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2022-167133回転電機のスロットコイル用絶縁体の成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167133
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】回転電機のスロットコイル用絶縁体の成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20221027BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20221027BHJP
   B29C 45/33 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/26
B29C45/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072711
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】391029392
【氏名又は名称】中川特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】小川 典孝
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AD07
4F202AG24
4F202AG28
4F202AH04
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK06
4F202CK42
4F202CK54
4F202CQ05
4F202CQ10
4F206AD07
4F206AG24
4F206AG28
4F206AH04
4F206JA07
4F206JB12
4F206JD05
4F206JN12
4F206JN25
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】内部が複数の隔壁によって区切られた例えば板厚が0.3mm以下で長さが200mm以上である薄肉長軸四角柱体のプラスチック成形品を安定して成形できるプラスチック成形方法を提供する。
【解決手段】プラスチック成形体100の貫通孔21を成形するコアピン204をスライド駒205で両側から押し切った状態で、コアピン204と固定金型201及び可動金型202との空間容積に射出成形機207で溶融樹脂を充填してプラスチック成形中間体150を成形する。その後、コアピン204とスライド駒205を二次成形用コアピン208と二次成形用スライド駒209にそれぞれ交換し、開口20aを含む近傍を二次成形用コアピン208によって支持された状態で二次成形用スライド駒209によって押し切りながら、開口20aを胴部20の樹脂と同じか又は同等かそれ以上の耐熱性を有する封止樹脂20bで塞ぐ。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が複数の隔壁(11)によって区切られたプラスチック成形品(100)の頭部(10)を成形する固定金型(201)と、
前記プラスチック成形品(100)の胴部(20)を成形する可動金型(202)と、
前記胴部(20)の内部に長手方向に沿った複数の貫通孔(21)を成形する第1挿入物(204)と、
前記可動金型(202)に取り付けられ前記第1挿入物(204)を固定するコア金型(203)と、
溶融樹脂を射出する射出成形機(207)と、を用いて前記プラスチック成形品(100)を成形するプラスチック成形方法であって、
前記第1挿入物(204)が固定金型(201)に係止した状態で前記第1挿入物(204)を第1スライド駒(205)によって両側から押し切る工程と、
前記第1スライド駒(205)が前記第1挿入物(204)を両側から押し切った状態で前記第1挿入物(204)及び前記第1スライド駒(205)と前記金型(201、202、203)との隙間に溶融樹脂を流し込むことにより、前記胴部(20)に複数の開口(20a)を備えたプラスチック成形中間体(150)を成形する工程とを有する
ことを特徴とするプラスチック成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプラスチック成形方法において、
前記第1挿入物(204)を前記プラスチック成形中間体(150)の貫通孔(21)から引き抜く工程と、
前記第1挿入物(204)より断面が小さい第2挿入物(208)を前記プラスチック成形中間体(150)の貫通孔(21)に挿入する工程と、
前記第2挿入物(208)が前記貫通孔(21)に挿入した状態で前記開口(20a)を包絡する押切面(209a)を備えた第2スライド駒(209)によって前記開口(20a)を含む近傍を両側から押し切る工程と、
前記第2スライド駒(209)を利用して複数の前記開口(20a)に溶融樹脂を流し込むことにより前記開口(20a)を溶融樹脂で塞ぐ工程とを有する
ことを特徴とするプラスチック成形方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプラスチック成形方法において、
前記第1スライド駒(205)の表面には凸部(205a)が形成され、
前記第1挿入物(204)の前記第1スライド駒(205)に対向する表面には前記凸部(205a)が嵌まる凹部(204a)が形成されている
ことを特徴とするプラスチック成形方法。
【請求項4】
請求項2に記載のプラスチック成形方法において、
前記第2スライド駒(209)は、前記開口(20a)に溶融樹脂を射出するフィルムゲートが前記開口(20a)に連通する高さ位置であって前記第2挿入物(208)の長手方向に直交する横方向から接続可能に構成されている
ことを特徴とするプラスチック成形方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載のプラスチック成形方法において、
前記射出成形機(207)は樹脂をスクリュによって可塑化する可塑化部(210)と溶融樹脂をプランジャによって射出する射出部(211)とが別個に構成されている
ことを特徴とするプラスチック成形方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載のプラスチック成形方法において、
前記固定金型(201)は前記射出成形機(207)に接続可能に構成され、
前記射出成形機(207)から射出された溶融樹脂が流れる樹脂流路(201c)は前記プラスチック成形品(100)のフランジ部(12)を成形するフランジ部キャビティ(201a)に連通している
ことを特徴とするプラスチック成形方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載のプラスチック成形方法において、
前記プラスチック成形中間体(150)の前記開口(20a)を塞ぐために使用される樹脂(20b)は、前記胴部(20)の成形に使用される樹脂と同じか又はそれ以上の耐熱性を有する
ことを特徴とするプラスチック成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のスロットコイル用絶縁体の成形方法に関する。さらに詳しくは、内部が複数の隔壁によって区切られた複数の貫通孔を備えた薄肉長軸四角柱体の回転電機のスロットコイル用絶縁体(プラスチック成形品)を安定して成形できるプラスチック成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等の電動機(回転電機)において、固定子(ステータ)は界磁を発生する役割を担っている。交流電力で駆動される誘導モータ(交流モータ)の固定子は回転磁界を発生させるため、磁性体に導線が巻かれた電磁石が使用される。磁性体(固定子鉄心)は鉄損(渦電流損失)を小さくするために、例えばケイ素鋼板等の薄板材を積層した積層磁性材で構成され、コイルを巻くための縦長の溝(スロット)が放射状(径方向)に形成されている。
【0003】
固定子鉄心に巻かれるコイルは、専用のコイル巻機によって各スロット毎に巻かれる場合もあるが、近年、環状巻線コイルからプレス成形機によって環状波形に成形した、いわゆる成形コイルが利用されている(例えば特許文献1を参照。)。
【0004】
一方、この成形コイルを複数のセグメントに分割し、セグメント毎にコイルを成形した分割成形コイル(セグメントコイル)が知られている(例えば特許文献2を参照。)。セグメントコイルは、例えばコイル辺セグメントコイル(固定子鉄心内部を通るコイル部分)、コイル上端セグメントコイル(固定子鉄心の上端部を通るコイル部分)およびコイル下端セグメント(固定子鉄心の下端部を通るコイル部分)という複数のセグメントコイルから構成されている。特に固定子鉄心内部を通るコイル辺セグメントのコイルは、スロットに挿入可能で内部にコイルを通す長手方向に貫通した複数の貫通孔を備えた矩形縦長(長軸四角柱体)のプラスチック成形品に収容されている(例えば特許文献2を参照。)。
【0005】
このプラスチック成形品に収容されてモジュール化されたコイルは、スロットコイルと呼ばれている。また、コイルを収容するプラスチック成形品は複数のコイルを束ねると共に固定子鉄心とコイル又はコイルとコイルを電気的に絶縁する機能を有している。プラスチック成形品の板厚は厚ければ厚いほど、固定子鉄心とコイル又はコイルとコイルの絶縁性は高くなる。しかし、プラスチック成形品の板厚はコイルに発生する磁束(磁力線)にとって抵抗となるため、板厚が厚い場合、固定子鉄心を通過する磁力線の本数が少なくなり、固定子鉄心に発生する磁界の強度が弱くなる。その結果、回転子(ロータ)に誘起される誘導電流が小さくなり、その結果、回転子(ロータ)で発生する回転力(トルク)が小さくなる。
【0006】
従って、スロットコイルで使用されるプラスチック成形品の板厚については、所定の絶縁性を満たす範囲内で可能な限り薄い(例えば0.3mm以下)ことが求められている。更に、電動機のトルクは磁束密度とコイル辺の長さと電流に依存するため、プラスチック成形品の全長(高さ)については所定の耐熱性を満たす範囲内で可能な限り長い(例えば200mm以上)ことが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-296815号公報
【特許文献2】特開2008-35687号公報
【特許文献3】特開2019-161964号公報
【特許文献4】特開2018-125924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コイルを収容するプラスチック成形品において、コイルを通すための縦長の貫通孔は断面が矩形の長軸のコアピンによって成形される。プラスチック成形品の板厚が例えば0.3mmで全長が例えば200mmの場合、コアピン同士の間隔(ピッチ)は0.3mmの隙間を空けて200mmの有効長さを有しながら両端支持状態で金型内に並列に配置されることになる。
【0009】
従って、溶融樹脂は0.3mmの隙間かつ長さ200mmのキャビティを射出成形機によって万遍なく充填される必要がある。
【0010】
しかしながら、並列に配置された各コアピンは金型内で両端支持状態であるため、溶融樹脂の射出圧力によってコアピンが一定区間で撓むことになる。コアピンが撓むことにより溶融樹脂の流路が狭くなるか、場合によっては、コアピン同士が接近し過ぎて溶融樹脂が流動せずショートショット(穴空き現象)になる。ショートショットを生じたプラスチック成形品は不良品として処分されることになる。
【0011】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであり、その目的は、内部が複数の隔壁によって区切られた複数の貫通孔を備えた薄肉長軸四角柱体の回転電機のスロットコイル用絶縁体(プラスチック成形品)を安定して成形できるプラスチック成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係るプラスチック成形方法は、内部が複数の隔壁(11)によって区切られたプラスチック成形品(100)の頭部(10)を成形する固定金型(201)と、前記プラスチック成形品(100)の胴部(20)を成形する可動金型(202)と、前記胴部(20)の内部に長手方向に沿った複数の貫通孔(21)を成形する第1挿入物(204)と、前記可動金型(202)に取り付けられ前記第1挿入物(204)を固定するコア金型(203)と、溶融樹脂を射出する射出成形機(207)とを用いて前記プラスチック成形品(100)を成形するプラスチック成形方法であって、前記第1挿入物(204)が固定金型(201)に係止した状態で前記第1挿入物(204)を第1スライド駒(205)によって両側から押し切る工程と、前記第1スライド駒(205)が前記第1挿入物(204)を両側から押し切った状態で前記第1挿入物(204)及び前記第1スライド駒(205)と前記金型(201、202、203)との隙間に溶融樹脂を流し込むことにより、前記胴部(20)に複数の開口(20a)を備えたプラスチック成形中間体(150)を成形する工程とを有することを特徴とする。
【0013】
上記構成では、第1挿入物(204)が第1スライド駒(205)によって両側から押し切られるため、射出圧による第1挿入物(204)の撓みを防止することが可能となる。隣り合う第1挿入物(204)同士のピッチ(間隔)が安定するため、溶融樹脂の流動も安定するようになる。その結果、金型内のキャビティに溶融樹脂が万遍なく最後尾まで充填されるようになる。
【0014】
本発明に係るプラスチック成形方法の第2の特徴は、前記第1挿入物(204)を前記プラスチック成形中間体(150)の貫通孔(21)から引き抜く工程と、前記第1挿入物(204)より断面が小さい第2挿入物(208)を前記プラスチック成形中間体(150)の貫通孔(21)に挿入する工程と、前記第2挿入物(208)が前記貫通孔(21)に挿入した状態で前記開口(20a)を包絡する押切面(209a)を備えた第2スライド駒(209)によって前記開口(20a)を含む近傍を両側から押し切る工程と、前記第2スライド駒(209)を利用して複数の前記開口(20a)に溶融樹脂を流し込むことにより前記開口(20a)を溶融樹脂で塞ぐ工程とを有することである。
【0015】
上記構成では、プラスチック成形中間体(150)の収縮を考慮して貫通孔(21)には、第1挿入物(204)より断面が小さい第2挿入物(208)を挿入して上記第2スライド駒(209)によって開口(20a)を含む近傍を両側から押し切ることとしている。これにより、収縮後の新たな板厚を保持した状態で開口(20a)を溶融樹脂で塞ぐことが可能となる。
【0016】
本発明に係るプラスチック成形方法の第3の特徴は、前記第1スライド駒(205)の表面には凸部(205a)が形成され、前記第1挿入物(204)の前記第1スライド駒(205)に対向する表面には前記凸部(205a)が嵌まる凹部(204a)が形成されていることである。
【0017】
上記構成では、第1スライド駒(205)の凸部(205a)が第1挿入物(204)の凹部(204a)に嵌まることにより、第1挿入物(204)を安定して固定することが可能となる。これにより射出圧による第1挿入物(204)の撓みを好適に防止することが可能となる。
【0018】
本発明に係るプラスチック成形方法の第4の特徴は、前記第2スライド駒(209)は、前記開口(20a)に溶融樹脂を射出するフィルムゲートが前記開口(20a)に連通する高さ位置であって前記第2挿入物(208)の長手方向に直交する横方向から接続可能に構成されていることである。
【0019】
上記構成では、胴部(20)の外周面および内周面に対しそれぞれ面一で開口(20a)に溶融樹脂(20b)を充填することができる。
【0020】
本発明に係るプラスチック成形方法の第5の特徴は、前記射出成形機(207)は樹脂をスクリュによって可塑化する可塑化部(210)と溶融樹脂をプランジャによって射出する射出部(211)とが別個に構成されていることである。
【0021】
上記構成では、スクリュは樹脂を可塑化するために回転運動のみを行う。他方、プランジャはスクリュからの反力を受けることなく往復運動のみを行うため、溶融樹脂の正確な計量と射出圧を確保することができる。
【0022】
本発明に係るプラスチック成形方法の第6の特徴は、前記固定金型(201)は前記射出成形機(207)に接続可能に構成され、前記射出成形機(207)から射出された溶融樹脂が流れる樹脂流路(201c)は前記プラスチック成形品(100)のフランジ部(12)を成形するフランジ部キャビティ(201a)に連通していることである。
【0023】
上記構成では、固定金型(201)のフランジ部キャビティ(201a)は、溶融樹脂の溜まり部となるため、第1挿入物(204)と可動金型(202)との狭い隙間に溶融樹脂を満遍なく最後尾まで安定に流し込むことができるようになる。
【0024】
本発明に係るプラスチック成形方法の第7の特徴は、前記プラスチック成形中間体(150)の前記開口(20a)を塞ぐために使用される樹脂(20b)は、前記胴部(20)の成形に使用される樹脂と同じか又はそれ以上の耐熱性を有することである。
【0025】
上記構成では、封止樹脂(20b)が胴部(20b)から剥がれにくくなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のプラスチック成形方法によれば、内部が複数の隔壁によって区切られた複数の貫通孔を備えた薄肉長軸四角柱体のプラスチック成形品を安定して成形することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のプラスチック成形方法によって成形されるプラスチック成形品を示す斜視図である。
図2】溶融樹脂からプラスチック成形品を成形するプラスチック成形金型を示す要部断面説明図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4図2のB-B断面図である。
図5図2のC-C断面図である。
図6図2のD-D断面図である。
図7】本発明のプラスチック成形方法で使用される射出成形機を示す要部断面説明図である。
図8】プラスチック成形金型によるプラスチック成形品の成形方法を示すフロー図である。
図9】一次成形に係るスライド駒が両側からコアピンを押し切った状態を示す説明図である。
図10】一次成形において成形されるプラスチック成形中間体を示す斜視図である。
図11】プラスチック成形中間体の開口を樹脂で塞ぐ二次成形用プラスチック成形金型を示す要部断面説明図である。
図12】二次成形に係るスライド駒が両側からプラスチック成形中間体の開口近傍を押し切った状態を示す説明図である。
図13】プラスチック中間成形品の開口を異なる樹脂で塞いだプラスチック成形品を示す斜視図である。
図14】ファンゲートを備えた固定金型を示す要部断面説明図である。
図15】溜り部を備えた固定金型を示す要部断面説明図である。
図16】スライド駒の凸部を除く押し切り面について長手方向の長さを短くしたスライド駒を示す説明図である。
図17】スライド駒の凸部を除く押し切り面について長手方向の長さを短くしたスライド駒が組み込まれたプラスチック成形金型によって成形されたプラスチック成形中間体を示す説明図である。
図18】スライド駒において溶融樹脂が通る隙間の面積を増やすことにより流動抵抗を下げるようにしたスライド駒を示す要部断面説明図である。
図19】溶融樹脂が通る隙間の面積を増やすことにより流動抵抗を下げるようにしたスライド駒が組み込まれたプラスチック成形金型によって成形されたプラスチック成形中間体を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明のプラスチック成形方法によって成形されるプラスチック成形品100を示す斜視図である。
このプラスチック成形品100は、フランジ部12の下面12aより上側の頭部10と、下面12aより下側の胴部20とから構成されている。プラスチック成形品100は、例えば回転電機の固定子鉄心のスロット(図示せず)に挿入されて固定子鉄心とコイル又はコイル間を絶縁するスロットコイル用絶縁体として使用される。
【0030】
内部が複数(例えば5個)の隔壁11によって区切られ、複数(例えば6個)の貫通孔21を備えた薄肉長軸四角柱体を成している。板厚tは0.3mm以下であり、望ましくは0.2mmを有し、全長Lは例えば200mm以上を有している。貫通孔21は回転電機のスロットコイル(図示せず)を構成する四角導線(図示せず)を配線するために使用される。
【0031】
また、頭部10の長辺近傍にはフランジ部12がそれぞれ形成されている。このフランジ部12を介してプラスチック成形品100は固定子鉄心のスロット(図示せず)に係止することになる。フランジ部12は樹脂の流動性を考慮してL字形を成している。プラスチック成形品100の材料としては、耐熱性と電気絶縁性を有する熱可塑性合成樹脂であればよく、例えば液晶性全芳香族ポリエステルの熱可塑性合成樹脂を使用することが可能である。
【0032】
また、板厚部分は後述する成形金型200において溶融樹脂が流れ込む空間容積(キャビティ)に相当する。なお、詳細については図3を参照しながら後述するが、フランジ部12は金型内のキャビティに溶融樹脂を最後尾まで万遍なく流し込むための樹脂溜りとしても機能している。以下、このプラスチック成形品100の成形方法について説明する。
【0033】
図2は、溶融樹脂からプラスチック成形品100を成形するプラスチック成形金型200を示す要部断面説明図である。
このプラスチック成形金型200は、コアピン204の先端部が係止してプラスチック成形品100の頭部10を成形する固定金型201と、内部をコアピン204が貫通して固定金型201に接合してプラスチック成形品100の胴部20を成形する可動金型202と、コアピン204を一体に固定するコア金型203と、プラスチック成形品100の貫通孔21を成形するコアピン204と、コアピン204を両側から押し切るスライド駒205と、スライド駒205を所定の力で押す油圧シリンダ206と、金型と金型との隙間に溶融樹脂を射出する射出成形機207とを具備して構成される。以下、各構成について説明する。
【0034】
図3図2のA-A断面図である。図3に示されるように固定金型201は、プラスチック成形品100のフランジ部12(図1)を形成するフランジ部キャビティ201aと、コアピン204(斜線部分)の先端部が係止するコアピン係止キャビティ201bと、プラスチック成形品100の頭部10を形成する頭部キャビティ201cと、溶融樹脂をフランジ部キャビティ201aに供給する樹脂供給流路201cとを備えている。従って、頭部キャビティ201cからコアピン204(斜線部分)を除いた空間がプラスチック成形品100の頭部10の板厚部(板厚tの部分)を形成することになる。
【0035】
図4図2のB-B断面図である。図4に示されるように可動金型202は、プラスチック成形品100の胴部10を成形する胴部キャビティ202aを備えている。従って、胴部キャビティ202aからコアピン204(斜線部分)を除いた空間がプラスチック成形品100の胴部20の板厚部分(板厚tの部分)を形成することになる。また、可動金型202は移動機構(図示せず)に接続され、水平方向に往復移動可能に構成されている。
【0036】
図5図2のC-C断面図である。図5(a)はスライド駒205がコアピン204から分離した状態を表している。図5(b)はスライド駒205がコアピン204を押し切っている状態を表している。
【0037】
図5(a)に示されるようにスライド駒205は、コアピン204に対向する面に凸部205aが形成されている。この凸部205aはコアピン204に形成された凹部204aに嵌合するように構成されている。
【0038】
凸部205aの形状については、例えばR形状(半球状)、角柱形(四角柱状)、丸柱形(円柱状、楕円柱状)、角錐形(四角錐状)、円錐形または楔形状を採用することが可能であるが、これらの形状に限定されることはない。また、スライド駒205の可動金型202上の取付け位置については、コアピン204の長手方向(軸方向)の中央近傍を押し切ることができる位置にスライド駒205は取り付けられている。なお、コアピン204の凹部204aの形状については凸部205aの形状から一意的にそれぞれ決定される。
【0039】
また、コアピン204の凹部204aの取付け位置については、例えばスライド駒205の凸部205aに対向する上下2箇所または左右2箇所に形成されている。なお、コアピン204のスライド駒205の凸部205aに対向しない胴部の断面形状は、中実四角形を成している。
【0040】
図5(b)に示されるように、スライド駒205の凸部205aがコアピン204の凹部204aに嵌合することにより、コアピン204はスライド駒205によって上下方向から強固に固定されることになる。これにより、コアピン204は溶融樹脂の射出圧によって撓みにくくなり、溶融樹脂が最後尾まで十分に流れきることができるようになる。
【0041】
なお、可動金型202の胴部キャビティ202a(図4)のうちで、コアピン204及びスライド駒205との重複部分に溶融樹脂は流れていかない。従って、コアピン204との重複部分には貫通孔21(図1)が形成される一方、スライド駒205との重複部分には開口20a(図10)が形成される。この開口20a(図10)においては導線が露出することになるため、開口20a(図10)を樹脂で塞ぐ必要がある。この開口20a(図10)を樹脂で塞ぐ工程については図11から図13を参照しながら後述する。
【0042】
図6図2のD-D断面図である。図6に示されるようにコア金型203は、コアピン204を固定するためのコアピン固定キャビティ202aを備えている。なお、コアピン固定キャビティ202aを除いたコア金型203の可動金型202との接合面はプラスチック成形品100の胴部20の下端面を成形する。
【0043】
図7は、本発明のプラスチック成形方法で使用される射出成形機207を示す要部断面説明図である。
この射出成形機207は、樹脂を可塑化する可塑化部210と、可塑化された溶融樹脂を射出する射出部211を別個独立に備えている。従来の射出成形機は、スクリュで樹脂を可塑化しながらスクリュで可塑化された溶融樹脂を射出している。つまり、スクリュは回転運動を行いながら前進運動を行う。そのため、スクリュとシリンダ内周面との隙間から溶融樹脂の一部が射出方向とは逆方向に流れ出て、この溶融樹脂の逆流はスクリュを押し下げる力となる。このスクリュを押し下げる力は、スクリュによる溶融樹脂の射出を妨げる方向に作用することになるが、その力の大きさを定量的に予測することは困難である。その結果、スクリュを押す荷重が安定しなくなり、溶融樹脂の充填精度を悪化させる。また、このスクリュを押し下げる力はスクリュの不具合の原因ともなる。
【0044】
しかしながら、プラスチック成形金型200で使用される射出成形機207では、可塑化部210と射出部211が別機構で構成されている。そのため、スクリュ210aは樹脂を可塑化するために回転運動のみを行う。
【0045】
他方、溶融樹脂の射出はプランジャ211aによって行われる。プランジャ211aは射出シリンダ211b内を往復運動するのみで回転運動は行わない。また、プランジャ211aの表面にねじ山等の突起物が螺旋状に形成されていないため、プランジャ211aの表面にOリング等のシール材を取り付けることが可能となる。これにより、プランジャ211aと射出シリンダ211bとの隙間から溶融樹脂が逆方向に流れなくなる。つまり、溶融樹脂によるプランジャ211aを押し下げる力は発生しなくなる。その結果、アクチュエータ211cによるプランジャ211aを押す荷重が安定し、溶融樹脂の射出量を押す荷重によって好適に制御することが可能となる。これにより、溶融樹脂の充填精度が従来の射出成形機に比べ大幅に向上するようになる。
【0046】
以下に、上記プラスチック成形金型200を使用したプラスチック成形品100の成形方法について説明する。
【0047】
図8は、プラスチック成形金型200によるプラスチック成形品100の成形方法を示すフロー図である。
先ずプロセスP1では、コア金型203にコアピン204を取り付ける。
【0048】
次にプロセスP2では、コアピン204が取り付けられたコア金型203を可動金型に取り付ける。
【0049】
次にプロセスP3では、可動金型202を固定金型201に接合する。
【0050】
次にプロセスP4では、スライド駒205で両側からコアピン204を押し切る。図9は、スライド駒205が両側からコアピン204を押し切った状態を表している。
【0051】
次にプロセスP5では、射出成形機207で金型内に溶融樹脂を充填する。
【0052】
次にプロセスP6では、スライド駒205をコアピン204から分離する。
【0053】
図10は、プロセスP1からプロセスP6の一次成形において成形されるプラスチック成形中間体150を示す説明図である。スライド駒205が両側からコアピン204を押し切ったことにより、胴部20の幅広側面に片側について6個、両側で合計12個の開口20aが形成される。12個の開口20aは、プロセスP7からプロセスP14の二次成形において樹脂で塞がれる。以下、12個の開口20aを樹脂で塞ぐ二次成形工程について説明する。
【0054】
図8に戻って、プロセスP7ではコア金型203を可動金型202から分離する。
【0055】
次にプロセスP8では、コア金型203のコアピン204を二次成形用コアピン208に交換する。二次成形用コアピン208は、プラスチック成形中間体150の収縮度に応じて断面がコアピン204の断面に比べ小さくなっている。
【0056】
次にプロセスP9では、二次成形用コアピン208が取り付けられたコア金型203を可動金型202に再度取り付ける。
【0057】
次にプロセスP10では、スライド駒205に代えて二次成形用スライド駒209を可動金型202に取り付ける。
【0058】
図11は、プラスチック成形中間体150の開口20aを樹脂で塞ぐ二次成形用プラスチック成形金型200Aを示す要部断面説明図である。
このプラスチック成形金型200Aは、上記コアピン204とスライド駒205が二次成形用コアピン208と二次成形用スライド駒209にそれぞれ取り替えられている。
【0059】
この二次成形用スライド駒209は、胴部20の開口20aを含む近傍を押し切るための押切面209aを有している。二次成形用スライド駒209は、溶融樹脂を開口20aに射出するフィルムゲート(図示せず)が二次成形用コアピン208の長手方向に直交する横方向から接続可能に構成されている。従って、下記プロセスP12において開口20aを樹脂で塞ぐ際は、フィルムゲート(図示せず)が二次成形用スライド駒209に接続され、フィルムゲート(図示せず)から開口20aに対し溶融樹脂を射出することになる。各フィルムゲート(図示せず)には射出成形機207から溶融樹脂が供給されるようになっている。
【0060】
図8に戻って、プロセスP11では二次成形用スライド駒209で両側からプラスチック成形中間体150の開口20aを含む近傍を押し切る。図12は、二次成形用スライド駒209が両側からプラスチック成形中間体150の開口20aを含む近傍を押し切った状態を表している。
【0061】
次にプロセスP12では、プラスチック成形中間体150の開口20aを溶融樹脂で塞ぐ。使用する樹脂については、耐熱性が同等かそれ以上であればプラスチック成形中間体150で使用された樹脂と異なっていても良い。
【0062】
次にプロセスP13では、二次成形用スライド駒209を分離する。
【0063】
次にプロセスP14では、可動金型202を固定金型201から分離する。図13は、プラスチック中間成形品150の開口20aを異なる樹脂(封止樹脂20b)で塞いだプラスチック成形品100Aを示す斜視図である。封止樹脂20bは、胴部20の樹脂と同じか又はそれ以上の耐熱性および絶縁性を有している。なお、上記プラスチック成形品100は、プラスチック成形中間体150の開口20aを胴部20の樹脂と同じ樹脂で塞いだものである。
【0064】
上記の通り、本発明のプラスチック成形方法によれば、内部が複数の隔壁11によって区切られた複数の貫通孔21を備えた例えば板厚が0.3mm以下で長さが200mm以上である薄肉長軸四角柱体のプラスチック成形品を安定して成形することが可能となる。
【0065】
以上、図面を参照しながら本発明のプラスチック成形方法及びその方法によって成形されるプラスチック成形品について説明してきたが、本発明は上記のみに限定されることはない。すなわち、本発明の技術的範囲内において種々の変更・修正を加えることが可能である。例えば、コアピン204を両側から押し切るスライド駒205の取付け位置および個数については、コアピン204の中央近傍のみを両側から押し切る形態だけでなく、プラスチック成形品100,100Aの全長Lに応じてコアピン204の複数箇所を所定の間隔ごとに両側から押し切るようにしても良い。
【0066】
また、スライド駒205の凸部205aについては、6個の凸部205aがコアピン204の長手方向に直交する方向に沿って一列に配置されているが、複数列に配置されるようにしても良い。
【0067】
また、固定金型201のフランジ部キャビティ201aに溶融樹脂を供給するゲートについては、図3に示されるゲート以外にも種々のゲートを使用することができる。以下にファンゲートを使用した固定金型201の変形例について説明する。
【0068】
図14は、ファンゲート201dを備えた固定金型201Aを示す要部断面説明図である。図14(a)は図2のA-A切断位置における断面図である。図14(b)は図14(a)のE-E断面図である。
【0069】
図14(a)に示されるように、溶融樹脂はファンゲート201dを通ってフランジ部キャビティ201aの長辺に供給されるように構成されている。特に、ファンゲート201dの内部に円柱形の制御ピン201eが垂直に形成されている。制御ピン201eは、フランジ部キャビティ201aの長辺を底辺とする二等辺三角形内の垂直二等分線(対称軸)上の適切な位置に形成されている。本実施形態では、垂直二等分線(対称軸)上の、例えば中点近傍に制御ピン201eは形成されている。樹脂供給流路201cから射出された溶融樹脂は、この制御ピン201eによって制御ピン201eの左右方向に均等分されることになる。
【0070】
なお、図14(b)に示されるように、ファンゲート201dの断面形状はフランジ部キャビティ201aに向かって高さが減少する絞り構造を成している。一方、図14(a)に示されるように、ファンゲート201dの平面形状はフランジ部キャビティ201aに向かって幅が拡大する拡幅構造を成している。そのため、制御ピン201eから横方向に離れるに従って流動抵抗が小さくなる。その結果、外側の溶融樹脂の移動距離は内側よりも長くなるが、外側の溶融樹脂の流速は内側より速くなる。逆に、内側の溶融樹脂の移動距離は外側よりも短くなるが、内側の溶融樹脂の流速は外側より遅くなる。その結果、外側と内側の溶融樹脂は殆ど同じタイミングでフランジ部キャビティ201aに到達することになる。つまり、樹脂供給流路201cから射出された溶融樹脂は、フランジ部キャビティ201aの長辺に沿って殆ど同じタイミングで均等に供給されることになる。
【0071】
これにより、コアピン204間の狭い各隙間に溶融樹脂が殆ど同じタイミングで均等に入っていき、溶融樹脂が万遍なく最後尾まで安定に充填されるようになる。この溶融樹脂の時間差無しの均等流入は、コアピン204が流動から受ける負荷を大幅に軽減することにもなる。
【0072】
ところで、制御ピン201eに衝突した溶融樹脂の流動は渦を発生させ、フランジ部キャビティ201aに流入する溶融樹脂は乱流となる場合がある。この場合、コアピン204間の狭い隙間に溶融樹脂が均等に入っていかなくなる。以下では、ファンゲート201dの後段でフランジ部キャビティ201aの前段に、溶融樹脂の乱流を鎮める(沈静化させる)溜り部(緩衝部)を設けた固定金型201Bについて説明する。
【0073】
図15は、溜り部20fを備えた固定金型201Bを示す要部断面説明図である。図15(a)は図2のA-A切断位置における断面図である。図15(b)は図15(a)のE-E断面図である。
【0074】
この固定金型201Bでは、ファンゲート201dの出口に連続して溜り部201fおよびフィルムゲート201gがそれぞれ設けられている。溜り部201fは、例えば断面が矩形で長軸の箱形を成している。軸方向(長手方向)の長さはフランジ部キャビティ201aの長辺より長くなっている。溜り部201fの出口には、高さが一定のフィルムゲート201gが溜り部201fに一体に形成されている。
【0075】
従って、ファンゲート201dから流出する溶融樹脂が乱流となる場合、溶融樹脂は溜り部201fに流入・膨張して沈静化されフィルムゲート201gによって一定厚み(高さ)の層流に整流されてフランジ部キャビティ201aの長辺に供給されることになる。これにより、コアピン204間の狭い各隙間に層流化した(流れが安定した)溶融樹脂が殆ど同じタイミングで均等に入っていき、溶融樹脂が万遍なく最後尾まで安定に充填されるようになる。この溶融樹脂の時間差無しの均等・安定流入は、コアピン204が流動から受ける負荷を大幅に軽減することにもなる。
【0076】
ところで、スライド駒205の凸部205aとコアピン204の凹部204aとの凹凸嵌合による押し切りは、コアピン204の撓みを好適に抑制しコアピン204とコアピン204とのピッチ(間隔)を安定させる撓み抑制手段となる反面、溶融樹脂の流動に対し流動を妨げる流動抵抗にもなり得る。また、スライド駒205のコアピン204に対向する表面において凸部205aを除く表面については、コアピン204の撓み抑制に対しあまり寄与していない。
【0077】
従って、スライド駒205において撓み抑制機能は維持したまま溶融樹脂の流れを出来るだけ阻害しないようにするためには、例えば(1)スライド駒205の凸部205aを除く押し切り面について長手方向の長さを短くして溶融樹脂が通過するスライド駒の長さを短くすること、(2)スライド駒205において溶融樹脂が通る隙間の面積を増やすことが考えられる。以下に、スライド駒205の凸部205aを除く押し切り面について長手方向の長さを短くしたスライド駒205’について説明する。
【0078】
図16は、スライド駒205の凸部205aを除く押し切り面について長手方向の長さを短くしたスライド駒205’を示す説明図である。図16(a)は比較例として上記スライド駒205のコアピン204に対する押し切り面を表している。図16(b)は上記スライド駒205’のコアピン204に対する押し切り面を表している。
【0079】
図16(b)に示されるように、スライド駒205’では凸部205aの押し切り面はスライド駒205と同じのまま、凸部205aを除く押し切り面について長手方向の長さL”をスライド駒205より短く(L”<L)して溶融樹脂に対する流動抵抗を下げるようにしている。
【0080】
図17は、スライド駒205’が組み込まれたプラスチック成形金型によって成形されたプラスチック成形中間体150Aを示す説明図である。スライド駒205’に対応した開口20aは相互にそれぞれが横方向に連通した1つの開口を形成している。従って、胴部20の上下2つの開口20aを封止する樹脂の注入については、1つのゲートによって各開口20aに対し横方向から射出されることになる。次に、スライド駒205において溶融樹脂が流動する隙間を増やすことにより流動抵抗を下げるようにしたスライド駒205”について説明する。
【0081】
図18は、スライド駒205において溶融樹脂が通る隙間の面積を増やすことにより流動抵抗を下げるようにしたスライド駒205”を示す要部断面説明図である。図18(a)は比較例として上記スライド駒205がコアピン204を両側から押し切った状態を表している。図18(b)は上記スライド駒205”がコアピン204を両側から押し切った状態を表している。
【0082】
図18(b)に示されるように、スライド駒205”では凸部205a”の下面205bからの突出高さH”をスライド駒205より高く(H”>H)することにより、6連の凸部205a”が両方からコアピン204を押し切るようになる(凸部205a”による単独押切り)。その結果、スライド駒205”の下面205bとコアピン204との間に隙間が新たに生じることになる。それに加えて、コアピン204とコアピン204との隙間についても増えることになる。これにより、スライド駒205”において溶融樹脂が通る隙間の面積がスライド駒205に比べ大幅に増えることになるため、溶融樹脂に対する流動抵抗がスライド駒205に比べ大幅に低下し、溶融樹脂が最後尾まで充填されるようになる。
【0083】
図19は、スライド駒205”が組み込まれたプラスチック成形金型によって成形されたプラスチック成形中間体150Bを示す説明図である。スライド駒205”の凸部205a”に対応した開口20aは、それぞれが独立した開口を形成している。従って、胴部20の片側6個の開口20aを封止する樹脂の注入については、6本のゲートを有するタフゲートによって各開口20aに対し垂直方向から射出されることになる。
【符号の説明】
【0084】
10 頭部
11 隔壁
12 フランジ部
20 胴部
20a 開口
20b 封止樹脂
21 貫通孔
100 プラスチック成形品
100A プラスチック成形品
150 プラスチック成形中間体
200 プラスチック成形金型
200A プラスチック成形金型
201 固定金型
201A 固定金型A
201B 固定金型B
201a フランジ部キャビティ
201b コアピン係止キャビティ
201c 樹脂供給流路
201d ファンゲート
201e 制御ピン
201f 溜り部
201g フィルムゲート
202 可動金型
202a 胴部キャビティ
203 コア金型
203a コアピン固定キャビティ
204 コアピン(第1挿入物)
204a 凹部
205 スライド駒(第1スライド駒)
205a 凸部
206 油圧シリンダ
207 射出成形機
208 二次成形用コアピン(第2挿入物)
209 二次成形用スライド駒(第2スライド駒)
209a 押切面
210 可塑化部
210a スクリュ
210b 可塑化シリンダ
210c 可塑化モータ
211 射出部
211a プランジャ
211b 射出シリンダ
211c アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19