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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167041
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】アンカー装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/80 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
E02D5/80 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072543
(22)【出願日】2021-04-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】507183310
【氏名又は名称】アビエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】土居 学
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041GA01
2D041GB01
2D041GC01
2D041GC11
(57)【要約】
【課題】設置の作業を容易にするアンカー装置を提供する。
【解決手段】ボルト頭151a(152a)とナット270が、カラー260、ボルト掛け部320(330)及びアンカーパイプ100の後端部111の側壁を互いの間に挟み込みつつ緊締されている。前端部220が地中に固定されたアンカーロッド200が、ボルト151とボルト152の間を通るように配置されると共に、キャップ300の蓋部310に掛けられている。キャップ300は、地表より外部に配置されたアンカーパイプ100の後端部111に設けられている。アンカーロッド200の後端部210は、アンカーパイプ100側とは反対側から蓋部310に掛けられている。これによって、アンカーロッド200がアンカーパイプ100に作用する外力に対抗するようにアンカーパイプ100とアンカーロッド200が接続されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が地表より外部に配置され、他端部が地中に設置される管状の第1アンカーと、
前記第1アンカーに挿入されると共に、一端部が地表より外部に配置され、他端部が凝固剤によって地中に固定される第2アンカーと、
前記第1アンカーと前記第2アンカーを接続するための接続部材と、
前記第1アンカーと前記接続部材を固定するための二対の螺子部材と、を備えており、
前記接続部材が、
前記第1アンカーにおける前記一端部側の開口を少なくとも一方向に跨ぐように延びる第1壁部と、前記第1壁部における前記一方向に関する一端部から前記第1アンカーの他端部に向かって延びる第2壁部と、前記第1壁部における前記一方向に関する他端部から前記第1アンカーの他端部に向かって延びる第3壁部とを有しており、
前記二対の螺子部材のうち一方の対が前記第2壁部と前記第1アンカーの側壁とを互いの間に挟み込みつつ緊締されると共に、前記二対の螺子部材のうち他方の対が前記第3壁部と前記第1アンカーの側壁とを互いの間に挟み込みつつ緊締されることで、前記第1アンカーと前記接続部材が固定され、
前記第2アンカーの一端部が、
前記二対の螺子部材の間に配置されると共に、前記第1アンカーに作用する引き抜き方向の外力に対抗するように、前記第1アンカーに固定された前記第1壁部に、前記第1アンカー側とは反対側から掛けられ、又は固定されることを特徴とするアンカー装置。
【請求項2】
前記第1アンカーの一端部が円筒状であり、
前記第1アンカーの一端部の円周方向に関する前記第2壁部の端面から前記円周方向に切れ込んだ第1切り欠きが前記第2壁部に形成されており、
前記円周方向に関する前記第3壁部の端面から前記円周方向に切れ込んだ第2切り欠きが前記第3壁部に形成されており、
前記接続部材を、前記第1アンカーから離隔した状態から、前記第1壁部が前記開口と対向すると共に前記第2壁部と前記第3壁部が前記第1アンカーの一端部を挟み込むように前記第1アンカーの一端部に挿入した後、前記円周方向の一方に回転させることで前記二対の螺子部材の螺子軸が前記第1切り欠き及び前記第2切り欠きを貫通した状態となるように、前記接続部材が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアンカー装置。
【請求項3】
前記第2アンカーの一端部が、前記第1壁部を貫通して前記第1アンカーの外部へと突出した部分を有しており、
前記第2アンカーの一端部における前記第1アンカーの外部へと突出した部分に抑え部材が固定されており、
前記抑え部材が前記第1壁部と接触することにより、前記第2アンカーが前記第1アンカー側とは反対側から前記第1壁部に掛けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンカー装置。
【請求項4】
前記第1アンカー内の空間を仕切る仕切り板が前記第2アンカーに設けられており、
前記仕切り板が、前記第1アンカー中を前記第1アンカーの一端部側へと前記凝固剤が進入するのを抑制する手段として機能することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のアンカー装置。
【請求項5】
前記第1アンカー内の空間を仕切る仕切り板が前記第2アンカーに設けられており、
前記仕切り板が、前記第1アンカーの内表面に設けられた段差部に掛けられることで、前記第1アンカーに作用する引き抜き方向の外力に前記第2アンカーが対抗するように前記第1アンカーと前記第2アンカーを接続する手段として機能することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のアンカー装置。
【請求項6】
前記第2アンカーの前端部に前記凝固剤を撹拌するための撹拌構造が形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のアンカー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雪崩予防柵等の構造物を固定するための装置として、例えば特許文献1のようなアンカー装置がある。特許文献1のアンカー装置は、アンカーパイプ及びこれと係合させたアンカーロッドを備えている(図12)。アンカーロッドは、凝固剤によって地中に固定されている。よって、例えば、アンカーパイプを引き抜こうとするような外力がアンカーパイプの頭部に作用した際、アンカーパイプに係合したアンカーロッドが外力に対抗することになる。アンカーパイプに対するアンカーロッドの接続は、例えば、アンカーパイプの頭部に固定されたピンボルトをアンカーロッドの頭部の孔に貫通させることによってなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-225109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のアンカー装置によると、アンカーパイプを地中に設置後、アンカーロッドをアンカーパイプに挿入してから、アンカーパイプ内でピンボルトをアンカーロッドの頭部の孔に通す必要がある。
【0005】
このとき、アンカーロッドは、ピンボルトが通る位置にアンカーロッドの頭部の孔を位置合わせした上で、吊り下げながらその位置を保持しなければならない。アンカーロッドは、地中の奥深くまで届くように長尺に形成されることが多い。そのような長尺な部材を厳密に位置合わせしながら吊り下げ、なおかつ、アンカーパイプ内でピンボルトをアンカーロッドの頭部の孔に通さなければならない。かかる作業を現場で正確に行うのは極めて困難である。
【0006】
そこで、本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、設置の作業を容易にするアンカー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアンカー装置は、一端部が地表より外部に配置され、他端部が地中に設置される管状の第1アンカーと、前記第1アンカーに挿入されると共に、一端部が地表より外部に配置され、他端部が凝固剤によって地中に固定される第2アンカーと、前記第1アンカーと前記第2アンカーを接続するための接続部材と、前記第1アンカーと前記接続部材を固定するための二対の螺子部材と、を備えており、前記接続部材が、前記第1アンカーにおける前記一端部側の開口を少なくとも一方向に跨ぐように延びる第1壁部と、前記第1壁部における前記一方向に関する一端部から前記第1アンカーの他端部に向かって延びる第2壁部と、前記第1壁部における前記一方向に関する他端部から前記第1アンカーの他端部に向かって延びる第3壁部とを有しており、前記二対の螺子部材のうち一方の対が前記第2壁部と前記第1アンカーの側壁とを互いの間に挟み込みつつ緊締されると共に、前記二対の螺子部材のうち他方の対が前記第3壁部と前記第1アンカーの側壁とを互いの間に挟み込みつつ緊締されることで、前記第1アンカーと前記接続部材が固定され、前記第2アンカーの一端部が、前記二対の螺子部材の間に配置されると共に、前記第1アンカーに作用する引き抜き方向の外力に対抗するように、前記第1アンカーに固定された前記第1壁部に、前記第1アンカー側とは反対側から掛けられ、又は固定される。
【0008】
本発明によると、第2アンカーが二対の螺子部材の間を通るように配置されると共に接続部材の第1壁部に掛けられるか固定される。これによって、第2アンカーが第1アンカーに作用する外力に対抗するように第1アンカーと第2アンカーが接続される。かかる構成において、接続部材は第1アンカーの一端部に設けられており、この一端部は地表より外部に配置されている。また、第2アンカーは、第1アンカー側とは反対側、つまり、第1アンカーの外側から第1壁部に掛けられるか固定される。したがって、作業者は、第1アンカーを第2アンカーに接続する作業に当たり、第2アンカーを厳密に位置合わせしたりする必要はなく、また、第1アンカーの外側で作業することができる。このため、現場の作業が容易である。なお、本発明において、「前記第1アンカーに作用する引き抜き方向の外力に対抗するように」とは、第1アンカーに実際に引き抜き方向の外力が作用した装置のみが本発明に該当することを示すものではない。引き抜き方向の外力が第1アンカーに作用していなくても、仮にそのような外力が作用した場合には第2アンカーがかかる外力に対抗可能であるように装置が構成されていれば、かかる装置は本発明に該当し得る。
【0009】
本発明において、前記第1アンカーの一端部が円筒状であり、前記第1アンカーの一端部の円周方向に関する前記第2壁部の端面から前記円周方向に切れ込んだ第1切り欠きが前記第2壁部に形成されており、前記円周方向に関する前記第3壁部の端面から前記円周方向に切れ込んだ第2切り欠きが前記第3壁部に形成されており、前記接続部材を、前記第1アンカーから離隔した状態から、前記第1壁部が前記開口と対向すると共に前記第2壁部と前記第3壁部が前記第1アンカーの一端部を挟み込むように前記第1アンカーの一端部に挿入した後、前記円周方向の一方に回転させることで前記二対の螺子部材の螺子軸が前記第1切り欠き及び前記第2切り欠きを貫通した状態となるように、前記接続部材が形成されていることが好ましい。これによると、接続部材を円周方向の一方に回転させることで二対の螺子部材のそれぞれが接続部材の第1切り欠き及び第2切り欠きを貫通した状態となるため、引き抜き方向の外力に対して、第1アンカーと接続部材の固定が外れにくくなる。
【0010】
本発明において、前記第2アンカーの一端部が、前記第1壁部を貫通して前記第1アンカーの外部へと突出した部分を有しており、前記第2アンカーの一端部における前記第1アンカーの外部へと突出した部分に抑え部材が固定されており、前記抑え部材が前記第1壁部と接触することにより、前記第2アンカーが前記第1アンカー側とは反対側から前記第1壁部に掛けられていることが好ましい。これによると、第2アンカーの一端部における第1アンカーの外部へと突出した部分には抑え部材が固定されており、抑え部材が第1壁部と接触することにより、第2アンカーが第1アンカー側とは反対側から第1壁部に掛けられている。よって、引き抜こうとする外力が第1アンカーに作用した際に、抑え部材を通じて第2アンカーが引き抜き方向の外力に対抗することができる。
【0011】
本発明において、前記第1アンカー内の空間を仕切る仕切り板が前記第2アンカーに設けられており、前記仕切り板が、前記第1アンカー中を前記第1アンカーの一端部側へと前記凝固剤が進入するのを抑制する手段として機能することが好ましい。これによると、仕切り板が、第1アンカー中を一端部へと凝固剤が進入するのを抑制することができるため、凝固剤を土中の所定箇所に適切に配置することができる。
【0012】
本発明において、前記第1アンカー内の空間を仕切る仕切り板が前記第2アンカーに設けられており、前記仕切り板が、前記第1アンカーの内表面に設けられた段差部に掛けられることで、前記第1アンカーに作用する引き抜き方向の外力に前記第2アンカーが対抗するように前記第1アンカーと前記第2アンカーを接続する手段として機能することが好ましい。これによると、第2アンカーの他端部は凝固剤によって地中に固定されており、第1アンカー内の空間を仕切る第2アンカーの仕切り板が第1アンカーの内表面に設けられた段差部に掛けられているため、第1アンカーに引き抜こうとする外力が作用した際に、引き抜き方向の外力に第2アンカーが対抗することができる。
【0013】
本発明において、前記第2アンカーの前端部に前記凝固剤を撹拌するための撹拌構造が形成されていることが好ましい。これによると、装置の設置時、撹拌構造により凝固剤が撹拌されることで、地中の土砂と凝固剤が混ざり合って、地中に凝固剤がむらなく広がりやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るアンカー装置のアンカーパイプ、アンカーロッドの正面図である。
図2図1のアンカーパイプのA-A線に沿った部分拡大断面図及びアンカーロッドの部分拡大図である。
図3】アンカーパイプの本体管と接続部材の接続を示す斜視図である。
図4】アンカーロッドに設けられた仕切り板を示す斜視図である
図5】本発明の実施形態に係るアンカー装置の設置方法及び使用方法のフロー図である。
図6図5の掘削工程におけるアンカーパイプの断面図及びビットの正面図である。
図7図5のアンカーパイプ引き上げ工程と、アンカー上部取り外し工程の様子を示す図である。
図8】凝固剤撹拌工程において、アンカーロッドの撹拌構造が凝固剤を撹拌する様子を示す部分断面図である。
図9】(a)アンカーロッドの撹拌構造の変形例を示す図である。(b)アンカーロッドの撹拌構造の別の変形例を示す図である。
図10】(a)~(d)アンカーロッドの撹拌構造のさらに別の変形例を示す図である。
図11】(a)前端部に構造体が設けられたアンカーロッドの斜視図である。(b)(c)アンカーロッドの前端部に設けられる構造体の変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0016】
本実施形態に係るアンカー装置1は、例えば、法面に設置される防護柵等の構造体とワイヤー等で連結して構造体を固定するために設けられる。図1に示すように、本実施形態に係るアンカー装置1は、アンカーパイプ100(本発明でいう第1アンカー)と、アンカーロッド200(本発明でいう第2アンカー)と、キャップ300(本発明でいう接続部材)と、ボルト151及びナット270と、ボルト152及びナット270(本発明でいう二対の螺子部材)とを有している。図中、アンカー装置1を地中に埋設する際の掘削方向を前方、その逆を後方とし、その前後方向と直角に交わる方向を左方向及び右方向とする。アンカー装置1は鋼製又はステンレス製である。
【0017】
図2に示すように、アンカーパイプ100は本体管110を有する。本体管110は円筒状の部材であり、後端部111(本発明でいう一端部)が地表より外部に設置され、前端部113(本発明でいう他端部)が地中に設置される。後端部111の内表面には後述の部分管120(図6参照)と取り外し可能に接続する雌螺子部112が形成されている。本体管110の前端部113付近の内表面には段差部117が形成されている。段差部117は、本体管110の内周面に沿ってアンカーパイプ100の円周方向(以下、円周方向)全体に亘ってリング状に延びている。本体管110の壁部における雌螺子部112付近には貫通孔115及び116が形成されている。貫通孔115は図中左側の壁部を、貫通孔116は図中右側の壁部をそれぞれ左右方向に貫通している。貫通孔115にはボルト151、貫通孔116にはボルト152が通されている。ボルト151及び152のボルト頭151a及び152aは本体管110の内表面に接するように固定されている。ボルト頭151a及び152aと左右方向の逆側には、螺子軸151b及び152bがそれぞれ形成されている。
【0018】
図2に示すように、アンカーロッド200は円柱状であり、アンカーパイプ100に挿入され、その内部空間の中心を通る部材である。アンカーロッド200は、円柱状の本体部230及び本体部230に固定された仕切り板250を有している。本体部230の後端部210(本発明でいう一端部)が、ボルト151とボルト152の間を通って地表より外部に配置され、前端部220(本発明でいう他端部)は、後述する凝固剤400によって地中に固定される。後端部210の外表面には雄螺子部211が形成されている。前端部220には、円周方向に広がる螺旋羽根221(本発明でいう撹拌構造)が形成されている。本体部230の径は、アンカーパイプ100の段差部117の内径より小さい。図4に示すように、仕切り板250は本体部230に固定された円盤状の部材である。仕切り板250には、円盤の中心に前後方向に貫通する貫通孔251が形成されている。本体部230が貫通孔251に通されており、前後方向に関してアンカーロッド200の中心よりも螺旋羽根221に近い位置で、溶接により貫通孔251と本体部230とが固定されている。仕切り板250の外径は、アンカーパイプ100の最大内径とほぼ同じ大きさである。仕切り板250は、アンカーパイプ100の前端部113付近の位置において、アンカーパイプ100内の空間を仕切っている。仕切り板250が、段差部117に後方から掛けられることで、アンカーパイプ100とアンカーロッド200が接続されている。また、仕切り板250は、後述する凝固剤400がアンカーパイプ100中を後端部111側へと進入するのを抑制する。
【0019】
図2に示すように、キャップ300は、蓋部310(本発明でいう第1壁部)、ボルト掛け部320(本発明でいう第2壁部)、及び330(本発明でいう第3壁部)を有する、アンカーパイプ100とアンカーロッド200を接続する部材である。蓋部310は円盤状の部材であり、アンカーパイプ100における後端部111側の開口の円周を跨ぐように延びる。蓋部310は、その円盤の軸方向に沿った貫通孔311を有している。キャップ300は、円盤状の蓋部310の円周方向、径方向及び軸方向がアンカーパイプ100の円周方向、径方向及び軸方向と概ね一致するようにアンカーパイプ100の後端部111に設置されている。貫通孔311の径は、アンカーロッド200の後端部210の外径より僅かに大きい。
【0020】
ボルト掛け部320及び330は、蓋部310の外周に沿って湾曲した板状の部材である。ボルト掛け部320は、蓋部310の左端部からアンカーパイプ100の前端部113に向かって延びている。ボルト掛け部330は、蓋部310の右端部から前端部113に向かって延びている。ボルト掛け部320及び330は、蓋部310の中心軸に関して対称に位置する。径方向に関してボルト掛け部320の内表面からボルト掛け部330の内表面までの距離は、アンカーパイプ100の後端部111の外径とほぼ同じである。図3に示すように、ボルト掛け部320には、円周方向に沿った一方向であるr1方向に面した端面からr2方向に切れ込んだ切り欠き部321(本発明でいう第1切り欠き)が形成されている。r1方向及びr2方向とは円周方向に沿った方向である。r1方向とは後方から見て時計回りの方向である。r2方向とは後方から見て反時計回りの方向である。ボルト掛け部330には、r1方向に面した端面からr2方向に切れ込んだ切り欠き部331(本発明でいう第2切り欠き)が形成されている。切り欠き部321及び331は、左右方向から見てほぼ矩形の概略形状をしており、前後方向に関する長さがボルト151及び152の径より僅かに大きくなるように形成されている。また、r1方向に関する長さは、ボルト151及び152の径より大きい。なお、防護柵等の構造体とアンカー装置1とを連結するワイヤー等は、先端が輪状に形成された上で、図3の二点鎖線に示すようにボルト151及び152と地面との間に掛けられる。
【0021】
キャップ300は、ボルト掛け部320及び330の切り欠き部321及び331にボルト151及び152の螺子軸151b及び152bが掛けられ、且つ、貫通孔311にアンカーロッド200の後端部210が貫通した状態で、アンカーパイプ100の後端部111に被されている。アンカーロッド200の後端部210には、後方からナット350(本発明でいう抑え部材)が取り付けられて固定されている。ナット350は、その雌螺子部が後端部210の雄螺子部211と噛み合うように取り付けられている。ナット350は蓋部310に対して締め付けられており、蓋部310と接触している。このように、アンカーロッド200が、ボルト151及びナット270と、ボルト152及びナット270との間を通るように配置されていると共に、キャップ300の蓋部310に掛けられている。
【0022】
螺子軸151b及び152bには、ボルト掛け部320及び330の左右方向の外側からカラー260が挿入されている。カラー260は、円筒状の鋼又はステンレス製の部材である。カラー260の外径は、ナット270の外径よりも小さい。さらにその外側からナット270が螺子軸151b及び152bに取り付けられている。つまり、ボルト頭151aとナット270が、左右方向の外側から内側に向かってカラー260、ボルト掛け部320、及びアンカーパイプ100の後端部111の側壁を互いの間に挟み込みつつ緊締されている。同様に、ボルト頭152aとナット270が、左右方向の外側から内側に向かってカラー260、ボルト掛け部330、及び後端部111の側壁を互いの間に挟み込みつつ緊締されている。このようにして、アンカーパイプ100とキャップ300が固定されている。
【0023】
アンカーロッド200を地中に固定する凝固剤400には、グラウト材、モルタル、及びセメント等のいずれかが単独で、又は複数が組み合わされて使用される。
【0024】
次に、本実施形態のアンカー装置1の設置手順の一例について、図5のフロー図に基づいて説明する。
【0025】
まず、アンカーを設置する現場において、アンカーパイプ100、アンカーロッド200等、アンカー装置1を構成する部材と合わせて、図6に示すエアハンマー600や部分管120等のその他の機材や部材を準備する。次に、アンカー延長工程(S1)において、図6に示すように、部分管120の雄螺子部123と本体管110の雌螺子部112が接続される。部分管120は、図6及び図7に示すように、円筒状の部材であり、本体管110の外径と同じ大きさの外径を有する。前端部122の外表面には雄螺子部123が形成されている。雄螺子部123は本体管110の雌螺子部112と接続される。
【0026】
次に、掘削工程(S2)において、エアハンマー600を用いて地表から前方に向かって地中を掘削しつつアンカーパイプ100を地中に挿入する。図6に示すように、エアハンマー600は、削岩機610、インナーロッド620、及びビット650を有する。ビット650は、ビット本体651、パイロットビット652、及び可変ビット653を有する。ビット650は、一方向に回転させると可変ビット653がビット本体651からその側方へと飛び出し、逆方向に回転させると可変ビット653がビット本体651中に収容されるように構成されている。ビット本体651内に可変ビット653が収容された状態では、ビット本体651がアンカーパイプ100内に挿入された際に段差部117の内側を通過可能である。ビット本体651の後端部には係合部651aが設けられている。係合部651aの外径は、アンカーパイプ100の内径とほぼ同じ大きさである。また、エアハンマー600は、図示しない圧搾空気供給用のコンプレッサ、圧搾空気用レシーバータンク、稼働時に生じるオイルを回収するオイルタンク等を備えている。
【0027】
まず、アンカーパイプ100内空にインナーロッド620及びビット650を挿入させて、前端部113にビット650を設置させる。アンカーパイプ100の段差部117と係合部651aを係合させる。これにより、係合部651aが段差部117の後端部の端面を押すことにより、ビット650が前進するのに連動してアンカーパイプ100が地中を前進する。パイロットビット652及び可変ビット653の両方の掘削により、アンカーパイプ100より若干大きい径の掘削孔500が形成される。部分管120の後端部121がわずかに地表に出る程度まで、ビット650によって地中を掘削しつつアンカーパイプ100を地中に挿入させる。
【0028】
次に、アンカーパイプ引き上げ工程(S3)において、図7に示すように掘削工程によって形成された掘削孔500の途中にアンカーパイプ100の前端部113が位置するように、アンカーパイプ100を掘削孔500に沿って引き抜き方向に移動させる。具体的には、可変ビット653がビット本体651からアンカーパイプ100の若干外側まで飛び出した状態で削岩機610を駆動して掘削方向とは逆方向の引き抜き方向にインナーロッド620を後退させる。そして、部分管120が掘削孔500から出ると共に、本体管110の後端部111が掘削孔500から出て、貫通孔115及び116が地表に出る程度まで、アンカーパイプ100を引き抜き方向に移動させる。これにより、掘削孔500には、前端部113より奥の空間に凝固剤投入部700が形成される。
【0029】
次に、ビット取り外し工程(S4)において、アンカーパイプ100からインナーロッド620及びビット650を取り外す。まず、削岩機610にビット650を掘削時とは逆方向に回転させることで、可変ビット653をビット本体651内に収容する。次に、削岩機610を駆動し、掘削方向とは逆方向の引き抜き方向にインナーロッド620を後退させて、インナーロッド620及びビット650をアンカーパイプ100から取り出す。
【0030】
次に、アンカー上部取り外し工程(S5)において、図7に示すように、部分管120の雄螺子部123と本体管110の雌螺子部112との接続を外す。
【0031】
次に、アンカーロッド挿入工程(S6)において、地上の後端部111の開口からアンカーパイプ100内にアンカーロッド200を挿入する。そして、アンカーロッド200の仕切り板250をアンカーパイプ100の段差部117に掛ける。これにより、アンカーパイプ100とアンカーロッド200を接続させる。また、アンカーパイプ100の前端部113から、掘削孔500における凝固剤投入部700内にアンカーロッド200の前端部220を突出させる。
【0032】
次に、凝固剤投入工程(S7)において、アンカーロッド200を地中に固定するため、凝固剤400を凝固剤投入部700に投入する。アンカーパイプ100の後端部111の開口から粉末状の凝固剤400を投入すると、凝固剤400が凝固剤投入部700に溜まる。なお、ゲル状の凝固剤400を使用する場合、凝固剤400を凝固剤投入部700に導くためのガイドパイプ(図示なし)等をアンカーパイプ100内に挿入する。ガイドパイプに伝わせるようにして、凝固剤投入部700に凝固剤400を注入する。
【0033】
次に、凝固剤撹拌工程(S8)において、凝固剤投入部700に投入された凝固剤400を螺旋羽根221で撹拌する。図8に示すように、アンカーロッド200を円周方向に時計回り又は反時計回りに回転させることで、凝固剤投入部700内の土砂、土砂中の水分及び凝固剤400が混ざり合って、凝固剤投入部700内にむらなく凝固剤400が広がる。
【0034】
次に、キャップ固定工程(S9)において、キャップ300を用いて、アンカーパイプ100とアンカーロッド200をしっかりと接続させる。図3に示すように、ボルト掛け部320及び330の前方にボルト151及び152が配置されていない状態で、キャップ300をアンカーパイプ100から離隔させて、蓋部310をアンカーパイプ100の後端部111の開口と対向させる。キャップ300をアンカーパイプ100の後方から前方へと移動させ、ボルト掛け部320とボルト掛け部330がアンカーパイプ100の後端部111を挟み込むように後端部111に挿入する。キャップ300を、図2に示す通りアンカーロッド200の後端部210がボルト151とボルト152の間を通り、貫通孔311を貫通してアンカーパイプ100の外部へと突出するように後端部111に被せる。
【0035】
次に、キャップ300を後方から見てr1方向(本発明でいう円周方向の一方)に回転させて、ボルト151の螺子軸151bが切り欠き部321を、ボルト152の螺子軸152bが切り欠き部331をそれぞれ貫通した状態となるように、ボルト151及びボルト152をそれぞれ切り欠き部321及び331に係合させる。次に、カラー260を、それぞれボルト151及び152に貫通させて接続させる。次に、ナット270を螺子軸151b及び152bにそれぞれ噛み合わせた状態で緊締する。これによって、ボルト頭151a及び152aとナット270の間にカラー260、ボルト掛け部320及び330、並びにアンカーパイプ100の側壁を挟み込ませて互いに固定させることで、キャップ300とアンカーパイプ100を接続させる。
【0036】
次に、ナット350を蓋部310に対して緊締しつつ、アンカーロッド200の雄螺子部211に固定する。このように、キャップ300の蓋部310からアンカーパイプ100側とは反対側に突出したアンカーロッド200の後端部210が、ナット350を通じて蓋部310に掛けられている。これにより、アンカーロッド200の後端部210は、後述の通りアンカーパイプ100に作用する引き抜き方向の外力に対抗するように、アンカーパイプ100側とは反対側から蓋部310に掛けられている。
【0037】
次に、固化工程(S10)において、凝固剤400が固化する。これにより、アンカーロッド200の前端部220が凝固剤投入部700において地中に固定される。アンカーロッド200が地中に固定されることで、アンカー装置1が確実に地中に固定される。例えば、地表とボルト151及び152の間においてアンカーパイプ100の後端部111に、図3に示すようにワイヤーが掛けられる。そして、ワイヤーが引っ張られることで、後方に引き抜こうとする外力(本発明でいう引き抜き方向成分)がアンカーパイプ100に作用したとする。この外力に対し、アンカーパイプ100とこれに接続されたアンカーロッド200が対抗する。すなわち、側方からの土圧を受けたアンカーパイプ100自体が引き抜き方向の外力に対抗する。さらに、アンカーロッド200が仕切り板250及びキャップ300を介してアンカーパイプ100に接続されている。したがって、アンカーパイプ100が外力によって後方に移動しようとすると、ボルト151及び152を介してキャップ300に引き抜き方向の力が作用する。この引き抜き方向の力は、さらに、後方からキャップ300に対して緊締されたナット350を介してアンカーロッド200に作用する。同様に、後方から段差部117に掛けられた仕切り板250を通じ、引き抜き方向の力がアンカーロッド200に作用する。これに対し、凝固剤投入部700において地中に固定されていることにより、アンカーロッド200がかかる引き抜き方向の力に対抗する。このように、キャップ300及び仕切り板250は、アンカーパイプ100に作用する引き抜き方向の外力に対してアンカーロッド200が対抗するように、アンカーパイプ100とアンカーロッド200を接続する。
【0038】
以上のようなアンカー装置1によると、アンカーロッド200がボルト151及びナット270と、ボルト152及びナット270との間を通るように配置されると共に、キャップ300の蓋部310に掛けられる。これによって、アンカーロッド200がアンカーパイプ100に作用する外力に対抗するようにキャップ300を用いてアンカーパイプ100とアンカーロッド200が接続されている。かかる構成において、キャップ300はアンカーパイプ100の後端部111に設けられている。この後端部111は、地表より外部に配置されている。また、アンカーロッド200は、アンカーパイプ100側とは反対側、つまり、アンカーパイプ100の外側から蓋部310に掛けられている。したがって、アンカーパイプ100とアンカーロッド200を接続する作業は、地表より外側且つアンカーパイプ100の外部において、キャップ300にアンカーロッド200を掛けることによってなされる。よって、作業者は、アンカーパイプ100をアンカーロッド200に接続する作業に当たり、アンカーロッド200をアンカーパイプ100に対して厳密に位置合わせしたりする必要はなく、また、アンカーパイプ100の外側で作業することができる。このため、現場の作業が容易である。
【0039】
また、キャップ300をr1方向に回転させることで螺子軸151b及び152bのそれぞれが、切り欠き部321及び切り欠き部331を貫通した状態となるため、引き抜き方向の外力に対して、アンカーパイプ100とキャップ300の固定が外れにくくなる。
【0040】
また、アンカーロッド200の後端部210におけるアンカーパイプ100の外部へと突出した部分にはナット350が固定されており、ナット350が蓋部310と接触することにより、アンカーロッド200がアンカーパイプ100側とは反対側から蓋部310に掛けられている。よって、引き抜こうとする外力がアンカーパイプ100に作用した際に、ナット350を通じてアンカーロッド200が引き抜き方向の外力に対抗することができる。
【0041】
また、仕切り板250が、アンカーパイプ100中を後端部111へと凝固剤400が進入するのを抑制することができるため、凝固剤400を土中の所定箇所に適切に配置することができる。
【0042】
また、アンカーロッド200の前端部220は凝固剤400によって地中に固定されており、アンカーパイプ100内の空間を仕切る仕切り板250がアンカーパイプ100の内表面に設けられた段差部117に掛けられているため、アンカーパイプ100に引き抜こうとする外力が作用した際に、引き抜き方向の外力にアンカーロッド200が対抗することができる。
【0043】
また、螺旋羽根221により凝固剤400が撹拌されることで、地中の土砂と凝固剤が混ざり合って、地中に凝固剤400がむらなく広がりやすい。また、螺旋羽根221は、固化した凝固剤400からのアンカーロッド200の前端部220の引き抜けに対する抵抗となる。したがって、アンカーロッド200が引き抜き方向の力に対抗しやすい。
【0044】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これら
の実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した
実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均
等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。以下、上述の実施形態に係る変形例に
ついて説明する。また、上述の実施形態と共通の部分については上述と同じ符号を用いる
と共に、説明を適宜省略する。
【0045】
前記実施形態では、蓋部310には、アンカーロッド200がアンカーパイプ100側とは反対側から掛けられている。貫通孔311にアンカーロッド200の後端部210が貫通した状態で、キャップ300がアンカーパイプ100の後端部111に被されている。ナット350は、その雌螺子部が後端部210の雄螺子部211と噛み合うように取り付けられている。後端部210には、後方からナット350が取り付けられて固定されている。しかし、ナット350を使用せずに(あるいは、ナット350を使用したうえで)、蓋部310とアンカーロッド200の後端部210(あるいは、ナット350)とが溶接等で固定されていてもよい。
【0046】
前記実施形態では、アンカーロッド200の後端部210にナット350が取り付けられている。しかし、ナット350の代わりに、例えば左右方向に突出する棒状の突出部(本発明でいう抑え部材)が後端部210と一体に設けられてもよい。この突出部は、左右方向の長さがアンカーパイプ100の内半径より小さい。また、蓋部310には貫通孔311と共に、上記突出部が通過可能な形状を有する追加の貫通孔が形成されているとよい。かかる構成において、キャップ300をアンカーパイプ100に設置する際、アンカーロッド200の後端部210と上記突出部の両方が蓋部310の貫通孔311と上記追加の貫通孔を通過するように、キャップ300をアンカーパイプ100の後方から前方に移動させる。その後、図3のr1方向にキャップ300を回転させると、ボルト掛け部320の切り欠き部321がボルト151の螺子軸151bに掛けられ、ボルト掛け部330の切り欠き部331がボルト152の螺子軸152bに掛けられると共に、上記突出部が上記追加の貫通孔とちょうど対向した位置から外れ、蓋部310に後方から掛けられた状態となる。これにより、アンカーロッド200が蓋部310に掛けられるようにアンカーロッド200と蓋部310が構成されていてもよい。
【0047】
前記実施形態では、蓋部310が円盤状であるが、かかる形状に限られない。例えば、アンカーパイプ100の開口を一部を跨ぐような長方形状を呈した蓋部が採用されてもよい。この場合、蓋部の長尺方向の両端部にボルト掛け部320及び330が設けられれば良い。
【0048】
前記実施形態では、ボルト掛け部320には、円周方向に沿った一方向であるr1方向に面した端面から円周r2方向に切れ込んだ切り欠き部321が形成されている。ボルト掛け部330には、r1方向に面した端面からr2円周方向に切れ込んだ切り欠き部331が形成されている。しかし、それぞれのボルト掛け部に、前方から後方に向かって切り欠き部が形成されていてもよい。この場合、それぞれの切り欠き部を後方から前方に向かって、螺子軸151b及び螺子軸152bに掛ける。そして、前記実施形態同様に、ボルト掛け部及びの左右方向の外側からカラー260を挿入し、さらにその外側からナット270が螺子軸151b及び152bに取り付けられる。
【0049】
前記実施形態では、本体部230に仕切り板250が固定されている。しかし、本体部の外表面に雄螺子部、仕切り板に雌螺子部が形成されており、前後方向に本体部と仕切り板250の接続位置が変更できるようにしてもよい。また、本体部の外表面に雄螺子部が形成されており、その雄螺子部と噛み合うように本体部に取り付けられた一対のナットで前後から仕切り板250が締め付けられることで仕切り板250が固定されてもよい。
【0050】
前記実施形態では、アンカーロッド200の本体部230の前端部220に円周方向に広がる螺旋羽根221が形成されている。しかし、図9(a)のアンカーロッド800に示すように、その前端部801に外表面と直角をなすように固定された4つの台形状の羽根部材802によって撹拌構造が形成されていてもよい。かかる撹拌構造は、螺旋羽根221と同様、凝固剤400の撹拌に用いられると共に、凝固剤400が固化した後、引き抜きに対する抵抗として機能する。また、図9(b)のアンカーロッド810に示すように、その前端部811に固定された、前方に向かって延びる複数のワイヤー812が設けられていてもよい。かかるワイヤー812は、凝固剤400が固化した後、引き抜きに対する抵抗として機能する。ワイヤー812は、螺旋羽根221や羽根部材802等の撹拌構造と併せて設けられてもよい。
【0051】
さらに、図10(a)~図10(d)のアンカーロッド820~850のようにロッドの前端部に撹拌部821~851が設けられてもよい。撹拌部821は、ロッドの下端部をらせん状に湾曲させることで形成されている。撹拌部831は、平板をらせん状に捩ることで形成されている。撹拌部841は、円環状の平板を一か所、その円周方向に沿って切断した後、らせん状になるように捻ることで形成されている。撹拌部851は、半円状の平板851a及び851bを互いに対して若干傾斜するように配置しつつロッドの下端に固定することで形成されている。
【0052】
また、図11(a)に示すように、アンカーロッド200を引き抜き方向の外力に強固に対抗させるための構造体860がロッドの前端部に設けられていてもよい。構造体860は、側壁に複数の貫通孔861が形成された円筒部材を有している。構造体860はナット862及び863によってアンカーロッド200に固定されている。アンカーロッド200の前端部には前後方向に連続するように雄螺子部が形成されている。なお、雄螺子部はナット862の固定位置及びナット863の固定位置にそれぞれ部分的に形成されていてもよい。ナット862及び863はかかる雄螺子部と噛み合いつつ構造体860を前後から強固に挟み込むように緊締されている。これによると、アンカーロッド200の前端部の周囲に凝固剤400が流し込まれた際に、凝固剤が貫通孔861を通じて構造体860内に進入する。その後に凝固剤が凝固することにより、アンカーロッド200が構造体860と一体になって地中に固定される。よって、アンカーロッド200を引き抜こうとする外力に対して構造体860が抵抗する。したがって、アンカーロッド200が外力に強固に対抗する。円筒部材である構造体860の代わりに、図11(b)に示す角型の筒状部材である構造体870が用いられてもよい。構造体870の側壁には複数の貫通孔871が形成されている。これにより、貫通孔871を通じて構造体870内に凝固剤が侵入するので、構造体860と同様、アンカーロッド200が構造体870と一体になって地中に固定される。
【0053】
なお、構造体860や870が、ナット862及び863を用いず溶接等によりアンカーロッド200に固定されてもよい。この場合、例えば、図11(c)に示す角型の筒状部材である構造体880が用いられてもよい。構造体880の側壁には複数の貫通孔881が形成されている。また、構造体880には前壁882及び後壁884が形成されている。前壁882には貫通孔883が、後壁884には貫通孔885が形成されている。構造体880がアンカーロッド200に固定される際、貫通孔883及び885を前後方向にアンカーロッド200の前端部に貫通させる。そして、アンカーロッド200の表面と前壁882及び後壁884とを溶接によって固定する。
【0054】
前記実施形態では、本発明の第1アンカーに対応する部材としてアンカーロッド200が用いられている。このアンカーロッド200の代わりに、ワイヤーを多数束ねて棒状に形成した部材が第1アンカーに対応する部材として用いられてもよい。
【0055】
前記実施形態では、掘削工程(S2)において、アンカーパイプ100の本体管110と部分管120を接続した状態で掘削が実行される。つまり、2本の管部材を接続したものを掘削に用いている。しかし、3本以上の管部材を互いに接続したものを掘削に用いてもよい。この場合、最初に1本の管部材を用いて掘削を開始し、掘削が進むに連れて管部材を1本ずつ接続して本体管110を順に延長していくことで深い位置まで掘削を進めることができる。この場合、最後に接続される管部材が部分管120に対応する。
【符号の説明】
【0056】
1 アンカー装置
100 アンカーパイプ
117 段差部
151、152 ボルト
200 アンカーロッド
221 螺子羽根
250 仕切り板
270 ナット
300 キャップ
310 蓋部
320、330 ボルト掛け部
321、331 切り欠き部
350 ナット
400 凝固剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2021-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が地表より外部に配置され、他端部が地中に設置される管状の第1アンカーと、
前記第1アンカーに挿入されると共に、一端部が地表より外部に配置され、他端部が凝固剤によって地中に固定される第2アンカーと、
前記第1アンカーと前記第2アンカーを接続するための接続部材と、
前記第1アンカーと前記接続部材を固定するための二対の螺子部材と、を備えており、
前記接続部材が、
前記第1アンカーが延びる方向と直交する一方向において前記第1アンカーにおける前記一端部を跨ぐように延びる第1壁部と、前記第1壁部から前記第1アンカーの他端部に向かって前記第1アンカーの外表面に沿って延びる第2壁部と、前記第1壁部から前記第1アンカーの他端部に向かって前記第1アンカーの外表面に沿って延びつつ、前記第2壁部との間に前記一方向において前記第1アンカーを挟む第3壁部とを有しており、
前記二対の螺子部材のそれぞれの対が、螺子軸及び前記螺子軸と直交する方向に向かって前記螺子軸から突出する突起部を有する第1螺子具と、前記螺子軸と噛み合った雌螺子部を有する第2螺子具とからなり、
前記二対の螺子部材のうち一方の対において、前記第2壁部と前記第1アンカーの側壁とを前記突起部と前記第2螺子具の間に挟み込みつつ前記第1螺子具及び前記第2螺子具の一方が他方に対して緊締されると共に、前記二対の螺子部材のうち他方の対において、前記第3壁部と前記第1アンカーの側壁とを前記突起部と前記第2螺子具の間に挟み込みつつ前記第1螺子具及び前記第2螺子具の一方が他方に対して緊締されることで、前記第1アンカーと前記接続部材が固定され、
前記第2アンカーの一端部が、
前記二対の螺子部材の間に配置されると共に、前記第1アンカーに作用する引き抜き方向の外力に対抗するように、前記第1アンカーの内部から前記第1壁部を貫通して前記第1壁部において前記第1アンカーの内部に面した表面とは反対側の表面から掛けられ、又は固定されることを特徴とするアンカー装置。
【請求項2】
前記第1アンカーの一端部が円筒状であり、
前記第2壁部が、前記第1壁部から前記第1アンカーの他端部に向かって延びる、前記第1アンカーの一端部の円周方向に面した第1端面を有し、
前記第3壁部が、前記第1壁部から前記第1アンカーの他端部に向かって延びる、前記円周方向に面した第2端面を有し、
前記第1端面から前記円周方向に切れ込んだ第1切り欠きが前記第2壁部に形成されており、
前記第2端面から前記円周方向に切れ込んだ第2切り欠きが前記第3壁部に形成されており、
前記接続部材を、前記第1アンカーから離隔した状態から、前記第1壁部が前記開口と対向すると共に前記第2壁部と前記第3壁部が前記第1アンカーの一端部を挟み込むように前記第1アンカーの一端部に挿入した後、前記円周方向の一方に回転させることで前記二対の螺子部材の螺子軸が前記第1切り欠き及び前記第2切り欠きを貫通した状態となるように、前記接続部材が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアンカー装置。
【請求項3】
前記第2アンカーの一端部が、前記第1壁部を貫通して前記第1アンカーの外部へと突出した部分を有しており、
前記第2アンカーの一端部における前記第1アンカーの外部へと突出した部分に抑え部材が固定されており、
前記抑え部材が前記第1壁部と接触することにより、前記第2アンカーが前記第1アンカー側とは反対側から前記第1壁部に掛けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンカー装置。
【請求項4】
前記第1アンカー内の空間を仕切る仕切り板が前記第2アンカーに設けられており、
前記仕切り板が、前記第1アンカー中を前記第1アンカーの一端部側へと前記凝固剤が進入するのを抑制する手段として機能することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のアンカー装置。
【請求項5】
前記第1アンカー内の空間を仕切る仕切り板が前記第2アンカーに設けられており、
前記仕切り板が、前記第1アンカーの内表面に設けられた段差部に掛けられることで、前記第1アンカーに作用する引き抜き方向の外力に前記第2アンカーが対抗するように前記第1アンカーと前記第2アンカーを接続する手段として機能することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のアンカー装置。
【請求項6】
前記第2アンカーの他端部に前記凝固剤を撹拌するための撹拌構造が形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のアンカー装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明のアンカー装置は、一端部が地表より外部に配置され、他端部が地中に設置される管状の第1アンカーと、前記第1アンカーに挿入されると共に、一端部が地表より外部に配置され、他端部が凝固剤によって地中に固定される第2アンカーと、前記第1アンカーと前記第2アンカーを接続するための接続部材と、前記第1アンカーと前記接続部材を固定するための二対の螺子部材と、を備えており、前記接続部材が、前記第1アンカーが延びる方向と直交する一方向において前記第1アンカーにおける前記一端部を跨ぐように延びる第1壁部と、前記第1壁部から前記第1アンカーの他端部に向かって前記第1アンカーの外表面に沿って延びる第2壁部と、前記第1壁部から前記第1アンカーの他端部に向かって前記第1アンカーの外表面に沿って延びつつ、前記第2壁部との間に前記一方向において前記第1アンカーを挟む第3壁部とを有しており、
前記二対の螺子部材のそれぞれの対が、螺子軸及び前記螺子軸と直交する方向に向かって前記螺子軸から突出する突起部を有する第1螺子具と、前記螺子軸と噛み合った雌螺子部を有する第2螺子具とからなり、前記二対の螺子部材のうち一方の対において、前記第2壁部と前記第1アンカーの側壁とを前記突起部と前記第2螺子具の間に挟み込みつつ前記第1螺子具及び前記第2螺子具の一方が他方に対して緊締されると共に、前記二対の螺子部材のうち他方の対において、前記第3壁部と前記第1アンカーの側壁とを前記突起部と前記第2螺子具の間に挟み込みつつ前記第1螺子具及び前記第2螺子具の一方が他方に対して緊締されることで、前記第1アンカーと前記接続部材が固定され、前記第2アンカーの一端部が、前記二対の螺子部材の間に配置されると共に、前記第1アンカーに作用する引き抜き方向の外力に対抗するように、前記第1アンカーの内部から前記第1壁部を貫通して前記第1壁部において前記第1アンカーの内部に面した表面とは反対側の表面から掛けられ、又は固定される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明において、前記第1アンカーの一端部が円筒状であり、前記第2壁部が、前記第1壁部から前記第1アンカーの他端部に向かって延びる、前記第1アンカーの一端部の円周方向に面した第1端面を有し、前記第3壁部が、前記第1壁部から前記第1アンカーの他端部に向かって延びる、前記円周方向に面した第2端面を有し、前記第1端面から前記円周方向に切れ込んだ第1切り欠きが前記第2壁部に形成されており、前記第2端面から前記円周方向に切れ込んだ第2切り欠きが前記第3壁部に形成されており、前記接続部材を、前記第1アンカーから離隔した状態から、前記第1壁部が前記開口と対向すると共に前記第2壁部と前記第3壁部が前記第1アンカーの一端部を挟み込むように前記第1アンカーの一端部に挿入した後、前記円周方向の一方に回転させることで前記二対の螺子部材の螺子軸が前記第1切り欠き及び前記第2切り欠きを貫通した状態となるように、前記接続部材が形成されていることが好ましい。これによると、接続部材を円周方向の一方に回転させることで二対の螺子部材のそれぞれが接続部材の第1切り欠き及び第2切り欠きを貫通した状態となるため、引き抜き方向の外力に対して、第1アンカーと接続部材の固定が外れにくくなる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明において、前記第2アンカーの他端部に前記凝固剤を撹拌するための撹拌構造が形成されていることが好ましい。これによると、装置の設置時、撹拌構造により凝固剤が撹拌されることで、地中の土砂と凝固剤が混ざり合って、地中に凝固剤がむらなく広がりやすい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
本実施形態に係るアンカー装置1は、例えば、法面に設置される防護柵等の構造体とワイヤー等で連結して構造体を固定するために設けられる。図1に示すように、本実施形態に係るアンカー装置1は、アンカーパイプ100(本発明でいう第1アンカー)と、アンカーロッド200(本発明でいう第2アンカー)と、キャップ300(本発明でいう接続部材)と、ボルト151(本発明でいう第1螺子具)及びナット270(本発明でいう第2螺子具)と、ボルト152及びナット270(本発明でいう二対の螺子部材)とを有している。図中、アンカー装置1を地中に埋設する際の掘削方向を前方、その逆を後方とし、その前後方向と直角に交わる方向を左方向及び右方向とする。アンカー装置1は鋼製又はステンレス製である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
図2に示すように、アンカーパイプ100は本体管110を有する。本体管110は円筒状の部材であり、後端部111(本発明でいう一端部)が地表より外部に設置され、前端部113(本発明でいう他端部)が地中に設置される。後端部111の内表面には後述の部分管120(図6参照)と取り外し可能に接続する雌螺子部112が形成されている。本体管110の前端部113付近の内表面には段差部117が形成されている。段差部117は、本体管110の内周面に沿ってアンカーパイプ100の円周方向(以下、円周方向)全体に亘ってリング状に延びている。本体管110の壁部における雌螺子部112付近には貫通孔115及び116が形成されている。貫通孔115は図中左側の壁部を、貫通孔116は図中右側の壁部をそれぞれ左右方向に貫通している。貫通孔115にはボルト151、貫通孔116にはボルト152が通されている。ボルト151及び152のボルト頭151a及び152a(本発明でいう突起部)は本体管110の内表面に接するように固定されている。ボルト頭151a及び152aと左右方向の逆側には、螺子軸151b及び152bがそれぞれ形成されている。