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特開2022-167126冷媒状態検知装置、冷媒状態検知方法及び温調システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167126
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】冷媒状態検知装置、冷媒状態検知方法及び温調システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
F25B49/02 520D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072701
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 陽介
(57)【要約】
【課題】簡易に過冷却度の推移を推定できる冷媒状態検知装置を提供する。
【解決手段】一実施の形態に係る冷媒状態検知装置40Aは、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁14及び蒸発器15を有する冷凍回路10において凝縮器12から流出する冷媒の温度を少なくとも2つの時点で取得する温度情報取得部41と、温度情報取得部41が取得した少なくとも2つの時点での冷媒の温度に基づいて、凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度の推移を推定する冷媒状態推定部42と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を有する冷凍回路において前記凝縮器から流出する冷媒の温度を少なくとも2つの時点で取得する温度情報取得部と、
前記温度情報取得部が取得した少なくとも2つの時点での前記冷媒の温度に基づいて、前記凝縮器から流出する冷媒の過冷却度の推移を推定する冷媒状態推定部と、を備える、冷媒状態検知装置。
【請求項2】
前記冷媒状態推定部は、前記温度情報取得部で取得した2つの時点での前記冷媒の温度の差を、2つの時点の間の時間間隔で割ることで、単位時間当たりの前記冷媒の温度の変化量の傾きを算出し、前記傾きに基づいて前記過冷却度の推移を推定する、請求項1に記載の冷媒状態検知装置。
【請求項3】
前記冷媒状態推定部は、前記傾きの算出を繰り返し行い、前記傾き及び推定する情報を更新する、請求項2に記載の冷媒状態検知装置。
【請求項4】
前記冷媒状態推定部は、前記温度情報取得部が取得した3つ以上の時点での前記冷媒の温度に基づく回帰分析により、時間と前記冷媒の温度との関係の近似関数を算出し、前記近似関数に基づいて前記過冷却度の推移を推定する、請求項1に記載の冷媒状態検知装置。
【請求項5】
前記冷媒状態推定部は、前記近似関数の算出を繰り返し行い、前記近似関数及び推定する情報を更新する、請求項4に記載の冷媒状態検知装置。
【請求項6】
前記冷媒状態推定部は、推定される過冷却度が第1所定値以下になるまでの第1推定時間を、メンテナンス推奨時間として通知する、請求項1乃至5のいずれかに記載の冷媒状態検知装置。
【請求項7】
前記冷媒状態推定部は、推定される過冷却度が第2所定値以下になるまでの第2推定時間を、運転可能時間として通知する、請求項1乃至6のいずれかに記載の冷媒状態検知装置。
【請求項8】
前記温度情報取得部は、前記凝縮器で前記冷媒を冷却する冷却用流体の前記冷媒を冷却する前の温度も取得し、
前記冷媒状態推定部は、前記冷媒の温度と前記冷却用流体の温度との差が予め記録された閾値を越えた場合に、前記過冷却度の推移を推定する処理を行う、請求項1乃至7のいずれかに記載の冷媒状態検知装置。
【請求項9】
前記冷媒状態推定部は、前記温度情報取得部で取得した前記冷媒の温度の推移を機械学習し、前記冷媒の温度と前記冷却用流体の温度との差が前記閾値を越える前兆を検出するための正解ラベルを生成する、請求項8に記載の冷媒状態検知装置。
【請求項10】
前記凝縮器は液冷式の熱交換器であり、前記冷却用流体は液体である、請求項8又は9に記載の冷媒状態検知装置。
【請求項11】
前記凝縮器は、第1凝縮部と、前記第1凝縮部から流出する前記冷媒を凝縮する第2凝縮部と、を有し、
前記温度情報取得部は、前記第2凝縮部から流出する前記冷媒の温度を取得する、請求項1乃至10のいずれかに記載の冷媒状態検知装置。
【請求項12】
圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を有する冷凍回路において前記凝縮器から流出する冷媒の温度を少なくとも2つの時点で取得する温度情報取得工程と、
前記温度情報取得工程で取得した少なくとも2つの時点での前記冷媒の温度に基づいて、前記凝縮器から流出する冷媒の過冷却度の推移を推定する冷媒状態推定工程と、を備える、冷媒状態検知方法。
【請求項13】
圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を有する冷凍回路と、
請求項1乃至11のいずれかに記載の冷媒状態検知装置と、を備える温調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒状態検知装置、冷媒状態検知方法及び温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍回路で冷媒がリークし、冷媒に不足が生じた場合には、冷凍能力の低下等の問題が生じ得るため、早急に何らかの対策をとることが望ましい。また、冷媒の不足等の異常を安全に回避するために、メンテナンス時期等を推定できる手法があれば有益である。
【0003】
冷媒リークを検知する技術は従来から種々提案されている。例えば特許文献1には、圧縮機吸入圧力、蒸発器圧力、圧縮機吐出圧力、凝縮器圧力、圧縮機吸入温度、蒸発器出口温度、圧縮機吐出温度、凝縮器入口温度等を検知し、これら検知した値をパラメータとして冷媒リークを検知する技術が開示されている。また特許文献2には、外部にリークされた冷媒を検知する冷媒検知装置を空気調和装置の室内機に設ける技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献3は、フロートスイッチを用いて冷媒の減少を検知する装置を開示する。また、特許文献4は、サイトグラスから観察される気泡に基づいて冷媒のリークを検知する装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-121867号公報
【特許文献2】国際公開2017/175300号
【特許文献3】特開平10-103820号公報
【特許文献4】特開平6-185839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、圧力、温度等を検知するために多くのセンサが必要であり、冷媒リークの判断に使用するパラメータも多い。また特許文献2の技術は、外部に漏れた冷媒を冷媒検知装置で直接的に検知するため、冷媒検知装置から離れた位置で漏れた冷媒を検知することは困難であり、冷媒の不足を的確に検知できるとは言い難い。特許文献3及び特許文献4に関しては、専用の部材が必要であり、大型化や製造効率低下の点で懸念がある。
【0007】
本件発明者は上述のような公知技術を鑑みて、極力簡易に冷媒のリーク又は冷媒の不足を的確に検知することを実現すべく鋭意研究を行った。そして、冷媒が不足する状況下においては、凝縮器の出口温度が、冷媒が不足していない場合の出口温度に比べて高くなる、言い換えると過冷却度が下がることを見出した。すなわち、冷媒のリーク又は冷媒の不足と、過冷却度の低下との間には相関があることを見出した。
【0008】
そして、本件発明者は、過冷却度の推移を把握できれば、冷媒のリークや不足等の冷媒状態の異常の程度も推認できると考え、極力簡易に過冷却度の推移を推定する手法を見出すべく、鋭意研究を行った。
【0009】
本発明は上記事情に基づきなされたものであり、簡易に過冷却度の推移を推定できる冷媒状態検知装置、冷媒状態検知方法及び温調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施の形態に係る冷媒状態検知装置は、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を有する冷凍回路において前記凝縮器から流出する冷媒の温度を少なくとも2つの時点で取得する温度情報取得部と、前記温度情報取得部が取得した少なくとも2つの時点での前記冷媒の温度に基づいて、前記凝縮器から流出する冷媒の過冷却度の推移を推定する冷媒状態推定部と、を備える。
【0011】
前記冷媒状態推定部は、前記温度情報取得部で取得した2つの時点での前記冷媒の温度の差を、2つの時点の間の時間間隔で割ることで、単位時間当たりの前記冷媒の温度の変化量の傾きを算出し、前記傾きに基づいて前記過冷却度の推移を推定してもよい。
【0012】
前記冷媒状態推定部は、前記傾きの算出を繰り返し行い、前記傾き及び推定する情報を更新してもよい。
【0013】
前記冷媒状態推定部は、前記温度情報取得部が取得した3つ以上の時点での前記冷媒の温度に基づく回帰分析により、時間と前記冷媒の温度との関係の近似関数を算出し、前記近似関数に基づいて前記過冷却度の推移を推定してもよい。
【0014】
前記冷媒状態推定部は、前記近似関数の算出を繰り返し行い、前記近似関数及び推定する情報を更新してもよい。
【0015】
前記冷媒状態推定部は、推定される過冷却度が第1所定値以下になるまでの第1推定時間を、メンテナンス推奨時間として通知してもよい。
【0016】
前記冷媒状態推定部は、推定される過冷却度が第2所定値以下になるまでの第2推定時間を、運転可能時間として通知してもよい。
【0017】
前記温度情報取得部は、前記凝縮器で前記冷媒を冷却する冷却用流体の前記冷媒を冷却する前の温度も取得し、前記冷媒状態推定部は、前記冷媒の温度と前記冷却用流体の温度との差が予め記録された閾値を越えた場合に、前記過冷却度の推移を推定する処理を行ってもよい。
【0018】
前記冷媒状態推定部は、前記温度情報取得部で取得した前記冷媒の温度の推移を機械学習し、前記冷媒の温度と前記冷却用流体の温度との差が前記閾値を越える前兆を検出するための正解ラベルを生成してもよい。
【0019】
前記凝縮器は液冷式の熱交換器であり、前記冷却用流体は液体でもよい。
【0020】
前記凝縮器は、第1凝縮部と、前記第1凝縮部から流出する前記冷媒を凝縮する第2凝縮部と、を有し、前記温度情報取得部は、前記第2凝縮部から流出する前記冷媒の温度を取得してもよい。
【0021】
また、一実施の形態に係る冷媒状態検知方法は、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を有する冷凍回路において前記凝縮器から流出する冷媒の温度を少なくとも2つの時点で取得する温度情報取得工程と、前記温度情報取得工程で取得した少なくとも2つの時点での前記冷媒の温度に基づいて、前記凝縮器から流出する冷媒の過冷却度の推移を推定する冷媒状態推定工程と、を備える。
【0022】
また、一実施の形態に係る温調システムは、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を有する冷凍回路と、前記の冷媒状態検知装置と、を備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、簡易に過冷却度の推移を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る温調システムの概略構成を示す図である。
図2】第1の実施の形態に係る温調システムで行われる過冷却度の推定処理の原理を説明する図である。
図3】第1の実施の形態に係る温調システムで行われる過冷却度の推定処理の具体例を説明するグラフを示す図である。
図4】第1の実施の形態に係る温調システムで行われる過冷却度の推定処理の手順を示すフローチャートである。
図5】第1の実施の形態に係る温調システムで行われる過冷却度の推定処理の手順を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2の実施の形態に係る温調システムの概略構成を示す図である。
図7】本発明の第3の実施の形態に係る温調システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の各実施の形態について説明する。
【0026】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る温調システム1の概略構成を示す図である。本実施の形態に係る温調システム1は、冷凍回路10と、冷却用流体通流装置20と、温調対象流体通流装置30と、コントローラ40と、を備えている。
【0027】
冷凍回路10は、圧縮機11、凝縮器12、レシーバタンク13、膨張弁14及び蒸発器15を有する。圧縮機11、凝縮器12、レシーバタンク13、膨張弁14及び蒸発器15は冷媒をこの順で循環させるように配管部材により接続されている。
【0028】
圧縮機11は、蒸発器15から流出した低温且つ低圧の気体の状態の冷媒を圧縮し高温且つ高圧の気体の状態にして、凝縮器12に供給する。凝縮器12は、圧縮機11で圧縮された冷媒を、冷却用流体通流装置20が通流させる冷却用流体によって冷却して凝縮し、所定の冷却温度の高圧の液体の状態にする。
【0029】
本実施の形態では凝縮器12が、第1凝縮部121と、第1凝縮部121から流出する冷媒を凝縮する第2凝縮部122と、を有している。ここで、冷却用流体通流装置20は、冷却用流体が第2凝縮部122を通過した後、第1凝縮部121を通過するように、冷却用流体を通流させる。したがって、第1凝縮部121を通過する冷媒は、第2凝縮部122を通過する冷媒を冷却した後の冷却用流体によって冷却される。
【0030】
第1凝縮部121及び第2凝縮部122はそれぞれ液冷式の熱交換器、具体的にはプレート式熱交換器で構成される。ただし、第1凝縮部121及び第2凝縮部122は空冷式の熱交換器で構成されてもよい。また、第1凝縮部121及び第2凝縮部122にそれぞれ別の冷却用流体通流装置が接続されてもよい。
【0031】
レシーバタンク13は、凝縮器12で凝縮され液体となった冷媒を受け入れて貯留し、レシーバタンク13に貯留された冷媒は膨張弁14側に流れる。膨張弁14は、レシーバタンク13から供給された冷媒を膨張させることにより減圧させて、低温且つ低圧の液体状態又は気液混合状態にして、蒸発器15に供給する。
【0032】
蒸発器15は、本実施の形態において、供給された冷媒と温調対象流体通流装置30が通流させる温調対象流体とを熱交換させる。温調対象流体と熱交換した冷媒は、低温且つ低圧の気体の状態となって蒸発器15から流出して再び圧縮機11で圧縮される。
【0033】
冷却用流体通流装置20は、上述したように冷却用流体が第2凝縮部122を通過した後、第1凝縮部121を通過するように、冷却用流体を通流させる。本実施の形態では、第1凝縮部121及び第2凝縮部122が液冷式の熱交換器で構成されるため、冷却用流体として液体が用いられる。
【0034】
液体である冷却用流体は水でもよいし、その他の流体でもよい。第1凝縮部121及び第2凝縮部122が空冷式の熱交換器で構成される場合には、冷却用流体は空気でもよい。
【0035】
本実施の形態では、冷却用流体通流装置20がポンプ20Aを有し、ポンプ20Aの駆動力を制御することで、第1凝縮部121及び第2凝縮部122に供給される冷却用流体の流量を調整できる。これにより、第1凝縮部121及び第2凝縮部122における冷媒の冷却量を調整できる。
【0036】
また、本実施の形態では、正常な運転時において第1凝縮部121及び第2凝縮部122で冷媒が冷却用流体による適正な冷却量で冷却された際に、第2凝縮部122に所定量以上の液化した冷媒が溜まるように、冷凍回路10に冷媒が充填されている。
【0037】
上記のように第2凝縮部122に所定量以上の液化した冷媒を溜めるための冷媒の充填量は、冷凍回路10のサイズに応じて予め適宜定められる。また、正常な運転時における冷却用流体による冷却量も予め定めされ、基本的に一定の値に制御される。
【0038】
温調対象流体通流装置30は、上述したように蒸発器15で冷媒と熱交換を行う温調対象流体を通流させる装置である。温調対象流体通流装置30が通流させる温調対象流体は気体であってもよいし、液体であってもよい。
【0039】
温調対象流体が気体である場合、温調対象流体通流装置30はファン等で構成され得る。また温調対象流体が液体である場合、温調対象流体通流装置30は、液体の流路や液体を通流させるためのポンプ等で構成され得る。
【0040】
また、冷凍回路10には、第2凝縮部122から流出する冷媒の温度を検知する冷媒温度センサ16が設けられている。詳しくは、冷媒温度センサ16は、第2凝縮部122から流出しレシーバタンク13に流入する前の冷媒の温度を検知する。言い換えると、冷媒温度センサ16は、第2凝縮部122の出口に接続された配管部材の内部の温度を検知する。
【0041】
また、冷凍回路10には、第1凝縮部121から流出する冷媒の圧力を検知する冷媒圧力センサ17が設けられている。詳しくは、冷媒圧力センサ17は、第1凝縮部121から流出し第2凝縮部122に流入する前の冷媒の圧力を検知する。
【0042】
また、冷却用流体通流装置20には、冷却用流体温度センサ20Bが設けられている。冷却用流体温度センサ20Bは、第2凝縮部122において冷媒を冷却する前の冷却用流体の温度を検知する。言い換えると、冷却用流体温度センサ20Bは、冷却用流体通流装置20において冷却用流体を通流させる配管部材における第2凝縮部122の上流側の部分の内部の温度を検知する。
【0043】
コントローラ40は、冷凍回路10の各部、冷却用流体通流装置20のポンプ20A等の動作を制御可能であるとともに、上述した各種センサ16,17、20Bからの情報を取得できる。コントローラ40は、例えばCPU,ROM,RAM等を備えるコンピュータで構成され、記憶されたプログラムに従って上記各部の動作を制御してもよい。
【0044】
図1に示すように、コントローラ40は、温度情報取得部41と、冷媒状態推定部42と、出力部44と、を有する。
【0045】
温度情報取得部41は、凝縮器12の第2凝縮部122から流出する冷媒の温度を冷媒温度センサ16から継続的に取得する。また、温度情報取得部41は、第2凝縮部122で冷媒を冷却する前の冷却用流体の温度を冷却用流体温度センサ20Bから継続的に取得する。
【0046】
冷媒状態推定部42は、温度情報取得部41が取得した少なくとも2つの時点での冷媒の温度に基づいて、凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度の推移を推定する。
【0047】
本実施の形態における冷媒状態推定部42による過冷却度の推定処理は、温度情報取得部41が取得した第2凝縮部122から流出する冷媒の温度と冷却用流体の温度との差が予め記録された閾値を越えた場合に開始する。
【0048】
温度情報取得部41が取得した冷媒の温度と冷却用流体の温度との差が大きくなる場合には、冷媒のリーク又は不足が生じている可能性がある。冷媒のリーク又は不足が生じている場合には、過冷却度に異常が生じている可能性、具体的に過冷却度が所望の値よりも小さくなっている可能性がある。そこで、本実施の形態では、温度情報取得部41が取得した冷媒の温度と冷却用流体の温度との差が閾値を超えた場合に、早期に異常を検出するべく過冷却度の推移の推定処理が開始される。なお、温度情報取得部41及び冷媒状態推定部42は冷媒状態検知装置40Aを構成している。
【0049】
冷媒状態推定部42は、詳しくは、温度情報取得部41が取得した2つの時点での冷媒の温度の差を、2つの時点の間の時間間隔で割ることで、単位時間当たりの冷媒の温度の変化量の傾き(℃/hour)を算出し、この傾きに基づいて過冷却度の推移を推定する。過冷却度は、飽和液線上の冷媒の温度と、凝縮器12から流出した冷媒の温度との差の絶対値である。
上記傾きを算出した場合、この傾きに基づいて凝縮器12から流出する冷媒の例えば数時間先の温度を推定でき、この推定した温度と飽和液線上の冷媒の温度(凝縮温度)との差の絶対値を求めることにより、数時間先における過冷却度の程度を推定できる。
【0050】
また、冷媒状態推定部42は、算出した傾きに基づき、推定される過冷却度が第1所定値以下になるまでの第1推定時間を算出し、この第1推定時間を「メンテナンス推奨時間」として出力部44を介して通知するようになっている。また、冷媒状態推定部42は、推定される過冷却度が第2所定値以下になるまでの第2推定時間を算出し、この第2推定時間を「運転可能時間」として出力部44を介して通知するようになっている。
【0051】
過冷却度の程度を判定するための上記第1所定値は、上記第2所定値よりも大きい値である。すなわち、第1所定値と判定された際の冷媒の過冷却度は、第2所定値と判定された際の冷媒の過冷却度よりも大きい(冷えている)。第1推定時間としてのメンテナンス推奨時間は、第2推定時間としての運転可能時間よりも短い時間である。本実施の形態は、運転可能時間を、正常な運転が不能となる状態に至る時間として想定している。メンテナンス推奨時間は、運転可能時間まで運転がなされる前にメンテンナスを行うことを促す目的で通知される。
【0052】
また、実際に冷媒のリーク又は不足が生じた際の実際の過冷却度の推移は、変則的に推移することがある。具体的には、配管部材に生じた孔から冷媒がリークするような場合、時間の経過とともに孔が大きくなったり、孔が異物で塞がれたりすることがある。このとき、冷媒のリーク量が不規則に変わり得ることにともない、過冷却度も不規則に変化し得る。このような現象を考慮して、本実施の形態における冷媒状態推定部42は、冷媒の温度の変化量の傾きの算出を繰り返し行い、この傾き及び推定する情報(メンテナンス推奨時間及び運転可能時間)を更新するようになっている。
【0053】
一方で、出力部44は、温度情報取得部41が取得した第2凝縮部122から流出する冷媒の温度と冷却用流体の温度との差が予め記録された閾値を越えた場合に、冷媒状態推定部42から指令を受け、まず、異常を通知するようになっている。また、出力部44は、上述したように冷媒状態推定部42が第1推定時間及び第2推定時間を算出した際、第1推定時間をメンテナンス推奨時間として通知し、第2推定時間を運転可能時間として通知するようになっている。なお、出力部44は、図示しない表示装置上に通知を行うものでもよいし、音声で通知を行うものでもよい。
【0054】
以下、本実施の形態における冷媒状態検知装置40Aによる冷媒の過冷却度の推定処理について詳述する。
【0055】
図2は、温調システム1で行われる冷媒状態検知装置40Aによる過冷却度の推定処理の原理を説明する図である。図2には、モリエル線図の一部が示されるとともに、内部の冷媒の量が互いに異なる状態の冷凍回路10が概略的に示されている(I~III)。
【0056】
本実施の形態では、上述したように正常な運転時において第1凝縮部121及び第2凝縮部122で冷媒が冷却用流体による適正な冷却量で冷却された際に、第2凝縮部122に所定量以上の液化した冷媒が溜まる。符号Iで示す冷凍回路10では、第2凝縮部122に所定量以上の冷媒が溜まっている。符号IIで示す冷凍回路10では、冷媒がリークすることにより、第2凝縮部122に所定量の半分程度しか冷媒が溜まっていない。符号IIIで示す冷凍回路10では、冷媒のリークが進行し、第2凝縮部122にほとんど冷媒が溜まっていない。
【0057】
符号Iで示す冷凍回路10の場合、第2凝縮部122に多くの凝縮した冷媒が存在するため、第2凝縮部122における凝縮した冷媒と冷却用流体との熱交換量が多くなり、且つ熱交換時間が長くなる。そのため、第2凝縮部122から流出する冷媒に付与される過冷却度は大きくなる。この場合、冷媒は、モリエル線図上の点Aに示すように飽和液線から液相側に大きく離れた状態になり、付与される過冷却度が大きくなる。過冷却度が大きい冷媒の温度は、第2凝縮部122に流入する前の冷却用流体の温度と等しくなるか又は近い値になる。
【0058】
一方で、符号IIで示す冷凍回路10の場合、第2凝縮部122内の凝縮した冷媒は符号Iの場合よりも少なくなり、第2凝縮部122における凝縮した冷媒と冷却用流体との熱交換量及び熱交換時間は、符号Iの場合よりも少なくなる。そのため、第2凝縮部122から流出する冷媒に付与される過冷却度は、符号Iの場合よりも小さくなる。この場合、冷媒は、点Bに示すように飽和液線から液相側に大きくは離れない状態になり、付与される過冷却度が小さくなる。過冷却度が小さくなるほど、冷媒の温度は、第2凝縮部122に流入する前の冷却用流体の温度よりも高くなる。
【0059】
そして、符号IIIで示す冷凍回路10の場合、第2凝縮部122内に凝縮した冷媒がほとんど存在しない。この場合、第2凝縮部122における凝縮した冷媒と冷却用流体との熱交換量及び熱交換時間は、符号IIの場合よりも少なくなる。そのため、第2凝縮部122から流出する冷媒に付与される過冷却度は、符号IIの場合よりも小さくなる。この場合、図2の例では、冷媒が、点Cに示すように概ね飽和液線上に位置する状態になり、過冷却度がほぼ付与されない又は付与されない。過冷却度がほぼ付与されない場合、冷媒の温度は、第2凝縮部122に流入する前の冷却用流体の温度よりも大幅に高くなる。
【0060】
符号IIで示す冷凍回路10の状態から符号IIIで示す冷凍回路10の状態にまで変化する場合、第2凝縮部122から流出する冷媒の温度は、次第に上昇していき、過冷却度は次第に小さくなる。このような現象に着目し、本実施の形態における冷媒状態検知装置40Aは、温度情報取得部41が取得した、少なくとも2つの時点での冷媒の温度に基づいて、凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度の推移を推定する。すなわち、冷媒状態検知装置40Aは、少なくとも2つの時点での冷媒の温度から、第2凝縮部122から流出する冷媒の温度変化の傾向・推移を特定し、温度変化の傾向・推移に基づいて、過冷却度の推移を推定するように構成されている。
【0061】
図3は、冷媒状態検知装置40Aによる過冷却度の推定処理の具体例を説明するグラフである。図3のグラフでは、時間を表す横軸と、2つの縦軸とが示されている。図3における左側に位置する縦軸は、冷媒の温度を表し、上側ほど数値が大きくなる。一方、右側に位置する縦軸は、冷媒の過冷却度を表し、下側ほど数値が大きくなる。
【0062】
図3の例では、2つの時点T1,T2で、冷媒状態検知装置40Aにおける温度情報取得部41が第2凝縮部122から流出する冷媒の温度を取得し、冷媒状態推定部42が、2つの時点T1,T2における冷媒の温度に基づいて、単位時間当たりの冷媒の温度の変化量の傾き(℃/hour)を算出している。具体的には、時点T2での冷媒の温度がXであり、時点T1での冷媒の温度がYであり、傾きは、(X-Y)/(T2-T1)で演算される。
【0063】
図3の例では、傾きの算出において、温度Yが冷却水入口温度(第2凝縮部122に流入する前の冷却用流体の温度)と同じになる最後の時点T1が採用されている。ただし、この算出例に代えて、冷媒の温度が冷却水入口温度よりも高くなる例えば図3に示す時点T1’と、時点T2とを用いることにより、傾きが演算されてもよい。
【0064】
図3における冷媒温度を示す縦軸上のCtは、飽和液線上の冷媒の温度である冷媒の凝縮温度を示す。符号IIIで示す冷凍回路10のように第2凝縮部122に液化した冷媒がほとんど溜まっていない場合には、第2凝縮部122から流出する冷媒の温度が凝縮温度又はこれに近い値になる。凝縮温度Ctのことを、以下、冷媒Empty温度と呼ぶ場合もある。そして、第2凝縮部122から流出する冷媒の温度が凝縮温度Ctになったときには、過冷却度が0℃になる。上記のように算出した傾きを用いれば、言い換えると、2つ時点T1,T2の温度で定まる、変数を時間とする上記傾きを有する関数により、例えば過冷却度が0℃又は冷媒の温度が冷媒Empty温度になるまでの時間を特定でき、過冷却度が0℃になるまでの過冷却度の推移、つまり変化の様子を推定できる。
【0065】
上述したように、本実施の形態における冷媒状態推定部42は、過冷却度が第2所定値以下になるまでの第2推定時間を運転可能時間として算出するようになっている。ここで、第2所定値は、図3において符号Th2で示され、過冷却度0℃よりもわずかに大きい、例えば2℃等に設定される。すなわち、本実施の形態における冷媒状態推定部42は、過冷却度が0℃に近くなる状態になるまでの時間を運転可能時間として算出する。なお、第2所定値は、0℃等に設定されてもよい。
【0066】
また、冷媒状態推定部42は、上述したように過冷却度が第1所定値以下になるまでの第1推定時間をメンテナンス推奨時間として算出する。ここで、第1所定値は、図3において符号Th1で示され、第2所定値Th2と、過冷却度が「冷却水入口温度-凝縮温度Ct」となる値と、の間に設定され、具体的には例えばこれらの中間値になっている。本実施の形態における冷媒状態推定部42は、メンテナンス推奨時間と運転可能時間との差を比較的大きく設定している。これにより、本実施の形態は、運転可能時間を越えて冷凍回路10が運転される状況が確実に回避されることを狙っている。
【0067】
次に、本実施の形態における冷媒状態検知装置40Aによる過冷却度の推定処理の手順を図4及び図5に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0068】
温調システム1の運転中においては、冷媒状態検知装置40Aによる過冷却度の推定処理を開始するか否かの判定(開始判定)が常時行われている。
【0069】
図4を参照し、温調システム1の運転中における上記開始判定に際しては、まず、ステップS41に示すように、温度情報取得部41が第2凝縮部122から流出する冷媒の温度(以下、第2凝縮部後冷媒温度と呼ぶ。)を冷媒温度センサ16から取得するとともに、第2凝縮部122で冷媒を冷却する前の冷却用流体の温度(以下、冷却水入口温度と呼ぶ。)を冷却用流体温度センサ20Bから取得する。
【0070】
次いで、ステップS42において冷媒状態推定部42が、温度情報取得部41が取得した第2凝縮部後冷媒温度と冷却水温度との差が予め記録された閾値を越えるか否かを判定する。そして、閾値を越えた場合には、処理がステップS43に移行する。閾値を越えない場合には、ステップS41に戻り、温度情報の取得が繰り返し行われる。
【0071】
ステップS43では、冷媒状態推定部42が、第2凝縮部後冷媒温度が冷却水温度よりも大きく、且つ、冷媒の凝縮温度が第2凝縮部後冷媒温度よりも大きいか否かを判定する。この判定は、誤検出であるか否かを判定するために行われる。なお、冷媒の凝縮温度は、圧縮機11で所定の圧力まで圧縮された冷媒が凝縮を開始する温度であり、上記所定の圧力と飽和液線とで定められる。上記所定の圧力は、圧縮機11の仕様に基づいて予め定められた値でもよいし、第1凝縮部121と第2凝縮部122との間で冷媒圧力センサ17により測定した冷媒の圧力の値でもよい。
【0072】
そして、ステップS43において第2凝縮部後冷媒温度が冷却水温度よりも大きく且つ冷媒の凝縮温度が第2凝縮部後冷媒温度よりも大きいことが判定された場合には、ステップS44において、出力部44が異常を通知し、その後、処理が、ステップS45で示す過冷却度の推定モードに移行する。なお、ステップS44では、冷媒がリーク又は不足している可能性がある旨の通知がなされる。
【0073】
一方で、ステップS43において、第2凝縮部後冷媒温度が冷却水温度よりも大きく且つ冷媒の凝縮温度が第2凝縮部後冷媒温度よりも大きいことが判定されなかった場合には、ステップS46において誤検出要因処理に移行する。誤検出要因処理では、例えば温度センサに故障が生じている否か等の判定が行われてもよい。
【0074】
そして、過冷却度の推定処理が開始された際には、図5を参照し、まず、ステップS51において温度情報取得部41が冷媒の凝縮温度を取得する。
【0075】
上述したように冷媒の凝縮温度は圧縮機11で所定の圧力まで圧縮された冷媒が凝縮を開始する温度であり、上記所定の圧力と飽和液線とで定められる。ステップS51で冷媒の凝縮温度を取得する際の上記所定の圧力は、圧縮機11の仕様に基づいて予め定められた値でもよいし、第1凝縮部121と第2凝縮部122との間で冷媒圧力センサ17により測定した冷媒の圧力の値でもよい。
【0076】
次いで、ステップS52において、温度情報取得部41は冷却水入口温度を冷却用流体温度センサ20Bから取得する。
【0077】
次いで、ステップS53において、温度情報取得部41は、少なくとも2つの時点t1,t2(t1は、t2より先のタイミング)で第2凝縮部122から流出する冷媒の温度、すなわち第2凝縮部後冷媒温度を取得する(温度情報取得工程)。なお、2つの時点t1,t2は、ステップS42において第2凝縮部後冷媒温度と冷却水温度との差が予め記録された閾値を越えたことが判定されたタイミングを含むこれ以降のタイミングである。
【0078】
そして、ステップS54においては、冷媒状態推定部42が、2つの時点t1,tT2での第2凝縮部後冷媒温度に基づいて、単位時間当たりの冷媒の温度の変化量の傾き(℃/hour)を算出する(冷媒状態推定工程)。この傾きによって、冷媒の今後の状態を推定できる。なお、本実施の形態では、1回目の傾きの算出の際に、冷媒の温度が冷却水入口温度と同じになる最後の時点が時点t1として採用される。ただし、冷媒の温度が冷却水入口温度と同じになる最後の時点以降のタイミングが、時点t1として採用されてもよい。
また、ステップS51で取得した凝縮温度及びステップS52で取得した冷却水入口温度は、ステップS54で算出する傾きを有する一次関数の切片を決める際に用いられる。厳密に言うと、本実施の形態では、算出した傾きに対してステップS51で取得した凝縮温度及びステップS52で取得した冷却水入口温度に基づく切片を特定した関数により、過冷却度の推移が推定される。
【0079】
次いで、ステップS55では、ステップS54で算出した傾きに基づいて、推定される過冷却度が第1所定値以下になるまでの第1推定時間を算出し、この第1推定時間をメンテナンス推奨時間として出力部44を介して通知する。また、冷媒状態推定部42は、推定される過冷却度が第2所定値以下になるまでの第2推定時間を算出し、この第2推定時間を運転可能時間として出力部44を介して通知する。
【0080】
次いで、ステップS56では、メンテナンス推奨時間及び運転可能時間等の通知をオフにするユーザからの指示があるか否かを判定する。オフにする指示が確認された場合には、処理を終了し、オフにする指示が確認されない場合には、ステップS53に戻り、傾きを更新する。2回目移行の傾きの算出の際には、前回傾きを算出したタイミング以降に取得される第2凝縮部後冷媒温度を用いて、傾きが算出される。
【0081】
なお、本実施の形態では、2つの時点での第2凝縮部後冷媒温度を用いて冷媒の温度の変化量の傾きが算出されるが、これに代えて、3つ以上の時点での第2凝縮部後冷媒温度を用いて過冷却度の傾向が推定されてもよい。この場合、冷媒状態推定部42は、温度情報取得部41が取得した3つ以上の時点での冷媒の温度に基づく回帰分析により、時間と冷媒の温度との関係の近似関数を算出し、この近似関数に基づいて過冷却度の推移を推定してもよい。そして、この場合にも、冷媒状態推定部42は、上記近似関数の算出を繰り返し行い、近似関数及び推定する情報を更新することが好ましい。
【0082】
以上に説明したように本実施の形態に係る冷媒状態検知装置40Aは、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁14及び蒸発器15を有する冷凍回路10において凝縮器12から流出する冷媒の温度を取得する温度情報取得部41と、温度情報取得部41が取得した少なくとも2つの時点での冷媒の温度に基づいて、凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度の推移を推定する冷媒状態推定部42と、を備える。このような冷媒状態検知装置40Aによれば、少なくとも2つの時点での冷媒の温度を用いるだけで過冷却度の推移を推定できるため、簡易に過冷却度の推移を推定できる。
【0083】
なお、本実施の形態では、冷媒状態推定部42が、凝縮器12から流出する冷媒の温度と、凝縮器12(第2凝縮部122)に流入する前の冷却用流体の温度との差が予め記録された閾値を越えた場合に、過冷却度の推移を推定する処理を行う。ここで、冷媒の温度と冷却用流体の温度との差が閾値を越える場合には、冷媒リーク等の異常が生じている可能性が高いと判定できる。ここで、冷媒状態推定部42は、温度情報取得部41で継続的に取得する冷媒の温度の推移を機械学習し、冷媒の温度と冷却用流体の温度との差が閾値を越える前兆を検出するための正解ラベルを生成するように構成されてもよい。なお、このような機械学習は、コントローラ40とは別の情報処理装置で実施されてもよい。このような構成が採用された場合には、冷凍回路10に異常が生じる状況をより確実に回避することが可能となる。
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態に係る温調システム2について図6を参照しつつ説明する。以下の説明では、第1の実施の形態に対する相違点のみを説明する。
【0084】
図6に示すように、本実施の形態では、凝縮器12が一つの液冷式の熱交換器で構成される。凝縮器12には冷却用流体通流装置20が通流させる冷却用流体が供給される。凝縮器12から流出する冷媒の温度は、冷媒温度センサ16からコントローラ40に送信される。冷却用流体通流装置20は、冷却用流体の流量を調整するポンプ20Aと、冷却用流体温度センサ20Bとを有する。冷却用流体温度センサ20Bは、冷却用流体が凝縮器12において冷媒を冷却する前の冷却用流体の温度を検知し、コントローラ40に送信する。
【0085】
そして、冷媒状態検知装置40Aは、冷媒温度センサ16が検知した凝縮器12から流出する冷媒の温度と、冷却用流体温度センサ20Bが検知した冷却用流体の温度との差が予め記録された閾値を越えた場合に、冷媒状態推定部42による過冷却度の推定処理を開始する。そして、冷媒状態推定部42は、例えば温度情報取得部41が取得した2つの時点での冷媒の温度の差を、2つの時点の間の時間間隔で割ることで、単位時間当たりの冷媒の温度の変化量の傾き(℃/hour)を算出し、この傾きに基づいて過冷却度の推移を推定する。
【0086】
本実施の形態でも、簡易に過冷却度の推移を推定できる。なお、本実施の形態においても、冷媒状態推定部42は、温度情報取得部41が取得した3つ以上の時点での冷媒の温度に基づく回帰分析により、時間と冷媒の温度との関係の近似関数を算出し、この近似関数に基づいて過冷却度の推移を推定してもよい。
【0087】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態に係る温調システム3について図7を参照しつつ説明する。以下の説明では、第1及び第2の実施の形態に対する相違点のみを説明する。
【0088】
本実施の形態では、凝縮器12が一つの空冷式の熱交換器で構成される。凝縮器12には、ファンを有する空冷装置24がファンの駆動によって通流させる気体である冷却用流体が供給される。冷却用流体は空気でもよい。空冷装置24に設けられる冷却用流体温度センサ20Bは、凝縮器12に供給される冷却用流体の温度、詳しくは凝縮器12で冷媒と熱交換する前の冷却用流体の温度を検知する。
【0089】
本実施の形態でも、冷媒温度センサ16が検知した凝縮器12から流出する冷媒の温度と、冷却用流体温度センサ20Bが検知した冷却用流体の温度との差が予め記録された閾値を越えた場合に、冷媒状態推定部42による過冷却度の推定処理を開始する。そして、冷媒状態推定部42は、例えば温度情報取得部41が取得した2つの時点での冷媒の温度の差を、2つの時点の間の時間間隔で割ることで、単位時間当たりの冷媒の温度の変化量の傾き(℃/hour)を算出し、この傾きに基づいて過冷却度の推移を推定する。
【0090】
本実施の形態でも、簡易に過冷却度の推移を推定できる。なお、本実施の形態においても、冷媒状態推定部42は、温度情報取得部41が取得した3つ以上の時点での冷媒の温度に基づく回帰分析により、時間と冷媒の温度との関係の近似関数を算出し、この近似関数に基づいて過冷却度の推移を推定してもよい。
【0091】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、上述の実施の形態には各種の変更を加えることができる。例えば、上述の各実施の形態では、冷凍回路10にレシーバタンク13が設けられるが、冷凍回路10にレシーバタンク13が設けられなくてもよい。また、凝縮器12から流出する冷媒の温度と、凝縮器12(第2凝縮部122)に流入する前の冷却用流体の温度との差が閾値を越える場合には、冷媒リーク等の異常が生じている可能性が高いと判定でき、過冷却度が下がっている可能性がある。過冷却度が下がっている場合には、蒸発器に15での冷凍能力も下がっている可能性がある。そのため、上記のように閾値を越えたと判定された場合に、膨張弁14の開度を増加させる制御を行ってもよい。この場合、一時的に蒸発器の冷凍能力を維持でき、温度対象への影響を回避し得る。
【符号の説明】
【0092】
1,2,3…温調システム
10…冷凍回路
11…圧縮機
12…凝縮器
121…第1凝縮部
122…第2凝縮部
13…レシーバタンク
14…膨張弁
15…蒸発器
16…冷媒温度センサ
17…冷媒圧力センサ
20…冷却用流体通流装置
20A…ポンプ
20B…冷却用流体温度センサ
24…空冷装置
30…温調対象流体通流装置
40…コントローラ
40A…冷媒状態検知装置
41…温度情報取得部
42…冷媒状態推定部
44…出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7