(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167077
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20221027BHJP
H03H 3/08 20060101ALI20221027BHJP
H03H 9/72 20060101ALI20221027BHJP
H03H 9/64 20060101ALI20221027BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20221027BHJP
H03H 9/70 20060101ALI20221027BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H3/08
H03H9/72
H03H9/64 Z
H03H9/17 F
H03H9/70
H01L23/02 B
H01L23/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072613
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】菊地 努
【テーマコード(参考)】
5J097
5J108
【Fターム(参考)】
5J097AA25
5J097BB15
5J097DD14
5J097HA04
5J097KK10
5J108AA07
5J108EE03
5J108GG03
(57)【要約】
【課題】空隙の気密性の低下を抑制することが可能な電子部品を提供する。
【解決手段】弾性波デバイス100は、支持基板10と、支持基板10上に設けられる弾性波素子30と、平面視して弾性波素子30を囲んで支持基板10上に設けられる金属製の枠体40と、枠体40上に設けられ、支持基板10とで空隙20を挟むリッド60と、枠体40とリッド60とを接合して弾性波素子30を空隙20内に封止し、断面視して枠体40からリッド60に向かうにつれて幅が漸増する裾広がりの形状をしたはんだ接合層44と、空隙20内において支持基板10とリッド60との間に設けられ、枠体40よりも支持基板10からの高さが高い金属製の柱状体50と、柱状体50とリッド60とを接合し、断面視して柱状体50からリッド60に向かうにつれて幅が漸増する裾広がりの形状をしたはんだ接合層54とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられる機能素子と、
平面視して前記機能素子を囲んで前記基板上に設けられる金属製の枠体と、
前記枠体上に設けられ、前記基板とで空隙を挟むリッドと、
前記枠体と前記リッドとを接合して前記機能素子を前記空隙内に封止し、断面視して前記枠体から前記リッドに向かうにつれて幅が漸増する裾広がりの形状をした第1はんだ接合層と、
前記空隙内において前記基板と前記リッドとの間に設けられ、前記枠体よりも前記基板からの高さが高い金属製の柱状体と、
前記柱状体と前記リッドとを接合し、断面視して前記柱状体から前記リッドに向かうにつれて幅が漸増する裾広がりの形状をした第2はんだ接合層と、を備える電子部品。
【請求項2】
前記リッドおよび前記基板の少なくとも一方は、前記柱状体直下の前記基板から前記柱状体直上の前記リッドまでの距離が前記枠体直下の前記基板から前記枠体直上の前記リッドまでの距離より長くなる段差を有する、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記リッドおよび前記基板の少なくとも一方は、前記柱状体直下の前記基板から前記柱状体直上の前記リッドまでの距離と前記枠体直下の前記基板から前記枠体直上の前記リッドまでの距離との差が前記柱状体の高さと前記枠体の高さとの差の0.5倍以上1.5倍以下となる段差を有する、請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
前記リッドおよび前記基板の少なくとも一方が有する前記段差の高さの合計は、前記柱状体の高さと前記枠体の高さとの差と略同じである、請求項2または3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記リッドは、前記柱状体の高さと前記枠体の高さとの差と略同じ高さの前記段差を有する、請求項2または3に記載の電子部品。
【請求項6】
前記基板は、前記柱状体の高さと前記枠体の高さとの差と略同じ高さの前記段差を有する、請求項2または3に記載の電子部品。
【請求項7】
前記枠体と前記柱状体はめっき層であり、
断面視して前記柱状体の幅は前記枠体の幅よりも大きい、請求項1から6のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項8】
前記柱状体直下に位置して前記基板に設けられ、前記柱状体に電気的に接続されるビア配線と、
前記機能素子から前記柱状体と前記ビア配線の間を接続する配線と、を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項9】
前記機能素子は弾性波素子である、請求項1から8のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項10】
前記弾性波素子によりフィルタが形成されている、請求項9に記載の電子部品。
【請求項11】
前記フィルタによりマルチプレクサが形成されている、請求項10に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
機能素子を囲む枠体上にリッド(蓋)を設け、リッドと支持基板との間の空隙内に機能素子を封止する電子部品が知られている(例えば特許文献1から4)。リッドに圧力が加わった場合でも、リッドが撓むことを抑制するために、空隙内で支持基板とリッドとの間に柱状体を設けることが知られている(例えば特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-205500号公報
【特許文献2】特開2016-152612号公報
【特許文献3】特開2014-143640号公報
【特許文献4】特開2013-115664号公報
【特許文献5】特開2021-52359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、支持基板とリッドとの間に柱状体を設けた場合、枠体とリッドとの間に接合不良が生じて、空隙の気密性が低下してしまうことがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、空隙の気密性の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板と、前記基板上に設けられる機能素子と、平面視して前記機能素子を囲んで前記基板上に設けられる金属製の枠体と、前記枠体上に設けられ、前記基板とで空隙を挟むリッドと、前記枠体と前記リッドとを接合して前記機能素子を前記空隙内に封止し、断面視して前記枠体から前記リッドに向かうにつれて幅が漸増する裾広がりの形状をした第1はんだ接合層と、前記空隙内において前記基板と前記リッドとの間に設けられ、前記枠体よりも前記基板からの高が高い金属製の柱状体と、前記柱状体と前記リッドとを接合し、断面視して前記柱状体から前記リッドに向かうにつれて幅が漸増する裾広がりの形状をした第2はんだ接合層と、を備える電子部品である。
【0007】
上記構成において、前記リッドおよび前記基板の少なくとも一方は、前記柱状体直下の前記基板から前記柱状体直上の前記リッドまでの距離が前記枠体直下の前記基板から前記枠体直上の前記リッドまでの距離より長くなる段差を有する構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記リッドおよび前記基板の少なくとも一方は、前記柱状体直下の前記基板から前記柱状体直上の前記リッドまでの距離と前記枠体直下の前記基板から前記枠体直上の前記リッドまでの距離との差が前記柱状体の高さと前記枠体の高さとの差の0.5倍以上1.5倍以下となる段差を有する構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記リッドおよび前記基板の少なくとも一方が有する前記段差の高さの合計は、前記柱状体の高さと前記枠体の高さとの差と略同じである構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記リッドは、前記柱状体の高さと前記枠体の高さとの差と略同じ高さの前記段差を有する構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記基板は、前記柱状体の高さと前記枠体の高さとの差と略同じ高さの前記段差を有する構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記枠体と前記柱状体はめっき層であり、断面視して前記柱状体の幅は前記枠体の幅よりも大きい構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記柱状体直下に位置して前記基板に設けられ、前記柱状体に電気的に接続されるビア配線と、前記機能素子から前記柱状体と前記ビア配線の間を接続する配線と、を備える構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記機能素子は弾性波素子である構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記弾性波素子によりフィルタが形成されている構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記フィルタによりマルチプレクサが形成されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、空隙の気密性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA-A断面図である。
【
図2】
図2(a)は、実施例1におけるリッドの下面図、
図2(b)は、実施例1の変形例におけるリッドの下面図である。
【
図3】
図3は、実施例1における弾性波素子の平面図である。
【
図4】
図4(a)はフィルタの回路図、
図4(b)はディプレクサのブロック図である。
【
図5】
図5(a)から
図5(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図6】
図6(a)から
図6(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図7】
図7は、比較例に係る弾性波デバイスの断面図である。
【
図8】
図8は、実施例2に係る弾性波デバイスの断面図である。
【
図9】
図9(a)は、実施例2における支持基板の上面図、
図9(b)は、実施例2の変形例における支持基板の上面図である。
【
図10】
図10は、実施例3に係る弾性波デバイスの断面図である。
【
図11】
図11(a)は、実施例4に係る弾性波デバイスの断面図、
図11(b)は、実施例4における弾性波素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について、電子部品として弾性波デバイスの場合を例に説明する。
【実施例0020】
図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA-A断面図である。
図1(a)は、リッド60を透視して、支持基板10、圧電層12、ビア配線16、枠体40、および柱状体50を主に示している。なお、
図1(a)では、図の明瞭化のために、圧電層12および枠体40にハッチングを付している。
図1(a)および
図1(b)に示すように、弾性波デバイス100は、支持基板10の上面に圧電層12が接合されている。
【0021】
支持基板10は、例えばサファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、石英基板、水晶基板、またはシリコン基板であり、その厚さは50μm~300μmである。サファイア基板は単結晶のAl2O3を主成分とする基板である。アルミナ基板は多結晶のAl2O3を主成分とする基板である。スピネル基板は単結晶または多結晶のMgAl2O4を主成分とする基板である。石英基板はアモルファスのSiO2を主成分とする基板である。水晶基板は単結晶のSiO2を主成分とする基板である。
【0022】
圧電層12は、例えば単結晶タンタル酸リチウム層または単結晶ニオブ酸リチウム層であり、その厚さは0.5μm~30μmである。圧電層12の厚さは、例えば弾性波素子30が励振する主モードの弾性波の波長より小さい。支持基板10の線膨張係数は圧電層12の線膨張係数より小さい。これにより、弾性波デバイス100の周波数温度係数を低減できる。圧電層12と支持基板10との間に酸化シリコンまたは窒化アルミニウム等の絶縁層を設けてもよい。このように、圧電層12は支持基板10に直接または間接的に接合されている。
【0023】
圧電層12の上面に1または複数の弾性波素子30が設けられている。支持基板10の下面に端子14が設けられている。端子14は、弾性波素子30を外部と電気的に接続するためのフットパッドである。支持基板10を貫通するビア配線16が設けられている。ビア配線16の一端は端子14に接続されている。ビア配線16の他端は圧電層12の上面から支持基板10の上面に延在する配線18に接続されている。これにより、弾性波素子30は配線18およびビア配線16を介して端子14に電気的に接続されている。端子14、ビア配線16、および配線18は、例えばチタン層、銅層、アルミニウム層、白金層、ニッケル層、および/または金層等を含む金属層である。端子14、ビア配線16、および配線18は、単層の金属層の場合でもよいし、複数層が積層された積層金属層の場合でもよい。
【0024】
支持基板10の周縁領域には圧電層12は設けられていない。平面視において、圧電層12および弾性波素子30を囲むように支持基板10上に枠体40が設けられている。枠体40は圧電層12から離れて支持基板10上に設けられている。環状の枠体40上に、環状のはんだ接合層44が設けられている。
【0025】
枠体40は、例えばシード層(不図示)と、第1金属元素を主成分とする金属層40aと、第2金属元素を主成分とする金属層40bと、の積層膜である。第1金属元素は例えば銅またはアルミニウムである。第2金属元素は例えばニッケルまたは白金である。金属層40a、40bは電解めっき法で形成されためっき層である。
【0026】
金属層40aは、シード層および金属層40bよりも厚く、枠体40を構成する金属層のうち最も厚い金属層である。シード層の厚さは例えば0.5μm以下である。金属層40aの厚さは例えば15μm~25μm程度である。金属層40bの厚さは2μm~5μm程度である。金属層40aの最大幅は例えば20μm~25μm程度である。
【0027】
枠体40上に、支持基板10との間に空隙20が形成されるようにリッド60が設けられている。リッド60は、金属層62と本体64を含む。リッド60は、概ね平板であり、平面視にて矩形状をしている。リッド60の上面は平坦となっている。金属層62がはんだ接合層44と反応して合金化することで、リッド60は枠体40に接合されている。弾性波素子30は、リッド60、枠体40、およびはんだ接合層44により空隙20内に封止される。リッド60の金属層62の一部は、はんだ接合層44と反応して合金層となっている。はんだ接合層44は、枠体40からリッド60に向かうにつれて幅が漸増する裾広がりの形状をしている。はんだ接合層44がこのような裾広がりの形状をしていることで、枠体40とリッド60の間の接合信頼性が向上し、空隙20内の気密性の低下を抑制することができる。はんだ接合層44の裾広がり形状の起点は枠体40の端部である。
【0028】
リッド60の本体64は、金属層62より厚く、リッド60が潰れ難くなるように金属層62より硬い金属材料で形成される。金属層62は、はんだ接合層44および後述のはんだ接合層54と接合する金属層であり、例えばニッケル層と金層の積層金属層である。本体64は、線膨張係数の小さい金属層であり、例えばコバール層であり、その厚さは20μm~100μmである。なお、本体64は、シリコン層またはサファイア層でもよい。
【0029】
枠体40は、支持基板10の下面に設けられたグランド端子に支持基板10を貫通するビア配線を介して電気的に接続されてもよい。枠体40、はんだ接合層44、およびリッド60は金属であるため、グランド電位を供給することにより、枠体40、はんだ接合層44、およびリッド60にシールド効果を付与することができる。また、枠体40、はんだ接合層44、およびリッド60が金属であることで、弾性波素子30を空隙20内に気密性良く封止することができる。なお、枠体40、はんだ接合層44、およびリッド60は支持基板10上では弾性波素子30に電気的に接続されていない。
【0030】
圧電層12は、支持基板10の中央付近に、上面から下面にかけて貫通する開口22を有する。開口22では例えば支持基板10の上面が露出している。開口22において、支持基板10とリッド60との間に柱状体50が設けられている。柱状体50は、空隙20内に位置し、圧電層12から離れて設けられ、例えば支持基板10の上面に接している。柱状体50は、支持基板10から計測した高さが枠体40より高くなっている。柱状体50上にはんだ接合層54が設けられている。柱状体50は、リッド60の金属層62がはんだ接合層54と反応して合金化することで、リッド60に接合されている。
【0031】
支持基板10とリッド60との間に柱状体50が設けられることで、リッド60に上方から圧力が加わった場合でも、リッド60に生じる撓みを抑制することができる。このため、リッド60が弾性波素子30等に接触して特性が劣化することを抑制できる。
【0032】
柱状体50は、例えばシード層(不図示)と、第1金属元素を主成分とする金属層50aと、第2金属元素を主成分とする金属層50bと、の積層膜である。枠体40において説明したように、第1金属元素は例えば銅またはアルミニウムであり、第2金属元素は例えばニッケルまたは白金である。柱状体50は、枠体40と同じ材料からなる同じ層構造をしている。金属層50a、50bは電解めっき法で形成されためっき層である。
【0033】
リッド60の金属層62の一部は、はんだ接合層54と反応して合金層となっている。はんだ接合層54は、柱状体50からリッド60に向かうにつれて幅が漸増する裾広がりの形状をしている。はんだ接合層54がこのような裾広がりの形状をしていることで、柱状体50とリッド60の間の接合信頼性が向上し、リッド60の撓みを効果的に低減できる。はんだ接合層54の裾広がり形状の起点は柱状体50の端部である。
【0034】
金属層50aは、シード層および金属層50bよりも厚く、柱状体50を構成する金属層のうち最も厚い金属層である。また、金属層50aは、枠体40の金属層40aよりも厚い。シード層の厚さは例えば0.5μm以下である。金属層50aの厚さは例えば20μm~30μm程度である。金属層50bの厚さは2μm~5μm程度である。金属層50aの最大幅は例えば40μm~50μm程度である。このように、金属層50aの幅は、枠体40の金属層40aの幅よりも大きく、例えば1.5倍以上大きく、例えば2倍以上大きい。
【0035】
柱状体50の幅が枠体40の幅よりも大きいのは以下の理由のためである。すなわち、柱状体50はリッド60の撓みを抑制する点から幅が広いことが好ましく、枠体40はデバイスの小型化および弾性波素子30の形成領域の確保の点から幅が狭いことが好ましいためである。
【0036】
柱状体50の支持基板10からの高さが枠体40の支持基板10からの高さよりも高いのは以下の理由のためである。すなわち、柱状体50は枠体40よりも幅が広いことから、電解めっき法を用いて柱状体50と枠体40を同時に形成すると、電流密度の点から、柱状体50は枠体40よりも高くなるためである。
【0037】
リッド60の下面には、柱状体50直下の支持基板10から柱状体50直上のリッド60までの距離が枠体40直下の支持基板10から枠体40直上のリッド60までの距離よりも長くなる段差66が設けられている。例えば、柱状体50直上に位置する箇所が掘り込まれることで段差66が形成されている。リッド60に段差66が形成されていることで、柱状体50の高さと枠体40の高さとの差が吸収されるようになる。柱状体50の高さと枠体40の高さとの差を吸収する点から、段差66の高さは、柱状体50の高さと枠体40の高さとの差の2倍より小さい場合が好ましく、0.5倍以上1.5倍以下である場合がより好ましく、0.7倍以上1.3倍以下である場合が更に好ましく、略同じである場合がより更に好ましい。
【0038】
図2(a)は、実施例1におけるリッド60の下面図、
図2(b)は、実施例1の変形例におけるリッド60aの下面図である。
図2(a)に示すように、実施例1におけるリッド60では、複数の柱状体50に対して1つの凹部68が段差66により形成されている。
図2(b)に示すように、実施例1の変形例におけるリッド60aでは、複数の柱状体50それぞれに対して1つの凹部68が段差66により形成されている。
図2(a)のリッド60では、凹部68の位置精度の緩和等により製造が容易となる。
図2(b)のリッド60aでは、凹部68の形成面積が小さくなるため、リッド60の強度が向上する。
【0039】
例えば、支持基板10は厚さが75mのサファイア基板である。圧電層12は厚さが0.6μmの42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層である。枠体40のシード層は支持基板10側から厚さが0.05μmのチタン層と厚さが0.325μmの銅層の積層であり、金属層40aは厚さが21μmの銅層であり、金属層40bは厚さが2.5μmのニッケル層である。はんだ接合層44は厚さが4μmの金錫はんだ層である。金属層40aの最大幅は23μmである。柱状体50のシード層は支持基板10側から厚さが0.05μmのチタン層と厚さが0.325μmの銅層の積層であり、金属層50aは厚さが23μm~25μmの銅層であり、金属層50bは厚さが2.5μmのニッケル層である。はんだ接合層54は厚さが4μmの金錫はんだ層である。金属層50aの最大幅は46μmである。リッド60の金属層62は本体64側から厚さが1μmのニッケル層と厚さが1μmの金層の積層である。本体64は厚さが30μmのコバール板である。ビア配線16は直径が40μmの銅層である。端子14は支持基板10側から厚さが2μmの銅層と厚さが5μmのニッケル層と厚さが0.3μmの金層との積層である。
【0040】
図3は、実施例1における弾性波素子30の平面図である。
図3に示すように、弾性波素子30は弾性表面波共振子である。圧電層12の上面にIDT(Interdigital Transducer)31と反射器32が設けられている。IDT31は、対向する一対の櫛型電極33を有する。櫛型電極33は、複数の電極指34と、複数の電極指34が接続するバスバー35と、を有する。反射器32は、IDT31の両側に設けられている。IDT31が圧電層12に弾性表面波を励振する。一対の櫛型電極33のうち一方の櫛型電極の電極指34のピッチがほぼ弾性波の波長λとなる。すなわち、弾性波の波長λは、一対の櫛型電極33の電極指34のピッチの2倍にほぼ等しい。IDT31および反射器32は、例えばアルミニウム、銅、またはモリブデン等の金属膜により形成される。圧電層12の上面にIDT31および反射器32を覆う保護膜または温度補償膜が設けられていてもよい。櫛型電極33はダミー電極指を有していてもよい。
【0041】
圧電層12の上面に形成された複数の弾性波素子30によってフィルタが形成されてもよいし、デュプレクサが形成されてもよい。
図4(a)はフィルタの回路図、
図4(b)はディプレクサのブロック図である。
【0042】
図4(a)に示すように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に1または複数の直列共振器S1からS4が直列に接続されている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に1または複数の並列共振器P1からP3が並列に接続されている。直列共振器S1からS4および並列共振器P1からP3が弾性波素子30である。直列共振器および並列共振器の個数等は適宜設定できる。フィルタとしてラダー型フィルタを例に説明したが、フィルタは多重モード型フィルタであってもよい。
【0043】
図4(b)に示すように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ90が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ92が接続されている。送信フィルタ90は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ92は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。なお、マルチプレクサとしてデュプレクサを例に示したがトリプレクサまたはクワッドプレクサであってもよい。
【0044】
[製造方法]
図5(a)から
図6(c)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の製造方法を示す断面図である。
図5(a)に示すように、支持基板10の上面に例えばレーザ光を照射してビアホールを形成し、ビアホール内に銅等の金属層を例えば電解めっき法を用い形成する。その後、支持基板10の上面が露出するように金属層の上面を例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用い平坦化する。これにより、支持基板10にビア配線16が形成される。次いで、支持基板10の上面に圧電基板を例えば表面活性化法を用い常温接合する。支持基板10と圧電基板とは数nmのアモルファス層を介し直接接合されてもよいし、絶縁層を介し間接的に接合されてもよい。その後、圧電基板の上面を例えばCMP法を用い研磨する。これにより、支持基板10の上面に直接または間接的に接合された圧電層12が形成される。
【0045】
図5(b)に示すように、圧電層12の一部を例えばエッチング法を用いて除去する。これにより、支持基板10の周縁領域の圧電層12が除去され、ビア配線16が露出する。また、圧電層12に開口22が形成される。開口22では例えば支持基板10の上面が露出している。次いで、圧電層12の上面に弾性波素子30を形成する。圧電層12の上面からビア配線16まで延在し、弾性波素子30とビア配線16とを電気的に接続する配線18を形成する。
【0046】
図5(c)に示すように、支持基板10の上面に、枠体40および柱状体50を形成する領域に開口96を有するマスク層94を形成する。マスク層94は、例えばフォトレジストにより形成される。
【0047】
図6(a)に示すように、マスク層94の開口96内に金属層を例えば電解めっき法を用い形成する。これにより、シード層(不図示)と金属層40aと金属層40bを含む枠体40と、枠体40上のはんだ接合層44と、が形成される。また、シード層(不図示)と金属層50aと金属層50bを含む柱状体50と、柱状体50上のはんだ接合層54と、が形成される。このように、枠体40と柱状体50とは電解めっき法により同時に形成される。柱状体50は枠体40よりも幅が大きいことから、電解めっき法での電流密度の点から、柱状体50は枠体40よりも支持基板10からの高さが高く形成される。特に、柱状体50の金属層のうち最も厚い金属層50aが枠体40の金属層のうち最も厚い金属層40aよりも厚く形成される。
【0048】
図6(b)に示すように、マスク層94を除去した後、枠体40上のはんだ接合層44および柱状体50上のはんだ接合層54にリッド60を接合する。リッド60の金属層62とはんだ接合層44、54とは反応して合金化する。リッド60、枠体40、およびはんだ接合層44により弾性波素子30は空隙20内に封止される。リッド60には予め段差66が形成されている。段差66により窪んだ面70に柱状体50をはんだ接合層54により接合させ、面70よりも突出した面72に枠体40をはんだ接合層44により接合させる。これにより、柱状体50と枠体40の高さの差が段差66の高さによって吸収される。このため、はんだ接合層44は枠体40からリッド60に向かうにつれて幅が漸増する裾広がりの形状となり、かつ、はんだ接合層54は柱状体50からリッド60に向かうにつれて幅が漸増する裾広がりの形状となる。
【0049】
図6(c)に示すように、支持基板10の下面を例えばCMP法を用い研磨する。これにより、ビア配線16が支持基板10の下面から露出する。次いで、支持基板10の下面にビア配線16に接続する端子14を形成する。以上により、実施例1に係る弾性波デバイス100が製造される。
【0050】
[比較例]
図7は、比較例に係る弾性波デバイス500の断面図である。
図7に示すように、弾性波デバイス500では、段差が形成されていないリッド60bを用いている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0051】
比較例の弾性波デバイス500では、柱状体50とリッド60bとを接合するはんだ接合層54は、柱状体50からリッド60bに向かうにつれて幅が漸増する裾広がりの形状をしている。これに対し、枠体40とリッド60bとを接合するはんだ接合層44は、枠体40とリッド60bの間で幅が狭くなるくびれを有したくびれ形状となっている。
【0052】
はんだ接合層44がくびれ形状となるのは以下の理由によるものと考えられる。柱状体50は枠体40に比べて高いことから、段差が形成されていないリッド60bを用いると、柱状体50とリッド60bの間隔がはんだ接合層54の厚さ程度となったとき、枠体40とリッド60bの間隔ははんだ接合層44の厚さよりも大きくなる。このため、柱状体50とリッド60bははんだ接合層54に適切な荷重が掛かった状態で接合されるが、枠体40とリッド60bははんだ接合層44に適切な荷重が掛かっていない状態で接合される。このため、はんだ接合層54は柱状体50からリッド60bに向かうにつれて幅が漸増する裾広がりの適正な形状になるのに対し、はんだ接合層44は枠体40とリッド60bの間で幅が狭くなったくびれ形状になると考えられる。
【0053】
はんだ接合層44がくびれ形状になると、狭幅部分ができることで、空隙20の気密性が低下してしまう。また、狭幅部分ができることで、機械的強度の低下が生じてしまい、例えば落下等に対する信頼性が低下してしまう。
【0054】
一方、実施例1によれば、
図1(b)のように、はんだ接合層54(第2はんだ接合層)は断面視して柱状体50からリッド60に向かうにつれて幅が漸増する裾広がりの形状をしている。これにより、柱状体50とリッド60の接合性が向上し、リッド60の撓みを効果的に抑制できる。更に、はんだ接合層44(第1はんだ接合層)は断面視して枠体40からリッド60に向かうにつれて幅が漸増する裾広がりの形状をしている。これにより、柱状体50が枠体40よりも支持基板10からの高さが高い場合でも、枠体40とリッド60の接合性が向上し、空隙20の気密性の低下を抑制できる。また、枠体40とリッド60の接合性が向上するため、枠体40の幅を狭くしても空隙20の気密性の低下が抑えられるため、デバイスの小型化および弾性波素子30の形成領域の拡大を図ることができる。更に、はんだ接合層44、54が裾広がりの形状となって接合性が向上しているため、機械的強度の低下も抑制できる。
【0055】
また、実施例1では、リッド60は、柱状体50直下の支持基板10から柱状体50直上のリッド60までの距離が枠体40直下の支持基板10から枠体40直上のリッド60までの距離より長くなる段差66を有する。これにより、柱状体50と枠体40の高さの差をリッド60に設けられた段差66の高さで吸収することができ、はんだ接合層44、54を枠体40または柱状体50からリッド60に向かうにつれて幅が漸増する裾広がりの形状とすることができる。
【0056】
柱状体50と枠体40の高さの差を吸収してはんだ接合層44、54を共に裾広がりの形状にする観点から、リッド60は、柱状体50直下の支持基板10から柱状体50直上のリッド60までの距離と枠体40直下の支持基板10から枠体40直上のリッド60までの距離との差が柱状体50の高さと枠体40の高さとの差の0.5倍以上1.5倍以下となる段差66を有する場合が好ましい。リッド60は、柱状体50の高さと枠体40の高さとの差と略同じ高さの段差66を有する場合が更に好ましい。略同じとは、柱状体50の高さと枠体40の高さとの差の5%以内、つまり柱状体50の高さと枠体40の高さとの差を100%としたときに95%~105%のことである。
【0057】
また、実施例1では、枠体40と柱状体50はめっき層であり、断面視して柱状体50の幅は枠体40の幅よりも大きい。枠体40と柱状体50を電解めっき法により同時に形成すると、柱状体50の幅が枠体40の幅よりも大きいため、柱状体50は枠体40よりも高くなる。したがって、このような場合に、リッド60は、柱状体50直下の支持基板10から柱状体50直上のリッド60までの距離が枠体40直下の支持基板10から枠体40直上のリッド60までの距離より長くなる段差66を有することが好ましい。
【0058】
また、実施例1では、枠体40と柱状体50は、最も厚い金属層40a、50aは銅めっき層である。銅めっき層は、幅が異なると高さが異なって形成され易い。したがって、最も厚い金属層40a、50aが銅めっき層である場合、リッド60は、柱状体50直下の支持基板10から柱状体50直上のリッド60までの距離が枠体40直下の支持基板10から枠体40直上のリッド60までの距離より長くなる段差66を有することが好ましい。
また、実施例2では、支持基板10aは、柱状体50直下の支持基板10から柱状体50直上のリッド60までの距離が枠体40直下の支持基板10から枠体40直上のリッド60までの距離より長くなる段差11を有する。これにより、柱状体50と枠体40の高さの差を支持基板10aに設けられた段差11の高さで吸収することができ、はんだ接合層44、54を枠体40または柱状体50からリッド60に向かうにつれて幅が漸増する裾広がりの形状とすることができる。
柱状体50と枠体40の高さの差を吸収してはんだ接合層44、54を共に裾広がりの形状にする観点から、支持基板10aは、柱状体50直下の支持基板10から柱状体50直上のリッド60までの距離と枠体40直下の支持基板10から枠体40直上のリッド60までの距離との差が柱状体50の高さと枠体40の高さとの差の0.5倍以上1.5倍以下となる段差11を有する場合が好ましい。支持基板10aは、柱状体50の高さと枠体40の高さとの差と略同じ高さの段差11を有する場合が更に好ましい。略同じとは、柱状体50の高さと枠体40の高さとの差の5%以内、つまり柱状体50の高さと枠体40の高さとの差を100%としたときに95%~105%のことである。
実施例1では段差66が設けられたリッド60を用い、実施例2では段差11が設けられた支持基板10aを用いた場合を例に示したが、リッド60と支持基板10aの両方を用いる場合でもよい。この場合、段差66と段差11の合計の高さが、柱状体50の高さと枠体40の高さとの差の2倍より小さい場合が好ましく、0.5倍以上1.5倍以下である場合がより好ましく、0.7倍以上1.3倍以下である場合が更に好ましく、略同じである場合がより更に好ましい。