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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167132
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20221027BHJP
【FI】
G01N23/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072710
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】512097042
【氏名又は名称】日本装置開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】木下 修
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA01
2G001DA09
2G001HA08
2G001HA14
2G001JA06
2G001JA08
(57)【要約】
【課題】X線発生器との間に被検査体を挟むように配置される二次元X線検出器で取得されたX線画像を取り込んで処理する処理手段とを備えるX線検査装置において、処理手段のメモリの記憶容量を低減しても、比較的大きな被検査体の全体のCT画像を生成することが可能なX線検査装置を提供する。
【解決手段】X線検査装置1では、画像取得動作と移動動作とを交互に行って、上下方向の所定位置の、左右方向で分割された被検査体2のX線画像を相対回転方向の一定角度ごとに360°に亘って二次元X線検出器4に取得させている。X線画像を取り込んで処理する処理手段は、所定枚数のX線画像を取り込んだ後、取り込んだX線画像である取得X線画像の中の所定位置の座標およびその座標における明るさを含むCT画像作成用データを取得X線画像から取得し、CT画像作成用データを用いて被検査体のCT画像を生成するための所定の演算を開始している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生器と、前記X線発生器との間で被検査体を挟むように配置される二次元X線検出器と、前記被検査体の外周側で前記被検査体に対して前記X線発生器および前記二次元X線検出器が相対回転するように前記X線発生器と前記二次元X線検出器とを回転させるかまたは前記被検査体を回転させる回転機構と、前記二次元X線検出器で取得されたX線画像を取り込んで処理する処理手段とを備えるとともに、
前記二次元X線検出器の検出面に平行な所定の方向を第1方向とし、前記検出面に平行な方向であってかつ前記第1方向に直交する方向を第2方向とし、前記被検査体に対する前記X線発生器および前記二次元X線検出器の相対回転の方向を相対回転方向とすると、前記被検査体に対して前記二次元X線検出器が少なくとも前記第1方向へ相対移動するように前記二次元X線検出器を平行移動させるかまたは前記被検査体を平行移動させる移動機構と、前記X線発生器と前記二次元X線検出器と前記回転機構と前記移動機構とが接続される制御部とを備え、
前記検出面を含む平面を仮想投影面とし、前記X線発生器が射出するX線によって前記仮想投影面に投影される前記被検査体の全体の投影像を仮想投影像とすると、前記検出面は、少なくとも前記第1方向において前記仮想投影像よりも小さくなっており、
前記制御部は、前記回転機構によって前記X線発生器および前記二次元X線検出器を前記被検査体に対して360°相対回転させるとともに前記二次元X線検出器に一定角度ごとにX線画像を取得させる画像取得動作と、前記移動機構によって前記二次元X線検出器を前記被検査体に対して前記第1方向の一方へ相対移動させる移動動作とを交互に行って、前記第2方向の所定位置の、前記第1方向で分割された前記被検査体のX線画像を前記相対回転方向の一定角度ごとに360°に亘って前記二次元X線検出器に取得させ、
前記処理手段は、前記二次元X線検出器で取得された所定枚数のX線画像を取り込んだ後、取り込んだX線画像である取得X線画像の中の所定位置の座標およびその座標における明るさを含むCT画像作成用データを前記取得X線画像から取得し、前記CT画像作成用データを用いて前記被検査体のCT画像を生成するための所定の演算を開始することを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記処理手段は、前記被検査体のCT画像の生成に必要な全てのX線画像を取り込む前から前記CT画像作成用データを取得し、前記CT画像作成用データを用いて前記被検査体のCT画像を生成するための演算を開始することを特徴とする請求項1記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記検出面は、前記第1方向および前記第2方向において前記仮想投影像よりも小さくなっており、
前記相対回転方向の一定角度ごとに360°に亘って取得された、前記第2方向の所定位置の前記第1方向で分割された前記被検査体のX線画像を一列分X線画像とすると、
前記制御部は、前記一列分X線画像が前記二次元X線検出器によって取得されると、前記移動機構によって前記二次元X線検出器を前記被検査体に対して少なくとも前記第2方向へ相対移動させ、その後、前記画像取得動作と前記移動動作とを交互に行って、前記被検査体の、前記第2方向における次の前記一列分X線画像を前記二次元X線検出器に取得させることを特徴とする請求項1または2記載のX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業製品等の内部を非破壊で検査するためのX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業製品等の被検査体の内部を非破壊で検査するためのX線検査装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のX線検査装置は、被検査体にX線を照射するX線発生器と、X線発生器との間に被検査体を挟むように配置されるエリアセンサ(二次元X線検出器)と、被検査体が搭載されるテーブルと、テーブルを回転させる回転機構と、エリアセンサを平行移動させる移動機構と、エリアセンサで取得されたX線画像を取り込んで処理する処理手段としてのPC(パーソナルコンピュータ)とを備えている。このX線検査装置で検査が行われる被検査体は比較的大きくなっているため、このX線検査装置では、第1配置位置から第9配置位置までの9箇所の配置位置にエリアセンサを移動させると、エリアセンサによって被検査体の全体のX線画像を取得することが可能になっている。
【0003】
特許文献1に記載のX線検査装置で被検査体を検査するときには、まず、エリアセンサを第1配置位置に移動させて停止させ、その状態で、被検査体を一定速度で1回転させるとともにエリアセンサで一定角度ごとに複数枚のX線画像を取得する。その後、エリアセンサを第2配置位置に移動させて停止させ、その状態で、被検査体を一定速度で1回転させるとともにエリアセンサで一定角度ごとに複数枚のX線画像を取得する。その後、第3配置位置~第9配置位置に順次、エリアセンサを移動させて停止させ、その状態で、被検査体を一定速度で1回転させるとともにエリアセンサで一定角度ごとに複数枚のX線画像を取得する。
【0004】
特許文献1に記載のX線検査装置では、PCは、エリアセンサが第1配置位置、第2配置位置および第3配置位置のそれぞれに配置されているときに取得されたX線画像であって、被検査体に対するエリアセンサの相対回転方向において同じ角度で取得されたX線画像を繋ぎ合わせて合成して、合成X線画像を生成する。同様に、PCは、エリアセンサが第4配置位置、第5配置位置および第6配置位置のそれぞれに配置されているときに取得されたX線画像であって、被検査体に対するエリアセンサの相対回転方向において同じ角度で取得されたX線画像を繋ぎ合わせて合成して、合成X線画像を生成する。
【0005】
また、PCは、エリアセンサが第7配置位置、第8配置位置および第9配置位置のそれぞれに配置されているときに取得されたX線画像であって、被検査体に対するエリアセンサの相対回転方向において同じ角度で取得されたX線画像を繋ぎ合わせて合成して、合成X線画像を生成する。その後、PCは、合成X線画像に対する所定の処理を行うとともに、処理後の合成X線画像に基づく所定の演算を行って被検査体のCT画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017/203886号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のX線検査装置では、PCは、合成X線画像を生成した後、合成X線画像に対する所定の処理を行っており、合成X線画像を少なくとも一時的に記憶しておく必要がある。すなわち、PCは、エリアセンサで取得されたX線画像に加えて、合成X線画像を少なくとも一時的に記憶しておく必要がある。そのため、このX線検査装置の場合、PCのメモリ(記憶手段)の記憶容量を大きくしないと、被検査体のCT画像を生成することができなくなる場合が生じうる。
【0008】
そこで、本発明の課題は、X線発生器と、X線発生器との間に被検査体を挟むように配置される二次元X線検出器と、二次元X線検出器で取得されたX線画像を取り込んで処理する処理手段とを備えるX線検査装置において、処理手段のメモリの記憶容量を低減しても、比較的大きな被検査体の全体のCT画像を生成することが可能なX線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のX線検査装置は、X線発生器と、X線発生器との間で被検査体を挟むように配置される二次元X線検出器と、被検査体の外周側で被検査体に対してX線発生器および二次元X線検出器が相対回転するようにX線発生器と二次元X線検出器とを回転させるかまたは被検査体を回転させる回転機構と、二次元X線検出器で取得されたX線画像を取り込んで処理する処理手段とを備えるとともに、二次元X線検出器の検出面に平行な所定の方向を第1方向とし、検出面に平行な方向であってかつ第1方向に直交する方向を第2方向とし、被検査体に対するX線発生器および二次元X線検出器の相対回転の方向を相対回転方向とすると、被検査体に対して二次元X線検出器が少なくとも第1方向へ相対移動するように二次元X線検出器を平行移動させるかまたは被検査体を平行移動させる移動機構と、X線発生器と二次元X線検出器と回転機構と移動機構とが接続される制御部とを備え、検出面を含む平面を仮想投影面とし、X線発生器が射出するX線によって仮想投影面に投影される被検査体の全体の投影像を仮想投影像とすると、検出面は、少なくとも第1方向において仮想投影像よりも小さくなっており、制御部は、回転機構によってX線発生器および二次元X線検出器を被検査体に対して360°相対回転させるとともに二次元X線検出器に一定角度ごとにX線画像を取得させる画像取得動作と、移動機構によって二次元X線検出器を被検査体に対して第1方向の一方へ相対移動させる移動動作とを交互に行って、第2方向の所定位置の、第1方向で分割された被検査体のX線画像を相対回転方向の一定角度ごとに360°に亘って二次元X線検出器に取得させ、処理手段は、二次元X線検出器で取得された所定枚数のX線画像を取り込んだ後、取り込んだX線画像である取得X線画像の中の所定位置の座標およびその座標における明るさを含むCT画像作成用データを取得X線画像から取得し、CT画像作成用データを用いて被検査体のCT画像を生成するための所定の演算を開始することを特徴とする。
【0010】
本発明のX線検査装置では、制御部は、画像取得動作と移動動作とを交互に行って、第2方向の所定位置の、第1方向で分割された被検査体のX線画像を相対回転方向の一定角度ごとに360°に亘って二次元X線検出器に取得させているが、処理手段は、二次元X線検出器で取得された所定枚数のX線画像を取り込んだ後、取り込んだX線画像である取得X線画像の中の所定位置の座標およびその座標における明るさを含むCT画像作成用データを取得X線画像から取得し、CT画像作成用データを用いて被検査体のCT画像を生成するための所定の演算を開始している。そのため、本発明では、処理手段が、特許文献1に記載されたPCのように合成X線画像を生成して記憶しなくても、CT画像を生成することが可能になる。すなわち、本発明では、CT画像を生成するために、処理手段が合成X線画像を記憶する必要がない。したがって、本発明では、処理手段のメモリの記憶容量を低減しても、比較的大きな被検査体の全体のCT画像を生成することが可能になる。
【0011】
本発明において、処理手段は、被検査体のCT画像の生成に必要な全てのX線画像を取り込む前からCT画像作成用データを取得し、CT画像作成用データを用いて被検査体のCT画像を生成するための演算を開始することが好ましい。このように構成すると、処理手段が、被検査体のCT画像の生成に必要な全てのX線画像を取り込んだ後に、CT画像作成用データを取得して被検査体のCT画像を生成するための演算を開始する場合と比較して、CT画像が生成されるまでの時間を短縮することが可能になる。
【0012】
本発明において、たとえば、検出面は、第1方向および第2方向において仮想投影像よりも小さくなっており、相対回転方向の一定角度ごとに360°に亘って取得された、第2方向の所定位置の第1方向で分割された被検査体のX線画像を一列分X線画像とすると、制御部は、一列分X線画像が二次元X線検出器によって取得されると、移動機構によって二次元X線検出器を被検査体に対して少なくとも第2方向へ相対移動させ、その後、画像取得動作と移動動作とを交互に行って、被検査体の、第2方向における次の一列分X線画像を二次元X線検出器に取得させる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明では、X線発生器と、X線発生器との間に被検査体を挟むように配置される二次元X線検出器と、二次元X線検出器で取得されたX線画像を取り込んで処理する処理手段とを備えるX線検査装置において、処理手段のメモリの記憶容量を低減しても、比較的大きな被検査体の全体のCT画像を生成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態にかかるX線検査装置の機械構成の概略図である。
図2図1に示すX線検査装置の概略構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
(X線検査装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるX線検査装置1の機械構成の概略図である。図2は、図1に示すX線検査装置1の概略構成を説明するためのブロック図である。
【0017】
本形態のX線検査装置1は、工業製品等の被検査体2の内部を非破壊で検査するための装置である。具体的には、X線検査装置1は、エンジンブロック等の比較的大きな被検査体2を検査するための装置である。X線検査装置1は、被検査体2にX線を照射するX線発生器3と、X線発生器3との間に被検査体2を挟むように配置される二次元X線検出器4(以下、「エリアセンサ4」とする)とを備えている。
【0018】
また、X線検査装置1は、エリアセンサ4で取得されたX線画像を取り込んで処理する処理手段5と、被検査体2が搭載されるテーブル7と、テーブル7を回転させる回転機構8と、エリアセンサ4を平行移動させる移動機構9とを備えている。X線発生器3とエリアセンサ4と回転機構8と移動機構9とは、制御部10に接続されている。処理手段5は、半導体メモリ等のメモリ(記憶手段)やCPU等を有するパーソナルコンピュータ(PC)である。したがって、以下では、処理手段5を「PC5」とする。PC5は、エリアセンサ4に接続されている。
【0019】
X線発生器3は、たとえば、被検査体2に向かって円錐状のX線(コーンビーム)を射出する。X線発生器3の光軸は、水平方向と平行になっている。エリアセンサ4は、二次元カメラである。エリアセンサ4の検出面4aは、矩形状に形成されている。具体的には、検出面4aは、正方形状に形成されており、検出面4aの一辺の長さは、たとえば、200(mm)となっている。X線発生器3の光軸に平行な方向を前後方向とすると、検出面4aは、前後方向に直交するように配置されている。また、上下方向と前後方向とに直交する方向を左右方向とすると、エリアセンサ4は、正方形状に形成される検出面4aの4辺のうちの2辺が上下方向と平行になり、残りの2辺が左右方向と平行になるように配置されている。本形態の左右方向は、検出面4aに平行な所定の方向である第1方向となっており、上下方向は、検出面4aに平行な方向であってかつ第1方向に直交する方向である第2方向となっている。
【0020】
テーブル7は、X線発生器3とエリアセンサ4との間に被検査体2が配置されるように、前後方向においてX線発生器3とエリアセンサ4との間に配置されている。回転機構8は、上下方向を回転の軸方向としてテーブル7を回転させる。すなわち、回転機構8は、被検査体2の外周側で被検査体2に対してX線発生器3およびエリアセンサ4が相対回転するように、テーブル7に搭載される被検査体2を回転させる。移動機構9は、エリアセンサ4を左右方向および上下方向へ平行移動させる。すなわち、移動機構9は、被検査体2に対してエリアセンサ4が左右方向および上下方向へ相対移動するようにエリアセンサ4を平行移動させる。以下では、被検査体2に対するX線発生器3およびエリアセンサ4の相対回転の方向を「相対回転方向」と記載する場合がある。
【0021】
エリアセンサ4の検出面4aを含む平面を仮想投影面VPとし、X線発生器3が射出するX線によって仮想投影面VPに投影される被検査体2の全体の投影像を仮想投影像VIとすると、検出面4aは、上下方向および左右方向において仮想投影像VIよりも小さくなっている。本形態では、9箇所にエリアセンサ4を移動させると、エリアセンサ4によって被検査体2の全体のX線画像を取得することが可能になる。
【0022】
具体的には、被検査体2の下端側部分の右端側が投影される第1配置位置4Aと、被検査体2の下端側部分の左右方向の中央部が投影される第2配置位置4Bと、被検査体2の下端側部分の左端側が投影される第3配置位置4Cと、被検査体2の上下方向の中心部分の右端側が投影される第4配置位置4Dと、被検査体2の中心部分が投影される第5配置位置4Eと、被検査体2の上下方向の中心部分の左端側が投影される第6配置位置4Fと、被検査体2の上端側部分の右端側が投影される第7配置位置4Gと、被検査体2の上端側部分の左右方向の中央部が投影される第8配置位置4Hと、被検査体2の上端側部分の左端側が投影される第9配置位置4Iとの9箇所にエリアセンサ4を移動させると、エリアセンサ4によって被検査体2の全体のX線画像を取得することが可能になる。
【0023】
第1配置位置4Aに配置されるエリアセンサ4が検出面4aの一辺の長さ分、左側へ移動すると、エリアセンサ4は第2配置位置4Bに配置され、第2配置位置4Bに配置されるエリアセンサ4が検出面4aの一辺の長さ分、左側へ移動すると、エリアセンサ4は第3配置位置4Cに配置される。第3配置位置4Cに配置されるエリアセンサ4が検出面4aの一辺の長さの2倍分、右側へ移動するとともに、検出面4aの一辺の長さ分、上側へ移動すると、エリアセンサ4は第4配置位置4Dに配置される。
【0024】
同様に、第4配置位置4Dに配置されるエリアセンサ4が検出面4aの一辺の長さ分、左側へ移動すると、エリアセンサ4は第5配置位置4Eに配置され、第5配置位置4Eに配置されるエリアセンサ4が検出面4aの一辺の長さ分、左側へ移動すると、エリアセンサ4は第6配置位置4Fに配置される。また、第6配置位置4Fに配置されるエリアセンサ4が検出面4aの一辺の長さの2倍分、右側へ移動するとともに、検出面4aの一辺の長さ分、上側へ移動すると、エリアセンサ4は第7配置位置4Gに配置され、第7配置位置4Gに配置されるエリアセンサ4が検出面4aの一辺の長さ分、左側へ移動すると、エリアセンサ4は第8配置位置4Hに配置され、第8配置位置4Hに配置されるエリアセンサ4が検出面4aの一辺の長さ分、左側へ移動すると、エリアセンサ4は第9配置位置4Iに配置される。
【0025】
本形態では、第1配置位置4A~第9配置位置4Iのいずれの位置にエリアセンサ4が配置されても、エリアセンサ4の検出面4aに被検査体2の一部分が投影される。ただし、第1配置位置4A~第9配置位置4Iのいずれかの位置にエリアセンサ4が配置されたときに、検出面4aに被検査体2の一部分が投影されなくても良い。なお、本形態では、X線発生器3を移動させなくても仮想投影面VPに仮想投影像VIが投影されるように、X線発生器3の照射領域が設定されている。
【0026】
(X線画像の取得方法)
X線検査装置1で被検査体2の検査を行うときには、X線検査装置1は、以下のように、被検査体2のX線画像を取得する。まず、制御部10は、回転機構8の回転位置が所定の原点位置となるように回転機構8を調整する。また、制御部10は、移動機構9によって、エリアセンサ4をたとえば、第1配置位置4Aに移動させて停止させる。この状態で、制御部10は、テーブル7に搭載された被検査体2を回転機構8によって一定速度で360°回転させるとともにエリアセンサ4に一定角度ごとにX線画像A1~A1000を取得させる画像取得動作を行う。本形態の画像取得動作では、0.36°ごとに1000枚のX線画像A1~A1000が順次、取得される。なお、画像取得動作で取得されるX線画像の枚数は、1000枚未満であっても良いし、1000枚を超えても良い。
【0027】
その後、制御部10は、移動機構9によってエリアセンサ4を左方向へ移動させる移動動作を行う。この移動動作では、第1配置位置4Aから第2配置位置4Bへエリアセンサ4が移動して停止する。この状態で、制御部10は、被検査体2を回転機構8によって一定速度で360°回転させるとともにエリアセンサ4に0.36°ごとに1000枚のX線画像B1~B1000を順次、取得させる画像取得動作を行う。その後、制御部10は、移動機構9によってエリアセンサ4を第2配置位置4Bから第3配置位置4Cへ移動させる移動動作を行ってから、回転機構8によって被検査体2を一定速度で360°回転させるとともにエリアセンサ4に0.36°ごとに1000枚のX線画像C1~C1000を順次、取得させる画像取得動作を行う。
【0028】
X線画像A1、B1、C1は、被検査体2に対するエリアセンサ4の相対回転方向において同じ角度で取得されたX線画像であり、X線画像A1、B1、C1を右側からこの順番で配置して繋ぐと、被検査体2の下端側部分の、相対回転方向における原点位置のX線画像となる。すなわち、X線画像A1、B1、C1のそれぞれは、被検査体2の下端側部分の、相対回転方向における原点位置のX線画像であって、左右方向で分割されたX線画像である。
【0029】
同様に、X線画像A2、B2、C2は、相対回転方向において同じ角度で取得されたX線画像であり、X線画像A2、B2、C2を右側からこの順番で配置して繋ぐと、被検査体2の下端側部分の、相対回転方向における原点位置から0.36°ずれた位置のX線画像となる。すなわち、X線画像A2、B2、C2のそれぞれは、被検査体2の下端側部分の、相対回転方向における原点位置から0.36°ずれた位置のX線画像であって、左右方向で分割されたX線画像である。
【0030】
すなわち、「n」を1から1000までの整数とすると、X線画像An、Bn、Cnは、相対回転方向において同じ角度で取得されたX線画像であり、X線画像An、Bn、Cnを右側からこの順番で配置して繋ぐと、被検査体2の下端側部分の、相対回転方向における原点位置から(0.36×(n-1))°ずれた位置のX線画像となる。また、X線画像An、Bn、Cnのそれぞれは、被検査体2の下端側部分の、相対回転方向における原点位置から(0.36×(n-1))°ずれた位置のX線画像であって、左右方向で分割されたX線画像である。
【0031】
このように、画像取得動作と移動動作とが交互に行われると、被検査体2の下端側部分の、左右方向で分割されたX線画像が相対回転方向の0.36°ごとに360°に亘って取得される。すなわち、制御部10は、エリアセンサ4を停止させた状態で回転機構8によってX線発生器3およびエリアセンサ4を被検査体2に対して360°相対回転させるとともにエリアセンサ4に一定角度ごとにX線画像を取得させる画像取得動作と、移動機構9によってエリアセンサ4を被検査体2に対して左方向へ相対移動させる移動動作とを交互に行って、被検査体2の下端側部分の、左右方向で分割されたX線画像を相対回転方向の一定角度ごとに360°に亘ってエリアセンサ4に取得させる。
【0032】
相対回転方向の一定角度ごとに360°に亘って取得された、被検査体2の下端側部分の、左右方向で分割された複数のX線画像を一列分X線画像P1とすると、制御部10は、一列分X線画像P1がエリアセンサ4によって取得されると、移動機構9によってエリアセンサ4を第3配置位置4Cから第4配置位置4Dへ移動させる。すなわち、制御部10は、移動機構9によってエリアセンサ4を右方向および上方向へ移動させる。
【0033】
その後、制御部10は、上述の画像取得動作と同様の画像取得動作を行って、第4配置位置4Dに配置されたエリアセンサ4にX線画像D1~D1000を取得させてから、上述の移動動作と同様の移動動作を行って、第4配置位置4Dから第5配置位置4Eへエリアセンサ4を移動させる。また、制御部10は、同様に、画像取得動作を行って、第5配置位置4Eに配置されたエリアセンサ4にX線画像E1~E1000を取得させてから、移動動作を行って、第5配置位置4Eから第6配置位置4Fへエリアセンサ4を移動させ、その後、画像取得動作を行って、第6配置位置4Fに配置されたエリアセンサ4にX線画像F1~F1000を取得させる。
【0034】
このように、制御部10は、一列分X線画像P1がエリアセンサ4によって取得されると、移動機構9によってエリアセンサ4を右方向および上方向へ移動させてから、画像取得動作と移動動作とを交互に行って、上下方向における被検査体2の中心部分の、左右方向で分割されたX線画像を相対回転方向の0.36°ごとに360°に亘ってエリアセンサ4に取得させる。すなわち、相対回転方向の一定角度ごとに360°に亘って取得された、上下方向における被検査体2の中心部分の、左右方向で分割された複数のX線画像を一列分X線画像P2とすると、制御部10は、一列分X線画像P1がエリアセンサ4によって取得されると、移動機構9によってエリアセンサ4を右方向および上方向へ移動させてから、画像取得動作と移動動作とを交互に行って、被検査体2の、上下方向における次の一列分X線画像P2をエリアセンサ4に取得させる。
【0035】
また、制御部10は、一列分X線画像P2がエリアセンサ4によって取得されると、移動機構9によってエリアセンサ4を第6配置位置4Fから第7配置位置4Gへ移動させる。その後、制御部10は、同様に、画像取得動作を行って、第7配置位置4Gに配置されたエリアセンサ4にX線画像G1~G1000を取得させてから、移動動作を行って、第7配置位置4Gから第8配置位置4Hへエリアセンサ4を移動させる。また、制御部10は、同様に、画像取得動作を行って、第8配置位置4Hに配置されたエリアセンサ4にX線画像H1~H1000を取得させてから、移動動作を行って、第8配置位置4Hから第9配置位置4Iへエリアセンサ4を移動させた後、画像取得動作を行って、第9配置位置4Iに配置されたエリアセンサ4にX線画像I1~I1000を取得させる。X線画像I1~I1000が取得されると、エリアセンサ4による被検査体2のX線画像の取得が終了する。
【0036】
このように、制御部10は、一列分X線画像P2がエリアセンサ4によって取得されると、移動機構9によってエリアセンサ4を右方向および上方向へ移動させてから、画像取得動作と移動動作とを交互に行って、被検査体2の上端側部分の、左右方向で分割されたX線画像を相対回転方向の0.36°ごとに360°に亘ってエリアセンサ4に取得させる。すなわち、相対回転方向の一定角度ごとに360°に亘って取得された、被検査体2の上端側部分の、左右方向で分割された複数のX線画像を一列分X線画像P3とすると、制御部10は、一列分X線画像P2がエリアセンサ4によって取得されると、移動機構9によってエリアセンサ4を右方向および上方向へ移動させてから、画像取得動作と移動動作とを交互に行って、被検査体2の、上下方向における次の一列分X線画像P3をエリアセンサ4に取得させる。
【0037】
(PCでの処理方法)
PC5は、エリアセンサ4で取得されたX線画像を順次、取り込む。PC5は、エリアセンサ4で取得された所定枚数のX線画像を取り込んだ後、取り込んだX線画像である取得X線画像の中の所定位置の座標およびその座標における明るさを含むCT画像作成用データ(すなわち、座標データおよび輝度データを含むCT画像作成用データ)を取得X線画像から取得する。また、PC5は、CT画像作成用データを取得すると、取得したCT画像作成用データを用いて被検査体2のCT画像を生成するための所定の演算を開始する。具体的には、PC5は、取得したCT画像作成用データを所定の演算式に入れていく。
【0038】
たとえば、PC5は、X線画像A1~A1000、B1~B1000、C1~C1000を取り込むと(すなわち、3000枚のX線画像からなる一列分X線画像P1を取り込むと)、取り込んだX線画像である取得X線画像A1~A1000、B1~B1000、C1~C1000のそれぞれからCT画像作成用データを取得し、取得したCT画像作成用データを用いて被検査体2のCT画像を生成するための所定の演算を開始する。
【0039】
その後、PC5は、X線画像D1~D1000、E1~E1000、F1~F1000を取り込むと(すなわち、一列分X線画像P2を取り込むと)、取得X線画像D1~D1000、E1~E1000、F1~F1000のそれぞれからCT画像作成用データを取得し、取得したCT画像作成用データを用いて被検査体2のCT画像を生成するための所定の演算を開始する。その後、PC5は、X線画像G1~G1000、H1~H1000、I1~I1000を取り込むと(すなわち、一列分X線画像P3を取り込むと)、X線画像G1~G1000、H1~H1000、I1~I1000のそれぞれからCT画像作成用データを取得し、取得したCT画像作成用データを用いて被検査体2のCT画像を生成するための所定の演算を開始する。
【0040】
また、たとえば、PC5は、X線画像A1~A1000を取り込むと(すなわち、1000枚のX線画像を取り込むと)、取得X線画像A1~A1000のそれぞれからCT画像作成用データを取得し、取得したCT画像作成用データを用いて被検査体2のCT画像を生成するための所定の演算を開始しても良い。この場合には、その後、PC5は、X線画像B1~B1000を取り込むと、取得X線画像B1~B1000のそれぞれからCT画像作成用データを取得し、取得したCT画像作成用データを用いて被検査体2のCT画像を生成するための所定の演算を開始する。
【0041】
また、その後、同様に、PC5は、X線画像C1~C1000、X線画像D1~D1000、X線画像E1~E1000、X線画像F1~F1000、X線画像G1~G1000、X線画像H1~H1000およびX線画像I1~I1000を順次、取り込むたびに、取得X線画像C1~C1000、取得X線画像D1~D1000、取得X線画像E1~E1000、取得X線画像F1~F1000、取得X線画像G1~G1000、取得X線画像H1~H1000および取得X線画像I1~I1000のそれぞれからCT画像作成用データを取得し、取得したCT画像作成用データを用いて被検査体2のCT画像を生成するための所定の演算を開始する。
【0042】
このように本形態では、PC5は、被検査体2のCT画像の生成に必要な全てのX線画像A1~A1000、B1~B1000、C1~C1000、D1~D1000、E1~E1000、F1~F1000、G1~G1000、H1~H1000、I1~I1000を取り込む前から、CT画像作成用データを取得し、取得したCT画像作成用データを用いて被検査体2のCT画像を生成するための所定の演算を開始する。
【0043】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、PC5は、所定枚数のX線画像を取り込んだ後、取り込んだX線画像である取得X線画像の中の所定位置の座標およびその座標における明るさを含むCT画像作成用データを取得X線画像から取得し、CT画像作成用データを用いて被検査体2のCT画像を生成するための所定の演算を開始している。そのため、本形態では、PC5が、特許文献1に記載されたPCのように合成X線画像を生成して記憶しなくても、CT画像を生成することが可能になる。すなわち、本形態では、CT画像を生成するために、PC5が合成X線画像を記憶する必要がない。したがって、本形態では、PC5のメモリの記憶容量を低減しても、比較的大きな被検査体2の全体のCT画像を生成することが可能になる。
【0044】
本形態では、PC5は、被検査体2のCT画像の生成に必要な全てのX線画像A1~A1000、B1~B1000、C1~C1000、D1~D1000、E1~E1000、F1~F1000、G1~G1000、H1~H1000、I1~I1000を取り込む前から、CT画像作成用データを取得し、取得したCT画像作成用データを用いて被検査体2のCT画像を生成するための所定の演算を開始している。そのため、本形態では、PC5が、被検査体2のCT画像の生成に必要な全てのX線画像を取り込んだ後に、CT画像作成用データを取得して被検査体2のCT画像を生成するための演算を開始する場合と比較して、CT画像が生成されるまでの時間を短縮することが可能になる。
【0045】
(他の実施の形態)
上述した形態において、PC5が、CT画像作成用データを取得X線画像から取得し、CT画像作成用データを用いて被検査体2のCT画像を生成するための所定の演算を開始するタイミングは、PC5が何数のX線画像を取り込んだ後であっても良い。この場合には、PC5が、被検査体2のCT画像の生成に必要な全てのX線画像A1~A1000、B1~B1000、C1~C1000、D1~D1000、E1~E1000、F1~F1000、G1~G1000、H1~H1000、I1~I1000を取り込む前に、CT画像作成用データを取得X線画像から取得し、CT画像作成用データを用いて被検査体2のCT画像を生成するための所定の演算を開始することが好ましい。
【0046】
ただし、PC5が、被検査体2のCT画像の生成に必要な全てのX線画像A1~A1000、B1~B1000、C1~C1000、D1~D1000、E1~E1000、F1~F1000、G1~G1000、H1~H1000、I1~I1000を取り込んだ後に、CT画像作成用データを取得X線画像から取得し、CT画像作成用データを用いて被検査体2のCT画像を生成するための所定の演算を開始しても良い。この場合であっても、PC5は、特許文献1に記載されたPCのように合成X線画像を生成して記憶する必要がないため、PC5のメモリの記憶容量を低減しても、比較的大きな被検査体2の全体のCT画像を生成することが可能になる。
【0047】
上述した形態において、回転機構8は、X線発生器3およびエリアセンサ4を回転させても良い。また、上述した形態において、移動機構9は、上下方向および左右方向へ被検査体2を平行移動させても良い。また、移動機構9は、左右方向へエリアセンサ4を平行移動させても良い。この場合には、X線検査装置1は、上下方向へ被検査体2を平行移動させる移動機構を備えている。また、移動機構9は、左右方向へ被検査体2を平行移動させても良い。この場合には、X線検査装置1は、上下方向へエリアセンサ4を平行移動させる移動機構を備えている。また、上述した形態において、移動機構9は、エリアセンサ4と一緒にX線発生器3を上下方向および左右方向へ平行移動させても良い。この場合には、たとえば、X線発生器3を移動させないと、仮想投影面VPに仮想投影像VI(被検査体2の全体の投影像)を投影することができないように、X線発生器3の照射領域が設定されている。
【0048】
上述した形態では、第1配置位置4A~第9配置位置4Iの9箇所にエリアセンサ4を移動させると、エリアセンサ4によって被検査体2の全体のX線画像を取得することが可能になっているが、たとえば、第1配置位置4A~第6配置位置4Fの6箇所にエリアセンサ4を移動させると、エリアセンサ4によって被検査体2の全体のX線画像を取得することが可能になっていても良いし、第1配置位置4A、第2配置位置4B、第4配置位置4Dおよび第5配置位置4Eの4箇所にエリアセンサ4を移動させると、エリアセンサ4によって被検査体2の全体のX線画像を取得することが可能になっていても良い。また、第1配置位置4A~第3配置位置4Cの3箇所にエリアセンサ4を移動させると、エリアセンサ4によって被検査体2の全体のX線画像を取得することが可能になっていても良い。この場合には、検出面4aは、上下方向において、仮想投影像VIよりも大きくなっている。
【0049】
また、上述した形態では、同じ高さにある第1配置位置4Aから第3配置位置4Cまでのエリアセンサ4の移動回数(以下、「一段目の移動回数」とする)と、同じ高さにある第4配置位置4Dから第6配置位置4Fまでのエリアセンサ4の移動回数(以下、「二段目の移動回数」とする)と、同じ高さにある第7配置位置4Gから第9配置位置4Iまでのエリアセンサ4の移動回数(以下、「三段目の移動回数」とする)とが等しくなっているが、被検査体2の形状に応じて、一段目の移動回数と二段目の移動回数と三段目の移動回数とが異なっていても良い。
【0050】
上述した形態において、エリアセンサ4は、被検査体2のX線画像を取得する際に、第3配置位置4Cから第6配置位置4Fに移動しても良い。この場合には、エリアセンサ4は、その後、第5配置位置4E、第4配置位置4D、第7配置位置4G、第8配置位置4Hおよび第9配置位置4Iに順次移動する。また、上述した形態では、X線発生器3の光軸は、水平方向と平行になっているが、X線発生器3の光軸は、水平方向に対して傾いていても良い。さらに、上述した形態において、上下方向が第1方向となっており、左右方向が第2方向となっていても良い。また、上下方向および左右方向に対して傾いた方向が第1方向となっていても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 X線検査装置
2 被検査体
3 X線発生器
4 エリアセンサ(二次元X線検出器)
4a 検出面
5 PC(処理手段)
8 回転機構
9 移動機構
10 制御部
VP 仮想投影面
VI 仮想投影像
図1
図2