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特開2022-167138風速算出システム及び風速算出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167138
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】風速算出システム及び風速算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01P 5/24 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
G01P5/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072726
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000243364
【氏名又は名称】本多電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和樹
(57)【要約】
【課題】送信部と受信部との間が長距離であっても、送信部と受信部との間の風速を正確に算出することができる風速算出システム及び風速算出プログラムを提供すること。
【解決手段】ペアの音波送受信装置1で低周波かつ連続波による基準波BWが作成され、音波振動子2からペアを形成する他の音波送受信装置1の音波振動子2に送信される。これにより、音波振動子2で受信した受信波RWの減衰が抑制され、ペアの音波送受信装置1間が長距離でも、受信波RWの伝搬時間を正確に算出できる。かかる伝搬時間が基準波BWと受信波RWとの位相差で算出されるので、基準波BWと受信波RWとが連続波であっても伝搬時間を算出できる。このように算出された伝搬時間からペアの音波送受信装置1間の風速が算出される。これにより、ペアの音波送受信装置1間が長距離であっても、風速を正確に算出できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波を送信する送信部と、その送信部から送信された音波を受信する受信部とを備え、前記送信部で送信され前記受信部で受信した音波の伝搬時間に基づき、前記送信部と前記受信部との間の風速を算出する風速算出システムであって、
基準波を作成する基準波作成手段と、
その基準波作成手段で作成された基準波を前記送信部から送信する音波送信手段と、
前記送信部から送信された音波を前記受信部で受信する音波受信手段と、
その音波受信手段で受信した音波と前記基準波作成手段で作成された基準波とから前記受信部で受信した音波の伝搬時間を算出する伝搬時間算出手段と、を備え、
前記基準波作成手段は、低周波かつ連続波の音波を基準波として作成するものであり、
前記伝搬時間算出手段は、前記音波受信手段で受信した音波と前記基準波作成手段で作成された基準波との位相差を算出し、その位相差から前記受信部で受信した音波の伝搬時間を算出するものであり、
前記伝搬時間算出手段で算出された伝搬時間に基づき風速を算出する風速算出手段を備えていることを特徴とする風速算出システム。
【請求項2】
音波を送信する送信部と、その送信部から送信された音波を受信する受信部とを備え、前記送信部で送信され前記受信部で受信した音波の伝搬時間に基づき、前記送信部と前記受信部との間の風速を算出する風速算出システムであって、
基準波を作成する基準波作成手段と、
その基準波作成手段で作成された基準波を前記送信部から送信する音波送信手段と、
前記送信部から送信された音波を前記受信部で受信する音波受信手段と、
その音波受信手段で受信した音波と前記基準波作成手段で作成された基準波とから前記受信部で受信した音波の伝搬時間を算出する伝搬時間算出手段と、を備え、
前記基準波作成手段は、チャープ信号による音波を基準波として作成するものであり、
前記伝搬時間算出手段は、前記音波受信手段で受信した音波を、前記基準波作成手段で作成された基準波を用いてパルス圧縮することでピークを取得し、そのピークに基づいて前記受信部で受信した音波の伝搬時間を算出するものであり、
前記伝搬時間算出手段で算出された伝搬時間に基づき風速を算出する風速算出手段を備えていることを特徴とする風速算出システム。
【請求項3】
前記送信部および前記受信部のそれぞれに設けられ、GNSS衛星からの情報を取得するGNSS受信部を備え、
前記基準波作成手段は、前記送信部および前記受信部のそれぞれにおいて前記GNSS受信部で取得される情報のうちのタイミング信号に基づいて基準波を作成し、
前記伝搬時間算出手段は、前記基準波作成手段によって前記受信部で作成された基準波と前記音波受信手段によって前記受信部が受信した音波とから伝搬時間を算出するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の風速算出システム。
【請求項4】
前記送信部および前記受信部のそれぞれに設けられ、GNSS衛星からの情報を取得するGNSS受信部と、
そのGNSS受信部で取得された情報から前記送信部および前記受信部のそれぞれの現在位置を取得する現在位置取得手段を備え、
前記風速算出手段は、前記伝搬時間算出手段で算出された伝搬時間と前記現在位置取得手段で取得された現在位置とに基づき風速を算出するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の風速算出システム。
【請求項5】
前記GNSS受信部で受信した情報から前記送信部および前記受信部のそれぞれを設置した際の位置である初期位置を取得する初期位置取得手段と、
その初期位置取得手段で取得された初期位置を記憶する初期位置記憶手段とを備え、
前記風速算出手段は、前記初期位置記憶手段で記憶された初期位置と前記現在位置取得手段で取得された現在位置とのずれ量が所定以下である場合に、前記伝搬時間算出手段で算出された伝搬時間と前記現在位置取得手段で取得された現在位置とに基づき風速を算出するものであることを特徴とする請求項4記載の風速算出システム。
【請求項6】
前記初期位置記憶手段で記憶された初期位置と前記現在位置取得手段で取得された現在位置とのずれ量が所定以上である場合に、当該初期位置とのずれ量が大きい旨を報知する位置ずれ報知手段を備えていることを特徴とする請求項5記載の風速算出システム。
【請求項7】
前記送信部および前記受信部に設けられ、それぞれの角度を取得する角度取得部と、
その角度取得部から前記送信部および前記受信部のそれぞれが設置された際の角度である初期角度を取得する初期角度取得手段と、
その初期角度取得手段で取得された初期角度を記憶する初期角度記憶手段と、
前記角度取得部から前記送信部および前記受信部のそれぞれの現在の角度である現在角度を取得する現在角度取得手段と、を備え
前記風速算出手段は、前記初期角度記憶手段で記憶された初期角度と、前記現在角度取得手段で取得された現在角度とのずれ量が所定以下である場合に、前記伝搬時間算出手段で算出された伝搬時間に基づき風速を算出するものであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の風速算出システム。
【請求項8】
前記初期角度記憶手段に記憶された初期角度と前記現在角度取得手段で取得された現在角度とのずれ量が所定以上である場合に、前記初期角度とのずれ量が大きい旨を報知する角度ずれ報知手段を備えていることを特徴とする請求項7記載の風速算出システム。
【請求項9】
前記送信部と前記受信部との組み合わせである送受信ペアが複数配置され、
その送受信ペアが配置される方向を取得する方向取得手段と、
前記送受信ペア毎に、前記方向取得手段で取得された方向と前記風速算出手段で算出された風速とによる風速ベクトルを作成する風速ベクトル作成手段と、
複数の前記送受信ペアが配置される区域を複数のメッシュ領域に分割し、そのメッシュ領域毎に配置される前記送受信ペアの前記風速ベクトル作成手段で作成された風速ベクトルを合成することで、当該メッシュ領域における風向および風速を算出するメッシュ領域風速風向算出手段と、
そのメッシュ領域風向風速算出手段で算出された風向および風速を出力する風向風速出力手段と、を備えていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の風速算出システム。
【請求項10】
コンピュータに風向および風速の算出処理を実行させる風速算出プログラムであって、
送信装置から送信され受信装置で受信した音波の伝搬時間を取得する伝搬時間取得ステップと、
その伝搬時間取得ステップで取得した伝搬時間に基づき前記送信装置と前記受信装置との間の風速を算出する風速算出ステップと、
前記送信装置と前記受信装置との組み合わせを送受信ペアとして、
その送受信ペアが配置される方向を取得する方向取得ステップと、
前記送受信ペア毎に、前記方向取得ステップで取得された方向と前記風速算出ステップで算出された風速とによる風速ベクトルを作成する風速ベクトル作成ステップと、
複数の前記送受信ペアが配置される区域を複数のメッシュ領域に分割し、そのメッシュ領域毎に配置される前記送受信ペアの前記風速ベクトル作成ステップで作成された風速ベクトルを合成することで、当該メッシュ領域における風向および風速を算出するメッシュ領域風速風向算出ステップと、
そのメッシュ領域風向風速算出ステップで算出された風向および風速を出力する風向風速出力ステップと、を備えていることを特徴とする風速算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風速算出システム及び風速算出プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、音波を用いた風向風速計が開示されている。その風向風速計には、超音波送受波器11,12が50~100mm隔てて対向配置され、超音波送受波器11,12から周波数が一定の高周波(例えば40kHz)のパルス波による音波が一定時間(例えば1ms)毎に送信される。そして、超音波送受波器11から送信された音波が超音波送受波器12で受信されるまでの伝搬時間と、超音波送受波器12から送信された音波が超音波送受波器11で受信されるまでの伝搬時間とに基づいて風速が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-031137号公報(例えば、段落0013~0018、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、災害予防やドローンの運行支援のため、電柱間あるいはビル間のような数十m間隔における風速を測定することが求められている。しかしながら、上記の超音波送受波器11,12から送信される音波は、パルス波なので、パルスOFFの時間が含まれる。よって、振幅にパルスONの時間を乗算して算出される音波エネルギーが小さい。加えて、上記音波は高周波なので、超音波送受波器11,12間の距離が長い程、超音波送受波器11,12で受信される音波は減衰してしまう。
【0005】
これらによって、超音波送受波器11,12では音波を精度良く検出できず、伝搬時間が正確に算出できない。よって、数十m間隔における風速を正確に算出できないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、送信部と受信部との間が長距離であっても、送信部と受信部との間の風速を正確に算出することができる風速算出システム及び風速算出プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の風速算出システムは、音波を送信する送信部と、その送信部から送信された音波を受信する受信部とを備え、前記送信部で送信され前記受信部で受信した音波の伝搬時間に基づき、前記送信部と前記受信部との間の風速を算出するシステムであって、基準波を作成する基準波作成手段と、その基準波作成手段で作成された基準波を前記送信部から送信する音波送信手段と、前記送信部から送信された音波を前記受信部で受信する音波受信手段と、その音波受信手段で受信した音波と前記基準波作成手段で作成された基準波とから前記受信部で受信した音波の伝搬時間を算出する伝搬時間算出手段と、を備え、前記基準波作成手段は、低周波かつ連続波の音波を基準波として作成するものであり、前記伝搬時間算出手段は、前記音波受信手段で受信した音波と前記基準波作成手段で作成された基準波との位相差を算出し、その位相差から前記受信部で受信した音波の伝搬時間を算出するものであり、前記伝搬時間算出手段で算出された伝搬時間に基づき風速を算出する風速算出手段を備えている。
【0008】
本発明の別の風速算出システムは、音波を送信する送信部と、その送信部から送信された音波を受信する受信部とを備え、前記送信部で送信され前記受信部で受信した音波の伝搬時間に基づき、前記送信部と前記受信部との間の風速を算出するシステムであって、基準波を作成する基準波作成手段と、その基準波作成手段で作成された基準波を前記送信部から送信する音波送信手段と、前記送信部から送信された音波を前記受信部で受信する音波受信手段と、その音波受信手段で受信した音波と前記基準波作成手段で作成された基準波とから前記受信部で受信した音波の伝搬時間を算出する伝搬時間算出手段と、を備え、前記基準波作成手段は、チャープ信号による音波を基準波として作成するものであり、前記伝搬時間算出手段は、前記音波受信手段で受信した音波を、前記基準波作成手段で作成された基準波を用いてパルス圧縮することでピークを取得し、そのピークに基づいて前記受信部で受信した音波の伝搬時間を算出するものであり、前記伝搬時間算出手段で算出された伝搬時間に基づき風速を算出する風速算出手段を備えている。
【0009】
また、本発明の風速算出プログラムは、コンピュータに風向および風速の算出処理を実行させるプログラムであって、送信装置から送信され受信装置で受信した音波の伝搬時間を取得する伝搬時間取得ステップと、その伝搬時間取得ステップで取得した伝搬時間に基づき前記送信装置と前記受信装置との間の風速を算出する風速算出ステップと、前記送信装置と前記受信装置との組み合わせを送受信ペアとして、その送受信ペアが配置される方向を取得する方向取得ステップと、前記送受信ペア毎に、前記方向取得ステップで取得された方向と前記風速算出ステップで算出された風速とによる風速ベクトルを作成する風速ベクトル作成ステップと、複数の前記送受信ペアが配置される区域を複数のメッシュ領域に分割し、そのメッシュ領域毎に配置される前記送受信ペアの前記風速ベクトル作成ステップで作成された風速ベクトルを合成することで、当該メッシュ領域における風向および風速を算出するメッシュ領域風速風向算出ステップと、そのメッシュ領域風向風速算出ステップで算出された風向および風速を出力する風向風速出力ステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の風速算出システムによれば、基準波作成手段によって低周波かつ連続波による音波が基準波として作成される。基準波を連続波とすることで音波の継続時間を長くできるので、音波の振幅に継続時間を乗じることで算出される音波のエネルギーを確保できる。これに加えて、低周波は長距離を伝搬させた場合の減衰が小さいという性質を持つ。従って、基準波を低周波かつ連続波とすることで、送信部と受信部との間が長距離であっても受信部で受信する音波の減衰を抑制することができ、音波の伝搬時間を正確に算出できるという効果がある。
【0011】
その基準波と受信部で受信した音波との位相差から伝搬時間が算出される。ここで連続波はその波形に切れ目がなく、例えばパルス波におけるパルスON時の立上がりやパルスOFF時の立下りのような、波形においてタイミングを検出する明確な「手掛かり」を有していない。そこで連続波による基準波と受信部で受信した音波との伝搬時間を、位相差から算出することで、基準波と受信部で受信した音波とが切れ目のない連続波であっても、音波の伝搬時間を算出できるという効果がある。
【0012】
更に該音波は低周波なので、その周期や波長が長くなる。これにより、該音波の1周期において位相差を検出できる時間が長くなるので、位相差を精度良く検出できる。この位相差から算出された伝搬時間に基づき風速が算出される。これにより、送信部と受信部とが長距離(例えば数十m間隔)であっても風速を正確に算出できるという効果もある。
【0013】
請求項2記載の風速算出システムによれば、基準波生成手段によってチャープ信号による音波が基準波として作成され、その基準波が送信部から送信される。送信される音波をチャープ信号とすることで、音波が正弦波の場合と比較して、基準波を用いてパルス圧縮した場合のピークの幅を小さくでき、ピークの形状が鋭くなる。これにより、ピークを精度良く取得できるので、取得されたピークに基づき伝搬時間を精度良く算出できるという効果がある。
【0014】
また、チャープ信号による音波は、パルス圧縮した場合のピークの幅を小さくできるので、音波の継続時間を長く(即ちパルス波の幅を大きく)し、且つ音波の送信間隔を短くしてもピークの検出が可能となる。音波の継続時間を長くすることで音波のエネルギーを確保できる。これにより、送信部と受信部との間が長距離であっても受信部で受信する音波の減衰を抑制することができ、音波の伝搬時間を正確に算出できる。この伝搬時間に基づき風速が算出される。これにより、送信部と受信部とが長距離であっても風速を正確に算出できるという効果もある。
【0015】
請求項3記載の風速算出システムによれば、請求項1又は2に記載の風速算出システムが奏する効果に加え、次の効果を奏する。GNSS衛星からのタイミング信号に基づいて、送信部および受信部のそれぞれで基準波を作成することで、基準波を送信部および受信部のそれぞれにおいて正確に同期させることができる。そして、送信部からかかる基準波による音波が送信され、受信部ではその音波が受信され、受信した音波と受信部で作成した基準波とから伝搬時間が算出される。
【0016】
受信部で受信した音波は、送信部で作成され、受信部で作成した基準波とタイミングが同期した音波である。従って、受信部で受信した音波と受信部で作成した基準波との時間的なずれはそのまま送信部と受信部との間の音波の伝搬時間に相当する。このように、送信部および受信部においてGNSS衛星からのタイミング信号によって同期した基準波を作成し、かかる基準波を用いることで伝搬時間を正確に算出できるという効果がある。
【0017】
また、GNSS受信部からタイミング信号を取得することで、送信部と受信部とを直接接続し、タイミング信号を送受信する別途のケーブルが不要となる。これにより、送信部と受信部との距離を長くできると共に、送信部および受信部の製造コスト及び設置コストを低減できるという効果もある。
【0018】
請求項4記載の風速算出システムによれば、請求項1から3のいずれかに記載の風速算出システムが奏する効果に加え、次の効果を奏する。送信部および受信部それぞれの現在位置がGNSS衛星から取得され、その現在位置を用いて風速の算出が行われる。送信部および受信部の現在位置をGNSS衛星から取得することで、その位置を正確に把握でき、風速を正確に算出できるという効果がある。また、作業員が送信部および受信部の現在位置を本システムに設定することなく風速を算出できるので、作業員の作業負荷を軽減できるという効果もある。
【0019】
請求項5記載の風速算出システムによれば、請求項4記載の風速算出システムが奏する効果に加え、次の効果を奏する。送信部および受信部を設置した際の初期位置がGNSS衛星から取得され、記憶される。その初期位置と現在位置とのずれ量が所定以下である場合に伝搬時間および風速が算出される。初期位置と現在位置とのずれ量が所定以下の軽微である場合は、現在位置に基づき伝搬時間および風速が算出されるので、作業員が送信部および受信部の位置を点検したり、送信部および受信部の位置を改めて本システムに設定することなく、風速を算出できるという効果がある。
【0020】
請求項6記載の風速算出システムによれば、請求項5記載の風速算出システムが奏する効果に加え、次の効果を奏する。初期位置と現在位置とのずれ量が所定以上である場合に、初期位置とのずれ量が大きい旨が報知される。これにより、作業員が実際に送信部および受信部を目視することなく初期位置からの所定以上のずれを把握できるので、該ずれを補正するための作業員の点検・保守等を迅速に行うことができるという効果がある。
【0021】
請求項7記載の風速算出システムによれば、請求項1から6のいずれかに記載の風速算出システムが奏する効果に加え、次の効果を奏する。送信部および受信部を設置した際の初期角度と、送信部および受信部の現在角度とのずれ量が所定以下場合に、風速が算出される。初期角度と現在角度とのずれ量が所定以下の軽微である場合は、作業員が実際に送信部および受信部の向きを点検・保守等をすることなく、風速の算出できるという効果がある。
【0022】
請求項8記載の風速算出システムによれば、請求項7記載の風速算出システムが奏する効果に加え、次の効果を奏する。現在角度と初期角度とのずれ量が所定以上である場合に、初期角度と現在角度とのずれ量が大きい旨が報知される。これにより、作業員が実際に送信部および受信部を目視することなく、送信部および受信部の初期角度からのずれを把握できるので、送信部および受信部のずれを補正するための作業員の点検・保守等を迅速に行うことができるという効果がある。
【0023】
請求項9記載の風速算出システムによれば、請求項1から8のいずれかに記載の風速算出システムが奏する効果に加え、次の効果を奏する。送信部と受信部との組み合わせである送受信ペア毎に、送受信ペアが配置される方向と、送受信ペア間の風速とに基づく風速ベクトルが作成される。そして、複数の送受信ペアが配置される区域が複数のメッシュ領域に分割され、そのメッシュ領域毎に配置される送受信ペアの風速ベクトルを合成することで当該メッシュ領域における風向および風速が算出され、その風向および風速が出力される。かかる出力によって、ユーザはメッシュ領域内を風がどのように抜けていくのかを把握できるという効果がある。
【0024】
請求項10記載の風速算出プログラムによれば、請求項9記載の風速算出システムと同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】風向算出システムの概略図である。
図2】基準波および受信波を説明する図である。
図3】(a)は、計測点および計測点における風速および風向の算出を説明するための模式図であり、(b)は、区域内における計測点を説明するための模式図である。
図4】(a)は、区域に設定されたメッシュを説明するための模式図であり、(b)は、風向および風速の分布図を表す図である。
図5】風速算出システムの電気的構成を示すブロック図である。
図6】(a)は、ペア情報テーブルを模式的に表す図であり、(b)は、メッシュ情報テーブルを模式的に表す図である。
図7】音波送受信装置のメイン処理のフローチャートである。
図8】音波送受信装置の計測データ処理のフローチャートである。
図9】風向風速算出サーバのメイン処理のフローチャートである。
図10】風向風速算出サーバのペア間風速算出処理のフローチャートである。
図11】風向風速算出サーバのメッシュ風向風速算出処理のフローチャートである。
図12】(a)は、第2実施形態における基準波を表す図であり、(b)は、第2実施形態において基準波と受信波とを相互相関処理をした結果の波形を表す図である。
図13】第2実施形態における音波送受信装置の計測データ処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、風速算出システムSの概略図である。風速算出システムSは、複数の音波送受信装置1と、風向風速算出サーバ20とから構成され、音波送受信装置1間で送受信される音波Wの伝搬時間から風速を算出し、その結果を表示するシステムである。
【0027】
風速算出システムSにおいては、対向する1対の音波送受信装置1によって「ペア」が形成され、ペアの音波送受信装置1間の風速が算出される。風速算出システムSには、このようなペアの音波送受信装置1が複数設けられ、ペア毎に算出された風速に基づいて風速および風向の分布図Rg(図4参照)が作成される。
【0028】
音波送受信装置1は、建物30に設けられ、ペアを形成する他の音波送受信装置1と音波Wを送受信することで、ペアの音波送受信装置1間における音波Wの伝搬時間を算出する装置である。建物30は、10~50m隔てて設けられた電柱やビル等が例示され、音波送受信装置1はその建物30の上部に設置される。
【0029】
音波送受信装置1には、音波振動子2と、GNSS受信装置3と、角度センサ4とが設けられる。音波振動子2は、音波Wを他の音波送受信装置1に送信し、他の音波送受信装置1から送信された音波Wを受信する装置である。
【0030】
ペアの音波送受信装置1は、それぞれの音波振動子2が対向するように、これらの位置や高さ、角度を調整した上で建物30に設置される。このように、ペアの音波送受信装置1において対向した1の音波送受信装置1の音波振動子2と、他の音波送受信装置1の音波振動子2との組み合わせが「送受信ペア」とされる。
【0031】
GNSS受信装置3は、GNSS(衛星測位システム)衛星40からの情報を受信する装置である。GNSS衛星40としては、GPS、ガリレオ、グロナス、準天頂衛星等が例示される。本実施形態では、GNSS受信装置3で受信したGNSS衛星40からの情報のうち、位置情報である緯度経度および高度と、タイミング信号である1PPSとが用いられる。詳細は後述するが、GNSS受信装置3で受信した位置情報が音波送受信装置1の位置とされ、更に1PPSによるタイミング信号に基づき送受信ペアで送受信される音波Wが同期される。
【0032】
角度センサ4は、音波送受信装置1のロール角、ピッチ角およびヨー角のそれぞれの角度を検知する装置(センサ)である。本実施形態において、音波振動子2の音波Wを送受信する面が水平を向いている場合のロール角およびピッチ角がそれぞれ「0°」と定義されるが、音波振動子2の向きをこれら以外の角度で定義しても良い。角度センサ4で検知された角度を監視することで、ペアの音波送受信装置1の音波振動子2が設置された状態からのずれが監視される。
【0033】
ペアの音波送受信装置1では、それぞれの送受信ペアにおいて音波Wを送受信することで、音波Wの伝搬時間が算出される。そして、算出された伝搬時間と、GNSS受信装置3及び角度センサ4で検知された音波送受信装置1の位置および角度とが風向風速算出サーバ20に送信され、風向風速算出サーバ20で風速が算出される。
【0034】
ここで図2を参照して、送受信ペアで送受信される音波Wを説明する。図2は、基準波BW及び受信波RWを説明する図である。本実施形態では、ペアの音波送受信装置1のそれぞれにおいて同期した音波である基準波BWが作成され、作成された基準波BWを音波振動子2に入力することで音波Wが送信される。
【0035】
本実施形態では基準波BWとして、波形が時間的に連続する連続波が用いられ、その基準波BWの波形として正弦波が用いられる。また1つの基準波BWの開始から終了までの時間的な長さは5秒間に設定される。基準波BWを連続波とすることで、音波振動子2から送信開始から送信終了まで音波Wが切れ目なく送信される。
【0036】
これによって、基準波BWをパルスON(出力)とパルスOFF(停止)とが繰り返されるパルス波とする場合と比較して、音波振動子2から送信される音波Wの継続時間を長くすることができる。これにより、連続波による基準波BWは振幅に継続時間を乗算したエネルギーを大きくすることができるので、送信される音波Wを長距離に亘って伝搬させることができる。
【0037】
更に本実施形態の基準波BWは低周波とされ、その周波数は10Hzとされる。低周波は、長距離を伝搬させた場合でも減衰が抑制されるという性質を持つので、低周波の基準波BWをペアの音波送受信装置1間に伝搬させた際に音波振動子2で受信する音波Wの、基準波BWからの減衰を抑制できる。
【0038】
基準波BWを連続波かつ低周波とすることで、ペアの音波送受信装置1間の距離、即ちペアの音波送受信装置1が設置される建物30間の距離が10~50mであっても、基準波BWに基づき音波振動子2から送信される音波Wを他の音波送受信装置1の音波振動子2に伝搬させることができると共に、音波振動子2で受信した音波Wが基準波BWから減衰するのを抑制できる。これによって、10~50m隔てた建物30間の風速を算出することができる。
【0039】
このように基準波BWに基づき音波振動子2から送信された音波Wが、他の音波送受信装置1の音波振動子2で受信波RWとして受信される。そして、ペアの音波送受信装置1のそれぞれで基準波BW及び受信波RWから、他の音波送受信装置1から送信された音波Wの伝搬時間が算出される。具体的には、基準波BWと受信波RWとを相互相関処理を行い、これらにおける位相差Qを算出する。
【0040】
また、基準波BWを作成し、送信を開始するタイミングは、上記したGNSS受信装置3で受信した1PPSによるタイミング信号に基づいて設定される。これにより、ペアの音波送受信装置1間における基準波BWの位相が正確に同期される。従って、基準波BWと受信波RWとの位相差Qは、他の音波送受信装置1の音波振動子2から送信された音波W(即ち受信波RW)の伝搬時間に相当する。よって、該位相差Qを時間に換算することで、他の音波送受信装置1から送信された音波Wの伝搬時間を算出できる。
【0041】
かかる位相差Qの検出について、具体的には、まず、ペアの音波送受信装置1間が無風であると仮定とした場合において、ペアの音波送受信装置1のうちの1の音波送受信装置1の音波振動子2から送信された音波Wが他の音波送受信装置1の音波振動子2で受信するまでの時間である「基準伝搬時間」が算出される。例えば、ペアの音波送受信装置1がそれぞれ設けられる建物30間の距離が50m、音速が340m/sの場合、基準伝搬時間は、50(m)÷340(m/s)=0.147(秒)とされる。
【0042】
そして、基準波BWと、上記の1PPSによるタイミング信号に基づいた基準波BWの送信を開始するタイミングから基準伝搬時間後を基準に音波振動子2で受信した受信波RWとに基づいて相互相関処理を行い、これらにおける位相差Qが算出される。
【0043】
この際、算出された位相差Qにおいて有効な範囲は「±π」とされる。ここでπは、正弦波による基準波BW及び受信波RWの半波長分の位相なので、計測可能な風速の範囲は、基準波BW及び受信波RWの「±半波長」分に相当する範囲の風速とされる。例えば、基準波BW及び受信波RWの周波数が10Hzの場合、基準波BW及び受信波RWの波長は340(m/s)÷10(Hz)=34(m)となるので、風速が計測可能な範囲は「±17m/s」とされ、追い風・向かい風の存在下において「±17m/s」の範囲での風速が計測可能とされる。
【0044】
このように位相差Qにおいて有効な範囲が「±π」であるのは、πを超えた位相差Qや-πを下回った位相差Qが算出された場合に、基準波BWの位相に対する受信波RWの位相が遅れているのか、又は該位相が進んでいるのかが区別できないからである。
【0045】
また、GNSS受信装置3で受信した1PPSに基づくことで、ペアの音波送受信装置1間を接続し、タイミング信号を送受信する別途の通信ケーブルが不要となる。これにより、ペアの音波送受信装置1間の距離を長くできると共に、ペアの音波送受信装置1の製造コスト及び設置コストを低減できる。
【0046】
ここで基準波BW及び受信波RWを形成する連続波は、その波形に切れ目がなく、例えばパルス波におけるパルスON時の立上がりやパルスOFF時の立下りのような、波形においてタイミングを検出する明確な「手掛かり」を有していない。そこで伝搬時間を、基準波BWと受信波RWとの位相差Qから算出することで、これらが連続波であっても伝搬時間を算出できる。更に基準波BW及び受信波RWは低周波なので、その周期Pが長くなる。これにより、基準波BW及び受信波RWの1周期において位相差Qを検出できる時間が長くなるので、位相差Qを精度良く検出できる。
【0047】
また、基準波BW及び受信波RWを低周波とすることで、基準波BW及び受信波RWの波長も長くなり、上記の風速が計測可能な範囲である、基準波BW及び受信波RWの「±半波長」も長くなる。これにより、計測可能な風速の範囲をより拡大することができる。
【0048】
なお、基準波BWの波形は正弦波に限られず、矩形波や三角波等の他の形状の波形でも良い。また基準波BWの長さは5秒間に限られず、5秒以下でも5秒以上でも良いし、音波送受信装置1の電源オンから電源オフまで基準波BWを送信し続けても良い。更に基準波BWの周波数は10Hzに限られず、10Hz以上でも10Hz以下でも良いが、1~15Hzの間の周波数に設定されるのが好ましい。
【0049】
図1に戻る。風向風速算出サーバ20は、ペアの音波送受信装置1から送信された伝搬時間、位置および角度から、ペアの音波送受信装置1間の風速を算出する情報処理装置(コンピュータ)である。風向風速算出サーバ20には、算出された風速等を表示するLCD28が設けられる。
【0050】
風向風速算出サーバ20では、ペアの音波送受信装置1から受信した伝搬時間、位置および角度からペアの音波送受信装置1間の風速が算出される。また、ペアの音波送受信装置1は複数配置され、複数のペア毎の風速に基づいて風向が算出され、算出された風向および風速がLCD28に表示される。
【0051】
次に、図3,4を参照して、風向および風速の算出を説明する。図3(a)は、計測点MP及び計測点MPにおける風速および風向の算出を説明するための模式図である。図3(a)では、建物30が4つ配置され、これら4つの建物30におけるそれぞれの対角側に音波送受信装置1が設置される。
【0052】
それぞれの音波送受信装置1は、自身が設置される建物30の対角側の建物30に設置された音波送受信装置1と対向するように設置される。このように設置された音波送受信装置1のうち、対向する音波送受信装置1同士でペアが形成される。図3(a)においては、対向する音波送受信装置1によるペアP1,P2が形成される。
【0053】
ペアP1,P2のそれぞれで算出された伝搬時間と、ペアP1,P2のそれぞれの位置および角度とが風向風速算出サーバ20に送信され、風向風速算出サーバ20では送信された伝搬時間、位置および角度からペアP1,P2の風速がそれぞれ算出される。そして、ペアP1,P2が配置される方向と算出されたそれぞれの風速とに基づくベクトルである風速ベクトルがそれぞれ算出される。
【0054】
これらの風速ベクトルを合成することで、ペアP1で形成される領域とペアP2で形成される領域とが交差する位置である計測点MPにおける風向風速ベクトルVmが算出される。かかる風向風速ベクトルVmの向きが計測点MPにおける風向とされ、風向風速ベクトルVmの大きさが計測点MPにおける風速とされる。このような複数のペアの音波送受信装置1による計測点MPが、所定の区域Arに複数箇所に設けられ、各計測点MPで算出された風向および風速の分布が風向風速算出サーバ20のLCD28に表示される。図3(b)及び図4(a),(b)を参照して風向および風速の分布を説明する。
【0055】
図3(b)は、区域Ar内における計測点MPを説明するための模式図である。図3(b)において区域Arには道路Rが2本設けられ、その道路Rの左右には、電柱である建物30が複数設けられる。その建物30に音波送受信装置1が設けられる。なお、図3(b)では、音波送受信装置1の図示を省略している。このように建物30に設けられた音波送受信装置1によるペアが形成され、図3(a)で上記した通り、ペアによって形成される領域同士が交差する位置に、計測点MPが設けられる。これによって、区域Arには複数の計測点MPが設けられる。
【0056】
本実施形態では、区域Arが縦横に等間隔の「メッシュ」と呼ばれる領域に分割され、メッシュ毎の風速が算出され、その分布が風向風速算出サーバ20のLCD28に表示される。次に図4(a)を参照して、区域Arに設定されるメッシュ及びメッシュにおける風速について説明する。
【0057】
図4(a)は、区域Arに設定されたメッシュを説明するための模式図である。図4(a)に示す通り、区域Arが複数のメッシュに分割される。メッシュは縦横に等間隔の矩形状の領域であり、本実施形態において、メッシュの縦方向の長さ及び横方向の長さはそれぞれ「5m」に設定される。区域Arにおける左上のメッシュから順に、メッシュM1,メッシュM2,・・・,メッシュM42という。また、メッシュM1,メッシュM2,・・・,メッシュM42を特に区別しない場合は「メッシュMn」という。
【0058】
なお、メッシュMnの縦方向の長さ及び横方向の長さはそれぞれ5mに限られず、5m以下でも、5m以上でも良い。また、メッシュMnの縦方向の長さを横方向の長さよりも長くしても良いし、横方向の長さを縦方向の長さよりも長くしても良い。更にメッシュMnは矩形状の領域に限られず、三角形や五角形等の他の形状でも良い。
【0059】
このように設定されたメッシュMnの領域内に含まれる計測点MPの風向および風速に基づいて、メッシュMnにおける風向および風速が算出される。図4(a)においては、メッシュM10,M13,M17,M19,M31及びM33には、計測点MPが含まれる。これらのメッシュMnにおいては、含まれる計測点MPにおける風向および風向がそのメッシュMnの風向および風向とされる。
【0060】
ここで、メッシュM17においては、計測点MPが2つ配置される。このように1つのメッシュMnにおいて複数の計測点MPが存在する場合は、メッシュMnにおける中心位置と、計測点MPとの距離の反比例に応じた加重平均によって、メッシュMnに含まれる複数の計測点MPの風向および風速が合成される。これにより、メッシュMnの中心位置により近い計測点MPの風向および風速を、メッシュMnの中心位置から離れた計測点MPの風向および風速よりも、そのメッシュMnの風向および風速に色濃く反映できる。
【0061】
なお、メッシュMnに含まれる複数の計測点MPの風向および風速を合成する手法は、加重平均に限られず、例えば、メッシュMnに含まれる計測点MPの風向および風速の平均値や中央値を、そのメッシュMnの風向および風速としても良いし、メッシュMnに含まれる計測点MPのうち、最大または最小の風速を取る計測点MPの風向および風速をそのメッシュMnの風向および風速としても良い。
【0062】
また、計測点MPが含まれないメッシュMnでは、周囲の計測点MPが含まれるメッシュMnで算出された風速を補間することで、当該メッシュMnの風速が算出される。本実施形態では、計測点MPが含まれるメッシュMnにおいてはその計測点MPに基づく風向および風速が算出される。一方で、計測点MPが含まれないメッシュMnにおいては、計測点MPが含まれる周囲のメッシュMnの風速を補間した風速のみが算出される。
【0063】
このように算出されたメッシュMn毎に算出された風向および風速から、風向および風速の分布図Rgが作成され、風向風速算出サーバ20のLCD28に表示される。図4(b)を参照して、風向および風速の分布図Rgについて説明する。
【0064】
図4(b)は、風向および風速の分布図Rgを表す図である。図4(b)に示す通り、分布図Rgには、区域Arを表す地図と、その地図上に図4(a)で上記したメッシュMnの境界線とが重ねて表示される。更に各メッシュMnには、算出された風速に応じたハッチング(斜線)が重ねて表示される。風速に応じたハッチングとしては、風速が8m以上である等高表示L1(例えばメッシュM10)と、風速が3~8mである等高表示L2(例えばメッシュM17)とが設けられる。なお、ハッチングが付されていないメッシュMnは、風速が3m以下の領域とされる。
【0065】
分布図Rgにおいて、計測点MPが含まれるメッシュMnには更に、風向を表す矢印による風向表示Dが重ねて表示される。一方で計測点MPが含まれるメッシュMnにおいて、音波送受信装置1が故障する等してメッシュMn内の風向および風速が算出できなかった場合は、風向表示Dの代わりに「×」印による計測不可NS(例えばメッシュM33)が表示される。
【0066】
このような分布図Rgを見たユーザは、風向表示Dによって風がどのように抜けていくのかを把握することができる。また、各メッシュMnに付された等高表示L1,L2によってユーザは区域Ar内の比較的広範囲の風速の強弱の分布を一目で把握できる。
【0067】
なお、分布図Rgに風向による風向表示Dと風速による等高表示L1,L2との両方を表示するものに限られず、風向表示Dのみを表示しても良いし、等高表示L1,L2のみを表示しても良い。また風速の区分は、等高表示L1,L2及びハッチングなしの3つに限られず、区分は3つ以下でも良いし、3つ以上でも良い。
【0068】
また、計測点MPが含まれないメッシュMnにおいては、風速を計測点MPが含まれる周囲のメッシュMnの風速を補間することで算出する一方で、風向の算出を省略したが、これに限られない。計測点MPが含まれないメッシュMnにおいても風向を算出し、その結果を風向表示Dで表しても良い。この場合、計測点MPが含まれないメッシュMnの風向は、風速と同様に周囲の計測点MPが含まれるメッシュMnで算出された風向を補間することで算出しても良いし、他の手法で算出しても良い。このように全てのメッシュMnで風向が算出された場合、全てのメッシュMnに風向表示Dを表示しても良いし、作業員によって指定されたメッシュMnに風向表示Dを表示しても良い。
【0069】
更に等高表示L1,L2及びハッチングなしのそれぞれが属する風速の範囲は、上記に限られず、適宜設定しても良い。また等高表示L1,L2の代わりに、分布図Rgに表示される風向表示Dの長さや太さ、形状を上記した風速の範囲に応じて変化させたものを、風速の大きさを表すものとしても良い。
【0070】
次に、図5,6を参照して、風速算出システムSの電気的構成を説明する。図5は、風速算出システムSの電気的構成を示すブロック図である。まず音波送受信装置1の電気的構成を説明する。
【0071】
音波送受信装置1は、CPU10と、フラッシュROM11と、RAM12とを有し、これらはバスライン13を介して入出力ポート14にそれぞれ接続されている。入出力ポート14には、更に、上記した音波振動子2、GNSS受信装置3及び角度センサ4と、ユーザからの指示や各種情報を入力する入力装置15と、風向風速算出サーバ20等と無線通信するための無線通信装置16とが接続されている。
【0072】
CPU10は、バスライン13により接続された各部を制御する演算装置である。フラッシュROM11は、CPU10により実行されるプログラムや固定値データ等を格納した書き換え可能な不揮発性のメモリであり、制御プログラム11aと、ペア待機時間データ11bとが記憶される。CPU10によって制御プログラム11aが実行されると、図7のメイン処理が実行される。
【0073】
ペア待機時間データ11bには、GNSS受信装置3から1PPSを受信してから、基準波BWを音波振動子2で送信するまでの時間が記憶される。具体的に、ペアを形成する音波送受信装置1のペア待機時間データ11bには同一の時間が記憶され、なおかつ、他のペアの音波送受信装置1とは異なる時間が記憶される(例えば、上記した図3(a)のペアP1には1秒、ペアP2には2秒等)。
【0074】
これにより、ペアの音波送受信装置1で作成される基準波BWをペアにおいて同期できると共に、複数のペアの音波送受信装置1が隣接して設けられた場合でも、複数のペアの音波送受信装置1の音波振動子2から音波Wが同時に送信することが抑制されるので、音波Wの干渉や混信を抑制できる。
【0075】
RAM12は、CPU10が制御プログラム11aの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであり、基準波BWが記憶される基準波メモリ12aと、受信波RWが記憶される受信波メモリ12bと、伝搬時間が記憶される伝搬時間メモリ12cとが設けられる。
【0076】
次に、風向風速算出サーバ20の電気的構成を説明する。風向風速算出サーバ20は、CPU21と、ハードディスク・ドライブ22(以下「HDD22」と略す)と、CPU20のプログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであるRAM23とを有し、これらはバスライン24を介して入出力ポート25にそれぞれ接続されている。入出力ポート25には、更に、音波送受信装置1等と無線通信するための無線通信装置26と、ユーザからの指示や各種情報を入力する入力装置27とが接続されている。
【0077】
CPU21は、バスライン24により接続された各部を制御する演算装置である。HDD22は、CPU21により実行されるプログラムや固定値データ等を格納した書き換え可能な不揮発性の記憶装置であり、風速算出プログラム22aと、ペア情報テーブル22bと、メッシュ情報テーブル22cとが記憶される。CPU21によって風速算出プログラム22aが実行されると、図9のメイン処理が実行される。図6を参照して、ペア情報テーブル22b及びメッシュ情報テーブル22cを説明する。
【0078】
まず、ペア情報テーブル22bを説明する。図6(a)は、ペア情報テーブル22bを模式的に表す図である。ペア情報テーブル22bには、ペアの音波送受信装置1(図中は音波送受信装置A,Bと表現)毎に音波送受信装置1が設置された際の位置である初期位置と、音波送受信装置1が設置された際の角度である初期角度と、音波送受信装置1の現在の位置である現在位置と、音波送受信装置1の現在の角度である現在角度と、ペアの音波送受信装置1の伝搬時間に基づいて算出された風速であるペア間風速とが、そのペアの音波送受信装置1を表す名称であるペア名に対応付けられて記憶される。
【0079】
初期位置および現在位置として緯度経度および高度が記憶され、それぞれ(緯度(x),経度(y),高さ(z))の形式で表記される。なお、初期位置および現在位置として、緯度経度および高度が記憶されるものに限られず、例えば、特定の位置を原点(0,0,0)とした場合の初期位置および現在位置のX座標、Y座標およびZ座標を記憶しても良い。また、初期角度および現在角度として、ロール角、ピッチ角およびヨー角が記憶され、それぞれ(ロール角(α),ピッチ角(β),ヨー角(γ))の形式で表記される。
【0080】
また、ペアにおいて現在位置が初期位置から大きくずれる等して風速が正確に算出されなかった場合、該当するペアのペア間風速には、風速に代えて「エラー」が記憶される。
【0081】
次に、メッシュ情報テーブル22cを説明する。図6(b)は、メッシュ情報テーブル22cを模式的に表す図である。メッシュ情報テーブル22cには、メッシュMn毎に、メッシュMnに含まれる計測点MPを形成するペアの音波送受信装置1のペア名と、そのメッシュMnで算出された風向および風速とが記憶される。メッシュMnにおいて計測点MP、即ちペアの音波送受信装置1が含まれない場合は、風向には「-」が設定される。
【0082】
また、ペア間風速が算出できず、上記したペア情報テーブル22bのペア間風速に「エラー」が記憶されたペアが含まれるメッシュMnにおける風速および風向には、「エラー」が記憶される。このように、メッシュ情報テーブル22cの風速および風向に「エラー」が記憶されたメッシュMnには、図4(b)の分布図Rgにおいて、計測不可NS(「×」印)が表示される。
【0083】
次に図7~8を参照して、音波送受信装置1のCPU10で実行される処理を説明する。図7は、音波送受信装置1のメイン処理のフローチャートである。音波送受信装置1のメイン処理は、音波送受信装置1の電源投入後に実行される処理である。
【0084】
音波送受信装置1のメイン処理はまず、入力装置15から設置完了通知が入力されたかを確認する(S1)。設置完了通知は、音波送受信装置1の建物30への設置が完了した場合に、作業員から音波送受信装置1の入力装置15を介して入力される通知である。この設置完了通知と共に、音波送受信装置1のペア名も作業員から入力装置15を介して入力される。
【0085】
S1の処理において、設置完了通知が入力された場合は(S1:Yes)、入力されたペア名と、GNSS受信装置3から取得した位置、即ち初期位置と、角度センサ4から取得した角度、即ち初期角度と、設置完了通知とを、無線通信装置16を介して風向風速算出サーバ20へ送信する(S2)。一方でS1の処理において、設置完了通知が入力されなかった場合は(S1:No)、S2の処理をスキップする。
【0086】
S1,S2の処理の後、GNSS受信装置3で1PPSを受信したかを確認する(S3)。S3の処理において、GNSS受信装置3で1PPSを受信した場合は(S3:Yes)、ペア待機時間データ11bに記憶されている時間分ウェイト処理を行う(S4)。S5の処理の後、基準波メモリ12a及び受信波メモリ12bの内容をそれぞれクリアした上で(S5)、基準波BW(図2参照)を作成し、基準波メモリ12aへ保存する(S6)。
【0087】
S6の処理の後、基準波メモリ12aの基準波BWを音波振動子2から送信する(S7)と同時に、音波振動子2で受信した音波Wを受信波メモリ12bに保存する(S8)。S7の処理においては、基準波BWを位相が0°の状態から送信を開始する。これによって、ペアの音波送受信装置1のそれぞれにおいて基準波BWがS3,S4の処理によって同期されたタイミングで、同一の位相から送信される。なお、S7の処理において、基準波BWを位相が0°の状態から送信を開始するものに限られず、45°や90°等の他の位相から送信を開始しても良い。
【0088】
S7,S8の処理の後、即ちS7の処理で基準波メモリ12aの基準波BWを全て送信し終わり、なおかつS8の処理で音波Wを受信しなくなった場合は、計測データ処理(S9)を実行し、その後S1以下の処理を繰り返す。
【0089】
ここで、図8を参照して計測データ処理を説明する。図8は、音波送受信装置1の計測データ処理のフローチャートである。計測データ処理はまず、図2で上記した基準波メモリ12aの基準波BWと、受信波メモリ12bの受信波RWとの相互相関処理を行う(S20)。なお、相互相関処理は既知の手法にて行われるので、詳細な説明は省略する。
【0090】
S20の処理の後、S20における相互相関処理の結果から、基準波BWと受信波RWとの位相差Q(図2参照)を取得し(S21)、その位相差Qを基準波BW及び受信波RWの周波数に基づいて時間に換算する。図2で上記した通り、位相差Qを時間に換算したものは、他の音波送受信装置1から送信された音波Wの伝搬時間なので、換算した時間を
伝搬時間として伝搬時間メモリ12cに保存する(S22)。
【0091】
S22の処理の後、GNSS受信装置3から位置、即ち現在位置を取得し(S23)、S23の処理の後、角度センサ4から角度、即ち現在角度を取得する(S24)。S24の処理の後、伝搬時間メモリ12cの伝搬時間と、S22,S23の処理で取得した現在位置および現在角度とを無線通信装置16を介して風向風速算出サーバ20へ送信し(S25)、計測データ処理を終了する。
【0092】
次に、図9~11を参照して、風向風速算出サーバ20のCPU21で実行される処理を説明する。図9は、風向風速算出サーバ20のメイン処理のフローチャートである。風向風速算出サーバ20のメイン処理は、風向風速算出サーバ20の電源投入後に実行される処理である。
【0093】
風向風速算出サーバ20のメイン処理はまず、無線通信装置26を介して音波送受信装置1から設置完了指示を受信したかを確認する(S50)。即ち音波送受信装置1のメイン処理(図7参照)のS2の処理によって送信された設置完了指示が風向風速算出サーバ20で受信されたかが確認される。
【0094】
S50の処理において、設置完了指示を受信した場合は(S50:Yes)、設置完了指示と共に受信したペア名、初期位置および初期角度をペア情報テーブル22b(図6(a)参照)に追加する(S51)。この際、受信した初期位置および初期角度は、ペア情報テーブル22bの現在位置および現在角度にも記憶される。これによって、音波送受信装置1が設置された際の初期状態の音波送受信装置1の位置および角度がペア情報テーブル22bに登録される。
【0095】
なお、S51の処理によって、ペアの音波送受信装置1の一方から既にペア名、位置および角度が受信されてペア情報テーブル22bに記憶されている状態で、S51の処理で同一のペア名、位置および角度が受信された場合は、ペア情報テーブル22bの該当するペア名において位置および角度が記憶されていない側の領域に、受信した位置および角度が記憶される。
【0096】
S50の処理において、設置完了指示を受信していない場合は(S50:No)、S51の処理をスキップする。
【0097】
S50,S51の処理の後、入力装置27からメッシュの更新指示があったかを確認する(S52)。具体的に、メッシュ情報テーブル22c(図6(b)参照)に新たなメッシュMnを追加する場合や、既にメッシュ情報テーブル22cに記憶されているメッシュMnに含まれるペアの音波送受信装置1を追加または削除する場合に、作業員から入力装置27を介してメッシュMnの情報の更新指示が入力される。
【0098】
S52の処理において、メッシュ情報の更新指示があった場合は(S52:Yes)、作業員から入力装置27を介して入力された情報に基づいて、メッシュ情報テーブル22cを更新する(S53)。一方で、メッシュ情報の更新指示がなかった場合は(S52:No)、S53の処理をスキップする。
【0099】
S52,S53の処理の後、ペアの音波送受信装置1から無線通信装置26を介して現在位置、現在角度および伝搬時間を受信したかを確認する(S54)。即ちペアを形成する音波送受信装置1のそれぞれから、計測データ処理(図8参照)のS25の処理によって送信された現在位置、現在角度及び伝搬時間が受信されたかが確認される。
【0100】
S54の処理において、ペアの音波送受信装置1から現在位置、現在角度および伝搬時間を受信した場合は(S54:Yes)、受信した現在位置および現在角度をペア情報テーブル22bの該当するペア(以下「該当ペア」という)における現在位置および現在角度へ保存する(S55)。S55の処理の後、ペア間風速算出処理(S56)を実行し、その後、メッシュ風向風速算出処理(S57)を実行する。図10,11を参照してペア間風速算出処理およびメッシュ風向風速算出処理を説明する。
【0101】
図10は、風向風速算出サーバ20のペア間風速算出処理のフローチャートである。ペア間風速算出処理はまず、該当ペアの現在位置および現在角度と、該当ペアの初期位置および初期角度とが所定の範囲内であるかを確認する(S70)。
【0102】
具体的に、該当ペアの音波送受信装置1(即ち図6(a)における該当ペアの音波送受信装置A,B)のそれぞれの現在位置および現在角度と、対応する初期位置および初期角度とが比較され、現在位置における緯度、経度および高さと、対応する初期位置における緯度、経度および高さとの差がそれぞれ±1000mm以内であり、なおかつ現在角度におけるロール角、ピッチ角およびヨー角と、対応する初期角度におけるロール角、ピッチ角およびヨー角とのそれぞれの角度の差が±10°以内であるかどうかが確認される。なお、比較される位置の差は±1000mmに限られず、±1000mm以上でも±1000mm以下でも良い。また、比較される角度の差も±10°以内に限られず、±10°以上でも±10°以下でも良い。
【0103】
S70の処理において、該当ペアの現在位置および現在角度と該当ペアの初期位置および初期角度とが所定の範囲内である場合は(S70:Yes)、該当ペアの伝搬時間が共に所定の時間内であるかを確認する(S71)。具体的には、該当ペアの伝搬時間の絶対値が共に基準波BWの周期(基準波BWの周波数が10Hzの場合は、周期は0.1秒)の絶対値以下かどうかが比較される。なお、受信した伝搬時間と比較される時間は、基準波BWの周期に限られず、例えば「0.05秒」等の固定の時間でも良い。
【0104】
S71の処理において、該当ペアの伝搬時間が共に所定の時間内の場合は(S71:Yes)、該当ペアの現在位置および現在角度から、該当ペアを形成する音波送受信装置1同士を結ぶ直線を算出し、その直線の長さから該当ペア間の距離であるペア間距離を算出する(S72)。この際、該当ペアの現在角度を用いて現在位置を補正することで、音波振動子2の角度のずれによる距離の変化をペア間距離に反映できる。
【0105】
S72の処理の後、算出されたペア間距離と、該当ペアのそれぞれの伝搬時間から、ペア間の風速であるペア間風速を算出し、ペア情報テーブル22bの該当ペアのペア間風速に保存する(S73)。該当ペアにおける「音波送受信装置A」(図6(a)参照)の伝搬時間をTa、「音波送受信装置B」の伝搬時間をTb、ペア間距離をLpとすると、ペア間風速Vpは、以下の数式1で算出される。
【0106】
【数1】
【0107】
数式1で算出されたペア間風速Vpが、該当ペアのペア間風速としてペア情報テーブル22bに記憶される。かかるペア間距離は、ペアの音波送受信装置1のGNSS受信装置3から受信した位置に基づいて算出されるので、ペアの音波送受信装置1間の正確な距離とできる。これによって、ペア間風速も正確に算出することできる。
【0108】
S70の処理において、該当ペアの現在位置または現在角度と該当ペアの初期位置または初期角度とが所定の範囲外である場合は(S70:No)、該当ペアの現在位置または現在角度が、初期位置または初期角度から大きくずれた場合なので、LCD28に該当ペアがずれている旨のエラーメッセージを表示する(S74)。
【0109】
エラーメッセージとしては、現在位置または現在角度が初期位置または初期角度から大きくずれ、ペアの音波送受信装置1が対向しなくなった場合に「ペアを形成する音波振動子2が対向していないため、音波Wを受信できません」と表示し、また、現在位置が初期位置からずれ、現在位置によるペア間距離が初期位置によるものから大きく離れた場合に「ペアを形成する音波振動子2の距離が離れたため、風速が正確に算出できません」と表示するものが例示される。
【0110】
S74の処理の後、該当ペアの現在角度のロール角またはピッチ角が±45°を超えたかを確認する(S75)。具体的には、該当ペアの現在角度のロール角またはピッチ角が45°より大きいか又は-45°より小さいかが確認される。S75の処理において、該当ペアの現在角度のロール角またはピッチ角が±45°を超えている場合は(S75:Yes)、該当ペアの音波送受信装置1が大きく傾いている状態であり、これは設置されている建物30が倒壊していると推定される場合である。かかる場合に、LCD28に該当ペアの音波送受信装置1が設置されている建物30が倒壊している旨を表示する(S76)。
【0111】
一方で、S75の処理において該当ペアの現在角度のロール角およびピッチ角が±45°を超えていない場合は(S75:No)、S76の処理をスキップする。なお、S75の処理で建物30が倒壊しているかを判断する角度は±45°に限られず、±45°以上でも±45°以下でも良い。
【0112】
S71の処理において、該当ペアのいずれかの伝搬時間が所定の時間以上である場合は(S71:No)、音波送受信装置1の音波振動子2が故障したことにより、音波Wを送信するタイミングが遅延した場合や、音波振動子2が故障または汚染したり、音波振動子2が水平方向に回転したことにより、ペアを形成する音波振動子2が対向しなくなる等して音波Wが正確に受信できず、伝搬時間が正確に算出されなかった場合である。かかる場合に、LCD28に該当ペアの伝搬時間が異常である旨のエラーメッセージを表示する(S77)。
【0113】
S75,S76,S77の処理の後、即ち上記のS73の処理でペア間風速が算出されなかった場合は、ペア情報テーブル22bの該当ペアのペア間風速に「エラー」保存する(S78)。S73,S78の処理の後、ペア間風速算出処理を終了する。
【0114】
以上説明した通り、ペア間風速算出処理では、ペア情報テーブル22bに記憶される該当ペアの現在位置および現在角度が、対応する初期位置および初期角度と所定の範囲内であり(S70:Yes)、なおかつ該当ペアの伝搬時間が共に所定の時間内である場合は、該当ペアの現在位置、現在角度および伝搬時間を用いてペア間風速が算出される。これにより、該当ペアの現在位置および現在角度と、対応する初期位置および初期角度とのずれ量が所定の範囲内の軽微な場合は、作業員が該当ペアの現在位置や現在角度を目視する等して確認(点検)し、風向風速算出サーバ20に該当ペアの現在位置や現在角度を再設定することなく、ペア間風速を算出できる。これにより、作業員の作業負荷を軽減することができる。
【0115】
一方で、該当ペアの現在位置または現在角度が、対応する初期位置または初期角度の所定の範囲外である場合は、該当ペアが対向していない旨のエラーメッセージが表示される。これにより、作業員が定期的に巡回して該当ペアの音波送受信装置1を目視することなく、該当ペアの現在位置や現在角度がずれてこれらが対向していないことを把握できるので、作業員の作業負荷を軽減できると共に、該当ペアのずれを補正するための作業員の点検・保守等を迅速に行うことができる。
【0116】
同様に、該当ペアの伝搬時間が所定の時間以上である場合に(S71:No)、伝搬時間が異常である旨のエラーメッセージが表示される。これにより、作業員は音波振動子2が故障や汚染する等して、音波Wが正確に送受信できない状態を把握できるので、その状態を解消するための点検・保守等を迅速に行うことができる。
【0117】
次に図11を参照して、メッシュ風向風速算出処理を説明する。メッシュ風向風速算出処理はまず、メッシュ情報テーブル22cに記憶されているメッシュMnの番号(位置)を表すカウンタ変数Nに1を設定する(S90)。
【0118】
S90の処理の後、メッシュ情報テーブル22cのN番目に記憶されているメッシュMnの対象ペアの情報を取得する(S91)。S91の処理の後、S91の処理によって対象ペアの情報が取得されたかを確認する(S92)。S92の処理において、対象ペアの情報が取得された場合は(S92:Yes)、取得した対象ペアにおけるペア間風速が「エラー」であるかを確認する(S93)。
【0119】
S93の処理において、取得した対象ペアにおけるペア間風速が「エラー」ではない場合は(S93:No)、取得した対象ペアのそれぞれ現在位置およびペア間風速に基づいて図3(a)で上記した風速ベクトルを作成する(S94)。具体的には、対象ペアのそれぞれにおいて、ペアの音波送受信装置1の現在位置の間を結ぶ直線を「方向」とし、そのペアで算出されたペア間風速を「大きさ」とした風速ベクトルが作成される。
【0120】
S94の処理の後、S94の処理で算出された対象ペアの風速ベクトルを合成することで、上記図3(a)で説明した風向風速ベクトルVmを作成し、その風向風速ベクトルVmの向きから風向を、風向風速ベクトルVmの大きさから風速を取得し、それぞれメッシュ情報テーブル22cのN番目の風向および風速に保存する(S95)。
【0121】
この際、対象ペアに基づく計測点MPが複数ある場合は、図4(a)で上記した通り、メッシュMnにおける中心位置と、計測点MPとの距離の反比例に応じた加重平均によって、メッシュMnに含まれる複数の計測点MPの風向および風速が合成され、その結果がメッシュ情報テーブル22cのN番目の風向および風速に保存される。
【0122】
一方で、S93の処理において、取得した対象ペアにおけるペア間風速が「エラー」である場合は(S93:Yes)、メッシュ情報テーブル22cのN番目の風向および風速に「エラー」を保存する(S96)。また、S92の処理において、対象ペアの情報が取得されなかった場合は(S92:No)、S93~S95の処理をスキップする。
【0123】
S92,S95,S96の処理の後、カウンタ変数Nに1を加算し(S97)、そのカウンタ変数Nがメッシュ情報テーブル22cに記憶されている全てのメッシュMnの数よりも大きいかを確認する(S98)。S98の処理において、カウンタ変数Nがメッシュ情報テーブル22cの全てのメッシュMnの数以下の場合は(S98:No)、S91以下の処理を繰り返す。
【0124】
一方で、カウンタ変数Nがメッシュ情報テーブル22cの全てのメッシュMnの数より大きい場合は(S98:Yes)、メッシュ情報テーブル22cにおける対象ペアなしのメッシュMnの風速を、その周囲の対象ペアありのメッシュMnの風速に基づいて補間することで推定し、メッシュ情報テーブル22cの該当するメッシュMnの風速に保存する(S99)。S99の処理の後、メッシュ風向風速算出処理を終了する。
【0125】
図9に戻る。S54の処理において、ペアの音波送受信装置1から現在位置、現在角度および伝搬時間を受信していない場合は(S54:No)、S55~S57の処理をスキップする。S54,S57の処理の後、ユーザから入力装置27を介して風向風速の表示要求が入力されたかを確認する(S58)。
【0126】
S58の処理において、風向風速の表示要求が入力された場合は(S58:Yes)、メッシュ情報テーブル22cに記憶される各メッシュMnの風向および風速に基づいて、図4(b)で上記した分布図Rgを作成し、LCD28に表示する(S59)。
【0127】
S58の処理において、風向風速の表示要求が入力されなかった場合(S58:Yes)又はS59の処理の後、S50以下の処理を繰り返す。
【0128】
次に、図12,13を参照して第2実施形態を説明する。上記した第1実施形態では、基準波BWとして低周波かつ連続波を用い、基準波BWと音波振動子2で受信した受信波RWとを相互相関処理することでこれらの位相差を算出し、その位相差に基づいて伝搬時間を算出した。これに対して第2実施形態では、チャープ信号による音波を基準波BWとし、そのチャープ信号による基準波BWと受信波RWとを相互相関処理することで得られるピークPkを取る時間から伝搬時間を算出する。第1実施形態と同一の部分については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0129】
図12(a)は、第2実施形態における基準波BWを表す図である。第2実施形態では基準波BWとして、図12(a)に示すようなチャープ信号が用いられる。チャープ信号は、時間経過と共に周波数が変化するものであり、第2実施形態の基準波BWとして、周波数を20kHzから40kHzに1秒間かけて線形に変化させたチャープ信号が用いられる。
【0130】
かかるチャープ信号に基づく基準波BWと音波振動子2で受信した受信波RWとによる伝搬時間の算出について、図12(b)を参照して説明する。図12(b)は、第2実施形態において基準波BWと受信波RWとを相互相関処理をした結果の波形を表す図である。第2実施形態においても、基準波BWと受信波RWとを相互相関処理をした結果に基づいて、伝搬時間が算出される。
【0131】
チャープ信号による基準波BWと受信波RWとを相互相関処理を行うと、図12(b)に示すような、ピークPkを取る波形である結果波形PWが出力される。ピークPkは、基準波BWと受信波RWとのずれに応じて生じるものであるので、ピークPkを検出する時間と、基準波BWが音波振動子2から送信された時間とに基づくことで、受信波RWの伝搬時間を算出することができる。
【0132】
また、ピークPkにおける振幅(即ち高さ)は、チャープ信号の継続時間(第2実施形態では1秒)とチャープ信号において変化させる周波数の差(第2実施形態では20kHz)との積に比例する大きさとされ、ピークPkの時間幅は、上記の周波数の差に比例するとされる。
【0133】
なお基準波BWとして、周波数を20kHzから40kHzに1秒間かけて線形に変化(増加)させたチャープ信号を用いたが、これに限られない。基準波BWは、周波数を40kHzから20kHzに1秒間かけて線形に変化(減少)させたチャープ信号でも良い。また、変化させる周波数帯は20kHz~40kHzに限られず、変化させる周波数帯の下限が20kHz以下でも良いし、変化させる周波数帯の上限が40kHz以上でも良い。また、チャープ信号を変化させる時間は1秒間に限られず、1秒以上でも良いし、1秒以下でも良い。また、基準波BWはチャープ信号によるもの限られず、他の波形、例えば、符号変調(例えば、CDMA方式)によるものでも良い。
【0134】
次に、図13を参照して、第2実施形態の音波送受信装置100における計測データ処理を説明する。図13は、第2実施形態における音波送受信装置100の計測データ処理のフローチャートである。
【0135】
第2実施形態における計測データ処理は、S20の処理によってチャープ信号による基準波メモリ12aの基準波BWと受信波メモリ12bの受信波RWとの相互相関処理の後、その相互相関処理した結果の結果波形PW(図12(b)参照)からピークPkを取得する(S200)。
【0136】
S200の処理の後、検出したピークPkを取る時間から伝搬時間を算出し、伝搬時間メモリ12cへ保存する(S201)。具体的に、伝搬時間を算出する手法は、予め、基準波BWの送信を開始した時間とピークPkを取る時間との時間差と、伝搬時間との関係を較正(校正、キャリブレーション)により取得し、図7のS7の処理による基準波BWの送信を開始した時間とS200の処理で取得されたピークPkを取る時間との時間差から伝搬時間が算出される。S201の処理の後、S23以下の処理を行う。
【0137】
以上説明した通り、第2実施形態の音波送受信装置100では基準波BWとしてチャープ信号が用いられる。チャープ信号は正弦波と比較して、パルス圧縮した場合のピークPkの幅を小さくでき、ピークPkの形状が鋭くなる。これにより、チャープ信号による基準波BWと音波振動子2で受信した音波WとによるピークPkを精度良く取得できるので、取得されたピークPkに基づき伝搬時間を精度良く算出できる。
【0138】
また、ピークPkの振幅の高さは基準波BWの継続時間に比例して高くなる。よって、基準波BWの継続時間を長くする程ピークPkの検出が容易になると共に、該継続時間を長くすることで基準波BWに基づいて音波振動子2から送信される音波Wのエネルギーが確保される。これにより、ペアの音波送受信装置100間が長距離であっても、ペアのうちの1の音波送受信装置1で送信され、他の音波送受信装置100で受信した音波Wの減衰を抑制できるので、音波Wの伝搬時間を正確に算出できる。
【0139】
風向風速算出サーバ20において、このようにペアの音波送受信装置100で算出された伝搬時間とペアの音波送受信装置100間の距離Lとから、ペアの音波送受信装置100間の風速が算出される。これにより、ペアの音波送受信装置100間が長距離であっても、ペアの音波送受信装置100間の風速を正確に算出できる。
【0140】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0141】
上記実施形態では、風速算出システムSにおける音波送受信装置1で伝搬時間を算出し、風向風速算出サーバ20で風速を算出したが、これに限られない。例えば、風向風速算出サーバ20で伝搬時間および風速を算出しても良い。この場合、基準波BW及び音波振動子2で受信した受信波RWを風向風速算出サーバ20に送信し、風向風速算出サーバ20において受信した基準波BW及び受信波RWを相互相関処理し、その結果から伝搬時間を算出すれば良い。また、風速算出システムSから風向風速算出サーバ20を省略し、風速算出システムSにおける特定の音波送受信装置1に風向風速算出サーバ20と同等の処理を実行させても良い。
【0142】
上記実施形態では、基準波BWを作成および送信する際のタイミング信号として、GNSS受信装置3で受信した1PPSを用いたが、これに限られない。例えば、GNSS衛星40から送信され、GNSS受信装置3で受信した時刻に基づいて基準波BWを作成および送信しても良いし、その他のGNSS衛星40からの情報に基づいて基準波BWを作成および送信しても良い。また、風向風速算出サーバ20で作成して送信したタイミング信号をペアの音波送受信装置1で受信し、受信したタイミング信号に基づいて基準波BWを作成および送信しても良い。
【0143】
上記実施形態では、音波Wを送受信する送信部および受信部として、1の音波振動子2を音波送受信装置1に設ける例を示したが、これに限られず、音波送受信装置1に2以上の音波振動子2を設け、それぞれの音波振動子2で別々の送受信ペアを形成しても良い。また、音波送受信装置1から音波振動子2を省略し、その代わりに送信部と受信部とを別々の装置で構成しても良い。例えば、音波送受信装置1に送信部としてスピーカを、受信部としてマイクロホンをそれぞれ設け、スピーカから音波Wを他の音波送受信装置1に送信し、スピーカで他の音波送受信装置1からの音波Wを受信すれば良い。
【0144】
第1実施形態では基準波BWとして連続波かつ低周波のみを用い、第2実施形態では、基準波BWとしてチャープ信号のみを用いた。しかし、これに限られず、基準波BWとして連続波かつ低周波とチャープ信号とを適宜切り替えて作成し、音波振動子2から送信しても良い。例えば、基準波BWとして連続波かつ低周波とチャープ信号とを交互に作成して音波振動子2から送信しても良いし、ペアの音波送受信装置1間の環境(湿度や二酸化炭素濃度等)に応じて、連続波かつ低周波とチャープ信号とのいずれかを基準波BWとしても良い。
【0145】
第1実施形態では、全ての音波送受信装置1で基準波BWの周波数を10Hzとしたがこれに限られない。例えば、1のペアの音波送受信装置1同士では同一の周波数を用い、その周波数を他のペアの音波送受信装置1で用いられるものと異なった周波数としても良い(例えば、図3(a)のペアP1同士の基準波BWの周波数を10Hzとし、ペアP2同士の基準波BWの周波数を15Hzとする等)。
【0146】
上記実施形態では、ペア待機時間データ11bには、異なるペアにおいて、異なった時間を記憶した。しかし、これに限られず、例えば、ペアに依らず同一の時間をペア待機時間データ11bに記憶しても良いし、同一のメッシュMnに含まれるペアにおいては、それぞれ異なった時間をペア待機時間データ11bに記憶しても良い。
【0147】
上記実施形態において、分布図RgをLCD28に表示したが、これに限られない。例えば、風向風速算出サーバ20にプリンタを接続し、分布図Rgをプリンタで印刷して出力しても良いし、無線通信装置26及びインターネット等を介して、他のコンピュータに分布図Rgを電子メールやSMS、SNS等で送信しても良い。また、風向風速算出サーバ20にスピーカを接続し、スピーカから分布図Rgの各メッシュMnの風向および風速を音声で出力しても良い。
【0148】
また、図10のペア間風速算出処理のS76,S77の処理においてエラーメッセージを風向風速算出サーバ20のLCD28に表示したが、これに限られない。例えば、風向風速算出サーバ20にスピーカを設け、スピーカからS76,S77の処理におけるエラーメッセージを音声で出力しても良いし、S76,S77の処理におけるエラーメッセージを無線通信装置26及びインターネットを介して作業員に電子メールやSMS、SNS等で送信しても良い。
【0149】
上記実施形態では、ペア情報テーブル22bの現在位置や現在角度に基づいて伝搬時間や風速ベクトル等を算出したが、これに限られず、ペア情報テーブル22bの初期位置や初期角度に基づいて伝搬時間や風速ベクトル等を算出しても良い。
【0150】
更に音波送受信装置1にGNSS受信装置3と角度センサ4とを設けたが、これに限られない。音波送受信装置1からGNSS受信装置3を省略しても良いし、角度センサ4を省略しても良い。GNSS受信装置3又は角度センサ4を省略した場合には、ペア情報テーブル22bの位置または角度のうち、省略したGNSS受信装置3又は角度センサ4に該当する情報を作業員が入力装置27を介して入力し、ペア情報テーブル22bの初期位置又は初期角度に記憶し、記憶された初期位置や初期角度に基づいて伝搬時間や風速ベクトル等を算出しても良い。
【0151】
上記実施形態では、音波送受信装置1と風向風速算出サーバ20とを無線通信装置16及び無線通信装置26を介した無線通信によって情報を送受信したが、これに限られず、音波送受信装置1と風向風速算出サーバ20とを通信ケーブルで接続し、その通信ケーブルを介した有線通信によって情報を送受信しても良い。
【0152】
上記実施形態では、風速算出プログラム22aを実行するコンピュータとして風向風速算出サーバ20を例示したが、これに限られず、風速算出プログラム22aをタブレット端末やスマートフォン等の他のコンピュータで実行しても良い。また、風速算出プログラム22aをROM等に記憶し、風速算出プログラム22aのみを実行する専用装置に、本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0153】
S 風速算出システム
20 風向風速算出サーバ(コンピュータ)
22a 風速算出プログラム
W 音波
2 音波振動子(送信部、受信部)
3 GNSS受信装置(GNSS受信部)
4 角度センサ(角度取得部)
BW 基準波
Q 位相差
S2 初期位置取得手段、初期角度取得手段
S6 基準波作成手段
S7 音波送信手段
S8 音波受信手段
S22,S201 伝搬時間算出手段
S23 現在位置取得手段
S24 現在角度取得手段
S54 伝搬時間取得ステップ
S59 風向風速出力手段、風向風速出力ステップ
S73 風速算出手段、風速算出ステップ
S74 位置ずれ報知手段、角度ずれ報知手段
S94 方向取得手段、風速ベクトル作成手段、方向取得ステップ、風速ベクトル作成ステップ
S95 メッシュ領域風速風向算出手段、メッシュ領域風速風向算出ステップ
22b ペア情報テーブル(初期位置記憶手段、初期角度記憶手段)
M1~M42,Mn メッシュ(メッシュ領域)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13