(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016721
(43)【公開日】2022-01-24
(54)【発明の名称】開閉装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/635 20150101AFI20220117BHJP
【FI】
E05F15/635
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119596
(22)【出願日】2020-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】520257337
【氏名又は名称】株式会社IKS
(74)【代理人】
【識別番号】100181881
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 俊一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 等
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA01
2E052CA06
2E052DA08
2E052DB08
2E052EA15
2E052EB01
2E052EC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】開閉対象へ動力を安定的に伝達することができ、且つ開閉装置及び固定手段に過度な剛性が要請されない着脱及び取り外し後の原状回復が容易な開閉装置を提供する。
【解決手段】雄ねじを備えた直動シャフト3、直動シャフト3を回転自在に支持する支持フレーム4、雄ねじと螺合する雌ねじを備えた直動ブロック5、直動シャフト3に螺合された直動ブロック5の姿勢を規制するブロックガイド6、及び直動シャフト3を回転させる駆動手段7を備えた本体と、本体を定位置に固定する突っ張り手段を備え、直動ブロック5に、開閉対象を確保するための保持手段を備える開閉装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ねじを備えた直動シャフト、前記直動シャフトを回転自在に支持する支持フレーム、 前記雄ねじと螺合する雌ねじを備えた直動ブロック、前記直動シャフトに螺合された直動ブロックの姿勢を規制するブロックガイド、及び前記直動シャフトを回転させる駆動手段を備えた本体と、前記本体を定位置に固定する突っ張り手段を備え、
前記直動ブロックに、開閉対象を確保するための保持手段を備えることを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
前記直動シャフトは、多条ねじの雄ねじを備えることを特徴とする請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
前記直動シャフトを回転不能とする制動手段を備える請求項1又は請求項2のいずれかに記載の開閉装置。
【請求項4】
前記保持手段は、着脱自在であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の開閉装置。
【請求項5】
前記本体に、前記直動シャフトの長手方向の両側へ伸縮する様に前記突っ張り手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓、扉又はカーテンなど所定の軌道に沿って開閉する装備と組み合わせて自動開閉を行わせる開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窓、扉又はカーテンなどは、一般的には手動で開け閉めを行うものであるが、事情に応じて時限的に自動開閉が要請される場合がある。
その際、それらの装備やそれらを組み込んだ躯体等に一時的にであっても自動開閉機構を組み込むとすれば、極めて大がかりで手間とコストを要することとなる。
また、その様な機能を追加する装備を一旦組み込むと、組み込み先の外観に種々加工の痕跡を残すこととなり、原状回復が困難になる場合がある。
【0003】
その様な実情の下、接着剤や接着物(両面接着テープ等)、調整可能な固定具(例えば下記特許文献2参照)を用い、特殊な加工をせず、又、特殊な工具を使用せず、既存の窓に安価で容易に取り付け可能な遠隔操作式窓開閉装置が紹介されている(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-307075号公報
【特許文献2】実開昭60-101984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術は、ラックが窓に接着剤や接着物(両面接着テープ等)を使用して固定され、ピニオンを有しモーターを動力とする駆動装置及びその制御部分を格納したプラットホームを、長さ調整装置を使用して窓枠に固定する構成を採るため、接着剤等でラックが固定されていた窓の原状回復が困難であるのみならず、当該ラックにピニオンの動力を安定的に伝えるためには極めて高い剛性が前記接着剤等、プラットホーム及び長さ調整装置に求められるという問題がある。
その結果、それらの装置は、コストが嵩む他、取り付け位置も極めて限定されることとなる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、開閉対象へ動力を安定的に伝達することができ、且つ開閉装置及び固定手段に過度な剛性が要請されない着脱及び取り外し後の原状回復が容易な開閉装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明による開閉装置は、雄ねじを備えた直動シャフト、前記直動シャフトを回転自在に支持する支持フレーム、前記雄ねじと螺合する雌ねじを備えた直動ブロック、前記直動シャフトに螺合された直動ブロックの姿勢を規制するブロックガイド、及び前記直動シャフトを回転させる駆動手段を備えた本体と、前記本体を定位置に固定する突っ張り手段を備え、前記直動ブロックに、開閉対象を確保するための保持手段を備えることを特徴とする。
【0008】
前記直動シャフトは、多条ねじの雄ねじを備える構成を採用することができる。
また、前記直動シャフトを回転不能とする制動手段を備える構成を採用することができる。
その他、前記保持手段は、着脱自在な構成を採ることができ、又は、開閉領域に応じて本体の位置決めの便宜を図るべく、前記本体に、前記直動シャフトの長手方向の両側へ伸縮する様に前記突っ張り手段を備える構成を採ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明による開閉装置によれば、前記ラック・ピニオンによる従来手段の様にラックとピニオンとの位置関係を確実に保持するための剛性を必要としないため、本体及び固定手段に過度な剛性(開閉方向以外への負担に対抗する剛性)が要請されず、安価で軽量な構成で提供できることとなる。
また、本発明による開閉装置は、接着剤や接着物に頼ることなく、突っ張り手段で前記本体を定位置に固定し好適に機能させられる構成を備えることによって、着脱及び取り外し後の原状回復が容易となる。
【0010】
更に、本発明によれば、過度な剛性を要さず直動シャフトにアルミ合金等の軽量素材を用いることが可能となったことによって直動シャフトの振れを抑制することができる他、直動シャフトにリードの比較的長いねじや多条ねじを採用し一回転で開閉する長さを長くすれば、直動シャフトの回転数や回転速度が低減され直動シャフトの振れを更に抑制することができる。
【0011】
前記直動シャフトを回転不能とする制動手段を備える構成を採用することによって、リードの比較的長いねじや多条ねじを用いることで開閉対象に手動による開閉操作が行われた際の制動力が低下した場合であっても開閉対象の移動を抑制しブレーキ機構又はロック機構としての機能を得ることができる。
前記保持手段にあっては、着脱自在とすることによって、開閉対象に適した保持手段を選択的に装着する構成を採ることができる。
加えて、前記本体に、前記直動シャフトの長手方向の両側へ突っ張る様に前記突っ張り手段を備える構成を採ることによって、開閉領域に応じて適切に本体の位置決めを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による開閉装置の一例を示す説明図である。
【
図2】本発明による開閉装置の実施態様例を示す斜視図である。
【
図3】本発明による開閉装置における突っ張り手段の配置例を示す説明図である。
【
図4】本発明による開閉装置の直動シャフトに用いられるねじの一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による開閉装置の実施の形態を、窓の障子を開閉させる開閉装置の例を挙げて図面に基づき詳細に説明する。
図1及び
図2に示す例は、窓の障子を保持して開閉する開閉装置本体(以下「本体1」という)と、前記本体1を固定箇所の所定位置(障子の開閉範囲に対応できる位置)に位置決め固定する突っ張り手段2とで構成される。
【0014】
この例における開閉装置の本体1は、雄ねじを備えた直動シャフト3と、前記直動シャフト3を回転自在に支持する支持フレーム4と、前記雄ねじと螺合する雌ねじを備えた直動ブロック5と、前記直動シャフト3に螺合された直動ブロック5の姿勢及び軌道を規制するブロックガイド6と、前記直動シャフト3を回転させる駆動手段7と、及び前記駆動手段7を制御する制御手段8と、それらを内包して保護する筐体9を備える。
【0015】
前記直動シャフト3は、前記駆動手段7から与えられた回転力を受け、ねじ対偶により前記直動ブロック5を当該直動シャフト3に沿って進退させる。
この例の直動シャフト3は、軽量で且つ一定の剛性を備えるアルミ合金を採用することによって、前記駆動手段7に求められる駆動力(回転トルク等)が軽減されている。
この例の雄ねじは、障子の開閉に求められる移動距離、位置決め精度又は直動シャフト3の回転速度に対する振れに応じて、通常(一条)ねじ乃至多条ねじ(窓の場合は二条ねじ乃至四条ねじ)を選択的に採用する(
図4参照)。
【0016】
ここで、一条ねじとは、1ピッチの間に一条の螺旋が穿設されたねじであり、多条ねじとは、同一ピッチの螺旋が複数条並走する様に穿設されたねじである。
各螺旋の1ピッチの間に他の螺旋が介在する結果、例えば、n条ねじのリード(1回転で進む距離)は、一条ねじのn倍となり、リードがn倍になれば1回転で進むスピードも必然的にn倍となる。
一条ねじであっても多条ねじ同様にリードを大きくすることはできるが、1ピッチに複数のねじ山を持つ多条ねじを雄ねじと雌ねじに備える方が、1ピッチに一条のねじ山を持たない一条ねじに比べて高い強度を得ることができる。
この様に、多条ねじを採用することによって、同じ距離を開閉する際にも高速で開閉することができる他、同じスピードで開閉する際に要する回転数が少なくて済むことともなる。
その結果、直動シャフト3の軽量化とも相俟って開閉時における振動、騒音が低減され、良好な開閉が可能となる。
【0017】
この例の前記支持フレーム4は、前記筐体9の内空部に固定され、前記直動シャフト3の両端を回転自在に支持する軸受けと、前記駆動手段7及び制御手段8を支持する取付ステー(図示所略)を具備する。
前記支持フレーム4は、前記筐体9の長手方向に沿って前記直動シャフト3を支持し、前記直動ブロック5の進退軌道を前記筐体9に対して相対的に規制する。
前記支持フレーム4は、当該支持フレーム4に支持される直動シャフト3に沿って当該直動シャフト3と螺合する直動ブロック5の進退時における姿勢(回転位相等)を安定させるブロックガイド6を平行に支持する。
【0018】
この例の筐体9は、アルミ合金からなる板材を箱状に成形したものが採用されている。
前記筐体9の側面は、その長手方向に沿って引出し孔10を備えると共に、前記突っ張り手段2を確保する取付ステー(図示省略)を備える。尚、前記取付けステーは、筐体9に内装することができる。
【0019】
前記直動ブロック5は、前記直動シャフト3に螺合される雌ねじを備えたねじ孔を具備し、前記直動シャフト3に穿設された雄ねじとのねじ対偶により前記筐体9の長手方向に沿って進退する。
前記直動ブロック5は、開閉対象を確保するための保持手段11を装着できるアタッチメント部(図示省略)を、筐体9の引出し孔10から露出する形で備えると共に、前記ブロックガイド6を保持するガイドホルダを備える。
前記ガイドホルダには、前記ブロックガイド6を上下又は左右から丁度挟む二股の保持片12(
図1(B)参照)や、前記ブロックガイド6が挿通する内面が滑らかなガイド孔を備える構造等を採用すればよい。
【0020】
一方、前記アタッチメント部は、チャックなど保持手段11の連結部との関係で適宜着脱できる構成を採る。
前記保持手段11は、例えば、開閉対象を挟んでねじで適当に締めつけることにより保持できる構造を適宜選択する。
前記保持手段11は、窓の障子の開閉に用いる場合には、障子の枠を両側面から挟持する構成を採ることができる。一方、カーテンの開閉に用いる場合には、カーテンの可動端(カーテンレール等に固定されていない端部)の上部等を挟持する構成を採ることができる。
【0021】
この例の前記駆動手段7は、モーター13と、歯車を組み合わせた減速機14からなり、前記支持フレーム4の取付ステー(図示省略)に固定される。この例の駆動手段7は、直動シャフト3に回転力を伝達する出力軸の先端部に直動シャフト3の一端に連結するための継手15を備えたものである。
【0022】
この例の制御手段8は、取り入れた商用電源をモーター駆動用及び制御用の電源に変換する電源部と、モーター13の停止・正転・逆転及び回転速度を制御する制御部と、外部との通信を行い制御部への制御入力を受け付ける通信部を備え、前記筐体9の取付ステーに固定される(図示省略)。尚、通信媒体は、電波や赤外線等から適宜選択することができる。
前記駆動手段7及び制御手段8は、前記筐体9の長手方向いずれかの端部などの空き領域に配置される。
【0023】
前記直動シャフト3は、前記の如く多条ねじの雄ねじを採用することができるものの、雄ねじの条数を増やす等によりリードを大きくすると、駆動手段7の回転がフリーとなった時に障子を手動で開くことが容易となる。
そこで、障子にブレーキをかけ、又はロックするために、前記直動シャフト3を回転不能とする制動手段(図示省略)を備えることが便宜となる。
前記制動手段は、例えば、前記駆動手段7の減速機14を構成する歯車等に正逆ラチェット歯車を併設し、前記制御手段8で正逆制動爪をそれぞれ正逆ラチェット歯車へ食い込ませる等の手法を採ればよい。
尚、前記制動手段は、非常時などで電源が落ちた時に前記直動シャフト3の回転がフリーとなる構成を採ることができる。
【0024】
前記突っ張り手段2は、前記筐体9の取付ステーに確保された外管2aに対して内管2bをねじ対偶等で進退させ、外管2aからの内管2bの離脱長を調整することで突っ張り手段2の全長を伸縮させるものである。
前記突っ張り手段2は、筐体9にその長手方向(直動シャフト3の長手方向)に沿って固定されることで筐体9と突っ張り手段2を合わせた全長を変化(伸縮)させる。それにより、窓枠等の相対向する枠材の内側に、当該枠材の内面に突っ張る状態で筐体9を固定する(
図3(A)参照)。
更に、前記筐体9に、その長手方向の両側へ突っ張る様に前記突っ張り手段2を一対確保することによって、長手方向に向けて配置された両突っ張り手段2,2の伸び量を調整し、窓枠等の取付位置における配置を調整することができる(
図3(B)参照)。
加えて、前記保持手段11が置かれる高さを調整すべく、筐体9の下方へ伸縮する突っ張り手段2を付設することもできる(
図3(C)参照)。
【0025】
以上の如く構成された開閉装置によれば、突っ張り手段2と、開閉対象を挟持する保持手段11の機能により、当該開閉装置の本体1を所望の取付箇所へ正確に且つ容易に装着することができ、突っ張り手段2及び保持手段11の機能を解除することにより取り外し後の原状回復が容易となる。
また、この開閉装置は、ラックへピニオンギア押し当てる様な余分な構成を必要とせず、開閉対象を進退させるための動力を当該開閉対象へ安定的に伝達することができ、それに耐えるための支持力も直動シャフト3に沿って筐体9に保持された突っ張り手段2の突っ張り力のみをもって足りるため、筐体9や支持フレーム4の剛性にあっても概ね開閉方向への剛性をもって足り、その配置や開閉状態も極めて安定したものとなる。
【0026】
更に、直動の駆動源となるねじ対偶の要素に多条ねじを採用することによって、直動シャフト3に高回転させることも回避され、直動シャフト3に軽量高強度なアルミ合金を使用することとも相俟って直動シャフト3の回転時における振れも抑制することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 本体,
2 突っ張り手段,2a 外管,2b 内管,
3 直動シャフト,
4 支持フレーム,
5 直動ブロック,
6 ブロックガイド,
7 駆動手段,
8 制御手段,
9 筐体,
10 引出し孔,
11 保持手段,
12 保持片,
13 モーター,
14 減速機,
15 継手,