(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167035
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】液晶デバイス用透明基材、および、調光シート
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1333 20060101AFI20221027BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
G02F1/1333 500
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072531
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 裕介
(72)【発明者】
【氏名】片岡 裕治
【テーマコード(参考)】
2H088
2H190
【Fターム(参考)】
2H088EA33
2H088GA06
2H088GA10
2H088HA01
2H088HA02
2H088HA03
2H088JA10
2H088KA27
2H190JB03
2H190JC07
2H190JD13
2H190KA11
2H190LA01
2H190LA22
(57)【要約】
【課題】液晶デバイス用透明基材が備える配向層における物理的な損傷を抑えることが可能な液晶デバイス用透明基材、および、調光シートを提供する。
【解決手段】第1基材11は、液晶デバイスが備える液晶層が含む液晶分子の配向方向を規制する配向層21と、配向層21が形成される下地層11Aとを含む。第1面11S1と、第1面11S1とは反対側の第2面11S2とを備える。第1面11S1は、配向層21が含む面であり、第2面11S2は、下地層11Aが含む面である。第1面11S1と第2面11S2との間の静摩擦係数が1.3以下であり、第1面11S1、または、下地層11Aの第2面11S2とは反対側の面に対する鉛筆硬度試験において、F以上の硬度を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶デバイスが備える液晶層が含む液晶分子の配向方向を規制する配向層と、前記配向層が形成される下地層とを含む液晶デバイス用透明基材であって、
第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを備え、
前記第1面は、前記配向層が含む面であり、
前記第2面は、前記下地層が含む面であり、
前記第1面と前記第2面との間の静摩擦係数が1.3以下であり、
前記第1面、または、前記下地層の前記第2面とは反対側の面に対する鉛筆硬度試験において、F以上の硬度を有する
液晶デバイス用透明基材。
【請求項2】
前記下地層は、ハードコート層を含み、
前記下地層の前記第2面とは反対側の面に対する鉛筆硬度試験において、F以上の硬度を有する
請求項1に記載の液晶デバイス用透明基材。
【請求項3】
前記下地層は、前記配向層に接する導電層を含み、
前記導電層は、前記液晶デバイス用透明基材の厚さ方向において、前記ハードコート層と前記配向層との間に位置する
請求項2に記載の液晶デバイス用透明基材。
【請求項4】
前記下地層は、
支持基材と、
前記支持基材に積層された接着層と、
前記接着層によって前記支持基材に貼り付けられた保護層と、を含み、
前記保護層が、前記第2面を含む
請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶デバイス用透明基材。
【請求項5】
前記下地層は、
支持基材と、
前記支持基材に積層され、複数の微粒子を含む易滑層を備え、
前記易滑層は、前記第2面を含み、
前記複数の微粒子は、一部が前記第2面に露出した前記微粒子を含む
請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶デバイス用透明基材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の液晶デバイス用透明基材と、
前記液晶デバイス用透明基材の前記第1面に接し、液晶分子を含む調光層を備える
調光シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶デバイス用透明基材、および、調光シートに関する。
【背景技術】
【0002】
リバース型の調光シートは、液晶分子を含む調光層、調光層の厚さ方向において調光層を挟む一対の導電層、および、調光層と導電層との間にそれぞれ位置する配向層を備えている。リバース型の調光シートでは、一対の導電層間に電圧が印加されていない状態において、配向層が液晶分子を垂直配向させる。これに対して、一対の導電層間に電圧が印加されている状態において、液晶分子は一対の導電層間に形成された電界に対して垂直に配向する。これにより、リバース型の調光シートは、一対の導電層間に電圧が印加されていない状態において相対的に低いヘイズを有し、一対の導電層間に電圧が印加されている状態において相対的に高いヘイズを有する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、調光シート、および、配向層を備える透明基材には、調光シートの量産化を可能にする観点から、ロールツーロール装置を用いた製造が可能であることが求められている。ロールツーロール装置を用いて透明基材が製造される場合には、ロールツーロール装置による透明基材の搬送時、ロールツーロール装置を用いた透明基材の巻き取り時、および、巻き取られた透明基材の運搬時などにおいて、透明基材、ひいては、透明基材が備える配向層に対して外力が作用し、これによって、配向層に物理的な損傷が生じる場合がある。このように、配向層を備える透明基材には、ロールツーロール装置を用いて透明基材を製造するがゆえの新たな課題が生じている。
【0005】
なお、こうした事項は、調光シート用の透明基材に限らず、ロールツーロール装置を用いて製造される他の液晶デバイス用の透明基材にも共通する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための液晶デバイス用透明基材は、液晶デバイスが備える液晶層が含む液晶分子の配向方向を規制する配向層と、前記配向層が形成される下地層とを含む液晶デバイス用透明基材である。液晶デバイス用透明基材は、第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを備える。前記第1面は、前記配向層が含む面であり、前記第2面は、前記下地層が含む面である。前記第1面と前記第2面との間の静摩擦係数が1.3以下であり、前記第1面、または、前記下地層の前記第2面とは反対側の面に対する鉛筆硬度試験において、F以上の硬度を有する。
上記課題を解決するための調光シートは、上記液晶デバイス用透明基材と、前記液晶デバイス用透明基材の前記第1面に接し、液晶分子を含む調光層を備える。
【0007】
上記液晶デバイス用透明基材によれば、第1面と第2面との間での静摩擦係数が1.3以下であるから、第1面が第2面と擦れた場合に、第1面が損傷することが抑えられる。また、第1面そのものあるいは下地層において配向層が形成される面が高い鉛筆硬度を有するから、第1面に対して外部から衝撃が加えられた場合にも、第1面が損傷しにくくなる。これにより、配向層の物理的な損傷を抑えることが可能である。
【0008】
上記液晶デバイス用前記下地層は、ハードコート層を含み、前記下地層の前記第2面とは反対側の面に対する鉛筆硬度試験において、F以上の硬度を有してもよい。この液晶デバイス用透明基材によれば、下地層における高い鉛筆硬度がハードコート層によって実現されるから、配向層が、液晶分子の配向を規制する機能と、高い硬度との両方を有する必要がないため、厚さおよび材料などを含む配向層の構成に対する制約を減らすことが可能である。
【0009】
上記液晶デバイス用透明基材において、前記下地層は、前記配向層に接する導電層を含み、前記導電層は、前記液晶デバイス用透明基材の厚さ方向において、前記ハードコート層と前記配向層との間に位置してもよい。
【0010】
上記液晶デバイス用透明基材によれば、液晶デバイス用透明基材の厚さ方向において、導電層が配向層とハードコート層との間に位置するから、液晶デバイスの導電層間に電圧が印加された場合に、液晶分子の駆動を可能とする強度を有した電界が、導電層間に形成される。
【0011】
上記液晶デバイス用透明基材において、前記下地層は、支持基材と、前記支持基材に積層された接着層と、前記接着層によって前記支持基材に貼り付けられた保護層と、を含み、前記保護層が、前記第2面を含んでもよい。
【0012】
上記液晶デバイス用透明基材によれば、第2面を含む保護層を支持基材とは別に備えるから、支持基材が第2面を含む場合に比べて、厚さおよび材料などを含む支持基材の構成に対する制約を減らすことが可能である。
【0013】
上記液晶デバイス用透明基材において、前記下地層は、支持基材と、前記支持基材に積層され、複数の微粒子を含む易滑層を備え、前記易滑層は、前記第2面を含み、前記複数の微粒子は、一部が前記第2面に露出した前記微粒子を含んでもよい。
【0014】
上記液晶デバイス用透明基材によれば、第2面を含む易滑層を支持基材とは別に備えるから、支持基材が第2面を含む場合に比べて、厚さおよび材料などを含む支持基材の構成に対する制約を減らすことが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、液晶デバイス用透明基材が備える配向層における物理的な損傷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の調光シートの構造を模式的に示す断面図。
【
図2】第1実施形態の調光シートが備える液晶デバイス用透明基材の構造を示す断面図。
【
図3】第1実施形態の液晶デバイス用透明基材を保管する際の状態を示す斜視図。
【
図4】第2実施形態の調光シートが備える液晶デバイス用透明基材の構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
図1から
図3を参照して、液晶デバイス用透明基材、および、調光シートの第1実施形態を説明する。
【0018】
[調光シート]
図1を参照して調光シートを説明する。
図1が示すように、調光シート10は、第1基材11、第2基材12、および、調光層13を備えている。調光層13は、液晶分子を含んでいる。調光層13は、液晶層の一例である。調光層13において、液晶分子の保持形式は、ポリマーネットワーク型(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)でもよいし、高分子分散型(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)でもよい。液晶分子は、負の誘電異方性を有している。言い換えれば、液晶分子はn型である。調光シート10の型式は、リバース型である。
【0019】
第1基材11および第2基材12の各々は、液晶デバイス用透明基材の一例である。各基材11,12は、可視光に対する透過性を有する。各基材11,12は、配向層を含む。配向層は、調光層13が含む液晶分子の配向方向を規制する。配向層は、垂直配向膜である。各基材11,12は、調光層13に接している。各基材11,12において、調光層13に接する面が、第1面である。以下、
図2を参照して、各基材11,12の構造をより詳しく説明する。
【0020】
[液晶デバイス用透明基材]
図2を参照して液晶デバイス用透明基材を説明する。
図2は、液晶デバイス用透明基材の一例である第1基材11の断面構造を示している。なお、第2基材12は、調光シート10の厚さ方向における位置が第1基材11とは異なる一方で、第2基材12が備える層は第1基材11が備える層と共通している。そのため以下では、第1基材11の構造を詳しく説明する一方で、第2基材12の構造の詳しい説明を省略する。
【0021】
図2が示すように、第1基材11は、配向層21と、配向層21が形成される下地層11Aとを含んでいる。配向層21は、下地層11Aに接している。第1基材11は、第1面11S1と、第1面11S1とは反対側の第2面11S2とを備えている。第1面11S1は、配向層21が含む面である。第2面11S2は、下地層11Aが含む面である。第1面11S1と第2面11S2との間の静摩擦係数が、1.3以下である。第1基材11は、第1面11S1、または、下地層11Aの第2面11S2とは反対側の面に対する鉛筆硬度試験において、F以上の硬度を有している。
【0022】
鉛筆硬度試験は、JIS K 5600-5-4:1999「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に準拠した方法によって行われる。
【0023】
下地層11Aは、ハードコート層23を含んでいる。第1基材11は、下地層11Aの第2面11S2とは反対側の面に対する鉛筆硬度試験において、F以上の硬度を有している。第1基材11によれば、下地層11Aにおける高い鉛筆硬度がハードコート層23によって実現されるから、配向層21が、液晶分子の配向を規制する機能と、高い硬度との両方を有する必要がない。そのため、配向層21そのものが高い鉛筆硬度を有する場合に比べて、厚さおよび材料などを含む配向層21の構成に対する制約を減らすことが可能である。
【0024】
下地層11Aは、配向層21に接する導電層22を含んでいる。導電層22は、第1基材11の厚さ方向において、ハードコート層23と配向層21との間に位置している。第1基材11の厚さ方向において、導電層22が配向層21とハードコート層23との間に位置するから、導電層22に対して電圧が印加された場合に、液晶分子の駆動を可能とする強度を有した電界が、第1基材11の導電層22と第2基材12の導電層との間に形成されやすい。
【0025】
下地層11Aは、支持基材24、接着層25、および、保護層26を備えている。接着層25は、支持基材24に積層されている。保護層26は、接着層25によって支持基材24に貼り付けられている。保護層26が、第2面11S2を含んでいる。第1基材11によれば、第2面11S2を含む保護層26を支持基材24とは別に備えるから、支持基材24が第2面11S2を含む場合に比べて、厚さおよび材料などを含む支持基材24の構成に対する制約を減らすことが可能である。
【0026】
ハードコート層23の強度は、支持基材24の強度よりも高い。そのため、下地層11Aがハードコート層23を含まない場合に比べて、下地層11A上に形成された配向層21の表面における硬度も高くなる。
【0027】
支持基材24は、第1基材11の厚さ方向において対向する一対の面を有する。保護層26が含む第2面11S2の表面粗さは、第1基材11が有する一対の面のうち、少なくとも接着層25に接する面の表面粗さよりも大きい。表面粗さは、JIS B 0601:2013「製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語,定義及び表面性状パラメータ」に規定される算術平均粗さRaである。
【0028】
配向層21は、垂直配向膜である。配向層21は、配向層21が広がる平面に対して液晶分子の長軸が直交するように液晶分子を配向させる。なお、配向層21と液晶分子の長軸とが形成する角度は、実質的に直角であると見なせる範囲において直角に対するずれを有してもよい。配向層21は、例えば、ポリアミック酸、ポリイミド、および、ポリビニルアルコール(PVA)などから形成される。配向層21の表面には、ラビング処理が施されてもよい。配向層21の厚さは、例えば20nm以上500nm以下であってよい。配向層21は、可視光に対する透過性を有する。
【0029】
導電層22は、例えば透明導電性酸化物(TCO)から形成される。TCOは、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、および、インジウム‐ガリウム‐亜鉛酸化物(IGZO)などであってよい。導電層22は、例えば、5nm以上100nm以下の厚さを有することができる。導電層22は、可視光に対する透過性を有する。
【0030】
ハードコート層23は、例えば、有機系材料、シリコン系材料、および、無機系材料のいずれかによって形成されてよい。有機系材料は合成樹脂であり、例えば、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂のいずれかであってよい。シリコン系材料は、シラン化合物であってよい。無機系材料は、金属酸化物であってよい。ハードコート層23は、例えば、1μm以上10μm以下の厚さを有することができる。ハードコート層23は、可視光に対する透過性を有する。ハードコート層23は、単層構造に限らず、多層構造を有してもよい。ハードコート層23が多層構造を有する場合には、ハードコート層23は、第1材料から形成される第1層と、第1材料とは異なる第2層から形成された第2層とを備えてよい。
【0031】
支持基材24は、例えば合成樹脂から形成される。合成樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、および、ポリエチレンナフタレート(PEN)などであってよい。支持基材24は、例えば、16μm以上250μm以下の厚さを有することができる。支持基材24は、可視光に対する透過性を有する。なお、支持基材24は、単層構造に限らず、多層構造を有してもよい。支持基材24が多層構造を有する場合には、支持基材24は、第1材料から形成された第1層と、第1材料とは異なる第2材料から形成された第2層とを備えてよい。
【0032】
接着層25は、各種の接着剤から形成される。接着剤は、例えば、ゴム系接着剤、アクリル系接着剤、および、シリコーン系接着剤であってよい。接着層25は、例えば、2μm以上100μm以下の厚さを有することができる。接着層25は、可視光に対する透過性を有する。
【0033】
保護層26は、合成樹脂から形成される。合成樹脂は、例えば、ポリエステルテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、および、ポリオレフィン(PO)などであってよい。保護層26は、例えば、25μm以上188μm以下の厚さを有することができる。保護層26は、可視光に対する透過性を有する。
【0034】
[作用]
図3を参照して、第1基材11の作用を説明する。
第1基材11を用いて調光シート10が製造される際には、第1基材11が、第1基材11の長手方向に沿って、ロールツーロール装置によって搬送される。このとき、第1基材11には、長手方向に沿って張力が印加され、かつ、第1基材11が、ロールツーロール装置が備えるガイドロールに接しながら長手方向に沿って搬送される。そのため、第1基材11の第1面11S1がガイドロールに接する場合には、配向層21が含む第1面11S1とガイドロールとの間において摩擦が生じる。第1面11S1に作用する摩擦力が第1面11S1の強度を超えた場合には、配向層21のうち、摩擦力が作用した部分に物理的な損傷である欠陥が生じる。欠陥は、配向層21の一部が欠損した部分である。
【0035】
図3が示すように、第1基材11は帯状を有するから、第1基材11をロールツーロール装置から他の装置に運搬する際、または、第1基材11を保管する際などには、第1基材11はコアCに巻き付けられたロール状を有する。第1基材11がコアCに巻き付けられた場合には、第1基材11の第1面11S1と第2面11S2との間において摩擦が生じる。第1面11S1に作用する摩擦力が第1面11S1の強度を超えた場合には、配向層21のうち、摩擦力が作用した部分に欠陥が生じる。
【0036】
また、第1基材11が運搬される際には、第1基材11に振動が加えられるから、第1基材11の第1面11S1の一部と、当該一部に接している第2面11S2の一部との間において摩擦が生じる。この場合にも、第1面11S1に作用する摩擦力が第1面11S1の強度を超えると、配向層21のうち、摩擦力が作用した部分に欠陥が生じる。
【0037】
この点、第1基材11によれば、第1面11S1と第2面11S2との間での静摩擦係数が1.3以下であるから、第1面11S1が第2面11S2と擦れた場合に、第1面11S1が損傷することが抑えられる。また、第1面11S1の下層が高い鉛筆硬度を有するから、第1面11S1に対して外部から衝撃が加えられた場合にも、第1面11S1が損傷しにくくなる。これにより、配向層21の物理的な損傷を抑えることが可能である。
【0038】
上述したように、配向層21は非常に薄い層であり、最大でも数百nm程度の厚さしか有しないことから、配向層21は、配向層21の下地層11Aに追従することによって、薄膜として存在するだけの強度を維持していると考えられる。この点、第1基材11は、支持基材24よりも強度の高いハードコート層23を有するから、下地層11Aの強度が高められ、下地層11Aに追従する配向層21の強度、ひいては第1面11S1における硬度も高められると考えられる。
【0039】
また、保護層26が含む第2面11S2の表面粗さが、支持基材24の表面粗さよりも大きいから、第1面11S1と第2面11S2との静摩擦係数が大きくなることが抑えられて、第1面11S1に作用する摩擦力が大きくなることも抑えられる。
【0040】
[実施例]
表1を参照して、実施例および比較例を説明する。
[実施例1‐1]
125μmの厚さを有したPETフィルム(コスモシャインA4300、東洋紡(株)製)(コスモシャインは登録商標)を準備した。アクリル系の塗料(ルシフラール NAB‐016、日本ペイント・インダストリアルコーティングス(株)製)(ルシフラールは登録商標)を固形分が40重量%となるようにメチルエチルケトン(MEK)を用いて調整することによって、裏面コート層を形成するための塗液を得た。PETフィルムの第2面にグラビアコーターを用いて塗液を塗布することによって塗膜を形成した。塗膜を80℃において1分間乾燥させた後、300mJ/cm2の条件で高圧水銀灯を用いて塗膜を露光することによって、2μmの厚さを有した裏面コート層を形成した。
【0041】
導電層の下地であるハードコート層用の塗料(リオデュラス LCH6701、トーヨーケム(株)製)(リオデュラスは登録商標)を固形分が50重量%となるようにMEKを用いて調整することによって、ハードコート層を形成するための塗液を得た。PETフィルムの第1面上にグラビアコーターを用いて塗液を塗布することによって塗膜を得た。塗膜を60℃において1分間乾燥した後、300mJ/cm2の条件で高圧水銀灯を用いて塗膜を露光することによって、2μmの厚さを有したハードコート層を形成した。
【0042】
ロールツーロールスパッタ装置に、ハードコート層が形成されたPETフィルムを設置した。次いで、スパッタ装置の処理槽内を0.4Paまで排気した後、アルゴンガスと酸素ガスとを処理槽内に導入した。90重量%の酸化インジウムと10重量%の酸化スズとの混合焼結ターゲットに電力を供給することによって、ターゲットをスパッタした。この際に、PETフィルムの温度を40℃に設定した。これにより、ハードコート層上に50nmの厚さを有したITO層を形成した。そして、ITO層を140℃において90分間加熱することにより、ITOを結晶化させた。ITO層が形成されたPETフィルムを巻き取った。
【0043】
接着層を備える保護フィルム(サニテクト SAT‐TM40125TG、(株)サンエー化研製)(サニテクトは登録商標)を準備し、ラミネーターを用いて裏面コート層に保護フィルムを貼り付けた。これにより、液晶デバイス用透明基材のうち、配向層が形成される下地層を得た。
【0044】
ポリアミック酸を主成分とする配向層用の塗料(サンエバー SE‐H682、日産化学(株)製)(サンエバーは登録商標)を固形分が5重量%となるように溶媒を用いて調整することによって、配向層を形成するための塗液を得た。なお、溶媒では、プロピレングリコールモノメチルエーテルとγブチルラクトンと重量比を以下のように設定した。
【0045】
プロピレングリコールモノメチルエーテル:γブチルラクトン=8:2
下地層のITO層上に、ロールコーターを用いて塗液を塗布することによって塗膜を形成した。塗膜を150℃において5分間乾燥することによって、100nmの厚さを有した配向層を形成した。これにより、液晶デバイス用透明基材を得た。そして、液晶デバイス用透明基材を巻き取った。液晶デバイス用透明基材を23℃かつ相対湿度が50%RHに保たれたクリーンルーム内で7日間保管した。その後、液晶デバイス用透明基材を調光シートの製造に用いた。
【0046】
一対の液晶デバイス用透明基材を準備した。一方の液晶デバイス用透明基材の配向層上に、イソプロピルアルコール(IPA)に分散したビーズスペーサーを塗布した。この際に、6μmの直径を有し、ジビニルベンゼンを主成分とするビーズスペーサーを用いた。また、第1面におけるビーズスペーサーの占有面積が1.5%となるように、ビーズスペーサーを塗布した。100℃においてIPAを乾燥させた後、ビーズスペーサーを有する下地層を巻き取った。
【0047】
調光層を形成するために、まず、以下の材料を混合して混合液を調整した。
ロックタイト 3736(登録商標、ヘンケル社製) 17.5重量部
1,9‐ノナンジオールメタクリレート 17.5重量部
次いで、混合液に、65重量部のn型液晶(MLC‐6608、メルク社製)を混合することによって、調光層を形成するための塗液を得た。
【0048】
第1巻出装置、第2巻出装置、ダイヘッドコーターを備える塗工装置、高圧水銀灯を備える照射装置、および、1つの巻取装置を備えるロールツーロール装置を用いて調光シートを製造した。なお、350nm以下の波長を有した光を照射しないように照射装置を設定した。ビーズスペーサーを有した液晶デバイス用透明基材を第1巻出装置から引き出し、ビーズスペーサーを有した配向層上に、ダイヘッドコーターを用いて調光層を形成するための塗液を塗布することによって塗膜を形成した。次いで、窒素雰囲気下において、20mW/cm2の条件で、塗液に対して30秒間にわたり紫外線を照射した。この際に、照射装置内の温度を25℃に設定した。これにより、塗膜を硬化させて、ポリマーネットワーク型の調光層を得た。第2巻出装置から引き出した液晶デバイス用透明基材を、液晶デバイス用透明基材の配向層が調光層に接するように調光層に貼り合わせることによって、実施例1の調光シートを得た。なお、液晶デバイス用透明基材を貼り合わせた後に、巻取装置を用いて調光シートを巻き取ることにより、ロール状の調光シートを得た。
【0049】
[実施例1‐2]
実施例1‐1において、保護フィルムを別の保護フィルム(SAT4538T‐JSL、(株)サンエー化研製)に変更した以外は、実施例1‐1と同様の方法によって、実施例1‐2の調光シートを得た。
【0050】
[実施例1‐3]
実施例1‐1において、ハードコート層を形成するための塗料を別の塗料(TP‐203Xコート剤、東洋インキ(株)製)に変更し、固形分が50重量%となるようにMEKを用いて調整することによって、ハードコート層を形成するための塗液を得た。PETフィルム上にグラビアコーターを用いて塗液を塗布することによって塗膜を得た。塗膜を60℃において1分間乾燥した後、250mJ/cm2の条件で高圧水銀灯を用いて塗膜を露光することによって、2μmの厚さを有したハードコート層を形成した。それ以外は、実施例1‐1と同様の方法によって、実施例1‐3の調光シートを得た。
【0051】
[実施例1‐4]
実施例1‐1において、ハードコート層の厚さを5μmに変更した以外は、実施例1‐1と同様の方法によって、実施例1‐4の調光シートを得た。
【0052】
[比較例1‐1]
実施例1‐1において、保護フィルムを別の保護フィルム(PT820、タマポリ(株)製)に変えた以外は、実施例1‐1と同様の方法によって、比較例1‐1の調光シートを得た。
【0053】
[比較例1‐2]
実施例1‐1において、ハードコート層を形成しない以外は、実施例1‐1と同様の方法によって、比較例1‐2の調光シートを得た。
【0054】
[評価方法]
[静摩擦係数]
各実施例および各比較例の下地層について、調光層をする前に、ITO膜の表面と、保護フィルムの表面との間の静摩擦係数を測定した。この際に、ポータブル摩擦計(トライボギアミューズTYPE:94i、新東科学(株)製)(トライボギアは登録商標)を用いて、静摩擦係数を測定した。
【0055】
[鉛筆硬度]
各実施例および各比較例の下地層について、調光層を形成する前に、ITO層の表面に対して鉛筆硬度試験を行った。この際に、JIS K 5600-5-4:1999「塗膜一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に準拠した方法を用いた。
【0056】
[欠陥の計数]
各実施例および各比較例の調光シートから、正方形状を有し、かつ、1辺の長さが1mである試験片を切り出した。電圧が印加されていない試験片に、照度が1000lux以上である三波長光源を用いて光を照射し、試験片に対して三波長光源とは反対側から目視によって調光シートを観察した。そして、2mm以上の長さを有する白濁した箇所を欠陥と見なして、各試験片が有する欠陥を計数した。なお、白濁した箇所は、配向層の配向規制力が不足し、これによって、液晶分子が配向しないことにより生じる。そのため、白濁した箇所は、配向層に欠陥が生じている箇所であると見なすことができる。
【0057】
[ヘイズ]
各実施例および各比較例の調光シートから、A3サイズの試験片を切り出した。各試験片において、各ITO層の一部を外部に露出させ、これによって調光シートに電圧を印加するための端子を形成した。各端子に導線を接続したのち、導線に交流電源装置を接続した。そして、各試験片について、電圧が印加されていない状態でのヘイズと、60Hzかつ40Vの電圧が印加されている状態でのヘイズとを測定した。ヘイズを測定する際には、JIS K 7136:2000「プラスチック-透明材料のヘーズの求め方」に準拠した方法を用いた。
【0058】
[評価結果]
各下地層の静摩擦係数および鉛筆硬度、および、各調光シートの欠陥数およびヘイズは、以下の表1に示す通りであった。
【0059】
【0060】
表1が示すように、実施例1‐1、実施例1‐3、および、実施例1‐4の下地層の静摩擦係数が0.4であり、実施例1‐2の下地層の静摩擦係数が1.3であることが認められた。これに対して、比較例1‐1の下地層の静摩擦係数が1.5であり、比較例1‐2の下地層の静摩擦係数が0.6であることが認められた。
【0061】
また、実施例1‐1および実施例1‐2の下地層の鉛筆硬度がHであり、実施例1‐3の下地層の鉛筆硬度がFであり、実施例1‐4の下地層の鉛筆硬度が2Hであることが認められた。これに対して、比較例1‐1の下地層の鉛筆硬度がHであり、比較例1‐2の下地層の鉛筆硬度が2Bであることが認められた。
【0062】
また、実施例1‐1および実施例1‐3の調光シートの欠陥数が5箇所/m2であり、実施例1‐2の調光シートの欠陥数が10箇所/m2であり、実施例1‐4の調光シートの欠陥数が7箇所/m2であることが認められた。これに対して、比較例1‐1および比較例1‐2の調光シートの欠陥数は50箇所/m2以上であることが認められた。
【0063】
このように、液晶デバイス用透明基材では、配向層が形成される下地層において、第1面と第2面との間における静摩擦係数が1.3以下であり、かつ、第2面とは反対側の面における鉛筆硬度がF以上である場合に、配向層の物理的な損傷が抑えられることが認められた。
【0064】
以上説明したように、液晶デバイス用透明基材、および、調光シートの第1実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)第1基材11によれば、第1面11S1と第2面11S2との間での静摩擦係数が1.3以下であるから、第1面11S1が第2面11S2と擦れた場合に、第1面11S1が損傷することが抑えられる。また、第1面そのものあるいは第1面の下層が高い鉛筆硬度を有するから、第1面に対して外部から衝撃が加えられた場合にも、第1面が損傷しにくくなる。これにより、配向層21の物理的な損傷を抑えることが可能である。
【0065】
(2)下地層11Aにおける高い鉛筆硬度がハードコート層23によって実現されるから、配向層21そのものが高い鉛筆硬度を有する場合に比べて、厚さおよび材料などを含む配向層21の構成に対する制約を減らすことが可能である。
【0066】
(3)導電層22が配向層21とハードコート層23との間に位置するから、導電層22に対して電圧が印加された場合に、液晶分子の駆動を可能とする強度を有した電界が、第1基材11の導電層22と第2基材12の導電層との間に形成されやすい。
【0067】
(4)第2面11S2を含む保護層26を支持基材24とは別に備えるから、支持基材24が第2面11S2を含む場合に比べて、厚さおよび材料などを含む支持基材24の構成に対する制約を減らすことが可能である。
【0068】
[第2実施形態]
図4を参照して、液晶デバイス用透明基材、および、調光シートの第2実施形態を説明する。第2実施形態では、液晶デバイス用透明基材が易滑層を備える点が、第1実施形態の液晶デバイス用透明基材とは異なっている。そのため以下では、第2実施形態において第1実施形態とは異なる構成を詳しく説明する一方で、第2実施形態において第1実施形態と共通する構成には第1実施形態と同一の符号を付すことによって、当該構成の詳しい説明を省略する。
【0069】
[液晶デバイス用透明基材]
図4を参照して液晶デバイス用透明基材を説明する。
図4は、液晶デバイス用透明基材の一例である第1基材11の断面構造を示している。なお、第2基材12は、調光シート10の厚さ方向における位置が第1基材11とは異なる一方で、第2基材12が備える層は第1基材11が備える層と共通している。そのため以下では、第1基材11の構造を詳しく説明する一方で、第2基材12の構造の詳しい説明を省略する。
【0070】
図4が示すように、第1基材11は、第1実施形態の第1基材11と同様に、配向層21と下地層11Aとを備えている。下地層11Aは、第1実施形態の第1基材11と同様に、導電層22、ハードコート層23、および、支持基材24を備えている。第1基材11は、さらに易滑層31を備えている。易滑層31は、複数の微粒子31Pを含んでいる。易滑層31は、第2面11S2を含んでいる。複数の微粒子31Pは、一部が第2面11S2に露出した微粒子31Pを含んでいる。言い換えれば、一部が露出した微粒子31Pが、第2面11S2には複数位置している。
【0071】
第1基材11によれば、第2面11S2を含む易滑層31を支持基材24とは別に備えるから、支持基材24が第2面11S2を含む場合に比べて、厚さおよび材料などを含む支持基材24の構成に対する制約を減らすことが可能である。
【0072】
易滑層31が含む第2面11S2の算術平均粗さRaは、例えば、5nm以上94nm以下であってよい。算術平均粗さRaが5nm以上であることによって、第1面11S1と第2面11S2との間での静摩擦係数を低下させることが可能である。また、算術平均粗さRaが94nm以下であることによって、下地層11Aのヘイズが高まる程度の微粒子31Pを易滑層31が含むことを抑え、これによって、第1基材11を備える液晶デバイスにおいて透明時のヘイズが高まることが抑えられる。
【0073】
易滑層31は、例えば合成樹脂によって形成されてよい。合成樹脂は、例えば、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂のいずれかであってよい。易滑層31は、例えば、1μm以上10μm以下の厚さを有することができる。なお、易滑層31の厚さは、微粒子31Pが位置しない部分における厚さである。易滑層31は、可視光に対する透過性を有する。
【0074】
微粒子31Pは、例えば合成樹脂によって形成されてよい。微粒子31Pを一次粒子として用いる場合には、微粒子31Pの直径は、易滑層31の厚さよりも大きいことが好ましい。この場合、微粒子31Pの直径は、例えば、1.5μm以上15μm以下であってよい。また、微粒子31Pを二次凝集した二次粒子として用い、これによって、微粒子31Pを易滑層31から露出させることによって静摩擦係数を低下させることも可能である。この場合には、微粒子31Pの直径は易滑層31の厚さより小さくてもよい。なお、微粒子31Pをより高次の粒子として用いることも可能である。
【0075】
[作用]
第2実施形態の第1基材11によっても、第1実施形態の第1基材11と同様に、第1基材11がロールツーロール装置によって搬送されるとき、第1基材11がロールツーロール装置によって巻き取られるとき、および、巻き取られた第1基材11が運搬されるときにおいて、配向層21に物理的な損傷が生じることが抑えられる。
【0076】
[実施例]
表2を参照して、実施例および比較例を説明する。
[実施例2‐1]
実施例1‐1において、PETフィルムに接着層によって保護フィルムを接着することに代えて、以下に記載の方法で易滑層を形成した以外は、実施例1‐1と同様の方法によって、実施例2‐1の調光シートを得た。すなわち、易滑層用の塗料(リオデュラス LCH6701、トーヨーケム(株)製)(リオデュラスは登録商標)に、平均粒径が2μmのアクリル粒子(テクポリマー SSX‐102、積水化成品工業(株)製)(テクポリマーは登録商標)を0.2重量%添加した。そして、アクリル粒子を添加した塗料を固形分が40重量%となるようにMEKを用いて調整することによって、易滑層を形成するための塗液を得た。PETフィルムの第1面にグラビアコーターを用いて塗液を塗布することによって塗膜を形成した。塗膜を80℃において1分間乾燥させた後、300mJ/cm2の条件で高圧水銀灯を用いて塗膜を露光することによって、アクリル粒子が位置しない部分の厚さが1μmの厚さを有した易滑層を形成した。
【0077】
[実施例2‐2]
実施例2‐1において、アクリル粒子の添加量を1.5重量%に変更した以外は、実施例2‐1と同様の方法によって、実施例2‐2の調光シートを得た。
【0078】
[実施例2‐3]
実施例2‐1において、アクリル粒子の添加量を3.0重量%に変更した以外は、実施例2‐1と同様の方法によって、実施例2‐3の調光シートを得た。
【0079】
[実施例2‐4]
実施例2‐1において、アクリル粒子の添加量を0.1重量%に変更した以外は、実施例2‐1と同様の方法によって、実施例2‐4の調光シートを得た。
【0080】
[実施例2‐5]
実施例1‐3において、PETフィルムに接着層によって保護フィルムを接着することに代えて、実施例2‐1と同様の方法によって易滑層を形成した以外は、実施例1‐3と同様の方法によって、実施例2‐5の調光シートを得た。
【0081】
[実施例2‐6]
実施例2‐1において、ハードコート層の厚さを5μmに変更した以外は、実施例2‐1と同様の方法によって、実施例2‐6の調光シートを得た。
【0082】
[実施例2‐7]
実施例2‐1において、アクリル粒子の添加量を4.0重量%に変更した以外は、実施例2‐1と同様の方法によって、実施例2‐7の調光シートを得た。
【0083】
[比較例2‐1]
実施例2‐1において、易滑層にアクリル粒子を添加しなかった以外は、実施例2‐1と同様の方法によって、比較例2‐1の調光シートを得た。
【0084】
[比較例2‐2]
実施例2‐1において、ハードコート層を形成しなかった以外は、実施例2‐1と同様の方法によって、比較例2‐2の調光シートを得た。
【0085】
[評価方法]
[表面粗さ]
白色干渉計(VertScan、(株)菱化システム製)を用いて、易滑層が含む第2面の算術平均粗さRaを測定した。この際に、長方形状を有する視野であって、幅が1.408mmであり、長さが1.885mmである視野において算術平均粗さRaを測定した。また、JIS B 0601:2013に準じた方法によって、算術平均粗さRaを測定した。
【0086】
なお、静摩擦係数の測定、鉛筆硬度の測定、欠陥の計数、および、ヘイズの測定は、第1実施形態の実施例と同様の方法で行った。ただし、本実施例では、調光シートのヘイズを測定した方法と同様の方法で、下地層のヘイズも測定した。
【0087】
[評価結果]
各下地層の静摩擦係数および鉛筆硬度、および、各調光シートの欠陥数およびヘイズは、以下の表2に示す通りであった。
【0088】
【0089】
表2が示すように、実施例2‐1から実施例2‐7の下地層では、静摩擦係数が0.1以上1.3以下の範囲内に含まれることが認められた。これに対して、比較例2‐1の下地層の静摩擦係数は1.5であり、比較例2‐2の下地層の静摩擦係数は0.6であることが認められた。また、実施例2‐1から実施例2‐7の下地層では、第2面の算術平均粗さRaが5以上122以下の範囲内に含まれることが認められた。これに対して、比較例2‐1の下地層において、第2面の算術平均粗さRaは3nmであり、比較例2‐2の下地層において、第2面の算術平均粗さRaは8nmであることが認められた。
【0090】
また、実施例2‐1から実施例2‐7の下地層では、鉛筆硬度がF以上2H以下の範囲内に含まれることが認められた。これに対して、比較例2‐1の下地層の鉛筆硬度はHであり、比較例2‐2の下地層の鉛筆硬度は2Bであることが認められた。
【0091】
また、実施例2‐1から実施例2‐7の調光シートでは、欠陥数が0箇所/m2以上10箇所/m2の範囲内に含まれることが認められた。これに対して、比較例2‐1および比較例2の調光シートでは、欠陥数が50箇所/m2以上であることが認められた。
【0092】
このように、液晶デバイス用透明基材では、配向層が形成される下地層において、第1面と第2面との間における静摩擦係数が1.3以下であり、かつ、下地層における第2面とは反対側の面での鉛筆硬度がF以上である場合に、配向層の物理的な損傷が抑えられることが認められた。また、下地層のヘイズが上昇することを抑える観点では、第2面の算術平均粗さRaが5nm以上94nm以下の範囲に含まれることが好ましいことが認められた。
【0093】
以上説明したように、液晶デバイス用透明基材、および、調光シートの第2実施形態によれば、上述した(1)から(3)に加えて、以下に記載の効果を得ることができる。
(5)第1基材11によれば、第2面11S2を含む易滑層31を支持基材24とは別に備えるから、支持基材24が第2面11S2を含む場合に比べて、厚さおよび材料などを含む支持基材24の構成に対する制約を減らすことが可能である。
【0094】
[変更例]
上述した各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[下地層]
・各実施形態の下地層11Aはハードコート層23を備えているが、下地層11Aの第2面11S2とは反対側の面においてF以上の鉛筆硬度が実現されれば、下地層11Aはハードコート層23を備えなくてもよい。この場合には、例えば、支持基材24がF以上の鉛筆硬度を実現する程度に高い強度を有すればよい。
【0095】
・第1実施形態の下地層11Aは保護層26を備えているが、第1面11S1と第2面11S2との間の静摩擦係数が1.3以下であることが実現されれば、下地層11Aは保護層26を備えなくてもよい。なお、下地層11Aが保護層26を備えない場合には、支持基材24に保護層26を接着するための接着層25も不要である。この場合には、例えば、支持基材24が第2面11S2を備え、かつ、第2面11S2が、第1面11S1との間における静摩擦係数が1.3以下となる程度に高い算術平均粗さRaを有すればよい。
【0096】
・第2実施形態の下地層11Aは易滑層31を備えているが、第1面11S1と第2面11S2との間の静摩擦係数が1.3以下であることが実現されれば、下地層11Aは易滑層31を備えなくてもよい。この場合には、例えば、支持基材24が第2面11S2を備え、かつ、第2面11S2が、第1面11S1との間における静摩擦係数が1.3以下となる程度に高い算術平均粗さRaを有すればよい。
【0097】
・導電層22は、下地層11Aの厚さ方向において、支持基材24とハードコート層23との間に位置してもよい。この場合であっても、下地層11Aがハードコート層23を有するから、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。なお、この場合には、下地層11Aの厚さ方向において、導電層22と第1面11S1との間の距離が拡張されるから、液晶分子の駆動により高い電圧を有する場合がある。
【0098】
[配向層]
・配向層21が含む第1面11S1において、鉛筆硬度がF以上であってもよい。この場合であっても、配向層21における物理的な損傷を抑えることができる。なお、下地層11Aがハードコート層23を有しなくとも配向層21の強度によってF以上の鉛筆硬度を実現することが可能である場合には、下地層11Aがハードコート層23を有しなくてもよい。
【0099】
[調光シート]
・調光シートの型式は、リバース型に限らずノーマル型でもよい。この場合には、第1基材11および第2基材12が備える配向層が水平配向膜であり、かつ、調光層13が含む液晶分子がp型の液晶分子であればよい。あるいは、第1基材11および第2基材12が備える配向層が垂直配向膜であり、調光層13が含む液晶分子がn型の液晶分子であり、かつ、調光シート10が、調光シート10の厚さ方向において一対の基材11,12を挟む一対の偏光板を備えればよい。
【0100】
[液晶デバイス]
・本開示の液晶デバイス用透明基材が適用される液晶デバイスは、上述した調光シートに限らず、例えば、液晶表示デバイスであってもよい。
【符号の説明】
【0101】
10…調光シート
11…第1基材
11A…下地層
12…第2基材
13…調光層
21…配向層
22…導電層
23…ハードコート層
24…支持基材
25…接着層
26…保護層
31…易滑層