(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167054
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】紫外線光源カバー及び紫外線光源ユニット
(51)【国際特許分類】
H01L 33/48 20100101AFI20221027BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01L33/48
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072568
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】柿原 一郎
【テーマコード(参考)】
4C058
5F142
【Fターム(参考)】
4C058AA30
4C058BB06
4C058CC04
4C058EE26
4C058KK02
4C058KK23
4C058KK32
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4C058KK50
5F142AA02
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5F142DB18
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5F142GA31
(57)【要約】
【課題】本発明は、成型性の高い材料により形成される紫外線光源カバー及び紫外線光源ユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】ポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体を含む樹脂組成物を含有し、波長235nmにおける紫外線の透過率が40%以上である、紫外線光源カバー、並びに、該紫外線光源カバーと、前記紫外線光源カバー内に設置された紫外線光源と、を含む、紫外線光源ユニット。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体を含む樹脂組成物を含有し、
波長235nmにおける紫外線の透過率が40%以上である、紫外線光源カバー。
【請求項2】
波長550nmにおける可視光透過率が80%以上である、請求項1に記載の紫外線光源カバー。
【請求項3】
前記紫外線光源カバーが、前記樹脂組成物の成型体である、請求項1又は2に記載の紫外線光源カバー。
【請求項4】
JIS K7112:1999のD法に準拠して測定される前記樹脂組成物の密度が、935kg/m3以上965kg/m3以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の紫外線光源カバー。
【請求項5】
前記樹脂組成物の広角X線散乱測定による配向度が、0.95以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載の紫外線光源カバー。
【請求項6】
前記樹脂組成物の小角X線散乱測定による配向度が、0.65以上である、請求項1から5のいずれか1項に記載の紫外線光源カバー。
【請求項7】
前記樹脂組成物に含まれるポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体の13C-NMRにより測定される長鎖分岐度が、0.13以上2.00以下である、請求項1から6のいずれか1項に記載の紫外線光源カバー。
【請求項8】
前記紫外線光源カバーの肉厚が、0.1mm以上10mm以下である、請求項1から7のいずれか1項に記載の紫外線光源カバー。
【請求項9】
前記樹脂組成物が、実質的に添加剤を含有しない、請求項1から8のいずれか1項に記載の紫外線光源カバー。
【請求項10】
前記紫外線光源カバーが、曲面を有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の紫外線光源カバー。
【請求項11】
前記紫外線光源カバーが、紫外線光源の周囲50%以上の方位で照射可能に構成されている、請求項1から10のいずれか1項に記載の紫外線光源カバー。
【請求項12】
流体殺菌用である、請求項1から11のいずれか1項に記載の紫外線光源カバー。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の紫外線光源カバーと、
前記紫外線光源カバー内に設置された紫外線光源と、
を含む、紫外線光源ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線光源カバー及び紫外線光源ユニットに関する
【背景技術】
【0002】
細菌やウイルスを紫外線によって殺菌を行うことはしばしば行われている。このような技術として、例えば、特許文献1又は2には、水銀灯又はUVC(280nm未満の紫外線)ランプを用いて紫外線を照射する技術が開示されている。近年、深紫外線を照射できるLEDランプが実用化され用途が広がっている。紫外線LEDランプユニットでは、LEDランプ自体が点光源であり電力を送る配線もあることから、LEDランプをケース内に収めたうえで深紫外線を透過できる材質でカバーすることにより、その窓を通して深紫外線を照射している。
【0003】
例えば、紫外線殺菌装置では、この紫外線LEDランプユニットを装置内に一面に並べ、容器内を通過する液体に対して紫外線を照射して紫外線殺菌を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-116536号公報
【特許文献2】特開2018-23923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外線光源とそのカバーを有する紫外線光源ユニットにおいて、被照射物まで紫外線を到達させるには光源から対象物まで紫外線を透過させることが必要であるためカバーには紫外線をよく透過することが求められる。一方、紫外線光源のカバーには、光源を被液や物理的接触による破壊から防ぐための保護機能も求められる。透明な材料である一般ガラスは紫外線を吸収する構造を持つことから、紫外線光源ユニットにおいて、一般ガラスをカバーの材料として用いると照射した紫外線が吸収されて効果的に被照射物に紫外線を照射することができない。そのためカバーの材料は非常に限られ、例えば、高価な石英ガラスが用いられている。しかしながら、石英ガラスは、賦形性に劣り、平板の形状に限られる。そのため、LED光源を石英ガラスでカバーした紫外線光源ユニットでは、LED光源は点光源であり四方八方に照射できるにもかかわらず、平板の形状の石英ガラスを窓にした容器にLED光源を入れるため一方向の照射に限られる。そのため、このような紫外線光源ユニットでは、容器内面を全反射できるような表面処理をして発光した光を窓カバーに集めることにより照射効率を稼いでいるが、照射に使われない損失も大きく、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上述したような従来の改善点に着目してなされたものであり、成型性の高い材料により形成される紫外線光源カバー及び該カバーを含む紫外線光源ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、紫外線光源カバーの材料として、ポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体を含む樹脂組成物を用いることで、上記課題を解決できることを見出して本発明を為すに到った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1]
ポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体を含む樹脂組成物を含有し、
波長235nmにおける紫外線の透過率が40%以上である、紫外線光源カバー。
[2]
波長550nmにおける可視光透過率が80%以上である、[1]に記載の紫外線光源カバー。
[3]
前記紫外線光源カバーが、前記樹脂組成物の成型体である、[1]又は[2]に記載の紫外線光源カバー。
[4]
JIS K7112:1999のD法に準拠して測定される前記樹脂組成物の密度が、935kg/m3以上965kg/m3以下である、[1]から[3]のいずれかに記載の紫外線光源カバー。
[5]
前記樹脂組成物の広角X線散乱測定による配向度が、0.95以上である、[1]から[4]のいずれかに記載の紫外線光源カバー。
[6]
前記樹脂組成物の小角X線散乱測定による配向度が、0.65以上である、[1]から[5]のいずれかに記載の紫外線光源カバー。
[7]
前記樹脂組成物に含まれるポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体の13C-NMRにより測定される長鎖分岐度が、0.13以上2.00以下である、[1]から[6]のいずれかに記載の紫外線光源カバー。
[8]
前記紫外線光源カバーの肉厚が、0.1mm以上10mm以下である、[1]から[7]のいずれかに記載の紫外線光源カバー。
[9]
前記樹脂組成物が、実質的に添加剤を含有しない、[1]から[8]のいずれかに記載の紫外線光源カバー。
[10]
前記紫外線光源カバーが、曲面を有する、[1]から[9]のいずれかに記載の紫外線光源カバー。
[11]
前記紫外線光源カバーが、紫外線光源の周囲50%以上の方位で照射可能に構成されている、[1]から[10]のいずれかに記載の紫外線光源カバー。
[12]
流体殺菌用である、[1]から[11]のいずれかに記載の紫外線光源カバー。
[13]
[1]から[12]のいずれかに記載の紫外線光源カバーと、
前記紫外線光源カバー内に設置された紫外線光源と、
を含む、紫外線光源ユニット。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成型性の高い材料により形成される紫外線光源カバー及び該カバーを含む紫外線光源ユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、平板型の紫外線光源カバーを有する紫外線LEDランプユニットの一例の概略断面図である。
【
図2】
図2は、半球型の紫外線光源カバーを有する紫外線LEDランプユニットの一例の概略断面図である。
【
図3】
図3は、砲弾型の紫外線光源カバーを有する紫外線LEDランプユニットの一例の概略断面図である。
【
図4】
図4は、球状の紫外線光源カバーを有する紫外線LEDランプユニットの一例の概略断面図である。
【
図5】
図5は、細長い容器状の紫外線光源カバーを有する紫外線LEDランプユニットの一例の概略断面図である。
【
図6】
図6は、
図5の紫外線照射ユニットを内部に多数配置した流体殺菌装置の一例の概略構成図である。
【
図7】
図7は、可撓性を持つチューブ状の紫外線光源カバーを有する紫外線LEDランプユニットの一例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について以下詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものでなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
[紫外線光源カバー]
本実施形態の紫外線光源カバーは、ポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体を含む樹脂組成物を含有し、波長235nmにおける紫外線の透過率が40%以上である。
【0013】
<樹脂組成物>
本実施形態に用いる樹脂組成物は、ポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体を含む。本実施形態の紫外線光源カバーは、このような賦形性に優れた樹脂組成物を用いることにより自由な形状のカバーを得ることができる。そのため該カバーを有する紫外線光源ユニットは、光源の照射方向を広くすることができる。ポリエチレンは、エチレンから重合され、エチレンα-オレフィン共重合体は、エチレンとα-オレフィンとから重合される。そのため、ポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体は、他樹脂に見られるような芳香環、炭素酸素二重結合、炭素と水素以外のヘテロ原子を含まないことから紫外線を吸収する構造を持たない。また、二重結合も通常は極めて少ないため紫外線による分子切断、空気中の酸素による酸化劣化が起こりにくいことが特徴である。一方、長鎖分岐を分岐点である3級炭素は1級や2級の炭素に関わる炭素-炭素結合の結合エネルギーが比較的低いため、長鎖分岐を持たない直鎖のポリエチレンが好ましい。
【0014】
本実施形態に用いるポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体としては、特に限定されないが、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、低圧法リニア低密度ポリエチレン等が挙げられる。カバーにした時の外圧に対する耐久性、被照射物を入れた容器、成型品の外圧変形に抗するための強度から高密度ポリエチレンが好ましい。エチレンα-オレフィン共重合体を形成するα-オレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、プロピレンや1-ブテン、1-ヘキセンが挙げられる。
【0015】
なお、紫外線はエネルギーが大きいためカバーや容器を紫外線が透過する際にその基材を劣化させることがあり、紫外線光源カバーとしては、基材の劣化を抑制できる樹脂を使用することが好ましい。一方、紫外線はその波長が短波長であることから、カバーや容器に用いる樹脂に結晶構造のような紫外線の波長より大きな構造があると紫外線が散乱してしまい効果的に紫外線を通し難い場合がある。このように樹脂自体の紫外線透過性が低い場合、フィルム状に薄く成型することにより紫外線透過量は達成できるが強度が低下する。そこで結晶構造を紫外線の波長程度に細かくしたエチレン又はα―オレフィン共重合体により厚みを持ち紫外線透過量を達成できる。さらに、本実施形態の紫外線光源カバーにおいて、樹脂として高密度ポリエチレンを用いると、結晶構造の細かいものとしても強度に優れるため、例えば、被照射物の接触により破損することを抑制できる傾向にある。
【0016】
本実施形態に用いる樹脂組成物の密度は、935kg/m3以上965kg/m3以下である。樹脂組成物の密度が935kg/m3以上であることで、紫外線光源カバーの衝撃に対する強度が高まる傾向にある。一方、樹脂組成物の密度が965kg/m3以下であることで、適度な弾性率を有することで、紫外線光源カバーの衝撃に対する強度に優れる傾向にある。また、成型品の圧延、延伸によるカバーの成型においてポリエチレン樹脂の密度を965kg/m3以下とすることで良好な透明性を得ることができる。高密度ポリエチレン(HDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のような直鎖のポリエチレンの密度は含まれるコポリマーの量に依存することが知られておりコポリマー量が少ないほど密度が高くなる傾向にある。成型品の圧延、延伸の際は折りたたまれたラメラ構造を持つ結晶がきれいにほどけることが好ましい。分岐成分は折りたたまれた結晶から外に出てルーズ分子やタイ分子となり、延伸の際に隣の結晶を順にほぐして結晶構造がなくなり透明な成型体となる傾向にある。しかしコポリマーがなく結晶間をつなぐ分岐成分がない場合、延伸により結晶がうまくほぐれず結晶間にクレーズが発生して透明性が低下する原因となる。したがって透明な成型品を得るためにポリエチレン樹脂には分岐成分となるコポリマーをある程度導入し、樹脂組成物の密度を965kg/m3以下とすることが好ましい。以上から樹脂組成物の密度は、より好ましくは940kg/m3以上960kg/m3以下であり、さらに好ましくは945kg/m3以上960kg/m3以下であり、さらにより好ましくは955kg/m3以上960kg/m3以下である。
【0017】
なお、本実施形態において、樹脂組成物の密度は、JIS K7112:1999のD法(密度勾配管法)に準拠して測定される。具体的には、樹脂組成物の密度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0018】
<広角X線散乱配向度>
本実施形態に用いる樹脂組成物の広角X線散乱測定(以下「WAXS」ともいう)による配向度(以下「f1」ともいう)は、0.95以上であることが好ましい。上記で示される配向度を高くすることにより、紫外線光源カバーの強度が高められる傾向にある。本実施形態に用いる樹脂組成物の広角X線散乱測定による配向度は、強度を高める観点から、より好ましくは0.960以上であり、さらに好ましくは0.962以上であり、さらにより好ましくは0.964以上である。樹脂組成物の広角X線散乱測定による配向度の上限は、特に限定されないが、例えば、1.0以下である。
【0019】
なお、本実施形態において、樹脂組成物の広角X線散乱測定による配向度は後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0020】
<小角X線散乱配向度>
本実施形態に用いる樹脂組成物の小角X線散乱測定(以下「SAXS」ともいう)による配向度(以下「f2」ともいう)は、0.65以上であることが好ましい。上記で示される配向度を高くすることにより、紫外線光源カバーの強度が高められる傾向にある。本実施形態に用いる樹脂組成物の小角X線散乱測定による配向度は、より好ましくは0.66以上であり、さらに好ましくは0.68以上であり、さらにより好ましくは0.70以上である。樹脂組成物の小角X線散乱測定による配向度の上限は、特に限定されないが、例えば、1.0以下である。
【0021】
なお、本実施形態において、樹脂組成物の小角X線散乱測定による配向度は後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0022】
以上の配向度は、紫外線光源カバーを成型する前のシート体の圧延時における、ロールギャップ幅、ロール温度、原反シートの圧延前のシート温度やシートとロールの温度差、あるいは原反シートと圧延後シートの厚みとの比(圧延比)等によって制御することが可能である。
【0023】
<長鎖分岐度>
本実施形態に用いる樹脂組成物に含まれるポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体の13C-NMRにより測定される長鎖分岐度が、0.13以上2.00以下であることが好ましい。本実施形態の紫外線光源カバーは、当該長鎖分岐度が上記で示される範囲であることにより、下記の成型方法により透明な部材を成型した際に十分な厚みとなり強度が高められる傾向にある。当該長鎖分岐度は、強度を高める観点から、より好ましくは0.50以上2.00以下であり、さらに好ましくは0.50以上1.80以下であり、さらにより好ましくは1.00以上1.80以下である。なお、本実施形態において、当該長鎖分岐度は後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0024】
樹脂の重合に用いる触媒の残渣は劣化の起点となりうることから、本実施形態に用いる樹脂において、触媒残渣の含有量は少ないほうが好ましい。本実施形態に用いる樹脂組成物において、触媒残渣の含有量としては樹脂中の触媒由来の金属量を測定することにより規定され、金属含有量は、10質量ppm以下が好ましく、1質量ppm以下がより好ましい。
【0025】
樹脂には通常熱安定性付与するための熱安定剤や、酸性の触媒残渣を中和するために中和剤を加えることがあるが添加剤自体が紫外線を吸収する構造を持つため少ないほうが好ましい。
【0026】
以上の観点から、本実施形態に用いる樹脂組成物は実質的に添加剤を含有しないことが好ましい。添加剤とは、触媒を除き、特に限定されないが、例えば、上述の中和剤、熱安定剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。添加剤を実質的に含有しないとは、添加剤の総含有量が、樹脂組成物の総質量に対して、1質量%以下であることを意味する。なお、本実施形態の紫外線光源カバーにおいて、添加剤の総含有量は、樹脂組成物の総質量に対して、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、さらにより好ましくは0.01質量%以下である。
【0027】
本実施形態の紫外線光源カバーにおいて、ポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体の含有量は、樹脂組成物全量に対して、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、98質量%以上であってもよい。ポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体の含有量の上限は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物全量に対して、100質量%である。
【0028】
<波長235nmにおける紫外線の透過率>
本実施形態の紫外線光源カバーは、波長235nmにおける紫外線の透過率が40%以上である。上述の波長235nmにおける紫外線の透過率は、好ましくは45%以上であり、より好ましくは50%以上である。上述の波長235nmにおける紫外線の透過率の上限は、特に限定されないが、例えば、100%である。紫外線光源カバーの波長235nmにおける紫外線の透過率が前記範囲内であると、該カバーを有する紫外線光源ユニットは、被照射物に効率的に紫外線を照射することができる。
【0029】
<波長265nmにおける紫外線の透過率>
本実施形態の紫外線光源カバーの波長265nmにおける紫外線の透過率は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上であり、より好ましく
は70%以上である。上述の波長265nmにおける紫外線の透過率の上限は、特に限定されないが、例えば、100%である。紫外線光源カバーの波長265nmにおける紫外線の透過率が前記範囲内であると、該カバーを有する紫外線光源ユニットは、被照射物に効率的に紫外線を照射することができる傾向にある。
【0030】
<波長550nmにおける可視光透過率>
本実施形態の紫外線光源カバーの波長550nmにおける可視光透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上である。上述の波長550nmにおける可視光透過率の上限は、特に限定されないが、例えば、100%である。紫外線光源カバーの波長550nmにおける可視光透過率が前記範囲内であると、該カバーを有する紫外線光源ユニットは、カバー内部の光源の状態などを目視で確認できる傾向にある。
【0031】
上述の透過率は、紫外線光源カバーの最も肉厚が低い箇所で、JIS K 7136:2000に準じて測定することができる。測定機器としては、例えば、日本電色工業社製、ヘーズメーターNDH2000を用いることができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0032】
紫外線光源カバーの透過率を前記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、紫外線光源カバーに用いる樹脂組成物として、ポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体を含む樹脂組成物を用い、これらの樹脂組成物の成型品の加工条件を適宜調整する方法が挙げられる。
【0033】
樹脂組成物の成型品の加工条件を適宜調整して紫外線光源カバーの透過率を前記範囲に制御する方法の具体例としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0034】
ポリエチレン及びエチレン-αオレフィン共重合体は、結晶性樹脂であり球晶構造を持つことから波長の短い光の散乱が起こりやすく、可視光線から紫外線まで不透明であることもある。不透明であるポリエチレン及びエチレン-αオレフィン共重合体を透明にして紫外線光源カバーの透過率を前記範囲に制御する方法としてはいくつかある。具体的には、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン及びエチレン-αオレフィン共重合体の密度を非常に下げて球晶を細かくする方法が挙げられる。しかしながら、球晶を細かくしたポリエチレン及びエチレン-αオレフィン共重合体は、紫外線透過度がある程度得られるが密度が低いことにより強度が大きく低下する傾向にある。したがって、紫外線光源カバーに特に強度が求められる場合は、別の方法を用いることが好ましい。また、例えば、ポリエチレン及びエチレン-αオレフィン共重合体を通常のインフレーション成型又は逐次延伸によりフィルム状にする方法も挙げられる。このようなフィルム状の成型体は、肉薄であることと冷延伸により透明性が向上する傾向にある。しかしながら、当該方法は、50μ以上の肉厚の成型体を得ることは難しく、その形状も平面あるいは袋状に限られ強度が低く変形しやすい傾向にある。そこで、紫外線光源カバーの透過率を前記範囲に制御するより有効な方法として、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン及びエチレン-αオレフィン共重合体から一度成型したシート、ロッド、成型品を、その融点より2℃から10℃低い温度で、圧延、引張延伸あるいはプラグ、押し棒延伸とエアー吹き込み成型する方法を挙げることができる。特に、このような方法で、密度が965kg/m3以下の樹脂組成物を成型することにより、厚みを持ったまま紫外線に対して透明な成型品を得ることができ、紫外線光源カバーの透過率を前記範囲に制御することができる。このような方法で得られる成型品は可視光線から紫外線まで極めて透明度が高く、肉厚とすることができるため強度も高い傾向にある。
【0035】
本実施形態の紫外線光源カバーは、ポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体を含む樹脂組成物の成型体であることが好ましい。
【0036】
本実施形態の紫外線光源カバーの形状としては、特に限定されないが、例えば、平板、半球状あるいはカップや細長い形状が挙げられる。平板の紫外線光源カバーは、例えば、平板シートの圧延あるいは延伸、その他成型体の平面部分から得ることができる。半球状あるいはカップや細長い形状の紫外線光源カバーは、シートからのプラグや押し棒による延伸及びエアー吹き込みにより得ることができる。
【0037】
本実施形態の紫外線光源カバーの製造方法は、特に限定されないが、例えば、シート成型によりシートを成型して押し出されたシートをそのまま常温まで冷却することなく(好ましくはシートの融点T℃より2~10℃低い成型温度に保つ)、又は、冷却されたシートを所定の時間内(20~200秒)の間に常温からシートの融点T℃までの温度(好ましくは融点T℃より2~10℃低い温度)に上げ、製品中間体の温度制御の範囲がシートの融点T℃±10%以内になる工程を有し、金型内へのプラグによる延伸とエアーの吹込みとによって成型体(例えば、透明カップ)を得る工程を含む。プラグや押し棒で一軸延伸を行った後、キャビティ内でさらにエアーを吹込みブローすることによりプラグや押し棒による延伸方向と異なる方向に延伸(二軸延伸)をかけることができ、得られる成型体は、配向の緩和により、寸法安定性や透明性が向上するとともに耐衝撃性も向上する。
【0038】
別の形態ではシートやパイプ、異形押出品をそのまま常温まで冷却することなく(好ましくは押出品の融点T℃より2~10℃低い成型温度に保つ)、又は、冷却された押出品を所定の時間内(20~200秒)の間に常温から押出品の融点T℃までの温度(好ましくは融点T℃より2~10℃低い温度)に上げ、製品中間体の温度制御の範囲が押出品の融点T℃±10%以内になる工程を有し、押出品の融点T℃より2~10℃低い温度にコントロールされた圧延ロールにより圧延される工程を含む。
【0039】
さらに別の形態ではブロー成型にて成型したボトル又は射出成型で成型した有底パリソンをそのまま常温まで冷却することなく(好ましくは押出品の融点T℃より2~10℃低い成型温度に保つ)、又は、冷却された押出品を所定の時間内(20~200秒)の間に常温から押出品の融点T℃までの温度(好ましくは融点T℃より2~10℃低い温度)に上げ、製品中間体の温度制御の範囲が押出品の融点T℃±10%以内になる工程を有し、押出品の融点T℃より2~10℃低い温度にコントロールされた状態下、押し棒で押しかつ/又はエアーを吹き込むことにより延伸される工程を含む。押し棒やプラグがシートを押す速度は特に限定されないが、早いほど成型サイクルが短くなることから15000mm/秒以上が好ましく、29400mm/秒以上がより好ましい。
【0040】
続いて、本実施形態の紫外線光源カバーの構造について説明する。
本実施形態の紫外線光源カバーの肉厚は、0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。本実施形態の紫外線光源カバーは、肉厚が当該範囲であることで、優れた強度を示す。なお、本実施形態において、肉厚は、最も肉厚が薄くなる部分の厚みを意味する。当該肉厚は、強度を向上させる観点から、より好ましくは0.1mm以上5mm以下であり、さらに好ましくは0.2mm以上3mm以下であり、さらにより好ましくは0.3mm以上1mm以下である。
【0041】
本実施形態の紫外線光源カバーは、照射面を広くする観点から、曲面を有することが好ましい。また、本実施形態の紫外線光源カバーは、紫外線光源の周囲50%以上の方位で照射可能に構成されていることが好ましい。なお、本実施形態において、紫外線光源の周囲50%以上の方位は、紫外線光源カバーの装着される紫外線光源ユニットの内部の光源の中心を基準とし、紫外線光源カバーが覆う被覆率を意味する。
【0042】
また、本実施形態の紫外線光源カバーは、流体殺菌用であることが好ましい。本実施形態の紫外線光源カバーは成型性に優れるため、曲率の高い構造に成型可能である。そのため、チューブ状などの形状に成型可能であり、流体への光照射面積を高められる傾向にある。
【0043】
本実施形態の紫外線光源カバーは、紫外線光源ユニットに好適に用いることができる。
【0044】
本実施形態の紫外線光源ユニットは、例えば、上述の紫外線光源カバーと、前記紫外線光源カバー内に設置された紫外線光源と、を含む。
【0045】
なお、紫外線光源としては、特に限定されず、例えば、紫外線LED等が挙げられる。
【0046】
従来の照射装置は、装置内の容器部分に窓ガラスのついた光源ユニットを並べ、その装置の中を流動させることにより紫外線を照射しているため装置が大掛かりになり内容物に対し効率的な照射ができておらず改善の余地がある。紫外線カバーや照射ユニットのケースは安価であり生産性に優れること、軽量であること、様々な形状を付与しやすく破壊しにくいことから樹脂製であることが好ましい。しかしながら、多くの樹脂はその構造中に紫外線を吸収する構造を持っているために紫外線に対して不透明であることや、その構造から劣化を起こしやすい。一方、本実施形態の紫外線光源カバーは、ポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体を含む樹脂を含有し、波長235nmにおける紫外線の透過率を40%以上とすることにより、当該課題を解決しうる。
【0047】
本実施形態に係る紫外線光源カバー及び紫外線光源ユニットの例を図面に基づいてより具体的に説明する。
【0048】
図1は平板型の紫外線光源カバーを有する紫外線LEDランプユニットの一例の概略断面図である。
図1において、11は紫外線LEDランプの光源(LEDチップ)であり、基板13の中に設置されている。また、
図1において、12は紫外線に透過な紫外線光源カバーであり、LEDそのものを封止し、又はLEDユニットの保護のために基板13の上に置かれる。紫外線光源カバー12は、紫外線に透過でなければならいため多くの透明樹脂を使うことができず、従来、石英ガラスを用いることが一般的である。これを本実施形態の紫外線光源カバーでは、ポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体を含む樹脂とすることができる。従来の石英ガラスを用いた紫外線光源カバーは、形状が
図1のように平板型に限られ、光源から180°以下、およそ120°程度の角度しか光の放出ができず放射効率の低下につながる。
【0049】
これに対して、本実施形態の紫外線光源カバーは成型性に優れる樹脂により構成されるため、
図2~5に示すような曲率の高い構造に成型可能である。
【0050】
図2は、半球型の紫外線光源カバーを有する紫外線LEDランプユニットの一例の概略断面図である。
図2に示す紫外線LEDランプユニットは、LEDチップ21を基板23より上に設置し、半球状の紫外線光源カバー22で保護しており、光源から180°以上の角度で光を放出することができる。
【0051】
図3は、砲弾型(カップ状)の紫外線光源カバーを有する紫外線LEDランプユニットの一例の概略断面図である。石英ガラスでは砲弾型の紫外線光源カバーの作成が困難であるが、本実施形態の紫外線光源カバーは、ポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体を含む樹脂を使っているため、成型性に優れ、砲弾型の紫外線光源カバーとすることができる。
図3に示す紫外線LEDランプユニットは、紫外線LEDランプの光源(LEDチップ)31を砲弾型の紫外線光源カバー32で覆っており、
図2に示す紫外線LEDランプユニットより、さらに広角度で光を放射することができる。
【0052】
図4は、球状の紫外線光源カバーを有する紫外線LEDランプユニットの一例の概略断面図である。
図4に示す紫外線LEDランプユニットは、複数の紫外線LEDランプの光源(LEDチップ)41を集積し球状の紫外線光源カバー42で覆ったものでほぼ全方位への照射が可能となる。
【0053】
図5は、細長い容器状の紫外線光源カバーを有する紫外線LEDランプユニットの一例の概略断面図である。
図5に示す紫外線LEDランプユニットは、紫外線LEDランプの光源(LEDチップ)51を細長い容器状の紫外線光源カバー52の先に設置した紫外線光源ユニットである。
【0054】
本実施形態の紫外線光源ユニットは、流体殺菌装置に応用されることが好ましい。
【0055】
本実施形態の流体殺菌装置は、流体が通過する流路と、前記流路内に配置される前記紫外線光源カバーと、前記紫外線光源カバー内に設置された紫外線光源と、を備える。
【0056】
図6は、
図5の紫外線照射ユニット61を内部に多数配置した流体殺菌装置63の一例の概略構成図である。
図6に示す流体殺菌装置では、
図6中の矢印の方向のとおり、紫外線照射した中に片方から液体を流通させることにより多量かつ効率的に紫外線照射して、液体を殺菌することができる。
【0057】
上述の用途のほかに、
図7に示すように、可撓性を持たせたチューブ状の紫外線光源カバー72に紫外線LEDランプの光源(LEDチップ)71をいれた紫外線照射ユニットで極小部や狭窄部の紫外線照射に用いることができる。
【実施例0058】
以下に実施例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0059】
本実施例において、各物性の測定及び評価は以下の方法により行った。
【0060】
<密度>
JIS K7112:1999のD法に準拠して密度を測定した。具体的には、MFR測定に用いたストランドを120℃で1時間アニールしたのち1時間放冷し密度勾配管を用いて密度を測定した。
【0061】
<長鎖分岐度>
樹脂組成物に含まれるポリエチレン又はエチレンα-オレフィン共重合体の長鎖分岐度は、BRUKER BIO SPIN社製AVANCE600MHz核磁気共鳴装置を用いて、13C-NMRによってヘキシル基以上の分岐数を測定して求めた。当該測定において、溶媒はオルトジクロロベンゼン-d4を用い、積算回数は8000回とした。主鎖メチレン炭素(化学シフト:29.9ppm)1000個当たりの個数として、長鎖分岐の分岐点の3級炭素のβ位置にあるβ-炭素(22.7ppm)のピークの積分値から分岐度を求めた。
【0062】
<広角X線散乱配向度>
成型体の平滑面を試験片として、リガク社製WAXS(Nano Viewer)を用い、以下の条件で樹脂組成物の広角X線散乱測定による配向度(広角X線散乱配向度)を求めた。光学系は、ポイントコリメーション(1st:0.4mmφ、2nd:0.2mm、guard:0.6mmφ)を用い、シート法線方向からX線を入射(Through View)させた。検出器としてイメージングプレートを用い、カメラ長:78.8mm、測定時間:15分間照射し、円環平均WAXSプロファイル散乱像を得た。得られた円環平均WAXSプロファイルより、(110)面由来のピーク(2θ=21.2°)強度の方位角依存性から2θが21.0°< 2θ <22.0°の範囲を積算し、方位角と規格化散乱強度の関係図から180°、もしくは0°(360°)のピークをGauss関数でフィッティングし、得られたピークの半値幅(Δ)を決定し、算出式(1)により配向度fを決定した。
f=1-(Δ/360°) 式(1)
【0063】
<小角X線散乱配向度>
樹脂組成物の小角X線散乱測定による配向度(小角X線散乱配向度)は、成型体の小角X線回折(散乱)解析(SAXS)によって、求めた。測定装置及び条件は以下のとおりとした。
装置:Nano Viewer(株式会社リガク社製)
条件
光学系:ポイントコリメーション
X線入射方向:フィルム法線方向
測定時間:900秒
温度:常温
サンプル形状:シート状
カメラ長:647.4mm
検出器:PILATUS100K(2次元検出器)
X線波長λ:0.154nm
【0064】
<透過率>
実施例及び比較例で製造した紫外線光源カバーの全光線透過率(波長235nm、265nm及び550nmの透過率)はJIS K 7136:2000に準じて測定した。測定機器は日本電色工業社製、ヘーズメーターNDH2000を用いた。
【0065】
<ヘーズ>
実施例及び比較例で製造したシートのヘーズ(賦形前のシートのヘーズ)及び該シートを成型した紫外線光源カバーのヘーズ(賦形後のカバーのヘーズ)は、JIS K 7136:2000に準じて測定した。測定機器は日本電色工業社製、ヘーズメーターNDH2000を用いた。
【0066】
<肉厚>
実施例及び比較例で製造した
図3に示すカップ状の紫外線光源カバーのサンプルの側面の高さ中央部分の肉厚を計測した。
【0067】
<強度>
実施例及び比較例で製造した
図3に示すカップ状の紫外線光源カバーの球体部の頂点に50gのおもりを20cm高さから落下させ、カバーの様子を確認し以下の評価基準で評価した。
(評価基準)
A:へこみなし
B:へこみがあるが破壊若しくはヒビ割れなし
C:破壊若しくはヒビ割れあるがおもりがカバーを貫通していない。
D:おもりがカバーを貫通する
【0068】
[ポリエチレン樹脂組成物(PE1)の調製例]
(1)酸化クロム触媒(I)の合成
三酸化クロム4モルを蒸留水80リットルに溶解して溶液を得た。この溶液中にシリカ(W.Rグレースアンドカンパニ製グレード952)20kgを浸漬し、室温にて1時間攪拌してスラリーを得た。その後、このスラリーを加熱して水を留去し、続いて120℃にて10時間減圧乾燥を行った。その後、600℃にて5時間乾燥空気を流通させて焼成し、クロムを1.0質量%含有した酸化クロム触媒(I)を得た。
【0069】
(2)有機アルミニウム化合物(II)の合成
トリエチルアルミニウム100モル、メチルヒドロポリシロキサン(30℃における粘度:30センチストークス)100モル(Si基準)、n-ヘキサン150リットルを窒素雰囲気下耐圧容器に秤取し、攪拌下90℃で5時間反応させてAl(C2H5)2(OSi・H・CH3・C2H5)ヘキサン溶液を調製した。次にこの溶液100モル(Al基準)を窒素雰囲気下600リットルの反応器に移し、Al(C2H5)2Al(O-C2H5)100モル(Al基準)とn-ヘキサン50リットルとの混合溶液を80℃にて攪拌下に添加し、3時間反応させてAl(C2H5)2.0(OC2H5)0.5(OSi・H・CH3・C2H5)0.5ヘキサン溶液(有機アルミニウム化合物(II))を調製した。
【0070】
(3)チタン触媒(III)の合成
充分に窒素置換された15リットルの反応器に、トリクロルシランを2モル/リットルのn-ヘプタン溶液として3リットル仕込んだ。反応器内の溶液を攪拌しながら-10℃に保ち、組成式AlMg6(C2H5)3(n-C4H9)6で示される有機マグネシウム成分のn-ヘキサン溶液7リットル(マグネシウム換算で5モル)を3時間かけて加え、更に65℃にて1時間攪拌下反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、n-ヘキサン7リットルで4回洗浄を行い、固体物質スラリーを得た。この固体物質スラリーから固体(チタン触媒(III))を分離・乾燥して分析した結果、20.3質量%のチタンを有していた。
【0071】
(4)ポリエチレン樹脂Aの製造
単段重合プロセスにおいて、容積230リットルの重合器で重合した。重合温度は84℃、重合圧力は0.98MPaとした。この重合器に(1)で合成した酸化クロム触媒(I)50gに、(2)で調製した有機アルミニウム化合物(II)0.03モル(Al基準)を加えて、室温で1時間反応させて固体触媒を得た。得られた固体触媒を2g/時間の速度で、エタノールとトリエチルアルミニウムとをモル比0.98:1で反応させることにより有機アルミニウム化合物を得た。得られた有機アルミニウム化合物の重合器中の濃度が0.08ミリモル/リットルになるよう供給し調整した。精製ヘキサンは60リットル/時間の速度で供給し、またエチレンを10kg/時間の速度で供給し、分子量調節剤として水素を気相濃度が約5モル%になるように供給し重合を行い、メルトインデックス(MI)が1.0g/10分、密度が960kg/m3のポリエチレン樹脂A(以下「樹脂A」とも記す)を製造した。
【0072】
(5)ポリエチレン樹脂Bの製造
最初に1段目の重合で低分子量成分を製造するために、反応容積300リットルのステンレス製重合器1を用い、重合温度83℃、重合圧力1MPaの条件で重合を行った。触媒は上記の固体触媒(III)を1.4ミリモル(Ti原子基準)/時間、トリイソブチルアルミニウムを10ミリモル(金属原子基準)/時間、またヘキサンは40リットル/時間の速度で導入した。分子量調整剤としては水素を用い、エチレンに対する水素濃度が70モル%になるように供給し重合を行った。重合器1内のポリマースラリー溶液を圧力0.1MPa、温度75℃のフラッシュドラムに導き、未反応のエチレン、水素を分離した後反応容積250リットルの重合器2にスラリーポンプで昇圧して導入した。重合器2では、温度77℃、圧力0.5MPaの条件下で、トリイソブチルアルミニウムを23ミリモル/時間、ヘキサンは95リットル/時間の速度で導入した。これに、エチレン、水素、ブテン-1を水素の気相濃度が約9モル%、ブテンの気相濃度が約10モル%になるように導入して、重合器1で生成した低分子量部分の量に対して、重合器2で生成した高分子量部分の質量比が1.0倍となるように高分子量部分を重合し、MIが0.43g/10分、密度が940kg/m3のポリエチレン樹脂B(以下「樹脂B」とも記す)を製造した。尚、重合器1で生成した低分子量部分のMIは、70g/10分、密度は972kg/m3であった。
【0073】
(6)ポリエチレン樹脂組成物(PE1)の製造
上記の如くして製造したポリエチレン樹脂A及びBのパウダーを質量比で、39対61の割合で混合し、次いでこの混合物にステアリン酸カルシウム300ppm及びアデカ社製アデカスタブ(登録商標)AO-50を300ppm、アデカスタブ(登録商標)2112を500ppmの濃度になるよう添加し、混合機で攪拌混合した。この混合物をシリンダー径44mmの二軸押出機(日本製鋼所社製TEX44HCT-49PW-7V)を使用し、シリンダー温度200℃、押出量35kg/時間の条件で、ポリエチレン樹脂組成物(PE1)を得た。
【0074】
[ポリエチレン樹脂組成物(PE2)の調製例]
(1)メタロセン担持触媒[A]の調製
シリカ(P-10、富士シリシア社(日本国)製)を、窒素雰囲気下、400℃で5時間焼成し、脱水した。エトキシジエチルアルミニウムを表面水酸基と反応させてエタンガスを発生させ、ガスビュレットを用いて、発生したエタンガスの量を測定した。発生したエタンガスの量に基づいて脱水シリカの表面水酸基の初期量を求めたところ、1.3mmol/g-SiO2であった。容量1.8リットルのオートクレーブにおいて、この脱水シリカ40gをヘキサン800cc中に分散させ、スラリーを得た。得られたスラリーを攪拌下50℃に保ちながら、トリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1mol/リットル)を60cc加えた。その後オートクレーブ内の溶液を2時間攪拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面水酸基とを反応させ、トリエチルアルミニウム処理されたシリカと上澄み液とを含み、該トリエチルアルミニウム処理されたシリカの全ての表面水酸基がトリエチルアルミニウムによりキャッピングされている成分[D]を得た。その後、得られた反応混合物中の上澄み液をデカンテーションによって除去することにより、上澄み液中の未反応のトリエチルアルミニウムを除去した。その後、ヘキサンを適量加え、トリエチルアルミニウム処理されたシリカのヘキサンスラリー800ccを得た。一方、[(N-t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム-1,3-ペンタジエン(以下、「チタニウム錯体」という)200mmolをアイソパーE[エクソンケミカル社(米国)製の炭化水素混合物の商品名]1000ccに溶解し、予めトリエチルアルミニウム及びジブチルマグネシウムより合成した組成式AlMg6(C2H5)3(n-C4H9)12の1mol/リットルヘキサン溶液を20cc加え、更にヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を0.1mol/リットルに調整し、成分[E]を得た。
また、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム-トリス(ペンタフルオロフェニル)(4-ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称する)5.7gをトルエン50ccに添加して溶解し、ボレートの100mmol/リットルトルエン溶液を得た。このボレートのトルエン溶液にエトキシジエチルアルミニウムの1mol/リットルヘキサン溶液5ccを室温で加え、さらにヘキサンを加えてトルエン溶液中のボレート濃度が70mmol/リットルとなるようにした。その後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む反応混合物を得た。
ボレートを含むこの反応混合物46ccを、上で得られた、成分[D]のスラリー800ccに15~20℃で攪拌しながら加え、ボレートを物理吸着によりシリカに担持した。こうして、ボレートを担持したシリカのスラリーが得られた。さらに上で得られた成分[E]のうち32ccを加え、3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応させた。こうしてシリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成されているメタロセン担持触媒[A]を得た。
【0075】
(2)液体助触媒成分[B]の調製
有機マグネシウム化合物として、AlMg6(C2H5)3(n-C4H9)12で示される有機マグネシウム化合物を使用した。これと反応させるシロキサン化合物として、メチルヒドロポリシロキサン(25℃における粘度20センチストークス)を使用した。200ccのフラスコに、ヘキサン40ccとAlMg6(C2H5)3(n-C4H9)12を、MgとAlの総量として37.8mmolを攪拌しながら添加し、25℃でメチルヒドロポリシロキサン2.27g(37.8mmol)を含有するヘキサン40ccを攪拌しながら添加して溶液を得た。その後、得られた溶液を80℃に温度を上げて3時間、攪拌下に反応させることにより、液体助触媒成分[B]を調製した。
上記のメタロセン担持触媒[A]及び液体助触媒成分[B]を組み合わせたものをメタロセン触媒として用い、メタロセン触媒系高密度ポリエチレンの調製を以下のとおり行った。
【0076】
(3)ポリエチレン樹脂組成物(PE2)の製造
上記で得られたメタロセン触媒を用いて、連続スラリー重合法で、直列に接続した2つの重合槽による二段重合を行った。用いたコモノマーは1-ブテンである。一段目の重合槽には、モノマーとしてエチレンのみを供給し、温度70℃、分子量調節剤としての水素を1.01mol%の割合で供給し、全圧を3.0kg/cm2Gに保ち、二段目には温度75℃で、1-ブテンを0.23mol%、水素を550molppmの割合で供給し、全圧を6.2kg/cm2Gに保つことにより重合した。一段目の重合槽で得られるエチレン単独重合体からなる低分子量成分(A)の生産量の割合を70質量%、二段目の重合槽で得られる共重合体からなる高分子量成分(B)の生産量の割合を30質量%に設定した。こうしてメタロセン触媒系高密度ポリエチレン(以下「樹脂C」とも記す)のパウダーを得た。得られた樹脂Cのパウダーを二軸押出機(日本製鋼社製;TEX44HCT-49PW-7V)を用い、シリンダー温度200℃、押出量35kg/時間の条件で混練しながら押出し、ポリエチレン樹脂組成物(PE2)のペレットを得た。
【0077】
[実施例1]
(1)シート作成
表1に示すとおり、上記作成したポリエチレン樹脂組成物(PE1)を用い、圧縮成型にて温度200℃で加熱溶融し300mm角、厚みが1.2mmのシートを作成した。
【0078】
(2)紫外線光源カバー成型
上記(1)で作成したシートをクランプし、シートの温度が樹脂の融点(Tm)より5~10℃低い温度になるようにヒーター間で加熱し、カップ形状のキャビティが下に位置した状態で上部から押し棒を15000mm/秒の速さで押したのちエアーを吹き込むことによって
図3に示すようなカップ状の紫外線光源カバーを成型した。得られた紫外線光源カバーを用いて各物性の測定及び評価を上記方法により行った。結果を表2に示す。
【0079】
[実施例2]
紫外線光源カバーを形成する樹脂組成物として、表1に示すとおり、上記作成したポリエチレン樹脂組成物(PE2)を用いた以外は、実施例1と同様にしてカップ状の紫外線光源カバーを成型した。得られた紫外線光源カバーを用いて各物性の測定及び評価を上記方法により行った。結果を表2に示す。
【0080】
[実施例3]
紫外線光源カバーを形成する樹脂組成物として、表1に示すとおり、旭化成株式会社製サンテック(登録商標)-HD B161(高密度ポリエチレン)を用いた以外は、実施例1と同様にしてカップ状の紫外線光源カバーを成型した。得られた紫外線光源カバーを用いて各物性の測定及び評価を上記方法により行った。結果を表2に示す。
【0081】
[実施例4]
紫外線光源カバーを形成する樹脂組成物として、表1に示すとおり、旭化成株式会社製サンテック(登録商標)-HD B870(高密度ポリエチレン)を用いた以外は、実施例1と同様にしてカップ状の紫外線光源カバーを成型した。得られた紫外線光源カバーを用いて各物性の測定及び評価を上記方法により行った。結果を表2に示す。
【0082】
[比較例1]
紫外線光源カバーを形成する樹脂組成物として、表1に示すとおり、旭化成株式会社製サンテック(登録商標)-HD J240(高密度ポリエチレン)を用いた以外は、実施例1と同様にしてカップ状の紫外線光源カバーを成型した。得られた紫外線光源カバーを用いて各物性の測定及び評価を上記方法により行った。結果を表2に示す。
【0083】
【0084】