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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167120
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】医療用ボルト
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/86 20060101AFI20221027BHJP
   A61B 17/70 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A61B17/86
A61B17/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072687
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】521175540
【氏名又は名称】寺井 秀富
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】寺井 秀富
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL24
4C160LL42
4C160LL56
4C160LL57
4C160LL58
4C160LL69
(57)【要約】
【課題】所定位置で分割される椎弓13と椎体12との間隔を、簡素な構成で確実に広げられる医療用ボルト1を提供することを目的とする。
【解決手段】椎弓根11で切断された椎骨10の椎弓13と椎体12との連結に用いられる医療用ボルト1であって、医療用ボルト1のボルト軸部3は、椎弓13の穴部14に螺合する第1ボルト軸部4と、椎体12の穴部14に螺合する第2ボルト軸部5とを備え、第1ボルト軸部4は、ネジ山4aのピッチP1が第2ボルト軸部5のネジ山7aのピッチP2に比べて広く形成されたことを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置で分割される骨の第1の骨部位と第2の骨部位との連結に用いられる医療用ボルトであって、
該医療用ボルトのボルト軸部は、
前記第1の骨部位の孔部に螺合する第1ボルト軸部と、
前記第2の骨部位の穴部に螺合する第2ボルト軸部とを備え、
該第1ボルト軸部は、
ネジ山のピッチが前記第2ボルト軸部のネジ山のピッチに比べて広く形成された
医療用ボルト。
【請求項2】
前記第2ボルト軸部は、
前記第1の骨部位の前記孔部を介して、前記第2の骨部位の前記穴部に螺合する構成であり、
前記第1ボルト軸部は、
呼び径が前記第2ボルト軸部の呼び径に比べて大径に形成された
請求項1に記載の医療用ボルト。
【請求項3】
前記第2ボルト軸部は、
前記第1の骨部位の前記孔部よりも長い軸方向の長さで形成された
請求項2に記載の医療用ボルト。
【請求項4】
前記第2ボルト軸部は、
前記第1ボルト軸部側の端部にネジ山を設けてない柱状軸部分を備えた
請求項2または請求項3に記載の医療用ボルト。
【請求項5】
前記第1ボルト軸部は、二条ネジ形状である
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の医療用ボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば脊柱管狭窄症や骨延長術などの治療に用いられるような医療用ボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば神経が恒常的に圧迫され、痛みや痺れなどが生じる病態として、脊柱管狭窄症がある。この脊柱管狭窄症の治療方法として、医療用ボルトで椎弓根部分を延長して脊柱管及び椎間孔を拡張することで、脊髄神経の圧迫を解放することが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、特許文献1の医療用ボルト(インプラント)は、椎体及び椎弓に螺合する内部中空のスリーブと、スリーブの内部に螺合するボルトとを備えるとともに、ボルトの螺入によってスリーブが軸方向に分離可能に構成されている。
【0004】
そして、特許文献1の医療用ボルトは、椎弓根部分で切断した椎体と椎弓とを連結したスリーブを、ボルトの螺入によって分離させることで、錐体から椎弓を離間させている。これにより、特許文献1の医療用ボルトは、脊柱管及び椎間孔を拡張して脊髄神経の圧迫を解放している。
【0005】
ところで、特許文献1の医療用ボルトは、構成部品の点数が多いため、脊柱管及び椎間孔の拡張に時間を要するだけでなく、患者に負担をかけるおそれがあった。このため、医療の現場では、例えば分割された椎体と椎弓との間隔を広げる簡素な構成の医療用ボルトが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2005-520619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑み、所定位置で分割される第1の骨部位と第2の骨部位との間隔を、簡素な構成で確実に広げられる医療用ボルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、所定位置で分割される骨の第1の骨部位と第2の骨部位との連結に用いられる医療用ボルトであって、該医療用ボルトのボルト軸部は、前記第1の骨部位の孔部に螺合する第1ボルト軸部と、前記第2の骨部位の穴部に螺合する第2ボルト軸部とを備え、該第1ボルト軸部は、ネジ山のピッチが前記第2ボルト軸部のネジ山のピッチに比べて広く形成されたことを特徴とする。
上記骨は、人骨、哺乳類などの動物の骨、あるいは人工骨などのことをいう。
【0009】
この発明によれば、第2ボルト軸部のネジ山のピッチに対して第1ボルト軸部のネジ山のピッチが広いため、医療用ボルトは、第1ボルト軸部のリードが第2ボルト軸部のリードよりも大きくなる。このため、医療用ボルトは、ボルト軸部の螺入に伴って、第1の骨部位と第2の骨部位とをボルト軸部の軸方向へ離間させることができる。
【0010】
これにより、医療用ボルトは、所定位置で分割される第1の骨部位と第2の骨部位とを簡素な構成で連結できるとともに、第1の骨部位と第2の骨部位との間隔を、簡素な構成で確実に広げることができる。このため、医療用ボルトは、施術に要する時間を短縮して、患者の負担を軽減することができる。
【0011】
この発明の態様として、前記第2ボルト軸部は、前記第1の骨部位の前記孔部を介して、前記第2の骨部位の前記穴部に螺合する構成であり、前記第1ボルト軸部は、呼び径が前記第2ボルト軸部の呼び径に比べて大径に形成されてもよい。
【0012】
この構成によれば、医療用ボルトは、第1ボルト軸部を第1の骨部位に確実に螺合させることができる。
具体的には、第2ボルト軸部が第1の骨部位の孔部を介して、第2の骨部位の穴部に螺合するため、医療用ボルトの第1ボルト軸部は、第2ボルト軸部が通過した第1の骨部位の孔部に螺入することになる。
【0013】
この際、第2ボルト軸部の呼び径と同じ呼び径の第1ボルト軸部の場合、第2ボルト軸部のネジ山のピッチに対して第1ボルト軸部のネジ山のピッチが広いため、医療用ボルトの第1ボルト軸部は、第2ボルト軸部と螺合する第1の骨部位の雌ネジを破壊しながら、第1の骨部位に螺入される。このため、第2ボルト軸部の呼び径と同じ呼び径の第1ボルト軸部の場合、医療用ボルトの第1ボルト軸部は、第1の骨部位に螺合することができない。
【0014】
これに対して、第1ボルト軸部の呼び径を第2ボルト軸部の呼び径よりも大径に形成したことにより、医療用ボルトの第1ボルト軸部は、第1の骨部位の孔部への螺入に伴って、新たな雌ネジを第1の骨部位の孔部に形成することができる。
【0015】
これにより、医療用ボルトは、第2ボルト軸部が通過した第1の骨部位の孔部に第1ボルト軸部が螺入する場合であっても、第1ボルト軸部を第1の骨部位に確実に螺合させることができる。このため、医療用ボルトは、第1の骨部位と第2の骨部位とを確実に離間させることができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記第2ボルト軸部は、前記第1の骨部位の前記孔部よりも長い軸方向の長さで形成されてもよい。
この構成によれば、第1の骨部位の端面と第2の骨部位の端面とが当接した状態において、医療用ボルトは、第1ボルト軸部が第1の骨部位に螺合する前に、第2ボルト軸部を第2の骨部位の穴部に螺合開始させることができる。
【0017】
これにより、医療用ボルトは、第2ボルト軸部が第2の骨部位に確実に螺合した状態で、第1ボルト軸部を第1の骨部位に螺合開始させることができる。
このため、例えば第1ボルト軸部が螺合開始した後、第1の骨部位と第2の骨部位とを切断する場合であっても、医療用ボルトは、切断された第1の骨部位が、医療用ボルトとともに第2の骨部位から脱落することを確実に阻止することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記第2ボルト軸部は、前記第1ボルト軸部側の端部にネジ山を設けてない柱状軸部分を備えてもよい。
この構成によれば、第2ボルト軸部の柱状軸部分が第1の骨部位の孔部から露出しない位置に位置する場合、第2ボルト軸部のネジ山が、第2の骨部位の穴部に確実に螺合していることになる。
【0019】
つまり、医療用ボルトは、第2ボルト軸部のネジ山が確実に第2の骨部位に螺合していることを明示する明示部として、柱状軸部分を機能させることができる。
これにより、医療用ボルトは、例えば施術者の目視による螺入状態の判定をより容易にすることができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記第1ボルト軸部は、二条ネジ形状であってもよい。
この構成によれば、医療用ボルトは、ボルト軸部の少ない回転数で、第2の骨部位に対して第1の骨部位を大きく離間させることができる。
【0021】
さらに、二条ネジ形状と略同じリードとなる一条ネジ形状の場合に比べて、リード角を小さくできるため、医療用ボルトは、第1ボルト軸部における螺合強度の低下を抑えることができる。
これにより、医療用ボルトは、その大きさの小型化を図るとともに、第1ボルト軸部を第1の骨部位により安定して螺合させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、所定位置で分割される第1の骨部位と第2の骨部位との間隔を、簡素な構成で確実に広げられる医療用ボルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】医療用ボルトが組付けられた椎骨を頭側方向から見た状態を示す概略図。
図2】医療用ボルトが組付けられた椎骨を人体側方から見た状態を示す概略図。
図3】医療用ボルトが組付けられた椎骨を横断面で示す横断面図。
図4】医療用ボルトの外観を示す外観斜視図。
図5】医療用ボルトの外観を示す正面図。
図6】穴部が穿孔された椎骨の状態を示す横断面図。
図7】ガイドワイヤーが穴部に挿入された椎骨の状態を示す横断面図。
図8】医療用ボルトが椎骨に螺合開始した状態を示す横断面図。
図9】椎弓根の部分で椎骨を切断した状態を示す横断面図。
図10】別の実施形態における医療用ボルトの概略を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態では、脊柱管狭窄症などの治療において、脊柱管及び椎間孔を拡張するために用いられる医療用ボルト1について、図1から図5を用いて説明する。
【0025】
なお、図1は医療用ボルト1が組付けられた椎骨10を頭側方向から見た状態の概略図を示し、図2は医療用ボルト1が組付けられた椎骨10を人体側方から見た状態の概略図を示し、図3は医療用ボルト1が組付けられた椎骨10の横断面図を示している。
さらに、図4は医療用ボルト1の外観斜視図を示し、図5は医療用ボルト1の正面図を示している。
【0026】
本実施形態の医療用ボルト1は、図1から図3に示すように、隣接する椎骨10に対して組付けられ、脊柱管10a及び椎間孔10bの双方の大きさを拡張するためのボルトであって、椎弓根11の部分で切断された椎体12と椎弓13とを連結している。この医療用ボルト1は、椎体12の切断面と椎弓13の切断面とが所定間隔を隔てて対向した状態を維持することで、脊柱管10a及び椎間孔10bの双方の大きさを拡張している。
【0027】
詳述すると、医療用ボルト1は、図3から図5に示すように、六角柱状のボルト頭部2と、ピッチの異なる2つのネジ山を有するボルト軸部3とで構成されている。
さらに、医療用ボルト1は、図4及び図5に示すように、ボルト軸部3の軸方向Xに沿って、ボルト頭部2及びボルト軸部3を貫通するとともに、後述するガイドワイヤーW(図7参照)が挿通される貫通孔1aが開口形成されている。
【0028】
このような医療用ボルト1のボルト頭部2は、椎骨10に対してボルト軸部3を相対回転させる操作を受け付ける手段として設けられおり、ラチェットレンチやボックスレンチなどに対応した形状に形成されている。
【0029】
また、医療用ボルト1のボルト軸部3は、図3から図5に示すように、ボルト頭部2側に位置する第1ボルト軸部4と、ボルト先端側に位置する第2ボルト軸部5とを、この順番で軸方向Xに連結して構成している。なお、ボルト軸部3のボルト先端は、図5に示すように、僅かに先細に形成されている。
【0030】
具体的には、第1ボルト軸部4は、図3から図5に示すように、椎弓13に螺合する部分であって、後述する第2ボルト軸部5と略同じ軸方向Xの長さに形成されている。この第1ボルト軸部4には、軸方向Xの一端から他端に至る全域に、一条の螺旋状のネジ山4aが形成されている。
【0031】
なお、第1ボルト軸部4のネジ山4aは、図5に示すように、所定の呼び径D1、かつ所定のピッチP1の右ネジに形成されている。例えば、第1ボルト軸部4のネジ山4aは、呼び径D1が6mmで、ピッチP1が2mmの右ネジに形成されている。
【0032】
また、第2ボルト軸部5は、図3から図5に示すように、椎弓13を介して椎体12に螺合する部分である。この第2ボルト軸部5は、椎骨10の穴部14(図6参照)における医療用ボルト1の挿入口から椎弓根11の切断位置に至る長さL(図3参照)よりも長い軸方向Xの長さに形成されている。
換言すると、第2ボルト軸部5は、椎弓13における穴部14の長さLよりも長い軸方向Xの長さに形成されている。
【0033】
このような第2ボルト軸部5は、図4及び図5に示すように、ネジ山が設けられていない円柱部分6と、一条のネジ山7aが設けられたネジ山部分7とを、第1ボルト軸部4側からこの順番で連結するようにして形成されている。
【0034】
より詳しくは、円柱部分6は、図5に示すように、第1ボルト軸部4から連続するとともに、第1ボルト軸部4におけるネジ山4aの谷径に略同じ外径を有する円柱状に形成されている。
この円柱部分6は、椎弓13における穴部14の長さLよりも短く、かつ所望される椎体12と椎弓13との間隔よりも短い軸方向Xの長さに形成されている。
【0035】
一方、ネジ山部分7は、図4及び図5に示すように、円柱部分6よりも長い軸方向Xの長さに形成されている。このネジ山部分7には、軸方向Xの一端から他端に至る全域に、一条の螺旋状のネジ山7aが形成されている。
【0036】
なお、ネジ山部分7のネジ山7aは、図5に示すように、第1ボルト軸部4のネジ山4aよりも小さい呼び径D2で、かつ第1ボルト軸部4のネジ山4aよりも狭いピッチP2の右ネジに形成されている。
【0037】
例えば、第2ボルト軸部5のネジ山7aは、呼び径D2が5mmで、ピッチP2が0.8mmの右ネジに形成されている。
このネジ山部分7におけるネジ山7aの谷径は、図5に示すように、第1ボルト軸部4の谷径に略同じ直径に形成されている。
【0038】
このように、医療用ボルト1は、第1ボルト軸部4のネジ山4aのピッチP1が第2ボルト軸部5のネジ山7aのピッチP2に比べて広く、かつ第1ボルト軸部4の呼び径D1が第2ボルト軸部5の呼び径D2に比べて大径になるように形成されている。
【0039】
引き続き、上述した医療用ボルト1を複数用いて、脊柱管10a及び椎間孔10bの双方の大きさを拡張する工程について、図3、及び図6から図9を用いて説明する。
なお、図6は穴部14が穿孔された椎骨10の横断面図を示し、図7はガイドワイヤーWが穴部14に挿入された椎骨10の横断面図を示し、図8は医療用ボルト1が椎骨10に螺合開始した状態の横断面図を示し、図9は椎弓根11の部分で椎骨10を切断した状態の横断面図を示している。
【0040】
まず、椎弓根11で切断されていない椎骨10に対して、施術者は、図6に示すように、脊柱管10aを挟んで所定間隔を隔てた位置に、椎弓13から椎体12へ向けて、椎弓根11を貫通する穴部14を穿孔する。
【0041】
この際、施術者は、医療用ボルト1の第2ボルト軸部5における呼び径D2よりも小さい直径で、椎骨10の皮質骨101を貫通して海綿骨102に至る長さで穴部14を穿孔する。この穴部14には、医療用ボルト1のボルト軸部3が螺合する雌ネジが形成されていない。
【0042】
穴部14を穿孔すると、施術者は、図7に示すように、椎骨10の穴部14に対してガイドワイヤーWを挿入する。この際、施術者は、ガイドワイヤーWの一端である先端が、穴部14の底部に当接するまでガイドワイヤーWを挿入する。
【0043】
さらに、施術者は、図7に示すように、医療用ボルト1の貫通孔1aに対してボルト軸部3の先端側からガイドワイヤーWの他端を通して、医療用ボルト1をガイドワイヤーWに挿通する。
そして、施術者は、図8に示すように、ガイドワイヤーWに沿って医療用ボルト1を移動させ、ボルト軸部3の先端を椎骨10の穴部14に接触させる。
【0044】
医療用ボルト1が椎骨10の穴部14に接触すると、施術者は、図8及び図9に示すように、適宜の器具を用いて、医療用ボルト1のボルト頭部2を回転させて、第2ボルト軸部5を穴部14に螺合開始させる。
この際、椎骨10の穴部14には、図9に示すように、医療用ボルト1の螺入に伴って、第2ボルト軸部5のネジ山7aが螺合する雌ネジ14aが形成される。
【0045】
その後、施術者は、図9に示すように、第1ボルト軸部4が穴部14に螺合する位置まで、医療用ボルト1を穴部14に螺入する。換言すると、施術者は、第2ボルト軸部5の円柱部分6が穴部14から露出しない位置まで、医療用ボルト1を穴部14に螺入する。
【0046】
第1ボルト軸部4が穴部14に螺合する位置まで医療用ボルト1を螺入すると、施術者は、図9に示すように、ガイドワイヤーWを取り出したのち、適宜の機器を用いて、椎弓根11の部分を冠状面に沿うように切断して、椎骨10を椎体12と椎弓13とに分割する。
【0047】
その後、施術者は、図3及び図9に示すように、医療用ボルト1をさらに穴部14に螺入させる。
この際、椎弓13の穴部14は、図9に示すように、医療用ボルト1の第1ボルト軸部4のネジ山4aによって、第2ボルト軸部5のネジ山7aと螺合する雌ネジ14aが破壊されるとともに、第1ボルト軸部4のネジ山4aと螺合する新たな雌ネジが形成される。
【0048】
さらに、第2ボルト軸部5のリードに対して第1ボルト軸部4のリードが大きいため、切断された椎体12及び椎弓13は、医療用ボルト1の螺入の進行に伴って、軸方向Xへ向けて互いに離間するように移動開始する。
【0049】
これにより、椎骨10の脊柱管10aは、図3及び図9に示すように、その大きさが、医療用ボルト1の螺入に伴って拡張開始される。
このようにして、施術者は、脊柱管10aの大きさが所望される大きさに拡張されるまで、医療用ボルト1を穴部14に螺入する。さらに、施術者は、隣接する椎骨10に対して医療用ボルト1を同様に組付けて、脊柱管10a及び椎間孔10bの大きさを所望される大きさに拡張させて、全ての施術を完了する。
【0050】
以上ように、本実施形態の医療用ボルト1は、椎弓根11で切断される椎骨10の椎弓13と椎体12との連結に用いられるものである。
この医療用ボルト1のボルト軸部3は、椎弓13の穴部14に螺合する第1ボルト軸部4と、椎体12の穴部14に螺合する第2ボルト軸部5とを備えたものである。
そして、第1ボルト軸部4は、ネジ山4aのピッチP1が第2ボルト軸部5のネジ山7aのピッチP2に比べて広く形成されたものである。
【0051】
この構成によれば、第2ボルト軸部5のネジ山7aのピッチP2に対して第1ボルト軸部4のネジ山4aのピッチP1が広いため、医療用ボルト1は、第1ボルト軸部4のリードが第2ボルト軸部5のリードよりも大きくなる。このため、医療用ボルト1は、ボルト軸部3の螺入に伴って、椎弓13と椎体12とをボルト軸部3の軸方向Xへ離間させることができる。
【0052】
これにより、医療用ボルト1は、椎弓根11で切断される椎弓13と椎体12とを簡素な構成で連結できるとともに、椎弓13と椎体12との間隔を、簡素な構成で確実に広げることができる。このため、医療用ボルト1は、施術に要する時間を短縮して、患者の負担を軽減することができる。
【0053】
また、第2ボルト軸部5は、椎弓13の穴部14を介して、椎体12の穴部14に螺合する構成である。さらに、第1ボルト軸部4は、呼び径D1が第2ボルト軸部5の呼び径D2に比べて大径に形成されたものである。
【0054】
この構成によれば、医療用ボルト1は、第1ボルト軸部4を椎弓13に確実に螺合させることができる。
具体的には、第2ボルト軸部5が椎弓13の穴部14を介して、椎体12の穴部14に螺合するため、医療用ボルト1の第1ボルト軸部4は、第2ボルト軸部5が通過した椎弓13の穴部14に螺入することになる。
【0055】
この際、第2ボルト軸部5の呼び径D2と同じ呼び径D1の第1ボルト軸部4の場合、第2ボルト軸部5のネジ山7aのピッチP2に対して第1ボルト軸部4のネジ山4aのピッチP1が広いため、医療用ボルト1の第1ボルト軸部4は、第2ボルト軸部5と螺合する椎弓13の雌ネジ14aを破壊しながら、椎弓13に螺入される。このため、第2ボルト軸部5の呼び径D2と同じ呼び径D1の第1ボルト軸部4の場合、医療用ボルト1の第1ボルト軸部4は、椎弓13に螺合することができない。
【0056】
これに対して、第1ボルト軸部4の呼び径D1を第2ボルト軸部5の呼び径D2よりも大径に形成したことにより、医療用ボルト1の第1ボルト軸部4は、椎弓13の穴部14への螺入に伴って、新たな雌ネジを椎弓13の穴部14に形成することができる。
【0057】
これにより、医療用ボルト1は、第2ボルト軸部5が通過した椎弓13の穴部14に第1ボルト軸部4が螺入する場合であっても、第1ボルト軸部4を椎弓13に確実に螺合させることができる。このため、医療用ボルト1は、椎弓13と椎体12とを確実に離間させることができる。
【0058】
また、第2ボルト軸部5は、椎弓13の穴部14よりも長い軸方向Xの長さで形成されたものである。
この構成によれば、椎弓13の切断面と椎体12の切断面とが当接した状態において、医療用ボルト1は、第1ボルト軸部4が椎弓13に螺合する前に、第2ボルト軸部5を椎体12の穴部14に螺合開始させることができる。
【0059】
これにより、医療用ボルト1は、第2ボルト軸部5が椎体12に確実に螺合した状態で、第1ボルト軸部4を椎弓13に螺合開始させることができる。
このため、第1ボルト軸部4が螺合開始した後、椎弓13と椎体12とを切断する場合であっても、医療用ボルト1は、切断された椎弓13が、医療用ボルト1とともに椎体12から脱落することを確実に阻止することができる。
【0060】
また、第2ボルト軸部5は、第1ボルト軸部4側の端部にネジ山を設けてない円柱部分6を備えてもよい。
この構成によれば、第2ボルト軸部5の円柱部分6が椎弓13の穴部14から露出しない位置に位置する場合、第2ボルト軸部5のネジ山7aが、椎体12の穴部14に確実に螺合していることになる。
【0061】
つまり、医療用ボルト1は、第2ボルト軸部5のネジ山7aが確実に椎体12に螺合していることを明示する明示部として、円柱部分6を機能させることができる。
これにより、医療用ボルト1は、例えば施術者の目視による螺入状態の判定をより容易にすることができる。
【0062】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の所定位置は、実施形態の椎弓根11に対応し、
以下同様に、
骨は、椎骨10に対応し、
第1の骨部位は、椎弓13に対応し、
第2の骨部位は、椎体12に対応し、
柱状軸部分は、円柱部分6に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0063】
例えば、上述の実施形態の医療用ボルト1において、ネジ山を設けていない円柱部分6を有する第2ボルト軸部5としたが、これに限定せず、円柱部分が設けられていない第2ボルト軸部としてもよい。この場合、医療用ボルトは、第1ボルト軸部4のネジ山4aと、第2ボルト軸部5のネジ山7aとが連続していてもよい。
【0064】
また、医療用ボルト1のボルト頭部2を六角柱状としたが、これに限定せず、六角穴が設けられたボルト頭部であってもよい。あるいは、ラチェット付きドライバに対応した一文字の溝が設けられたボルト頭部、十字穴が設けられたボルト頭部、もしくは六角星型の穴が設けられたボルト頭部であってもよい。この場合、ボルト頭部は、円柱状や半球状であってもよい。
【0065】
また、ガイドワイヤーWが挿入される貫通孔1aを有する医療用ボルト1としたが、これに限定せず、貫通孔が設けられていない医療用ボルトであってもよい。
また、医療用ボルト1が螺入される穴部14を、第2ボルト軸部5の呼び径D2よりも小さい直径で、雌ネジが設けられていない形状としたが、これに限定せず、医療用ボルト1が螺合可能であれば、適宜の形状の穴部であってもよい。
【0066】
例えば、第2ボルト軸部5のネジ山7aが螺合する雌ネジがタップなどを用いて形成された穴部であってもよい。あるいは、第2ボルト軸部5の呼び径D2よりも小さい直径で椎体12に形成された第1穴部と、第1穴部よりも大径かつ第1ボルト軸部4の呼び径D1よりも小さい直径で椎弓13に形成された第2穴部とで構成された穴部であってもよい。この場合であっても、第1穴部及び第2穴部に雌ネジが形成されてもよい。
【0067】
また、医療用ボルト1を螺合させた椎骨10を、椎弓根11の部分で切断したが、これに限定せず、穴部14を穿孔した椎骨10を、椎弓根11の部分で切断したのち、医療用ボルト1を用いて、椎体12と椎弓13とを連結してもよい。この場合であっても、医療用ボルト1は、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0068】
また、第1ボルト軸部4のネジ山4aを一条のネジ山としたが、これに限定せず、第1ボルト軸部4のネジ山4aは二条ネジ形状であってもよい。
これによれば、医療用ボルト1は、ボルト軸部3の少ない回転数で、椎体12に対して椎弓13を大きく離間させることができる。
【0069】
さらに、二条ネジ形状と略同じリードとなる一条ネジ形状の場合に比べて、リード角を小さくできるため、医療用ボルト1は、第1ボルト軸部4における螺合強度の低下を抑えることができる。
これにより、医療用ボルト1は、その大きさの小型化を図るとともに、第1ボルト軸部4を椎弓13により安定して螺合させることができる。
【0070】
また、第1ボルト軸部4の谷径、及び第2ボルト軸部5の谷径を略同じ直径としたが、これに限定せず、第2ボルト軸部5の谷径に対して第1ボルト軸部4の谷径が大径であってもよい。
また、医療用ボルト1を隣接する椎骨10に組付けたが、これに限定せず、医療用ボルト1を1つの椎骨10に組付けてもよい。
【0071】
また、脊柱管10a及び椎間孔10bの大きさを拡張するために用いられる医療用ボルト1としたが、これに限定せず、所定位置で分割される骨の第1の骨部位と第2の骨部位との連結に用いられる医療用ボルトであれば、例えば腕部や脚部の骨を延長するために用いられる医療用ボルト、あるいは人工骨の長さを調整するために用いられる医療用ボルトであってもよい。
【0072】
この場合、医療用ボルトは、上述の実施形態のようなボルト頭部2に代えて、ボルト軸部を回転させる適宜の手段が設けられた構成とする。
例えば別の実施形態における医療用ボルト20の概略を説明する説明図を示す図10(a)のように、医療用ボルト20は、第1ボルト軸部21と、第1ボルト軸部21側の端部に四角柱状の多角柱部分23を有する第2ボルト軸部22とで、ボルト軸形状に形成されてもよい。
【0073】
この医療用ボルト20の多角柱部分23は、施術者が医療用ボルト20を回転させる際、骨30に対して医療用ボルト20を相対回転させる操作を受け付ける手段として設けられている。
【0074】
このような医療用ボルト20は、図10(b)に示すように、所定位置で分割された骨30の第1の骨部位31及び第2の骨部位32に対して、第1ボルト軸部21が第1の骨部位31に螺合し、第2ボルト軸部22が第2の骨部位32に螺合する。
【0075】
そして、多角柱部分23から見て第2ボルト軸部22が時計周りに回転するように、施術者が適宜の機器を用いて医療用ボルト20を回転させると、医療用ボルト20は、第2ボルト軸部22が締付け方向に回転して、第2の骨部位32に螺入する。
一方、第1ボルト軸部21は、多角柱部分23から見て反時計周りに回転、すなわち緩み方向へ回転して、第1の骨部位31から抜け出ることになる。
【0076】
この際、第1ボルト軸部21のピッチが第2ボルト軸部22のピッチよりも大きいため、第2ボルト軸部22が第2の骨部位32に螺入する螺入量に対して、第1ボルト軸部21が第1の骨部位31から抜け出す抜出し量の方が大きくなる。
【0077】
これにより、第2の骨部位32に対して第1の骨部位31を離間させられるため、医療用ボルト20は、第1の骨部位31と第2の骨部位32との間隔を簡素な構成で広げることができる。
【符号の説明】
【0078】
1…医療用ボルト
3…ボルト軸部
4…第1ボルト軸部
5…第2ボルト軸部
6…円柱部分
10…椎骨
11…椎弓根
12…椎体
13…椎弓
14…穴部
20…医療用ボルト
21…第1ボルト軸部
22…第2ボルト軸部
23…多角柱部分
30…骨
31…第1の骨部位
32…第2の骨部位
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10