(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166987
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】グランザイムB抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20221027BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20221027BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20221027BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221027BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221027BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20221027BHJP
A61K 36/38 20060101ALI20221027BHJP
A61K 36/73 20060101ALI20221027BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20221027BHJP
A61K 135/00 20060101ALN20221027BHJP
A61K 133/00 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61P17/02
A61P17/14
A61P17/00
A61Q19/00
A61K36/185
A61K36/38
A61K36/73
A61K127:00
A61K135:00
A61K133:00
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072466
(22)【出願日】2021-04-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】592142670
【氏名又は名称】佐藤製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100218578
【弁理士】
【氏名又は名称】河井 愛美
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 紘子
(72)【発明者】
【氏名】山野 美怜
(72)【発明者】
【氏名】横田 真穂
(72)【発明者】
【氏名】亀井 大嗣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良樹
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC12
4C083DD22
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4C083FF01
4C088AB12
4C088AB51
4C088AB55
4C088AC03
4C088AC05
4C088BA09
4C088BA10
4C088MA13
4C088MA17
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4C088MA22
4C088MA28
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC41
(57)【要約】
【課題】効果の高いグランザイムB抑制剤を提供する。
【解決手段】ゲンノショウコエキスを有効成分として含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲンノショウコエキスを有効成分として含有する、グランザイムB抑制剤。
【請求項2】
ゲンノショウコエキスを1~100μg/mL含有する、請求項1に記載のグランザイムB抑制剤。
【請求項3】
ゲンノショウコエキスを1.8~55μg/mL含有する、請求項2に記載のグランザイムB抑制剤。
【請求項4】
ゲンノショウコエキスを18~55μg/mL含有する、請求項3に記載のグランザイムB抑制剤。
【請求項5】
グランザイムB抑制作用を有する1種以上の植物エキスをさらに含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のグランザイムB抑制剤。
【請求項6】
前記植物エキス及び前記ゲンノショウコエキスを1:1~1:4の質量比で含有する、請求項5に記載のグランザイムB抑制剤。
【請求項7】
前記植物エキスが、ザクロ果皮エキス、イエローヒマラヤンラズベリー根エキス、ユーカリエキス、ワレモコウエキス、イロハモミジ葉エキス、シモツケソウエキス、ハマメリスエキス、バラエキス、アボガドエキス、テンチャエキス、メマツヨイグサ抽出液、ウーロン茶エキス、カシア樹皮エキス、ユキノシタエキス、メリッサエキス、トルメンチラエキス、ダマスクバラ花エキス、ヨモギエキス、ヒキオコシエキス、コンフリーエキス、オトギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、ブドウ葉エキス、シナノキエキス、エイジツエキス、ビワ葉エキス、海藻エキス、シャクヤクエキス、ドクダミエキス、サンザシエキス、シソエキス、ラベンダーエキス、ノバラエキス、アセンヤクエキス、サガラメエキス、ボタンエキス、アスパラサスリネアリスエキス、カンゾウ抽出末及びクララエキスからなる群から選択される、請求項5又は6に記載のグランザイムB抑制剤。
【請求項8】
前記植物エキスの少なくとも1種が、オトギリソウエキス及びテンチャエキスからなる群から選択される、請求項7に記載のグランザイムB抑制剤。
【請求項9】
グランザイムB抑制が、グランザイムB遺伝子の発現抑制である、請求項1から8のいずれか一項に記載のグランザイムB抑制剤。
【請求項10】
グランザイムB抑制が、グランザイムBの活性阻害である、請求項1から8のいずれか一項に記載のグランザイムB抑制剤。
【請求項11】
グランザイムB抑制が、グランザイムB遺伝子の発現抑制及びグランザイムBの活性阻害である、請求項1から8のいずれか一項に記載のグランザイムB抑制剤。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のグランザイムB抑制剤のみからなる、化粧料組成物。
【請求項13】
ゲンノショウコエキスを有効成分として含有する、コラーゲン分解抑制剤。
【請求項14】
ゲンノショウコエキスを1~100μg/mL含有する、請求項13に記載のコラーゲン分解抑制剤。
【請求項15】
ゲンノショウコエキスを1.8~55μg/mL含有する、請求項14に記載のコラーゲン分解抑制剤。
【請求項16】
ゲンノショウコエキスを18~55μg/mL含有する、請求項15に記載のコラーゲン分解抑制剤。
【請求項17】
コラーゲン分解抑制作用を有する1種以上の植物エキスをさらに含有する、請求項13から16のいずれか一項に記載のコラーゲン分解抑制剤。
【請求項18】
前記植物エキス及び前記ゲンノショウコエキスを1:1~1:4の質量比で含有する、請求項17に記載のコラーゲン分解抑制剤。
【請求項19】
前記植物エキスが、ザクロ果皮エキス、イエローヒマラヤンラズベリー根エキス、ユーカリエキス、ワレモコウエキス、イロハモミジ葉エキス、シモツケソウエキス、ハマメリスエキス、バラエキス、アボガドエキス、テンチャエキス、メマツヨイグサ抽出液、ウーロン茶エキス、カシア樹皮エキス、ユキノシタエキス、メリッサエキス、トルメンチラエキス、ダマスクバラ花エキス、ヨモギエキス、ヒキオコシエキス、コンフリーエキス、オトギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、ブドウ葉エキス、シナノキエキス、エイジツエキス、ビワ葉エキス、海藻エキス、シャクヤクエキス、ドクダミエキス、サンザシエキス、シソエキス、ラベンダーエキス、ノバラエキス、アセンヤクエキス、サガラメエキス、ボタンエキス、アスパラサスリネアリスエキス、カンゾウ抽出末及びクララエキスからなる群から選択される、請求項17又は18に記載のコラーゲン分解抑制剤。
【請求項20】
前記植物エキスの少なくとも1種が、オトギリソウエキス及びテンチャエキスからなる群から選択される、請求項19に記載のコラーゲン分解抑制剤。
【請求項21】
コラーゲン分解抑制が、グランザイムB遺伝子の発現抑制である、請求項13から20のいずれか一項に記載のコラーゲン分解抑制剤。
【請求項22】
コラーゲン分解抑制が、グランザイムBの活性阻害である、請求項13から20のいずれか一項に記載のコラーゲン分解抑制剤。
【請求項23】
コラーゲン分解抑制が、グランザイムB遺伝子の発現抑制及びグランザイムBの活性阻害である、請求項13から20のいずれか一項に記載のコラーゲン分解抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲンノショウコエキスを有効成分として含むグランザイムB抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
グランザイムB阻害剤は、免疫誘導効果、自己免疫性・慢性の炎症性疾患への効果が示唆されている(特許文献1~2)。また、皮膚への適用においては、火傷、創傷治癒の促進効果、皮膚老化に対する外観改善効果が示されている(特許文献3~5)。
グランザイムB活性阻害剤として、既知の低分子ペプチド等が知られている(特許文献1~3、非特許文献1~2)。しかし、原料の入手が容易で安価な天然由来物質のグランザイムB活性抑制剤に関する報告はない。
また、グランザイムBは、分化誘導性のサイトカインにより発現誘導され、アポトーシスに関与する(非特許文献3)。皮膚においては通常状態における発現量は低く、自己免疫性・慢性炎症性皮膚状態で発現量が増加すること、紫外線照射によっても発現誘導される(非特許文献4~6)。しかしながら、グランザイムB発現を抑制する素材に関する報告は皆無である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2003/065987号
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0148511号明細書
【特許文献3】国際公開第2017/132771号
【特許文献4】特許第6134268号公報
【特許文献5】特許第5746813号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Bird et. al., Mol. Cell. Biol., 1998, 18, 6387-6398
【非特許文献2】Kam et. al., Biochim. Biophys. Acta., 2000, 1477(1-2), 307-23
【非特許文献3】Tamang et. al., Cytokine, 2006 November, 36(3-4), 148-159
【非特許文献4】Turner et.al., J. Invest. Dermatol., 2021, Jan, 141(1), 36-47
【非特許文献5】Hiebert et.al., Exp. Gerontol., 2011 Jun, 46(6),489-99
【非特許文献6】Parkinson et.al., Aging Cell, 2015 Feb, 14(1), 67-77
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
グランザイムBの発現上昇を抑え、かつグランザイムB活性阻害作用も有する素材は、グランザイムBに起因する皮膚への増悪作用を効率よく抑制することが示唆される。
したがって、グランザイムB発現抑制作用及び活性阻害作用の両作用を有する天然由来物質は、より応用範囲が広いグランザイムB作用の抑制剤としての利用が期待される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、広範囲の植物エキスのうち、ゲンノショウコエキスがグランザイムB発現抑制作用及び活性阻害作用の両作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明者はさらに、複数の植物エキス添加によりグランザイムB活性阻害作用が増強することを示した。すなわち、本発明は下記の〔1〕~〔23〕に関するものである。
〔1〕ゲンノショウコエキスを有効成分として含有する、グランザイムB抑制剤。
〔2〕ゲンノショウコエキスを1~100μg/mL含有する、前記〔1〕に記載のグランザイムB抑制剤。
〔3〕ゲンノショウコエキスを1.8~55μg/mL含有する、前記〔2〕に記載のグランザイムB抑制剤。
〔4〕ゲンノショウコエキスを18~55μg/mL含有する、前記〔3〕に記載のグランザイムB抑制剤。
〔5〕グランザイムB抑制作用を有する1種以上の植物エキスをさらに含有する、前記〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載のグランザイムB抑制剤。
〔6〕前記植物エキス及び前記ゲンノショウコエキスを1:1~1:4の質量比で含有する、前記〔5〕に記載のグランザイムB抑制剤。
〔7〕前記植物エキスが、ザクロ果皮エキス、イエローヒマラヤンラズベリー根エキス、ユーカリエキス、ワレモコウエキス、イロハモミジ葉エキス、シモツケソウエキス、ハマメリスエキス、バラエキス、アボガドエキス、テンチャエキス、メマツヨイグサ抽出液、ウーロン茶エキス、カシア樹皮エキス、ユキノシタエキス、メリッサエキス、トルメンチラエキス、ダマスクバラ花エキス、ヨモギエキス、ヒキオコシエキス、コンフリーエキス、オトギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、ブドウ葉エキス、シナノキエキス、エイジツエキス、ビワ葉エキス、海藻エキス、シャクヤクエキス、ドクダミエキス、サンザシエキス、シソエキス、ラベンダーエキス、ノバラエキス、アセンヤクエキス、サガラメエキス、ボタンエキス、アスパラサスリネアリスエキス、カンゾウ抽出末及びクララエキスからなる群から選択される、前記〔5〕又は〔6〕に記載のグランザイムB抑制剤。
〔8〕前記植物エキスの少なくとも1種が、オトギリソウエキス及びテンチャエキスからなる群から選択される、前記〔7〕に記載のグランザイムB抑制剤。
〔9〕グランザイムB抑制が、グランザイムB遺伝子の発現抑制である、前記〔1〕から〔8〕のいずれか一項に記載のグランザイムB抑制剤。
〔10〕グランザイムB抑制が、グランザイムBの活性阻害である、前記〔1〕から〔8〕のいずれか一項に記載のグランザイムB抑制剤。
〔11〕グランザイムB抑制が、グランザイムB遺伝子の発現抑制及びグランザイムBの活性阻害である、前記〔1〕から〔8〕のいずれか一項に記載のグランザイムB抑制剤。
〔12〕前記〔1〕から〔11〕のいずれか一項に記載のグランザイムB抑制剤のみからなる、化粧料組成物。
〔13〕ゲンノショウコエキスを有効成分として含有する、コラーゲン分解抑制剤。
〔14〕ゲンノショウコエキスを1~100μg/mL含有する、前記〔13〕に記載のコラーゲン分解抑制剤。
〔15〕ゲンノショウコエキスを1.8~55μg/mL含有する、前記〔14〕に記載のコラーゲン分解抑制剤。
〔16〕ゲンノショウコエキスを18~55μg/mL含有する、前記〔15〕に記載のコラーゲン分解抑制剤。
〔17〕コラーゲン分解抑制作用を有する1種以上の植物エキスをさらに含有する、前記〔13〕から〔16〕のいずれか一項に記載のコラーゲン分解抑制剤。
〔18〕前記植物エキス及び前記ゲンノショウコエキスを1:1~1:4の質量比で含有する、前記〔17〕に記載のコラーゲン分解抑制剤。
〔19〕前記植物エキスが、ザクロ果皮エキス、イエローヒマラヤンラズベリー根エキス、ユーカリエキス、ワレモコウエキス、イロハモミジ葉エキス、シモツケソウエキス、ハマメリスエキス、バラエキス、アボガドエキス、テンチャエキス、メマツヨイグサ抽出液、ウーロン茶エキス、カシア樹皮エキス、ユキノシタエキス、メリッサエキス、トルメンチラエキス、ダマスクバラ花エキス、ヨモギエキス、ヒキオコシエキス、コンフリーエキス、オトギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、ブドウ葉エキス、シナノキエキス、エイジツエキス、ビワ葉エキス、海藻エキス、シャクヤクエキス、ドクダミエキス、サンザシエキス、シソエキス、ラベンダーエキス、ノバラエキス、アセンヤクエキス、サガラメエキス、ボタンエキス、アスパラサスリネアリスエキス、カンゾウ抽出末及びクララエキスからなる群から選択される、前記〔17〕又は〔18〕に記載のコラーゲン分解抑制剤。
〔20〕前記植物エキスの少なくとも1種が、オトギリソウエキス及びテンチャエキスからなる群から選択される、前記〔19〕に記載のコラーゲン分解抑制剤。
〔21〕コラーゲン分解抑制が、グランザイムB遺伝子の発現抑制である、前記〔13〕から〔20〕のいずれか一項に記載のコラーゲン分解抑制剤。
〔22〕コラーゲン分解抑制が、グランザイムBの活性阻害である、前記〔13〕から〔20〕のいずれか一項に記載のコラーゲン分解抑制剤。
〔23〕コラーゲン分解抑制が、グランザイムB遺伝子の発現抑制及びグランザイムBの活性阻害である、前記〔13〕から〔20〕のいずれか一項に記載のコラーゲン分解抑制剤。
【発明の効果】
【0007】
後述の実施例で示されるように、本発明に従うゲンノショウコエキスはグランザイムB発現抑制作用及び活性阻害作用を有するので、グランザイムB抑制剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、ゲンノショウコエキスのグランザイムB遺伝子の発現抑制作用を示す実験結果である。
【
図2A】
図2Aは、ゲンノショウコエキスのグランザイムBの活性阻害作用を示す実験結果である。
【
図2B】
図2Bは、ゲンノショウコエキスのグランザイムBの活性阻害作用を示す実験結果である。
【
図3】
図3は、グランザイムBの活性阻害作用を有する植物エキスを示す。
【
図4A】
図4Aは、オトギリソウエキスのグランザイムBの活性阻害作用を示した図である。
【
図4B】
図4Bは、テンチャエキスのグランザイムBの活性阻害作用を示した図である。
【
図5A】
図5Aは、ゲンノショウコエキスとオトギリソウエキスの、グランザイムB抑制によるデコリン分解抑制の相乗効果を示した図である。
【
図5B】
図5Bは、ゲンノショウコエキスとオトギリソウエキスの、グランザイムB抑制によるデコリン分解抑制の相乗効果を示した図である。
【
図6A】
図6Aは、ゲンノショウコエキスとテンチャエキスの、グランザイムB抑制によるデコリン分解抑制の相乗効果を示した図である。
【
図6B】
図6Bは、ゲンノショウコエキスとテンチャエキスの、グランザイムB抑制によるデコリン分解抑制の相乗効果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。なお、以下で例示する好ましい態様やより好ましい態様等は、「好ましい」や「より好ましい」等の表現にかかわらず適宜相互に組み合わせて使用することができる。また、数値範囲の記載は例示であって、各範囲の上限と下限並びに実施例の数値とを適宜組み合わせた範囲も好ましく使用することができる。さらに、「含有する」又は「含む」等の用語は、「本質的になる」や「のみからなる」と読み替えてもよい。
【0010】
〔グランザイムB抑制剤〕
以下、本発明のグランザイムB抑制剤について詳細に説明する。
グランザイムBは、細胞傷害性T細胞及びナチュラルキラー細胞内の細胞質顆粒によって放出されるセリンプロテアーゼであり、様々な細胞外基質を分解し皮膚障害に関与する(Turner et.al., Matrix Biol. (2019) 75-76, 126-140)。なかでも、グランザイムBがI型コラーゲンを保護するデコリンを分解することで、MMP-1(matrix metalloproteinase-1)によるI型コラーゲン分解が促進されることが知られている(Parkinson et.al., Aging Cell. 2015 Feb; 14(1): 67-77)。グランザイムBは、通常状態における発現量は低く、皮膚への紫外線照射などに起因して発現誘導される(Hernandez-Pigeon et. al., J Biol Chem. 2006 May 12; 281 (19): 13525-32)。
【0011】
本発明のグランザイムB抑制剤(以下、「抑制剤」と略記する)によるグランザイムB抑制の態様としては、グランザイムBの活性阻害及びグランザイムB遺伝子の発現抑制が挙げられる。
グランザイムBの活性阻害により、コラーゲンが保護される。例えば、理論に縛られないが、グランザイムBの活性を阻害するとデコリンの分解が抑制され、結果としてMMP-1によるI型コラーゲン分解が抑制される。
グランザイムB遺伝子の発現抑制によっても、コラーゲンが保護される。理論に縛られないが、グランザイムBの発現上昇を抑えることで、より効果的にグランザイムBの活性を抑制可能である。
しかしながら、本発明の抑制剤によるグランザイムBの活性阻害及びグランザイムB遺伝子の発現抑制、及びそれらによって得られるコラーゲン保護は、必ずしも上記したデコリン分解抑制に関わるものに限定されないことは明らかである。
グランザイムBは、デコリンの他、様々な細胞外マトリックスを分解することが知られている(Russo et.al., Sci Rep., 2018 Jun 26. 8(1),9690、Turner et.al., Matrix Biol. 2019 Jan, 75-76, 126-140、Pardo et.al., Cell Death Differ., 2007 Oct, 14(10), 1768-79)。例えば、デコリン以外のグランザイムBの基質として、collagen VII、collagen XVII、α6/β4 integrin、fibronectin、vitronectin、laminin、biglycan、plasminogen、VE-cadherin、ZO-1 及び von Willebrand factor が挙げられる。
【0012】
<ゲンノショウコエキス>
本発明の抑制剤は、ゲンノショウコエキスを有効成分として含有する。
ゲンノショウコエキスは、ゲンノショウコ(Geranium thunbergii Siebold et Zuccarini(Geraniaceae))から抽出されるエキスである。ゲンノショウコは、フクロソウ科フクロソウ属の多年生植物であり、ミコシグサ、イシャイラズなどとも呼ばれ、整腸作用を有する生薬原料として用いられる。ゲンノショウコエキスは公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調整可能である。ゲンノショウコエキスの調整には当技術分野で周知の方法を使用できるが、例えばゲンノショウコの地上部から、エタノール溶液又は1,3-ブチレングリコール溶液で抽出することで、医薬部外品原料規格2006に記載のゲンノショウコエキスの規格を満たすものを得ることができる。
【0013】
本発明の抑制剤は、ゲンノショウコエキスを、グランザイムB抑制剤の全体積に対して、好ましくは1~100μg/mL含有する。本発明の抑制剤は、ゲンノショウコエキスを、グランザイムB抑制剤の全体積に対して、好ましくは1.8μg/mL以上含有し、さらに好ましくは5.5μg/mL以上含有し、特に好ましくは18μg/mL以上含有する。含有量の上限は特に限定されないが、例えば80μg/mL以下、90μg/mL以下、95μg/mL以下で含有する。ゲンノショウコエキスは特異なにおいを有するため、グランザイムB抑制剤としての効果を発揮しつつ、ゲンノショウコエキスのにおいを抑えることが可能な含有量としては、例えば18~55μg/mLが望ましい。
【0014】
<追加の植物エキス>
本発明の抑制剤は、ゲンノショウコエキスに加え、有効成分としてグランザイムB抑制作用を有する1種以上の植物エキス(以下、「追加の植物エキス」と記載する)をさらに含有していてもよい。
グランザイムB抑制作用を有する追加の植物エキスとしては、限定されるものではないが、例えば実施例の〔蛍光基質を用いたグランザイムB活性阻害効果の評価系〕に従い、グランザイムB阻害活性(IC50値<3μg/mL)を示すものを選択することができる。
【0015】
追加の植物エキスの例としては、ザクロ果皮エキス、イエローヒマラヤンラズベリー根エキス、ユーカリエキス、ワレモコウエキス、イロハモミジ葉エキス、シモツケソウエキス、ハマメリスエキス、バラエキス、アボガドエキス、テンチャエキス、メマツヨイグサ抽出液、ウーロン茶エキス、カシア樹皮エキス、ユキノシタエキス、メリッサエキス、トルメンチラエキス、ダマスクバラ花エキス、ヨモギエキス、ヒキオコシエキス、コンフリーエキス、オトギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、ブドウ葉エキス、シナノキエキス、エイジツエキス、ビワ葉エキス、海藻エキス、シャクヤクエキス、ドクダミエキス、サンザシエキス、シソエキス、ラベンダーエキス、ノバラエキス、アセンヤクエキス、サガラメエキス、ボタンエキス、アスパラサスリネアリスエキス、カンゾウ抽出末及びクララエキスからなる群から選択されるものが挙げられる。これらのエキスは、単独又は組み合わせのいずれであっても、追加の植物エキスとして用いることができる。
【0016】
追加の植物エキスは、単独でもグランザイムBの抑制作用を有するが、ゲンノショウコエキスと組み合わせると相乗的なグランザイムB抑制作用を発揮するものが好ましい。ゲンノショウコエキスとの相乗効果を発揮する追加の植物エキスとしては、オトギリソウセキス及び/又はテンチャエキスが挙げられる。
【0017】
<オトギリソウエキス>
オトギリソウエキスは、セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum Linne)又はオトギリソウ(Hypericum erectum Thunberg(Guttiferae))から抽出されるエキスである。セイヨウオトギリソウ及びオトギリソウは、オトギリソウ科オトギリソウ属の多年生植物である。オトギリソウエキスは公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。オトギリソウエキスの調整には当技術分野で周知の方法を使用できるが、例えばセイヨウオトギリソウ又はオトギリソウの地上部から、水、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、又はこれらの混液により抽出することで、医薬部外品原料規格2006に記載のオトギリソウエキスの規格を満たすものを得ることができる。
【0018】
<テンチャエキス>
テンチャエキスは、テンヨウケンコウシ(Rubus suavissimus Shugan Lee.(Rosaceae))から抽出されるエキスである。テンヨウケンコウシは、バラ科キイチゴ属の耐寒性落葉低木である。テンチャエキスは公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。テンチャエキスの調整には当技術分野で周知の方法を使用できるが、例えばテンヨウケンコウシの葉を熱湯に浸漬した後、葉を乾燥し、さらに加熱したものを熱湯にて抽出することで医薬部外品原料規格2006に記載のテンチャエキスの規格を満たすものを得ることができる。また、抽出溶媒としては1,3-ブチレングリコールを用いることもできる。
【0019】
オトギリソウエキス及びテンチャエキスのほか、追加の植物エキスの各々は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は当技術分野で周知の方法を使用して調製可能である。
【0020】
本発明の抑制剤に配合される追加の植物エキスの量は特に限定されないが、例えば追加の植物エキスとゲンノショウコエキスの質量比を1:1~1:4で配合した場合に、特に高い効率でグランザイムBを抑制することができる。追加の植物エキスとゲンノショウコエキスの質量比は、例えば1:1.5であり、好ましくは1:2であり、さらに好ましくは1:3であり、特に好ましくは1:4である。
オトギリソウエキスが追加の植物エキスとして配合される場合、オトギリソウエキスとゲンノショウコエキスの質量比は、好ましくは1:1~1:4であり、当該濃度比で高い相乗効果が得られる。
テンチャエキスが追加の植物エキスとして配合される場合、テンチャエキスとゲンノショウコエキスの質量比は、好ましくは1:1~1:4であり、当該濃度比で高い相乗効果が得られる。
【0021】
本発明の抑制剤は、追加の植物エキスを、抑制剤の全体積に対して例えば1~100μg/mL含有する。
追加の植物エキスとしてオトギリソウエキスを含有する場合、オトギリソウエキスを、抑制剤の全体積に対して、好ましくは1.5μg/mL以上含有し、さらに好ましくは4.6μg/mL以上含有し、特に好ましくは15μg/mL以上含有する。含有量の上限は特に限定されないが、例えば80μg/mL以下、90μg/mL以下、95μg/mL以下で含有する。当該濃度範囲で配合されると、抑制剤のより高いグランザイムB活性阻害作用が発揮される。
追加の植物エキスとしてテンチャエキスを含有する場合、テンチャエキスを、抑制剤の全体積に対して、好ましくは3.1μg/mL以上含有し、さらに好ましくは10μg/mL以上含有し、特に好ましくは31μg/mL以上含有する。含有量の上限は特に限定されないが、例えば80μg/mL以下、90μg/mL以下、95μg/mL以下で含有する。当該濃度範囲で配合されると、抑制剤のより高いグランザイムB活性阻害作用が発揮される。
【0022】
<任意成分>
本発明の抑制剤には、ゲンノショウコエキス及び追加の植物エキスに加え、本発明の効果を損なわない範囲で、1種以上の成分を任意に配合できる。また、任意成分は、後述する化粧料組成物に適用可能な成分であってもよい。任意成分としては、以下に示すものが挙げられる。
〔基剤成分〕
水(例えば、精製水)、低級アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール)、油脂、界面活性剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、増粘剤、色素等
〔その他〕
乳化剤、香料、防腐剤等
〔保湿成分〕
トコフェロール、ヒアルロン酸Na、ミツバアケビ茎エキス、加水分解エラスチン、加水分解コラーゲン、アカヤジオウ根エキス、アセチルヒアルロン酸Na、アルニカ花エキス、アロエベラ葉エキス、オウゴンエキス、オーキッドエキス、オタネニンジン根エキス、カミツレ花エキス、キュウリ果実エキス、クズ根エキス、クロレラエキス、セイヨウキズタ葉/茎エキス、セイヨウシロヤナギ樹皮エキス、セイヨウニワトコ花エキス、ゼニアオイエキス、センブリエキス、ダイズエキス、トウキンセンカ花エキス、トリスヘキシルデカン酸ピリドキシン、パリエタリアエキス、パルミチン酸レチノール、フユボダイジュ花エキス、マクロプチリウムアトロプルプレウム花/葉/茎エキス、ヤグルマギク花エキス、ローマカミツレ花エキス、ローヤルゼリーエキス、加水分解ハトムギ種子、オウレン根茎エキス、カワラヨモギ花エキス、キハダ樹皮エキス、クチナシ果実エキス、グリチルリチン酸2K、ゲンチアナ根茎/根エキス、センキュウ根茎エキス、トウキ根エキス、ドクダミエキス、ナツメ果実エキス、ハトムギ種子エキス、ベタイン、ホホバエステル、加水分解ヒアルロン酸、水添レチノール、水溶性プロテオグリカン
【0023】
<剤型>
本発明の抑制剤の剤型は、特に限定されない。例えば、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水-油二層系、水-油-粉末三層系、軟膏、ゲル、及びエアゾール等が挙げられる。本発明の抑制剤は、上記した任意成分を適宜組み合わせて配合することにより、所望の剤型とすることができる。
【0024】
<製造方法>
本発明の抑制剤は、当技術分野で通常用いられる製法に従い製造することができる。製法としては、例えばスキンケア製品(皮膚用化粧料)の一般的な製法を挙げることができるが、これに限定されない。例えば、有効成分を基材成分へ添加し、混合することで製造できる。
【0025】
<使用方法>
本発明の抑制剤は、塗布などにより対象に適用することができる。本発明の抑制剤の適用対象は、概して哺乳類であり、特にヒトが想定される。
【0026】
〔コラーゲン分解抑制剤〕
ゲンノショウコエキスは、上述したようにグランザイムB活性阻害作用及びグランザイムB遺伝子発現抑制作用により、コラーゲン分解を抑制する。したがって、本発明のグランザイムB抑制剤は、コラーゲン分解抑制剤としても把握できる。
本発明のコラーゲン分解抑制剤によるコラーゲン分解抑制の態様としては、グランザイムBの活性阻害及びグランザイムB遺伝子の発現抑制が挙げられる。
本発明のコラーゲン分解抑制剤の有効成分、任意成分、剤型、製造方法、及び使用方法は、グランザイムB抑制剤について述べた説明が適用される。
【0027】
〔化粧料組成物〕
本発明の化粧料組成物は、グランザイムB抑制剤のみからなる。本発明の化粧料組成物の使用形態は、特に限定されない。例えば、化粧水、クリーム、乳液、エッセンス、ゼリー、ジェル、軟膏、ファンデーション、及びパック等が挙げられる。
本発明の化粧料組成物は、コラーゲンの維持を必要とする対象の皮膚に、塗布などにより適用することができる。本発明のグランザイムB抑制剤の適用対象は、概して哺乳類であり、特にヒトが想定される。
本発明の化粧料組成物の有効成分、任意成分、剤型、及び製造方法は、グランザイムB抑制剤について述べた説明が適用される。
【0028】
〔医薬組成物〕
本発明のグランザイムB抑制剤は、医薬用途にも利用可能である。対象となる疾患には創傷、火傷、自己免疫性皮膚炎、慢性創傷、ケロイド、肥厚性瘢痕、円板状エリテマトーデス、円形脱毛症、強皮症、スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症などが挙げられ、本発明のグランザイムB抑制剤からなる医薬組成物を、塗布などにより対象に投与することで当該疾患の症状を改善することができる。医薬組成物の適用対象は概して哺乳類であり、特にヒトが想定される。
医薬組成物の有効成分、任意成分、剤型、及び製造方法は、グランザイムB抑制剤について述べた説明が適用される。
【実施例0029】
次に、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0030】
〔植物エキスの調整〕
下記のように、各植物エキスを調整した。
ゲンノショウコエキスを、医薬部外品原料規格2006に記載される方法により調製し、以下の実験に用いた。なお、抽出にはゲンノショウコの地上部(花、葉、及び茎)を用い、抽出溶媒としては1,3-ブチレングリコール溶液を使用した。
オトギリソウエキスを、医薬部外品原料規格2006に記載される方法により調製し、以下の実験に用いた。なお、抽出にはセイヨウオトギリソウの地上部(花、葉、及び茎)を用い、抽出溶媒としては1,3-ブチレングリコール溶液を使用した。
テンチャエキスを、医薬部外品原料規格2006に記載される方法により調製し、以下の実験に用いた。なお、抽出にはテンチャの葉を用い、抽出溶媒としては熱湯を使用した。
【0031】
〔ヒト表皮角化細胞を使用したアッセイ系〕
下記の手順に従い、ヒト表皮角化細胞を培養し、ヒト表皮単層モデルを作成した。
ヒト表皮角化細胞を、37℃、5% CO2 インキュベーター内、75 cm2フラスコ中で、10% FBS, 1% PS mix含有D-MEM (High Glucose) with L-Glutamine and Phenol Red(富士フイルム和光純薬社製)、以下D-MEM培地を用いて70~90%コンフルエントまで培養した。Accutase Solution(Sigma-Aldrich社製)を用いて細胞を剥離し、24 well clear plate(Corning社製)に1.5 x 104 cells/cm2となるように細胞を播種した。D-MEM培地を用いて37℃、5% CO2インキュベーター内で3日間培養した細胞をヒト表皮単層モデルとし、アッセイに使用した。
【0032】
〔グランザイムB遺伝子の発現抑制効果の評価系〕
通常状態の皮膚ではグランザイムB遺伝子の発現量は低く、紫外線(UV-B)照射によって発現誘導されることが知られている。そこで、UV-B 照射したヒト表皮単層モデルにゲンノショウコエキスを添加し、UV-B 照射によるグランザイムB遺伝子発現誘導の抑制効果を評価した。
ヒト表皮単層モデルにUV-B(波長:302 nm, 積算照射量:10 mJ/cm2)照射後、D-MEM中に溶解させたゲンノショウコエキスを添加し、16時間培養後の試験細胞から遺伝子を抽出し、Real-time PCR法にてmRNA量を測定した。グランザイムB遺伝子発現量は、GAPDHを内標準物質としたΔΔCt法を用いて算出した。
ゲンノショウコエキスによるグランザイムB遺伝子の発現抑制効果は、UV-B非照射群を対照とした% of control値を算出し、UV-B 照射したゲンノショウコエキス非処置群と処置群を有意差検定(Dunnett's Multiple Comparison Test)にて比較することで評価した。
【0033】
〔ゲンノショウコエキスによるグランザイムB遺伝子発現抑制効果〕
ゲンノショウコエキスによるグランザイムB遺伝子発現抑制効果を、
図1に示す。
図1に示されるように、ゲンノショウコエキスがUV-B 刺激誘導性のグランザイムB遺伝子発現上昇を抑制した。
【0034】
〔デコリンを用いたグランザイムB活性阻害効果の評価系〕
グランザイムBは、様々な細胞外基質を分解し皮膚障害に関与する。なかでも、グランザイムBがデコリンを分解することで、MMP-1によるI型コラーゲン分解が促進されることが知られている。そこで、デコリンに植物エキス及びグランザイムBを添加し、植物エキスによるグランザイムB活性阻害効果を評価した。
グランザイムBリコンビナント(終濃度 100 ng/μL、R&D systems社製)、カテプシンCリコンビナント(終濃度 10 ng/μL、R&D systems社製)、CHAPS(終濃度0.01%)、DTT(終濃度5 mM)、NaCl(終濃度50 mM)、MES(終濃度50 mM, pH 5.5)を混合し、37℃で16時間反応させ、グランザイムBを活性化した。デコリンリコンビナント(終濃度 10 ng/μL、Abcam社製)、植物エキス、活性化したグランザイムB(終濃度 2.5 ng/μL)及びTris-HCl(終濃度 50 mM, pH 7.5)を混合し、37℃、20~22時間反応させた。反応後の溶液をSDS-PAGEにてタンパク分離した後、銀染色試薬(コスモバイオ社製)でタンパク質を検出し、デコリン分解物断片のタンパク量を定量化した。
グランザイムB活性阻害効果は、植物エキス非処置群を対照とした% of control値を算出し、植物エキス非処置群と処置群を有意差検定(Dunnett's Multiple Comparison Test)にて比較することで評価した。
【0035】
〔ゲンノショウコエキスによるグランザイムB活性阻害効果〕
上記デコリンを用いたグランザイムB活性阻害効果の評価系において、植物エキスとしてゲンノショウコエキスを処置し、グランザイムB活性阻害を評価した。評価結果を
図2に示す。
図2に示されるように、ゲンノショウコエキスがグランザイムBの活性を阻害することで、デコリンの分解を抑制した。
【0036】
〔蛍光基質を用いたグランザイムB活性阻害効果の評価系〕
蛍光基質としてN-Acetyl-Ile-Glu-Pro-Asp-7-amido-4-methylcoumarin(Ac-IEPD-AMC, Sigma-Aldrich)を使用して、
図3に示す植物エキスのほか、数多くの植物エキスに関してグランザイムB活性阻害効果を評価した。
グランザイムBリコンビナントは、デコリンを用いたグランザイムB活性阻害効果の評価系と同じ手順で活性化した。Ac-IEPD-AMC(終濃度50μM)、植物エキス、活性化したグランザイムB(終濃度 0.3 ng/μL)、CHAPS(終濃度0.01%)及びHEPES(終濃度50 mM, pH 7.5)を、384 well black plate(Corning社製)に添加し、30℃、60分間反応させた。溶液添加直後(R1)と反応後(R2)に蛍光強度(ex/em = 380/460 nm)を測定した。
グランザイムB活性は、下記計算式を用いて算出した。
% of control (%) = 植物エキス処置群の蛍光値 (R2-R1) / 植物エキス非処置群の蛍光値 (R2-R1) x 100
グランザイムB活性阻害効果は、% of control 値から50% 阻害濃度(IC
50値)を算出することで評価した。
【0037】
〔各種植物エキスによるグランザイムB活性阻害効果〕
上記蛍光基質を用いたグランザイムB活性阻害効果の評価系において、グランザイムB阻害活性(IC
50値<3μg/mL)を示した植物エキスを、
図3に示す。
図3に示すように、ゲンノショウコエキス以外の複数の植物エキスが、グランザイムBの活性を阻害した。
【0038】
〔オトギリソウエキス及びテンチャエキスによるグランザイムB活性阻害効果〕
上記デコリンを用いたグランザイムBの活性阻害効果の評価系において、オトギリソウエキス及びテンチャエキスを植物エキスとしてそれぞれ処置し、グランザイムB活性阻害を評価した。評価結果を
図4に示す。
図4に示されるように、オトギリソウエキス及びテンチャエキスもまた、ゲンノショウコエキスと同様に、グランザイムBの活性を阻害することでデコリンの分解を抑制した。
【0039】
〔グランザイムB阻害によるデコリン分解抑制の相乗効果の評価系〕
試験は、デコリンを用いたグランザイムBの活性阻害効果の評価系と同じ手順で実施した。
グランザイムB阻害によるデコリン分解抑制効果は、植物エキス非処置群を対照とした% of control値を算出し、各群を有意差検定(Tukey's Multiple Comparison Test)にて比較することで評価した。
相乗効果は、デコリン分解抑制率(100 - % of control 値 (%))を算出し、植物エキス同時処置したデコリン分解抑制率の実測値から、植物エキス単独処置した各々のデコリン分解抑制率を足し合わせた理論値の比率を算出し評価した。
例:
相乗効果 = 植物エキスAとBを同時処置した際のデコリン分解抑制率(実測値)
/ [ 植物エキスAを単独処置した際のデコリン分解抑制率 + 植物エキスBを単独処置した際のデコリン分解抑制率](理論値)
【0040】
〔ゲンノショウコエキスとオトギリソウエキスのデコリン分解抑制における相乗効果〕
ゲンノショウコエキスとオトギリソウエキスによる、デコリン分解抑制の相乗効果の評価結果を
図5に示す。
図5に示すように、オトギリソウエキスとゲンノショウコエキスの同時処置は、単独のデコリン分解抑制効果を足した理論値と比較して、デコリン分解抑制効果を増強させた。また、オトギリソウエキスとゲンノショウコエキスの添加量の比が1:4のときに、より高い相乗効果が得られた。
【0041】
〔ゲンノショウコエキスとテンチャエキスのデコリン分解抑制における相乗効果〕
ゲンノショウコエキスとテンチャエキスによる、デコリン分解抑制の相乗効果の評価結果を
図6に示す。
図6に示すように、テンチャエキスとゲンノショウコエキスの同時処置は、単独のデコリン分解抑制効果を足した理論値と比較して、デコリン分解抑制効果を増強させた。また、テンチャエキスとゲンノショウコエキスの添加量の比が1:4のときに、より高い相乗効果が得られた。
前記植物エキスが、ザクロ果皮エキス、イエローヒマラヤンラズベリー根エキス、ユーカリエキス、ワレモコウエキス、イロハモミジ葉エキス、シモツケソウエキス、ハマメリスエキス、バラエキス、アボガドエキス、テンチャエキス、メマツヨイグサ抽出液、ウーロン茶エキス、カシア樹皮エキス、ユキノシタエキス、メリッサエキス、トルメンチラエキス、ダマスクバラ花エキス、ヨモギエキス、ヒキオコシエキス、コンフリーエキス、オトギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、ブドウ葉エキス、シナノキエキス、エイジツエキス、ビワ葉エキス、海藻エキス、シャクヤクエキス、ドクダミエキス、サンザシエキス、シソエキス、ラベンダーエキス、ノバラエキス、アセンヤクエキス、サガラメエキス、ボタンエキス、アスパラサスリネアリスエキス、カンゾウ抽出末及びクララエキスからなる群から選択される、請求項5又は6に記載のグランザイムB抑制剤。
前記植物エキスが、ザクロ果皮エキス、イエローヒマラヤンラズベリー根エキス、ユーカリエキス、ワレモコウエキス、イロハモミジ葉エキス、シモツケソウエキス、ハマメリスエキス、バラエキス、アボガドエキス、メマツヨイグサ抽出液、ウーロン茶エキス、カシア樹皮エキス、ユキノシタエキス、メリッサエキス、トルメンチラエキス、ダマスクバラ花エキス、ヨモギエキス、ヒキオコシエキス、コンフリーエキス、セイヨウハッカエキス、ブドウ葉エキス、シナノキエキス、エイジツエキス、ビワ葉エキス、海藻エキス、シャクヤクエキス、ドクダミエキス、サンザシエキス、シソエキス、ラベンダーエキス、ノバラエキス、アセンヤクエキス、サガラメエキス、ボタンエキス、アスパラサスリネアリスエキス、カンゾウ抽出末及びクララエキスからなる群から選択される、請求項20に記載のコラーゲン分解抑制剤。