(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167163
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】有機性廃棄物の処理システム、バイオガス生産装置及び有機性廃棄物の処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/04 20060101AFI20221027BHJP
C02F 11/08 20060101ALI20221027BHJP
B09B 3/65 20220101ALI20221027BHJP
C10L 3/08 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
C02F11/04 A ZAB
C02F11/08
B09B3/00 C
C10L3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072769
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄大
(72)【発明者】
【氏名】小島 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】隅倉 光博
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AA03
4D004CA12
4D004CA13
4D004CA18
4D004CA22
4D004CA34
4D004CB04
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4D004CC07
4D004CC11
4D004CC12
4D059AA01
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4D059AA07
4D059AA08
4D059AA23
4D059BA12
4D059BA22
4D059BA34
4D059BA48
4D059BC01
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4D059CC10
4D059DA01
4D059DA08
4D059DA39
4D059DA44
4D059DA55
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】メタン発酵槽内の微生物量を維持し、バイオガスを効率良く生産できる有機性廃棄物の処理システム、バイオガス生産装置及び有機性廃棄物の処理方法。
【解決手段】有機性廃棄物Aを加圧して分解し、窒素成分Cを含む第一の流体Bを得る分解装置10と、第一の流体Bに含まれる窒素成分Cを回収し、第二の流体Dを得る回収装置20と、第二の流体Dを気体Eと液体Fとに分離する分離装置30と、液体Fと嫌気性の微生物とを含む培養液からメタンガスを含むバイオガスを生産するバイオガス生産装置40とを有する、有機性廃棄物の処理システム1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を加圧して分解し、窒素成分を含む第一の流体を得る分解装置と、
前記第一の流体に含まれる前記窒素成分を回収し、第二の流体を得る回収装置と、
前記第二の流体を気体と液体とに分離する分離装置と、
前記液体と嫌気性の微生物とを含む培養液からメタンガスを含むバイオガスを生産するバイオガス生産装置とを有する、有機性廃棄物の処理システム。
【請求項2】
前記バイオガス生産装置が、前記培養液を収容する培養槽と、前記培養槽中の前記培養液を濾過する濾過器と、
前記濾過器で生じた濾液を排出する排出配管と、を有する、請求項1に記載の有機性廃棄物の処理システム。
【請求項3】
有機性廃棄物を加圧して得られる液体からメタンガスを含むバイオガスを生産するバイオガス生産装置であって、
前記液体と嫌気性の微生物とを含む培養液が収容された培養槽と、
前記培養液を濾過する濾過器と、
前記濾過器で生じた濾液を排出する排出配管と、を有する、バイオガス生産装置。
【請求項4】
有機性廃棄物を加圧して分解し、窒素成分を含む第一の流体を得る分解工程と、
前記第一の流体に含まれる前記窒素成分を回収し、第二の流体を得る回収工程と、
前記第二の流体を気体と液体とに分離する分離工程と、
前記液体と嫌気性の微生物とを含む培養液からメタンガスを含むバイオガスを生産するバイオガス生産工程とを有する、有機性廃棄物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物の処理システム、バイオガス生産装置及び有機性廃棄物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥等の有機性廃棄物は大量に発生し、処理場等に集積する国産バイオマスの一つとして注目されている。これらの有機性廃棄物が有するエネルギーを回収、利用することが求められている。有機性廃棄物に含まれる有機物を有効利用する方法の例として、例えば、メタン発酵によるメタンガスを含むバイオガスの生産が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、有機性廃棄物の一部を水に可溶化し、水に可溶化した有機性廃棄物を濾過し、濾別した液体成分に対してメタン発酵を行う有機性廃棄物の処理方法が提案されている。特許文献1の技術によれば、フィルター濾過で有機性廃棄物から水溶性成分を回収し、メタン発酵の効率を高めることが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、濾別した液体成分(培養液)は原料となる有機性廃棄物と比べて有機物の濃度が低く、培養液において排水量に対する微生物の増殖が追い付かず、微生物量が少なくなってしまう。このため、バイオガスの生産効率の低下が懸念される。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、培養液における微生物量を維持し、バイオガスを効率良く生産できる有機性廃棄物の処理システム、バイオガス生産装置及び有機性廃棄物の処理方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を有する。
[1]有機性廃棄物を加圧して分解し、窒素成分を含む第一の流体を得る分解装置と、
前記第一の流体に含まれる前記窒素成分を回収し、第二の流体を得る回収装置と、
前記第二の流体を気体と液体とに分離する分離装置と、
前記液体と嫌気性の微生物とを含む培養液からメタンガスを含むバイオガスを生産するバイオガス生産装置とを有する、有機性廃棄物の処理システム。
[2]前記バイオガス生産装置が、前記培養液を収容する培養槽と、前記培養槽中の前記培養液を濾過する濾過器と、
前記濾過器で生じた濾液を排出する排出配管と、を有する、[1]に記載の有機性廃棄物の処理システム。
[3]有機性廃棄物を加圧して得られる液体からメタンガスを含むバイオガスを生産するバイオガス生産装置であって、
前記液体と嫌気性の微生物とを含む培養液が収容された培養槽と、
前記培養液を濾過する濾過器と、
前記濾過器で生じた濾液を排出する排出配管と、を有する、バイオガス生産装置。
【0008】
[4]有機性廃棄物を加圧して分解し、窒素成分を含む第一の流体を得る分解工程と、
前記第一の流体に含まれる前記窒素成分を回収し、第二の流体を得る回収工程と、
前記第二の流体を気体と液体とに分離する分離工程と、
前記液体と嫌気性の微生物とを含む培養液からメタンガスを含むバイオガスを生産するバイオガス生産工程とを有する、有機性廃棄物の処理方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有機性廃棄物の処理システム、バイオガス生産装置及び有機性廃棄物の処理方法によれば、メタン発酵槽内の微生物量を維持し、バイオガスを効率良く生産できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る有機性廃棄物の処理システムの構成を概略的に示すフロー図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るバイオガス生産装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪有機性廃棄物の処理システム≫
本発明の有機性廃棄物の処理システムは、分解装置と、回収装置と、分離装置と、バイオガス生産装置とを有する。
以下、本発明の有機性廃棄物の処理システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の有機性廃棄物の処理システム1は、分解装置10と、回収装置20と、分離装置30と、バイオガス生産装置40とを有する。分解装置10と回収装置20とは、配管で接続されている。回収装置20と分離装置30とは、配管で接続されている。分離装置30とバイオガス生産装置40とは、配管で接続されている。
図中の矢印は、原料や生成物等の流体の移動方向を示す。
【0013】
分解装置10は、有機性廃棄物を加圧して分解し、窒素成分を含む流体を得る装置である。分解装置10としては、例えば、加圧装置を備える耐圧容器が挙げられる。
加圧装置としては、分解装置10の内部を加圧可能な装置であればよく、例えば、高圧ポンプや圧力調整バルブ等が挙げられる。
耐圧容器としては、例えば、ステンレスやニッケル合金等の金属製の耐圧容器が挙げられる。
【0014】
分解装置10は、加熱ヒーターを有していてもよい。
加熱ヒーターとしては、分解装置10の内部を加熱可能なヒーターであればよく、例えば、高温の水蒸気を通流させるスチームヒーターや、ガスボイラー等が挙げられる。
【0015】
回収装置20は、流体に含まれる窒素成分を分離する装置である。回収装置20としては、例えば、第一の流体Bに含まれる窒素成分Cを吸着できる吸着剤を備える吸着塔等が挙げられる。
【0016】
分離装置30は、気液混合流体を気体と液体とに分離する装置である。分離装置30としては、例えば、熱交換器を備える凝縮器等の気液分離器が挙げられる。
【0017】
バイオガス生産装置40は、有機性廃棄物Aから得られる炭素成分を含む液体と嫌気性の微生物とを含む培養液からメタンガスを含むバイオガスを生産する装置である。バイオガス生産装置40としては、例えば、培養液を収容する培養槽と減圧弁と排出配管とを備えるメタン発酵槽等が挙げられる。
【0018】
バイオガス生産装置40は、培養槽中の培養液を濾過する濾過器を有することが好ましい。
前記濾過器としては、例えば、嫌気性の微生物が通過しない大きさの孔径を有する濾過フィルター等が挙げられる。
濾過フィルターの孔径は、嫌気性の微生物が通過しない大きさであればよく、例えば、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。濾過フィルターの孔径の下限値は、例えば、0.1μmが好ましい。濾過フィルターの孔径が上記下限値以上であると、培養液に含まれる水分を容易に排出できる。加えて、濾過フィルターの孔径が上記下限値以上であると、バイオガス生産装置40の培養槽の内部圧力が高くなり過ぎることを抑制できる。
【0019】
培養槽としては、例えば、ステンレスやニッケル合金等の金属製の耐圧容器が挙げられる。
減圧弁としては、例えば、圧力調整バルブ等の従来公知の開閉弁等が挙げられる。
排出配管としては、例えば、金属製や樹脂製の配管が挙げられる。
【0020】
≪有機性廃棄物の処理方法≫
本発明の有機性廃棄物の処理方法は、分解工程と、回収工程と、分離工程と、バイオガス生産工程とを有する。
有機性廃棄物の処理システム1を用いた有機性廃棄物の処理方法について、
図1に基づいて説明する。
【0021】
まず、有機性廃棄物Aを分解装置10に供給する。
有機性廃棄物Aとしては、例えば、アンモニア含有消化液、食品廃棄物、家畜排泄物、下水の濃縮汚泥や消化汚泥、有機汚泥等が挙げられる。有機性廃棄物Aは、炭素成分に加え、窒素成分を含有する。
【0022】
分解工程は、有機性廃棄物Aを加圧して分解し、窒素成分Cを含む第一の流体Bを得る工程である。
分解工程における分解装置10の内部圧力は、少なくとも大気圧(0.1MPa)よりも高ければよく、例えば、5MPa以上が好ましく、10MPa以上がより好ましく、22MPa(水の臨界圧力)以上であってもよい。分解工程における分解装置10の内部圧力が上記下限値以上であると、有機性廃棄物Aを炭素成分と窒素成分Cとに分解できる。分解工程における分解装置10の内部圧力の上限値は、特に限定されないが、例えば、30MPa以下とされる。
【0023】
分解装置10の内部圧力は、例えば、高圧ポンプと、圧力調整バルブによって調整できる。
【0024】
分解工程では、分解装置10の内部圧力を高圧(例えば、5MPa)にしなくてもよく、その場合、有機性廃棄物Aを分解可能な薬剤を用いたり、分解装置10を加熱したりすることが好ましい。
有機性廃棄物Aを分解可能な薬剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、過酸化水素等が挙げられる。
【0025】
分解装置10を加熱する場合、分解装置10の内部温度は、例えば、60℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、374℃(水の臨界温度)以上であってもよい。分解装置10の内部温度が上記下限値以上であると、有機性廃棄物Aの溶解度が高まり、有機性廃棄物Aの分解をより促進できる。
なお、分解装置10の内部温度を374℃以上にし、かつ、分解装置10の内部圧力を5MPa以上とすることで、分解装置10の内部を水の亜臨界条件又は水の超臨界条件とすることができる。分解装置10の内部を水の亜臨界条件又は水の超臨界条件とすることで、有機性廃棄物Aを完全に分解することができるため、より好ましい。
【0026】
分解工程で分解されずに残った固形分は、例えば、押出ポンプ等を用いて、分解装置10の外部に排出できる。
【0027】
回収工程は、第一の流体Bに含まれる窒素成分Cを回収し、第二の流体Dを得る工程である。
第一の流体Bは、分解工程で得られるため、高圧の液体又は気体の状態になっている。
第一の流体Bの圧力は、少なくとも大気圧(0.1MPa)よりも高ければよく、例えば、5MPa以上が好ましく、10MPa以上がより好ましい。第一の流体Bの圧力が上記下限値以上であると、後述するバイオガス生産工程における培養液の圧力をより高められる。このため、培養液をよりスムーズに濾過でき、培養液における微生物の濃度を維持できる。その結果、バイオガスをより効率良く生産できる。
第一の流体Bの圧力の上限値は、特に限定されないが、例えば、30MPa以下とされる。
【0028】
回収工程では、第一の流体Bに含まれる窒素成分Cを除去して、回収する。
窒素成分Cとしては、例えば、窒素や、アンモニア等が挙げられる。これらの窒素成分Cは、水素エネルギーの輸送媒体(エネルギーキャリア)や燃料(エネルギー源)として利用可能である。このため、窒素成分Cを回収することで、エネルギーを有効利用できるため好ましい。
加えて、窒素成分Cを回収することで、後述するバイオガス生産工程において、例えば、高濃度のアンモニアによるメタン発酵の阻害を抑制できる。このため、バイオガスをより効率良く生産できる。
【0029】
窒素成分Cを除去する方法としては、例えば、窒素成分Cを吸着できる吸着剤を備える吸着塔に第一の流体Bを供給し、吸着剤に第一の流体Bを接触させ、第一の流体Bに含まれる窒素成分Cを吸着剤に吸着させ、その後窒素成分Cを吸着剤から脱着させる方法が挙げられる。
窒素成分Cの吸脱着は、吸着塔の内部圧力及び内部温度を調整することにより制御できる。
窒素成分Cを吸着できる吸着剤としては、例えば、ゼオライト、リン酸マグネシウム等、公知の吸着剤が挙げられる。
【0030】
分離工程は、第二の流体Dを気体Eと液体Fとに分離する工程である。
第二の流体Dは、窒素成分Cが除去されているため、炭素成分と水分とを含む流体になっている。
第二の流体Dの圧力は、例えば、1MPa以上が好ましく、5MPa以上がより好ましい。第二の流体Dの圧力が上記下限値以上であると、後述するバイオガス生産工程における培養液の圧力をより高められる。このため、培養液をよりスムーズに濾過でき、培養液における微生物の濃度を維持できる。その結果、バイオガスをより効率良く生産できる。
第二の流体Dの圧力の上限値は、特に限定されないが、例えば、30MPa以下とされる。
【0031】
気体Eとしては、例えば、分解工程で生成した水蒸気や二酸化炭素を含む排ガスが挙げられる。気体Eは、酸素や二酸化硫黄等を含んでいてもよい。
液体Fとしては、例えば、分解工程で生成した水や酢酸等の低分子量の有機酸を含む処理液が挙げられる。
【0032】
第二の流体Dを気体Eと液体Fとに分離する方法としては、例えば、加熱によって蒸発した水分を冷却によって凝集する方法、亜臨界状態にあった処理液を減圧することによって気化させる方法等が挙げられる。
分離工程における気体Eと液体Fとの分離は、分離装置30の内部圧力及び内部温度を調整することにより制御できる。
【0033】
気体Eは、排ガスとして、分離装置30の外部に排出される。
液体Fは、処理液として、バイオガス生産装置40に供給される。
【0034】
バイオガス生産工程は、有機性廃棄物Aから得られる炭素成分を含む液体Fと嫌気性の微生物とを含む培養液からメタンガスを含むバイオガスを生産する工程である。バイオガス生産工程では、嫌気性の微生物によって、処理液(液体F)に含まれる有機物が分解される。バイオガス生産工程では、嫌気性の微生物によって、二酸化炭素が還元されてもよい。処理液に含まれる有機物の分解や、二酸化炭素の還元によって、メタンガスを含むバイオガスGが発生する。
バイオガスGは、バイオガス生産装置40の外部に供給され、エネルギー源として有効利用できる。
【0035】
嫌気性の微生物としては、例えば、Methanosarcina属古細菌、Methanothermobacter属古細菌等のメタン菌が挙げられる。二酸化炭素の還元によってバイオガスをより効率良く生産できることから、嫌気性の微生物としては、Methanosarcina barkeriが好ましい。
【0036】
バイオガス生産装置40が液体Fと嫌気性の微生物とを含む培養液を濾過する濾過器を有する場合、培養液に含まれる水分及び不要な水溶性成分を濾液として、培養槽に接続された排出配管を介して外部に排出できる。このため、培養液における嫌気性の微生物の濃度を一定以上に保つことができ、微生物量を維持できる。その結果、バイオガスを効率良く生産できる。
培養液における微生物の濃度は、1×102~1×109Cells/mLが好ましく、1×104~1×108Cells/mLがより好ましい。培養液における微生物の濃度が上記下限値以上であると、バイオガスをより効率良く生産できる。培養液における微生物の濃度が上記上限値以下であると、余剰微生物Iの量を低減できる。
培養液における微生物の濃度は、例えば、顕微鏡による観察や、自動セルカウンターを用いた測定により求められる。
【0037】
液体Fは、分解工程を経て得られるため、高圧の液体となっている。このため、液体Fを含む培養液は、加圧された状態になっており、スムーズに培養液を濾過できる。加えて、高圧の液体Fを供給するので、改めてバイオガス生産装置40の培養槽の内部を加圧する必要がない。このため、バイオガス生産装置40の培養槽の内部を加圧するためのエネルギーを供給する必要がなく、省エネルギー化を実現できる。
培養槽の内部圧力は、少なくとも大気圧(0.1MPa)よりも高ければよく、例えば、1MPa以上が好ましく、5MPa以上がより好ましい。
培養槽の内部圧力の上限値は、特に限定されないが、例えば、30MPaとされる。
【0038】
バイオガス生産工程において、バイオガスの生産に不要な水分や水溶性成分は、排水Hとして、バイオガス生産装置40の培養槽に接続された排出配管を介して外部に排出される。
バイオガスを生産する上で過剰となった嫌気性の微生物は、余剰微生物Iとして、バイオガス生産装置40の培養槽に接続された排出配管を介して外部に排出される。余剰微生物Iは、分解装置10に供給して、有機性廃棄物Aとともに分解処理に供してもよい。
【0039】
本実施形態の有機性廃棄物の処理システム1によれば、有機性廃棄物Aの加圧処理によって得られた窒素成分Cをエネルギーキャリアやエネルギー源として有効利用できる。
有機性廃棄物の処理システム1によれば、加圧処理によって得られた液体Fから、バイオガスを生産できる。
有機性廃棄物の処理システム1によれば、バイオガス生産装置40の内部の嫌気性の微生物の濃度を高く維持することができる。このため、バイオガスを効率良く生産できる。
有機性廃棄物の処理システム1によれば、窒素成分Cを回収できるため、高濃度のアンモニアによるメタン発酵の阻害を抑制できる。このため、バイオガスを効率良く生産できる。
有機性廃棄物の処理システム1によれば、加圧処理によって殺菌された液体Fを用いるため、雑菌が混入せず、嫌気性の微生物の安定した培養が可能となる。
有機性廃棄物の処理システム1によれば、加圧処理時に酸素が消費されるため、嫌気性の環境が維持されやすい。
有機性廃棄物の処理システム1によれば、高温・高圧環境のような特殊な環境に生育する微生物の培養に適した環境を提供できる。
【0040】
≪バイオガス生産装置≫
本発明のバイオガス生産装置は、有機性廃棄物を加圧して得られる液体から、メタンガスを含むバイオガスを生産する装置である。
本発明のバイオガス生産装置は、有機性廃棄物を加圧して得られる液体と嫌気性の微生物とを含む培養液が収容された培養槽と、培養液を濾過する濾過器と、濾過器で生じた濾液を排出する排出配管と、を有する。
以下、本発明のバイオガス生産装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0041】
図2に示すように、本実施形態のバイオガス生産装置50は、培養槽52と、水槽53と、濾過器54と、減圧弁56と、減圧弁58と、配管L1と、配管L2と、排出配管L3と、排出配管L4とを有する。濾過器54は、培養槽52の内部に設置されている。培養槽52の外側には、水槽53が設けられている。配管L1、配管L2、排出配管L3は、それぞれ、培養槽52に接続されている。排出配管L4は、水槽53に接続されている。配管L2には、減圧弁56が設けられている。排出配管L3には、減圧弁58が設けられている。
【0042】
バイオガス生産装置50としては、上述の有機性廃棄物の処理システム1が有するバイオガス生産装置40と同様の耐圧容器と減圧弁と排出配管とを備えるメタン発酵槽等が挙げられる。
バイオガス生産装置50は、バイオガス生産装置40と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0043】
培養槽52としては、例えば、嫌気性の微生物を収容できる耐圧容器が挙げられる。耐圧容器としては、例えば、ステンレスやニッケル合金等の金属製の耐圧容器が挙げられる。
【0044】
水槽53としては、例えば、水を収容できる耐圧容器が挙げられる。水槽53の耐圧容器としては、例えば、ガラスや透明な樹脂製の耐圧容器が挙げられる。
【0045】
濾過器54としては、例えば、嫌気性の微生物が通過しない大きさの孔径を有する濾過フィルター等が挙げられる。
濾過フィルターの孔径は、嫌気性の微生物が通過しない大きさであればよく、例えば、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。濾過フィルターの孔径の下限値は、例えば、0.1μmが好ましい。濾過フィルターの孔径が上記下限値以上であると、培養液に含まれる水分を容易に排出できる。加えて、濾過フィルターの孔径が上記下限値以上であると、バイオガス生産装置50の培養槽52の内部圧力が高くなり過ぎることを抑制できる。
【0046】
減圧弁56としては、例えば、圧力調整バルブ等の従来公知の開閉弁等が挙げられる。
減圧弁58としては、減圧弁56と同様の開閉弁等が挙げられる。
【0047】
配管L1~L2としては、例えば、金属製や樹脂製の配管が挙げられる。
排出配管L3~L4としては、例えば、配管L1~L2と同様の金属製や樹脂製の配管が挙げられる。
【0048】
次に、本実施形態のバイオガス生産装置50を用いたバイオガスの生産方法について、
図2に基づいて説明する。
図2において、符号F、G、H、Iは、
図1で説明した液体F、バイオガスG、排水H、余剰微生物Iと同様である。
【0049】
まず、液体Fを、配管L1を介して培養槽52へ供給する。培養槽52には、嫌気性の微生物を含む培養液が収容されている。
嫌気性の微生物としては、例えば、Methanosarcina属古細菌、Methanothermobacter属古細菌等のメタン菌が挙げられる。二酸化炭素の還元によってバイオガスをより効率良く生産できることから、嫌気性の微生物としては、Methanosarcina barkeriが好ましい。
【0050】
液体Fは、水や酢酸等の低分子量の有機酸を含む。液体Fを培養槽52へ供給することにより、嫌気性の微生物によって、液体Fに含まれる有機物の分解や、二酸化炭素の還元によって、メタンガスを含むバイオガスGが発生する。
バイオガスGは、配管L2を介してバイオガス生産装置50の外部に供給され、エネルギー源として有効利用できる。
【0051】
液体Fと嫌気性の微生物とを含む培養液は、培養槽52の内部に設置された濾過器54によって濾過される。この際、培養液に含まれる水分及び不要な水溶性成分が濾過器54を通過して、水槽53に貯留される。水槽53に貯留された水分及び不要な水溶性成分は、排水(濾過器54で生じた濾液)Hとして、排出配管L4を介して外部に排出される。このため、バイオガス生産装置50の培養槽52の内部に含まれる嫌気性の微生物の濃度を一定以上に保つことができ、微生物量を維持できる。その結果、バイオガスを効率良く生産できる。
【0052】
培養液における微生物の濃度は、1×102~1×109Cells/mLが好ましく、1×104~1×108Cells/mLがより好ましい。培養液における微生物の濃度が上記下限値以上であると、バイオガスをより効率良く生産できる。培養液における微生物の濃度が上記上限値以下であると、余剰微生物Iの量を低減できる。
培養液における微生物の濃度は、例えば、顕微鏡による観察や、自動セルカウンターを用いた測定により求められる。
培養液における微生物の濃度は、液体Fと混合する前の微生物の濃度、培養槽52へ供給する液体Fの量、及びこれらの組み合わせにより調整できる。
【0053】
液体Fは、分解工程を経て得られるため、高圧の液体となっている。このため、液体Fを含む培養液は、加圧された状態になっており、培養液は、加圧された状態で濾過器54を通過する。このため、培養液は、スムーズに濾過器54を通過し、濾過の効率を高められる。その結果、バイオガスを効率良く生産できる。
加えて、高圧の液体Fを供給するので、改めて培養槽52の内部を加圧する必要がない。このため、培養槽52の内部を加圧するためのエネルギーを供給する必要がなく、省エネルギー化を実現できる。
培養槽52の内部圧力は、少なくとも大気圧(0.1MPa)よりも高ければよく、例えば、1MPa以上が好ましく、5MPa以上がより好ましい。
培養槽52の内部圧力の上限値は、特に限定されないが、例えば、30MPaとされる。
培養槽52の内部圧力は、減圧弁56及び減圧弁58を開閉することにより、調整できる。
【0054】
培養槽52の内部で過剰となった嫌気性の微生物は、培養槽52の底部に沈降する。培養槽52の底部に沈降した嫌気性の微生物は、余剰微生物Iとして、排出配管L3を介して、バイオガス生産装置50の外部に排出される。
【0055】
以上、本発明の有機性廃棄物の処理システム、バイオガス生産装置及び有機性廃棄物の処理方法について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、バイオガス生産装置50において、濾過器54は、培養槽52の内部に設置されている。しかし、バイオガス生産装置において、濾過器は、培養槽の外部に設置されていてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…有機性廃棄物の処理システム、10…分解装置、20…回収装置、30…分離装置、40…バイオガス生産装置、50…バイオガス生産装置、52…培養槽、53…水槽、54…濾過器、56,58…減圧弁、L1~L2…配管、L3~L4…排出配管