(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166983
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】亜鉛末製造装置及び亜鉛末の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 9/12 20060101AFI20221027BHJP
C22C 1/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B22F9/12 Z
C22C1/02 503M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072457
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000174932
【氏名又は名称】日本ペイント防食コーティングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390027409
【氏名又は名称】東洋亜鉛株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】橋本 久信
(72)【発明者】
【氏名】池平 猛
【テーマコード(参考)】
4K017
【Fターム(参考)】
4K017AA03
4K017BA01
4K017EA02
4K017EG04
(57)【要約】
【課題】亜鉛末の製造にかかるエネルギーコストを低減でき、かつ生産効率に優れた亜鉛末製造装置及び亜鉛末の製造方法を提供すること。
【解決手段】精錬された溶融亜鉛を貯留する溶融亜鉛貯留槽と、亜鉛末を製造する亜鉛末製造炉と、溶融亜鉛貯留槽から亜鉛末製造炉へと、精錬された溶融亜鉛を溶融状態で搬送可能な溶融亜鉛搬送手段と、を備える、亜鉛末製造装置。精錬された溶融亜鉛を、溶融状態で亜鉛末製造炉に搬送することで、亜鉛末製造にかかるエネルギーコストを低減できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精錬された溶融亜鉛を貯留する溶融亜鉛貯留槽と、
亜鉛末を製造する亜鉛末製造炉と、
前記溶融亜鉛貯留槽から前記亜鉛末製造炉へと、前記精錬された溶融亜鉛を溶融状態で搬送可能な溶融亜鉛搬送手段と、を備える、亜鉛末製造装置。
【請求項2】
亜鉛インゴット製造設備を更に備え、
前記溶融亜鉛搬送手段は、前記溶融亜鉛貯留槽から前記亜鉛インゴット製造設備へと前記精錬された溶融亜鉛を搬送可能である、請求項1に記載の亜鉛末製造装置。
【請求項3】
前記溶融亜鉛搬送手段は、
前記精錬された溶融亜鉛を汲み上げ可能かつ搬送可能な溶融亜鉛供給装置と、
前記精錬された溶融亜鉛が前記亜鉛末製造炉へと流通する流路と、を有する、請求項1又は2に記載の亜鉛末製造装置。
【請求項4】
前記流路は、傾斜角が調整可能な樋部からなる、請求項3に記載の亜鉛末製造装置。
【請求項5】
前記流路は、前記溶融亜鉛供給装置から前記精錬された溶融亜鉛が供給される第1の流路下面と、前記精錬された溶融亜鉛が前記亜鉛末製造炉へと流入する第2の流路下面と、を有し、
前記第2の流路下面は、前記第1の流路下面よりも下方に傾斜する、請求項3又は4に記載の亜鉛末製造装置。
【請求項6】
前記亜鉛末製造炉は、溶融亜鉛投入口と、揮発炉と、を有し、
前記溶融亜鉛投入口及び前記揮発炉は、耐火煉瓦により一体に形成される、請求項1~5のいずれかに記載の亜鉛末製造装置。
【請求項7】
原料亜鉛を精錬し溶融亜鉛を製造する精錬溶融工程と、
前記精錬溶融工程により精錬された前記溶融亜鉛を溶融状態で搬送する搬送工程と、
前記溶融亜鉛を蒸発させて亜鉛蒸気を生成する亜鉛蒸気生成工程と、
前記亜鉛蒸気を冷却して亜鉛末を生成する冷却工程と、をこの順に備える、亜鉛末の製造方法。
【請求項8】
前記亜鉛蒸気生成工程及び前記冷却工程に代えて、亜鉛インゴットを製造する亜鉛インゴット製造工程を選択可能である、請求項7に記載の亜鉛末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛末製造装置及び亜鉛末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、亜鉛末の製造装置として、亜鉛インゴット等の亜鉛地金を溶融する溶融室と、溶融された溶融亜鉛を蒸発させる蒸発室と、を備える亜鉛末製造装置が知られている。亜鉛末の原料となる亜鉛インゴット等の亜鉛地金は、亜鉛鉱石等の原料を乾式法(蒸留法)や湿式法(電解採取法)により精錬して得られる溶融亜鉛を冷却、成形することで得られる。蒸発室で気化された亜鉛蒸気は、不活性ガス雰囲気下で冷却、凝縮され、更に分級されることで、所定の粒径を有する亜鉛末が得られる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、亜鉛末の生産量を調整するため、特許文献1に記載の装置のように、精錬された溶融亜鉛を一度亜鉛インゴットや亜鉛地金の状態を経由してから再度溶融させて亜鉛末を製造していた。しかし、上記の方法では、亜鉛インゴットを溶融するために膨大なエネルギーコストが必要となる。更に、亜鉛インゴットが溶融するまでに長時間を要するため、装置を起動してから亜鉛末が製造されるまでの時間が長く、生産効率が悪いという課題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、亜鉛末の製造にかかるエネルギーコストを低減でき、かつ生産効率に優れた亜鉛末製造装置及び亜鉛末の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明は、精錬された溶融亜鉛を貯留する溶融亜鉛貯留槽と、亜鉛末を製造する亜鉛末製造炉と、前記溶融亜鉛貯留槽から前記亜鉛末製造炉へと、前記精錬された溶融亜鉛を溶融状態で搬送可能な溶融亜鉛搬送手段と、を備える、亜鉛末製造装置に関する。
【0007】
(2) 亜鉛インゴット製造設備を更に備え、前記溶融亜鉛搬送手段は、前記溶融亜鉛貯留槽から前記亜鉛インゴット製造設備へと前記精錬された溶融亜鉛を搬送可能である、(1)に記載の亜鉛末製造装置。
【0008】
(3) 前記溶融亜鉛搬送手段は、前記精錬された溶融亜鉛を汲み上げ可能かつ搬送可能な溶融亜鉛供給装置と、前記精錬された溶融亜鉛が前記亜鉛末製造炉へと流通する流路と、を有する、(1)又は(2)に記載の亜鉛末製造装置。
【0009】
(4) 前記流路は、傾斜角が調整可能な樋部からなる、(3)に記載の亜鉛末製造装置。
【0010】
(5) 前記流路は、前記溶融亜鉛供給装置から前記精錬された溶融亜鉛が供給される第1の流路下面と、前記精錬された溶融亜鉛が前記亜鉛末製造炉へと流入する第2の流路下面と、を有し、前記第2の流路下面は、前記第1の流路下面よりも下方に傾斜する、(3)又は(4)に記載の亜鉛末製造装置。
【0011】
(6) 前記亜鉛末製造炉は、溶融亜鉛投入口と、揮発炉と、を有し、前記溶融亜鉛投入口及び前記揮発炉は、耐火煉瓦により一体に形成される、(1)~(5)のいずれかに記載の亜鉛末製造装置。
【0012】
(7) また、本発明は、原料亜鉛を精錬し溶融亜鉛を製造する精錬溶融工程と、前記精錬溶融工程により精錬された前記溶融亜鉛を溶融状態で亜鉛末製造炉へ搬送する搬送工程と、前記溶融亜鉛を蒸発させて亜鉛蒸気を生成する亜鉛蒸気生成工程と、前記亜鉛蒸気を冷却して亜鉛末を生成する冷却工程と、をこの順に備える、亜鉛末の製造方法に関する。
【0013】
(8) 前記亜鉛蒸気生成工程及び前記冷却工程に代えて、亜鉛インゴットを製造する亜鉛インゴット製造工程を選択可能である、(7)に記載の亜鉛末の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、亜鉛末の製造にかかるエネルギーコストを低減でき、かつ生産効率に優れた亜鉛末製造装置及び亜鉛末の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る亜鉛末製造装置の概要を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る溶融亜鉛搬送手段を示す垂直断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る亜鉛末製造炉を示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態の記載に限定されない。
【0017】
<亜鉛末製造装置>
本実施形態に係る亜鉛末製造装置1は、
図1に示すように、溶融亜鉛貯留槽30と、溶融亜鉛搬送手段40と、亜鉛末製造炉50と、亜鉛インゴット製造設備60と、を備える。溶融亜鉛貯留槽には、精錬炉20により精錬された溶融亜鉛が供給されて貯留される。
【0018】
(精錬炉)
精錬炉20は、原料から精錬された溶融亜鉛を製造する。精錬炉20は、主に亜鉛精鉱を精錬する一次精錬を行うものであってもよいし、再生原料を溶融分離にて精錬する二次精錬を行うものであってもよい。精錬炉20は、精錬亜鉛が溶融状態で得られる二次精錬を行うものであることが好ましい。上記精錬された溶融亜鉛を製造できる精錬炉20としては、公知の精錬炉を使用できる。
【0019】
一次精錬を行う精錬炉20では、まず、原料から不純物を取り除く処理をして製造される、亜鉛分が50%程度の亜鉛精鉱が製造される。そして、亜鉛精鉱を、亜鉛精鉱を焙焼させ亜鉛焼結鉱とした後、乾式法(蒸留法)や湿式法(電解採取法)により精錬することで、精錬された亜鉛が得られる。乾式法(蒸留法)は、亜鉛焼結鉱をコークスと混合加熱し、沸点(907℃)の低い亜鉛だけを分溜する方法である。分溜された蒸発亜鉛を、液体鉛を使用し、溶融鉛とした後、亜鉛の融点以下かつ、鉛の融点以上の温度まで温度を低下させることで、精錬亜鉛が得られる。なお、上記工程の後に、分離された精錬亜鉛を更に高純度化するために電解精錬が行われる場合もある。湿式法(電解採取法)は、亜鉛焼結鉱を硫酸等に溶解させて溶液とした後、溶液中の鉄やCa、Ni、Coを分離し、この溶液を電解精錬することで電極に付着した精錬亜鉛を回収する方法である。一次精錬を行う精錬炉20では、固形の精錬亜鉛が得られるため、インゴット等を製造するためには、精錬亜鉛を溶融させる必要がある。
【0020】
二次精錬を行う精錬炉20は、再生原料である、メッキ工場等から発生する亜鉛ドロス、滓類や亜鉛屑等から溶融分離にて精錬された溶融亜鉛を製造する。二次精錬を行う精錬炉20では、精錬亜鉛は溶融状態で得られる。
【0021】
(溶融亜鉛貯留槽)
溶融亜鉛貯留槽30は、精錬炉20で製造された溶融亜鉛を貯留する槽である。このような溶融亜鉛貯留槽30としては、特に限定されず、例えば、耐熱性及び耐火性を有する本体部を備え、また溶融亜鉛の温度調節手段や流動手段、不活性ガス供給手段等を任意に備える公知の貯留槽を使用できる。
【0022】
(溶融亜鉛搬送手段)
溶融亜鉛搬送手段40は、溶融亜鉛貯留槽30に貯留された溶融亜鉛を、溶融状態で亜鉛末製造炉50及びインゴット製造設備60に搬送可能である。本実施形態に係る溶融亜鉛搬送手段40は、溶融亜鉛を汲み上げ可能かつ搬送可能な溶融亜鉛供給装置41と、溶融亜鉛供給装置41から供給される溶融亜鉛が亜鉛末製造炉50へと流通する流路である樋部42と、を含む。
【0023】
[溶融亜鉛供給装置]
溶融亜鉛供給装置41は、特に限定されないが、例えば、ロボットアームやクレーン等により構成される本体部と、本体部に回動可能に支持される、上部が開口する汲み上げ槽と、を有する。溶融亜鉛供給装置41の汲み上げ槽は、溶融亜鉛貯留槽30と亜鉛末製造炉50との間、及び溶融亜鉛貯留槽30とインゴット製造設備60との間を移動可能である。溶融亜鉛供給装置41の汲み上げ槽は、本体部がロボットアームである場合、地面に固定されたロボットアームが動作することにより移動可能である。本体部がクレーンである場合、汲み上げ槽は、クレーンが設備間に敷設された軌道上を移動することで移動可能であってもよい。
【0024】
溶融亜鉛供給装置41は、手動又は予め定められた自動操作によって、例えば以下のように動作する。溶融亜鉛供給装置41は、溶融亜鉛貯留槽30の汲み出し口の上部に移動された後、汲み上げ槽の一部が溶融亜鉛中に浸漬するように移動する。次に、上記移動中又は上記浸漬後に汲み上げ槽が回動されて、開口部から汲み上げ槽の内部へと溶融亜鉛が流入する。そして、汲み上げ槽の内部に溶融亜鉛を貯留可能となるように、開口部が上方を向く位置に汲み上げ槽が回動される。溶融亜鉛供給装置41は、汲み上げ槽の内部に溶融亜鉛が貯留された状態で、亜鉛末製造炉50に固定された流路である樋部42、又はインゴット製造設備60の近傍へと移動される。そして、任意の位置に移動された溶融亜鉛供給装置41の汲み上げ槽が回動されることで、開口部から亜鉛末製造炉50又はインゴット製造設備60へと溶融亜鉛が供給される。なお、亜鉛末製造炉50に対しては、後述する樋部42を経由して溶融亜鉛が供給される。溶融亜鉛供給装置41は、亜鉛末製造炉50とインゴット製造設備60にそれぞれ個別に溶融亜鉛を供給する、2つの装置であってもよいし、溶融亜鉛供給装置41を共用して、亜鉛末製造炉50とインゴット製造設備60に溶融亜鉛を供給する1つの装置であってもよい。
【0025】
[樋部]
樋部42は、
図2に示すように、亜鉛末製造炉50の投入口51に固定される流路である。樋部42は、上面及び投入口51側へ延出する一方の側面が開口しており、下面及び他の側面は溶融亜鉛の漏出を防止するため、閉塞されている。樋部42は、投入口51側の一方が下方に傾斜するように設置される。樋部42は、ヒンジ421によって回動可能に固定されると共に、傾斜角がタンバックル422によって調整可能である。樋部42の一方の先端部が、投入口51に貯留された溶融亜鉛の湯面Lに接する位置となるように、樋部42の傾斜角が調整される。なお、傾斜角の調整手段として、タンバックル422に代えてモーター装置等を用いてもよい。
【0026】
樋部42は、溶融亜鉛供給装置41から溶融亜鉛が供給される第1の流路下面B1と、溶融亜鉛が投入口51へと流入する第2の流路下面B2と、を有する。
図2に示すように、第2の流路下面B2は、樋部42の投入口51側の端部に形成される。第2の流路下面B2は、第1の流路下面B1と連続して形成されると共に、第1の流路下面B1よりも下方に傾斜している。これにより、樋部42の先端に溶融亜鉛が付着したままの状態となることで固着することを抑制できる。上記に加え、より下方に傾斜する第2の流路下面B2の先端部を湯面Lにつけて段差のない状態で溶融亜鉛を注湯することで、注湯時の衝撃を低減し、溶融亜鉛の飛散を抑制すると共に、投入口51に溶融亜鉛が流入する際の空気の巻き込みを低減することができ、亜鉛酸化物の形成が抑制される。
【0027】
樋部42の材質は、特に限定されないが、耐火性及び耐熱性を有する材質により構成することが好ましい。例えば、耐火煉瓦や耐火キャスターにより構成することができる。樋部42全てを一体として構成してもよいが、湯面Lに付く先端部は、より耐熱性の高い部材で構成することが好ましい。また、先端部は摩耗しやすいため、耐摩耗性の高い材質により構成することが好ましい。
【0028】
(亜鉛末製造炉)
亜鉛末製造炉50は、水平断面図である
図3に示すように、溶融亜鉛が流入する投入口51と、揮発炉52と、を有する。
図3のハッチングで示した領域は、耐火煉瓦により構成される領域を示す。投入口51と、揮発炉52とは、耐火煉瓦により一体に形成される。従来の技術では、投入口51は亜鉛インゴットが投入され、加熱されて溶融する箇所であったため、揮発炉52で発生した熱を、投入口51に伝達するために、投入口51と揮発炉52との間は熱伝導率の高い材質で構成する必要があった。しかし、本実施形態においては、投入口51に溶融亜鉛が投入されるため、投入口51と揮発炉52とを耐火煉瓦等の材質により一体に形成することができる。これにより、熱伝導率の高い部材を使用しないことで、エネルギーコストが低減する。また、亜鉛末製造炉50を安価に構成できる。投入口51と揮発炉52の材質である耐火煉瓦としては、特に限定されず公知のものを使用できる。
【0029】
揮発炉52は、
図3に示すように、抵抗発熱体531及び532を有する。抵抗発熱体531及び532は、それぞれ電極部53a及び53b、並びに電極部53c及び53dにより通電可能に構成され、揮発炉52の気相空間に配置される。これにより、上記抵抗発熱体に通電される電力量を調整することで揮発炉52への投入熱量の制御が容易となり、かつ気相空間の温度変動を抑制できる。揮発炉52の内部を矢印y1に沿って流動する溶融亜鉛は、上記抵抗発熱体によって加熱されて気化され、亜鉛蒸気となる。上記発生した亜鉛蒸気は、矢印y2に沿って流動し、亜鉛蒸気道54から冷却及び分級設備(図示せず)へと流入する。亜鉛蒸気の流量は、上記抵抗発熱体に通電される電力量を調整することで調整される。亜鉛蒸気の温度は、温度検出器55によって測定される。
【0030】
揮発炉52の亜鉛蒸気道54から流出する亜鉛蒸気は、不活性ガス中で冷却されることで粒径の異なる亜鉛末となる。上記粒径の異なる亜鉛末は、サイクロン分級器等の公知の分級器により、所定の粒径範囲を有する亜鉛末に分級される。亜鉛末の粒径は、亜鉛蒸気の温度を制御することにより調整できる。
【0031】
(亜鉛インゴット製造設備)
亜鉛インゴット製造設備60は、溶融亜鉛搬送手段40により供給される溶融亜鉛から亜鉛インゴットを製造する設備である。亜鉛インゴット製造設備60は、特に限定されず、例えば、溶融亜鉛が注入される鋳型を有する。溶融亜鉛搬送手段40により鋳型に注入された溶融亜鉛は冷却及び型抜きされて、コンベア装置等により搬送される。
【0032】
本実施形態に係る亜鉛末製造装置1は、溶融亜鉛搬送手段40により、精錬炉20で精錬され、溶融亜鉛貯留槽30に貯留された溶融亜鉛を、溶融状態のままで亜鉛末製造炉50へと搬送可能である。これにより、従来亜鉛末製造炉で必要であった亜鉛インゴットの溶融が不要となり、亜鉛末製造にかかるエネルギーコストを低減できる。また、装置を起動してから亜鉛末が製造開始されるまでの時間を短縮でき、生産効率を向上できる。上記に加えて、溶融亜鉛搬送手段40は、溶融亜鉛貯留槽30に貯留された溶融亜鉛を、亜鉛インゴット製造設備60に対しても搬送可能である。これにより、亜鉛末製造装置1は、精錬後の溶融亜鉛から亜鉛末だけでなく亜鉛インゴットも製造可能となるため、各製品の生産量の調整が容易となる結果、生産効率を向上できる。
【0033】
<亜鉛末の製造方法>
本実施形態に係る亜鉛末の製造方法は、原料亜鉛を精錬し溶融亜鉛を製造する精錬溶融工程と、精錬溶融工程により精錬された溶融亜鉛を溶融状態で搬送する搬送工程と、溶融亜鉛を蒸発させて亜鉛蒸気を生成する亜鉛蒸気生成工程と、亜鉛蒸気を冷却して亜鉛末を生成する冷却工程と、をこの順に備える。また、亜鉛蒸気生成工程及び冷却工程に代えて、亜鉛インゴット製造工程を選択可能であってもよい。
【0034】
精錬溶融工程は、原料から精錬された溶融亜鉛を生成する工程である。精錬溶融工程は、主に亜鉛精鉱を精錬する一次精錬を行うものであってもよいし、再生原料を溶融分離にて精錬する二次精錬を行うものであってもよい。精錬溶融工程は、精錬亜鉛が溶融状態で得られる二次精錬を行うものであることが好ましい。一次精錬は、上述した通り、乾式法(蒸留法)や湿式法(電解採取法)により固形の精錬亜鉛を得る方法である。二次精錬は、上述した通り、再生原料から溶融状態の精錬亜鉛を得る方法である。
【0035】
搬送工程は、精錬溶融工程により生成された溶融亜鉛を溶融状態で搬送する工程である。搬送する手段としては特に限定されず、汲み上げ槽を有する溶融亜鉛供給装置によるものであってもよいし、樋部やポンプ装置等を組み合わせたものであってもよい。
【0036】
亜鉛蒸気生成工程は、搬送工程により搬送された溶融亜鉛を加熱気化することで亜鉛蒸気を生成する工程である。溶融亜鉛を加熱気化する手段としては、特に限定されず、抵抗体に通電することで発熱させる発熱抵抗体を用いたものであってもよいし、可燃性の燃料を燃焼させるバーナ装置を用いたものであってもよい。
【0037】
冷却工程は、亜鉛蒸気生成工程により生成された亜鉛蒸気を例えば不活性ガス中で冷却することで、亜鉛末を製造する工程である。冷却工程の後に、冷却された亜鉛末の粒径を調整するための粒径調整工程を更に備えていてもよい。粒径調整工程における粒径調整方法としては、特に限定されず、重力場分級、慣性力場分級、遠心力場分級等の公知の分級方法を用いることができる。
【0038】
亜鉛インゴット製造工程は、搬送工程により搬送された溶融亜鉛を成型及び冷却し、亜鉛インゴットを製造する工程である。例えば所定形状を有する鋳型に溶融亜鉛が注入され、冷却及び型抜きされることで、亜鉛インゴットが製造される。
【0039】
本実施形態に係る亜鉛末製造方法は、精錬溶融工程で生成された溶融亜鉛を、溶融状態で搬送し気化及び冷却することで亜鉛末を製造する。従って、従来の精錬溶融後に溶融亜鉛を一度インゴットや地金の状態を経由して亜鉛末を製造する方法と比較して、インゴットや地金を溶融する際に必要なエネルギーコストを低減できる。また、インゴットや地金の溶融に要していた時間を短縮でき、亜鉛末の生産効率を向上できる。上記に加えて、亜鉛末製造方法は、精錬溶融工程で生成された溶融亜鉛を、溶融状態で搬送し、亜鉛インゴット製造工程で亜鉛インゴットを製造することも選択可能である。従って、溶融亜鉛から亜鉛末及び亜鉛インゴットのいずれも生産できる。これにより、各製品の生産量の調整が容易となる結果、生産効率を向上できる。例えば、亜鉛末の生産量に対して、溶融亜鉛を多く生成してしまった場合であっても、余剰分の溶融亜鉛をインゴット化するといった調整が容易となる。このため、仕掛品である溶融亜鉛を生産量に対して余裕を持って生成しておくことができ、各製品の生産量の変動に対応できる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で本実施形態に変更、修正を加えたものも本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1 亜鉛末製造装置
30 溶融亜鉛貯留槽
40 溶融亜鉛搬送手段
41 溶融亜鉛供給装置
42 樋部
50 亜鉛末製造炉
51 投入口(溶融亜鉛投入口)
52 揮発炉
60 亜鉛インゴット製造設備
B1 第1の流路下面
B2 第2の流路下面