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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167224
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】ロールコータ
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/12 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
B05C1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072889
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】壱岐島 健司
(72)【発明者】
【氏名】米谷 悟
(72)【発明者】
【氏名】白垣 信樹
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 智和
(72)【発明者】
【氏名】山中 慶一
【テーマコード(参考)】
4F040
【Fターム(参考)】
4F040AA24
4F040AC01
4F040BA24
4F040CB16
4F040CB40
(57)【要約】
【課題】アプリケータロールに塗布された塗料の表面の平滑化を図りつつ、フィルムと塗料とが接触する部分においてごみ等が集まり難く、塗装の不具合が生じ難いロールコータを提供する。
【解決手段】ロールコータ2は、アプリケータロール3と、フィルム7とを備える。アプリケータロール3は、被塗物9に塗料8を塗布する。フィルム7は、アプリケータロール3に塗布された塗料8の表面に対向する。フィルム7は、接触部71を有する。接触部71は、フィルム7におけるアプリケータロール3の回転方向D1の端部である。接触部71は、アプリケータロール3に塗布された塗料8のうち、被塗物9に塗布される塗料8の表面に接触する。接触部71におけるアプリケータロール3の回転方向D1の端縁は、凹みを有さない端縁である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物に塗料を塗布するアプリケータロールと、
前記アプリケータロールに塗布された前記塗料の表面に対向するフィルムとを備え、
前記フィルムは、
前記フィルムにおける前記アプリケータロールの回転方向の端部であって、前記アプリケータロールに塗布された前記塗料のうち、前記被塗物に塗布される塗料の表面に接触する接触部を有し、
前記接触部における前記アプリケータロールの回転方向の端縁は、凹みを有さない端縁である、
ロールコータ。
【請求項2】
前記端縁は、前記アプリケータロールの回転軸方向における一端に近い部分ほど前記アプリケータロールの回転方向に位置する、
請求項1に記載のロールコータ。
【請求項3】
前記端縁は、前記アプリケータロールの回転軸方向における中間部に近い部分ほど前記アプリケータロールの回転方向に位置する、
請求項1に記載のロールコータ。
【請求項4】
前記端縁は、前記アプリケータロールの回転軸方向と平行な直線状である、
請求項1に記載のロールコータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロールコータに関し、詳しくは、塗料を被塗物にアプリケータロールによって塗布するロールコータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロール塗装装置が開示されている。このロール塗装装置は、アプリケータロール上の塗液に接触する樹脂フィルムを備えることで、塗膜の平滑化を図り、ローピング(ロール目)と呼ばれる縦筋模様が発生することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-167626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記ロール塗装装置では、アプリケータロールに塗布された塗液に樹脂フィルムが接触することにより、塗液と樹脂フィルムとの接触部分において、塗液に含まれるごみ、又は系外から侵入するごみ等が集まる可能性がある。このように集まったごみ等が、アプリケータロールによって被塗物に対して塗液と共に塗布されると、塗装の不具合が生じる恐れがある。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、塗装の不具合が生じ難いロールコータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るロールコータは、被塗物に塗料を塗布するアプリケータロールと、前記アプリケータロールに塗布された前記塗料の表面に対向するフィルムとを備える。前記フィルムは、前記フィルムにおける前記アプリケータロールの回転方向の端部であって、前記アプリケータロールに塗布された前記塗料のうち、前記被塗物に塗布される塗料の表面に接触する接触部を有する。前記接触部における前記アプリケータロールの回転方向の端縁は、凹みを有さない端縁である。
【発明の効果】
【0007】
前記一態様に係るロールコータにあっては、塗装の不具合を生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るロールコータを備えた塗装設備の説明図である。
図2図2は、同上のロールコータが有するアプリケータロール及びフィルムを示した斜視図である。
図3図3は、同上のアプリケータロール及びフィルムの平面図である。
図4図4は、他例のアプリケータロール及びフィルムの平面図である。
図5図5は、更に他例のアプリケータロール及びフィルムの平面図である。
図6図6は、更に他例のアプリケータロール及びフィルムの平面図である。
図7図7は、比較例のアプリケータロール及びフィルムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)実施形態
本実施形態のロールコータ2は、例えば、図1に示すように、塗装設備1の一部を構成する。塗装設備1は、板状の被塗物9を搬送し、搬送している被塗物9をロールコータ2によって連続的に塗装する塗装ラインである。
【0010】
ロールコータ2によって塗装される被塗物9は、金属板であり、詳しくは、鋼板である。鋼板は、例えば、ガルバリウム鋼板(登録商標)若しくはエスジーエル(登録商標)鋼板等のアルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板、亜鉛めっき鋼板又は溶融アルミニウムメッキ鋼板等である。なお、被塗物9は、鋼板以外の金属板であってもよく、例えば、アルミニウム板、チタン板等であってもよい。また、被塗物9は、金属板に限定されず、スレート板、合板又は紙、有機樹脂製のフィルム等であってもよい。
【0011】
本実施形態の塗装設備1は、乾燥装置10を更に備えている。乾燥装置10は、ロールコータ2の下流側に位置している。乾燥装置10は、例えば乾燥炉である。乾燥装置10は、ロールコータ2によって塗料8が塗布された被塗物9を加熱し、被塗物9に塗布された塗料8を乾燥して硬化させる。なお、乾燥装置10は、乾燥炉に限定されない。また、塗装設備1は、乾燥装置10を備えなくてもよい。
【0012】
ロールコータ2は、アプリケータロール(コーティングロール)3を用いて被塗物9に塗料8を塗布する。本実施形態のロールコータ2は、アプリケータロール3に加えて、塗料パン4及びピックアップロール5を更に有している。
【0013】
塗料パン4は、塗料8を溜める。ピックアップロール5は、ピックアップロール5の周方向の一部が、塗料パン4に溜まった塗料8に漬かる。ピックアップロール5は、例えば、モータから出力された動力により、ピックアップロール5の中心軸を回転軸50として回転する。このようにピックアップロール5が回転することで、ピックアップロール5は、塗料パン4に溜まった塗料8を持ち上げてアプリケータロール3に塗布する。
【0014】
アプリケータロール3は、例えば、モータから出力された動力により、アプリケータロール3の中心軸を回転軸30として回転する。このようにアプリケータロール3が回転することで、アプリケータロール3は、アプリケータロール3に塗布された塗料8を被塗物9の表面に塗布する。
【0015】
図2に示すように、アプリケータロール3の幅(回転軸30方向の寸法)B1は、被塗物9(図1参照)の幅(回転軸30方向の寸法)B2よりも大きい。アプリケータロール3は、被塗物9における幅方向(回転軸30方向)の全長にわたって塗料8を塗布する。
【0016】
アプリケータロール3の外周面31は、被塗物9に対応する部分であって、塗料8を被塗物9に塗布する塗布部32を有している。塗布部32は、アプリケータロール3の外周面31の回転軸30方向における中間部によって構成されている。本実施形態では、図2において、アプリケータロール3の外周面31における回転軸30方向の両側に描かれた一対の二点鎖線で囲まれた領域が、塗布部32になっている。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のアプリケータロール3の回転方向D1は、ピックアップロール5の回転方向D2と逆方向である。なお、アプリケータロール3の回転方向D1は、ピックアップロール5の回転方向D2と同方向であってもよい。また、本実施形態のロールコータ2は、塗料8をピックアップロール5の下側から供給するボトムフィード方式を採用しているが、塗料8をピックアップロール5の上側から供給するトップフィード方式を採用してもよい。また、アプリケータロール3に塗料8を供給する手段は、ピックアップロール5に限定されない。
【0018】
本実施形態のロールコータ2は、塗装設備1によって搬送されている被塗物9を支持するバックアップロール6を更に有している。バックアップロール6は、アプリケータロール3に対向する位置に配されている。アプリケータロール3は、外周面31に塗布された塗料8を、アプリケータロール3とバックアップロール6との間を通過する被塗物9の表面に塗布する。
【0019】
バックアップロール6は、被塗物9との対向部分において、バックアップロール6の中心軸を回転軸60として、被塗物9の進行方向と同一方向に回転する。このようにバックアップロール6が回転した状態で、アプリケータロール3が回転することにより、アプリケータロール3に塗布された塗料8が、バックアップロール6に支持された被塗物9の表面に塗布される。なお、バックアップロール6は、モータから出力された動力によって回転してもよいし、塗装設備1によって搬送されている鋼板から受ける力によって回転してもよい。
【0020】
本実施形態のアプリケータロール3の回転方向D1は、バックアップロール6の回転方向D3と同方向である。すなわち、本実施形態のロールコータ2は、アプリケータロール3が被塗物9の進行方向に対して逆方向に回転するリバースロールコータである。
【0021】
本実施形態では、被塗物9がバックアップロール6によってアプリケータロール3とは反対側から支持されているが、被塗物9を支持する部材はバックアップロール6に限定されない。例えば、被塗物9においてロールコータ2によって塗装される面とは反対側の面が別のロールコータによって塗装される場合、当該別のロールコータのアプリケータロールによって被塗物9が支持されてもよい。また、被塗物9はベルト等、ロール以外の部材によって支持されてもよい。
【0022】
ロールコータ2は、フィルム7を更に有している。フィルム7は、アプリケータロール3の上方に位置しており、アプリケータロール3に塗布された塗料8の表面に対向する。なお、本開示において、「対向する」とは、フィルム7の少なくとも一部が、アプリケータロール3に塗布された塗料8の表面に面することを意味する。
【0023】
フィルム7は、可撓性を有する樹脂フィルムであって、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等から形成される。なお、フィルム7は、その他の樹脂から形成されてもよいし、樹脂以外の材料から形成されてもよい。
【0024】
フィルム7の厚みは、例えば、100μm以上500μm以下であることが好ましい。フィルム7の厚みが100μm以上であると、フィルム7が破れにくくなる。また、フィルム7の厚み500μm以下であると、ローピング(ロール目)が生じ難くなる。なお、フィルム7の厚みは限定されず、100μm未満であってもよいし、500μmを超えてもよい。
【0025】
本実施形態のロールコータ2は、フィルム7を保持する治具11を更に有している。アプリケータロール3の回転方向D1を後方とし、かつ、アプリケータロール3の回転方向D1とは逆方向を前方としたとき、治具11は、例えば、ピックアップロール5及びアプリケータロール3を回転可能に支持する部材等の固定部材に取り付けられ、フィルム7の後方の端部を支持する。フィルム7は、治具11で支持された箇所から前方に向かって突出しており、フィルム7における前方の端縁は、治具11によって変位の拘束を受けず、自由に動くことができる自由端になっている。なお、フィルム7は、治具11で支持された箇所から前斜め下方又は前斜め上方に向かって突出するように、治具11に取り付けられてもよい。また、治具11の固定部材に対する取付位置及びフィルム7の固定部材に対する取付位置の両方又は一方は、変更可能であってもよい。この場合、塗装条件等に応じてフィルム7のアプリケータロール3に対する位置を変更することができる。
【0026】
図2に示すように、フィルム7の幅B3(回転軸30方向の寸法)は、アプリケータロール3の幅B1よりも小さく、かつ、被塗物9の幅B2よりも大きい。フィルム7の前方の端部は、回転軸30方向の全体にわたって、アプリケータロール3の外周面31に沿って撓み、かつ、アプリケータロール3に塗布された塗料8の表面に接触する。本実施形態のフィルム7は、アプリケータロール3の回転軸30の真上の位置から、この位置よりも前方に位置するフィルム7の前方の端縁までの部分70の全体が、アプリケータロール3に塗布された塗料8の表面に接触する。なお、フィルム7が塗料8の表面に接触する、アプリケータロール3の周方向における長さは、限定されない。また、本実施形態のフィルム7は、自重により塗料8の表面に接触しているが、例えば、ロールコータ2は、フィルム7を塗料8の表面に向かって加圧するロール等の加圧手段を備えてもよい。
【0027】
部分70は、第1部分71(図2において高密度のドットを付した部分)と、第2部分72(図2において低密度のドットを付した部分)とで構成されている。第1部分71は、部分70の回転軸30方向における中間部である。第1部分71は、アプリケータロール3の塗布部32に対向しており、その全部が被塗物9に塗布される塗料8の表面に接触する。すなわち、第1部分71は、アプリケータロール3に塗布された塗料8のうち、被塗物9に塗布される塗料8の表面に接触する接触部を構成している。以下、第1部分71を接触部71という。
【0028】
第2部分72は、部分70の回転軸30方向における両端部である。第2部分72は、アプリケータロール3の塗布部32には対向しておらず、アプリケータロール3に塗布された塗料8のうち、被塗物9に塗布されない塗料8の表面にのみ接触する。
【0029】
アプリケータロール3が回転する、被塗物9の塗装時には、接触部71を含む、フィルム7の前方の端部(部分70)の全部が、アプリケータロール3に塗布された塗料8の表面に接触することで、当該塗料8の表面が平滑化される。このため、アプリケータロール3による被塗物9への塗料8の塗布が適切に行われやすく、塗装の不具合が生じ難い。
【0030】
また、上記のようにフィルム7によって塗料8の表面の平滑化を行うことで、ロール目(ローピング)と呼ばれる塗装欠陥が生じ難くなる。ロール目は、被塗物9に塗布された塗料(塗膜)8の表面に形成され、被塗物9の進行方向に延びる複数の筋である。このロール目は、本実施形態におけるアプリケータロール3及びピックアップロール5のように、二つのロールの対向部分において各々のロールの回転方向が同一となるナチュラル回転である場合に生じやすい。二つのロールがナチュラル回転であると、二つのロールの間に形成された隙間の出口付近における塗料8の圧力勾配が正になりやすく、これに起因して塗料8の表面にリブ状の筋目が形成されやすい。そして、この筋目が被塗物9に転写されることで、被塗物9にロール目が生じる可能性がある。本実施形態では、仮にアプリケータロール3に塗布された塗料8の表面にリブ状の筋目が形成されたとしても、この塗料8の表面はフィルム7によって平滑化される。このため、ロール目が生じ難い。
【0031】
また、図1に示すように、本実施形態のロールコータ2は、リバースロールコータであり、アプリケータロール3が被塗物9の進行方向に対して逆方向に回転する。このため、被塗物9に塗布される塗料8の厚みの調整が容易にでき、この点でも被塗物9にはロール目が生じ難い。
【0032】
また、本実施形態の接触部71は、図2に示すようにフィルム7の前方の端部のうちの回転軸30方向における中間部で構成されており、フィルム7の前方の端部のうちの回転軸30方向における両側の端部は含まない。しかし、接触部71は、例えば、フィルム7の幅B3が被塗物9の幅B2以下の寸法である場合等には、フィルム7の幅方向の全長にわたっていてもよい。
【0033】
図2及び図3に示すように、接触部71の前方の端縁73は、フィルム7の前方の端縁の中間部によって構成されている。端縁73は、後方に向かって凹む凹みを有さない。本実施形態では、フィルム7の前方の端縁が、フィルム7の厚み方向に見て、アプリケータロール3の回転軸30に対して傾斜した直線状に形成されており、これにより、端縁73は、回転軸30方向における一端に近い部分ほど前方に位置している。すなわち、接触部71は、フィルム7の厚み方向に見て、傾斜した端縁73を有する台形状に形成されている。
【0034】
このように本実施形態の接触部71の端縁73は、凹みを有さないため、接触部71と塗料8とが接触する部分において、塗料8に含まれるごみ80(図7参照)、骨材、又は硬化若しくは半硬化した塗料等(以下、単にごみ80等という)が、集まり難くなる。
【0035】
例えば、図7に示すように、接触部71の端縁73に後方に凹んだ凹み74が形成されていると、ロールコータ2による塗装時には、凹み74の後方の端部付近にごみ80等が集まりやすくなる。
【0036】
この理由は、以下のように考えられる。図7に示すように、接触部71の端縁73にV字状の凹み74があると、V字状の凹み7の各辺は、塗料8からアプリケータロールの回転方向D1の力を受ける。すなわち、この場合、フィルム7には、V字状の凹み74を閉じようとする力が働き、フィルム7は、凹み74の後方の端部(V字状の凹み7の両辺の接続部分)が盛り上がるように座屈しようとする。この結果、フィルム7の盛り上がった部位とアプリケータロール3と間においては、局所的に負圧となって塗料8が流れこみやすい状態となり、フィルム7を通過してきた異物が停滞しやすくなる。
【0037】
このように接触部71と塗料8とが接触する部分においてごみ80等が集まると、図7に示すようにアプリケータロール3に塗布された塗料8と共にフィルム7よりも下流側に流れるごみ引きが生じ、当該ごみ80等が塗料8と共に被塗物9に付着し、塗装の不具合が生じる。
【0038】
しかし、本実施形態の接触部71の端縁73は、図3に示すように、端縁73の全長にわたって凹みを有さないため、接触部71と塗料8とが接触する部分において、塗料8に含まれるごみ80等が集まり難くなり、この結果、塗装の不具合が生じ難くなる。
【0039】
なお、本開示における「凹み」は、前方及びフィルム7の幅方向(アプリケータロール3の回転軸30方向)のうち前方のみが開口する凹んだ箇所を意味する。また、凹みは、少なくとも接触部71の端縁73に形成されなければよい。このため、例えば、フィルム7の前方の端縁のうち、接触部71の端縁73を構成しない両端部には、凹みが形成されてもよい。
【0040】
また、図3に示す接触部71の端縁73は、回転軸30方向における一端に近い部分ほど前方に位置するように傾斜した直線状に形成されているが、回転軸30方向における一端に近い部分ほど前方に位置するように湾曲してもよい。
【0041】
また、接触部71の端縁は、凹みを有さなければよく、例えば、図4図6に示す形状であってもよい。図4に示す接触部71の端縁73は、回転軸30方向における中間部が最も前方に位置し、かつ、回転軸30方向において両端に近い部分ほど後方に位置している。端縁73は、回転軸30方向における中間部から一端までの範囲を構成する直線部75と、回転軸30方向における中間部から他端までの範囲を構成する直線部76とで構成されている。各直線部75,76は回転軸30方向において、端縁73の中間部から離れるほど後方に位置するように傾斜している。
【0042】
図5に示す接触部71の端縁73は、前方に突出するように湾曲している。すなわち、この端縁73も、回転軸30方向における中間部が最も前方に位置し、かつ、回転軸30方向において中間部に近い部分ほど前方に位置している。図6に示す接触部71の端縁73は、アプリケータロール3の回転軸30方向と平行な直線状に形成されている。
【0043】
図3図5に示す接触部71は、最大寸法L1の最小寸法L2に対する比率が1.2以上であることが好ましい。ここで、最大寸法L1は、接触部71のアプリケータロール3の回転方向D1における寸法の最大値であり、最小寸法L2は、接触部71のアプリケータロール3の回転方向D1における寸法であり、正である。このように最大寸法L1の最小寸法L2に対する比率が1.2以上であると、接触部71と塗料8とが接触する部分において、塗料8が最小寸法L2に対向する箇所に流れやすくなり、当該部分において塗料8に含まれるごみ80等が一層集まり難くなる。また、前記比率は、1.5以上であることが更に好ましく、2.0以上であることが更に好ましい。なお、前記比率は限定されず、1.2未満であってもよい。
【0044】
(2)実施例及び比較例
以下、実施例及び比較例について説明する。実施例1~16及び比較例1~8では、図1に示すロールコータ(リバースロールコータ)を用意した。ただし、実施例1~16及び比較例5~8のロールコータ2は、フィルム7を有するが、比較例1~4のロールコータ2は、フィルム7を有さない。実施例1~16及び比較例1~8において、アプリケータロール3はゴムロールであり、ピックアップロール5は、メタルロールである。実施例1~16及び比較例1~8のアプリケータロール3及びピックアップロール5の各々のロール径は、300mmである。
【0045】
実施例1~16及び比較例5~8のフィルム7は、ポリエチレンテレフタレート製である。フィルム7の形状は、表1に示すとおりである。すなわち、実施例1~4のフィルム7は、図3に示す形状を有する。実施例5~8のフィルム7は、図4に示す形状を有する。実施例9~12のフィルム7は、図5に示す形状を有する。実施例13~16のフィルム7は、図6に示す形状を有する。比較例5~8のフィルム7は、図7に示す形状を有する。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例1~16及び比較例5~8のフィルム7の接触部71は、最大寸法L1(図2図7参照)が60mmである。実施例1~4のフィルム7の接触部71は、最小寸法L2(図2及び図3参照)が、40mmである。実施例5~8のフィルム7の接触部71は、最小寸法L2(図4参照)が、30mmである。実施例9~12のフィルム7の接触部71は、最小寸法L2(図5参照)が、50mmである。実施例13~16のフィルム7の接触部71は、最小寸法L2(図6参照)が、最大寸法L1と同じ60mmである。比較例5~8のフィルム7の接触部71は、最小寸法L2(図7参照)が、30mmである。実施例1~16及び比較例5~8のフィルム7の厚みは、表1に示すとおりである。
【0048】
実施例1~16及び比較例1~8では、塗料8として、粘度95秒(フォードカップNo4による測定)のポリエステル塗料を用いた。実施例1~16及び比較例1~8のロールギャップ(アプリケータロール3とピックアップロール5との間に形成される隙間の寸法)及びアプリケータロール3に付着する塗料8の付着量は、表1に示すとおりである。ここで、ロールギャップを示すマイナスの値は、ゴム製のアプリケータロール3が金属製のピックアップロール5に強く接触している状態における、アプリケータロール3の変形量を示している。
【0049】
実施例1~16及び比較例1~8のロールコータ2を用いて被塗物9の塗装を行い、アプリケータロール3に付着した塗料8を目視により観察し、リブ状の筋目の発生の有無と、ごみ80等の集まり(ごみ引き)の発生とを評価した。
【0050】
比較例1~4では、アプリケータロール3に付着した塗料8におけるごみ80等の集まりの発生はなかったが、リブ状の筋目の発生があった。比較例5~8では、アプリケータロール3に付着した塗料8におけるリブ状の筋目の発生はなかったが、ごみ80等の集まりの発生があった。
【0051】
実施例1~12では、アプリケータロール3に付着した塗料8におけるリブ状の筋目の発生はなく、また、ごみ80等の集まりの発生もなかった。実施例13~16では、アプリケータロール3に付着した塗料8において、ごみ80等の集まりの発生が僅かに確認されたものの、塗装上の問題になるほどのごみ80等の集まりの発生はなく、また、リブ状の筋目の発生もなかった。
【0052】
(3)態様
以上説明した、実施形態及び変形例から明らかなように、第1の態様のロールコータ(2)は、以下に示す構成を有する。ロールコータ(2)は、アプリケータロール(3)と、フィルム(7)とを備える。アプリケータロール(3)は、被塗物(9)に塗料(8)を塗布する。フィルム(7)は、アプリケータロール(3)に塗布された塗料(8)の表面に対向する。フィルム(7)は、接触部(71)を有する。接触部(71)は、フィルム(7)におけるアプリケータロール(3)の回転方向(D1)の端部である。接触部(71)は、アプリケータロール(3)に塗布された塗料(8)のうち、被塗物(9)に塗布される塗料(8)の表面に接触する。接触部(71)におけるアプリケータロール(3)の回転方向(D1)の端縁(73)は、凹みを有さない端縁である。この態様によれば、フィルム(7)の接触部(71)が、アプリケータロール(3)に塗布された塗料(8)の表面に接触することで、当該塗料(8)の表面が平滑化される。また、接触部(71)の端縁(73)は、凹みを有さないため、アプリケータロール(3)に付着した塗料(8)と接触部(71)との接触部(71)分において、ごみ(80)等が集まり難くなる。このため、塗装の不具合が生じ難くなる。
【0053】
第2の態様のロールコータ(2)は、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第2の態様のロールコータ(2)は、以下に示す構成を有する。端縁(73)は、アプリケータロール(3)の回転軸(30)方向における一端に近い部分ほどアプリケータロール(3)の回転方向(D1)に位置する。この態様によれば、フィルム(7)をシンプルな形状にすることができ、フィルム(7)を容易に製造することができる。
【0054】
第3の態様のロールコータ(2)は、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第3の態様のロールコータ(2)は、以下に示す構成を有する。端縁(73)は、アプリケータロール(3)の回転軸(30)方向における中間部に近い部分ほどアプリケータロール(3)の回転方向(D1)に位置する。この態様によれば、フィルム(7)をシンプルな形状にすることができ、フィルム(7)を容易に製造することができる。
【0055】
第4の態様のロールコータ(2)は、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第4の態様のロールコータ(2)は、以下に示す構成を有する。端縁(73)は、アプリケータロール(3)の回転軸(30)方向と平行な直線状である。この態様によれば、フィルム(7)をシンプルな形状にすることができ、フィルム(7)を容易に製造することができる。
【符号の説明】
【0056】
D1 アプリケータロールの回転方向
D2 ピックパップロールの回転方向
2 ロールコータ
3 アプリケータロール
30 回転軸
5 ピックアップロール
7 フィルム
71 接触部
8 塗料
9 被塗物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7