(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167220
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】金型監視装置及び金型監視方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20221027BHJP
B29C 45/84 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072880
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】391025512
【氏名又は名称】ウシオライティング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592065069
【氏名又は名称】江藤電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097548
【弁理士】
【氏名又は名称】保立 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小森谷 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】酒井 隆司
(72)【発明者】
【氏名】松本 英樹
(72)【発明者】
【氏名】飯田 正彦
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM04
4F206AQ01
4F206JA07
4F206JL02
4F206JP01
4F206JP05
4F206JP11
4F206JP14
4F206JP15
4F206JQ81
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】 金型の大型化に対応した実用的な金型監視装置及び金型監視方法を提供する。
【解決手段】 一対の金型91,92の内側に向けられた複数のカメラ11~14が撮影した各画像が装置本体2に送られ、基準画像と比較されて成形状況の正常異常が判断される。各カメラ11~14は、四つの各個別領域をそれぞれ撮影するよう取り付けられるか、いずれか二つのカメラが共通領域を重なって撮影するよう取り付けられる。装置本体2のディスプレイに22に表示されたモード設定画面で、各カメラから画像を取得する際のモードが選択されて、設定情報ファイル35に記録される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つが可動金型である一式の金型が閉じられた状態で金型内で物品を成形した後に金型を開いて物品を取り出す成形装置において、成形後に開いた金型の内側を監視する金型監視装置であって、
開いた金型の内側に向けられている四台以上のカメラと、
各カメラが撮影した金型の内側の画像に従って成形状態の正常異常を判断する判断部と
を備えており、
各カメラは、金型の内側の領域をカメラの台数の数の領域に分けた個別領域をそれぞれ撮影するよう取り付けられており、
判断部は、各カメラから送られた画像をそれぞれに設定されている基準画像と比較して成形状態の正常異常を判断するものであることを特徴とする金型監視装置。
【請求項2】
前記四台以上のカメラのうちの少なくとも一台は、前記金型の内側のうち他のカメラから見ると隠れてしまって捉えることできない部位を撮影するよう取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の金型監視装置。
【請求項3】
少なくとも一つが可動金型である一式の金型が閉じられた状態で金型内で物品を成形した後に金型を開いて物品を取り出す成形装置において、成形後に開いた金型の内側を監視する金型監視装置であって、
開いた金型の内側を撮影可能な複数のカメラと、
前記カメラが撮影した金型の内側の画像に従って成形状態の正常異常を判断する判断部と、
記憶部と、
各カメラが撮影した画像の取得モードを設定したモード設定と
を備えており、
モード設定部は、各カメラについて、撮影する画像が成形状態の正常異常を判断するための画像であるかどうかの種別に加え、撮影される画像の性質についての種別が設定される設定部であることを特徴とする金型監視装置。
【請求項4】
前記撮影される画像の性質についての種別は、静止画か動画かの種別であることを特徴とする請求項3記載の金型監視装置。
【請求項5】
前記撮影される画像の性質についての種別は、可視光により撮影する画像であるか、赤外線により撮影するサーモグラフィ画像であるかの種別であることを特徴とする請求項3又は4記載の金型監視装置。
【請求項6】
少なくとも一つが可動金型である一式の金型が閉じられた状態で金型内で物品を成形した後に金型を開いて物品を取り出す成形装置において、成形後に開いた金型の内側を監視する金型監視方法であって、
開いた状態の金型の内側をカメラで撮影する撮影ステップと、
少なくとも一つのカメラが撮影ステップにおいて撮影した画像に基づいて成形状態の正常異常を判断する判断ステップとを
備えており、
撮影ステップは、二台のカメラが金型の内側の共通した領域を重なって撮影するステップであって、撮影される画像の性質が互いに異なる撮影が当該二台のカメラにより行われるステップであることを特徴とする金型監視方法。
【請求項7】
前記撮影ステップは、前記二台のカメラのうちの一方に静止画の撮影をさせ、他方に動画の撮影をさせるステップであることを特徴とする請求項6記載の金型監視方法。
【請求項8】
前記撮影ステップは、前記二台のカメラのうちの一方に可視光による撮影をさせ、他方に赤外線によるサーモグラフィ撮影をさせるステップであることを特徴とする請求項6記載の金型監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、各種物品の成形に用いられる成形装置において金型を監視する金型監視装置及び金型監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種物品の成形のため、金型を備えた成形装置が使用されている。例えば成形装置の一種である射出成形機では、熱可塑性樹脂を加熱して軟化させ、金型内に充填した後に冷却することで、所望の形状の物品を成形している。金型としては、一又は複数の金型から成る一式の金型が使用される。例えば、固定金型と可動金型から成る一対の金型が使用される。以下、このように金型内に材料を充填して行う成形処理を成形サイクルという。
【0003】
このような成形装置では、金型の監視が多くの場合必要になる。このため、金型監視装置が使用される。金型監視装置は、金型の内側を撮影するカメラと、カメラが撮影した画像を処理して成形状況の正常異常を判断する判断部とを有している。カメラは、可動金型の内側を撮影する位置に設けられる場合が多い。
【0004】
カメラによって金型の監視を行うのは、大きく分けて二つの理由がある。一つの理由は、成形後、物品が金型に保持されている状態で成形状況の監視を行うためである。この監視は、一次監視と呼ばれる。一次監視では、金型上の物品の形状をチェックし、正しく成形されているかどうか判断する。仮に、物品に欠け等があって、形状が正しくないと判断されると、一次監視において異常の結果となり、金型監視装置からは一次監視異常が出力される。
金型監視装置の出力は、成形装置の主制御部に入力されるようになっており、一次監視異常が出力されると、主制御部は、成形装置の動作を停止させる制御を行う。そして、作業員が、正しく成形されない原因を調査する。
【0005】
金型監視の別の目的は、主に次の成形を行うためのもので、成形後に金型が開いて物品が確実に取り出されているかを確認するための監視である。この監視は、二次監視と呼ばれる。二次監視では、物品が正しく取り出されずに残留していたり、材料が部分的に残留したりしていないかを、金型の内面の画像から判断する。物品が放出されていなかったり、材料が部分的に残留していたりしたら、二次監視異常が出力され、同様に成形装置の動作を停止させる制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6584472号公報
【特許文献2】特許第6798794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
金型監視装置が使用される各種成形装置においては、金型が大型化する傾向がある。金型の大型化は、成形する物品の大型化が理由の場合もあるが、一度に成形する物品の数を多くして生産性を高めたいという理由もある。
従来の金型監視装置では、1台のカメラを使用して監視を行っていたが、金型の大型化を背景として、複数台のカメラを使用する必要が生じてきている。金型が大型化した場合、撮影距離を長く取りつつ広角のカメラを使用すれば、1台のカメラでも対応できる場合がある。しかしながら、画像の画質が低下して監視作業に影響が出る場合もあり得る。したがって、金型の内側を複数の領域に区画し、領域の数の分のカメラを設置してそれぞれ撮影させる構成を採用することが好ましい。
【0008】
上記のように複数台のカメラを使用する場合、各領域をそれぞれ撮影する場合の他、他の撮影方式が必要になる場合もあり得る。例えば、1台のカメラは金型の内側全体を撮影するものとし、他の1台のカメラは特に監視が必要な特定領域のみを撮影することが必要になる場合もある。
本願の発明は、このような事情を考慮して為されたものであり、金型の大型化に対応した実用的な金型監視装置及び金型監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この明細書において開示された発明に係る金型監視装置は、少なくとも一つが可動金型である一式の金型が閉じられた状態で金型内で物品を成形した後に金型を開いて物品を取り出す成形装置において、成形後に開いた金型の内側を監視する金型監視装置である。
この金型監視装置は、開いた金型の内側に向けられている四台以上のカメラと、カメラが撮影した金型の内側の画像に従って成形状態の正常異常を判断する判断部とを備えている。各カメラは、金型の内側の領域を四つ以上の領域に分けた個別領域をそれぞれ撮影するよう取り付けられており、判断部は、各カメラから送られた画像をそれぞれに設定されている基準画像と比較して成形状態の正常異常を判断するものである。
また、上記課題を解決するため、この金型監視装置は、四台のカメラのうちの少なくとも一台のカメラが、金型の内側のうち他のカメラから見ると隠れてしまって捉えることできない部位を撮影するよう取り付けられているという構成を持ち得る。
【0010】
また、上記課題を解決するため、この明細書において開示された別の発明に係る金型監視装置は、少なくとも一つが可動金型である一式の金型が閉じられた状態で金型内で物品を成形した後に金型を開いて物品を取り出す成形装置において、成形後に開いた金型の内側を監視する金型監視装置である。
この金型監視装置は、開いた金型の内側を撮影可能な複数のカメラと、カメラが撮影した金型の内側の画像に従って成形状態の正常異常を判断する判断部と、記憶部と、各カメラが撮影した画像の取得モードを設定したモード設定とを備えている。モード設定部は、各カメラについて、撮影する画像が成形状態の正常異常を判断するための画像であるかどうかの種別に加え、撮影される画像の性質についての種別が設定される設定部である。
また、上記課題を解決するため、この金型監視装置において、撮影される画像の性質についての種別は、静止画か動画かの種別であり得る。
また、上記課題を解決するため、この金型監視装置において、撮影される画像の性質についての種別は、可視光により撮影する画像であるか、赤外線により撮影するサーモグラフィ画像であるかの種別であり得る。
【0011】
また、上記課題を解決するため、この明細書において開示されたさらに別の発明に係る金型監視方法は、少なくとも一つが可動金型である一式の金型が閉じられた状態で金型内で物品を成形した後に金型を開いて物品を取り出す成形装置において、成形後に開いた金型の内側を監視する方法である。
この金型監視方法は、開いた状態の金型の内側をカメラで撮影する撮影ステップと、少なくとも一つのカメラが撮影ステップにおいて撮影した画像に基づいて成形状態の正常異常を判断する判断ステップとを備えている。
撮影ステップは、二つのカメラが金型の内側の共通した領域を重なって撮影するステップであって、撮影される画像の性質が互いに異なる撮影が当該二つのカメラにより行われるステップである。
また、上記課題を解決するため、この金型監視方法において、撮影ステップは、二つのカメラのうちの一方に静止画の撮影をさせ、他方に動画の撮影をさせるステップであり得る。
また、上記課題を解決するため、この金型監視方法において、撮影ステップは、二つのカメラのうちの一方に可視光による撮影をさせ、他方に赤外線によるサーモグラフィ撮影をさせるステップであり得る。
【発明の効果】
【0012】
以下に説明する通り、開示された発明に係る金型監視装置によれば、四台以上のカメラが使用されており、四つ以上の個別領域に分けられた金型の内側の領域が各カメラで監視されるので、より大型の金型に対しても十分に精細な監視画像が取得できる。このため、大型化しつつある成形装置の金型の監視により好適に使用することができる。
また、四台以上のカメラのうちの少なくとも一台は、他のカメラから見ると隠れてしまって捉えることできない部位を撮影するよう取り付けられている構成では、複雑な構造の物品を成形したり、金型の内面が複雑な形状であったりする場合に好適となる。特に、四台以上のカメラを使用しているので、上下左右の斜め方向から金型の内側を撮影することが可能で、余程複雑な構造でない限り、金型の内側の全ての露出部位を撮影することができる。
また、開示された別の発明に係る金型監視装置によれば、各カメラについて画像の取得モードが設定でき、カメラの設置目的に応じた画像の取得が可能であるので、取得した画像について、モード設定部での設定に従って各監視に利用したり、参照用として記憶部に保存したりすることができる。このため、複数のカメラの利用範囲が広がり、利用を最適化することができる。
また、開示されたさらに別の発明に係る金型監視方法によれば、二つのカメラが金型の内側の共通した領域を重なって撮影する(重畳的に撮影する)方法であり、二つのカメラにより撮影される画像の性質が互いに異なるものであるので、金型や成形処理の内容に応じて監視を最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】各カメラの設置位置の第一の例について示した斜視概略図である。
【
図3】各カメラの設置位置の第二の例について示した斜視概略図である。
【
図4】モード設定画面の一例を示した概略図である。
【
図5】画像ファイルの保存のために記憶部に設けられたフォルダ構造の一例について示した概略図である。
【
図6】第一の例の監視シーケンスプログラムを示した概略図である。
【
図7】第二の例の監視シーケンスプログラムを示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この出願の発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
図1は、実施形態の金型監視装置の概略図である。
図1に示す金型監視装置は、複数のカメラ11~14と、カメラ11~14が接続された装置本体2とを備えている。成形装置9は、可動金型91と、固定金型92と、可動金型91を移動させる移動機構93と、閉じられた金型91,92内に材料を注入する材料注入系94と、各部を制御する主制御部90等を備えている。この他、不図示ではあるが、成形後に物品を取り出すための突き出し動作を行う突き出し機構等を備えている。
【0015】
この実施形態では、最大で四台までのカメラを装置本体2に接続してそれぞれ画像を取得することができるようになっている。
図2及び
図3は、各カメラの設置位置の例について示した斜視概略図である。このうち、
図2は設置位置の第一の例について示した斜視概略図、
図3は設置位置の第二の例について示した斜視概略図である。
図2及び
図3では、金型91,92が開いた直後の状態が描かれており、成形された物品Pが可動金型91上に保持された状態が描かれている。
図2に示す第一の例は、四台のカメラ11~14を使用する場合の設置例である。
図3に示す第二の例は、三台のカメラ11~13を使用する場合の設置例である。いずれの設置例においても、各カメラ11~14は固定金型92に対して取り付けられる。
【0016】
まず、四台のカメラ11~14を使用する場合の設置例を説明すると、
図2において、四台のカメラ11~14は、金型91,92の内側の領域をカメラの台数の数の領域に分けた各領域(以下、個別領域という。)をそれぞれ撮影するよう取り付けられている。この例では、金型91,92の内側は、全体としては方形であり、上下左右に区画されて四つの個別領域に分けられている。各カメラは、各個別領域を撮影するよう設置位置や姿勢が調整されている。
【0017】
各カメラ11~14は、可動金型91に向けられており可動金型91の内面を撮影する。成形が完了して金型91,92が開いた直後の状態では、物品Pは可動金型91に保持された状態となる。したがって、各カメラ11~14は、成形された物品Pの露出面も撮影する。「露出面」とは、可動金型91の内面に接触していない面である。
図2から解るように、この例では、左側の二台のカメラ11,12は、右側の二台のカメラ13,14から見ると隠れてしまって捉えることできない部位を撮影するよう取り付けられている。逆に、右側の二台のカメラ13,14は、左側の二台のカメラ11,12から見ると隠れてしまって捉えることできない部位を撮影するよう取り付けられている。「隠れてしまって捉えることができない部位」は、物品Pの露出面のうちの特定の部位である場合もあるし、可動金型91の内面のうちの特定の部位である場合もある。
【0018】
この実施形態では、装置本体2は、プロセッサ21やディスプレイ22、入出力インターフェース23等を備えた携帯型のコンピュータ装置となっている。具体的には、例えば10~12インチ程度のディスプレイを備えたタブレットPCが装置本体2として使用できる。各カメラ11~14は、専用のケーブルにより装置本体2の入出力インターフェース23に接続されている。入出力インターフェース23は、各カメラ11~14をそれぞれ接続するポート(4個のポート)を有しており、各ポートに各カメラ11~14が接続される。
尚、各カメラ11~14は、装置本体2に対してNFCのような無線通信で接続される場合もある。
【0019】
装置本体2は、各カメラ11~14から送られる画像の取得モードを設定するモード設定部や、取得した画像により成形状態の正常異常を判断する判断部等を含んでいる。
また、装置本体2は、SSD又はHDDのような記憶部3を有している。記憶部3には、カメラ11~14について設定された取得モードを記録した設定情報ファイル35や、金型監視の全体のシーケンスを制御する監視シーケンスプログラム31、監視取得した画像に基づいて一次監視、二次監視を行う各監視プログラム331,332、各監視プログラム331,332が参照する各基準画像ファイル32等が記憶されている。したがって、この実施形態では、モード設定部は、記憶部3及び記憶部3に記憶されている設定情報ファイル35によって構成されている。また、判断部は、装置本体2及び装置本体2に実装された各監視プログラム331,332によって構成されている。
【0020】
尚、上記の他、装置本体2には、各カメラ11~14に対して制御信号を出力して静止画を撮影させたり、動画の撮影開始・終了をさせたりする不図示の撮影制御プログラムが実装されている。撮影制御プログラムは、監視シーケンスプログラム31から呼び出されて実行される。また、装置本体2には、記憶部3の他、静止画の画像データ等を一時的に記憶する不図示のメモリが設けられている。
【0021】
ディスプレイ22は、タッチパネルとしても機能するようになっていて各種設定情報の入力部も兼ねており、装置本体2には設定情報登録プログラム36が実装されている。設定情報登録プログラム36は、各種設定情報の入力画面をディスプレイ22に表示し、入力された設定情報を設定情報ファイル35に記録するプログラムとなっている。
尚、金型監視装置は、成形装置9の主制御部90に接続されており、一次監視や二次監視において異常が判断された際にその旨を入出力インターフェース23を介して主制御部90に出力するようになっている。主制御部90に対する接続も、NFCのような無線通信で行われる場合がある。
【0022】
次に、各カメラ11~14から画像を取得する際の取得モードについて説明する。
取得モードは、各カメラ11~14からどのような画像を取得するかということであり、予め設定されて設定情報ファイル35に記録される。
図4は、設定プログラムの要素であるモード設定モジュールによりディスプレイに表示されたモード設定画面の一例を示した概略図である。
【0023】
この実施形態では、取得モードとして、静止画監視モード、動画監視モード、動画参照モード、サーモグラフィモードの四つが設定できるようになっている。静止画監視モードは、一次監視や二次監視のためにカメラから静止画を取得するモードである。動画監視モードは、カメラに動画を撮影させて取得し、そのうちの所定のタイミングの画像(静止画)で一次監視や二次監視を行うモードである。動画参照モードは、カメラに動画を撮影させて取得するものの、一次監視や二次監視には使用せずに参照用とするモードである。サーモグラフィモードは、カメラがサーモグラフィカメラの場合に設定される取得モードである。
【0024】
図4に示すように、この実施形態では、モード設定画面には四つのカメラ11~14それぞれに取得モード入力欄41~44が設けられている。この例では、取得モード入力欄41~44はいずれかを選ぶラジオボタンとなっているが、プルダウンリストのような他の形式のものでも良い。
設定情報登録プログラム36は、取得モード入力欄41~44で入力された値を設定情報ファイル35に記録するモード記録モジュールを含んでいる。
図4に示すモード設定画面に設けられたOKボタン45を押すと、モード記録モジュールが実行されてモード情報が設定情報ファイル35に記録されるようになっている。
【0025】
図5は、画像ファイルの保存のために記憶部に設けられたフォルダ構造の一例について示した概略図である。
記憶部3には、データ保存用のフォルダ30が設けられ、その下に(下位ディレクトリとして)各カメラ11~14からの画像ファイル34を保存するためのフォルダ(以下、カメラ用データフォルダ)51,61,71,81が設けられている。この例では、各カメラ用データフォルダ51,61,71,81の下に、静止画用フォルダ52、62,72,82、動画用フォルダ53,63,73,83、サーモグラフィ用フォルダ54,64,74,84が設けられている。静止画用フォルダ52,62,72,82の下には、さらに一次監視用フォルダ521,621,721,821と二次監視用フォルダ522,622,722,822とが設けられている。
【0026】
この実施形態では、各カメラ11~14が撮影した画像の画像ファイル(静止画又は動画)34は、撮影時間をファイル名にしたファイルとなっている。いずれのカメラによる画像ファイルであるかどうかは、各カメラ11~14に対して設定された識別番号又は入出力インターフェース23におけるポート番号により識別が可能である。監視シーケンスプログラム31は、例えば第一のカメラ11からの一次監視の際の静止画であれば、第一のカメラ用のカメラ用データフォルダ5の下の一次監視用フォルダ521に必要に応じて保存し、二次監視の際の静止画であれば二次監視用フォルダ522に必要に応じて保存する。また、動画であれば、第一のカメラ11用のカメラ用データフォルダ5の下の動画フォルダ53に必要に応じて保存し、第一のカメラ11がサーモグラフィカメラであれば、第一のカメラ11用のカメラ用データフォルダ51の下のサーモグラフィフォルダ54に画像ファイル34を必要に応じて保存する。第二乃至第四のカメラ12~14ついても同様である。
【0027】
監視シーケンスプログラム31は、このようにして設定された各カメラ11~14についての取得モードに応じたシーケンスを行うプログラムとなっている。以下、この点について説明する。
まず、四台のカメラ11~14が全て静止画監視モードである場合の監視シーケンスプログラム31の例について説明する。以下、この例を第一の例という。
図6は、第一の例の監視シーケンスプログラムを示した概略図である。
【0028】
監視シーケンスプログラム31は、成形装置9の稼働中は常に実行された状態であり、スタンバイ状態では成形装置9からの動作状況信号の入力待ちの状態である。監視シーケンスプログラム31に対しては、成形が開示されてから一次監視のタイミングまでの時間が定数として与えられている。この時間は、一式の金型91,92が閉じてから金型91,92が開くまでの時間、即ち金型91,92が閉じて材料が注入され、固化完了するまでの時間を含んでおり、それより少し長い時間である。以下、この時間を成形時間という。
【0029】
監視シーケンスプログラム31は、ある時刻において金型91,92が閉じたことを示す信号(以下、成形開始信号という。)を受信すると、タイマーのカウントをスタートする。そして、タイマーのカウントが成形時間に達すると、タイマーのカウントをストップしてゼロにリセットする。そして、撮影制御プログラムによりその時点における静止画を各カメラ11~14に撮影させ、各静止画を取得する。そして、各カメラ11~14について一次監視を行う。
【0030】
即ち、監視シーケンスプログラム31は、第一のカメラ11用の一次監視用の基準画像を記憶部3から取得し、第一のカメラ11から取得した静止画とともに一次監視プログラム331に引数として渡して一次監視プログラム331を実行する。一次監視プログラム331は、取得した静止画と基準画像との差異が所定の範囲内であるか判断し、所定の範囲内であれば正常の戻り値を出力する。所定の範囲を超えていれば異常の戻り値を出力する。これら戻り値は、一時的に変数に格納される。
【0031】
同様に、第二のカメラ12用の基準画像を記憶部3から取得し、第二のカメラ12から取得した静止画とともに一次監視プログラム331に引数として渡して一次監視プログラム331を実行し、その戻り値を別の変数に格納する。第三のカメラ13からの静止画、第四のカメラ14からの静止画についても同様に一次監視の処理をして、一次監視プログラム331の各戻り値をそれぞれ別の変数に格納する。
【0032】
そして、監視シーケンスプログラム31は、いずれかの戻り値が異常であれば、一次監視異常を成形装置9の主制御部90に出力する。この際、どのカメラについての結果が異常であったかを特定する情報も併せて出力される。
一次監視異常が出力されると、成形装置9の稼働が停止されるので、一次監視プログラム331も中断され、待機状態(成形開始信号の待ち受け状態)に戻される。一次監視正常(四つのカメラについての戻り値が全て正常)の場合、
図6に示すように、監視シーケンスプログラム31は、タイマーのカウントを再度スタートさせる。
尚、一次監視プログラム331の実行結果が異常であった場合、異常であった静止画を撮影したカメラについてのカメラ用データフォルダの下の一次監視用用フォルダに当該静止画の画像ファイル34を保存する。
【0033】
一方、一次監視のタイミングから二次監視のタイミングまでの時間が定数として監視シーケンスプログラム31に与えられている。この時間は、突き出し動作に要する時間を含んでいる。以下、この時間を突き出し時間と呼ぶ。
図6に示すように、監視シーケンスプログラム31は、一次監視が正常の結果であれば、タイマーを再度スタートさせる。そして、タイマーのカウントが突き出し時間に達すると、監視シーケンスプログラム31は、その時点における静止画を各カメラ11~14に撮影させ、各静止画を取得する。そして、各カメラ11~14について二次監視を行う。
【0034】
即ち、監視シーケンスプログラム31は、第一のカメラ11用の二次監視用の基準画像を記憶部3から取得し、第一のカメラ11から取得した静止画とともに二次監視プログラム332に引数として渡して二次監視プログラム332を実行する。そして、その戻り値を一時的に変数に格納する。二次監視プログラム332の戻り値も、正常又は異常である。取得した静止画と基準画像との差異が所定の範囲内であれば二次監視正常の旨の値が戻され、超えていれば二次監視異常の旨の値が戻される。
【0035】
同様に、第二のカメラ12用の基準画像を記憶部3から取得し、第二のカメラ12から取得した静止画とともに二次監視プログラム332に引数として渡して二次監視プログラム332を実行し、その戻り値を別の変数に格納する。第三のカメラ13からの静止画、第四のカメラ14からの静止画についても同様に二次監視の処理をして二次監視プログラム332の各戻り値をそれぞれ別の変数に格納する。
【0036】
監視シーケンスプログラム31は、いずれかの戻り値が異常であれば、二次監視異常を成形装置9の主制御部90に出力する。この際、どのカメラについての結果が異常であったかを特定する情報も併せて出力される。また、監視シーケンスプログラム31は、二次監視異常であった静止画の画像ファイル34を当該カメラ用のカメラ用データフォルダの下の二次監視用フォルダに保存する。
尚、タイマーのカウントは突き出し時間に達した段階でストップされ、ゼロにリセットされる。二次監視が正常、異常いずれの場合も、監視シーケンスプログラム31は、次の成形開始信号の待ち受け状態となる。
【0037】
次に、四台のカメラのうち二台が静止画監視モードであり、一台が動画参照モードである場合の監視シーケンスプログラムの例について説明する。以下、この例を第二の例という。
図7は、第二の例の監視シーケンスプログラム31を示した概略図である。
この構成における各カメラ11~14の設置位置は、
図3に示す一例が該当する。一例として、
図3における第一第二の各カメラ11,12が静止画監視モードであり、第三のカメラ13が動画参照モードであるとする。第四のカメラ14については、モード設定画面で「停止」が選択されてそれが設定情報ファイル35に記録されている。
また、
図3に示す例において、第一のカメラ11は、可動金型91の左半分の領域を撮影するよう設置され、第二のカメラ12は可動金型91の右半分の領域を撮影するよう設置される。第三のカメラは、可動金型91全体の動画を撮影するよう設置される。即ち、閉位置にある可動金型91と開位置にある可動金型92とが視野に入るよう向きやズームが調整される。
【0038】
この実施形態では、一回の成形サイクルについて1個の動画撮影がされる(即ち、1個の動画ファイルが生成される)構成となっている。したがって、一回の成形サイクルにおいて、監視シーケンスプログラム31は、第三のカメラ13に対して動画撮影開始の制御信号と、動画動作撮影終了の制御信号を送信する。この際、動画参照をより効果的にするためと、動画保存のための容量が過大にならないようにするため、動画撮影開始のタイミングと動画撮影終了のタイミングは、監視のタイミング(成形状況の正常、異常を判断するタイミング)を基準として設定されている。
【0039】
この実施形態では、一次監視のタイミングから所定時間前のタイミングを動画撮影開始とし、二次監視のタイミングから所定時間後のタイミングを動画撮影終了としている。以下、一次監視のタイミングに対して先行する時間幅を先行時間とし、二次監視のタイミングに対して遅延させる時間幅を遅延時間とする。
【0040】
図7に示すように、この例においても、成形開始信号を受信すると監視シーケンスプログラム31は、タイマーのカウントをスタートさせる。そして、成形時間-先行時間の値に達したら、第三のカメラ13に対して動画撮影開始信号を送信する。
その後、タイマーのカウントが成形時間に達したら、タイマーのカウントを止めてゼロにリセットする。そして、前述した例と同様に、第一第二の各カメラ11,12に静止画撮影の制御信号を送信する。その上で、第一のカメラ11用の一次監視用の基準画像を記憶部3から取得し、第一のカメラ11から取得した静止画とともに一次監視プログラム331に引数として渡して一次監視プログラム331を実行し、その戻り値を変数に格納する。また、第二のカメラ12用の基準画像を記憶部3から取得し、第二のカメラ12から取得した静止画とともに一次監視プログラム331に引数として渡して一次監視プログラム331を実行し、その戻り値を別の変数に格納する。
【0041】
監視シーケンスプログラム31は、いずれかの戻り値が異常であったら、一次監視異常を成形装置9の主制御部90に出力する。また、異常であったカメラが撮影した静止画の画像ファイル34を当該カメラ用のカメラ用データフォルダの下の一次監視用フォルダに保存する。そして、新たな成形開始信号の待ち受け状態に戻る。
【0042】
いずれの戻り値も正常であったら、監視シーケンスプログラム31は、タイマーのカウントを再スタートする。そして、タイマーのカウントが突き出し時間に達したら、第一第二の各カメラ11,12に静止画撮影の制御信号を送信し、二次監視を行う。即ち、第一のカメラ11用の二次監視用の基準画像を記憶部3から取得し、第一のカメラ11から取得した静止画とともに二次監視プログラム332に引数として渡して二次監視プログラム332を実行してその戻り値を変数に格納する。また、第二のカメラ12用の二次監視用の基準画像を記憶部3から取得し、第二のカメラ12から取得した静止画とともに二次監視プログラム332に引数として渡して二次監視プログラム332を実行してその戻り値を変数に格納する。
【0043】
いずれかの戻り値が異常であったら、監視シーケンスプログラム31は、成形装置9の主制御部90に二次監視異常を出力する。また、異常であったカメラが撮影した静止画の画像ファイル34を当該カメラ用のカメラ用データフォルダの下の二次監視用フォルダに保存する。
【0044】
その後、タイマーのカウントが突き出し時間+遅延時間に達したら、監視シーケンスプログラム31は、タイマーのカウントを停止してゼロにリセットするとともに、第三のカメラ13に対して動画撮影終了の制御信号を送信する。そして、新たな成形開始信号の待ち受け状態となる。この際、当該成形サイクルにおいて、一次監視の結果が異常であったか又は二次監視の結果が異常であった場合、監視シーケンスプログラム31は、撮影された動画の画像ファイル34を第三のカメラ13用のカメラ用データフォルダ7の下の動画用フォルダ73に保存する。
【0045】
尚、上記第二の例の監視シーケンスプログラム31において、一次監視が異常の結果であった場合、その時点で第三のカメラ13に撮影終了の制御信号を出力し、撮影を終了させても良い。また、二次監視については、異常の結果であった時点で動画撮影を終了させても良いが、所定の遅延時間の幅で継続する方が良い場合もある。例えば、成形された物品の突き出し動作がうまくいかず、二次監視の時点では金型に引っかかっていたが、その後間もなく自然落下するようなイレギュラーな動作となる場合がある。この場合、作業員が金型のところに行くと物品は正常に突き出されているので、二次監視異常の原因が良く判らないということになる。動画撮影が継続されていると、そのようなイレギュラーな動作も動画で確認できるので、好適である。
【0046】
このような実施形態の金型監視装置の全体の動作、及び成形装置9の全体の動作について、以下に説明する。以下の説明では、各カメラ11~14が
図2のように設置されており、全てのカメラ11~14が静止画監視モードである場合の例にする。
成形装置9を用いて成形を行う物品の製造ラインにおいて、作業者は、金型監視装置のセッティングを行う。即ち、各カメラ11~14を監視対象の金型91,92に対して必要な場所に設置し、所望の向きに向ける。そして、ズーム状態(倍率)等の設定を各カメラ11~14上で行う。そして、各カメラ11~14を専用のケーブルで装置本体2に接続した後、各カメラ11~14の設定情報の入力を行う。即ち、ディスプレイにモード設定画面を表示し、全てのカメラ11~14について静止画監視モードを選択してOKボタン45を押し、設定情報ファイル35に設定情報を記録する。この他、成形時間、突き出し時間の設定も行われる。その上で、金型監視装置を動作させ、成形装置9により成形が行われる。
【0047】
成形装置9は、一式の金型91,92が閉じられた状態で材料を金型91,92内に注入する。この際、成形開始信号が金型監視装置に対して送られる。成形開始信号を受け、装置本体2上で実行されている監視シーケンスプログラム31は、タイマーのカウントをスタートさせる。
成形装置9は、設定された成形時間までの間に、可動金型91を移動させて金型91,92を開く。そして、成形時間に達すると、監視シーケンスプログラム31は、各カメラ11~14に制御信号を送り、その時点で静止画を撮影させ、一次監視プログラム331が実行される。
【0048】
いずれかカメラからの静止画について一次監視の結果が異常であると判断されると、一次監視異常が装置本体2から成形装置9の主制御部90に送られる。これにより、主制御部90が動作し、成形サイクルが中断される。一次監視異常が出力されなければ、成形装置9は、突き出し動作を行う。これにより、物品が突き出されて金型91,92から取り出される。
【0049】
一方、金型監視装置のタイマーが成形時間に達した際に0にリセットされて再スタートしている。タイマーのカウントが突き出し時間に達すると、金型監視装置は、タイマーのカウントを停止して0にリセットするとともに、二次監視を行う。いずれかのカメラからの静止画について異常が戻されると、監視シーケンスプログラム31は二次監視異常を成形装置9の主制御部90に出力する。
二次監視異常の出力を受けた成形装置9の主制御部90は、次の成形サイクルを中止し、金型91,92が開いたままの状態とする。二次監視が正常である場合、成形装置9は、再び金型91,92を閉じ、材料を注入して次の成形サイクルを行う。金型監視装置に対しては成形開始信号が入力され、監視シーケンスプログラム31はタイマーのカウントを開始する。以後、同様の処理が繰り返される。
【0050】
上記動作に係る実施形態の金型監視装置によれば、四台のカメラ11~14が使用されており、四つの個別領域に分けられた金型91,92の内側の領域が各カメラ11~14で監視されるので、より大型の金型に対しても十分に精細な監視画像が取得できる。このため、大型化しつつある成形装置の金型監視により好適に使用することができる。
【0051】
この際、四台のカメラ11~14のうちの少なくとも一台は、他のカメラから見ると隠れてしまって捉えることできない部位を撮影するよう取り付けられているので、複雑な構造の物品を成形したり、金型の内側が複雑な形状であったりする場合に特に好適となる。尚、この点は、四台のカメラ11~14を使用していることと密接に関連する。即ち、四台のカメラ11~14を使用すると、
図2に示すように上下左右の斜め方向から金型の内側を撮影することが可能で、余程複雑な構造でない限り、金型の内側の全ての露出部位を撮影することができる。五台以上のカメラを使用するとこの効果はより高まるが、最低でも四台あれば、殆ど全ての金型に対応が可能である。
【0052】
また、実施形態の金型監視装置では、各カメラ11~14について画像の取得モードが設定でき、カメラの設置目的に応じた画像の取得が可能である。そして、取得した画像について、モード設定部での設定に従って各監視に利用したり、参照用として記憶部3に保存したりすることができる。このため、複数のカメラの利用範囲が広がり、利用を最適化することができる。
【0053】
次に、金型監視方法の発明の実施形態について補足して説明する。
実施形態の金型監視方法は、二つのカメラが金型の内側の共通した領域を重なって撮影する方法である。したがって、一例としては、上述した実施形態の金型監視装置において
図3に示すように三台のカメラ11~13を設置する場合で、第一のカメラ11又は第二のカメラ12と第三のカメラ13とが異なる性質の画像を撮影するようモード設定部に設定される場合が該当する。例えば、前述したように第一第二の各カメラ11,12が静止画監視モードであり、第三のカメラ13が動画参照モードである場合である。
上記の他、第一第二の各カメラ11,12が動画監視モードであり、第三のカメラ13が静止画監視モードであっても良い。さらに、第一第二の各カメラ11,12が静止画監視モードであり、第三のカメラ13がサーモグラフィモードであっても良い。
【0054】
金型監視方法の説明としては、上述した金型監視装置の動作において、監視シーケンスプログラム31が第二の例の構成である場合が該当する。作業員は、
図3に示すように第一乃至第三のカメラ11~13を設置した後、モード設定画面において、第一第二の各カメラ11,12については静止画監視モードを選択し、第三のカメラ13については動画参照モードを選択する。第四のカメラ14については停止を選択する。そして、OKボタン45を押してこれら設定情報を設定情報ファイル35に記録する。
【0055】
成形装置9の主制御部90から成形開始信号が送られると、監視シーケンスプログラム31はタイマーをスタートし、成形時間-先行時間のタイミングで第三のカメラ13に動画撮影を開始させる。そして、成形時間になったら、監視シーケンスプログラム31は、タイマーをゼロにリセットするとともに、第一第二の各カメラ11,12に静止画撮影の制御信号を送信して各静止画を取得し、一次監視プログラム331を実行する。そして、いずれかの戻り値が一次監視異常であれば、成形装置の主制御部に一次監視異常を出力する。この際、異常であった静止画の画像ファイル34は、当該カメラ用の静止画用フォルダに保存される。
【0056】
監視シーケンスプログラム31は、一次監視が正常であれば、タイマーを再スタートする。そして、突き出し時間に達したら、第一第二の各カメラ11,12に静止画撮影の制御信号を送信して各静止画を取得し、二次監視プログラム332を実行する。いずれかの戻り値が二次監視異常であれば、成形装置9の主制御部90に二次監視異常を出力する。この際、異常であった静止画の画像ファイル34は、当該カメラ用の静止画用フォルダに保存される。
【0057】
その後、監視シーケンスプログラム31は、タイマーのカウントが突き出し時間+遅延時間に達したら、タイマーをゼロにリセットするとともに第三のカメラに撮影終了の制御信号を出力し、第三のカメラ13は動画撮影を終了する。監視シーケンスプログラム31は、一次監視又は二次監視で異常の結果であった場合、第三のカメラ13用のカメラ用データフォルダ7の下の動画フォルダ73に動画の画像ファイル34を保存する。
【0058】
このような金型監視方法によれば、二つのカメラが金型91,92の内側の共通した領域を重なって撮影する(重畳的に撮影する)方法であり、二つのカメラにより撮影される画像の性質が互いに異なるものであるので、金型や成形処理の内容に応じて監視を最適化することができる。即ち、領域を区画して個別領域毎に静止画を取得して一次監視や二次監視をしつつ、金型91,92全体の作動状況を動画として収録することで動画による監視も行える。例えば、静止画による一次監視や二次監視において異常の結果であった場合、その際の状況を動画で確認することで、異常の発生状況を解析することができる。
【0059】
尚、上記の例は、静止画による撮影領域がある限定された領域で、動画による撮影がそれを含む広い領域である例であったが、逆もあり得る。例えば、一台のカメラにより金型全体の静止画を取得してそれで一次監視や二次監視領域を行いつつ、ある特定の限定された領域のみ別のカメラで動画撮影をし、それを参照する場合もあり得る。また、領域を二つに区画して第一第二のカメラで各静止画を取得して一次監視や二次監視をしつつ、第三第四のカメラで各個別領域内の特定箇所の動画を撮影して参照する場合もあり得る。
【0060】
さらに、動画の画像データから静止画を抽出して一次監視や二次監視が行われる場合もあり、静止画が参照用の場合もある。例えば、金型全体の領域について動画を撮影し、一次監視のタイミングの静止画、二次監視のタイミングの静止画でそれぞれ正常異常を判断しつつ、ある特定のタイミングの特定の領域の静止画を参照用として撮影する場合もあり得る。例えば、ある特定の箇所のあるタイミングでのズームアップした静止画が成形状況の解析に有用なのであれば、そのような撮影を動画撮影のカメラとは別のカメラで重畳的に行わせる場合があり得る。
【0061】
尚、サーモグラフィ撮影について補足すると、上述した金型監視装置の実施形態では、サーモグラフィモードは動画としての参照用のサーモグラフィ撮影を行うモードとなっている。例えば、第一第二のカメラ11,12が個別領域の静止画撮影(静止画監視モード)であり、第三のカメラ13が全体の動画を撮影する動画参照モードである場合、第四のカメラ14として赤外線カメラを設置してサーモグラフィモードを設定し、金型全体のサーモグラフィ動画を撮影する構成とされ得る。第四のカメラ14が撮影したサーモグラフィ動画が必要に応じて参照され、金型の温度状態や温度分布がチェックされる。
【0062】
また、サーモグラフィ撮影は、成形状況の正常異常を判断部が判断して成形装置9の主制御部90に出力する目的でも行われ得る。例えば、ある温度以上に金型表面の温度が上昇した場合、異常であるとして成形装置9を停止させる制御が行われる場合がある。この場合は、装置本体2には、金型の表面温度の状態に応じて成形状況の正常異常を判断する金型温度監視プログラムが実装される。そして、例えば一次監視のタイミングでサーモグラフィカメラが静止画のサーモグラフィ画像を撮影し、金型温度監視プログラムがこれを解析して正常異常を判断する構成が採用され得る。例えば、サーモグラフィ画像から、特定の箇所が限度以上に高温になっていないか判断したり、金型全体の平均温度が限度以上になっていないか判断したりする。
【0063】
さらに、金型91,92の内側を照明しながらカメラ11~14で撮影する場合もある。この際、照明に利用する光の波長は、可視域の場合もあるが、特開2007-21797号公報や特開2003-305748号公報に開示されているように、可視域の長波長側から赤外域の光で照明を行って外乱を避けた状態でカメラ11~14で撮影する場合もある。
【0064】
こられの場合も、実施形態の金型監視方法によれば、重畳的な別性質の撮影、即ち可視光の静止画による一次監視や二次監視を併せて行ったり、可視光の動画撮影を行って参照したりすることが可能であり、複数台のカメラをより効果的に利用して金型監視を最適化することができる。
【0065】
尚、上記各実施形態では、熱可塑性樹脂を材料とした射出成形装置を成形装置9の例として説明したが、本願発明の金型監視装置の用途は、これには限られない。本願発明の金型監視装置は、他の材料を使用した射出成形装置や、プレス成形を行う成形装置、鍛造や鋳造を行う成形装置等の各種の成形装置における金型監視に使用することができる。
【0066】
また、装置本体2はタブレッドPCと同様の携帯型のコンピュータ装置であったが、デスクトップPCと同様のコンピュータ装置であっても良い。さらに、成形装置9の主制御部90内に搭載されたコンピュータ装置であっても良い。但し、装置本体2が携帯型であると、作業員が工場内のどこにいても静止画や動画を見ることができるので好適である。
【符号の説明】
【0067】
11~14 カメラ
2 装置本体
21 プロセッサ
22 ディスプレイ
23 入出力インターフェース
3 記憶部
31 監視シーケンスプログラム
32 基準画像ファイル
331 一次監視プログラム
332 二次監視プログラム
34 画像ファイル
35 設定情報ファイル
36 設定情報登録プログラム
9 成形装置
90 主制御部
91 可動金型
92 固定金型
【手続補正書】
【提出日】2022-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
図5は、画像ファイルの保存のために記憶部に設けられたフォルダ構造の一例について示した概略図である。
記憶部3には、データ保存用のフォルダ30が設けられ、その下に(下位ディレクトリとして)各カメラ11~14からの画像ファイル34を保存するためのフォルダ(以下、カメラ用データフォルダ)51,61,71,81が設けられている。この例では、各カメラ用データフォルダ51,61,71,81の下に、静止画用フォルダ52
,62,72,82、動画用フォルダ53,63,73,83、サーモグラフィ用フォルダ54,64,74,84が設けられている。静止画用フォルダ52,62,72,82の下には、さらに一次監視用フォルダ521,621,721,821と二次監視用フォルダ522,622,722,822とが設けられている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
この実施形態では、各カメラ11~14が撮影した画像の画像ファイル(静止画又は動画)34は、撮影時間をファイル名にしたファイルとなっている。いずれのカメラによる画像ファイルであるかどうかは、各カメラ11~14に対して設定された識別番号又は入出力インターフェース23におけるポート番号により識別が可能である。監視シーケンスプログラム31は、例えば第一のカメラ11からの一次監視の際の静止画であれば、第一のカメラ11用のカメラ用データフォルダ51の下の一次監視用フォルダ521に必要に応じて保存し、二次監視の際の静止画であれば二次監視用フォルダ522に必要に応じて保存する。また、動画であれば、第一のカメラ11用のカメラ用データフォルダ51の下の動画用フォルダ53に必要に応じて保存し、第一のカメラ11がサーモグラフィカメラであれば、第一のカメラ11用のカメラ用データフォルダ51の下のサーモグラフィ用フォルダ54に画像ファイル34を必要に応じて保存する。第二乃至第四のカメラ12~14ついても同様である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
そして、監視シーケンスプログラム31は、いずれかの戻り値が異常であれば、一次監視異常を成形装置9の主制御部90に出力する。この際、どのカメラについての結果が異常であったかを特定する情報も併せて出力される。
一次監視異常が出力されると、成形装置9の稼働が停止されるので、一次監視プログラム331も中断され、待機状態(成形開始信号の待ち受け状態)に戻される。一次監視正常(四つのカメラについての戻り値が全て正常)の場合、
図6に示すように、監視シーケンスプログラム31は、タイマーのカウントを再度スタートさせる。
尚、一次監視プログラム331の実行結果が異常であった場合、異常であった静止画を撮影したカメラについてのカメラ用データフォルダの下の一次監視
用フォルダに当該静止画の画像ファイル34を保存する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
その後、タイマーのカウントが突き出し時間+遅延時間に達したら、監視シーケンスプログラム31は、タイマーのカウントを停止してゼロにリセットするとともに、第三のカメラ13に対して動画撮影終了の制御信号を送信する。そして、新たな成形開始信号の待ち受け状態となる。この際、当該成形サイクルにおいて、一次監視の結果が異常であったか又は二次監視の結果が異常であった場合、監視シーケンスプログラム31は、撮影された動画の画像ファイル34を第三のカメラ13用のカメラ用データフォルダ71の下の動画用フォルダ73に保存する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
その後、監視シーケンスプログラム31は、タイマーのカウントが突き出し時間+遅延時間に達したら、タイマーをゼロにリセットするとともに第三のカメラに撮影終了の制御信号を出力し、第三のカメラ13は動画撮影を終了する。監視シーケンスプログラム31は、一次監視又は二次監視で異常の結果であった場合、第三のカメラ13用のカメラ用データフォルダ71の下の動画用フォルダ73に動画の画像ファイル34を保存する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0064
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0064】
これらの場合も、実施形態の金型監視方法によれば、重畳的な別性質の撮影、即ち可視光の静止画による一次監視や二次監視を併せて行ったり、可視光の動画撮影を行って参照したりすることが可能であり、複数台のカメラをより効果的に利用して金型監視を最適化することができる。