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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167137
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】疑似環境生成装置
(51)【国際特許分類】
   E04F 19/00 20060101AFI20221027BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20221027BHJP
   H04N 5/66 20060101ALI20221027BHJP
   F04D 25/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
E04F19/00 D
G09F9/00 312
H04N5/66 Z
F04D25/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072720
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】近藤 恒佑
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 弥
【テーマコード(参考)】
3H130
5C058
5G435
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB02
3H130AB26
3H130AB60
3H130AC25
3H130BA69
5C058AA06
5C058AA12
5C058AB06
5C058BA23
5C058BA35
5C058EA02
5G435AA00
5G435BB05
5G435BB12
5G435EE13
5G435EE18
5G435EE49
(57)【要約】
【課題】窓のない室内環境において利用者が自然に感じる刺激を生成することができる疑似環境生成装置を提供する。
【解決手段】壁面に設けられた窓枠と、前記窓枠との間に開口を形成する開状態と、前記窓枠内を閉塞し、前記窓枠との間に開口が形成されない閉状態と、を取り得るように前記窓枠に対して移動可能とされた移動部材と、前記窓枠内に疑似環境を示す画像を表示する表示装置と、前記疑似環境に応じた刺激を生成する刺激生成部と、前記移動部材の開度に応じて前記刺激生成部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする、疑似環境生成装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に設けられた窓枠と、
前記窓枠との間に開口を形成する開状態と、前記窓枠内を閉塞し、前記窓枠との間に開口が形成されない閉状態と、を取り得るように前記窓枠に対して移動可能とされた移動部材と、
前記窓枠内に疑似環境を示す画像を表示する表示装置と、
前記疑似環境に応じた刺激を生成する刺激生成部と、
前記移動部材の開度に応じて前記刺激生成部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする、
疑似環境生成装置。
【請求項2】
前記表示装置は、室外又は室内の疑似的な風景を示す前記画像を表示し、
前記制御部は、前記刺激生成部を制御して前記風景に関連する光、音、芳香、気流、湿度、熱放射を含む前記刺激のうち1つ以上を前記開度に応じた出力量において出力する、
請求項1に記載の疑似環境生成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記開度に応じて前記出力量を段階的に調整する、
請求項2に記載の疑似環境生成装置。
【請求項4】
前記制御部は、日時に基づいて前記出力量を変動させる、
請求項2又は3に記載の疑似環境生成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記刺激の内容に応じた前記出力量を個別に調整する、
請求項2から4のうちいずれか1項に記載の疑似環境生成装置。
【請求項6】
前記刺激生成部は、前記移動部材の表面に貼付された熱放射装置を備え、
前記制御部は、前記疑似環境に含まれる疑似熱源から放射され得る前記熱放射の前記出力量を算出し、算出結果に基づいて前記熱放射装置を制御し、前記熱放射の前記出力量を調整する、
請求項2から5のうちいずれか1項に記載の疑似環境生成装置。
【請求項7】
前記刺激生成部は、前記窓枠に設けられた送風装置を備え、
前記制御部は、前記疑似環境の内容に応じて発生し得る前記気流の前記出力量を算出し、算出結果に基づいて前記送風装置を制御して前記窓枠と前記移動部材の間の前記開口から流入する前記気流の前記出力量を調整する、
請求項2から6のうちいずれか1項に記載の疑似環境生成装置。
【請求項8】
前記刺激生成部は、前記窓枠に設けられた芳香発生装置を備え、
前記制御部は、前記疑似環境の内容に応じて発生し得る前記芳香の前記出力量を算出し、算出結果に基づいて前記芳香発生装置を制御し、前記窓枠と前記移動部材の間の前記開口から流入する前記芳香の前記出力量を調整する、
請求項2から7のうちいずれか1項に記載の疑似環境生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内に設けられた疑似窓により疑似環境を生成することができる疑似環境生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスや病院などにおいて、窓の設置が困難な部屋・空間に対し、リフレッシュや外部とのつながりを感じさせるために、疑似窓が設置される場合がある。疑似窓とは、窓のない環境において、窓の代わりとして疑似的に窓のように見せているものの総称を言う(非特許文献1参照)。疑似窓の具体例として、窓枠と風景が描かれたポスターや、磨りガラス越しに照明をあてて自然光を採光した状態を模したものなどがある(非特許文献1参照)。
【0003】
近年、ディスプレイ装置の表示画像が高精細に表示されるため、疑似窓の表示に利用することが研究されている。更に疑似窓の表示に連動して、表示画像の内容に合わせた音、気流、香りなどの環境因子に基づく刺激を利用者に与え、より現実的な窓に近づけることが研究されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-060133号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】三木光範、 佐藤輝希; 疑似窓の有効性に関する研究、 日本建築学会・情報システム技術委員会 第35回情報・システム・利用・技術シンポジウム2012、 H34、 p.247-250、 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
疑似窓において上記の環境因子を制御する場合、利用者にとっての操作方法が実際の窓に対する行動とかけ離れている場合がある。例えば、特許文献1に記載された技術によれば、利用者の位置情報をカメラで認識して自動的に気流が供給される方法が提案されている。この他、スマートフォンにインストールされたアプリケーションやリモコンなど外部入力により制御することも研究されている。
【0007】
しかし、疑似窓をより自然な窓らしく感じさせるため、疑似窓の制御方法は、実際の窓に対して利用者が行う行動や動作と乖離するものではないことが望ましい。また、不特定多数の人が立ち寄る空間に自動制御に基づく疑似窓を設置した場合、気流を望まない利用者にも気流を曝露させる虞がある。上記の様に疑似窓において利用者に与える刺激を発生させる装置を追加した場合、通常の窓であれば許容され得る刺激であっても、人為的に後付けされた疑似窓に関しては、利用者が不満を感じる虞がある。
【0008】
本発明は、窓のない室内環境において利用者が自然に感じる刺激を生成することができる疑似環境生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、壁面に設けられた窓枠と、前記窓枠との間に開口を形成する開状態と、前記窓枠内を閉塞し、前記窓枠との間に開口が形成されない閉状態閉状態と、を取り得るように前記窓枠に対して移動可能とされた移動部材と、前記窓枠内に疑似環境を示す画像を表示する表示装置と、前記疑似環境に応じた刺激を生成する刺激生成部と、前記移動部材の開度に応じて前記刺激生成部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする疑似環境生成装置である。
【0010】
本発明によれば、窓の無い室内環境において、窓から見える風景を疑似的に利用者に提供すると共に風景に応じた刺激を提供することで、利用者が疑似環境をより自然に感じることができる。
【0011】
また、本発明は、前記表示装置は、室外又は室内の疑似的な風景を示す前記画像を表示し、前記制御部は、前記刺激生成部を制御して前記風景に関連する光、音、芳香、気流、湿度、熱放射を含む前記刺激のうち1つ以上を前記開度に応じた出力量において出力してもよい。
【0012】
本発明によれば、実際の窓から得られる様々な刺激を疑似的に窓の開度に応じた出力量において出力することで、利用者に対して自然な雰囲気を提供することができる。
【0013】
また、本発明は、前記制御部は、前記開度に応じて前記出力量を段階的に調整してもよい。
【0014】
本発明によれば、実際の窓から得られる様々な刺激を窓の開度に応じて出力するため、利用者に刺激を自然に感じさせることができる。
【0015】
また、本発明は、前記制御部は、日時に基づいて前記出力量を変動させてもよい。
【0016】
本発明によれば、時刻、季節に応じて刺激の出力が変更されるため、利用者に刺激を自然に感じさせることができる。
【0017】
また、本発明は、前記制御部は、前記刺激の内容に応じた前記出力量を個別に調整してもよい。
【0018】
本発明によれば、刺激の内容に応じて出力が変更されるため、利用者に刺激を自然に感じさせることができる。
【0019】
また、本発明は、前記刺激生成部は、前記移動部材の表面に貼付された熱放射装置を備え、前記制御部は、前記疑似環境に含まれる疑似熱源から放射され得る前記熱放射の前記出力量を算出し、算出結果に基づいて前記熱放射装置を制御し、前記熱放射の前記出力量を調整してもよい。
【0020】
本発明によれば、自然光や風景に含まれる熱源から放射される熱放射を再現することで、利用者に刺激を自然に感じさせることができる。
【0021】
また、本発明は、前記刺激生成部は、前記窓枠に設けられた送風装置を備え、前記制御部は、前記疑似環境の内容に応じて発生し得る前記気流の前記出力量を算出し、算出結果に基づいて前記送風装置を制御して前記窓枠と戸の間の開口から流入する前記気流の前記出力量を調整してもよい。
【0022】
本発明によれば、実際の窓があれば流入し得る気流を窓の開度に応じて生成することができ、利用者に刺激を自然に感じさせることができる。
【0023】
また、本発明は、前記刺激生成部は、前記窓枠に設けられた芳香発生装置を備え、前記制御部は、前記疑似環境の内容に応じて発生し得る前記芳香の前記出力量を算出し、算出結果に基づいて前記芳香発生装置を制御し、前記窓枠と戸の間の開口から流入する前記芳香の前記出力量を調整してもよい。
【0024】
本発明によれば、実際の窓があれば流入し得る芳香を窓の開度に応じて生成することができ、利用者に刺激を自然に感じさせることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、窓のない室内環境において利用者が自然に感じる刺激を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る疑似環境生成装置の構成を示す図である。
図2】疑似環境生成装置の構成を示すブロック図である。
図3】疑似環境生成装置の制御方法を示す図である。
図4】疑似環境生成装置が適用された室内の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る疑似環境生成装置の実施形態について説明する。
【0028】
図1に示されるように、疑似環境生成装置1は、例えば、採光や換気をするための開口が設けられていない壁面Wに設けられ、屋外につながる開口に似せた疑似窓2を構成する。疑似環境生成装置1は、疑似窓2により採光や換気をするための窓が設けられているかのような疑似環境を提供するものである。この疑似環境は、疑似窓2に表示される疑似的な環境の画像と、疑似環境の内容に関連する刺激とに基づく雰囲気が提供されるものである。
【0029】
疑似環境生成装置1は、例えば、壁面Wに固定された窓枠3と、窓枠3に対して移動可能とされ、窓枠3との間に開口を形成、又は窓枠3との間の開口を閉塞する戸(移動部材、窓ともいう)4と、を備える。窓枠3は、太陽光や風雨に晒されることがないため、必ずしも耐候性を有する金属により形成されていなくてもよく、例えば、軽量な樹脂や木材で形成してもよい。本実施例では、戸4は、窓枠3に設けられたレールで窓枠3に囲まれた空間内をスライド移動することにより、窓枠3との間に開口を形成する開状態と、窓枠3内を閉塞し、窓枠3との間に開口が形成されない閉状態と、を取り得るように取り付けられている。なお戸4は、窓枠3に対して軸を中心として回動することにより、窓枠3との間に開口を形成する開状態と、窓枠3内を閉塞し、窓枠3との間に開口が形成されない閉状態と、を取り得るように取り付けられていてもよい。戸4は、ガラス戸を模して形成されている。戸4は、戸枠4Aと、戸枠4A内に設けられた板材4Bと、を備える。
【0030】
板材4Bは、窓ガラスを模して形成されている。板材4Bは、透明なものの他、少なくとも透光性を有するものであればよく、太陽光や風雨に晒されることがないため、必ずしも耐候性を有するガラス板により形成されていなくてもよい。板材4Bは、アクリル板やポリカーボネート板など、破損し難い材質により形成されていることが望ましい。戸枠4Aは、板材4Bを補強するために設けられた、板材4Bの周囲を取り囲む部材である。戸枠4Aは、太陽光や風雨に晒されることがないため、必ずしも耐候性を有する金属により形成されていなくてもよく、例えば、軽量な樹脂や木材で形成してもよい。疑似窓2は、戸4を手動で移動させることにより開閉するものとしてもよいし、操作部10に入力された操作に基づいて自動的に戸4を移動させ、開閉するものとしてもよい。
【0031】
図2に示されるように、疑似環境生成装置1は、例えば、窓枠3と、窓枠3に囲まれた疑似窓2に疑似環境を示す画像を表示する表示装置7と、疑似環境の内容に関連する刺激を生成する刺激生成部11と、戸4の開度に応じて刺激生成部11を制御する制御部9と、を備える。ここで、戸4(移動部材)の開度とは、窓枠3との間に形成された開口の大きさに対応した指標である。戸4の開度は、窓枠3と戸4との間に形成された開口の大きさが大きくなれば、大きくなる。具体的には、戸4が窓枠3内を閉塞し、窓枠3と戸4との間に開口が形成されない閉状態が開度0%であり、戸4が窓枠3に囲まれた空間内を移動させられ、窓枠3との間に開口が形成された開状態のうち、開口の大きさが最大となる状態が開度100%である。
【0032】
窓枠3には、例えば、戸4の開度を検出する検出部6が設けられている。検出部6は、例えば、戸4の位置を検出する位置センサである。検出部6のセンサは、戸4の開度が検出可能であればどのようなセンサが用いられてもよい。窓枠3内には、表示装置7により画像Mが表示される。画像Mは、操作部10に入力された操作に基づいて表示されてもよいし、室内の照明装置のオン状態に連動して表示されてもよい。
【0033】
表示装置7は、例えば、室外又は室内の疑似的な風景を示す画像Mを表示する。表示装置7は、例えば、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等のディスプレイ装置が窓枠3内に設けられ、板材4Bを介して、もしくは戸4と窓枠3との間の開口から光が伝わる疑似窓2として機能するように構成されている。表示装置7は、窓枠3内に立体画像を表示するものであってもよい。表示装置7は、窓枠3内に画像Mを投射する投射装置により構成されていてもよい。表示装置7は、利用者の位置を検出し、利用者から見た俯角に基づいて画像Mの視点を変更してもよい。表示装置7は、車窓から見える風景等、外部環境が変化する画像M(動画)を表示してもよい。表示装置7は、操作部10において受け付けられた操作に基づいて画像Mを変更してもよい。表示装置7は、窓枠3内に画像Mを表示可能であればどのような装置が用いられてもよい。窓枠3内に表示される疑似環境の画像Mに連動して、刺激生成部11により疑似環境の内容に関連する刺激が生成される。
【0034】
刺激生成部11は、例えば、疑似的な風景の画像Mに関連する光、音、芳香(におい)、気流、湿度、熱放射を含む刺激のうち1つ以上を戸4の開度に応じた出力量において出力する。刺激生成部11は、例えば、光の刺激を生成する照明装置12を備える。照明装置12は、例えば、窓枠3に設けられている。照明装置12は、例えば、画像Mでは再現できない日照方向を再現する。照明装置12は、制御部9により制御され、日時に応じた日照方向に照明の照射方向を調整して照射する。照明装置12は、例えば、自然光を再現したLED光源(不図示)と、照射方向を調整するアクチュエータ(不図示)を備える。
【0035】
照明装置12は、時刻に応じて光源の色を変更し、日の出前後、日中、日の入り前後の自然光を再現してもよい。これにより、照明装置12は、時刻、季節に応じた自然光を再現することができる。照明装置12は、太陽光の他、月明り等の自然光を再現してもよい。表示装置7は、照明装置12に連動して日時に応じて自然光の照射方向を変化させた画像Mを表示する。
【0036】
刺激生成部11は、例えば、熱放射による刺激を生じさせる熱放射装置13を備える。熱放射装置13は、板材4Bの表面に貼付された透明なフィルムヒータである。熱放射装置13は、窓枠3内の領域に貼付されていてもよい。熱放射装置13の貼付対象の板材4Bは、耐熱材質により形成されていることが望ましい。熱放射装置13は、通電により発熱し、風景の画像Mにおける日射により暖められた窓からの放射熱を再現する。熱放射装置13は、例えば、画像Mに室内の暖炉等の熱を放射する熱源が表示されている場合、暖炉の熱放射を再現してもよい。熱放射装置13は、赤外線を生じさせるヒータであってもよい。
【0037】
刺激生成部11は、例えば、音による刺激を生じさせるスピーカ14を備える。スピーカ14は、例えば窓枠3内に設けられており、画像Mにおける音声発生源から発生する音を再現する。スピーカ14は、例えば、風雨、樹木、植物、昆虫、水流、波、動物、人、車両、人工物等から発生する音を再現する。なおスピーカ14は、板材4Bを振動板として音を発生させるものであってもよい。
【0038】
刺激生成部11は、窓枠3に設けられた芳香発生装置15を備える。芳香発生装置15は、画像Mにおける芳香発生源から発生する芳香(におい)を再現する。芳香発生装置15は、例えば、樹木、草花、料理等から発生する芳香を再現する。芳香発生装置15は、例えば、芳香源となる芳香液を貯留する容器(不図示)と、容器から射出される芳香液を霧化する霧化装置(不図示)を備える。
【0039】
刺激生成部11は、例えば、窓枠3に設けられた送風装置16を備える。送風装置16は、戸4の開度に応じて流入する気流を再現する。送風装置16は、例えば、モータにより駆動される複数のファン(不図示)を備える。ファンは、例えば、窓枠3の上下一対或いは左右一対、或いは上下左右の枠から枠内に向けて気流を生成し、窓枠3から室内方向に向かう気流を生成する。ファンは、窓枠3の下部に設けられ、風向調整装置(不図示)に基づいて風向を調整してもよい。
【0040】
刺激生成部11は、例えば、窓枠3に設けられた加湿装置17を備える。加湿装置17は、例えば、送風装置16と連動し、戸4から送風される空気の湿度を調整し、疑似環境の湿度を再現する。送風装置16及び加湿装置17は、室内とは異なる温湿度の空気を供給し、あたかも外部からの冷気・暖気が流入してきた状態を再現する。加湿装置17は、例えば、水を貯留する容器(不図示)と、容器から滴下される水を霧化する霧化装置(不図示)を備える。上述した刺激生成部11の1つ以上の各構成の出力量は、制御部9により制御される。
【0041】
図3に示されるように、制御部9は、操作部10において操作された操作内容に基づいて、記憶部8に予め記憶されたプログラム及びデータに基づいて刺激生成部11の出力量を調整する。制御部9は、必ずしも全ての刺激生成部11の各構成を制御しなくてもよい。制御部9は、例えば、戸4の開度に応じて刺激生成部11の出力量を個別に段階的に調整する。制御部9は、刺激の内容に応じた出力量を個別に調整する。
【0042】
制御部9は、例えば、音声、気流、芳香の刺激に関して、刺激生成部11を制御して、戸4が閉状態である開度0%における出力量を0%に調整し、開度X%における出力量をX%に調整し、開度100%における出力量を100%に調整する。制御部9は、戸4の開度の大きさに比例して開度と同じ値で出力量を大きく調整し、切片を0(開度0%では出力も0)とする比例関係において出力量を調整する。
【0043】
制御部9は、例えば、光の刺激に関して戸4の開度0%における出力量を70%に調整し、開度70-100%の間で出力量を線形に対応させるように調整する。制御部9は、例えば、放射の刺激に関して戸4の開度0%における出力量を100%となるように反比例させるように調整する。制御部9の制御方法はこの限りでなく、例えば、以下のように調整してもよい。
【0044】
戸4の開度0%において、屋外からわずかに入り込む音を再現するために環境音のみ出力量10%としてもよい。実際の窓における気流場や騒音レベルを開度ごとに測定し、その関係に基づいて開度に応じて気流の供給量や環境音の音量を決定してもよい。また、必ずしも戸4の開度と出力量とが線形関係でなくてもよい。
【0045】
制御部9は、疑似環境に含まれる疑似熱源から放射され得る熱放射の出力量を算出し、算出結果に基づいて熱放射装置13を制御し、熱放射の出力量を調整してもよい。制御部9は、疑似環境の内容に応じて発生し得る気流の出力量を算出し、算出結果に基づいて送風装置16を制御して窓枠3と戸4の間の開口から流入する気流の出力量を調整してもよい。
【0046】
制御部9は、疑似環境の内容に応じて発生し得る芳香の出力量を算出し、算出結果に基づいて芳香発生装置15を制御し、窓枠3と戸4の間の開口から流入する芳香の出力量を調整してもよい。
【0047】
制御部9は、上記の各出力量の調整において、季節における環境の変化を再現するために、日時に基づいて出力量を変動させてもよい。これにより、時刻、季節に応じて刺激の出力が変更されるため、利用者に刺激を自然に感じさせることができる。制御部9は、音声、芳香、光、熱放射に関する刺激についてはそれぞれ、スピーカ、芳香発生装置、照明装置12、熱放射装置の出力量を調整する。
【0048】
図4に示されるように、制御部9は、気流の刺激に関して室内に実際の窓が無い環境において疑似窓2及び刺激生成部11が設けられ、使用者に戸4から見える疑似環境を提供する。制御部9は、例えば、操作部10に入力された操作内容に基づいて刺激生成部11を調整する。
【0049】
操作部10は、例えば、操作を入力する入力部を有するリモートコントローラにより構成される。リモートコントローラは、専用アプリケーションがインストールされたスマートフォン、タブレット型端末により構成されていてもよい。操作部10の入力部は、表示装置7により窓枠3内に表示されてもよい。操作部10は、タッチパネル式の表示装置7に表示される画像により構成されていてもよい。操作部10は、利用者の好みに応じて画像Mを選択する操作を受け付けてもよい。操作部10は、刺激生成部11が提供する刺激を利用者の好みに応じて選択する操作を受け付けてもよい。操作部10は、刺激生成部11が提供する刺激の出力量を利用者の好みに応じて調整する操作を受け付けてもよい。
【0050】
上述した制御部9は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。これらの各機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置を有する記憶部8に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
【0051】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、戸4は、実施形態の様に引き戸だけでなく、観音開き、片開き、ブラインド、カーテンなど、開閉状態/開度と環境制御が連動していれば、他の種類の開閉機構が用いられてもよい。また、戸4は、開放時のスペースが確保できない場合、透明で巻き取り可能に構成されていてもよい。
【0052】
戸4の開度は、窓の形態に合わせて適用されたセンサの検出値に基づいて算出されてもよい。戸4が引き戸に構成されている場合、距離センサの検出値に基づいて開度が算出されてもよいし、戸4が片開き戸に構成されている場合、回転角度センサの検出値に基づいて開度が算出されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 疑似環境生成装置
2 疑似窓
3 窓枠
4 戸
4A 戸枠
4B 板材
6 検出部
7 表示装置
8 記憶部
9 制御部
10 操作部
11 刺激生成部
12 照明装置
13 熱放射装置
14 スピーカ
15 芳香発生装置
16 送風装置
17 加湿装置
M 画像
W 壁面
図1
図2
図3
図4