(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016723
(43)【公開日】2022-01-24
(54)【発明の名称】TVCMの効果を評価するための装置、方法及びそのためのプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20120101AFI20220117BHJP
【FI】
G06Q30/02 382
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006290
(22)【出願日】2021-01-19
(62)【分割の表示】P 2020119594の分割
【原出願日】2020-07-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】512257392
【氏名又は名称】ラクスル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174078
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 寛
(72)【発明者】
【氏名】古谷 文弥
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB08
(57)【要約】
【課題】TVCMの効果を評価するための方法において、より細かな単位の評価を可能とする。
【解決手段】装置100は、過去のN個の時点t
iの前後のダウンロード数の差Δ
iを算出する(S201)。次に、装置100はN個の時点t
iを区分して、区分ごとのダウンロード増加数の分布の標準偏差を算出する(S202)。そして、装置100は、評価の対象となるTVCMの放映時刻tを取得する(S203)。装置100は、受信した放映時刻tに対応する区分について、標準偏差σを取得する(S204)。装置100は、取得したTVCMの放映時刻tの前後のダウンロード数の差Δを算出し(S205)、ダウンロード増加数Δと取得された標準偏差σとを比較してTVCMの効果を評価する(S206)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、TVCMの効果を評価するための方法であって、
評価の対象である前記TVCMの放映時刻を取得するステップと、
1又は複数のしきい値を取得するステップと、
前記放映時刻における利用開始スコアΔを取得された前記1若しくは複数のしきい値又は前記1若しくは複数のしきい値を用いて定まる値σと比較して前記TVCMの効果を評価するステップと
を含み、
前記利用開始スコアΔは、ある時点の以後又は後の第1の期間における前記アプリの利用開始数又はその近似値と前記ある時点の以前又は前の第2の期間における前記アプリの利用開始数又はその近似値とを用いて定まる利用開始の増加を表す値であり、
取得された前記1又は複数のしきい値は、前記コンピュータが取得可能に記憶されていることを特徴とする。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1及び第2の期間は所定の分数の単位又は所定の秒数の単位で表されることを特徴とする。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記TVCMの放映地域を取得するステップをさらに含むことを特徴とする。
【請求項4】
コンピュータに、TVCMの効果を評価するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
評価の対象である前記TVCMの放映時刻を受信するステップと、
1又は複数のしきい値を取得するステップと、
前記放映時刻における利用開始スコアΔを取得された前記1若しくは複数のしきい値又は前記1若しくは複数のしきい値を用いて定まる値σと比較して前記TVCMの効果を評価するステップと
を含み、
前記利用開始スコアΔは、ある時点の以後又は後の第1の期間における前記アプリの利用開始数又はその近似値と前記ある時点の以前又は前の第2の期間における前記アプリの利用開始数又はその近似値とを用いて定まる利用開始の増加を表す値であり、
取得された前記1又は複数のしきい値は、前記コンピュータが取得可能に記憶されていることを特徴とする。
【請求項5】
TVCMの効果を評価するための装置であって、
評価の対象である前記TVCMの放映時刻を受信し、
1又は複数のしきい値を取得し、
前記放映時刻における利用開始スコアΔを取得された前記1若しくは複数のしきい値又は前記1若しくは複数のしきい値を用いて定まる値σと比較して前記TVCMの効果を評価し、
前記利用開始スコアΔは、ある時点の以後又は後の第1の期間における前記アプリの利用開始数又はその近似値と前記ある時点の以前又は前の第2の期間における前記アプリの利用開始数又はその近似値とを用いて定まる利用開始の増加を表す値であり、
取得された前記1又は複数のしきい値は、前記装置が取得可能に記憶されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TVCMの効果を評価するための装置、方法及びそのためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット広告の市場規模(日本)がテレビで放映されるCM(以下「TVCM」と呼ぶ。)の市場規模である2兆円前後を超えて大きく成長しつつも、テレビは、依然として最大の影響力をもつメディアである。音声と映像により反復してメッセージを伝達することで、強い印象を視聴者に与えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
TVCMは、どの番組と関連して放送されたものであるかがその効果に影響を及ぼしていると推測されるが、現在そのような解像度でTVCMの効果測定を行うことは出来ていない。そして、発明者らは、かかる解像度で効果測定を行うためには、1日単位等ではなく、より細かな単位で効果を評価することが必要となることに着目した。
【0004】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、TVCMの効果を評価するための装置、方法及びそのためのプログラムにおいて、より細かな単位の評価を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、コンピュータが、TVCMの効果を評価するための方法であって、評価の対象である前記TVCMの放映時刻を取得するステップと、前記放映時刻から定まる放映の曜日又はその属性及び時間帯又はその属性の少なくとも一方に対応する1又は複数の区分について、1又は複数のしきい値を取得するステップと、前記放映時刻における利用開始スコアΔを取得された前記1若しくは複数のしきい値又は前記1若しくは複数のしきい値を用いて定まる値σと比較して前記TVCMの効果を評価するステップとを含み、前記利用開始スコアは、ある時点の以後又は後の第1の期間における前記アプリの利用開始数又はその近似値と前記ある時点の以前又は前の第2の期間における前記アプリの利用開始数又はその近似値とを用いて定まる利用開始の増加を表す値であり、取得された前記1又は複数のしきい値は、前記コンピュータが取得可能に記憶されていることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記しきい値は標準偏差であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記利用開始スコアは、ある時点の以後又は後の第1の期間における前記アプリの利用開始数又はその近似値と前記ある時点の以前又は前の第2の期間における前記アプリの利用開始数又はその近似値との差又はそれに応じた値であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記比較は、Δ-σ>1.5σを満たすか否かの判定であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の第5の態様は、第3の態様において、前記比較は、Δ/σで表される比を算出して、前記比が所定の値よりも大きいか否かの判定であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第6の態様は、第1から第5のいずれかの態様において、前記第1及び第2の期間は所定の分数の単位又は所定の秒数の単位で表されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第7の態様は、第6の態様において、前記第1及び第2の期間は1分から5分の間の単位で表されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第8の態様は、第1から第7のいずれかの態様において、前記TVCMの放映地域を取得するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第9の態様は、コンピュータに、TVCMの効果を評価するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、評価の対象である前記TVCMの放映時刻を受信するステップと、前記放映時刻から定まる放映の曜日又はその属性及び時間帯又はその属性の少なくとも一方に対応する1又は複数の区分について、1又は複数のしきい値を取得するステップと、前記放映時刻における利用開始スコアΔを取得された前記1若しくは複数のしきい値又は前記1若しくは複数のしきい値を用いて定まる値σと比較して前記TVCMの効果を評価するステップとを含み、前記利用開始スコアは、ある時点の以後又は後の第1の期間における前記アプリの利用開始数又はその近似値と前記ある時点の以前又は前の第2の期間における前記アプリの利用開始数又はその近似値とを用いて定まる利用開始の増加を表す値であり、取得された前記1又は複数のしきい値は、前記コンピュータが取得可能に記憶されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第10の態様は、TVCMの効果を評価するための装置であって、評価の対象である前記TVCMの放映時刻を受信し、前記放映時刻から定まる放映の曜日又はその属性及び時間帯又はその属性の少なくとも一方に対応する1又は複数の区分について、1又は複数のしきい値を取得し、前記放映時刻における利用開始スコアΔを取得された前記1若しくは複数のしきい値又は前記1若しくは複数のしきい値を用いて定まる値σと比較して前記TVCMの効果を評価し、前記利用開始スコアは、ある時点の以後又は後の第1の期間における前記アプリの利用開始数又はその近似値と前記ある時点の以前又は前の第2の期間における前記アプリの利用開始数又はその近似値とを用いて定まる利用開始の増加を表す値であり、取得された前記1又は複数のしきい値は、前記装置が取得可能に記憶されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、評価対象のTVCMに関連づけられたアプリの所定の分数の単位又は所定の秒数の単位で記録された利用開始数を用いて当該TVCMの効果を評価することによって、各TVCMの放映の効果を高い精度で評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるTVCMの効果を評価するための装置を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかるTVCMの効果を評価するための方法の流れを示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態において用いる過去のN個の時点t
iの前後におけるダウンロード数を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態において算出されるダウンロード数の曜日及び時間帯ごとの標準偏差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
図1に、本発明の一実施形態にかかるTVCMの効果を評価するための装置を示す。装置100は、TVCMの放映時刻及び当該TVCMと関連づけられたアプリケーション(以下「アプリ」という。)のダウンロード数又はダウンロード後の初回起動数に基づいて、当該TVCMの効果を評価する。
【0019】
装置100は、通信インターフェースなどの通信部101と、プロセッサ、CPU等の処理部102と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置又は記憶媒体を含む記憶部103とを備え、各処理を行うためのプログラムを実行することによって構成することができる。また、装置100は、1又は複数の装置、コンピュータないしサーバを含むことがあり、また当該プログラムは1又は複数のプログラムを含むことがあり、また、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録して非一過性のプログラムプロダクトとすることができる。当該プログラムは、記憶部103又は装置100からアクセス可能な記憶装置又は記憶媒体に記憶しておき、処理部102において実行することができる。
【0020】
装置100は、さらにデータベース104を備え、サーバ110からダウンロード可能なアプリのダウンロード数又は初回起動数に基づいて算出される一組のパラメータを記憶している。当該一組のパラメータの少なくとも一部を用いて、TVCMの効果の評価が行われる。当該一組のパラメータについては後述する。ここで、データベース104におけるダウンロード数又は初回起動数の取得は、TVCMに関連づけられたアプリをダウンロード可能に管理するサーバ110からインターネット等のコンピュータネットワークを介して受信可能な場合もあるが、サーバ110からのダウンロード数又はダウンロード後の初回起動数を手動でデータベース104に入力することも考えられ、さまざまな方式が可能である。たとえば、ダウンロード数又は初回起動数を含むデータには、秒単位の日時、地域ID、ダウンロードを行った端末のOS及びスマートフォン、タブレット、PC等のダウンロードを行った端末の種類がさらに含まれてもよい。地域IDは、北の北海道から南の沖縄県までに01から47の値を順に割り振ることが考えられる。
【0021】
アプリのダウンロード後の初回起動数は、アプリによっては、当該アプリをダウンロード可能に管理するサーバ110以外のサーバ(図示せず)に初回起動のタイミングで通信をすることで記録し、このように記録された初回起動数をデータベース104を自動又は手動で入力することによって、取得することが考えられる。また、アプリをダウンロードした端末において、初回起動時刻を記憶しておき、これをなんらかのタイミングでデータベース104に入力することも考えられる。
【0022】
上述の説明では、ダウンロード数又は初回起動数をTVCMの効果を評価するための指標として言及したが、より一般には、アプリが利用開始されたことを表す数、すなわち利用開始数を指標とすることができ、例示として、ユーザー情報登録完了数、規約同意数等も挙げられる。
【0023】
ここでは、データベース104が記憶部103とは別個に設けられている例を図示しているものの、データベース104に記憶されるデータは記憶部103に記憶されてもよく、また、装置100からコンピュータネットワークを介してアクセス可能な記憶装置又は記憶媒体に記憶されてもよい。
【0024】
評価の対象となるTVCMの放映時刻は、装置100とコンピュータネットワークを介して通信可能なユーザー端末120から受信することができる。装置100が提供するウェブサイト上で利用可能なTVCM効果評価サービスのユーザーがユーザー端末120を用いて当該ウェブサイトに対してTVCMの放映時刻を入力したり、TVCMの1又は複数の放映時刻を含むデータをユーザーがユーザー端末120から装置100にアップロードしたりすることが考えられる。また、TVCMの1又は複数の放映時刻を含むデータを装置100がコンピュータネットワークを介して、たとえばAPIを用いて、TVCMに関するデータを提供するサーバ(図示せず)から受信することが考えられる。このように、装置100がTVCMの放映時刻を取得する方式にはさまざまなものが考えられる。
【0025】
図2に、本発明の一実施形態にかかるTVCMの効果を評価するための方法の流れを示す。まず、装置100は、データベース104から、過去のN個の時点t
i(Nは1以上の整数であり、iは1以上N以下の整数である。)の以後又は後の第1の期間におけるダウンロード数等の利用開始数及び当該複数の時点の以前又は前の第2の期間におけるダウンロード数等の利用開始数を取得し、各時点t
iにおいて、第1の期間における利用開始数と第2の期間における利用開始数との差Δ
iを算出する(S201)。一例として、一分単位でダウンロード数を表し、
図3に示すような過去の各時点t
iについて、各時点t
i以後の8分間の利用開始数と当該時点t
iの前の8分間の利用開始数との差Δ
iを算出する。利用開始数の差Δ
iは、各時点t
iを基準とした利用開始増加数を表していると言うことができ、ダウンロード数を指標とする場合にはダウンロード増加数を表していると言える。
【0026】
ここで、発明者らは、TVCMの視聴者がインターネット上で行動を取り、当該TVCMに関連づけられたアプリのダウンロード数、初回起動数等の利用開始数として現れるまでの期間は概ね8分間等であることを見出し、必ずしも8分間に限るものではないが、本発明は、TVCMの放映後数分間に着目するものである。
【0027】
上述の説明では、ti時点におけるΔiを利用開始数の差として定義したが、第1の期間の半分の期間における利用開始数を2倍して第1の期間における利用開始数から引くことによって利用開始増加数Δiを算出することもできる。換言すれば、第1の期間における利用開始数又はその近似値と第2の期間における利用開始数又はその近似値との差を利用開始増加数Δiと考えてもよい。また、差により得られた値を定数倍したり、定数を加算したりしてもよく、さらに一般的には、ある時点の以後又は後の第1の期間における利用開始数又はその近似値と当該ある時点の以前又は前の第2の期間における利用開始数又はその近似値との差又はそれに応じた値を「利用開始スコア」と呼ぶことがある。これは、ダウンロード数を指標とする場合には「ダウンロードスコア」と呼ぶことがある。より一般には、「利用開始スコア」は、ある時点の以後又は後の第1の期間における利用開始数又はその近似値と当該ある時点の以前又は前の第2の期間における利用開始数又はその近似値とを用いて定まる利用開始の増加を表す値である。
【0028】
次に、装置100は、曜日又はその属性及び時間帯又はその属性の少なくとも一方に基づいてN個の時点t
iを区分して、区分ごとのダウンロードスコアの分布の標準偏差を算出する(S202)。一例として、曜日及び一時間ごとに区分した場合の標準偏差σ
m,n(mは1以上7以下の整数であり、nは0以上23以下の整数である。)を
図4に示す。ここで、mが1のときに日曜日に対応し、nが0のときに0時に対応する。標準偏差は、曜日の属性について、平日か休日かによって区分したり、時間帯の属性について、朝か昼か夜かによって区分したりしてもよい。装置100は、このように算出された標準偏差をデータベース104に記憶しておき、以後の効果測定においてこれを取得可能とすることができる。
【0029】
また、標準偏差の算出は、東京、福岡等の地域ごとに行うことが有益であることがあり、N個の時点tiを曜日又はその属性及び時間帯又はその属性の少なくとも一方に加えてさらに地域に基づいて区分してもよい。サーバ110からのアプリのダウンロード、ダウンロード後の初回起動その他の利用開始は、どの地点又は地域に所在する端末から行われたかを判別可能であることがあり、そのような場合にダウンロードスコア等の利用開始スコアの地域ごとの区分が可能である。
【0030】
そして、装置100は、評価の対象となるTVCMの放映時刻tをコンピュータネットワークを介して受信する(S203)。装置100は、当該TVCMの識別子を加えて取得することが好ましい。TVCMの識別子とアプリの識別子との対応づけを記憶しておけば、装置100は、取得したTVCMの識別子に基づいて、当該TVCMの効果測定に用いるアプリを判定し、当該アプリの利用開始数を用いて算出された標準偏差を取得することができる。または、装置100は、TVCMの放映時刻tに加えて、当該TVCMと関連づけられたアプリの識別子をユーザー端末120その他のコンピュータから直接取得してもよい。装置100は、放映時刻tを取得するのと同時に又はその前後に、当該TVCMの放映地域を取得してもよい。
【0031】
また、装置100は、受信した放映時刻tから定まる放映の曜日又はその属性及び時間帯又はその属性の少なくとも一方に対応する1又は複数の区分について、当該TVCMに関連づけられたアプリの1又は複数の標準偏差を取得する(S204)。
【0032】
一組のパラメータとして、
図4に示すように曜日及び時間帯ごとに標準偏差が記憶されている場合、装置100は、受信した放映時刻tに対応する曜日及び時間帯の値を取得すればよい。また、装置100は、受信した放映時刻tが平日か休日かを判定して、平日であれば平日に該当する複数の曜日の値を取得して、これを用いて例えば平日の平均的な標準偏差を定めてもよい。また、装置100は、受信した放映時刻tが夜か否かを判定して、夜であれば夜に該当する複数の時間帯の値を取得して、これを用いて例えば夜の平均的な標準偏差を定めてもよい。あるいは、一組のパラメータとして、平日又は休日という曜日の属性に対応する区分と、朝、昼又は夜という時間帯の属性に対応する区分とによって区分した標準偏差が記憶されている場合には、装置100は、受信した放映時刻tの属性を判定して、対応する区分の値を取得することができる。また、標準偏差が地域ごとに記憶されている場合には、装置100は、放映時刻tに加えて放映地域を取得して、当該放映地域に対応する区分の標準偏差を取得することができる。
【0033】
装置100は、取得したTVCMの放映時刻tにおいて、当該時刻における利用開始スコアΔを算出する(S205)。ここで、放映時刻tは1分若しくは数分単位又は1秒、数秒若しくは数十秒単位により表すことができる。また、放映時刻tは、1秒、数秒又は数十秒単位で表されたデータを取得して利用開始スコアの算出に当たって1分又は数分単位に変換してもよい。ここで、「数分」とは発明者らの知見によれば、7分又は8分が好ましいが、これに限定するものではなく、4分、5分、6分等とすることも考えられる。また、「数秒」とは3秒、5秒等とすることが挙げられ、「数十秒」とは30秒、50秒等とすることが挙げられる。放映時刻tは、より広くは所定の分数の単位又は所定の秒数の単位で表すことができ、たとえば10分未満又は数十分未満の任意の単位で表すことが考えられる。
【0034】
そして、装置100は、アプリの利用開始スコアΔと当該アプリの1若しくは複数の標準偏差又は当該1若しくは複数の標準偏差を用いて定まる値σとを比較してTVCMの効果を評価する(S206)。一例として、Δ>1.5σで表されるように、利用開始スコアΔが標準偏差σに所定の係数を乗じた値よりも大きければ効果があり、それ以下であれば効果がなかったと評価することが挙げられる。あるいは、Δ/σで表される比を算出して、当該比が所定の値よりも大きければ効果があり、それ以下であれば効果がなかったと評価することが挙げられる。ここで、1又は複数の標準偏差を用いて定まる値σの一例は、複数の標準偏差の平均値である。
【0035】
上述の説明においては、TVCMの効果の有無を評価しているが、利用開始スコアΔと標準偏差σとの比較に基づいて、TVCMの効果が出た確率を評価してもよい。具体的には、利用開始スコアΔと標準偏差σとの比較結果について1又は複数のしきい値を設定して、各しきい値を超えていれば効果が出た確率xはa<x≦b(a及びbは0から100の間の数)と評価することが考えられる。また、TVCMの効果の評価結果として得られた利用開始スコアを当該TVCMの放映費用と比較することで、投資対効果を評価することが考えられる。
【0036】
また、上述の説明においては、区分ごとの標準偏差の算出を装置100で行うものとして記述しているが、装置100とは異なる装置、コンピュータ又はサーバにおいて算出を行い、装置100が後にこれを取得可能に記憶してもよい。
【0037】
また、上述の説明においては、過去のN個の時点tiにおける利用開始スコアΔiの分布について、前記N個の時点tiを区分した区分ごとに算出した標準偏差を記憶しておくものとして説明したが、一般に、過去のN個の時点tiにおける利用開始スコアΔiの値について、前記N個の時点tiを区分した区分ごとに算出した1又は複数のしきい値を記憶しておき、これを装置100が後に取得して、評価の対象であるTVCMの放映時刻における利用開始スコアΔを取得された当該1若しくは複数のしきい値又は当該1若しくは複数のしきい値を用いて定まる値σと比較して前記TVCMの効果を評価することも考えられる。取得される各しきい値は、より一般に、曜日又はその属性及び時間帯又はその属性の少なくとも一方により区分した区分ごとに定められたしきい値とすることが考えられ、TVCMに関連づけられたアプリの利用開始数又はその近似値を直接的に用いて算出されるもののみに必ずしも限定されず、また、異なる区分で同一の値を取ることを必ずしも排除しないことを付言する。
【0038】
なお、「××のみに基づいて」、「××のみに応じて」、「××のみの場合」というように「のみ」との記載がなければ、本明細書においては、付加的な情報も考慮し得ることが想定されていることに留意されたい。また、一例として、「aの場合にbする」という記載は、明示した場合を除き、「aの場合に常にbする」こと、「aの直後にbする」ことを必ずしも意味しないことに留意されたい。また、「Aを構成する各a」という記載は、必ずしもAが複数の構成要素によって構成されることを意味するものではなく、構成要素が単数であることを含む。
【0039】
また、念のため、なんらかの方法、プログラム、端末、装置、サーバ又はシステム(以下「方法等」)において、本明細書で記述された動作と異なる動作を行う側面があるとしても、本発明の各態様は、本明細書で記述された動作のいずれかと同一の動作を対象とするものであり、本明細書で記述された動作と異なる動作が存在することは、当該方法等を本発明の各態様の範囲外とするものではないことを付言する。
【0040】
また、
図2において示される「開始」及び「終了」は、一例を示すものに過ぎず、本実施形態にかかる方法がS201によって必ず開始され、S206によって必ず終了することを意味するものではない。
【符号の説明】
【0041】
100 装置
101 通信部
102 処理部
103 記憶部
104 データベース
110 ウェブサイト
120 ユーザー端末
【手続補正書】
【提出日】2021-06-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、TVCMの効果を評価するための方法であって、
評価の対象である前記TVCMの放映時刻を取得するステップと、
1又は複数のしきい値を取得するステップと、
前記放映時刻における利用開始スコアΔを取得された前記1若しくは複数のしきい値又は前記1若しくは複数のしきい値を用いて定まる値σと比較して前記TVCMの効果を評価するステップと
を含み、
前記利用開始スコアΔは、ある時点の以後又は後の第1の期間における前記TVCMと関連づけられたアプリの利用開始数又はその近似値と前記ある時点の以前又は前の第2の期間における前記アプリの利用開始数又はその近似値とを用いて定まる利用開始の増加を表す値であり、
取得された前記1又は複数のしきい値は、前記コンピュータが取得可能に記憶されていることを特徴とする。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1及び第2の期間は所定の分数の単位又は所定の秒数の単位で表されることを特徴とする。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記TVCMの放映地域を取得するステップをさらに含むことを特徴とする。
【請求項4】
コンピュータに、TVCMの効果を評価するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
評価の対象である前記TVCMの放映時刻を取得するステップと、
1又は複数のしきい値を取得するステップと、
前記放映時刻における利用開始スコアΔを取得された前記1若しくは複数のしきい値又は前記1若しくは複数のしきい値を用いて定まる値σと比較して前記TVCMの効果を評価するステップと
を含み、
前記利用開始スコアΔは、ある時点の以後又は後の第1の期間における前記TVCMと関連づけられたアプリの利用開始数又はその近似値と前記ある時点の以前又は前の第2の期間における前記アプリの利用開始数又はその近似値とを用いて定まる利用開始の増加を表す値であり、
取得された前記1又は複数のしきい値は、前記コンピュータが取得可能に記憶されていることを特徴とする。
【請求項5】
TVCMの効果を評価するための装置であって、
評価の対象である前記TVCMの放映時刻を取得し、
1又は複数のしきい値を取得し、
前記放映時刻における利用開始スコアΔを取得された前記1若しくは複数のしきい値又は前記1若しくは複数のしきい値を用いて定まる値σと比較して前記TVCMの効果を評価し、
前記利用開始スコアΔは、ある時点の以後又は後の第1の期間における前記TVCMと関連づけられたアプリの利用開始数又はその近似値と前記ある時点の以前又は前の第2の期間における前記アプリの利用開始数又はその近似値とを用いて定まる利用開始の増加を表す値であり、
取得された前記1又は複数のしきい値は、前記装置が取得可能に記憶されていることを特徴とする。