(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167100
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】留め具
(51)【国際特許分類】
F16B 2/24 20060101AFI20221027BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
F16B2/24 A
F16B5/06 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072652
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】服部 龍
【テーマコード(参考)】
3J001
3J022
【Fターム(参考)】
3J001FA01
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001HA09
3J001JC03
3J001JC06
3J001JC12
3J001KA19
3J001KB01
3J022DA11
3J022EA01
3J022EB02
3J022EB06
3J022EC02
3J022FA01
3J022FB03
3J022FB08
3J022FB13
3J022HA03
3J022HB02
3J022HB06
(57)【要約】
【課題】十分な抜去力を確保できる留め具を提供する。
【解決手段】留め具10は、先端に自由端を有する第1板部と、第1板部に対向し、先端に自由端を有する第2板部と、第1板部および第2板部の基端を連結する連結部と、を備える。第1板部および第2板部は、対向方向の間隔が先端側に向かって狭くなるように傾斜し、取付孔14aの裏縁に係止する係止部と、係止部よりも先端側に位置し、ボス12に当接する第1当接部と、係止部よりも基端側に位置し、ボス12に当接する第2当接部と、をそれぞれ有する。幅方向に沿って見た一対の第1当接部の対向方向の間隔は、第1板部および第2板部の板厚以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボスに取り付けられ、ボスとともに取付孔に挿入される留め具であって、
先端に自由端を有する第1板部と、
前記第1板部に対向し、先端に自由端を有する第2板部と、
前記第1板部および前記第2板部の基端を連結する連結部と、を備え、
前記第1板部および前記第2板部は、
対向方向の間隔が先端側に向かって狭くなるように傾斜し、取付孔の裏縁に係止する係止部と、
前記係止部よりも先端側に位置し、ボスに当接する第1当接部と、
前記係止部よりも基端側に位置し、ボスに当接する第2当接部と、をそれぞれ有し、
幅方向に沿って見た一対の前記第1当接部の対向方向の間隔は、前記第1板部および前記第2板部の板厚以下であることを特徴とする留め具。
【請求項2】
幅方向に沿って見た一対の前記第1当接部の対向方向の間隔は、ゼロ以下であることを特徴とする請求項1に記載の留め具。
【請求項3】
一対の前記第1当接部は、幅方向にずれて形成され、
一方の前記第1当接部は、他方の前記第1当接部が入り込み可能な貫通孔部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の留め具。
【請求項4】
一対の前記第2当接部の対向方向の間隔は、前記連結部の対向方向の長さよりも狭いことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の留め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品を取付部材に取り付けるための留め具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、平板の中央に形成されるコ字型の方形折曲部と、方形折曲部の両側に拡開して延設される傾斜片部と、傾斜片部より折曲して内側に延設される支持片部と、傾斜片部及び折曲部の一部を各傾斜片部より内側に傾斜させてなる一対の係止片とを備えるクリップが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される技術では、クリップが取付部材の方形窓に取り付けられた状態で、一対の支持片部が互いに接近する方向に撓み可能、すなわち方形窓への支持を解除する方向に撓み可能であるため、十分な抜去力が得られないおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、十分な抜去力を確保できる留め具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、ボスに取り付けられ、ボスとともに取付孔に挿入される留め具であって、先端に自由端を有する第1板部と、第1板部に対向し、先端に自由端を有する第2板部と、第1板部および第2板部の基端を連結する連結部と、を備える。第1板部および第2板部は、対向方向の間隔が先端側に向かって狭くなるように傾斜し、取付孔の裏縁に係止する係止部と、係止部よりも先端側に位置し、ボスに当接する第1当接部と、係止部よりも基端側に位置し、ボスに当接する第2当接部と、をそれぞれ有する。幅方向に沿って見た一対の第1当接部の対向方向の間隔は、第1板部および第2板部の板厚以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、十分な抜去力を確保できる留め具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ボスに取り付けた実施例の留め具の斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、留め具の正面図であり、
図3(b)は、留め具の側面図であり、
図3(c)は、留め具の上面図である。
【
図4】第1板部および第2板部を接近させた状態の留め具の斜視図である。
【
図5】ボスに取り付けた状態の留め具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、ボス12に取り付けた実施例の留め具10の斜視図である。留め具10は、部品を取付部材14に取り付けるために用いられる。部品は、車両の内装パネル、窓を開閉するスイッチが設けられた操作パネルなどの車載部品やカバーなど意匠性のある飾り部品であってよい。
【0010】
ボス12は、部品に一体に設けられ、部品の裏面から突出するように形成される。ボス12は部品に複数形成される。ボス12の先端はテーパ状に形成される。ボス12は、ボス本体12aおよび側壁部12bを有する。ボス本体12aは、平板状に形成される。側壁部12bは、ボス本体12aの両側に一対形成される。側壁部12bは、留め具10が幅方向に移動することを規制する。
【0011】
取付部材14は、トリムパネルや車体パネルなどであってよい。取付部材14は、矩形状の取付孔14aを有する。取付孔14aは、ボス12の位置に応じて複数形成され、長辺の向きを揃えて形成される。
【0012】
留め具10は、部品のボス12に取り付けられ、次に、取付部材14の取付孔14aに取り付けられる。部品が故障した場合には、留め具10は、ボス12から取り外さずに、取付孔14aから引き抜けるようになっている。
【0013】
例えば、ボス12を設けた部品が操作パネルである場合、操作スイッチを設ける操作領域が大きいほど好ましい。ボス12は、操作領域の裏面に設けることができず、操作パネルの額縁に設けられる。そこで取付孔14aの間隔Lを小さくし、その小さい取付孔14aに挿入可能な留め具10を形成する。
【0014】
図2は、実施例の留め具10の斜視図である。また、
図3(a)は、留め具10の正面図であり、
図3(b)は、留め具10の側面図であり、
図3(c)は、留め具10の上面図である。
【0015】
留め具10は金属材料で形成され、金属板材に対して切断加工およびプレス加工を施すことで形成される。金属材料で形成することで、樹脂材料で形成する場合より高い抜去力を持たせることができる。留め具10は、第1板部20a、第2板部20bおよび連結部22を備える。
【0016】
第1板部20aおよび第2板部20bは、互いに対向し、先端21aに自由端を有する。連結部22は、第1板部20aおよび第2板部20bの基端21bを連結する。第1板部20aおよび第2板部20bは、拡開または接近して撓むことが可能であり、ボス12を挟持する。第1板部20aおよび第2板部20bが互いに向かい合う方向を対向方向という。また、第1板部20aおよび第2板部20bの先端21aから基端21bをつなぐ方向を延在方向または高さ方向という。また、延在方向および対向方向に直交し、ボス12の一対の側壁部12bをつなぐ方向を幅方向という。
【0017】
第1板部20aは、基端側板部24a、拡開板部26a、係止部28a、爪部30a、中央片部32、第1当接部40a、第2当接部42aおよび折り返し部44aを有する。基端側板部24aは、基端21bから先端21aに向かって延在し、拡開板部26aは、基端側板部24aに連接して先端21aに向かって拡開するように形成される。拡開板部26aには爪部30aが形成される。爪部30aは、ボス本体12aに食い込むように係止する。これにより、ボス本体12aに孔を形成してなくても、留め具10をボス12に取り付けることができる。爪部30aは、幅方向中央に位置する。
【0018】
係止部28aは、第2板部20bとの対向間隔が先端21a側に向かって狭くなるように傾斜し、取付孔14aの裏縁に係止する。係止部28aが取付孔14aの裏縁に係止することで、ボス12を取付部材14に固定できる。係止部28aは、拡開板部26aから屈曲して先端21a側に向かって対向方向内向きに傾斜する。係止部28aが傾斜面を有することで、取付部材14の板厚変化を吸収できる。
【0019】
中央片部32は、第1板部20aの先端21a側に位置し、両側が切り欠かれて、幅狭に形成される。折り返し部44aは、中央片部32の中途にて折り返すように屈曲し、対向方向外向きに張り出す。折り返し部44aによって、留め具10が取付孔14aから落ち込むことを抑えることができる。中央片部32は、係止部28aから折り返し部44aに亘って形成されている。
【0020】
第1当接部40aは、係止部28aよりも先端21a側に位置し、係止部28aと折り返し部44aとが屈曲する位置に設けられる。この屈曲により第1当接部40aが対向方向内向きに突き出て、ボス本体12aに当接する。
【0021】
第2当接部42aは、係止部28aよりも基端21b側に位置し、基端側板部24aと拡開板部26aとが屈曲する位置に設けられる。この屈曲により第2当接部42aが対向方向内向きに突き出て、ボス本体12aに当接する。
【0022】
第2板部20bは、基端側板部24b、拡開板部26b、係止部28b、爪部30b、貫通孔部34、側片部36、第1当接部40b、第2当接部42bおよび折り返し部44bを有する。
【0023】
基端側板部24bは、基端21bから先端21aに向かって延在する。拡開板部26bは、基端側板部24bに連接して先端21aに向かって拡開するように形成される。拡開板部26bには爪部30bが形成される。爪部30bは、ボス本体12aに食い込むように係止する。
【0024】
係止部28bは、第1板部20aとの対向間隔が先端21a側に向かって狭くなるように傾斜し、取付孔14aの裏縁に係止する。係止部28bが取付孔14aの裏縁に係止することで、ボス12を取付部材14に固定できる。係止部28bは、拡開板部26bから屈曲して先端21a側に向かって対向方向内向きに傾斜する。
【0025】
一対の側片部36は、第1板部20aの先端21a側に位置し、中央が切り欠かれている。一対の側片部36の間に貫通孔部34が形成される。折り返し部44bは、側片部36の中途にて折り返すように屈曲し、対向方向外向きに張り出す。貫通孔部34および側片部36は、係止部28bから折り返し部44bに亘って形成されている。
【0026】
第1当接部40bは、係止部28bよりも先端21a側に位置し、係止部28bと折り返し部44bとが屈曲する位置に設けられる。この屈曲により第1当接部40bが対向方向内向きに突き出て、ボス本体12aに当接する。
【0027】
第2当接部42bは、係止部28bおよび爪部30bよりも基端21b側に位置し、基端側板部24bと拡開板部26bとが屈曲する位置に設けられる。この屈曲により第2当接部42bが対向方向内向きに突き出て、ボス本体12aに当接する。
【0028】
図3(a)に示すように、第1板部20aの第1当接部40aおよび第2板部20bの第1当接部40bは、幅方向にずれて形成される。第2板部20bの第1当接部40bは、第1板部20aの第1当接部40aが入り込み可能な貫通孔部34を有する。これにより、第1板部20aおよび第2板部20bの先端21a側を交差させることができる。
また、第1当接部40aを中央に配置することで、ボス本体12aに対して第1当接部40aが回転トルクを発生すること抑えることができる。
【0029】
中央片部32の幅方向長さと、一対の側片部36の幅方向長さの合計とは、略同一に設定される。これにより、第1当接部40aおよび第1当接部40bの挟持力を均等にできる。
【0030】
図3(b)に示すように、幅方向に沿って見た一対の第1当接部40a,40bの対向方向の間隔は、第1板部20aおよび第2板部20bの板厚以下である。これにより、複数の留め具10をまとめて搬送する際などに第1当接部40aおよび第1当接部40bの間から別の留め具10が入り込んで絡まることを抑えることができる。加えて、留め具10の対向方向をコンパクトにすることができる。さらに幅方向に沿って見た一対の第1当接部40a,40bの対向方向の間隔は、ゼロ以下である。一対の第1当接部40a,40bの対向方向の間隔は、マイナスの値、すなわち一対の第1当接部40a,40bが交差した状態であってよい。これにより、留め具10同士の絡みをより確実に抑えることができる。加えて、留め具10の対向方向をよりコンパクトにすることができる。
【0031】
図3(b)に示すように、一対の第2当接部42a,42bの対向方向の間隔Ltは、連結部22の対向方向の長さよりも狭く、ボス本体12aの厚さよりも狭い。一対の基端側板部24a,24bは、先端21aに向かって接近する。これにより、一対の第2当接部42a,42bは、対向方向内向きに突き出させることができるので、留め具10をボス本体12aに挟持する際、第1板部20aおよび第2板部20bが対向方向に離間する方向に撓み、一対の第2当接部42a,42bの対向方向の間隔Ltが広がっても、ボス本体12aに対する一対の第2当接部42a,42bの位置を容易に設定できる。一対の第2当接部42a,42bがボス本体12aに当たる位置を定めて、ボス本体12aを挟持する荷重を安定させることができる。
【0032】
図3(b)に示すように、拡開板部26aおよび係止部28aの延在方向の長さは同じである。すなわち、拡開板部26aおよび係止部28aの間の屈曲位置が、第1当接部40aおよび第2当接部42aの中間に位置する。これにより、留め具10における取付孔への挿入力と、取付孔からの抜去力をほぼ同じにできる。
【0033】
図4は、第1板部20aおよび第2板部20bを接近させた状態の留め具10の斜視図である。第1板部20aおよび第2板部20bが接近すると、第1当接部40aおよび第1当接部40bが幅方向にずれて形成されているため、中央片部32が貫通孔部34に入り込んで、第1板部20aおよび第2板部20bの先端側が交差する。
【0034】
第1板部20aおよび第2板部20bを接近させる曲げ加工によって、第1当接部40aおよび第1当接部40bの対向方向の間隔が定まる。第1板部20aおよび第2板部20bは、曲げ加工をした際にスプリングバックによって拡開する方向に戻る。そこで、中央片部32が貫通孔部34に入り込むようにすることで、第1当接部40aおよび第1当接部40bの対向方向の間隔をゼロ以下に設定できる。
【0035】
図5は、ボス12に取り付けた状態の留め具10の断面図である。第1当接部40aおよび第1当接部40bがボス本体12aを挟持し、第2当接部42aおよび第2当接部42bがボス本体12aを挟持している。これにより、第1板部20aおよび第2板部20bのそれぞれが、ボス本体12aに対して、両持ち片のように当接する。そのため、留め具10およびボス12が取付孔14aから引き抜かれる場合に、第1板部20aおよび第2板部20bが互いに接近する方向に撓みづらくなり、抜去力を高めることができる。これにより、留め具10を薄型にして、係止部28aおよび係止部28bによる取付孔14aへのラップ量を小さくしても十分な抜去力を確保できる。そのため、間隔Lを小さくした取付孔14aに取り付けできる。
【0036】
また、留め具10が上下2箇所でボス12に挟持することで、ボス12に安定して固定でき、搬送時のガタつきを抑えられ、取付状態での取付部材14に対するガタつきも抑えることができる。
【0037】
本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0038】
10 留め具、 12 ボス、 12a ボス本体、 12b 側壁部、 14 取付部材、 14a 取付孔、 20a 第1板部、 20b 第2板部、 21a 先端、 21b 基端、 22 連結部、 24a,24b 基端側板部、 26a,26b 拡開板部、 28a,28b 係止部、 30a,30b 爪部、 32 中央片部、 34 貫通孔部、 36 側片部、 40a,40b 第1当接部、 42a,42b 第2当接部、 44 折り返し部。