(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167092
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷システムおよび印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 21/00 20060101AFI20221027BHJP
B41J 25/22 20060101ALI20221027BHJP
H04N 1/387 20060101ALI20221027BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B41J21/00 Z
B41J25/22
H04N1/387 110
G06F3/12 353
G06F3/12 308
G06F3/12 350
G06F3/12 392
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072638
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】大杉 実意
【テーマコード(参考)】
2C187
5C076
【Fターム(参考)】
2C187AE01
2C187AE07
2C187AE18
2C187AG02
2C187BF11
2C187CC04
2C187CD12
2C187DB06
2C187DB09
2C187DB10
2C187DB11
2C187DB52
5C076AA17
5C076AA36
(57)【要約】
【課題】用紙と異なる縦横比の、例えばスマートフォンなどの情報表示機器に表示された画面が長尺画面であっても、そのレイアウトを大きく変えずに略画面通りの大きさで、無駄な空白を抑えて用紙に印刷できる手法を提供する。
【解決手段】情報表示機器が有する表示デバイスの画面よりも長尺の長尺画面に対応した印刷原稿データを、長尺画面の縦横の物理サイズに係るサイズ情報と共に受信するデータ受信部と、長尺画面をサイズ情報に応じた大きさで印刷するためにサイズ情報と印刷に使用する用紙のサイズとに基づいて、長尺画面を長尺方向における1以上の箇所で区分し、区分された区分画面が長尺方向と直交する幅方向に並んだ頁の印刷データを生成する印刷データ生成部と、生成された印刷データを用いて1以上の頁を用紙に印刷する印刷ユニットと、を備える長尺画面の印刷装置。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報表示機器が有する表示デバイスの画面よりも長尺の長尺画面に対応した印刷原稿データを、前記長尺画面の縦横の物理サイズに係るサイズ情報と共に受信するデータ受信部と、
前記長尺画面を前記サイズ情報に応じた大きさで印刷するために前記サイズ情報と印刷に使用する用紙のサイズとに基づいて、前記長尺画面を長尺方向における1以上の箇所で区分し、区分された区分画面が長尺方向と直交する幅方向に並んだ頁の印刷データを生成する印刷データ生成部と、
生成された印刷データを用いて1以上の頁を前記用紙に印刷する印刷ユニットと、
を備える長尺画面の印刷装置。
【請求項2】
前記サイズ情報が、前記長尺画面を前記表示デバイスに表示する表示解像度、前記長尺画面の縦横の画素数および前記印刷原稿データの解像度に係る情報である請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記サイズ情報が、さらに前記長尺画面を前記表示デバイスに表示する表示倍率を含む請求項2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記印刷データ生成部は、前記用紙に前記区分画面が何列幅方向に並ぶかを算出して各頁の印刷データを生成する請求項1~3の何れか一つに記載の印刷システム。
【請求項5】
前記印刷データ生成部は、前記用紙のサイズに応じて前記印刷原稿データに係る画像を区分し、前記長尺画面に空白部分があればその空白部分で区分するように区分位置を調整する請求項4に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記印刷データ生成部は、前記用紙のサイズに応じて決定される基準位置から所定の範囲内で前記長尺画面の区分位置を調整するが、前記基準位置から所定の範囲内に前記長尺画面の空白部分がない場合は前記基準位置で区分する請求項5に記載の印刷システム。
【請求項7】
印刷装置の制御部が、
データ受信部を介して、情報表示機器が有する表示デバイスの画面より長尺の長尺画面に対応した印刷原稿データを、前記長尺画面の縦横の物理サイズに係るサイズ情報と共に受信するステップと、
前記長尺画面を前記サイズ情報に応じた大きさで印刷するために前記サイズ情報と印刷に使用する用紙のサイズとに基づいて、前記長尺画面を長尺方向における1以上の箇所で区分するステップと、
区分された区分画面が長尺方向と直交する幅方向に並んだ頁の印刷データを生成するステップと、
印刷ユニットを用いて、生成された印刷データを用いて1以上の頁を前記用紙に印刷させるステップと、
を備える長尺画面の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報表示機器が有する表示デバイスの画面よりも長尺の長尺画面を印刷可能な印刷装置、印刷システムおよび印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スマートフォンアプリのLINE(登録商標)やSMS(Short Message Service)等の対話形式の画面を印刷したい場合がある。あるいは、スマートフォン用にデザインされたウェブページの記事等を印刷したい場合がある。スマートフォンの表示画面は、通常16:9の縦横比で表示され、印刷用紙として多用されているA4サイズやレターサイズとは縦横比が大きく異なる。
それに関して、メッセージをやり取りする対話文書等、短文章で構成される文書を余白部分の少ないレイアウトに変更して印刷する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。それによれば、文書情報に含まれる文字情報を文章毎に区分し、区分された複数の文章の各々の文字数を計測する。複数の文章のうち、文字数が所定値以下の短文章の割合が基準値以上の場合、文書情報を複数のブロックに分割する。そうして、少なくとも2以上のブロックが1枚の記録媒体の片面に印刷されるレイアウトで印刷を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、文字情報が主体の対話文書であっても、画面のレイアウト等に文字情報として表されない意味や情報を含む場合があり、表示画面のレイアウトを大きく変えて印刷すると、印刷されたものに元の画面に含まれる文字情報以外の情報が欠落したり、元の画面との対応が把握しにくくなったりする。機器の表示画面のサイズに合わせてデザインされたウェブページ等の記事の印刷についても同様である。
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、用紙と異なる縦横比の、例えばスマートフォンなどの情報表示機器に表示された画面が、情報表示機器の表示デバイスの画面に収まり切らない長尺画面であっても、そのレイアウトを大きく変えずに略画面通りの大きさで、無駄な空白を抑えて用紙に印刷できる手法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、情報表示機器が有する表示デバイスの画面よりも長尺の長尺画面に対応した印刷原稿データを、前記長尺画面の縦横の物理サイズに係るサイズ情報と共に受信するデータ受信部と、前記長尺画面を前記サイズ情報に応じた大きさで印刷するために前記サイズ情報と印刷に使用する用紙のサイズとに基づいて、前記長尺画面を長尺方向における1以上の箇所で区分し、区分された区分画面が長尺方向と直交する幅方向に並んだ頁の印刷データを生成する印刷データ生成部と、生成された印刷データを用いて1以上の頁を前記用紙に印刷する印刷ユニットと、を備える長尺画面の印刷装置を提供する。
【0006】
また、異なる観点からこの発明は、印刷装置の制御部が、データ受信部を介して、情報表示機器が有する表示デバイスの画面よりも長尺の長尺画面に対応した印刷原稿データを、前記長尺画面の縦横の物理サイズに係るサイズ情報と共に受信するステップと、前記長尺画面を前記サイズ情報に応じた大きさで印刷するために前記サイズ情報と印刷に使用する用紙のサイズとに基づいて、前記長尺画面を長尺方向における1以上の箇所で区分するステップと、区分された区分画面が長尺方向と直交する幅方向に並んだ頁の印刷データを生成するステップと、印刷ユニットを用いて、生成された印刷データを用いて1以上の頁を前記用紙に印刷させるステップと、を備える長尺画面の印刷方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
この発明による印刷装置は、印刷原稿データを、前記長尺画面の縦横の物理サイズに係るサイズ情報と共に受信するデータ受信部と、前記長尺画面を前記サイズ情報に応じた大きさで印刷するために前記サイズ情報と印刷に使用する用紙のサイズとに基づいて、前記長尺画面を長尺方向における1以上の箇所で区分し、区分された区分画面が長尺方向と直交する幅方向に並んだ頁の印刷データを生成する印刷データ生成部を備えるので、長尺画面であっても、そのレイアウトを大きく変えずに略画面通りの大きさで、無駄な空白を抑えて用紙に印刷できる。
この発明による印刷方法も同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明に係る印刷装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】この実施形態における長尺画像の例を示す説明図である。
【
図3】
図2に示す長尺画像を既存の手法で等倍印刷した仕上がりの例を示す参考図である。
【
図4】
図3に示す画像を2×2に集約して印刷した仕上がりの例を示す参考図である。
【
図5】
図2に示す長尺画像を幅一杯に印刷した仕上がりの例を示す第参考図である。
【
図6】
図2に示す長尺画像をこの実施形態による手法でA4サイズ用紙に印刷した仕上りの例を示す説明図である。
【
図7】
図2に示す長尺画像をこの実施形態による手法でB5サイズ用紙に印刷した仕上りの例を示す説明図である。
【
図8】実施の形態2において、
図2に示す長尺画像が150%に拡大表示された状態でA4サイズ用紙に印刷した仕上りの例を示す説明図である。
【
図9】実施の形態3において、長尺画像の空白の箇所に区分位置を調整する例を示す説明図である。
【
図10】この実施形態において、情報表示装置の情報制御部が実行する印刷に係る処理の手順を示すフローチャートである。
【
図11】情報表示装置から印刷原稿データを受信した印刷装置のデータ解析部等が実行する印刷に係る処理の手順を示す第1のフローチャートである。
【
図12】情報表示装置から印刷原稿データを受信した印刷装置のデータ解析部等が実行する印刷に係る処理の手順を示す第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
(実施の形態1)
≪印刷装置の構成≫
まず、この発明に係る印刷装置の構成について述べる。
図1は、この発明に係る印刷装置の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、印刷装置10は、入出力部13、データ解析部15、画像生成部17、印刷制御部19、ジョブ制御部21、メモリー管理部23およびUI制御部25を備える。
入出力部13は、ネットワーク29を介して情報表示装置33をはじめとする外部機器と通信したり、図示しないUSBコネクタを介してUSB接続された外部のデバイスや機器とデータを送受したりするインターフェース回路および制御ソフトウェアである。
【0010】
データ解析部15は、情報表示装置33などの外部機器から入出力部13を介して受信する印刷原稿データ、それに付加されているサイズ情報、用紙サイズ等ジョブの設定に係る情報を解析する。そして、印刷装置10が印刷可能な用紙サイズ等を考慮し、画像生成部17が印刷に用いる印刷データを生成する回路および制御ソフトウェアである。
画像生成部17は、データ解析部15が生成した印刷データを取得し、上述の印刷原稿データに付加されたジョブの設定に係る情報に基づいて、印刷を行う機構および回路である。ジョブの設定に係る情報は、例えば、印刷部数、用紙サイズ、用紙の縦横の向き、カラー/モノクロの指定等の基本的な設定を含む。また、印刷ジョブに係る機能の設定、例えば、片面/両面、余白、印刷解像度等を含んでもよい。
印刷制御部19は、画像生成部17の印刷に係る動作を制御する制御回路および制御ソフトウェアである。
【0011】
ジョブ制御部21は、情報表示装置33などの外部機器から印刷の要求を受けて印刷を完了するまでの一連の処理であるジョブを受付けて、他のジョブとリソースの調停を行い、ジョブを実行する順序を管理したりする処理を行う。
メモリー管理部23は、ハードディスクやフラッシュメモリー等の不揮発性メモリーやDRAM等の揮発性メモリーをハードウェア資源として、それらのメモリーへのデータの読み書きを制御する。制御対象のデータは、印刷原稿データ、ジョブに係る設定、印刷データを含む。
【0012】
UI制御部25は、表示装置やタッチパネル、スイッチをハードウェア資源として、表示や操作の検出に係る制御を行う。
図1には、印刷装置10の他に、情報表示装置33を示している。情報表示装置33は、表示デバイス35を備える。また、プロセッサおよびメモリーを中心とする情報処理部(
図1に不図示)を備える。情報処理部は、アプリの実行、表示デバイス35の表示および印刷に係る処理を制御する。
図1に示す情報表示装置33の具体的な態様は、スマートフォンである。情報表示装置33は、ネットワーク29に接続された無線LANルータ31を介して印刷装置10と通信可能に接続されている。
【0013】
≪長尺画面の印刷例≫
続いて、長尺画面の印刷について述べる。まず、長尺画面について述べる。
この明細書で、長尺画面は、縦横何れかが表示デバイスの1画面に収まりきらないために頁送り、あるいは縦横何れか一方向にスクロール可能に表示される一つの画像を指す。頁送りは、1つの画像が一度に表示させる頁を単位に予め区切られているが、本来は一続きの画像である。スクロールは、表示デバイスの1画面に収まりきらない長尺画像の表示位置を連続的に移動させられる態様で表示デバイスに表示させるものである。
即ち、表示デバイスに表示させる画像が予め頁単位に区切られているか否かによらず、表示デバイスの1画面に収まりきらないために表示箇所を変えることができる態様で表示させる1つの仮想的な画像が長尺画像である。
【0014】
なお、長尺画像は基本的に表示デバイスの縦横何れか一方には収まるが他方には収まりきらない大きさの画像を想定している。ただし、例えば表示倍率を大きくすると、縦横何れにも収まりきらなくなるので、縦横何れか一方には収まるが他方には収まりきらない場合のみに長尺画像を限定して考えてもあまり意味がない。逆に、表示デバイスの縦横何れにも収まりきらない長尺画像があったとしても、表示倍率を縮小していくと、縦横何れか一方には収まるようになる。従って、長尺画像をそのように限定解釈されるべきでない。ただし、縦横何れかに収まる画像は、収まりきらない方向にのみスクロールや頁送りをさせれば内容が確認できるので、縦横何れにも収まらない画像に比べて文書であれば読みやすく、画像であれば見てとりやすい。従って、一般的な長尺画像は、表示デバイスの縦横何れか一方には収まるが他方には収まりきらない大きさの画像である。
【0015】
図2は、この実施形態における長尺画像の例を示す説明図である。
図2に示す長尺画像は、情報表示装置33の表示デバイス35に5頁に分けてページ送り表示される画像である。
図2に、5頁に分かれたそれぞれの表示頁35-1~35-5を示している。各表示頁は、頁送りの操作によって順次切替えられる。表示頁35-1から表示頁35-2へ、表示頁35-2から表示頁35-3へ、表示頁35-3から表示頁35-4へ…と切替えられる。
図2では、頁送りの操作に代えて下向きの太い矢印で各表示頁の切替えを示している。
【0016】
各表示頁の右方に、表示頁35-1~35-5に対応する長尺画像37を示している。長尺画像37は、頁送りで頁毎に表示される表示頁35-1~35-5をつなげて1枚の画像としたものである。長尺画像37を基準に考えた場合、ページ送り表示は、長尺画像37のうち表示デバイス35に表示させる箇所を順次切替えることとも言える。
図2で、長尺画像37に表示デバイス35の枠を鎖線で重ねて示しているのは、その意味である。ページ送り表示の場合は、表示させる箇所が段階的に切替わるのに対して、スクロールの場合は表示させる箇所が連続的に移動するともいえる。
【0017】
図3~
図5は、
図2に示す長尺画像を既存の設定で印刷した場合の仕上がり例を示す参考図である。
例えば、表示デバイスが4.7インチのサイズの場合を例に説明する。4.7インチは、スマーとフォンの標準的な画面サイズである。表示デバイスの縦横のサイズは、縦104mm×横59mmである。
図2に示す長尺画像37の縦横のサイズは、縦のサイズが表示デバイス35の縦のサイズ104mm×5=520mmであり、横のサイズが表示デバイスの横のサイズ59mmである。
【0018】
この長尺画像37を等倍でA4サイズ(縦297mm×横210mm)の用紙に上下の余白25mmで印刷する場合、A4用紙の縦方向の印刷サイズ(297mm-(25mm×2))=247mmに合わせると、長尺画像37を長尺方向において2箇所で区分して3頁に渡る印刷になる。長尺画像の横幅は59mmしかないので、その仕上がりは
図3に示すように、それぞれの印刷ページ39-1、39-2および39-3の右側に大きな余白ができたものとなる。
また、長尺画像37を例えば2×2の4UP印刷で1枚の用紙に印刷しても、
図3に示すように右側に空白を含んだ各印刷ページが2×2に集約される。その仕上がりは、
図4に示す印刷ページ41のように、多くの空白部分を含んだものになる。
【0019】
さらにまた、長尺画像37をA4サイズ用紙の横方向の印刷サイズ合わせて印刷すると各印刷ページの右側に空白はなくなるものの、拡大された長尺画像37が区分されて印刷される。左右の余白を共に4mmとして印刷する場合を考える。長尺画像37の横サイズ59mmをA4用紙の横方向の印刷サイズ(210mm-(4mm×2))=202mm)に拡大したうえで長尺方向に区分する。その仕上がりは、
図5に示す印刷ページ43-1、43-nのように、各印刷ページが約3.4倍(202mm/59mm≒3.4)に拡大されて印刷されたものとなる。印刷ページは7~8頁である。
【0020】
この実施形態によれば、長尺画像37に対応する印刷原稿データを受け取ったデータ解析部15は、印刷原稿データに付加されたサイズ情報、ジョブの設定に係る情報および印刷装置10の状態に基づいて、各印刷ページのレイアウトを決定し、印刷データを生成する。
印刷原稿データに付加されるサイズ情報は、例えば、長尺画像の縦横のサイズ(縦520mm×横59mm)と表示デバイス35の物理サイズ(縦104mm×横59mm)を含む。長尺画像の物理サイズに代えて、サイズ情報が長尺画像の縦横の画素数および長尺画像を表示デバイス35に表示させる際の表示解像度を含んでいてもよい。長尺画像の縦横の画素数と表示解像度から長尺画像の物理サイズが計算可能である。
さらに、サイズ情報は、印刷原稿データの印刷解像度を含んでいてもよい。印刷解像度と印刷装置10が印刷可能な印刷解像度が異なる場合は、両者に基づいて基準の印刷解像度で印刷する場合と同じ物理サイズの仕上がりで印刷を行わせることができる。
【0021】
図2に示す長尺画像37を等倍でA4用紙に印刷する場合について述べる。用紙横サイズ210mmから両端ボイド量4mmを差し引くと、横方向の印刷サイズは202mmである。長尺画像37の横のサイズは59mmである。長尺画像37を縦方向(長尺方向)に区分した部分画像を、幅方向に何列並べることができるか計算すると、202mm/59mm≒3.4であるから、1枚の用紙に3列の部分画像を並べることが可能である。そこで、データ解析部15は、
図6に示すように、長尺画像37が用紙の縦方向に収まるように区分した部分画像45-1、45-2および45-3を横方向に3列に並べたレイアウトで印刷ページ47を印刷する。なお、部分画像45-1、45-2の縦方向のサイズは、上下の余白25mmで印刷する場合、297mm-(25mm×2)=247mmであり、部分画像45-3の縦横のサイズは剰余(520mm-(247mm×2)=26mm)である。
図6に示す長尺画像37の2カ所の区分位置Oは、上述した部分画像45-1、45-2および45-3の縦方向のサイズに対応する。
【0022】
また、長尺画像37を等倍でB5用紙(縦257mm×横182mm)に印刷する場合について述べる。B5用紙の横サイズ182mmから左右それぞれの余白4mmを差し引くと、横方向の印刷サイズは174mmである。B5用紙の場合、横サイズ59mmの部分画像を横方向に2列並べることができる(174mm/59mm≒2.5)。部分画像の縦サイズは、上下の余白を共に25mmとして、257mm-(25mm×2)=207mmである。
図7に示すように、長尺画像37は、3つの部分画像49-1、49-2、49-3に区分されて(520mm/207mm≒2.5)、2つの印刷ページ51-1、51-2に印刷される。
この実施形態によれば、
図6および
図7に示す仕上がりの印刷ページのように、表示デバイス35の表示と同じサイズで、
図3、
図4のように頁の右側に無駄な余白を含まず、表示と同様の物理サイズおよびレイアウトで長尺画像37が印刷される。
【0023】
≪フローチャート≫
この実施形態において、情報表示装置33および印刷装置10が実行する上述の印刷にかかる処理をフローチャートに沿って説明する。
図10は、情報表示装置33の情報制御部(
図1に不図示)が実行する印刷に係る処理の手順を示すフローチャートである。情報制御部は、情報表示装置33にインストールされたアプリを実行する。そして、アプリの機能の一つである印刷に係る処理を実行する。即ち、アプリが表示デバイス35に表示させている内容を印刷するようにユーザーからの指示を受付けると(
図10に示すステップS301)、印刷に係る処理を開始する。
【0024】
まず、画面に表示させている内容に基づく印刷原稿データを生成する(ステップS303)。
図2に示す長尺画像37に対応する印刷原稿データである。さらに、表示デバイス35の表示画面の物理サイズを取得する。上述の例では、表示デバイス35の物理サイズが縦104mm×横59mmである。表示倍率に応じた印刷を行う場合は、表示倍率も取得する(ステップS305)。これに関しては、実施の形態2でさらに後述する。また、印刷に係る設定を受付ける(ステップS307)。例えば、印刷部数、用紙サイズ、用紙の縦横の向き、カラー/モノクロの指定等の設定である。
そして、生成された印刷原稿データに、表示デバイス35の表示のサイズに係る情報(サイズ情報)および印刷の設定に係る情報を付加したうえで、印刷装置10へ送信する。
以上が、情報表示装置33の側で印刷原稿データを送信する処理である。
【0025】
続いて、情報表示装置33から印刷原稿データを受信した印刷装置10の処理について述べる。
図11および
図12は、情報表示装置33から印刷原稿データを受信した印刷装置10のデータ解析部15等が実行する印刷に係る処理の手順を示すフローチャートである。
図11に示すように、情報表示装置33から印刷原稿データを受信すると(ステップS11)、ジョブ制御部21は、受信した印刷原稿データに付加された設定に係る情報を参照し、設定に基づいてその印刷原稿データを印刷するジョブ(印刷ジョブ)の登録を行う(ステップS13)。
【0026】
また、印刷原稿データに付加された設定の内容と印刷装置10の状態を参照して印刷に用いる用紙を決定する(ステップS15)。
データ解析部15は、印刷に用いる用紙に印刷原稿データに係る長尺画像を印刷するレイアウトを決定する(ステップS17)。この実施形態に係る印刷では、長尺画像を区分した部分画像を幅方向に何列並べて各頁に印刷するかを決定する。
そして、長尺画像のサイズ、用紙のサイズおよび印刷の余白に基づいて、長尺画像の基準の区分位置を決定する(ステップS19)。
図9に示す基準の区分位置Oである。
そのうえで、データ解析部15は、区分位置の調整を行うように設定されているか否かを判定する(ステップS21)。
【0027】
区分位置の調整を行わない場合は(ステップS21のNo)、基準の区分位置で長尺画像を区分し、決定されたレイアウトで部分画像を幅方向に並べた印刷データを生成する(ステップS31)。
ジョブ制御部21は、生成された印刷データの印刷ジョブが実行可能になったら、印刷制御部19に印刷ジョブを実行させる(ステップS33)。印刷ジョブが終了したら処理を終了する。
一方、区分位置の調整を行う場合(ステップS21のYes)、区分位置が複数ある場合は先頭から順に区分位置の調整を行う。まず、長尺画像の先頭の区分位置を調整の対象とする(
図12のステップS41)。
【0028】
データ解析部15は、対象とする基準の区分位置について、調整範囲(
図9に示す-D1、+D2の範囲)にある画像と文字を認識して、区分するのに好適な空白の箇所があるか否かを判断する(ステップS43)。区分に好適な空白の箇所が見つかれば(ステップS45のYes)、見出した空白の箇所に区分位置を移動させる(ステップS47)。
図9に、空白の箇所Sに区分位置Oを移動させる例を示している。空白の箇所が見つからなければ(ステップS45のNo)、区分位置の調整は行わない。
そして、次に調整の対象とすべき区分位置が残っているか否かを調べ(ステップS49)、残っている場合は、次の区分位置を調整の対象として(ステップS51)、処理を前述のステップS43へ戻す。このようにして、長尺画像の先頭から順に区分位置の調整を行う。
すべての区分位置を対象に調整の処理を行ったら(ステップS49のNo)、処理を
図11のステップS31へ進めて、区分された部分画像を横方向に並べた印刷データを生成し、印刷を行う。
以上が、この実施形態における印刷に係る処理の処理手順である。
【0029】
(実施の形態2)
この実施形態では、情報表示装置33の表示デバイス35に、長尺画像37が拡大表示されている場合に、拡大された表示サイズに対応するサイズの印刷を行う態様について述べる。
情報表示装置33の表示デバイス35に表示する倍率にかかわらず、基準の倍率(100%)を基準としてそれに対応する物理サイズに仕上がるように印刷を行う態様もある。その場合、データ解析部15は、表示倍率にかかわらず実施の形態1で述べたように各印刷ページのレイアウトを決定する。
【0030】
しかし、情報表示装置33のアプリによっては、表示倍率に対応する物理サイズに仕上がるように印刷を行うものもある。この実施形態は、その場合に対応するものである。
印刷を表示倍率に対応する物理サイズに仕上げるために、情報表示装置33は、表示デバイス35に長尺画像37を表示させている表示倍率をサイズ情報に含め、印刷装置10に提供する。データ解析部15は、サイズ情報に含まれる表示倍率を考慮して印刷データを生成する。
例えば、表示デバイス35に、表示倍率150%で長尺画像37を表示させている状態で、ユーザーが印刷の指示を行ったものとする。その指示を受け付けると、情報表示装置33のアプリは、表示倍率を含んだサイズ情報を印刷原稿データに付加して印刷装置10に送信する。
【0031】
データ解析部15は、サイズ情報に含まれる表示倍率を用いて、印刷ページのレイアウトを決定する。
図2に示す長尺画像37を表示倍率150%に拡大されたサイズでA4用紙に印刷する場合について述べる。左右それぞれの余白4mmを除くA4用紙の横方向の印刷サイズは202mmである。長尺画像37の横のサイズは59mm×150%=88.5mmである。長尺画像37を縦方向に区分した部分画像を、幅方向に何列並べることができるか計算すると、202mm/88.5mm≒2.3であるから、1枚の用紙に2列の部分画像を並べることが可能である。そこで、データ解析部15は、
図8に示すように、部分画像53-1、53-2、53-3および53-4が横方向に3列に並んだレイアウトで印刷ページ55-1および55-2を印刷する。なお、部分画像53-1、53-2および53-3の縦方向のサイズは、上下それぞれ25mmの余白を除いて247mmであり、部分画像53-4の縦横のサイズは剰余(520mm×150%-(247mm×3)=39mm)である。
このように、表示デバイス35に拡大表示されているサイズに対応する仕上がりの印刷を行う場合であっても、
図8に示すように印刷ページの右側に無駄な余白を含まず、表示と同様の物理サイズおよびレイアウトで長尺画像37が印刷される。
【0032】
(実施の形態3)
実施の形態1および2では、印刷に用いる用紙の縦方向の印刷サイズと一致するように部分画像の縦サイズを決めた。
この実施形態では、例えば
図9に示すように長尺画像57が画像59を含み、縦方向の印刷サイズと一致するように区分すると画像59が区分されてしまう場合の対応について述べる。区分されるのは画像に限らず、文字が区分される場合ことも起こり得る。
この実施形態において、データ解析部15は、長尺画像57の区分位置Sを決定する際に、縦方向の印刷サイズと一致する基準の区分位置Oの周辺の画像および文字の有無を認識して空白の位置で区分を行うように区分位置を調整する。画像の周辺や行間の位置で区分を行うことで、可能な限り画像や文字が切れることを防ぐ。
【0033】
図9に、基準の区分位置Oからの距離が予め定められた範囲(-D1、+D2)の画像および文字の有無を認識し、その範囲にある空白の位置Sで区分を行う例を示している。ただし、画像および文字の有無を認識する処理のために処理時間を要する。それによって、データ解析部15の全体の処理時間に影響が出ることが考えられる。そこで、区分位置の調整を行うか否かをユーザーが設定できるようにしてもよい。
また、区分位置を移動した分だけ余白が増えるため、基準の区分位置Oから調整可能な範囲(前述の-D1、+D2の大きさ)についても、ユーザーが設定できるようにしてもよい。
【0034】
以上に述べたように、
(i)この発明による印刷装置は、情報表示機器が有する表示デバイスの画面よりも長尺の長尺画面に対応した印刷原稿データを、前記長尺画面の縦横の物理サイズに係るサイズ情報と共に受信するデータ受信部と、前記長尺画面を前記サイズ情報に応じた大きさで印刷するために前記サイズ情報と印刷に使用する用紙のサイズとに基づいて、前記長尺画面を長尺方向における1以上の箇所で区分し、区分された区分画面が長尺方向と直交する幅方向に並んだ頁の印刷データを生成する印刷データ生成部と、生成された印刷データを用いて1以上の頁を前記用紙に印刷する印刷ユニットと、を備えることを特徴とする。
【0035】
この発明において、情報表示機器は、スマートフォン、タブレット端末等、情報を表示してユーザーに提供するために使用される機器を広く指すが、一般的な印刷用紙のサイズであるA4サイズあるいはレターサイズに比べて画面のサイズが小さな機器を主に想定している。そのような機器に表示されるアプリ等の画面は、提供する情報が多いと一つの画面に情報が収まりきらないので、一続きの画面をスクロール可能に表示するが、ユーザーが操作しやすいように縦横何れか一方向スクロールであることが多い。スマートフォンの場合、片手で持って操作し易いことから縦方向の画面スクロールが一般的である。
【0036】
長尺画面は、縦横何れかが表示デバイスの1画面に収まりきらず頁送りや縦横何れかにスクロール可能に表示される一つの画像を指す。縦スクロールの場合、スクロール可能な画面の上端から下端までの長さが長尺画面の縦の長さに(物理サイズ)相当し、画面の幅が長尺画面の横の長さ(物理サイズ)に相当する。サイズ情報は、長尺画面の縦横の物理サイズを示す情報である。
また、印刷原稿データは、印刷装置が印刷に用いる印刷データの元になるデータである。なお、情報表示装置が長尺画面を表示デバイスに表示する表示解像度は、印刷原稿データに基づき生成される印刷データの解像度(印刷解像度)と異なる。両者の差は表示デバイスと印刷装置の構造の違い、容認される処理速度の違い等に起因する。通常は、印刷解像度は表示解像度よりも高く、印刷画像の方が表示画像よりも精細である。
【0037】
さらに、この発明の好ましい態様について説明する。
(ii)前記サイズ情報が、前記長尺画面を前記表示デバイスに表示する表示解像度、前記長尺画面の縦横の画素数および前記印刷原稿データの解像度に係る情報であってもよい。
このようにすれば、長尺画面を情報表示機器に表示する際の表示解像度、長尺画面の縦横の画素数および前記印刷原稿データの解像度を用いて、情報表示機器の表示と同じ大きさの長尺画面を印刷原稿データに基づいて用紙に印刷できる。
【0038】
(iii)前記サイズ情報が、さらに前記長尺画面を前記表示デバイスに表示する表示倍率を含んでもよい。
このようにすれば、長尺画面が情報表示機器に拡大あるいは縮小表示されている場合、その表示倍率を含めて情報表示機器の表示と同じ大きさの長尺画面を印刷原稿データに基づいて用紙に印刷できる。
【0039】
(iv)前記印刷データ生成部は、前記用紙に前記区分画面が何列幅方向に並ぶかを算出して各頁の印刷データを生成してもよい。
このようにすれば、幅方向にできるだけ多くの区分画面を並べ、余白部分を少なくした長尺画面の印刷が可能である。
【0040】
(v)前記印刷データ生成部は、前記用紙のサイズに応じて前記印刷原稿データに係る画像を区分し、前記長尺画面に空白部分があればその空白部分で区分するように区分位置を調整してもよい。
このようにすれば、長尺画面のうち文字や画像のない空白部分で区分することによって、長尺画面を区分しても区分に伴う弊害を避けることができる。
【0041】
(vi)前記印刷データ生成部は、前記用紙のサイズに応じて決定される基準位置から所定の範囲内で前記長尺画面の区分位置を調整するが、前記基準位置から所定の範囲内に前記長尺画面の空白部分がない場合は前記基準位置で区分してもよい。
空白部分での区分を優先すると、区分位置が決まらなかったり極端に小さな区分画面になって余白部分が多くなったりする弊害が起こり得る。この態様によれば、基準位置から所定の範囲内に空白部分がない場合は基準位置で区分を行うことによって、余白部分を少なくすることを優先できる。
【0042】
(vii)この発明の一態様は、印刷装置の制御部が、データ受信部を介して、情報表示機器が有する表示デバイスの画面よりも長尺の長尺画面に対応した印刷原稿データを、前記長尺画面の縦横の物理サイズに係るサイズ情報と共に受信するステップと、前記長尺画面を前記サイズ情報に応じた大きさで印刷するために前記サイズ情報と印刷に使用する用紙のサイズとに基づいて、前記長尺画面を長尺方向における1以上の箇所で区分するステップと、区分された区分画面が長尺方向と直交する幅方向に並んだ頁の印刷データを生成するステップと、印刷ユニットを用いて、生成された印刷データを用いて1以上の頁を前記用紙に印刷させるステップと、を備える長尺画面の印刷方法を含む。
【0043】
この発明の態様には、上述した複数の態様のうちの何れかを組み合わせたものも含まれる。
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【符号の説明】
【0044】
10:印刷装置、 13:入出力部、 15:データ解析部、 17:画像生成部、 19:印刷制御部、 21:ジョブ制御部、 23:メモリー管理部、 25:UI制御部、 29:ネットワーク、 31:無線LANルータ、 33:情報表示装置、 35:表示デバイス、 35-1,35-2,35-3,35-4:表示頁、 37,57:長尺画像、 39-1,39-2,39-3,41,43-1,43-n,47,51-1,51-2,55-1,55-2:印刷ページ、 45-1,45-2,45-3,49-1,49-2,49-3,53-1,53-2,53-3,53-4:部分画像