(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166989
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】ホウレンソウ萎凋病の防除剤および防除方法
(51)【国際特許分類】
A01N 63/22 20200101AFI20221027BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20221027BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20221027BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A01N63/22
A01P3/00
A01N25/02
A01N25/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072468
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】598096991
【氏名又は名称】学校法人東京農業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100122574
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 貴大
(72)【発明者】
【氏名】入江 満美
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智美
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011BB21
4H011DA13
4H011DC05
4H011DC11
4H011DD04
4H011DE15
(57)【要約】
【課題】フザリウム(Fusarium)属に属する植物病原菌が原因となって発生するホウレンソウ萎凋病の被害を軽減し、かつ、環境への負荷が少ない技術を提供することを目的とし、具体的には、メタン発酵消化液の有効利用の一環として、フザリウム(Fusarium)属に属する植物病原菌が原因であるホウレンソウ萎凋病に有効な防除剤を提供することを目的とする。
【解決手段】バチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株を含有するメタン発酵消化液を有効成分とするホウレンソウ萎凋病の防除剤、および該防除剤を土壌に接種するホウレンソウ萎凋病の防除方法により解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン発酵消化液を有効成分とする、ホウレンソウ萎凋病の防除剤。
【請求項2】
前記メタン発酵消化液が、バチルス(Bacillus)属細菌を含有する、請求項1に記載のホウレンソウ萎凋病の防除剤。
【請求項3】
前記バチルス(Bacillus)属細菌が、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株(受託番号NITE P-03100)である、請求項1又は2に記載のホウレンソウ萎凋病の防除剤。
【請求項4】
前記メタン発酵消化液が、下水汚泥、し尿、牛糞、豚糞、食品廃棄物からなる群から選択された少なくとも一種類を原料とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のホウレンソウ萎凋病の防除剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の防除剤を土壌に接種する、ホウレンソウ萎凋病の防除方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の防除剤を含有してなる、培土。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌病害のひとつであるホウレンソウ萎凋病に対し防除効果を奏する防除剤及びホウレンソウ萎凋病の防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで土壌病害に対する対策としては、太陽熱を利用した土壌消毒や、臭化メチルなどの薬剤を用いた土壌燻蒸のほか、以下の種々の手段が提案されている。
【0003】
例えば、特開2015-61826号公報には、 作物の播種・育苗期における、バチルス属(Bacillus)及び菌根菌を含む土壌伝染性病害防除用微生物とプロベナゾールからなる植物病害抵抗性誘導物質の培土又は作物への付与、及び、pHを高めるための土壌pH矯正物質の培土への付与によって、細菌性又は真菌性の土壌伝染性病害を防除することを特徴とする土壌伝染性病害防除法が開示されている(特許文献1)。
【0004】
また、特開2007-246416号公報には、バチルス・チュ-リンジェンシス(Bacillus thuringiensis)B1020株(受託番号 FERM P-20770)を有効菌とする、ホウレンソウ萎凋病抑制剤を畑に散布又は透き込んで、ホウレンソウ萎凋病の発生を抑制する方法が開示されている(特許文献2)。
【0005】
さらに、特開2004-121235号公報には、作物を播種または定植する前に、作物根域の深さの土壌中に埋設した潅水パイプまたは該土壌面に設置した潅水パイプから55℃~75℃の熱水を供給し、土壌を浸潤させると共に、作物根域の地中温度を40℃~60℃に上昇せしめ、地中温度を40℃~60℃に保つことを特徴とする土壌病虫害の防除方法が開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-61826号公報
【特許文献2】特開2007-246416号公報
【特許文献3】特開2004-121235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、化学物質を用いた土壌病害防除方法に代わる新しい技術の開発が求められている。メタン発酵消化液は、有機性廃棄物の嫌気的処理によって生じる発酵残渣であるが、消化液は浄化処理をして、河川放流される。しかしながら、この処理には多額のコスト、エネルギーがかかる。メタン発酵消化液中には植物の生育に有効な肥料成分が含まれることが知られており、家畜糞尿や食品廃棄物を投入原料とした消化液を主に土壌改良を目的として農地に還元している事例がある。元来、家畜糞尿や作物残渣などのバイオマス由来の有機物は土壌改良を目的として農地に施用されてきた一方で、近年は作物病害を抑制する効果もあることが報告されてきている。
【0008】
そこで、本発明は、フザリウム(Fusarium)属に属する植物病原菌が原因となって発生するホウレンソウ萎凋病の被害を軽減し、かつ、環境への負荷が少ない技術を提供することを目的とし、具体的には、メタン発酵消化液の有効利用の一環として、フザリウム(Fusarium)属に属する植物病原菌が原因であるホウレンソウ萎凋病に有効な防除剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明者らは、メタン発酵消化液を植物病原菌フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)と対峙培養したところ、メタン発酵消化液がフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)の菌糸伸長を抑制するとの知見を得た。さらに、メタン発酵消化液の微生物を調べたところ、ある特定のバチルス(Bacillus)属細菌がフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)の菌糸伸長を抑制し当該植物病原菌の防除に有効であるとの知見を得た。
【0010】
本発明はかかる知見に基づきなされたものであり、メタン発酵消化液を有効成分とする、ホウレンソウ萎凋病の防除剤を提供するものである。
【0011】
本発明はまた、前記防除剤を土壌に接種する、ホウレンソウ萎凋病の防除方法を提供するものである。
【0012】
本発明はさらに、前記防除剤を含有してなる、培土を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)の菌糸伸長を抑制することで、ホウレンソウ萎凋病の発生を抑制又は軽減することができる。また、消化液の利用は、農業者にとって危険性のある農薬を散布する作業を減らすことができるため、農業者の健康維持に寄与する。さらに、農薬使用量を低減することができるため、土壌環境への負荷を減らすことができる。さらにまた、農作物の安全性も高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】牛糞由来のメタン発酵消化液がフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)の菌糸伸長を抑制した結果を示す図である。
【
図2】牛糞由来のメタン発酵消化液の無濾過区と濾液区についてフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)の対峙培養試験を行った結果を示す図である。
【
図3】AD-3株の16S rRNA塩基配列に基づく系統樹を示す図である。
【
図4】牛糞由来のメタン発酵消化液から単離した細菌についてグラム染色した結果を示す図である。
【
図5】バチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株がフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)の菌糸伸長を抑制した結果を示す図である。
【
図6】バチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株の植物病原菌抑制効果について検討したポット栽培試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について詳細に説明する。まず初めに、本実施形態に係るホウレンソウ萎凋病の防除剤について説明する。
【0016】
ホウレンソウ萎凋病は、フザリウム属菌の一種である、フザリウム・オキシスポラム・分化型・スピナシアエ(Fusarium oxysporum f. sp. spinaciae)を原因とする病気であり、症状としては、下位葉から黄化、萎凋し、落葉する;主根と側根の先端部、あるいは側根基部から黒褐変する;根・クラウン・葉柄の維菅束が褐変する;生育が著しく不良となり、枯死に至る等の症状が認められる。
【0017】
また、ホウレンソウ萎凋病によって枯死した植物体の体内には、不良環境に耐え、長期間生存する無数の厚膜胞子が形成され、植物体が枯死して腐敗した後も、土壌中で数年から十数年間生存することができる。そのため、厚膜胞子が存在する土壌に宿主作物を栽培し、根が土壌中に発育して厚膜胞子の近傍に到達すると、厚膜胞子が発芽して根に侵入し、導管に到達して増殖し、植物は菌体による導管閉塞と病原菌の作る萎凋性毒素のために、上記のような症状を発生する。なお、病原菌は基本的には土壌中で伝染するが、種子にも伝染する。
【0018】
本実施形態において、「メタン発酵消化液」とは、下水汚泥、し尿、牛糞、豚糞、食品廃棄物等からなる群から選択された少なくとも一種類の有機性廃棄物を原料とし、これをメタン発酵させてバイオガスを生成・利用した後に残渣として生じる、懸濁物質を含む流動性の低いスラリーをいう。メタン発酵消化液の物性は、原料となる有機性廃棄物の種類にもよるが、一般的に、TS・SS:2~5%、窒素全量:0.1~0.5%、りん酸全量:0.03~0.25%、加里全量:0.05~0.45%、pH:7.3~9.0である。
【0019】
本実施形態に係るメタン発酵消化液は、バチルス(Bacillus)属細菌を含有するものである。
【0020】
バチルス(Bacillus)属細菌は好気性から通性嫌気性の高温性及び中温性の芽胞を形成する菌で、土壌細菌の一種であり土壌細菌叢のうち16~46%を占めているといわれている。本実施形態の防除剤においては、バチルス(Bacillus)属細菌はホウレンソウ萎凋病の発生を抑制又は軽減する主要微生物である。
【0021】
特に、前記バチルス(Bacillus)属細菌は、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株であることが好ましい。
【0022】
本発明者らがバチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株と他のバチルス・エスピー(Bacillus sp.)をホウレンソウ萎凋病汚染土壌に接種し、発病抑制試験を行ったところ、病害抑制効果が見られたため、これを同定し、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(NITE-IPOD)に寄託した(受託番号NITE P-03100)。
【0023】
次に、ホウレンソウ萎凋病の防除方法について説明する。本実施形態に係るホウレンソウ萎凋病の防除方法は、先述した防除剤を土壌に接種するものである。
【0024】
メタン発酵消化液を含有するホウレンソウ萎凋病の防除剤の接種の方法は特に限定されることはなく、防除剤を土壌に散布する他、防除剤を葉面散布してもよい。用法は全層施肥または局所施肥、用量は0.5~10t/10aであることが好ましい。メタン消化液は上にある程度の肥料成分を含むため、スラリーとして土壌に施用する場合は、スラリーが含有する肥料成分を考慮して化学肥料の施用量を減らすことができる。例えば、栽培期間が短い葉菜類の場合は期間中1回程度、栽培期間が長いものの場合は追肥的に施用するタイミングで施用できる。
【0025】
有効な微生物資材バチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株のみを培養して土壌に接種することもできる。その場合は、スラリーの持ち込む肥料成分を考慮する必要がないため、元肥や追肥のタイミングで施用すればよい。バチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株の濃度は乾燥土壌1gあたり105~106CFUであることが好ましい。
【0026】
一般にバチルス(Bacillus)属細菌は、乾燥、その他種々の環境ストレスに対し高い抵抗力を有し、長期間にわたり生存できる耐熱性の芽胞を形成する。そのため、本実施形態のホウレンソウ萎凋病の防除剤も、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株が生存している限り、本発明の効果が持続する。
【0027】
次に、本実施形態に係る培土について説明する。本実施形態に係る培土は、上述したホウレンソウ萎凋病の防除剤を含有してなるものである。
【0028】
培土に対する防除剤の含有量は、付与後の培土中における防除剤の濃度が病原菌密度と同等程度あるいはそれ以上であることが好ましい。
【0029】
本実施形態に係る培土は、そのまま圃場の培土(土壌)として使用することもでき、圃場の土壌改良材として圃場の土壌に混合して使用することもできる。
【実施例0030】
1.メタン発酵消化液による植物病原菌の抑制効果の確認
メタン発酵消化液による植物ホウレンソウのポット栽培試験を実施し、ホウレンソウの萎凋病発生抑制効果を確認した。
【0031】
(1)方法
メタン発酵消化液(以後、単に「消化液」という)には下水汚泥、し尿、牛糞、豚糞、食品廃棄物を原料としたものを用いた。培地にはポテトデキストロース寒天培地(市販品)を用いた。植物病原菌としてフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)を国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 遺伝子資源センターより入手し、試験に利用した。
【0032】
本実験では培地上で消化液が植物病原菌に対して抑制作用を示すことを確認するため、対峙培養試験を行った。対峙培養試験とは、同一シャーレ上にポテトデキストロース寒天培地で前培養した植物病原菌をくり抜いた培地と各消化液を浸したろ紙を対峙するように置いて培養する方法である。培養後に消化液サンプルを置いた周りで植物病原菌の生育が見られない、つまりクリアゾーンが大きいほど抑止効果が高いとして評価を行った。
【0033】
また、消化液中の植物病原菌抑制効果を示す物質を予測するため、消化液を固液分離した後、濾紙で除菌し対峙培養試験を行った。消化液10mlを遠心(3000rpm、20min)することで固液分離を行い、沈殿物を固形分とし、上清を0.45μm及び0.2μmのフィルターでろ過して、通過したものをろ液とした。なお、対象の植物病原菌はホウレンソウ萎凋病の原因菌であるフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)とした。
【0034】
(2)結果・考察
各消化液を植物病原菌と対峙培養したところ、試験を行った全ての植物病原菌に対して生育抑制効果を示した。一例として、牛糞由来のメタン発酵消化液がフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)の菌糸伸長を抑制した例を示す(
図1)。
【0035】
また、固体液体が混じったスラリー状のものと、消化液を固液分離した濾液をろ紙に浸して、上部にホウレンソウ萎凋病菌を、下部に消化液の無濾過(無濾過区)もしくは濾液を吸収した濾紙(濾液区)を静置し、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)と対峙培養試験を行った。
【0036】
結果を
図2に示す。
図2に示すように、無濾過区で特に抑止効果を示し、微生物などを取り除いた濾液区ではほとんど抑止効果を示していなかった。これらの結果より、消化液中の固形分中に植物病原菌抑制効果を示す物質が含まれていることが示唆された。
【0037】
2.メタン発酵消化液からの微生物の分離
植物病原菌の抑制に有効な無濾過区中の細菌を特定するため、以下の要領で各消化液からバチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株を単離した。単離したバチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株の特徴は以下のとおりである。
【0038】
(1)16S rRNAの塩基配列を基にした近縁種との相同性
シークエンス解析を行ったバチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株の16S rRNAの塩基配列(BioSample Accession:SAMD00282796、DDBJ INSDC accessionNo:AP024501 and AP024502)とインターネット上で公開されているデータベース(GenBank+EMBL+DDBJ+PDB)に登録されているバチルス・エスピー(Bacillus sp.)の既知種の16S rDNAの塩基配列とを基にCLUSTAL W (1.83)を用いてアライメントを行ったのちNJ法で系統樹を作成した(
図3)。なお、Out groupには近縁の属であるBacillus cereusを用いた。
【0039】
その結果、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株は、16SrRNA遺伝子配列の相同性が100%でバチルス(Bacillus)属の菌株と一致した。
【0040】
(2)細菌学的性質(API20NE)
細菌検査キットであるAPI20NEを用いて細菌学的性質を検討した結果、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株の細菌学的性質はバチルス(Bacillus)属の菌株と一致した。また、顕微鏡観察を行いグラム染色を行ったところ、当該菌がグラム陽性菌であることが判明した(
図4)。
【0041】
(3)分類学的位置(同定)
バチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株は、16S rRNAの塩基配列を基にした系統解析とその相同性からBacillus velezensis FZB42と近縁であることが示唆された。
【0042】
バチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株とBacillus velezensis FZB42は16S rRNAの塩基配列において非常に高い相同性を示したが、表現形質においては細菌学的性質が異なることから、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株(受託番号NITE P-03100)をバチルス(Bacillus)属と判断し、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)と同定した。
【0043】
単離したバチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株を植物病原菌と対峙培養をした結果、牛糞を原料とする消化液から菌糸伸長を顕著に抑制することが判明した。結果を
図5に示す。
【0044】
3.ポット栽培試験
バチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株の植物病原菌抑制効果を確認するため、以下の要領でポット栽培試験を実施した。
【0045】
(1)方法
バチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株をNB培地(組成(/L):肉エキス5g、NaCl 5g、ペプトン 10g、蒸留水1L)で24時間振盪培養した後、振盪培養液を遠心分離(3000rpm、10min)することによって得られた固形分(細菌菌体)に滅菌水を加えて細菌懸濁液を得た(1.0×106CFU/ml)。この細菌懸濁液を乾土1gあたり1.0×106CFUとなるようにフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)汚染土壌(1.0×105bud-cells/g)に流し込み、細菌の接種有無によるホウレンソウ萎凋病の発病程度(Disease severity)を比較した。
【0046】
(2)結果
結果を
図6に示す。フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)汚染土壌区(図中「F」と表記する)は、ホウレンソウ萎凋病の発病程度(Disease severity)が約80%であったのに対して、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株添加区(図中「F+AD-3」と表記する)では、ホウレンソウ萎凋病の発病程度(Disease severity)が約40%に抑制された。なお、図中「Untreated」は無処理区を示す。
【0047】
以上の結果、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)AD-3株の接種によってホウレンソウ萎凋病の発病が顕著に抑制されることが判明した。