(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167050
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】異常検出システム
(51)【国際特許分類】
B61L 23/00 20060101AFI20221027BHJP
B61K 13/00 20060101ALI20221027BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B61L23/00 Z
B61K13/00 Z
H04N7/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072561
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 良視
【テーマコード(参考)】
5C054
5H161
【Fターム(参考)】
5C054FA00
5C054FC01
5C054FC12
5C054FE28
5C054HA26
5H161AA01
5H161MM01
5H161MM12
5H161NN10
5H161NN11
(57)【要約】
【課題】大規模なシステムを構築することなく、車両の走行区間の異常の有無を検出する。
【解決手段】異常検出システムにおいて、エリア側処理装置は、一つの車両である対象車両が停止エリアに停止した場合、他の車両が過去に次の停止エリアまでの区間を撮影した前方映像である次区間映像を対象車両の車両側処理装置に送信し、車両側処理装置は、対象車両が停止エリアに停止した場合、エリア側処理装置から送信される次区間映像を受信し、対象車両が停止エリアを出発した場合、受信した次区間映像と対象車両の撮影部で撮影される前方映像との比較結果に基づいて対象車両の走行区間の異常の有無を検出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の停止エリアのそれぞれに配置されるエリア側処理装置と、
複数の前記停止エリアを経由して走行する複数の車両のそれぞれに配置され、前記車両が一つの前記停止エリアから次の前記停止エリアまでの区間を走行しながら撮影部により前方を撮影した前方映像を取得する車両側処理装置と
を備え、
前記エリア側処理装置は、一つの前記車両である対象車両が前記停止エリアに停止した場合、他の前記車両が過去に次の前記停止エリアまでの区間を撮影した前記前方映像である次区間映像を前記対象車両の前記車両側処理装置に送信し、
前記車両側処理装置は、前記対象車両が前記停止エリアに停止した場合、前記エリア側処理装置から送信される前記次区間映像を受信し、前記対象車両が前記停止エリアを出発した場合、受信した前記次区間映像と前記対象車両の前記撮影部で撮影される前記前方映像との比較結果に基づいて前記対象車両の走行区間の異常の有無を検出する
異常検出システム。
【請求項2】
前記車両側処理装置は、直前の前記停止エリアからの区間において前記対象車両により撮影された前記前方映像である前区間映像を送信可能な場合には、前記エリア側処理装置に前記前区間映像を送信し、
前記エリア側処理装置は、前記前区間映像が前記対象車両の前記車両側処理装置から送信された場合に前記前区間映像を受信し、前記車両の進行方向の後方の前記停止エリアの前記エリア側処理装置に前記前区間映像を送信し、前記車両の進行方向の前方の前記停止エリアの前記エリア側処理装置から前記前区間映像が送信された場合、前記前区間映像を受信して次区間映像として記憶部に記憶する
請求項1に記載の異常検出システム。
【請求項3】
前記記憶部に複数の前記次区間映像が記憶される場合、複数の前記次区間映像同士の差分に基づいて次区間の異常の有無を検出する
請求項2に記載の異常検出システム。
【請求項4】
前記エリア側処理装置は、前記記憶部に複数の前記次区間映像が記憶される場合、前記次区間映像の基となる前記前区間映像を撮影した前記車両の走行天候、走行位置、走行速度及び走行時刻のうち少なくとも1つの走行情報の平均値に基づいて一つの前記次区間映像を選択して前記対象車両に送信する
請求項2又は請求項3に記載の異常検出システム。
【請求項5】
前記エリア側処理装置は、前記記憶部に複数の前記次区間映像が記憶される場合、直近に他の前記停止エリアから受信した前記前区間映像を選択して前記対象車両に送信する
請求項2又は請求項3に記載の異常検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車における自動運転に関する技術が進展している。自動運転技術は、例えば鉄道、モノレール、路面電車等のようなレール上を運行する車両に対しても応用が検討されている。例えば、前方を撮影しつつ車両を運行し、撮影した前方映像をリアルタイムでサーバに送信し、サーバ側で前方映像に基づいてリアルタイムに運行状況を監視する技術が検討されている。車両側で撮影された映像を外部に送信する技術としては、例えば特許文献1に記載の技術等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術では、大容量のサーバを用いた大規模なネットワークを構築し、十分な通信環境を確保する必要があるため、実現は容易ではない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、大規模なシステムを構築することなく、車両の走行区間の異常の有無を検出することが可能な異常検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る異常検出システムは、複数の停止エリアのそれぞれに配置されるエリア側処理装置と、複数の前記停止エリアを経由して運行する複数の車両のそれぞれに配置され、前記車両が一つの前記停止エリアから次の前記停止エリアまでの区間を走行しながら撮影部により前方を撮影した前方映像を取得する車両側処理装置とを備え、前記エリア側処理装置は、一つの前記車両である対象車両が前記停止エリアに停止した場合、他の前記車両が過去に次の前記停止エリアまでの区間を撮影した前記前方映像である次区間映像を前記対象車両の前記車両側処理装置に送信し、前記車両側処理装置は、前記対象車両が前記停止エリアに停止した場合、前記エリア側処理装置から送信される前記次区間映像を受信し、前記対象車両が前記停止エリアを出発した場合、受信した前記次区間映像と前記対象車両の前記撮影部で撮影される前記前方映像とに基づいて前記対象車両の走行区間の異常の有無を検出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、大規模なシステムを構築することなく、車両の走行区間の異常の有無を検出することが可能な異常検出システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る異常検出システムの一例を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、車両側処理装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、エリア側処理装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、車両と駅との間で前方映像の送受信を行う態様を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、車両と駅との間で前方映像の送受信を行う態様を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、車両と駅との間で前方映像の送受信を行う態様を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、撮影映像と次区間映像とを比較して差分を求める処理の一例を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、撮影映像と次区間映像とを比較して差分を求める処理の一例を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る異常検出システムのおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る異常検出システムの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
図1は、本実施形態に係る異常検出システム100の一例を模式的に示す図である。
図1に示すように、異常検出システム100は、エリア側処理装置20と、車両側処理装置10を備える。本実施形態において、異常検出システム100は、例えば線路R等のレール上を走行する電車等の車両Tと、当該車両Tが停止する停止エリアである複数の駅S(S1、S2等)との間で用いられ、車両Tの走行区間において異常の有無を検出する。
【0011】
車両側処理装置10は、車両Tに配置される。車両側処理装置10は、コンピュータ等の情報処理装置が用いられる。
図2は、車両側処理装置10の一例を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、車両側処理装置10は、入出力部11と、通信部12と、記憶部13と、制御部14とを有する。
【0012】
入出力部11は、前方カメラ(撮影部)15で撮影される前方映像が入力される。前方カメラ15は、車両Tの先頭部等に搭載され、車両Tの前方を撮影して前方映像を生成する。前方カメラ15は、生成した前方映像を入出力部11に入力する。入出力部11は、モニタ16に出力される。モニタ16は、車両側処理装置10から出力された前方映像を表示する。
【0013】
前方映像は、車両Tが一つの駅Sから他の駅Sまでの区間を走行する際に車両Tの前方を撮影した映像である。前方映像は、区間ごとに生成される。前方映像には、当該前方映像を撮影する車両Tの走行天候、走行位置、走行速度及び走行時刻を含む走行情報が対応付けられる。以下、前方映像を区別する場合、車両Tが停車している駅(以下、停車駅と表記する)Sを基準として、停車駅Sの直前の駅Sから停車駅Sまでの区間の前方映像を「前区間映像」と表記する。なお、停車駅Sの直前の駅Sから停車駅Sまでの区間を「前区間」と表記する。また、停車駅Sから当該停車駅の次の駅Sまでの区間の前方映像については、「次区間映像」と表記する。なお、停車駅Sから当該停車駅の次の駅Sまでの区間を「次区間」と表記する。また、車両Tが走行しながら撮影している状態の前方映像を「撮影映像」と表記する。本実施形態において、一つの駅Sを基準とした場合、車両Tから当該一つの駅Sに送信される前方映像と、当該一つの駅Sから車両Tの走行方向の後方の駅Sに送信される前方映像とが前区間映像である。また、一つの駅Sにおいて後述する通信部21で受信されて記憶部22に記憶される前方映像が次区間映像である。この場合、一つの駅Sから「前区間映像」として後方の駅Sに送信された前方映像は、当該後方の駅Sにおいて「次区間映像」として記憶部22に記憶される。
【0014】
通信部12は、エリア側処理装置20との間で情報の送受信を行う。通信部12は、エリア側処理装置20から送信される前方映像(次区間映像)を受信する。通信部12は、エリア側処理装置20に前方映像(前区間映像)を送信する。
【0015】
記憶部13は、各種情報を記憶する。記憶部13は、例えばハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等のストレージを有している。なお、記憶部13として、リムーバブルディスク等の外部記憶媒体が用いられてもよい。記憶部13は、入出力部11から入力された前方映像(撮影映像、前区間映像)を記憶する。記憶部13は、エリア側処理装置20から送信された前方映像(次区間映像)を記憶する。
【0016】
制御部14は、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の記憶装置を有する。制御部14は、通信制御部31と、映像比較部32と、異常判定部33とを有する。
【0017】
通信制御部31は、通信部12の動作を制御する。通信制御部31は、通信部12から前区間映像を送信させる。通信制御部31は、通信部12で受信した次区間映像を取得し、記憶部13に記憶させる。
【0018】
映像比較部32は、入出力部11から入力された撮影映像を取得する。映像比較部32は、記憶部13に記憶された次区間映像を取得する。映像比較部32は、取得した撮影映像と次区間映像とを比較する。映像比較部32は、撮影映像を撮影する車両Tの走行情報と、次区間映像を撮影した車両Tの走行情報とに基づいて、撮影対象が同一となるように比較を行う。映像比較部32は、撮影映像と次区間映像との差分を求めることで、両映像を比較する。
【0019】
異常判定部33は、映像比較部32の比較結果に基づいて、撮影映像における異常の有無を判定する。異常判定部33は、撮影映像における異常の有無を判定することにより、車両Tの走行区間の異常の有無を検出することができる。異常判定部33は、映像比較部32において算出された差分が所定値以上である場合、撮影映像に異常があると判定する。異常判定部33は、撮影映像に異常があると判定した場合、当該異常があることを示す情報を入出力部11からモニタ16に出力したり、直近又は次の駅Sのエリア側処理装置20に送信したりすることができる。
【0020】
エリア側処理装置20は、駅Sごとに配置される。
図3は、エリア側処理装置20の一例を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、エリア側処理装置20は、コンピュータ等の情報処理装置が用いられる。エリア側処理装置20は、通信部21と、記憶部22と、制御部23とを有する。
【0021】
通信部21は、車両側処理装置10との間で無線により情報の送受信を行う。通信部21は、車両側処理装置10から送信される前方映像(前区間映像)を受信する。通信部21は、車両側処理装置10に対して前方映像(次区間映像)を送信する。通信部21は、他の駅Sのエリア側処理装置20との間で有線又は無線により情報の送受信を行う。通信部21は、車両Tの進行方向の後方の駅Sのエリア側処理装置20に対して、車両Tから受信した前方映像(前区間映像)を送信する。通信部21は、車両Tの進行方向の前方の駅Sのエリア側処理装置20から送信される前方映像(前区間映像)を受信する。
【0022】
記憶部22は、各種情報を記憶する。記憶部22は、例えばハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等のストレージを有している。なお、記憶部22として、リムーバブルディスク等の外部記憶媒体が用いられてもよい。記憶部22は、車両側処理装置10から送信される前区間映像を次区間映像として記憶する。記憶部13は、他の駅Sのエリア側処理装置20から送信される前区間映像を次区間映像として記憶する。
【0023】
制御部23は、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の記憶装置を有する。制御部23は、通信制御部41と、映像処理部42とを有する。
【0024】
通信制御部41は、通信部21の動作を制御する。通信制御部41は、車両Tが駅Sに停車している場合、記憶部22に記憶される次区間映像を通信部21から車両側処理装置10に送信させる。通信制御部41は、記憶部22に記憶される前区間映像を通信部21から他の駅Sのエリア側処理装置20に送信させる。通信制御部41は、通信部21において車両Tから受信した前区間映像を取得し、取得した前区間映像を次区間映像として記憶部22に記憶する。通信制御部41は、通信部21において前方の駅Sから受信した前区間映像を取得し、取得した前区間映像を次区間映像として記憶部22に記憶する。
【0025】
映像処理部42は、記憶部22に記憶される前方映像について処理を行う。なお、記憶部22に記憶される前方映像は、通信部21により次区間映像として受信されたものである。映像処理部42は、記憶部22に複数の次区間映像が記憶される場合、複数の次区間映像同士の差分に基づいて次区間の異常の有無を検出することができる。映像処理部42は、異常を検出した次区間映像については、記憶部22から消去することができる。
【0026】
映像処理部42は、記憶部22に複数の次区間映像が記憶される場合、例えば次区間映像の基となる前区間映像を撮影した車両Tの走行天候、走行位置、走行速度及び走行時刻のうち少なくとも1つの走行情報の平均値に基づいて一つの次区間映像を選択することができる。映像処理部42は、例えば複数の次区間映像のうち当該走行情報の平均値に最も近い走行情報を有する次区間映像を標準映像とし、当該標準映像を選択するようにしてもよい。また、天候等の影響を考慮して、例えば天候が雨又は雪等の場合には雨天時又は降雪時に撮影された次区間映像を選択してもよい。また、映像処理部42は、記憶部22に複数の次区間映像が記憶される場合、直近に他の駅Sから受信した次区間映像を選択することができる。通信制御部41は、選択された一つの次区間映像を通信部21から車両側処理装置10に送信させる。
【0027】
次に、上記のように構成された異常検出システム100の動作の一例を説明する。
図4から
図6は、車両Tと駅S(S1、S2)との間で前方映像の送受信を行う態様を模式的に示す図である。
図4から
図6に示す例において、車両Tの進行方向は図の上方である。
図4に示すように、一つの車両T(以下、第1車両T1と表記する)が一つの駅S(以下、第1駅S1と表記する)に停車した場合、第1駅S1のエリア側処理装置20は、第1車両T1に対して次区間映像M01を送信する。第1車両T1の車両側処理装置10は、送信された次区間映像M01を通信部12において受信する。
【0028】
また、次区間映像M01を受信した後、第1車両T1の車両側処理装置10において、通信制御部31は、車両側処理装置10とエリア側処理装置20との間の通信環境が十分である場合、及び前区間映像M11の送信に要する時間を確保できるか否かを判断する。なお、前区間映像M11の送信に要する時間を確保できるか否かの判断は、車両Tが駅Sに停車する時間と、前区間映像M11の送信に要する時間との比較で判断してもよい。例えば、前区間映像M11の送信に要する時間よりも車両Tが駅Sに停車する時間が長い場合、送信に要する時間を確保できると判断することができる。通信環境が十分であり、かつ時間が確保できると判断した場合、通信制御部31は、記憶部13に記憶される前区間映像M11を送信する。第1駅S1のエリア側処理装置20は、車両側処理装置10から前区間映像M11が送信された場合、送信された前区間映像M11を受信する。第1駅S1のエリア側処理装置20は、受信した前区間映像M11を、第1車両T1の進行方向の後方の駅のエリア側処理装置20に送信する。なお、通信制御部31は、駅Sから車両Tに次区間映像M01を送信する処理と、車両Tから駅Sに前区間映像M11を送信する処理とでは、前者つまり駅Sから車両Tに次区間映像M01を送信する処理を優先することができる。
【0029】
その後、第1車両T1が第1駅S1を出発する。
図5に示すように、前方カメラ15がレール上を走行する車両Tの前方を撮影し、前方映像を生成する。第1車両T1の車両側処理装置10は、前方カメラ15で撮影中の前方映像である撮影映像を取得し、記憶部13に記憶させる。また、映像比較部32は、前方カメラ15で撮影中の前方映像である撮影映像を取得し、当該撮影映像と、記憶部13に記憶される次区間映像との差分を求める。異常判定部33は、比較結果に基づいて、撮影映像に異常があるか否かを判定する。差分を求めて異常があるか否かを判定する処理については、後述する。
【0030】
また、
図5に示すように、第1車両T1の後発の車両T(以下、第2車両T2と表記する)が第1駅S1を目指して走行する。第2車両T2においても同様に、車両側処理装置10において撮影映像と次区間映像の差分を求め、差分に基づいて撮影映像に異常があるか否かを判定する。
【0031】
図6に示すように、第1車両T1が第1駅S1の次の駅S(以下、第2駅S2と表記する)に停車した場合、第2駅S2のエリア側処理装置20は、第1車両T1に対して次区間映像M02を送信する。第1車両T1の車両側処理装置10は、送信された次区間映像M02を通信部12において受信する。
【0032】
また、次区間映像M02を受信した後、第1車両T1の通信制御部31は、通信環境が十分であり、かつ時間が確保できると判断した場合、記憶部13に記憶される前区間映像M12を送信する。第2駅S2のエリア側処理装置20は、車両側処理装置10から前区間映像M12が送信された場合、送信された前区間映像M12を受信する。第2駅S2のエリア側処理装置20は、受信した前区間映像M12を、例えば第1駅S1のエリア側処理装置20に送信する。
【0033】
第1駅S1のエリア側処理装置20は、第2駅S2から前区間映像M12が送信された場合、送信された前区間映像M12を受信し、次区間映像として記憶部22に記憶する。第2車両T2が第1駅S1に停車した場合、第1駅S1のエリア側処理装置20は、第2車両T2に対して次区間映像M31を送信する。この場合、映像処理部42は、次区間映像M31として、記憶部22に記憶される次区間映像のうち走行情報の平均値に基づいて一つの次区間映像を選択してもよいし、第2駅S2から直近に受信した前区間映像M12を選択してもよいし、記憶部22に記憶される他の次区間映像を選択してもよい。また、映像処理部42は、直近に受信した前区間映像M12が存在しない場合、最も近い時間に受信した前区間映像を次区間映像M31として選択してもよい。第2車両T2の車両側処理装置10は、送信された次区間映像M31を通信部12において受信する。
【0034】
また、次区間映像M31を受信した後、第2車両T2の通信制御部31は、通信環境が十分であり、かつ時間が確保できると判断した場合、記憶部13に記憶される前区間映像M21を送信する。第1駅S1のエリア側処理装置20は、車両側処理装置10から前区間映像M21が送信された場合、送信された前区間映像M21を受信する。第1駅S1のエリア側処理装置20は、受信した前区間映像M21を、第2車両T2の進行方向の後方の駅のエリア側処理装置20に送信する。
【0035】
このように、異常検出システム100では、先行する車両Tで撮影された前方画像が後行する車両Tに次区間映像として送信される。後行する車両Tでは、走行しながら前方映像を撮影しつつ、車両側処理装置10により撮影中の撮影映像と次区間映像とを比較して差分を求め、差分に基づいて撮影映像に異常があるか否かを判定する。
【0036】
図7及び
図8は、撮影映像と次区間映像とを比較して差分を求める処理の一例を模式的に示す図である。
図7に示すように、撮影映像IM1と次区間映像IM2との間に差が存在しない場合、映像比較部32で算出される差分は小さな値となる。異常判定部33は、映像比較部32で算出される差分が所定値以下である場合、撮影映像IM1に異常がないと判定することができる。
【0037】
一方、
図8に示すように、例えば撮影映像IM3において前方の線路上に車両が映っており、次区間映像IM4には映っていない場合等のように、撮影映像IM3と次区間映像IM4との間に差が存在する場合、映像比較部32で算出される差分は大きな値となる。異常判定部33は、映像比較部32で算出される差分が所定値を超える場合、撮影映像IM1に異常があると判定することができる。異常があると判定した場合、異常判定部33は、異常がある旨をモニタ16等に出力したり、直前又は次の駅Sのエリア側処理装置20に送信したりすることができる。
【0038】
次に、本実施形態に係る異常検出システム100の動作の一例について、
図9を参照しながら説明する。
図9は、本実施形態に係る異常検出システム100における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0039】
図9に示すように、まず、車両側処理装置10及びエリア側処理装置20は、車両Tが駅Sに停止するのを検出する(ステップS101、S201)。駅Sのエリア側処理装置20は、駅Sに停止した車両Tの車両側処理装置10に対して次区間映像を送信する(ステップS202)。
【0040】
車両側処理装置10は、送信された次区間映像を受信する(ステップS102)。車両側処理装置10は、次区間映像を受信した後、所定の条件に適合するか否か、すなわち通信環境が十分であり、かつ時間が確保できるか否かを判定する(ステップS103)。ステップS103において所定の条件に適合する(通信環境が十分であり、かつ時間が確保できる)と判定した場合(ステップS103のYes)、車両側処理装置10は、記憶部13に記憶される前区間映像をエリア側処理装置20に送信する(ステップS104)。ステップS103において所定の条件に適合しない(通信環境が十分でない、及び、時間が確保できない、の少なくとも一方)と判定した場合(ステップS103のNo)、車両側処理装置10は、ステップS104をスキップする。
【0041】
エリア側処理装置20は、車両側処理装置10から前区間映像が送信された場合、送信された前区間映像を受信する(ステップS203)。
【0042】
その後、車両Tが出発した場合、車両側処理装置10及びエリア側処理装置20は、車両Tの出発を検出する(ステップS105、S204)。
【0043】
車両Tが出発した後、エリア側処理装置20の制御部23は、ステップS203で受信した前区間映像を車両Tの進行方向の後方の駅Sに送信する(ステップS205)。また、エリア側処理装置20は、車両Tの進行方向の前方の駅Sから前区間映像が送信されたか否かを検出し(ステップS206)、検出された場合(ステップS206のYes)、前区間映像を受信して次区間映像として記憶部13に記憶する(ステップS207)。ステップS206において前区間映像の送信が検出されない場合(ステップS206のNo)、ステップS207をスキップする。なお、ステップS205からステップS207は、ステップS204の前に行ってもよい。その後、エリア側処理装置20は、次の車両Tが最終車両か否かを判定する(ステップS208)。制御部23は、次の車両Tが最終車両ではないと判定した場合(ステップS208のNo)、ステップS101以降の処理を繰り返し行わせる。一方、制御部23は、次の車両Tが最終車両であると判定した場合(ステップS208のYes)、処理を終了する。
【0044】
また、車両Tが出発した後、車両側処理装置10の映像比較部32は、走行区間の前方映像、すなわち撮影映像を取得する(ステップS106)。映像比較部32は、撮影映像(前方映像)と次区間映像とを比較する(ステップS107)。異常判定部33は、比較結果に基づいて撮影映像(前方映像)に異常があるか否かを判定する(ステップS108)。ステップS108において異常があると判定した場合(ステップS108のYes)、異常判定部33は、異常を報知する(ステップS109)。ステップS108において異常がないと判定された場合(ステップS108のNo)、もしくは、ステップS109において異常を報知した後、映像比較部32は、撮影映像(前方映像)と次区間映像との比較が終了したか否かを判定する(ステップS110)。映像比較部32がステップS110において撮影映像(前方映像)と次区間映像の比較が終了していないと判定した場合(ステップS110のNo)、ステップS108の処理を再び行う。映像比較部32がステップS110において撮影映像(前方映像)と次区間映像との比較が終了したと判定した場合(ステップS110のYes)、制御部14は、次の駅Sが終点か否かを判定する(ステップS111)。制御部14は、次の駅Sが終点ではないと判定した場合(ステップS111のNo)、ステップS101以降の処理を繰り返し行わせる。一方、制御部14は、次の駅Sが終点であると判定した場合(ステップS111のYes)、処理を終了する。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る異常検出システム100は、複数の駅Sのそれぞれに配置されるエリア側処理装置20と、複数の駅Sを経由して走行する複数の車両Tのそれぞれに配置され、車両Tが一つの駅Sから次の駅Sまでの区間を走行しながら前方カメラ15により前方を撮影した前方映像を取得する車両側処理装置10とを備え、エリア側処理装置20は、一つの車両(対象車両)Tが駅Sに停止した場合、他の車両Tが過去に次の駅Sまでの区間を撮影した前方映像である次区間映像を対象車両Tの車両側処理装置10に送信し、車両側処理装置10は、対象車両Tが駅Sに停止した場合、エリア側処理装置20から送信される次区間映像を受信し、対象車両Tが駅Sを出発した場合、受信した次区間映像と対象車両Tの前方カメラ15で撮影される前方映像との比較結果に基づいて対象車両Tの走行区間の異常の有無を検出する。
【0046】
この構成によれば、駅Sと駅Sとの間の一区間ごとに次区間映像が車両側処理装置10に送信される。車両Tでは、前方カメラ15で取得される撮影映像と、受信した次区間映像との差分に基づいて異常の有無を検出することができる。このため、大掛かりなシステムを用いることなく、車両Tの走行区間の異常の有無を検出することができる。
【0047】
本実施形態に係る異常検出システム100において、車両側処理装置10は、直前の駅Sからの区間において対象車両Tにより撮影された前方映像である前区間映像を送信可能な場合には、エリア側処理装置20に前区間映像を送信し、エリア側処理装置20は、前区間映像が対象車両Tの車両側処理装置10から送信された場合に前区間映像を受信し、車両Tの進行方向の前方の駅Sのエリア側処理装置20から前区間映像が送信された場合、前区間映像を受信して次区間映像として記憶部22に記憶する。この構成では、車両側処理装置10に供給される次区間映像として、他の車両Tにおいて取得された過去の前方映像である前区間映像を用いることができるため、次区間映像を効率的に確保することができる。
【0048】
本実施形態に係る異常検出システム100において、エリア側処理装置20は、記憶部22に複数の次区間映像が記憶される場合、複数の次区間映像同士の差分に基づいて次区間の異常の有無を検出する。この構成により、異常のある次区間映像を予め検出することで、当該異常のある映像が車両側処理装置10に送信されることを抑制できる。
【0049】
本実施形態に係る異常検出システム100において、エリア側処理装置20は、記憶部22に複数の次区間映像が記憶される場合、次区間映像の基となる前区間映像を撮影した車両Tの走行天候、走行位置、走行速度及び走行時刻のうち少なくとも1つの走行情報の平均値に基づいて一つの次区間映像を選択して対象車両Tに送信する。この構成では、走行情報の平均値に基づいた次区間映像を選択できるため、適切な次区間映像を選択可能となる。
【0050】
本実施形態に係る異常検出システム100において、エリア側処理装置20は、記憶部22に複数の次区間映像が記憶される場合、直近に他の駅Sから受信した前区間映像を選択して対象車両Tに送信する。この構成では、直近の次区間映像を選択できるため、適切な次区間映像を選択可能となる。
【0051】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、車両Tとして電車等のレールを走行する車両を例に挙げて説明し、車両Tが停止する停止エリアとして駅Sを例に挙げて説明したが、これに限定されない。車両Tが例えば路線バスであり、停止エリアがバス停であってもよい。
【0052】
本開示は、SDGsの「住み続けられるまちづくりを」の実現に貢献し、公共施設の安心・安全に寄与する事項を含む。
【符号の説明】
【0053】
S…駅、T…車両,対象車両、S1…第1駅、T1…第1車両、S2…第2駅、T2…第2車両、10…車両側処理装置、11…入出力部、12,21…通信部、13,22…記憶部、14,23…制御部、15…前方カメラ、16…モニタ、20…エリア側処理装置、31,41…通信制御部、32…映像比較部、33…判定部、42…映像処理部、100…検出システム