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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166981
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】レンズ形状の測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/213 20060101AFI20221027BHJP
   G01B 5/06 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
G01B5/213
G01B5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072454
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000162180
【氏名又は名称】共立精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 佳祐
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA27
2F062AA53
2F062CC23
2F062CC27
2F062EE03
2F062EE63
2F062GG09
2F062GG15
2F062HH05
2F062MM01
(57)【要約】
【課題】レンズの曲率半径及び中心厚さの双方を一つの装置で自動的かつ正確に測定することを可能にしたレンズ形状の測定装置及び測定方法を提供する。
【解決手段】レンズを挟んで保持する上下一対の上側デルタリング2及び下側デルタリング3と、下側デルタリング3に対して上側デルタリング2を昇降させるスライダー4と、スライダー4と上側デルタリング2との間に挿入されていて上側デルタリング2の変位を許容する変位許容機構5と、変位許容機構5による上側デルタリング2の変位を規制する変位規制機構6と、レンズの側面を把持してレンズの中心軸と下側デルタリング3の中心軸とが一致するようにレンズの位置を調整する位置決め機構7と、上側デルタリング2の直径と上側検出子8の突き出し量に基づいてレンズの曲率半径を算出すると共に、上側検出子8の突き出し量と下側検出子9の突き出し量に基づいてレンズの中心厚さを算出する演算手段を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを挟んで保持する上下一対の上側デルタリング及び下側デルタリングと、前記下側デルタリングに対して前記上側デルタリングを昇降させるスライダーと、該スライダーと前記上側デルタリングとの間に挿入されていて前記上側デルタリングの変位を許容する変位許容機構と、該変位許容機構による前記上側デルタリングの変位を規制する変位規制機構と、前記レンズの下側から前記下側デルタリングの中心軸方向に沿って進退自在に配設された下側検出子と、前記レンズの上側から前記上側デルタリングの中心軸方向に沿って進退自在に配設された上側検出子と、前記レンズの側面を把持して前記レンズの中心軸と前記下側デルタリングの中心軸とが一致するように前記レンズの位置を調整する位置決め機構と、前記上側デルタリングの直径と前記上側検出子の突き出し量に基づいて前記レンズの曲率半径を算出すると共に、前記上側検出子の突き出し量と前記下側検出子の突き出し量に基づいて前記レンズの中心厚さを算出する演算手段とを備えることを特徴とするレンズ形状の測定装置。
【請求項2】
前記変位許容機構が前記スライダーに対して弾性的に変位自在に構成された治具を有し、前記変位規制機構が前記治具に向かって固定用ピンを押し出す押出機構を有し、該押出機構が前記治具に対して固定用ピンを押し出すことにより前記変位規制機構が前記変位許容機構による前記上側デルタリングの変位を規制するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズ形状の測定装置。
【請求項3】
前記位置決め機構が左右一対の把持手段からなり、各把持手段が平面視でV字形状をなす把持部を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ形状の測定装置。
【請求項4】
レンズを挟んで保持する上下一対の上側デルタリング及び下側デルタリングと、前記下側デルタリングに対して前記上側デルタリングを昇降させるスライダーと、該スライダーと前記上側デルタリングとの間に挿入されていて前記上側デルタリングの変位を許容する変位許容機構と、該変位許容機構による前記上側デルタリングの変位を規制する変位規制機構と、前記レンズの下側から前記下側デルタリングの中心軸方向に沿って進退自在に配設された下側検出子と、前記レンズの上側から前記上側デルタリングの中心軸方向に沿って進退自在に配設された上側検出子と、前記レンズの側面を把持して前記レンズの中心軸と前記下側デルタリングの中心軸とが一致するように前記レンズの位置を調整する位置決め機構と、前記上側デルタリングの直径と前記上側検出子の突き出し量に基づいて前記レンズの曲率半径を算出すると共に、前記上側検出子の突き出し量と前記下側検出子の突き出し量に基づいて前記レンズの中心厚さを算出する演算手段とを備えた測定装置を使用し、
前記位置決め機構が前記レンズの側面を把持して前記レンズの中心軸と前記下側デルタリングの中心軸とが一致するように前記レンズの位置を調整し、
前記変位許容機構が前記上側デルタリングの変位を許容した状態で、前記スライダーの駆動により前記上側デルタリングと前記下側デルタリングとの間に前記レンズを挟み込む一方で、前記上側検出子を前記レンズの上面に当接させ、前記演算手段が前記上側デルタリングの直径と前記上側検出子の突き出し量に基づいて前記レンズの曲率半径を算出し、
前記変位規制機構が前記変位許容機構による前記上側デルタリングの変位を規制した状態で、前記スライダーの駆動により前記上側デルタリングと前記下側デルタリングとの間に前記レンズを挟み込む一方で、前記上側検出子及び前記下側検出子を前記レンズの上面及び下面に当接させ、前記演算手段が前記上側検出子の突き出し量と前記下側検出子の突き出し量に基づいて前記レンズの中心厚さを算出することを特徴とするレンズ形状の測定方法。
【請求項5】
前記変位許容機構が前記スライダーに対して弾性的に変位自在に構成された治具を有し、前記変位規制機構が前記治具に向かって固定用ピンを押し出す押出機構を有し、該押出機構が前記治具に対して固定用ピンを押し出すことにより前記変位規制機構が前記変位許容機構による前記上側デルタリングの変位を規制するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のレンズ形状の測定方法。
【請求項6】
前記位置決め機構が左右一対の把持手段からなり、各把持手段が平面視でV字形状をなす把持部を有していることを特徴とする請求項4又は5に記載のレンズ形状の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ形状の測定装置及び測定方法に関し、更に詳しくは、レンズの曲率半径及び中心厚さの双方を一つの装置で自動的かつ正確に測定することを可能にしたレンズ形状の測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学レンズを加工した後、レンズの形状として曲率半径や中心厚さを測定することが行われている(例えば、特許文献1参照)。このような測定作業は、加工済みレンズの品質を安定させるのに最も欠かせないものである。レンズの曲率半径に対してはリングスフェロメータが使用され、測定作業は手作業で行われている。また、レンズの中心厚さに対してはノギスやマイクロメータが使用され、測定作業は手作業で行われている。
【0003】
しかしながら、このような手作業による測定では、誤って測定してしまうことや測定された数値を誤って装置に入力してしまうといったリスクがある。また、測定された数値を装置に入力する際に装置を一旦停止して入力作業を行う必要があるため、生産性が悪化するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-206903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、レンズの曲率半径及び中心厚さの双方を一つの装置で自動的かつ正確に測定することを可能にしたレンズ形状の測定装置及び測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明のレンズ形状の測定装置は、レンズを挟んで保持する上下一対の上側デルタリング及び下側デルタリングと、前記下側デルタリングに対して前記上側デルタリングを昇降させるスライダーと、該スライダーと前記上側デルタリングとの間に挿入されていて前記上側デルタリングの変位を許容する変位許容機構と、該変位許容機構による前記上側デルタリングの変位を規制する変位規制機構と、前記レンズの下側から前記下側デルタリングの中心軸方向に沿って進退自在に配設された下側検出子と、前記レンズの上側から前記上側デルタリングの中心軸方向に沿って進退自在に配設された上側検出子と、前記レンズの側面を把持して前記レンズの中心軸と前記下側デルタリングの中心軸とが一致するように前記レンズの位置を調整する位置決め機構と、前記上側デルタリングの直径と前記上側検出子の突き出し量に基づいて前記レンズの曲率半径を算出すると共に、前記上側検出子の突き出し量と前記下側検出子の突き出し量に基づいて前記レンズの中心厚さを算出する演算手段とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明のレンズ形状の測定方法は、レンズを挟んで保持する上下一対の上側デルタリング及び下側デルタリングと、前記下側デルタリングに対して前記上側デルタリングを昇降させるスライダーと、該スライダーと前記上側デルタリングとの間に挿入されていて前記上側デルタリングの変位を許容する変位許容機構と、該変位許容機構による前記上側デルタリングの変位を規制する変位規制機構と、前記レンズの下側から前記下側デルタリングの中心軸方向に沿って進退自在に配設された下側検出子と、前記レンズの上側から前記上側デルタリングの中心軸方向に沿って進退自在に配設された上側検出子と、前記レンズの側面を把持して前記レンズの中心軸と前記下側デルタリングの中心軸とが一致するように前記レンズの位置を調整する位置決め機構と、前記上側デルタリングの直径と前記上側検出子の突き出し量に基づいて前記レンズの曲率半径を算出すると共に、前記上側検出子の突き出し量と前記下側検出子の突き出し量に基づいて前記レンズの中心厚さを算出する演算手段とを備えた測定装置を使用し、前記位置決め機構が前記レンズの側面を把持して前記レンズの中心軸と前記下側デルタリングの中心軸とが一致するように前記レンズの位置を調整し、前記変位許容機構が前記上側デルタリングの変位を許容した状態で、前記スライダーの駆動により前記上側デルタリングと前記下側デルタリングとの間に前記レンズを挟み込む一方で、前記上側検出子を前記レンズの上面に当接させ、前記演算手段が前記上側デルタリングの直径と前記上側検出子の突き出し量に基づいて前記レンズの曲率半径を算出し、前記変位規制機構が前記変位許容機構による前記上側デルタリングの変位を規制した状態で、前記スライダーの駆動により前記上側デルタリングと前記下側デルタリングとの間に前記レンズを挟み込む一方で、前記上側検出子及び前記下側検出子を前記レンズの上面及び下面に当接させ、前記演算手段が前記上側検出子の突き出し量と前記下側検出子の突き出し量に基づいて前記レンズの中心厚さを算出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、レンズを挟んで保持する上下一対の上側デルタリング及び下側デルタリングと、下側デルタリングに対して上側デルタリングを昇降させるスライダーと、スライダーと上側デルタリングとの間に挿入されていて上側デルタリングの変位を許容する変位許容機構と、変位許容機構による上側デルタリングの変位を規制する変位規制機構と、レンズの下側から下側デルタリングの中心軸方向に沿って進退自在に配設された下側検出子と、レンズの上側から上側デルタリングの中心軸方向に沿って進退自在に配設された上側検出子と、レンズの側面を把持してレンズの中心軸と下側デルタリングの中心軸とが一致するようにレンズの位置を調整する位置決め機構と、上側デルタリングの直径と上側検出子の突き出し量に基づいてレンズの曲率半径を算出すると共に、上側検出子の突き出し量と下側検出子の突き出し量に基づいてレンズの中心厚さを算出する演算手段とを備えているので、レンズの曲率半径を算出する際には、変位許容機構が上側デルタリングの変位を許容することによって、上側デルタリングがレンズの形状に追従することができる一方で、レンズの中心厚さを算出する際には、変位規制機構が変位許容機構による上側デルタリングの変位を規制することによって、上側デルタリングをスライダーに対して固定することができる。これにより、変位許容機構が上側デルタリングの変位を許容した状態で、レンズの曲率半径を算出することができると共に、変位規制機構が変位許容機構による上側デルタリングの変位を規制した状態で、レンズの中心厚さを算出することができるのである。このようにして、従来、作業者(人手)により別々に行われていた測定作業を一つの装置上で行うことができ、レンズの曲率半径及び中心厚さの双方を自動的かつ正確に測定することができる。また、従来の作業者(人手)による測定作業と比べて誤測定や誤入力が無くなると共に、入力作業に伴って装置を停止する必要が無くなるため、生産性を向上させることができる。
【0009】
本発明のレンズ形状の測定装置又は測定方法において、変位許容機構はスライダーに対して弾性的に変位自在に構成された治具を有し、変位規制機構は治具に向かって固定用ピンを押し出す押出機構を有し、押出機構は治具に対して固定用ピンを押し出すことにより変位規制機構が変位許容機構による上側デルタリングの変位を規制するように構成されていると良い。
【0010】
位置決め機構は左右一対の把持手段からなり、各把持手段は平面視でV字形状をなす把持部を有していることが好ましい。これにより、レンズの中心軸を所定の位置に正確に配置することができるので、レンズ形状の正確な測定に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態からなるレンズ形状の測定装置を示す斜視図である。
図2図1のレンズ形状の測定装置の要部を拡大して示す斜視図である。
図3図1のレンズ形状の測定装置におけるレンズを把持した状態を示す正面図である。
図4図1のレンズ形状の測定装置におけるレンズを把持した状態を示す断面図である。
図5図1のレンズ形状の測定装置を示す平面図である。
図6】本発明の実施形態からなるレンズ形状の測定装置における把持手段の一例を示す平面図である。
図7】本発明の実施形態からなるレンズ形状の測定装置を用いてレンズの形状を測定する際のフローチャートを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1図5は本発明の実施形態からなるレンズ形状の測定装置を示すものである。
【0013】
図1図5に示すように、レンズ形状の測定装置10の機台10Aには、測定対象のレンズ1を保持するための下側デルタリング3が固定されている。この下側デルタリング3と共にレンズ1を保持する上側デルタリング2がスライダー4に対して配設されている。このスライダー4は、下側デルタリング3に対して上側デルタリング2を鉛直方向に沿って昇降させるものである。スライダー4と上側デルタリング2との間には、上側デルタリング2の変位を許容するための変位許容機構5が挿入されている。更に、スライダー4には、変位許容機構5による上側デルタリング2の変位を規制するための変位規制機構6が配設されている。また、機台10Aには、レンズ1の側面1cを把持してレンズ1の位置を調整するための位置決め機構7が配設されている。
【0014】
このようなレンズ形状の測定装置10において、上側デルタリング2及び下側デルタリング3は、レンズ1の曲率半径及び中心厚さを測定するための測定器を構成する。上側デルタリング2及び下側デルタリング3は、いずれも環状であって外周部がレンズ1に向かって突出した形状を有している。上側デルタリング2の外周部の端面2aはレンズ1の上面1aに当接し、下側デルタリング3の外周部の端面3aはレンズ1の下面1bに当接し、両者がレンズ1を両側から挟むようにしてレンズ1を保持した状態でレンズ1の形状は測定される。
【0015】
また、上側デルタリング2及び下側デルタリング3の中央部には、それぞれ上側検出子8及び下側検出子9が配置されている。具体的には、上側デルタリング2と上側検出子8とは同軸的に配設され、下側デルタリング3と下側検出子9とは同軸的に配設されている。また、上側デルタリング2と上側検出子8は後述する治具51に対して一体的に固定されており、上側デルタリング2と上側検出子8とは一体的に変位する。また、下側デルタリング3と下側検出子9は機台10Aに対して一体的に固定されている。このように上側デルタリング2及び上側検出子8と、下側デルタリング3及び下側検出子9とを組み合わせることで、レンズ1の曲率半径及び中心厚さを測定することができる。
【0016】
上側検出子8及び下側検出子9は、それぞれ上側デルタリング2及び下側デルタリング3に対する突き出し量を検出する検出子である。上側検出子8及び下側検出子9として、例えば接触式のデジタルセンサを用いることができる。これら上側検出子8及び下側検出子9は、それぞれ上側デルタリング2及び下側デルタリング3の中心軸方向に沿って進退自在に構成されている。即ち、上側検出子8は常に下方に向かって付勢する構造を有し、下側検出子9は常に上方に向かって付勢する構造を有しており、上側デルタリング2及び下側デルタリング3がレンズ1を保持した状態において、上側検出子8の先端部はレンズ1の上面1aと当接する一方で、下側検出子9の先端部はレンズ1の下面1bと当接するようになっている。なお、図1に示すように、上側デルタリング2及び下側デルタリング3がレンズ1を保持していない場合、上側検出子8及び下側検出子9はそれぞれ上側デルタリング2及び下側デルタリング3から突出した状態である。
【0017】
スライダー4は、略L字形状を有する支持部材(プレート)であり、水平方向に延在する水平プレート41と、水平プレート41の端部から鉛直方向に延在する鉛直プレート42からなる。水平プレート41には変位許容機構5及び変位規制機構6が取り付けられており、鉛直プレート42は、駆動装置(不図示)により鉛直方向に沿って移動するガイド部材45に固定されている。このガイド部材45は、機台10A上に鉛直方向に沿って立設された柱部材46のレール上を昇降するように構成されている。また、水平プレート41には、その厚さ方向に貫通する複数の貫通孔43,44が設けられている。貫通孔43は、後述するボルト52を挿通するための孔であり、貫通孔44は、後述する固定用ピン62を挿通するための孔である。貫通孔43の内径はボルト52の外径よりも大きくなっている。また、スライダー4は、上側デルタリング2がレンズ1の上面1aに当接した際に停止するように構成されている。例えば、加速度センサ等を用いることにより、上側デルタリング2がレンズ1の上面1aに当接したことを検知可能に構成することができる。或いは、レンズ1に応じたスライダー4の位置をレンズ形状の測定装置10に記録させて動作させることにより、スライダー4が停止するように構成しても良い。
【0018】
変位許容機構5は、上側デルタリング2を搭載する円板状の治具51と、スライダー4に対して治具51を連結する複数本のボルト52と、スライダー4と治具51との間で各ボルト52を取り囲むように配置された複数本のバネ部材53とを有している。ボルト52を挿入するために治具51に形成されたボルト孔55の内径はボルト52の外径よりも大きくなっている。そのため、上側デルタリング2はスライダー4に対して変位自在である。また、スライダー4と治具51との間にはバネ部材53が挿入されているため、通常は上側デルタリング2がスライダー4に対して変位しない状態になっているが、上側デルタリング2がレンズ1に当接した際にはレンズ1の形状に応じて上側デルタリング2が弾性的に変位するようになっている。このように上側デルタリング2がレンズ1に当接した際には、バネ部材53により上側デルタリング2がレンズ1の上面1aに対して追従する。即ち、変位許容機構5は、上側デルタリング2の鉛直方向及び水平方向の変位を許容することが可能になる。これはレンズ1の曲率半径を測定する工程において好適に作用する。また、治具51には、後述する固定用ピン62の先端部に嵌合する複数の孔54が設けられている。
【0019】
変位規制機構6は、治具51に向かって固定用ピン62を押し出すように構成された複数の押出機構61を有している。これら押出機構61は、いずれも水平プレート41の上部に配設されている。押出機構61により押し出された固定用ピン62は、水平プレート41に形成された貫通孔44を通って治具51に形成された孔54に嵌合するようになっている。即ち、押出機構61は、治具51に向かって固定用ピン62を押し出すことにより、治具51(上側デルタリング2)をスライダー4に対して固定することができる。このような変位規制機構6を備えることで、変位許容機構5による上側デルタリング2の変位を規制することが可能になる。これはレンズ1の中心厚さを測定する工程において好適に作用する。なお、固定用ピン62は円錐形の先端部を有し、治具51に形成された孔54も円錐形に加工されているので、孔54に固定用ピン62の先端部が挿入された際に治具51の水平方向の位置が補正されるようになっている。
【0020】
位置決め機構7は、レンズ1の側面1cを把持する左右一対の把持手段71を有している。これら把持手段71は、水平方向に沿って移動可能に構成されており、移動する際、互いに同方向(近接する方向又は離間する方向)に同じ変位量で移動するように構成されている。この把持手段71の動作により、レンズ1の中心軸と下側デルタリング3の中心軸とが一致するようにレンズ1の位置を調整することができる。このような位置決め機構7を備えることで、レンズ1の側面1cを把持してレンズ1を適切な位置に移動させることが可能になる。
【0021】
このような位置決め機構7において、左右一対の把持手段71は、図6に示すように、それぞれが平面視で略V字形状の把持部72を有していると良い。即ち、把持部72は、その先端部がレンズ1に向かって二股に分かれ、一対の把持部72が互いの先端部を突き合わすように配置されていると良い。このように把持手段71が構成されていることで、レンズ1の中心軸を所定の位置に正確に配置することができるので、レンズ形状の正確な測定に寄与する。特に、下側デルタリング3の上に載置されたレンズ1の位置が適切でない場合、把持手段71がレンズ1に向かって移動することでズレが修正され、レンズ1の中心軸と下側デルタリング3の中心軸とが一致するように正確に配置することができる。
【0022】
演算手段は、上側検出子8及び下側検出子9により測定された測定値に基づいて、レンズ1の曲率半径及び中心厚さを算出する。具体的に、演算手段は、上側デルタリング2の直径と上側検出子8の突き出し量に基づいて、レンズ1の曲率半径を算出すると共に、上側検出子8の突き出し量と下側検出子9の突き出し量に基づいて、レンズ1の中心厚さを算出する。演算手段は、例えばメモリやCPUのような演算装置として、レンズ形状の測定装置10に搭載されている。
【0023】
上述した変位許容機構5と変位規制機構6は、レンズ1の曲率半径及び中心厚さを測定する際に適宜切り替えられるように構成されている。このような切り替えは、レンズ形状の測定装置10に搭載される不図示の制御装置により実行される。また、該制御装置は、スライダー4や位置決め機構7等の他の構成の動作を制御すると共に、レンズ1の曲率半径及び中心厚さを算出する演算装置としても機能するように構成することができる。
【0024】
上述したレンズ形状の測定装置10を用いてレンズ1の曲率半径及び中心厚さの測定方法について以下に説明する。図7に示すように、ステップS1において、人手により或いは自動搬送装置を用いて、レンズ1を下側デルタリング3の上に載置する。その際、レンズ1によって下側検出子9は下方に押し込まれ、その下側検出子9の先端部はレンズ1の下面1bと当接した状態となっている。
【0025】
ステップS2において、位置決め機構7を構成する把持手段71がレンズ1の側面1cを左右両側から把持する。把持手段71によってレンズ1の把持が完了すると、レンズ1の中心軸と下側デルタリング3の中心軸とが一致した状態となる。即ち、ステップS3のレンズ1の位置が確定した状態となる。なお、この状態では、下側デルタリング3の全周がレンズ1の下面1bと接触している。
【0026】
ステップS4において、スライダー4が初期位置から下降し、上側デルタリング2がレンズ1の上面1aに当接すると、スライダー4が停止する。その際、変位許容機構5が上側デルタリング2の変位を許容するようになっている。具体的には、変位許容機構5を構成するバネ部材53により上側デルタリング2がレンズ1の形状に応じて弾性的に変位するので、上側デルタリング2がレンズ1の上面1aに対して追従することができる。これにより、上側デルタリング2(治具51)の傾きが調整されて、上側デルタリング2の全周がレンズ1の上面1aと接触した状態になる。
【0027】
これに対して、従来のように手作業でリングスフェロメータをレンズに押し当てる場合には、リングスフェロメータの全周がレンズに当接するように手で傾きを調整しており、その際にレンズの中心軸とリングスフェロメータの中心軸が僅かにズレて正確な測定を行えないことがある。本発明では、上述のように変位許容機構5が上側デルタリング2の変位を許容することで、上側デルタリング2の傾きが適宜調整されて、上側デルタリング2の全周をレンズ1の上面1aに当接させることができる。
【0028】
ステップS5において、上側デルタリング2及び下側デルタリング3がレンズ1を保持した状態で、演算手段が上側デルタリング2の直径と上側検出子8の突き出し量に基づいてレンズ1の曲率半径を算出する。
【0029】
ステップS6において、変位規制機構6は、図4に示すように変位許容機構5による上側デルタリング2の変位を規制する。具体的には、押出機構61が治具51に向かって固定用ピン62を押し出すことにより、押し出された固定用ピン62が水平プレート41に形成された貫通孔44を通って治具51に形成された孔54に嵌合するので、上側デルタリング2がスライダー4に対して固定された状態となる。この孔54に固定用ピン62が嵌合した状態は、レンズ1の中心厚さを測定する間、維持される。
【0030】
なお、ステップS6で変位規制機構6が変位許容機構5による上側デルタリング2の変位を規制した状態(図4参照)では、レンズ1、上側デルタリング2、下側デルタリング3、上側検出子8及び下側検出子9の全ての中心軸が一致した状態となっている。
【0031】
ステップS7において、上側デルタリング2及び下側デルタリング3がレンズ1を保持した状態で、演算手段は、上側検出子8の突き出し量と下側検出子9の突き出し量に基づいて、レンズ1の中心厚さを算出する。その際、レンズ1の中心厚さは、スライダー4の初期位置からの移動量も加味して算出される。他の算出方法として、マスターレンズを用いた場合における上側検出子8の突き出し量、下側検出子9の突き出し量、後述する検出子100の突き出し量及びスライダー4の位置を予めレンズ形状の測定装置10に登録しておき、演算手段は、その登録された数値を基準として、レンズ1とマスターレンズとの差分を換算し、レンズ1の中心厚さを算出することもできる。
【0032】
上述したレンズ形状の測定装置では、レンズ1を挟んで保持する上下一対の上側デルタリング2及び下側デルタリング3と、下側デルタリング3に対して上側デルタリング2を昇降させるスライダー4と、スライダー4と上側デルタリング2との間に挿入されていて上側デルタリング2の変位を許容する変位許容機構5と、変位許容機構5による上側デルタリング2の変位を規制する変位規制機構6と、レンズ1の下側から下側デルタリング3の中心軸方向に沿って進退自在に配設された下側検出子9と、レンズ1の上側から上側デルタリング2の中心軸方向に沿って進退自在に配設された上側検出子8と、レンズ1の側面1cを把持してレンズ1の中心軸と下側デルタリング3の中心軸とが一致するようにレンズ1の位置を調整する位置決め機構7と、上側デルタリング2の直径と上側検出子8の突き出し量に基づいてレンズ1の曲率半径を算出すると共に、上側検出子8の突き出し量と下側検出子9の突き出し量に基づいてレンズ1の中心厚さを算出する演算手段とを備えているので、レンズ1の曲率半径を算出する際には、変位許容機構5が上側デルタリング2の変位を許容することによって、上側デルタリング2がレンズ1の形状に追従することができる一方で、レンズ1の中心厚さを算出する際には、変位規制機構6が変位許容機構5による上側デルタリング2の変位を規制することによって、上側デルタリング2をスライダー4に対して固定することができる。これにより、変位許容機構5が上側デルタリング2の変位を許容した状態で、レンズ1の曲率半径を算出することができると共に、変位規制機構6が変位許容機構5による上側デルタリング2の変位を規制した状態で、レンズ1の中心厚さを算出することができるのである。その結果、従来、作業者(人手)により別々に行われていた測定作業を一つの装置上で行うことができ、レンズ1の曲率半径及び中心厚さの双方を自動的かつ正確に測定することができる。また、従来の作業者(人手)による測定作業と比べて誤測定や誤入力が無くなると共に、入力作業に伴って装置を停止する必要が無くなるため、生産性を向上させることができる。
【0033】
上記レンズ形状の測定装置において、スライダー4を構成する水平プレート41に対して検出子100を配設すると良い。スライダー4により上側デルタリング2を昇降させる際に、スライダー4が本来移動すべき位置に対して僅かなズレ(繰り返し誤差)を生じることがあるが、検出子100は、このような繰り返し誤差を検出するものである。検出子100により測定された測定値(繰り返し誤差)を補正することで、スライダー4が移動する際に、スライダー4が必ず所定の位置に移動するように構成することができる。また、検出子100により測定された測定値は、演算手段がレンズ1の中心厚さを算出する際にも利用することができ、この場合、検出子100による測定値も考慮されるので、レンズ1の中心厚さをより正確に算出することができる。
【0034】
本発明に係るレンズ形状の測定装置は、レンズの加工装置と組み合わせることにより、レンズ加工全体の自動化を実現可能なシステムを構築することができる。この場合、本発明に係るレンズ形状の測定装置10、レンズの加工装置及び自動搬送装置を備えた構成にすると良い。また、本発明に係るレンズ形状の測定装置10により測定された測定データをレンズの加工装置にフィードバックし、レンズを再加工する際に補正値として使用することで、レンズの加工精度をより一層向上させることができる。
【0035】
上述した実施形態では、押出機構61が水平プレート41の上部に配設された例を示したが、これに限定されるものではなく、押出機構61を水平プレート41の下部に配置することもできる。
【0036】
1 レンズ
1a 上面
1b 下面
1c 側面
2 上側デルタリング
3 下側デルタリング
4 スライダー
5 変位許容機構
6 変位規制機構
7 位置決め機構
8 上側検出子
9 下側検出子
10 レンズ形状の測定装置
41 水平プレート
42 鉛直プレート
43,44 貫通孔
45 ガイド部材
46 柱部材
51 治具
52 ボルト
53 バネ部材
54 孔
55 ボルト孔
61 押出機構
62 固定用ピン
71 把持手段
72 把持部
100 検出子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7