(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167236
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】雷電流検出器
(51)【国際特許分類】
H01T 15/00 20060101AFI20221027BHJP
H01T 1/12 20060101ALI20221027BHJP
G01R 19/04 20060101ALI20221027BHJP
G01R 19/15 20060101ALI20221027BHJP
H05F 3/04 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
H01T15/00 A
H01T1/12
G01R19/04 Z
G01R19/15
H05F3/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072911
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000130835
【氏名又は名称】株式会社サンコーシヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100086807
【弁理士】
【氏名又は名称】柿本 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】江縁 憲一
【テーマコード(参考)】
2G035
5G067
【Fターム(参考)】
2G035AB11
2G035AC05
2G035AC17
2G035AD04
2G035AD11
2G035AD13
2G035AD39
2G035AD43
2G035AD47
5G067DA32
5G067EA01
(57)【要約】
【課題】被検出部に流れる雷電流の電流値に応じた検出信号を、無電源で簡易的確に出力できる。
【解決手段】雷電流検出器10は、被検出部1に近接して配置され、前記被検出部1に流れる雷電流iによる磁界Gを検出して、前記雷電流iの電流値に応じた検出電流を出力する検出部20と、前記検出電流を入力し、前記検出電流の大きさに応じた検出信号を出力する検出回路30と、を備えている。検出部20は、配線パターン22が形成されたプリント基板21と、前記プリント基板21に対して所定間隔隔てて対向配置され、前記配線パターン22に対して巻いた状態に接続された配線パターン24が形成されたプリント基板23と、前記プリント基板21,23間に介装された板状のコア25と、を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出部に近接して配置され、前記被検出部に流れる雷電流による磁界を検出して、前記雷電流の電流値に応じた検出電流を出力する検出部と、
前記検出電流を入力し、前記検出電流の大きさに応じた検出信号を出力する検出回路と、
を備え、
前記検出部は、
複数の第1配線パターンが形成された第1プリント基板と、
前記第1プリント基板に対して所定間隔隔てて対向配置され、前記複数の第1配線パターンに対して巻いた状態に接続された複数の第2配線パターンが形成された第2プリント基板と、
前記第1プリント基板と前記第2プリント基板との間に介装された板状のコアと、
を有することを特徴とする雷電流検出器。
【請求項2】
前記複数の第1配線パターンは、前記第1プリント基板の表面に形成され、
前記複数の第2配線パターンは、第2プリント基板の表面に形成され、
前記第1プリント基板の裏面に対して所定間隔隔てて前記第2プリント基板の裏面が配置され、前記第1プリント基板の裏面と前記第2プリント基板の裏面との間に、前記コアが介装され、前記複数の第1配線パターと前記複数の第2配線パターンとが、コネクタにより巻いた状態に接続されている、
ことを特徴とする請求項1記載の雷電流検出器。
【請求項3】
前記検出回路は、
前記検出電流を整流する整流回路と、
前記整流回路の出力電流によって充電され、前記検出電流の大きさに対応する充電電圧を出力する充電回路と、
1つ又は複数のレベルの閾値を有し、前記充電電圧と前記1つ又は複数のレベルの閾値との大小を比較判定して1つ又は複数の判定結果を出力する判定回路部と、
前記1つ又は複数の判定結果に応じた複数のレベルの検出信号を出力する複数の出力部と、
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の雷電流検出器。
【請求項4】
前記整流回路は、
全波整流回路により構成され、
前記充電回路は、
並列接続された1つ又は複数のコンデンサを有し、
前記判定回路部は、
前記1つ又は複数のレベルの閾値を有し、前記充電電圧と前記1つ又は複数のレベルの閾値との大小を比較判定して前記1つ又は複数の判定結果を出力する1つ又は複数の判定回路を備え、
前記複数の出力部は、
前記1つ又は複数の判定結果に応じてオン状態になり、前記複数のレベルの検出信号を出力する複数のリレーにより構成されている、
ことを特徴とする請求項3記載の雷電流検出器。
【請求項5】
前記複数のリレーの出力側には、
前記複数のレベルの検出信号を外部へ出力する外部出力端子が接続されている、
ことを特徴とする請求項4記載の雷電流検出器。
【請求項6】
前記リレーは、
半導体リレーであり、
前記半導体リレーには、
前記充電回路の出力電流が定電流素子により定電流化されて入力される、
ことを特徴とする請求項4又は5記載の雷電流検出器。
【請求項7】
前記整流回路は、
全波整流回路により構成され、
前記充電回路は、
並列接続された1つ又は複数のコンデンサを有し、
前記判定回路部は、
前記1つ又は複数のレベルの閾値を有し、前記充電電圧と前記1つ又は複数のレベルの閾値との大小を比較判定して前記1つ又は複数の判定結果を出力する1つ又は複数の判定回路を備え、
前記複数の出力部は、
前記1つ又は複数の判定結果に応じてオン状態になり、前記複数のレベルの検出信号を光信号の形で出力する複数の発光素子により構成されている、
ことを特徴とする請求項3記載の雷電流検出器。
【請求項8】
前記発光素子には、
前記充電回路の出力電流が定電流素子により定電流化されて入力される、
ことを特徴とする請求項7記載の雷電流検出器。
【請求項9】
前記検出回路は、
前記検出電流を整流する整流回路と、
前記整流回路の出力電流によって充電され、前記検出電流の大きさに対応する充電電圧を出力する充電回路と、
前記充電回路の出力電流を定電流にする定電流素子と、
前記定電流素子の出力電流を入力し、前記雷電流の電流値に対応する時間、オン状態になって前記検出信号を出力する半導体リレーと、
前記検出信号を外部へ出力する外部出力端子と、
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の雷電流検出器。
【請求項10】
前記整流回路は、
全波整流回路により構成され、
前記充電回路は、
並列接続された1つ又は複数のコンデンサを有する、
ことを特徴とする請求項9記載の雷電流検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落雷時に被検出部(例えば、鉄塔等の構造物や接地線等)に流れる雷電流を検出する雷電流検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、電池や交流(AC)100Vの交流電源を具備しない無電源方式で、サージ電流(雷電流)の大きさを判定できるサージ電流計測装置である雷電流検出器が開示されている。
この特許文献1の雷電流検出器は、避雷器の接地線に流れる雷電流を変流器(Current Transformer、以下「CT」という。)により検出し、そのCTの2次電流に基づいて雷電流を計測するものであり、CTの2次電流を整流する整流回路と、その整流回路の出力電流により充電される蓄電回路と、CTの2次電流の波高値を検出する複数のサイリスタからなるレベル検出回路と、その蓄電回路の出力電圧により駆動される記憶回路と、を備えている。そして、レベル検出回路の検出結果に基づいて雷電流の侵入回数及び侵入毎の波高値を記憶回路に記録するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1等に開示された従来の雷電流検出器では、以下の(1)~(3)のような課題がある。
【0005】
(1) 雷電流を検出する検出部の構成についての課題
一般的に、雷電流検出器の検出部は、特許文献1に開示されているように、環状の鉄芯(以下「コア」という。)に巻線が巻かれたCTが使用される。しかし、CTを使用した雷電流検出器には、次のような問題がある。
(1a) 接地線等の被検出部をCTに貫通させるように配置する必要があるため、CTの種類(例えば、クランプ型で無い場合等)によっては、後付けに手間が掛かる。又、鉄塔の脚部等の外径の大きい場所に設置することが困難である。
(1b) CTは、コアに巻線を巻く工程に工数が掛かる。又、良質な検出精度を得るためには、安定した巻線配置が必要であるため、量産等の際に性能品質の安定化が困難である。
【0006】
(2) 検出情報の遠隔監視についての課題
雷電流検出器は、通常、人が立ち入らない場所(例えば、山中の鉄塔等)での設置を想定して、検出情報を無線で遠隔監視できるものが必要とされている。
ここで、雷電流検出器の通信機能は、一般的にローカル・エリア・ネットワーク(LAN)、RS232C(パーソナルコンピュータに標準で搭載される等、最も広く使われているシリアル通信規格)、RS485(接続台数を増やしたシリアル通信規格)等のシリアル通信であるため、無線による遠隔監視をする際には、移動体用無線通信システムである3G、4G/LTE、5G等のルータ機器と組み合わせて使う必要がある。しかし、このような雷電流検出器は、自身の動作に電源を必要とする。又、ルータ機器の動作にも多くの電源が必要であり、電池での駆動も難しいため、電源の確保が難しい山中等での使用が困難である。
ここで、電池での駆動が難しい理由は、次の通りである。例えば、ルータ機器の駆動に多くの電源が必要であり、当該電源を電池だけで賄うことが難しい。ルータ機器は、通常AC100V電源で動作するため、商用電源の無い所で使用するには、(蓄電池+インバータ+太陽光発電)の様なオフグリッド電源が必要になり、大がかりなシステムとなるからである。
【0007】
(3) 前記(1),(2)の課題を解決するために、低消費電流で長時間の電池駆動が可能なロー・パワー・ワイド・エリア(Low Power Wide Area、以下「LPWA」という。)等の無線通信技術と接点出力機能を有する雷電流検出器とを組み合わせたものが検討されている。しかし、このような雷電流検出器についても、次のような課題がある。
(3a) 一般的に、雷電流検出器は自信の動作に電源を必要とするため、検出情報を無電源で出力できず、定期的な電池交換が必要になる。即ち、検出情報の出力には、接点の動作が必要であり、接点の動作には電源(電池)が必要になるので、定期的な電池交換が必要になる。
(3b) 特許文献1のように、雷電流を利用した方法を使って接点出力を駆動させる構成も考えられるが、通常、落雷の有り・無しの単接点しか出力できないため、雷電流の大きさを検出できない。
(3c) 無線装置は、誤動作防止用として数mSの接点入力時間が要求される。しかし、特許文献1のような無電源タイプは、雷電流のエネルギーをマイクロコンピュータによる計測処理や記憶回路の電源として使用するため、その要求をクリア(満足)できない。
(3d) 特許文献1のように、記憶回路を使用した雷電流検出器も知られているが、記憶回路に記憶した情報を出力する際に電源を必要とするため、前記(3a)に記載された、検出情報を無電源で出力できない、と同様の課題を抱えている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の雷電流検出器は、被検出部に近接して配置され、前記被検出部に流れる雷電流による磁界を検出して、前記雷電流の電流値に応じた検出電流を出力する検出部と、前記検出電流を入力し、前記検出電流の大きさに応じた検出信号を出力する検出回路と、を備えている。
そして、前記検出部は、複数の第1配線パターンが形成された第1プリント基板と、前記第1プリント基板に対して所定間隔隔てて対向配置され、前記複数の第1配線パターンに対して巻いた状態に接続された複数の第2配線パターンが形成された第2プリント基板と、前記第1プリント基板と前記第2プリント基板との間に介装された板状のコアと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の雷電流検出器によれば、以下の(a)~(c)のような効果がある。
(a) 被検出部を検出部に貫通させるように配置する必要が無いため、後付けが容易である。又、被検出部の外径によらず設置できるため、汎用性が向上する。
(b) CTの巻線を第1、第2プリント基板の第1、第2配線パターンによって形成しているため、巻線形成の工数が発生しない。又、安定した巻線配置を考慮する必要が無いため、性能品質の安定化が容易である。
(c) 雷電流の電流値に応じた検出信号を検出回路から無電源で簡易的確に出力できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1における雷電流検出器を示す図
【
図2】
図1(b)の第1プリント基板21と第2プリント基板23とを上下に分離した状態を示す斜視図
【
図3】
図1(b)の第1プリント基板21と第2プリント基板23とを上下に分離した状態を示す側面図
【
図5】
図1(b)中の第1プリント基板21の実装例を示す図
【
図6】
図1(b)中の第2プリント基板23の実装例を示す図
【
図7】本発明の実施例2における雷電流検出器を示す回路図
【
図8】本発明の実施例3における雷電流検出器を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例0012】
(実施例1の構成)
図1(a),(b),(c)は、本発明の実施例1における雷電流検出器を示す図であり、同図(a)は雷電流の検出イメージを示す図、同図(b)は雷電流検出器の側面図、及び、同図(c)は雷電流の検出部を示す模式図である。
図2は、
図1(b)の第1プリント基板21と第2プリント基板23とを上下に分離した状態を示す斜視図である。更に、
図3は、
図1(b)の第1プリント基板21と第2プリント基板23とを上下に分離した状態を示す側面図である。
【0013】
図1(a)において、鉄塔の脚部、接地線等の被検出部1に流れる雷電流iを検出する場合、その被検出部1に近接して配置される本実施例1の雷電流検出器10を使用できる。雷電流検出器10は、例えば、ベルト等で被検出部1の側面に固定される絶縁性のケース10a内に収納された検出部20及び検出回路30を備えている。検出部20は、被検出部1に流れる雷電流iによってその被検出部1の周囲に発生する磁界Gを検出し、雷電流iの電流値に応じた検出電流を出力するものである。検出回路30は、検出電流を入力し、その検出電流の大きさに応じた検出信号を出力する回路である。
【0014】
図1(b),(c)、
図2及び
図3において、検出部20は、第1プリント基板21と、その第1プリント基板21に対して所定間隔隔てて対向配置された第2プリント基板23と、その第1プリント基板21と第2プリント基板23との間に介装された板状のコア25と、を有している。第1プリント基板21には、複数の第1配線パターン22が形成され、更に、第2プリント基板23にも、複数の第2配線パターン24が形成され、それらの複数の第1配線ターン22と複数の第2配線パターン24とが、巻線のように巻いた状態に接続されている。
【0015】
例えば、複数の第1配線パターン22は、第1プリント基板21の表面に形成され、複数の第2配線パターン24は、第2プリント基板23の表面に形成されている。そして、第1プリント基板21の裏面に対して所定間隔隔てて第2プリント基板23の裏面が配置され、それらの第1プリント基板21の裏面と第2プリント基板23の裏面との間に、板状のコア25が介装されている。板状のコア25は、例えば、ねじ26及びナット27により、第2プリント基板23の裏面上に固定されている。第1プリント基板21の裏面には、複数の第1配線パターン22に接続された2つの接続端子(例えば、雄コネクタ28)が固定されている。第2プリント基板23の裏面には、複数の第2配線パターン24に接続された2つの接続端子(例えば、雌コネクタ29)が固定されている。2つの雄コネクタ28は、着脱自在に2つの雌コネクタ29に挿着され、複数の第1配線パター22と複数の第2配線パターン24とが、巻いた状態に接続されている。
【0016】
第1プリント基板21の例えば裏面側には、検出回路30が搭載され、更に、その第1プリント基板21の例えば表面側に、外部出力端子37が固定されている。外部出力端子37は、検出回路30から出力される複数のレベルの検出信号を外部へ出力する端子である。
【0017】
図4は、
図1の雷電流検出器10を示す回路図である。
雷電流検出器10は、検出部20と、この出力側に接続された検出回路30と、を備え、その検出回路30の出力側に、例えば、複数の電線41,42,43を介して無線装置44が接続されている。
【0018】
検出回路30は、検出部20から出力される検出電流iaを整流する整流回路31を有している。整流回路31は、例えば、4つの整流ダイオード31a,31b,31c,31dがブリッジ接続されて入力される検出電流iaを全波整流する全波整流回路により構成され、この出力側に、並列接続された終端抵抗32を介して、充電回路33が接続されている。充電回路33は、整流回路31の出力電流によって充電され、検出電流iaの大きさに対応する充電電圧v33を出力する回路であり、例えば、整流回路31の出力側に直列接続された逆流防止ダイオード33aと、このダイオード33aの出力側に並列接続された1つのコンデンサ33bと、を有している。1つのコンデンサ33bは、容量を増すために複数のコンデンサを並列に接続しても良い。充電回路33の出力側には、判定回路部34が接続されている。
【0019】
判定回路部34は、複数の電圧レベルの閾値(例えば、2つの閾値Vth1,Vth2、但し、0V<Vth1<Vth2)を有し、入力される充電電圧v33とその複数の閾値Vth1,Vth2との大小を比較判定して複数の判定結果(例えば、2つの判定結果S34(1),S34(2))を出力するものであり、複数の判定回路(例えば、2つの判定回路34-1,34-2)を有している。なお、判定回路は、1つであっても良い。充電電圧v33が閾値Vth1よりも大きい時には、判定回路34-1から判定結果S34(1)が出力され、充電電圧v33が閾値Vth2よりも大きい時には、判定回路34-2から判定結果S34(2)が出力される構成になっている。例えば、判定回路34-1は、抵抗34a1、閾値Vth1設定のためのツェナー電圧を持ったツェナーダイオード34b1、及び抵抗34c1の直列回路により構成されている。同様に、判定回路34-2も、抵抗34a2、閾値Vth2設定のためのツェナー電圧を持ったツェナーダイオード34b2、及び抵抗34c2の直列回路により構成されている。
【0020】
判定回路部34の出力側には、複数の判定結果S34(1),S34(2)等に応じた複数のレベルの検出信号を出力する複数の出力部が接続されている。前記複数の出力部は、複数の判定結果S34(1),S34(2)に応じてオン状態になる複数のスイッチング素子(例えば、サイリスタ34d1,34d2)と、充電回路33の出力電流を定電流化するための複数の定電流素子(例えば、定電流ダイオード35-1,35-2,35-3)と、複数のレベルの検出信号を出力する複数のリレー(例えば、半導体リレーの一つであるMOSFETを用いたフォトリレー36-1,36-2,36-3)に接続され、複数のレベルの検出信号S37a1,S37a2,S37a3を外部へ出力する外部出力端子37と、を有している。各フォトリレー36-1,36-2,36-3は、各定電流ダイオード35-1,35-2,35-3から出力される定電流を入力して発光する発光素子と、その発光を受光してオン状態になるMOSFETからなる受光素子と、により構成されている。
【0021】
外部出力端子37には、電線41,42,43を介して無線装置44が接続されている。無線装置44は、電池を有し、LPWA等の遠距離通信機能により、外部出力端子37から出力された検出信号S37a1,S37a2,S37a3を無線により遠方へ送信する装置である。
【0022】
図5(a),(b)は、
図1(b)中の第1プリント基板21の実装例を示す図であり、同図(a)は第1プリント基板21の表面図、及び、同図(b)は第1プリント基板21の裏面図である。更に、
図6(a),(b)は、
図1(b)中の第2プリント基板23の実装例を示す図であり、同図(a)は第2プリント基板23の表面図、及び、同図(b)は第2プリント基板23の裏面図である。
【0023】
(実施例1の動作)
図1(a)等において、鉄塔の脚部、接地線等の被検出部1に沿うように、絶縁性のケース10aに収納された雷電流検出器10が設置されている。被検出部1に雷電流iが流れると、その被検出部1の周囲に磁界Gが発生する。すると、その磁界Gが雷電流検出器10の検出部20により検出されて、雷電流iの電流値に応じた検出電流iaが検出部20から出力され、
図4の検出回路30に入力される。
【0024】
以下、雷電流iが判定回路部34の閾値Vth1未満の場合の動作(I)、雷電流iが判定回路部34の閾値Vth1以上、且つ閾値Vth2未満の場合の動作(II)、及び、雷電流iが判定回路部34の閾値Vth2以上の場合の動作(III)、について説明する。
【0025】
(I) 雷電流iが判定回路部34の閾値Vth1未満の場合の動作(1)~(7)
(1) 被検出部1に雷電流iが流れると、その被検出部1の周囲に磁界Gが発生する。
(2) 検出部20からその雷電流iの電流値に応じた検出電流iaが出力される。
(3) 検出電流iaは、整流回路31によって全波整流される。
(4) 全波整流された検出電流iaにより、充電回路33内の逆流防止ダイオード33aを通してコンデンサ33bが充電される。
(5) コンデンサ33bの充電電圧v33は、判定回路34-1の閾値Vth1よりも低いため、定電流ダイオード35-1を通して定電流がフォトリレー36-1に流れる。
(6) フォトリレー36-1の発光素子が発光して受光素子がオンし、そのフォトリレー36-1から検出信号S37a1が出力される。
(7) 出力された検出信号S37a1は、外部出力端子37及び電線41を通して無線装置44へ送られ、LPWA等の無線通信によって遠方へ送出される。
【0026】
(II) 雷電流iが判定回路部34の閾値Vth1以上、且つ閾値Vth2未満の場合の動作(1)~(8)
(1)~(4) 前記(I)(1)~(4)と同様の動作が行われる。
(5) 充電回路33内のコンデンサ33bの充電電圧v33が、判定回路部34の閾値Vth1(即ち、判定回路34-1内のツェナーダイオード34b1のツェナー電圧)以上になると、その判定結果S34(1)によってサイリスタ34d1がオンする。
(6) 定電流ダイオード35-1を通して定電流がフォトリレー36-1の発光素子に流れると共に、定電流ダイオード35-2を通して定電流がフォトリレー36-2の発光素子に流れる。
(7) フォトリレー36-1,36-2の発光素子が発光して受光素子がオンし、そのフォトリレー36-1,36-2の接点出力端子36a1,36a2から検出信号S37a1,S37a2が出力される。
(8) 出力された検出信号S37a1,S37a2は、外部出力端子37及び電線41,42を通して無線装置44へ送られ、無線通信によって遠方へ送出される。
【0027】
(III) 雷電流iが判定回路部34の閾値Vth2以上の場合の動作(1)~(8)
(1)~(4) 前記(I)(1)~(4)と同様の動作が行われる。
(5) 充電回路33内のコンデンサ33bの充電電圧v33が、判定回路部34の閾値Vth2(即ち、判定回路34-2内のツェナーダイオード34b2のツェナー電圧)以上になると、その判定結果S34(1),S34(2)によってサイリスタ34d1,34d2がオンする。
(6) 定電流ダイオード35-1,35-2,35-3を通して定電流がフォトリレー36-1,36-2,36-3の発光素子に流れる。
(7) フォトリレー36-1,36-2,36-3の発光素子が発光して受光素子がオンし、そのフォトリレー36-1,36-2,36-3から検出信号S37a1,S37a2,S37a3が出力される。
(8) 出力された検出信号S37a1,S37a2,S37a3は、外部出力端子37及び電線41,42,43を通して無線装置44へ送られ、無線通信によって遠方へ送出される。
【0028】
(実施例1の効果)
本実施例1の雷電流検出器10によれば、以下の(a)~(f)のような効果がある。
(a) 被検出部1を検出部20に貫通させるように配置する必要が無いため、後付けが容易である。又、被検出部1の外径によらず設置できるため、汎用性が向上する。
(b) CTの巻線をプリント基板21,23の配線パターン22,24によって形成しているため、巻線形成の工数が発生しない。又、安定した巻線配置を考慮する必要が無いため、性能品質の安定化が容易である。
(c) 充電回路33を設けているので、検出情報である検出信号S37a1,S37a2,S37a3を無電源で簡易的確に出力できる。
【0029】
(d) 定電流ダイオード35-1,35-2,35-3を通して定電流を各フォトリレー36-1,36-2,36-3に供給する構成にしたので、無線装置44の誤動作防止に要求される接点入力時間数mSをクリア(満足)できる。
(e) 判定回路部34の閾値Vth1,Vth2は、ツェナーダイオード34b1,34b2のツェナー電圧を変えることで変更が可能である。又、定電流ダイオード35-1の入力側に判定回路を設けていないので、充電電圧v33が閾値Vth1よりも小さい時には、判定回路34-1,34-2が動作せず、電力消費量を削減できる。
(f) 雷電流iの電流値に応じた3段階の接点出力を設けたので、検出信号S37a1,S37a2,S37a3から雷電流iの大きさを例えば大・中・小として判定することができる。なお、判定回路部34の閾値を1つにすれば、2段階の出力が可能である。又、判定回路部34の閾値を3つ以上にすれば、3段階以上の出力も可能である。
本実施例2の雷電流検出器10Aにおける検出回路30Aでは、実施例1のフォトリレー36-1,36-2,36-3、外部出力端子37、及び電線41,42,43に代えて、発光素子36-1A,36-2A,36-3A、光ファイバ41A,42A,43A、及び受光素子41a,42a,43aが設けられている。
本実施例2の各発光素子36-1A,36-2A,36-3Aは、各定電流ダイオード35-1,35-2,35-3の出力側にそれぞれ接続されている。各発光素子36-1A,36-2A,36-3Aの出力側は、各光ファイバ41A,42A,43A及び各受光素子41a,42a,43aを介して、無線装置44に接続されている。その他の構成は、実施例1と同様である。