONのとき、流体供給口12と第2流路KT2とを連通する。
【0041】
また、ステムシステム8は、シリンダ蓋部21内に設けられている第1ステム(第1バルブ)81、及び、第2ステム(第2バルブ)82を含んで構成されている。第1ステム81は、ピストンロッド25の延伸方向に沿う方向に延びる軸状を成してシリンダ蓋部(端壁)21を貫通しており、シリンダ前段部20F側の太径部にシール部S81が設けられ、且つ、ホルダ蓋部32側の軸状を成す部位の一部が細径に設けられた細径部に、ピストンロッド25の延伸方向と直交する方向に窪む凹部81cが形成されている。また、第1ステム81は、プランジャ26及びピストン24のそれぞれの押圧によって、シリンダチューブ20の軸に沿った前後方向に移動可能である。一方、第2ステム82は、シリンダ蓋部21内において、第1ステム81の下方に立設されており、上側の細径部の上端部82aが、凹部81cに嵌入して第1ステム81の細径部に当接可能に設けられている。また、第2ステムの下側の太径部には、シール部S82が設けられている。
【0042】
そして、ステムシステム8は、かかる構成により、以下のように作動する。
(8a)プランジャ26が第1位置(プランジャ26が第1ステム81を押圧し始めてからシリンダチューブ20に対して最も縮んだときのプランジャ26の移動終点位置(初期位置、最後端位置)までの間)に位置するとき、シリンダチューブ20の前段部20Fと外部とを連通する。
(8b)ピストン24が第2位置(ピストン24が第1ステム81を押圧し始めてからプランジャ26がシリンダチューブ20に対して最も伸長したときのピストン24の移動終点位置(終点位置、最前端位置)までの間)に位置するとき、シリンダチューブ20の前段部20Fと外部との連通を遮断する。
(8c)シリンダチューブ20の前段部20Fと外部とが連通するとき、第1流路KT1とシリンダチューブ20の前段部20Fとの連通を遮断する。
(8d)シリンダチューブ20の前段部20Fと外部との連通が遮断されるとき、第1流路KT1とシリンダチューブ20の前段部20Fとを連通する。
【0043】
より詳細には、まず、図5A乃至図5Cは、プランジャ26がホルダ筐体30内の途中に位置しているとき、すなわちプランジャ26が第1位置(移動終点位置、初期位置、最後端位置)に戻りきっていなかった場合に、プランジャ26を第1位置に戻している途中の状態を示す。
【0044】
なお、吹付機100の作動において、プランジャ26がフィルムパック40の押し出しを完了したとき、ピストン24はシリンダチューブ20における第2位置(移動終点位置、終点位置、最前端位置)に到達して、第1ステム81を、シリンダチューブ20の前方側へ押圧して移動させる(図示黒塗り矢印)。これにより、図5A乃至図5Cに示す状態では、予め、第1ステム81によって排気口OUT1が封止され(図示破線丸枠C11)、シリンダチューブ20の前段部20Fと、外部に通じる排気路HT1との連通が遮断されている(8b)。また、第1ステム81が、上述したようにシリンダチューブ20の前方側へ移動すると、第1ステム81の凹部81cも前方側へ移動し、第2ステム82の上方に第1ステムの凹部81cが位置するようになる。
【0045】
この状態で、トリガ11をOFFにする(作業者がトリガ11から指を離す)と、バルブシステム7は、トリガ11側へ付勢されている状態が維持され、吸気口IN11が開放されて(図示破線丸枠C21)、流体供給口12と第1流路KT1とが連通する(7a)。また、これにより、第2ステム82が空圧で上方に押し上げられ、第2ステム82の上端部82aが第1ステムの凹部81cに嵌入する。こうなると、第2ステム82が第1ステム81側に移動(図示黒塗り矢印)することにより、吸気口IN12が開放され(図示破線丸枠C22)、第1流路KT1とシリンダチューブ20の前段部20Fとも連通する(8d)。これらにより、流体供給口12からシリンダチューブ20の前段部20Fまでの給気経路R11(実線折れ線矢印)が開通する。
【0046】
また、バルブシステム7は、この状態で、吸気口IN2,IN3を封止する(図示破線丸枠C12)ことにより、流体供給口12と第2流路KT2との連通を遮断する(7c)とともに、排気口OUT2,OUT3を開放し(図示破線丸枠C23)、排気路HT2,HT3と連通させる(なお、このとき、第2流路KT2及び第3流路KT3の一部も、排気口OUT2,OUT3と連通する。)。これらにより、シリンダチューブ20の後段部20B内から排気口OUT2,OUT3まで連通する排気経路R13(破線折れ線矢印)が開通し、シリンダチューブ20の後段部20Bと外部とが連通する(7b)。また、スプレーノズル52の吐出口52sから排気口OUT2,OUT3まで連通する排気経路R12(破線折れ線矢印)が開通する。
【0047】
その結果、圧縮空気を本体部1の流体供給口12へ供給することにより、給気経路R11で送給された圧縮空気の空圧で、シリンダチューブ20の前段部20F内の容積が増大して、図5A乃至図5Cに白抜き矢印で示すように、ピストン24及びプランジャ26が後段側へ移動する。また、シリンダチューブ20の後段部20B内の容積は減少して、内部に残留していた空気は、排気経路R13を通して外部へ排気され、排気経路R12内の残留空気も常圧になるまで適宜外部へ排気され得る。
【0048】
次に、図6A乃至図6Cは、プランジャ26が第1位置(移動終点位置、初期位置、最後端位置)に戻ったときの状態を示す。このとき、プランジャ26は、第1ステム81をシリンダチューブ20の後段側へ押圧して移動させる(図示黒塗り矢印)。これにより、第1ステム81によって排気口OUT1が開放され(図示破線丸枠C11)、シリンダチューブ20の前段部20Fと、外部に通じる排気路HT1とが連通する(8a)。その結果、排気経路R21(実線折れ線矢印)が開通して、シリンダチューブ20の前段部20F内の空気が排気され始める。
【0049】
また、第1ステム81が、上述したようにシリンダチューブ20の後方側へ移動すると、第1ステム81の凹部81cも後方側へ移動し、第1ステム81の凹部81cに嵌入していた第2ステム82の上端部82aが凹部81cから押し出され、第2ステム82が下方へ(第1ステム81の反対側へ)移動する(図示黒塗り矢印)。これにより、吸気口IN12が封止され(図示破線丸枠C22)、第1流路KT1とシリンダチューブ20の前段部20Fとの連通が遮断される(8c)。
【0050】
それから、図7A乃至図7Cは、プランジャ26を第1位置(移動終点位置、初期位置、最後端位置)から前方へ移動させている途中の状態を示す。図6A乃至図6Cに示す状態からトリガ11をONにする(作業者がトリガを引く)と、バルブシステム7は、トリガ11側へ付勢されていた状態から、バネ71の押圧力に抗して軸方向後方へ移動する。これにより、バルブシステム7は、吸気口IN11を封止し(図示破線丸枠C21)、また、排気口OUT2,OUT3を封止し(図示破線丸枠C23)、且つ、吸気口IN2,IN3を開放する(図示破線丸枠C12)。これらにより、第3流路KT3を介して流体供給口12とシリンダチューブ20の後段部20Bとが連通するとともに、シリンダチューブ20の後段部20Bと外部との連通が遮断され(7e)、さらに、流体供給口12と第2流路KT2とが連通する(7f)。これらにより、流体供給口12からノズル52まで連通する給気経路R22(実線折れ線矢印)と、流体供給口12からシリンダチューブ20の後段部20Bまで連通する給気経路R23(実線折れ線矢印)が開通する。
【0051】
その結果、圧縮空気を本体部1の流体供給口12へ供給することにより、給気経路R23で送給された圧縮空気の空圧で、シリンダチューブ20の後段部20B内の容積が増大して、図7A乃至図7Cに白抜き矢印で示すように、ピストン24及びプランジャ26が前段側へ移動する。このとき、シリンダチューブ20の前段部20F内の残留空気は、排気経路R21を通して排気され続ける。これらにより、ホルダ筐体30のリテーナ33内において、フィルムパック40がプランジャ26によって徐々に押圧され、内部に収容されている吹付材の液体原料M1,M2がミキシングノズル5内へ押し出される。これらの液体原料M1,M2は、ミキシングノズル5内部の構造的な機能によって混合され、吹付材Fが形成される。そして、給気経路R22で送給された圧縮空気の空圧で、ミキシングノズル5内で形成された吹付材Fがスプレーノズル52の吐出口52sから外部へ吐出される。
【0052】
さらに、図8A及び図8Cは、ピストン24が第2位置(移動終点位置、終点位置、最前端位置)に到達したとき、すなわち、プランジャ26がフィルムパック40の押し出しを完了したときの状態を示す。このとき、図5A乃至図5Cの説明に先立って述べたように、ピストン24が第2位置に到達して、第1ステム81を、シリンダチューブ20の前方側へ押圧して移動させる(図示黒塗り矢印)。これにより、第1ステム81によって排気口OUT1が封止され(図示破線丸枠C11)、シリンダチューブ20の前段部20Fと外部との連通が遮断される(8b)。また、第1ステム81が、上述したようにシリンダチューブ20の前方側へ移動すると、第1ステム81の凹部81cも前方側へ移動し、第2ステム82の上方に第1ステムの凹部81cが位置するようになる。この状態から、トリガ11をOFFにすると、バルブシステム7が付勢方向に移動し、また、第2ステム82が上方に移動して、図5A乃至図5Cに示す状態となる。
【0053】
このように構成された本実施形態による吹付機100によれば、吹付材Fの液体原料M1,M2をスプレーノズル52へ押し出すためのプランジャ26の前後動作を、トリガ11のON/OFF操作による空圧駆動によって自動的に実施することができる。例えば、吹付材Fの液体原料M1,M2が収容されたフィルムパック型容器4を装着するには、トリガ11をOFFにすることにより、プランジャ26を空圧で第1位置(プランジャ26,26が後退してフィルムパック型容器4を取り付け可能な位置)へ移動させ得る。また、フィルムパック型容器4を装着した後、トリガ11をONにすることにより、プランジャ26を空圧で前段側へ移動させて、液体原料M1,M2をミキシングノズル5へ押し出して吹付材Fを形成させることができる。
【0054】
さらに、トリガ11をONにすることにより、同時に、スプレーノズル52に圧縮空気を送出して、吹付材Fを空圧で吐出口52sから吐出させることができる。それから、吹付材Fの吐出が完了した後、再び、トリガ11をOFFにすることにより、プランジャ26を所定の位置へ戻し、新たなフィルムパック型容器4を簡便に装着することができる。また、フィルムパック型容器4のなかから液体原料M1,M2がリテーナ33内に漏洩してしまった場合でも、リテーナ33をホルダ3から簡易に脱着できる。よって、リテーナ33の洗浄及び再設置を平易に実施することができる。またさらに、リテーナ33等として透光性(透明性)を有する部材を用いることにより、フィルムパック型容器4からの液体原料M1,M2の漏洩を常時監視することができ、漏洩を早期に発見することも可能となる。
【0055】
このとおり、本実施形態による吹付機100では、一連の吹付動作をトリガ11のON/OFF操作によって簡便に実施することができ、また、従来の複雑な操作のために必要であった各種部品を削減することができる。従って、吹付機100の軽量化及び小型化を実現することでき、作業者による片手での操作が可能となり、且つ、吹付機100及び容器等の取扱性及びメンテナンス(保守)性を向上させることもできる。その結果、作業者に対する十分な作業性(特に足場の良くない高所での作業性)を確保することが可能となる。
【0056】
(構成例2及び動作例2)
図9A及び図9Cは、他の一本実施形態に係る吹付機の一例の概略構成の一部を拡大して示す側面図であり、図9Bは、図9Aの更に一部を拡大して示す斜視図であり、図9Dは、図9Cに示す動作状態を模式的に示す平面図である。
【0057】
本実施形態による吹付機200は、シリンダ2とホルダ3との接合境界部に設けられたカバー部90と、第1ステム81が、レバー91及びプレート92を有すること以外は、既に説明した吹付機100と同等の構成を有するものである。なお、前述したとおり、それらの部材は、図5B図6B、及び図7Bにおいて既に表示のみしておいたものである。プレート92は、第1ステム81の一端側の先端部に設けられており、且つ、第1ステム81の径方向に突出している。また、レバー91は、シリンダチューブ20のシリンダ蓋部21と、第1ステム81の細径部の先端部に設置されたプレート92との間に配置されており、設置状態における下端側に行くほど厚さが薄くなる傾斜面が側壁に形成された干渉部91sを含んでいる。
【0058】
かかる構成を有する吹付機200の第1ステム81は、プランジャ26の動作が作業の途中で停止してしまったときに、圧縮空気の空圧により、プランジャ26を吹付機200の後段側の第1位置(移動終点位置、初期位置、最後端位置)へ移動させる機能を有する。第1ステム81において、シリンダチューブ20の前段部20Fからやや突出するレバー91の上端部は、作業者が押下することが可能である。
【0059】
すなわち、プランジャ26の動作が停止したときに、図9A及び図9Bに示す状態から、レバー91の上端部を押下すると、干渉部91sの傾斜面が、第1ステム81の細径部の先端部に設けられた突起部であるプレート92の内面(第1ステム81の太径部に対向する面)と摺動可能に干渉する。これにより、第1ステム81はプレート92とともに、シリンダチューブ20の前方側へ強制的に移動され、その結果、排気口OUT1が封止され、シリンダチューブ20の前段部20Fと、外部に通じる排気路HT1との連通が遮断される。この状態でトリガ11をOFFにすることにより、先述した図5A乃至図5Cに示したものと同等の状態が生起され、プランジャ26を第1位置に戻すことができる。
【0060】
ここで、プランジャ26の動作が途中停止する場合としては、例えば、吹付材Fの吹付途中で液体原料M1,M2の交換が生じた場合、液体原料M1,M2の粘性が本来的に高くて押し出しが困難な場合、作業中断時に吹付材Fが硬化してしまった場合、圧縮空気の供給圧が低下した場合、ピストン24、ピストンロッド25、プランジャ26等の部品動作に不具合が生じた場合等が挙げられる。こうなると、ピストン24には後段から空圧が印加されているため、プランジャ26を後段側に移動させて液体原料M1,M2を交換することができなくなってしまう。これに対し、吹付機200のように第1ステム81を構成することにより、圧縮空気の空圧によってプランジャ26を第1位置(移動終点位置、初期位置、最後端位置)へ復帰移動させることできる。その結果、吹付材Fの液体原料M1,M2を簡易に且つ迅速に交換することができるので、吹付機200及び容器等の取扱性及びメンテナンス性を更に一層向上させることが可能となる。
【0061】
以上、本開示の一例としての上記実施形態及び各実施例(変形例)について詳細に説明してきたが、上述したとおり、前述した説明はあらゆる点において本開示の一例を示すに過ぎず、本開示の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。また、上記実施形態及び上記各実施例(変形例)は、部分的に置換してもよく、適宜組み合わせて構成することも可能であり、さらに、各実施形態および各実施例(変形例)において適宜言及したような変更が可能である。
【0062】
例えば、吸気口IN2,IN3を兼用せず、別体に又は個別に設けてもよい。また、排気口OUT2,OUT3を兼用せず、別体に又は個別に設けてもよい。さらに、排気路HT2,HT3を兼用せず、別体に又は個別に設けてもよい。また、吹付材Fの液体原料は、2種類に限らない。さらに、吹付材F用の容器は、カートリッジ型容器でもよく、フィルムパックとリテーナの二重構造以外の多重構造であってもよい。さらに、トリガのON/OFF操作に代えて、又は、加えて、例えば、タッチ方式、音声方式、リモート方式等によるON/OFF操作を採用してもよい。また、適用場所によっては、圧縮空気容器(カセット式等)を更に搭載するように構成してもよい。さらに、流体は圧縮空気に限定されず、圧縮空気による空圧に代えて油圧や水圧等の圧力が作用する構成であってもよい。加えて、ノズルはミキシングノズル5とスプレーノズル52の組み合わせに限定されず、用途に応じて適宜のノズルを用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
1…本体部、2…シリンダ、3…ホルダ、4…フィルムパック型容器、5…ミキシングノズル(ノズル)、6…流路切替部、7…バルブシステム(第1切替部)、8…ステムシステム(第2切替部)、10…グリップ、11…トリガ、12…流体供給口、20…シリンダチューブ、20B…シリンダチューブの後段部、20F…シリンダチューブの前段部、21…シリンダ蓋部(端壁)、22…シリンダ蓋部、23…固定ロッド、24…ピストン、25…ピストンロッド、26…プランジャ、30…ホルダ筐体、31…一端、32…ホルダ蓋部、33…リテーナ、34…緩衝ガイド部材、35…エアチューブ、36…ノズルガイド、37…ストッパ、38…蝶番、39…ロックレバー、40…フィルムパック、41…封止具、42…ノズル取付部、42n…雄ネジ、51…雌ネジ部材、52…スプレーノズル(ノズル)、52a…接続部、52s…吐出口、71…バネ、81…第1ステム(第1バルブ)、81c…凹部、82…第2ステム(第2バルブ)、82a…上端部、90…カバー部、91…レバー、91s…干渉部、92…プレート、100,200…吹付機、D1…流量調整ダイヤル、D2…流量調整ダイヤル、F…吹付材、H1,H2…開口、HT1…排気路、HT2…排気路、HT3…排気路、IN11,IN12,IN2,IN3…吸気口、KT1…第1流路、KT2…第2流路、KT3…第3流路、M1,M2…液体原料、OUT1,OUT2…排気口、R11,R22,R23…給気経路,R12,R13,R21…排気経路、S7,S71,S72,S73,S74…シール部、S81,S82…シール部。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D