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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167038
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】心電信号計測ベルト
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/256 20210101AFI20221027BHJP
   A61B 5/28 20210101ALI20221027BHJP
   A61B 5/276 20210101ALI20221027BHJP
【FI】
A61B5/256 210
A61B5/28
A61B5/276 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072538
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】日野 吉晴
(72)【発明者】
【氏名】舞田 剛
(72)【発明者】
【氏名】吉本 慎之介
(72)【発明者】
【氏名】石橋 和馬
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127LL13
4C127LL21
(57)【要約】
【課題】心電電極と皮膚角質層の間の信号伝導度を高めて、環境湿度の違いとは無関係に生体信号を安定した状態で計測し、心臓の拍動状況を正しく評価できるようにした心電信号計測ベルトを提供する。
【解決手段】心電信号計測ベルトは、人体の胸周りに装着されるベルト本体1と、ベルト本体1に設けた電極保持部11に保持される複数の心電電極36A・36B・36Cとを備えている。電極保持部11が保水機能を備える吸水材を含んで構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体への装着を担うベルト本体(1)と、ベルト本体(1)に設けられた電極保持部(11)と、電極保持部(11)に保持される複数の心電電極(36)とを備え、
電極保持部(11)が、保水機能を備える吸水材を含んで構成されていることを特徴とする心電信号計測ベルト。
【請求項2】
電極保持部(11)が、心電電極(36)の肌密着面側を覆うように配されたシート材を含み、
シート材が吸水材で構成されている、請求項1記載の心電信号計測ベルト。
【請求項3】
電極保持部(11)が、ベルト本体(1)の肌密着面側に固定されて、各心電電極(36)を出し入れ可能なポケット状に形成されたポケット本体(16)を有し、
ポケット本体(16)が吸水材を含んで構成されている、請求項1記載の心電信号計測ベルト。
【請求項4】
電極保持部(11)が、ベルト本体(1)の肌密着面側に固定されて、各心電電極(36)を出し入れ可能なポケット状に形成されたポケット本体(16)を有し、
ポケット本体(16)の肌密着面側に、複数の心電電極(36)を個別に露出させる複数個の電極窓(17)が開口されており、
各心電電極(36)をポケット本体(16)に収容した状態において、各心電電極(36)の肌密着面側が、各電極窓(17)から露出しており、
心電電極(36)の肌密着面側が、ポケット本体(16)に着脱可能に装着した電極カバー(18)で覆われており、
電極カバー(18)が吸水材で構成されている、請求項1記載の心電信号計測ベルト。
【請求項5】
ポケット本体(16)および電極カバー(18)のそれぞれが、吸水材で構成されている、請求項4記載の心電信号計測ベルト。
【請求項6】
ポケット本体(16)の肌密着面側に、複数の心電電極(36)を個別に露出させる複数個の電極窓(17)が開口されており、
各心電電極(36)をポケット本体(16)に収容した状態において、各心電電極(36)の肌密着面側が各電極窓(17)から露出している、請求項3記載の心電信号計測ベルト。
【請求項7】
電極保持部(11)に電極ユニット(2)が収容されており、
電極ユニット(2)が、ベースマット(34)と、ベースマット(34)に固定される電極マット(35)と、各電極マット(35)の肌密着面側に固定される複数の心電電極(36)とを備えており、
ベースマット(34)および電極マット(35)が、それぞれ吸水材で構成されている請求項1記載の心電信号計測ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓の拍動に伴う心電信号を計測する心電信号計測ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の心電信号計測ベルトは例えば特許文献1に公知である。特許文献1の生体センサベルト(心電信号計測ベルト)は、胸周りに装着されるセンサベルト(ベルト本体)と、センサベルトの肌接触面に設けられる3個の心電電極などで構成される。心電電極の一つは、共通電極(設置電極)であって、ユーザーの背中側に配置され、残る2個の心電電極は胸部左右に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-253610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の生体センサベルトを使用する場合には、心電電極を肌面に密着させて、心電電極と皮膚の角質層との間の伝導度を高める必要があるが、心電信号の出方は環境湿度や、心電電極の装着位置の違いなどで、計測結果にばらつきを生じやすい。とくに、環境湿度が低く乾燥しやすい寒期には、人体からの発汗が少ないこともあって、心電電極と皮膚角質層の間の伝導度が低下しやすい。そのため、心電信号を雑音の少ない安定した状態で計測することができず、心臓の拍動状況を正しく評価できないことがあった。
【0005】
本発明の目的は、環境湿度が低い状態においても、心電電極と皮膚角質層の間の信号伝導度を高めて生体信号を安定した状態で計測することができる心電信号計測ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の心電信号計測ベルトは、人体への装着を担うベルト本体1と、ベルト本体1に設けられた電極保持部11と、電極保持部11に保持される複数の心電電極36とを備える。そして、電極保持部11が、保水機能を備える吸水材を含んで構成されていることを特徴とする。
【0007】
電極保持部11が、心電電極36の肌密着面側を覆うように配されたシート材を含む。このシート材が吸水材で構成されている。
【0008】
電極保持部11が、ベルト本体1の肌密着面側に固定されて、各心電電極36を出し入れ可能なポケット状に形成されたポケット本体16を有する。このポケット本体16が吸水材を含んで構成されている。
【0009】
電極保持部11は、ベルト本体1の肌密着面側に固定されて、各心電電極36を出し入れ可能なポケット状に形成されたポケット本体16を有する。ポケット本体16の肌密着面側に、複数の心電電極36を個別に露出させる複数個の電極窓17が開口されており、各心電電極36をポケット本体16に収容した状態において、各心電電極36の肌密着面側が、各電極窓17から露出しており、心電電極36の肌密着面側が、ポケット本体16に着脱可能に装着した電極カバー18で覆われている。この電極カバー18が吸水材で構成されている。
【0010】
ポケット本体16および電極カバー18のそれぞれが、吸水材で構成されている。
【0011】
ポケット本体16の肌密着面側に、複数の心電電極36を個別に露出させる複数個の電極窓17が開口されている。各心電電極36をポケット本体16に収容した状態において、各心電電極36の肌密着面側が各電極窓17から露出している。
【0012】
電極保持部11に電極ユニット2が収容されている。電極ユニット2は、ベースマット34と、ベースマット34に固定される電極マット35と、各電極マット35の肌密着面側に固定される複数の心電電極36とを備えている。ベースマット34および電極マット35が、それぞれ吸水材で構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る心電信号計測ベルトのように、心電電極36を保持する電極保持部11が保水機能を備える吸水材を含んで構成されていると、計測に先立って予め電極保持部11を構成する吸水材に水分を含浸させておくことで、電極保持部11から漏れ出る水分によって心電電極36の周囲を高湿度状態とすることができる。これにより、環境湿度が低い場合でも、心電電極36の周囲を高湿度状態として、心電電極36と皮膚角質層の間の信号伝導度を高めることができるので、心臓の拍動に伴う生体信号をより安定的に計測することができる。また、特殊構造の心電電極を使用する必要がなく、心電信号計測ベルトの全体コストを削減することができる。
【0014】
電極保持部11が、心電電極36の肌密着面側を覆うように配されたシート材を含み、このシート材が吸水材で構成されていると、シート材を介して、心電信号を心電電極36に間接的に伝導させることができる。このとき、シート材に予め水分を含浸させておくことで、水分を含浸するシート材を肌面に密着させることができるとともに、シート材から漏れ出る水分によって心電電極36の周囲を高湿度状態とすることができるので、環境湿度が低い場合でも、心電電極36と皮膚角質層の間の信号伝導度を高めて、心臓の拍動に伴う生体信号を安定的に計測することができる。
【0015】
電極保持部11が、ベルト本体1の肌密着面側に固定されて、各心電電極36を出し入れ可能なポケット状に形成されたポケット本体16を有し、ポケット本体16が吸水材を含んで構成されていると、心電電極36を保持するポケット本体16に保水機能を付与することができる。これによれば、保水機能を発揮させるための部材を別途に付加する必要はなく、構造の簡素化を図って、心電信号計測ベルトの全体コストを削減できる。
【0016】
電極保持部11は、ベルト本体1の肌密着面側に固定されて、各心電電極36を出し入れ可能なポケット状に形成されたポケット本体16を有し、ポケット本体16の肌密着面側に、複数の心電電極36を個別に露出させる複数個の電極窓17が開口されており、各心電電極36をポケット本体16に収容した状態において、各心電電極36の肌密着面側が、各電極窓17から露出しており、心電電極36の肌密着面側が、ポケット本体16に着脱可能に装着した電極カバー18で覆われており、電極カバー18が吸水材で構成されている形態を採ることができる。これによれば、肌面に触れる電極カバー18をポケット本体16から取外して、新規な電極カバー18と交換することで、電極カバー18を常に衛生的な状態とすることができる。
【0017】
ポケット本体16および電極カバー18のそれぞれが、吸水材で構成されていると、心電電極36の周辺部やポケット本体16の内外面における湿度を高めて、心電電極36と皮膚角質層の間の信号伝導度をさらに高めることができる。したがって、心臓の拍動に伴う生体信号を的確に計測し、心臓の拍動状況を正しく評価することができる。
【0018】
ポケット本体16の肌密着面側に、複数の心電電極36を個別に露出させる複数個の電極窓17が開口されており、各心電電極36をポケット本体16に収容した状態において、各心電電極36の肌密着面側が各電極窓17から露出していると、心電信号を肌面に密着する心電電極36に直接的に伝導させることができるので、心電信号が電極カバー18等を介して各心電電極36に間接的に伝導される場合に比べて、心電信号をより明確に計測することができる。この場合においても、電極保持部11が保水機能を備える吸水材を含んで構成されているため、予め電極保持部11を構成する吸水材に水分を含浸させておくことで、電極保持部11から漏れ出る水分により心電電極36の周囲を高湿度状態とすることができる。したがって、環境湿度が低い場合でも、心電電極36と皮膚角質層の間の信号伝導度を高めることができ、心臓の拍動に伴う生体信号をより安定的に計測することができる。
【0019】
電極保持部11に収容される電極ユニット2を構成するベースマット34と、ベースマット34に固定される電極マット35とが吸水材で構成されていると、これらベースマット34および電極マット35の両者に水分を保持させることができるので、各心電電極36の周辺部やポケット本体16の内面における湿度を高めて、各心電電極36と皮膚角質層の間の信号伝導度を高めることができる。また、各マット34・35は弾性変形可能であるので、心電信号計測ベルトを胸周りに装着した状態において、各マット34・35が弾性変形することで各心電電極36を肌面に密着させて、各心電電極36と皮膚角質層の間の信号伝導度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る心電信号計測ベルトの背面図である。
図2】心電信号計測ベルトを胸周りに装着した状態を示す正面図である。
図3】心電信号計測ベルトを肌密着面側から見た背面図である。
図4】心電信号計測ベルトを前面側から見た正面図である。
図5】第1ベルトを肌密着面側から見た分解背面図である。
図6図3のA-A線断面図である。
図7図3のB-B線断面図である。
図8】心電電極および制御ユニットを示すブロック図である。
図9】心電信号計測システムの概略を示す概念図である。
図10】心電信号計測ベルトの概略平面図である。
図11】胸周りに装着した心電信号計測ベルトの概略平面図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る心電信号計測ベルトの背面図である。
図13図12のC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態) 図1から図11に本発明に係る心電信号計測ベルトの第1実施形態を示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、図1および図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図2ないし図4において心電信号計測ベルトは、胸周り(人体)に装着されるベルト本体1と、ベルト本体1の肌密着面側に配置される電極ユニット2と、ベルト本体1の表面側に設けられる制御ユニット3などで構成される。ベルト本体1は、図3に向かって左側の第1ベルト4Lと、右側の第2ベルト4Rと、各ベルト4L・4Rの隣接端に連結される一対の締付ベルト5・6と、第1ベルト4Lの表面側、および第2ベルト4Rの肌密着面側に設けられる一対の面ファスナー7・8などで構成される。
【0022】
第1ベルト4Lは、ダブルラッセル生地に代表される通気性に富むメッシュ素材で形成されており、図5に示すように、肌密着面側に電極ユニット2を収容する電極保持部11と上下一対の市販の滑り止めテープ12とが配置され、表面側に制御ユニット3を収容するポケット13とループ状の面ファスナー7とが設けられている。また、第2ベルト4Rに隣接するベルト端部の下側と、表面側の上下中央の2か所には、矩形状のベルト環14・15が固定されている。電極保持部11は、非伸縮性のメッシュ素材で形成されるポケット本体16と、ポケット本体16の肌密着面側の3個所に開口される電極窓17と、電極窓17を覆う電極カバー18と、ポケット本体16の上開口の内面2か所に固定されるフラップ19などで構成される。電極カバー18はメッシュ素材で形成されている。電極窓17の上下にはループ状の面ファスナー20が、電極カバー18の上下にはフック状の面ファスナー21がそれぞれ設けられているので、電極カバー18は必要に応じてポケット本体16に対して着脱できる。フラップ19の遊端にはフック状の面ファスナー19aが設けられている(図6参照)。図5において符号22はハトメである。ポケット13の内面上部と対向する第1ベルト4Lには、ポケット13を止着する面ファスナー13aが設けられている(図7参照)。
【0023】
第2ベルト4Rは第1ベルト4Lと同様のメッシュ素材で形成されており、図3および図4に示すように肌密着面側に上下一対の市販品の滑り止めテープ25と、フック状の面ファスナー8とが設けられ、表面全体にループ状の面ファスナー26が設けられている。また、第1ベルト4Lに隣接するベルト端部の上側と、表面側の上下中央の2か所には、矩形状のベルト環27・28が固定されている。締付ベルト5の遊端の表面にはループ状の面ファスナー29が設けられている。第2ベルト4Rの左右長さは、第1ベルト4Lの左右長さに比べて小さく設定されている。第1ベルト4Lと第2ベルト4Rは、締付ベルト5・6を介して連結されている。詳しくは、締付ベルト5の右半は輪奈状に形成されており(図10参照)、この輪奈部分が第1ベルト4Lの表面側のベルト環15と、第2ベルト4Rのベルト端部のベルト環27に通されている。同様に、締付ベルト6の左半は輪奈状に形成されており、この輪奈部分が第2ベルト4Rの表面側のベルト環28と、第1ベルト4Lのベルト端部のベルト環14に通されている。したがって、各締付ベルト5・6の輪奈部分の周長の範囲内で、ベルト本体1の全長寸法を加減できる。また、各締付ベルト5・6を胸周り前方へ引っ張ることにより、第1ベルト4Lと第2ベルト4Rを互いに接近させて締め付けることができる。
【0024】
図5に示すように電極ユニット2は、左右に長い発砲ウレタン製のベースマット34と、ベースマット34の3個所に間隔をあけて固定される四角形状の発砲ウレタン製の電極マット35と、各電極マット35の肌密着面側に固定される第1~第3の心電電極36(36A・36B・36C)と、各心電電極36A・36B・36Cと制御ユニット3を接続する信号リード39で構成されている。3個の電極マット35の間のベースマット34には、電極ユニット2を胸周りに沿って曲がりやすくするための上凹み状の切欠部40が形成されている。各心電電極36A・36B・36Cは、耐食性に優れたチタン製またはステンレス製の薄板、あるいは可撓性に優れたフレキシブル基板などの、安価で入手しやすいシート状の電極材で形成されている。3個の心電電極36A・36B・36Cのうち、左側の第1心電電極36Aはアンプの正入力信号を出力し、右側の第3心電電極36Cはアンプの負入力信号を出力する電極からなり、中央の第2心電電極36Bはアンプ入力の同相モード信号を反転出力するRLD電極からなる。
【0025】
図6に示すように電極ユニット2は、ポケット本体16と第1ベルト4Lの間に差し込み装填されて、面ファスナー7に止着したフラップ19で抜け外れ不能に保持される。この状態の各心電電極36A・36B・36Cは、電極マット35の厚み相当分だけ電極窓17から突出するが、電極窓17に止着した電極カバー18で肌密着面が覆われる。つまり、各心電電極36A・36B・36Cを電極保持部11に収容した状態においては、各心電電極36A・36B・36Cの肌密着面が、ポケット本体16に着脱される電極カバー18で覆われる。制御ユニット3は、図7に示すように表面側のポケット13の内部に装着されて、ポケット13の開口上縁を面ファスナー13aで止着することで、抜け外れ不能に保持される。信号リード39は、ハトメ22を介して第1ベルト4Lの表面側へ導出されたのち、制御ユニット3に接続される。
【0026】
図8に示すように、制御ユニット3には電源となる電池(2次電池)42と、回路基板43とが設けられており、回路基板43には各心電電極36A・36B・36Cから出力された信号を処理する信号処理部44と、信号処理部44で処理された信号を発信する無線通信部45とが設けられている。図示していないが、電池42および回路基板43は四角形状のケースの内部に収容されており、ケースの外面には、電源スイッチ、充電用コネクター、および信号リード39用のコネクターなどが設けられている。心電信号計測ベルトを含む心電信号計測システムの概略を図9に示す。心電信号計測ベルトの無線通信部45から発信された信号は、スマートフォン46とインターネット回線47を介してサーバー48およびパーソナルコンピューター49へ送られ、予め蓄積されている心電信号と比較されて心臓の拍動状況が評価される。評価結果は、インターネット回線47を介してスマートフォン46に送信される。
【0027】
ベルト本体1を胸周りに正しく装着して、各心電電極36A・36B・36Cを適正な身体部位に配置し装着するために、ポケット本体16の肌密着面側であって、図5に向かって右側の電極窓17と中央の電極窓17の間に、心電電極36A・36B・36Cを適正な身体部位に装着するための位置基準となる位置指標50が形成されている。位置指標50は、ベルト本体1の長手方向線と直交する帯状の縦指標体51で形成されており、その左右中央には縦指標体51の長手方向と平行な中心表示52が線状に形成されている。縦指標体51はポケット本体16とは別の形成材で形成されていて、ポケット本体16の呈色状態と、縦指標体51の呈色状態が大きく異るものとされている。例えば、ポケット本体16が黒色のメッシュ素材で形成してある場合に、縦指標体51は青、赤、黄色などの有彩色の生地で形成されている。これにより、縦指標体51を一見するだけでその位置および姿勢を認識することができる。
【0028】
以上のように構成した心電信号計測ベルトは、使用に際して電極カバー18に水を噴霧して含侵させたうえで、図2および図11に示すように位置指標50の中心表示52が身体のみぞおちを通る縦体幹軸Pと合致し、かつ第2心電電極36Bが心臓の近傍に位置する状態で、第1ベルト4Lと第2ベルト4Rを胸周りに装着し、第2ベルト4Rの面ファスナー8を第1ベルト4Lの面ファスナー7に止着して仮止めする。さらに左右の締付ベルト5・6を体の前側へ引っ張った状態で、第1ベルト4L側の締付ベルト5の面ファスナー30を、第2ベルト4Rの表面側の面ファスナー26に止着する。同様に、第2ベルト4R側の締付ベルト6の面ファスナー31を、締付ベルト5の表面側の面ファスナー29に止着する。なお、環境湿度が高い夏季においては、予め電極カバー18に水を噴霧させないままで、ベルト装着部分の肌面で生じた汗の水分が、電極カバー18に吸着されることで、各心電電極36A・36B・36Cと皮膚角質層の間の信号伝導度を高めることができる。図11においては、図面が煩雑になるのを避けるために制御ユニット3などを省略している。
【0029】
本実施形態に係る心電信号計測ベルトでは、水分を含侵した状態の電極カバー18を肌面に密着させて心電信号を計測するので、心電信号が電極カバー18を介して心電電極36A・36B・36Cに間接的に伝導されるにもかかわらず、予め水分を含侵させた状態の電極カバー18を肌面に密着させて心電信号を計測することにより、各心電電極36A・36B・36Cと皮膚角質層の間の信号伝導度を高めて、心臓の拍動に伴う生体信号を雑音のない安定した状態で計測できる。したがって、環境湿度が低い場合でも、心臓の拍動に伴う生体信号を的確に計測して、心臓の拍動状況を正しく評価できる。さらに、電極カバー18を利用して水分を含侵させるので、電極保持部11に他の部材を付加して水分を含侵させる場合に比べて、構造を簡素化して心電信号計測ベルトの軽量化に寄与できるうえ、ベルト厚みが大きくなって心電信号計測ベルトの装着心地が損なわれるのを防止できる。
【0030】
心電電極36A・36B・36Cの肌密着面側を覆う電極カバー18は、必要に応じてポケット本体16に対して着脱できるようにした。こうした心電信号計測ベルトによれば、肌面に触れる電極カバー18をポケット本体16から取外して、新規な電極カバー18と交換し、あるいはポケット本体16から取外した電極カバー18を洗濯できるので、電極カバー18を常に衛生的な状態で使用できる。
【0031】
また、この心電信号計測ベルトを用いた場合、環境湿度が低い状態においても、心電電極36と皮膚角質層の間の信号伝導度を高めて生体信号を安定した状態で計測することができるので、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の目標3(すべての人に健康と福祉を)に貢献することができる。
【0032】
本実施形態に係る心電信号計測ベルトは、電極カバー18に加えて、ポケット本体16にも水分を含浸させるようにしてもよい。その場合には、ポケット本体16および電極カバー18に予め水分を含浸させておくことにより、各心電電極36A・36B・36Cの周辺部やポケット本体16の内外面における湿度を高めて、各心電電極36A・36B・36Cと皮膚角質層の間の信号伝導度を高めることができる。その場合のポケット本体16および電極カバー18は、連続気泡性の発砲プラスチックシート、保湿性に富む不織布シート、ガーゼ生地、編み生地などの吸水可能なシート材で形成すればよい。
【0033】
さらに、本実施形態に係る心電信号計測ベルトは、電極ユニット2を利用して水分を含浸させるようにしてもよい。詳しくは、電極ユニット2のベースマット34および電極マット35に水分を含浸させた状態で、心電信号計測ベルトを使用することにより、心電信号を計測してもよい。その場合には、電極カバー18をポケット本体16から分離した状態のままで、各心電電極36A・36B・36Cの肌密着面を電極窓17から露出させ、心電信号を皮膚角質層から各心電電極36A・36B・36Cへ直接的に伝導して心電信号を計測するとよい。
【0034】
上記のように、ベースマット34および電極マット35の両者に水分を保持させると、各心電電極36A・36B・36Cの周辺部やポケット本体16の内面における湿度を高めることができる。また、心電信号を皮膚角質層から各心電電極36A・36B・36Cへ直接的に伝導して生体信号を計測するので、心電信号を各心電電極36A・36B・36Cへ間接的に伝導する場合に比べて、心電信号を雑音の少ない状態で明確に計測できる。従って、たとえ環境湿度が低い場合でも、心臓の拍動に伴う心電信号を的確に計測して、心臓の拍動状況を正しく評価できる。さらに、各マット34・35は弾性変形可能であるので、心電信号計測ベルトを胸周りに装着した状態において、各マット34・35が弾性変形することで各心電電極36A・36B・36Cを肌面に密着させて、各心電電極36A・36B・36Cと皮膚角質層の間の信号伝導度を高めることができる。
【0035】
(第2実施形態) 図12図13は、本発明に係る心電信号計測ベルトの第2実施形態を示す。本実施形態では、ポケット本体16を第1ベルト4Lに固定して電極保持部11を構成し、電極窓17と電極カバー18は省略した。また、ポケット本体16は、連続気泡性の発砲プラスチックシート、保湿性に富む不織布シート、ガーゼ生地、編み生地などの、吸水性と保湿性に優れたシート材で形成して、ポケット本体16の心電電極36A・36B・36Cを覆う肌密着部分に、水分を含浸させるようにした。
【0036】
本実施形態に係る心電信号計測ベルトでは、第1実施形態の心電信号計測ベルトと同様に、使用に際してポケット本体16の心電電極36A・36B・36Cを覆う部分に水分を噴霧して含侵させ、あるいはベルト装着部の肌面で生じた汗の水分をポケット本体16吸着させることで、各心電電極36A・36B・36Cと皮膚角質層の間の信号伝導度を高めることができる。また、心電電極36A・36B・36Cを覆うポケット本体16に水分を含浸させるので、第1実施形態の心電信号計測ベルトに比べて、電極窓17と電極カバー18を省略した分だけ電極保持部11の構造を簡素化して、心電信号計測ベルトの全体コストをさらに削減できる。また、心電信号計測ベルトの軽量化と、ベルトの装着心地の向上にも寄与できる。
【0037】
上記以外に、ベルト本体1の肌密着面側には、少なくとも2個の心電電極36が設けてあってもよい。電極保持部11はポケット構造である必要はなく、各心電電極36A・36B・36Cをベルト本体1に対してずれ動かないように保持できる構造であれば足りる。例えば、左右の切欠部40の上縁部をベルト本体1に固定した面ファスナーで止着保持する構造であってもよい。電極ユニット2は、1個のベースマット34と3個の電極マット35で構成する必要はなく、独立した3個のベースマット34と3個の電極マット35で構成してあってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 ベルト本体
2 電極ユニット
11 電極保持部
16 ポケット本体
17 電極窓
18 電極カバー
34 ベースマット
35 電極マット
36 心電電極
図1
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図13