(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167240
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】畦塗り機
(51)【国際特許分類】
A01B 35/00 20060101AFI20221027BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20221027BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20221027BHJP
【FI】
A01B35/00 C
A01B69/00 303P
G05D1/02 N
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072920
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸治
(72)【発明者】
【氏名】藤元 隆史
(72)【発明者】
【氏名】三浦 謙二
【テーマコード(参考)】
2B034
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B034AA02
2B034BA06
2B034BB01
2B034DA02
2B034DB13
2B034DB31
2B043AA04
2B043AB11
2B043AB15
2B043BA02
2B043BB01
2B043BB03
2B043DC03
2B043EA04
2B043EA35
2B043EB18
2B043EB22
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC14
2B043EC15
2B043ED27
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301GG09
5H301GG17
(57)【要約】
【課題】畦を形成する位置を高精度で制御すること。
【解決手段】畦塗り機は、畦を形成する畦形成部と、走行機体に装着される装着部と、第1点において前記装着部と接続され、前記第1点を中心に前記畦形成部を旋回させるオフセット移動部と、前記畦形成部が前記第1点を中心として旋回されても、前記畦形成部と相対的な位置関係が変わらない部材に設けられた第1位置検出器と、を有する。又は、畦塗り機は、畦の上面及び法面を形成する畦形成部と、機体に対して前記畦形成部を旋回させるオフセット移動部と、前記畦形成部の上方に設けられ、上面視において前記畦形成部と重なる第1位置検出器と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
畦を形成する畦形成部と、
走行機体に装着される装着部と、
第1点において前記装着部に接続され、前記第1点を中心に前記畦形成部を回動させるオフセット移動部と、
前記畦形成部が前記第1点を中心として回動されても、前記畦形成部と相対的な位置関係が変わらない部材に設けられた第1位置検出器と、を有する畦塗り機。
【請求項2】
畦を形成する畦形成部と、
走行機体に装着される装着部と、
第1点において前記装着部に接続され、前記第1点を中心に前記畦形成部を回動させるオフセット移動部と、
前記畦形成部の上方に設けられ、上面視において前記畦形成部と重なる第1位置検出器と、を有する畦塗り機。
【請求項3】
前記畦形成部の経路に関する情報を生成する制御部をさらに有し、
前記制御部は、
地点Aにおいて取得した第1位置情報及び地点Bにおいて取得した第2位置情報に基づいて、前記畦形成部の進行予定経路に関する第1情報を生成し、
前記第1位置検出器によって取得された位置情報と前記第1情報に基づいて、前記畦形成部の位置を補正する第2情報を生成する、請求項1又は2に記載の畦塗り機。
【請求項4】
前記畦形成部の経路に関する情報を生成する制御部と、
前記畦形成部が進む進行目標を検知する目標検知部と、をさらに有し、
前記制御部は、前記第1位置検出器によって取得された位置情報と前記進行目標との位置関係の変化に基づいて、前記畦形成部の位置を補正するための第2情報を生成する、請求項1又は2に記載の畦塗り機。
【請求項5】
前記畦形成部の経路に関する情報を生成する制御部と、
第2位置検出器と、をさらに有し、
前記畦形成部は、第2点において前記オフセット移動部と接続され、
前記第2位置検出器は、前記畦形成部が前記第1点を中心として回動されても、前記第2点を中心として回動されても、前記畦形成部との相対的な位置関係が変わらない部材に設けられ、
前記制御部は、前記第1位置検出器によって取得された位置情報及び前記第2位置検出器によって取得された位置情報に基づいて、上面視における前記畦形成部の進行方向に対する前記畦形成部の傾きを算出し、前記傾きに基づいて前記畦形成部の位置を補正するための第2情報を生成する、請求項1又は2に記載の畦塗り機。
【請求項6】
地図データ及び前記第1位置検出器によって取得された位置情報に基づいて、前記畦形成部の位置を補正するための第2情報を生成する制御部をさらに有する、請求項1又は2に記載の畦塗り機。
【請求項7】
前記制御部は、生成された前記第2情報を前記走行機体に送信する、請求項4乃至6のいずれか一に記載の畦塗り機。
【請求項8】
前記畦形成部の傾きを検出する傾き検出部をさらに有し、
前記制御部は、前記傾き検出部によって検出された前記傾きに基づいて、前記畦形成部によって形成された畦の位置を示す畦位置情報を生成する、請求項1乃至7のいずれか一に記載の畦塗り機。
【請求項9】
前記制御部は、前記畦位置情報に基づいて、前記畦形成部の位置を補正するための第2情報を生成する、請求項8に記載の畦塗り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は畦塗り機に関する。特に、本発明は、畦塗り機の進行方向を制御する機能を備えた畦塗り機に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、農作業の労働時間を軽減するために農作業機のオートマチック化が進められ、様々な農作業機が開発されている。特に、トラクタ等の走行機体の後方に装着され、畦塗り、耕耘、及び代かきなどの作業の種類に応じて交換可能な農作業機(畦塗り機、耕耘機、及び代かき機)は、走行機体に対してアタッチメントのように交換するだけで様々な農作業に対応することが可能であり、農作業のコスト低減に大きく寄与している。
【0003】
上記の農作業機のうち、特に畦塗り機は、作業者による手作業では実現が難しい高精度かつ高強度の畦を形成することができる点で非常に有用である。畦塗り機は、ロータなどによって圃場の土を耕耘し、耕耘された土をドラムなどの畦形成部によって押し固めることで、畦を形成する。近年、畦を形成している位置や畦が形成された位置を把握するために、位置検出器(例えば、GNSSアンテナ)を用いながら畦塗作業をおこなう農作業機が提案されている(特許文献1)。特許文献1における農作業機では、位置検出器は走行機体に設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の農作業機では、位置検出器の位置と畦塗り機に設けられた畦形成部(例えば、畦塗ドラム)とが一致していないため、畦が形成された位置の精度が十分ではなかった。また、トラクタが真っ直ぐ走行できないような軟弱圃場などにおいては、トラクタが進行方向に対して傾いてしまうことが想定されるが、走行機体に位置検出器が設けられていると、この傾きを位置検出器で検出することができない。この結果、トラクタの傾きに起因した畦塗機の位置変化を検出できず、畦の形成精度が悪化するという問題が生じる。さらに、畦形成部が走行機体の進行方向に対して走行機体の側方にオフセットした位置に移動可能な構成の場合、オフセット量に応じて、上記位置検出器によって取得された位置情報と畦形成部によって形成された畦の位置との位置関係が変動するため、畦が形成された位置精度が低下する問題があった。
【0006】
本発明の一実施形態は、畦を形成する位置を高精度で制御することを課題の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態による畦塗り機は、畦を形成する畦形成部と、走行機体に装着される装着部と、第1点において前記装着部と接続され、前記第1点を中心に前記畦形成部を旋回させるオフセット移動部と、前記畦形成部が前記第1点を中心として旋回されても、前記畦形成部と相対的な位置関係が変わらない部材に設けられた第1位置検出器と、を有する。
【0008】
本発明の一実施形態による畦塗り機は、畦を形成する畦形成部と、走行機体に装着される装着部と、第1点において前記装着部に接続され、前記第1点を中心に前記畦形成部を回動させるオフセット移動部と、前記畦形成部の上方に設けられ、上面視において前記畦形成部と重なる第1位置検出器と、を有する。
【0009】
前記畦形成部の経路に関する情報を生成する制御部をさらに有し、前記制御部は、地点Aにおいて取得した第1位置情報及び地点Bにおいて取得した第2位置情報に基づいて、前記畦形成部の進行予定経路に関する第1情報を生成し、前記第1位置検出器によって取得された位置情報と前記第1情報に基づいて、前記畦形成部の位置を補正する第2情報を生成してもよい。
【0010】
前記畦形成部の経路に関する情報を生成する制御部と、前記畦形成部が進む進行目標を検知する目標検知部と、をさらに有し、前記制御部は、前記第1位置検出器によって取得された位置情報と前記進行目標との位置関係の変化に基づいて、前記畦形成部の位置を補正する第2情報を生成してもよい。
【0011】
前記畦形成部の経路に関する情報を生成する制御部と、第2位置検出器と、をさらに有し、前記畦形成部は、第2点において前記オフセット移動部と接続され、前記第2位置検出器は、前記畦形成部が前記第1点を中心として回動されても、前記第2点を中心として回動されても、前記畦形成部との相対的な位置関係が変わらない部材に設けられ、前記制御部は、前記第1位置検出器によって取得された位置情報及び前記第2位置検出器によって取得された位置情報に基づいて、上面視における前記畦形成部の進行方向に対する前記畦形成部の傾きを算出し、前記傾きに基づいて前記畦形成部の位置を補正する第2情報を生成してもよい。
【0012】
地図データ及び前記第1位置検出器によって取得された位置情報に基づいて、前記畦形成部の位置を補正する第2情報を生成する制御部をさらに有してもよい。
【0013】
前記制御部は、生成された前記第2情報を前記走行機体に送信してもよい。
【0014】
前記畦形成部の傾きを検出する傾き検出部をさらに有し、前記制御部は、前記傾き検出部によって検出された前記傾きに基づいて、前記畦形成部によって形成された畦の位置を示す畦位置情報を生成してもよい。
【0015】
前記制御部は、前記畦位置情報に基づいて、前記畦形成部の位置を補正するための第2情報を生成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態によれば、畦を形成する位置を高精度で制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る畦塗り機の収納状態における全体構成を示す上面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る畦塗り機の作業状態における全体構成を示す上面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る畦塗り機の収納状態における全体構成を示す背面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る畦塗り機における直進制御のフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る畦塗り機における直進制御の一例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る畦塗り機における直進制御のフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態に係る畦塗り機における直進制御の一例を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る畦塗り機における直進制御のフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態に係る畦塗り機における直進制御の一例を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る畦塗り機における畦角部の自動制御の一例を示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る畦塗り機の収納状態における全体構成を示す上面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る畦塗り機の作業状態における全体構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る畦塗り機について説明する。但し、本発明の一実施形態に係る畦塗り機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号の後にアルファベットを付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0019】
本願の明細書及び特許請求の範囲において、「上」は、畦塗り機が畦に対して作業を行いながら進行する状態において、畦から垂直に遠ざかる方向を示し、「下」は、「上」とは反対の方向を示す。「前」は、畦塗り機に対して走行機体が位置する方向を示し、「後」は、「前」とは反対の方向を示す。また、「左」又は「右」は、畦塗り機を後方からみたときの「左」又は「右」を示す。
【0020】
なお、以下の各実施形態は、技術的な矛盾を生じない限り、互いに組み合わせることができる。
【0021】
〈第1実施形態〉
[畦塗り機10の構成]
本実施形態に係る畦塗り機10の概略の構成について、
図1~
図3を用いて説明する。
図1~
図3は、いずれも本発明の一実施形態に係る畦塗り機の全体構成を示す図である。
図1は、収納状態における畦塗り機10を示す上面図である。
図2は、作業状態における畦塗り機10を示す上面図である。
図3は、収納状態における畦塗り機10を示す背面図である。
【0022】
[収納状態の説明]
図1に示すように、本実施形態における畦塗り機10は、装着部100、オフセット機構部200、動力伝達部300、作業部400、位置検出器500(第1位置検出器)、及び制御部600を備えている。畦塗り機10は装着部100によってトラクタ等の走行機体に装着される。装着部100及び作業部400は、オフセット機構部200及び動力伝達部300を介して連結される。この構成によって、走行機体の走行に伴って畦塗り機10が牽引され、作業部400によって畦が形成される。
【0023】
[装着部100の構成]
装着部100は、走行機体の2つの後方タイヤの間に設けられた三点リンク機構に対して連結される。走行機体の三点リンク機構は、トップリンク、リフトロッド及びロワーリンクで構成される。
図1に示すように、畦塗り機10の装着部100は、トップマスト101及びロワーリンク連結部(図示せず)を有する。トップマスト101は、オートヒッチアーム(図示せず)を介して三点リンク機構のトップリンクに接続される。ロワーリンク連結部は、オートヒッチアームを介して三点リンク機構のロワーリンクに接続される。なお、三点リンク機構は、公知の機構であるため、詳細な説明は省略する。
【0024】
装着部100は、走行機体の幅方向である左右方向に延びるヒッチフレーム110を備える。ヒッチフレーム110は、上記の三点リンク機構に連結可能に構成されている。ヒッチフレーム110の中央下部にはギアボックス(図示せず)が設けられ、このギアボックス(図示せず)に走行機体から動力を受ける入力軸107が設けられている。入力軸107には、走行機体に設けられたPTO軸からユニバーサルジョイントを介して動力が伝達される。
【0025】
[オフセット機構部200の構成]
オフセット機構部200は、作業部400のオフセット移動を行うための回動機構である。オフセット機構部200を「オフセット移動部」という場合がある。詳細は後述するが、この回動機構による回動を「オフセット移動に伴う回動」、又は「オフセット回動」という場合がある。オフセット機構部200は、ヒッチフレーム110と作業部400とを連結する。オフセット機構部200は、走行機体の進行方向(D1方向)に対して走行機体の側方にオフセットした位置に、作業部400を移動させることができる。本実施形態のオフセット機構部200は、動力伝達部300の下方に設けられたオフセットフレーム(図示せず)、リンクロッド220、支持フレーム230、及び動力部240を有している。なお、後述するが、オフセットフレーム、リンクロッド220、支持フレーム230、及びヒッチフレーム110により、平行リンクが構成されており、オフセット機構部200を「リンク機構部」という場合がある。なお、
図2では、オフセット機構部200は走行機体の前進方向(D1方向)に対して右側(反時計回り)に回動した状態である。このとき、作業部400は走行機体に対して右後方にオフセットした状態で位置している。この状態を「作業状態」という。
【0026】
オフセットフレームは、長尺のフレームで構成され、動力伝達部300の下方に配設されている。上記のように、オフセットフレームの一端は、回動軸211(第1点)を中心にして、ヒッチフレーム110に対して回動可能に接続されている。一方、オフセットフレームの他端は、回動軸213において、作業部400及び支持フレーム230に対して回動可能に接続されている。オフセットフレームは、回動軸211を中心としてヒッチフレーム110に対して水平面上で回動する。作業部400は、回動軸213を中心としてオフセットフレームに対して水平面上で回動する。このような構成によって、作業部400は装着部100に対して水平面上で回動する。オフセットフレームは、動力伝達部300に接続されており、動力伝達部300と共に移動する。
【0027】
リンクロッド220も長尺の部材であり、オフセットフレームと同程度の長さを有する。リンクロッド220は、オフセットフレームと略平行に配設され、上記のように、リンクロッド220の一端は、回動軸221において、ヒッチフレーム110に対して回動可能に接続されている。一方、リンクロッド220の他端は、回動軸223において、支持フレーム230に対して回動可能に接続されている。
【0028】
支持フレーム230は、オフセットフレーム及びリンクロッド220に比べて短尺の部材であり、オフセットフレームとリンクロッド220とを相互に連結する部材である。上記のように、支持フレーム230に対し、オフセットフレーム及びリンクロッド220は、共に回動可能に連結される。支持フレーム230には、作業部400が支持されており、作業部400のオフセット回動の際に作業部400と一体に動く。
【0029】
ヒッチフレーム110、オフセットフレーム、リンクロッド220、及び支持フレーム230により回動機構(平行リンク機構)が構成されており、オフセット機構部200は、走行機体の進行方向に対する作業部400の向きを維持したまま、作業部400をオフセット回動させることができる。したがって、作業部400がオフセット回動しても、支持フレーム230と作業部400との相対的な位置関係は変わらない。
【0030】
動力部240は、オフセット機構部200の動力源(アクチュエータ)であり、例えば油圧シリンダ等で構成される伸縮部材である。動力部240の一端は、ヒッチフレーム110に連結され、他端は、オフセットフレームに連結される。動力部240の伸縮により、オフセット機構部200が駆動され、作業部400のオフセット量(オフセット方向への移動量)を制御することができる。換言すると、オフセット機構部200(リンク機構部)は、動力部240が伸長することにより、回動軸211を中心に反時計回りに回動して、後述する畦形成部410を備えた作業部400をオフセット回動させ、動力部240が収縮することにより、回動軸211を中心に時計回りに回動して、作業部400を収納位置(側)へ移動させる。なお、回動軸211を「第1点」という場合がある。作業部400のオフセット方向への移動量は、動力部240の伸縮量によって決まるため、無段階で調整可能である。
【0031】
[動力伝達部300の構成]
動力伝達部300は、装着部100の入力軸107で受けた走行機体からの動力を、作業部400側に伝達するための機構である。動力伝達部300として、チェーン駆動機構が用いられている。具体的には、動力伝達部300は、少なくとも駆動スプロケット、従動スプロケット、及びローラーチェーンを備えている。ローラーチェーンが駆動スプロケット及び従動スプロケットに巻き掛けられ、駆動スプロケットの動力がローラーチェーンを介して従動スプロケットに伝達される。作業部400は、従動スプロケットから動力を受けて畦塗り作業を行う。
【0032】
[作業部400の構成]
作業部400は、畦塗り作業を行う部位である。作業部400は、畦形成部410、カバー部材420、天場処理部430、及び前処理部440(
図2参照)を有する。作業部400は、回動軸213を中心として、オフセット機構部200及び動力伝達部300に対して水平面上で回動する。回動軸213を「第2点」という場合がある。つまり、作業部400は、オフセット機構部200によって、走行機体の進行方向に対する作業部400の向きを維持するように回動軸213を中心に回動する。さらに、作業部400は、上記の回動とは別に、走行機体の進行方向に対する作業部400の向きを変えるように回動軸213を中心に回動する。この回動を「作業部400の単独回動」、又は「作業部回動」という。オフセット回動は第1点(回動軸211)を中心とする回動である。作業部回動は第2点(回動軸213)を中心とする回動である。
【0033】
畦形成部410、カバー部材420、天場処理部430、及び前処理部440は、支持フレーム230に支持されており、これらは支持フレーム230の回動に伴い、一体で回動する。このため、上記のオフセット回動及び作業部回動が行われても、畦形成部410と作業部400に含まれる畦形成部410以外の部材との上面視における相対的な位置関係は変わらない。例えば、上記の回動が行われても、畦形成部410とカバー部材420との上面視における相対的な位置関係は変わらない。詳細は後述するが、カバー部材420にはアーム部材510を介して位置検出器500が取り付けられている。したがって、オフセット回動及び作業部回動が行われても、位置検出器500と畦形成部410との上面視における相対的な位置関係は変わらない。
【0034】
ここで、相対的な位置関係とは、注目する対象の部材について、それらの位置及び向きの関係を意味する。つまり、対象の部材について、相対的な位置関係が変わらないとは、オフセット回動及び作業部回動の前後において、対象の部材同士の距離も方向も変わらず、対象となる一方の部材の位置が決まれば、もう一方の対象部材の位置が一義的に決められることを意味する。このことは、オフセット回動及び作業部回動の前後における対象の部材の上面視における全体構成の形状を抽出し、畦形成部410の向きが同じ向きに揃えられた場合、対象の部材によって構成された全体構成の形状は同じ形状であることを意味する。
【0035】
畦形成部410は、畦の上面を形成する上面形成部411及び畦の法面を形成する法面形成部412を備える。本実施形態では、上面形成部411は、中心軸が作業機体の進行方向に対して左右に直交する方向に延びた、円筒形状の部材である。畦形成部410は、この中心軸に対して回動可能に支持されている。畦形成部410は、動力伝達部300から動力を受けることで回動する。また、法面形成部412は、上記の中心軸に対して傾斜した傾斜面を有する略円錐形状の部材である。
【0036】
本実施形態の法面形成部412は、円周方向に複数の板状部材が部分的に重なるように配置された多面体ドラムである。複数の板状部材の各々は、法面形成部412の円周方向に、法面形成部412の中心軸から遠ざかる形状を有している。この法面形成部412の形状によって、各板状部材は、法面形成部412の回転に伴って畦の法面に近づくため、畦の法面をより強固に固めることができる。上記の構成を換言すると、作業状態において、上面形成部411は圃場に対して略平行であり、法面形成部412は圃場に対して傾斜している。
【0037】
上面形成部411及び法面形成部412の形状は、上記の構成に限定されない。例えば、上面形成部411が、多面体ドラムと同様に、複数の板状部材が部分的に重なる形状であってもよい。また、法面形成部412が、多面体ドラムでなくてもよい。つまり、法面形成部412が、法面形成部412の円周方向に、法面形成部412の中心軸から遠ざかる形状でなくてもよい。
【0038】
カバー部材420は、上記のように、畦形成部410との上面視における相対的な位置関係が変わらない位置に設けられている。カバー部材420は、畦形成部410の一部を覆うように設けられている。具体的には、カバー部材420は、上面形成部411の上方に位置する法面形成部412の端部を部分的に覆う。
【0039】
前処理部440は、畦形成部410の前方に設けられている。より詳しくは、前処理部440は、法面形成部412の前方に設けられている。前処理部440は、複数の作業爪が備えられた作業ロータ、及び作業ロータの上方を覆うカバー部材441(
図2参照)を有する。作業ロータは動力伝達部300から動力を受けて動作し、作業爪を回転させる。作業ロータの回転軸は、進行方向に対して傾斜している。具体的には、作業ロータの回転軸は、畦塗り機10の後方から前方に向かって畦塗り機10の外側に傾斜している。作業ロータに備えられた複数の作業爪のうち、ある作業爪は作業爪の回転方向とは逆方向及び後方に向かって湾曲し、別の作業爪は作業爪の回転方向とは逆方向及び前方に向かって湾曲している。
【0040】
天場処理部430は、畦形成部410の前方に設けられている。より詳しくは、天場処理部430は、上面形成部411の前方に設けられている。天場処理部430は、前処理部440と同様に複数の作業爪が備えられた作業ロータ、及び作業ロータの上方と前方とを覆うカバー部材431を有する。作業ロータは動力伝達部300から動力を受けて動作し、作業爪を回転させる。作業ロータの回転軸は、進行方向に対して傾斜している。具体的には、作業ロータの回転軸は、畦塗り機10の後方から前方に向かって畦塗り機10の外側に傾斜している。作業ロータに備えられた複数の作業爪は、作業爪の回転方向とは逆方向及び前方に向かって湾曲している。
【0041】
鉛直方向において、天場処理部430は前処理部440よりも上方に設けられている。換言すると、鉛直方向において、天場処理部430に備えられた作業爪の回転軌跡の下端は、前処理部440に備えられた作業爪の回転軌跡の下端よりも上方に位置している。
【0042】
また、
図3に示すように、作業部400は、ドラムケース470をさらに備える。ドラムケース470は、ドラムケース470は回動軸213の下端に設けられたリアギアケース及び畦形成部410に接続されている。ドラムケース470の内部にはスプロケット及びチェーンが設けられており、動力伝達部300から伝達された動力を畦形成部410に伝達する。ドラムケース470も上記のオフセット回動又は作業部回動を行っても、畦形成部410との相対的な位置関係が変わらない部材である。
【0043】
[位置検出器500の構成]
位置検出器500は、畦形成部410の上方に設けられており、上面視において畦形成部410と重なる位置に設けられている。具体的には、上面視において、位置検出器500は上面形成部411と法面形成部412との境界位置と重なる位置(畦形成部410の肩位置)に設けられている。上面形成部411と法面形成部412との境界位置に相当する部分は、畦の肩の部分(畦肩部)を形成する部分である。つまり、上面視において、畦塗り機10の畦塗り作業の移動に伴う位置検出器500の移動軌跡は、畦肩部の形状とほぼ一致する。
【0044】
位置検出器500はアーム部材510の上側先端に取り付けられている。アーム部材510は、上記のカバー部材420に固定されている。
図3に示すように、アーム部材510はカバー部材420の上面に接続されている。アーム部材510は、上面視においてカバー部材420との接続点から上面形成部411に向かって延び(
図1参照)、背面視において上面形成部411と法面形成部412との境界付近において屈曲し、上方に向かって延びている(
図3参照)。
【0045】
位置検出器500は、例えば全球測位衛星システム(GNSS;Global Navigation Satellite System)用のアンテナ(GNSSアンテナ)である。GNSSとして、GPS、GLONASS、Galileo、準天頂衛星(QZSS)等の衛星測位システムを用いることができる。ただし、位置検出器として、GNSSに限定されず、畦形成部410の位置情報を検出する他の機器を用いることができる。
【0046】
本実施形態では、位置検出器500がアーム部材510を介してカバー部材420に取り付けられた構成を例示したが、この構成に限定されない。位置検出器500は、アーム部材510を用いず、カバー部材420又その他の部材に直接取り付けられてもよい。また、位置検出器500又はアーム部材510は、カバー部材420以外であっても、上記のオフセット回動又は作業部回動を行ったときに、畦形成部410との相対的な位置関係が変わらない部材、すなわち、畦形成部410と一体に回動する部材、例えば、作業部400に含まれる天場処理部430、前処理部440、又はこれら以外の部材(例えば、後述のドラムケース470等)に取り付け可能である。
【0047】
また、本実施形態では、位置検出器500が上面視において上面形成部411と法面形成部412との境界位置(畦形成部410の肩位置)に設けられた構成を例示したが、この構成に限定されない。つまり、位置検出器500が、上面視において上面形成部411及び法面形成部412の両方と重なっていなくてもよい。畦形成部410に対して位置検出器500を近接配置する構成、例えば、位置検出器500を、上面視において上面形成部411又は法面形成部412の少なくとも一方と重なった位置に配置する構成とすることも可能である。このように、上面視において畦形成部410の一部と重なる位置に位置検出器500を配置することにより、畦形成部410を介して形成される畦の位置を精度よく検出することができる。
【0048】
[制御部600の構成]
制御部600は、ヒッチフレーム110に設けられている。制御部600は、中央演算処理装置(CPU)などの演算回路及び当該CPUに接続されたレジスタやメモリなどの記憶装置を含む。制御部600は、記憶装置に一時的に格納されたプログラムをCPUによって実行することで各種要請信号に応じた機能を実現する。制御部600は、後述の直進制御プログラムを含む各種プログラムと共に畦塗り機10に関する各種情報(上面形成部411の長さ、法面形成部412のドラム径、位置検出器500に対する畦肩形成位置に関する情報等)を記憶しており、畦塗り機10の各種動作、及び走行機体の経路に関する情報を生成する。本実施形態では、制御部600がヒッチフレーム110に設けられた構成を例示したが、制御部600は他の部材に設けられていてもよい。
【0049】
[作業状態の説明]
上記のように、畦塗り機10の収納状態と作業状態との切り替えは、動力部240の伸縮によって行われる。具体的には、動力部240が伸長することで、
図1に示す「収納状態」から
図2に示す「作業状態」に切り換えられる。動力部240が伸長すると、オフセット機構部200の動作によって作業部400は、回動軸211を中心に回動し、走行機体の進行方向に対する側方に移動する。つまり、動力部240の伸長によって作業部400はオフセット回動をする。上記のように、平行リンク機構が構成され、作業部400に対する支持フレーム230の角度が一定に保たれているため、オフセット回動の間、作業部400の向きは変わらない。
【0050】
図1及び
図2を参照すると、オフセット回動の前後において、畦形成部410と位置検出器500との相対的な位置関係は変わらない。つまり、オフセット回動の後においても、オフセット回動の前と同様に、位置検出器500は上面形成部411と法面形成部412との境界(畦形成部410の肩部)付近に位置し、位置検出器500の検出結果に基づいて畦形成部410の位置を精度よく検出できるようになっている。
【0051】
なお、本実施形態の畦塗り機10に、ジャイロセンサや加速度センサ等を搭載したIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)などの姿勢(例えば、畦形成部410の進行方向を軸とする回転方向の傾き)を検知するセンサを設ける、又はGNSSアンテナを複数設けるなどして、上面視における走行機体の進行方向に対する畦形成部410の傾きを算出できる構成とすると、より精度よく畦形成部410の位置を把握できるようになる。IMU、複数設けられたGNSSアンテナなど、畦形成部410の傾きを検出する部材を「傾き検出部」という場合がある。
【0052】
畦形成部410が傾くと、(上面視において)畦形成部410によって形成された畦の位置と位置検出器500が検知される位置との間にずれが生じる場合がある。本実施形態では、畦形成部410に傾きがない状態において、上面視で上面形成部411及び法面形成部412が交わる畦形成部410の肩位置に一致するように位置検出器500を配置しているが、例えば、位置検出器500が畦形成部410の肩位置とは異なる位置に設けられている場合、上記の進行方向に対して畦形成部410が傾くと、位置検出器500によって検出された位置と畦形成部410によって形成された畦の位置とが一致しなくなる。また、上記の回転方向において畦形成部410が傾くと、位置検出器500と畦形成部410の肩位置とが一致しなくなる。その結果、位置検出器500によって検出された位置と畦形成部410によって形成された畦の位置との間に誤差が生じる。
【0053】
この場合、上記のように、畦形成部410の姿勢を検知するIMUのようなセンサを設けることにより、畦形成部410の傾きを検出して、傾きに起因する位置検出器500の検出結果と実際に形成された畦の位置との位置ずれ量を算出することができる。例えば、制御部600に位置検出器500の高さ情報を予め記憶しておき、位置検出器500の高さ情報と傾き検出部で検出した傾きに基づいて位置ずれ量を算出する。そして、算出した位置ずれ量に基づいて、畦形成部410の位置を補正することで、より精度の高い畦の位置情報データを得られると共に、得られた畦の位置情報データに基づいて精度よく畦塗り機10を制御することが可能となる。上記のように、畦形成部410の傾きによって生じた誤差が補正された畦の位置を示す情報を「畦位置情報」という場合がある。
【0054】
以上のように、本実施形態に係る畦塗り機10によると、上面視において、位置検出器500の移動軌跡と畦肩部とがほぼ一致する。したがって、位置検出器500によって畦が形成される位置をより正確に検出することができる。例えば、畦塗作業中に、畦が形成される位置を調整するために畦塗り機10がオフセット量を調整した場合であっても、畦形成部410と位置検出器500との相対的な位置関係が変わらないため、オフセット量が変化している途中であっても畦が形成された位置を正確に検出することができる。上記のように、本実施形態に係る畦塗り機10によって畦が形成された位置を正確に検出することができるため、位置検出器500によって検出された位置情報に基づいて畦塗り機10又は走行機体を制御することができ、上面視における畦の形状をより正確に制御することができる。
【0055】
〈第2実施形態〉
本実施形態に係る畦塗り機10Aの直進動作について、
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る畦塗り機における直進制御のフローチャートである。
図5は、本発明の一実施形態に係る畦塗り機における直進制御の一例を示す図である。本実施形態に係る畦塗り機10Aは、第1実施形態に係る畦塗り機10と同様の構成を備えているので、詳細な説明は省略する。本実施形態では、
図4及び
図5を用いて、畦塗り機10Aの制御方法について説明する。なお、以下の直進制御プログラムは畦塗り機10Aに備えられた制御部600Aによって実行される。なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の形状及び機能を有する構成について、第1実施形態と同様の符号の後にアルファベット「A」を付して説明を省略する場合がある。
【0056】
図4に示すように、まず、作業者が畦塗り機10Aを用いた畦塗作業を開始し、畦塗作業を行いながら地点A及び地点Bを設定する(ステップS401、S402)。S401における地点Aの設定によって、制御部600Aが地点Aにおける位置検出器500Aの位置情報を取得する。S402における地点Bの設定によって、制御部600Aが地点Bにおける位置検出器500Aの位置情報を取得する。なお、地点A及び地点Bは、作業者が畦を形成しようとする直線上の点である。地点Aから地点Bまでの畦塗作業は作業者によって手動で行われる。
【0057】
地点A及び地点Bの設定が行われた後に、作業者の指示に従って畦塗り機10Aの直進制御プログラムが実行される(ステップS403)。直進制御プログラムが実行されると、
図5に示すように、地点A及び地点Bの各々の位置情報に基づいて、走行機体及び畦塗り機10Aの進行予定経路を算出する。なお、
図5に示す例では、地点Bの設定がなされると、そのまま直進制御プログラムが実行される。当該進行予定経路は、地点A及び地点Bを通る直線AB上で、地点Aから離れる方向(畦塗り作業の進行方向)に延びている。上記の進行予定経路に関する情報を「第1情報」という場合がある。
【0058】
直進制御プログラムが実行されると、所定の時間間隔毎に位置検出器500Aによって取得された現在の位置情報と上記の進行予定経路(第1情報)とを比較し(
図5参照)、その比較結果に基づいて走行機体及び畦塗り機10Aの進行方向を補正すべきか否かを判断する(ステップS404)。例えば、現在の位置情報と第1情報との差(ずれ量)がしきい値を超えた場合(S404における「Yes」)、進行方向を補正すべきであると判断する。一方、上記の差がしきい値以下の場合(S404における「No」)、進行方向を補正する必要はないと判断する。
【0059】
S404で進行方向の補正が必要であると判断された場合、畦形成部410Aの位置を補正するための情報(「第2情報」という場合がある)を生成する(ステップS405)。続いて、第2情報の生成に基づき、現在の位置情報と第1情報とのずれ量をオフセット制御によって補正する。その際、当該オフセット制御をしようとする方向における作業部400Aのオフセット量が限界値に達しているか否かを判断する(ステップS406)。なお、上記のように、畦形成部410の傾きによって位置検出器500の位置と畦が形成された位置との間に誤差がある場合、位置検出器500の位置情報に代えて畦位置情報を用いて、当該畦位置情報と第1情報とのずれ量に基づいて第2情報を生成してもよい。畦形成部410の傾きが所定のしきい値を超えた場合に、位置検出器500の位置情報に代えて畦位置情報を用いて第2情報を生成してもよく、当該しきい値が設けられず、畦形成部410の傾きが検出された時点で当該畦位置情報を用いた第2情報の生成が行われてもよい。
【0060】
当該オフセット値が限界に達していない場合(S406における「No」)、第2情報に基づいて、作業部400Aの動力部240Aを動作させ、オフセット制御を行いながら(ステップS407)、S403の直進制御を継続する。具体的には、現在の位置情報と第1情報のずれ方向が、進行方向に対して左側(すなわち畦から圃場に向かって離れる側)である場合、制御部600Aは、畦形成部410Aが右側に移動して、現在の位置情報と第1情報とのずれがなくなるように、そのずれ量に応じて動力部240Aを伸長させる。
【0061】
上記のように、動力部240Aの伸縮量を調整することに加え、ずれ量が大きくなるほど動力部240Aの駆動時間を長くする等、現在の位置情報と第1情報との差の大きさに応じて、動力部240Aの駆動時間を調整する構成としてもよい。なお、上記の方法は一例であり、上記の方法に限定されない。例えば、上記のしきい値が設けられず、現在の位置情報と第1情報との差が生じた時点で進行方向を補正すべきであると判断してもよい。なお、上記のしきい値は、適宜任意の値に設定することができる。また、上記の差の大きさ応じて、動力部240Aの動作速度を変えてもよい。つまり、上記の差が相対的に大きければ動力部240Aの動作を相対的に速くし、上記の差が相対的に小さければ動力部240Aの動作を相対的に遅くしてもよい。
【0062】
一方、上記オフセット値が限界に達している場合(S406における「Yes」)、S405で生成された第2情報に基づいて、進行方向を補正することを通知するガイダンス、又はAGポートを用いた走行機体制御を行う(ステップS408)。なお、ガイダンスは、音声によるガイダンスであってもよく、畦塗り機10Aのリモコンや、携帯端末等の表示装置上に表示されるガイダンスであってもよい。AGポートを用いた走行機体制御は、走行機体を直接制御して、その進行方向を強制的に制御するものであってもよく、走行機体の進行方向を変更すべきことをユーザに報知するよう、走行機体のユーザへの報知動作を制御するものであってもよい。また、AGポートは畦塗り機10Aから走行機体に情報を伝達する手段の一態様である。AGポートの代わりに無線等の手段が用いられてもよい。
【0063】
以上のように、本実施形態に係る畦塗り機10Aによると、作業車による畦塗作業に基づいて、進行予定経路を算出することができる。したがって、事前に進行予定経路を設定する必要がなく、作業者の負担を軽減することができる。また、畦塗作業を行う場合、実際に圃場に出てから進行予定経路を変更する必要性が生じる場合があるが、そのような場合であっても迅速に対応することができる。なお、進行予定経路の作成方法については、上述した内容に限定されない。例えば、畦の位置情報と紐づいた地図データを制御部600Aに記憶させておき、この地図データを携帯端末等に表示させて、端末上の地図データを用いて進行予定経路を設定することも可能である。また、過去に行った畦形成作業の作業履歴を利用して進行予定経路を設定してもよい。この場合、作業履歴に関する情報として、位置検出器500Aで取得した位置情報(畦形成作業時における畦形成部410の位置情報)を制御部600Aに記憶させておく。また、制御部600Aに複数の作業履歴を記憶させておき、複数の作業履歴からユーザが所望の作業履歴を選択することによって、ユーザが選択した作業履歴に含まれる位置情報に基づいて進行予定経路を設定することも可能である。また、本実施形態では、進行予定経路が直線である構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、進行予定経路は曲線形状であってもよく、例えば多角形の一部のような屈曲形状であってもよい。
【0064】
〈第3実施形態〉
本実施形態に係る畦塗り機10Bの構成について、
図6及び
図7を用いて説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係る畦塗り機における直進制御のフローチャートである。
図7は、本発明の一実施形態に係る畦塗り機における直進制御の一例を示す図である。本実施形態に係る畦塗り機10Bは、第1実施形態に係る畦塗り機10と同様の構成を備えているので、詳細な説明は省略する。本実施形態では、
図6及び
図7を用いて、畦塗り機10Bの制御方法について説明する。なお、以下の直進制御プログラムは畦塗り機10Bに備えられた制御部600Bによって実行される。なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の形状及び機能を有する構成について、第1実施形態と同様の符号の後にアルファベット「B」を付して説明を省略する場合がある。
【0065】
図6に示すように、まず、作業者が畦塗り機10Bを用いた畦塗作業を開始し、畦塗作業の開始前、又は畦塗作業を行いながら目標地点Gを設定する(ステップS501)。
図7に示すように、目標地点Gは、例えば畦の角部に設けられている。より具体的には、目標地点Gにはレーザ発信器が設けられており、目標地点Gから圃場に向かってレーザ光を出射する。走行機体又は畦塗り機10Bには、当該レーザ光を受光する受光素子が設けられている。例えば、受光素子がレーザ光を受信する位置に基づいて、現在の畦塗り機10Bの進行方向が目標地点Gに向かっているか否かを判断する。上記の構成の場合、レーザ光の受光素子を「目標検知部」という場合がある。
【0066】
目標地点Gの設定が行われた後に、作業者の指示に従って畦塗り機10Bの直進制御プログラムが実行される(ステップS502)。直進制御プログラムが実行されると、
図7に示すように、目標地点Gに向かうように走行機体及び畦塗り機10Bの進行方向が制御される。例えば、現在地点及び過去の任意の地点において取得された位置検出器500Bの位置情報に基づいて、現在地点における畦塗り機10Bの進行方向を算出する。そして、その進行方向の延長線上に目標地点Gが存在するか否かによって、畦塗り機10Bが目標地点Gに向かって進行しているかどうかを判断する(ステップS503)。換言すると、位置検出器500Bによって取得された位置情報と目標地点G(進行目標)との位置関係の変化に基づいて畦塗り機10Bの進行方向の妥当性を判断する。
【0067】
例えば、現在地点における畦塗り機10Bの進行方向と目標地点Gとの差がしきい値を超えた場合(S503における「Yes」)、進行方向を補正すべきであると判断する。一方、上記の差がしきい値以下の場合(S503における「No」)、進行方向を補正する必要はないと判断する。なお、上記の方法は一例であり、上記の方法に限定されない。例えば、上記のしきい値が設けられず、現在地点における畦塗り機10Bの進行方向と目標地点Gとの間に差が生じた時点で進行方向を補正すべきであると判断してもよい。以降のステップは第2実施形態(
図4のS405以降)と同様なので、説明を省略する。
【0068】
なお、本実施形態では、レーザ光を用いて目標地点Gを設定する手法を例示したが、この手法に限定されない。例えば、カメラを用いて目標地点Gを設定してもよい。具体的には、カメラを用いて進行方向前方の画像を取得し、当該画像に対して画像解析を行い、元畦の角部を認識し、当該角部を目標地点Gとして設定してもよい。又は、予め制御部600Bに記憶された地図データにおいて目標地点Gを設定してもよい。また、畦形成部410の姿勢、又は上面視における走行機体の進行方向に対する畦形成部410の傾きを検知することができるようにするため、IMUなどの畦形成部410の姿勢を検知するセンサ、又は複数のGNSSアンテナを設けることが好ましい。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る畦塗り機10Bによると、目標地点Gに基づいて、進行方向を決定することができる。したがって、事前に進行予定経路を設定する必要がなく、作業者の負担を軽減することができる。また、畦塗作業を行う場合、実際に圃場に出てから進行予定経路を変更する必要性が生じる場合があるが、そのような場合であっても迅速に対応することができる。
【0070】
〈第4実施形態〉
本実施形態に係る畦塗り機10Cの構成について、
図8及び
図9を用いて説明する。
図8は、本発明の一実施形態に係る畦塗り機における直進制御のフローチャートである。
図9は、本発明の一実施形態に係る畦塗り機における直進制御の一例を示す図である。本実施形態に係る畦塗り機10Cは、第1実施形態に係る畦塗り機10と同様の構成を備えているので、詳細な説明は省略する。本実施形態では、
図8及び
図9を用いて、畦塗り機10Cの制御方法について説明する。なお、以下の直進制御プログラムは畦塗り機10Cに備えられた制御部600Cによって実行される。なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の形状及び機能を有する構成について、第1実施形態と同様の符号の後にアルファベット「C」を付して説明を省略する場合がある。
【0071】
本実施形態の場合、事前に進行予定経路や目標地点Gを設定する必要はない。ただし、新たな畦を形成する前に、過去に形成された畦が存在している必要がある。又は、新たな畦を形成する位置にマーキングがされている必要がある。また、畦塗り機10Cには、畦を形成する前の圃場(又は旧畦)の状態と畦が形成された後の畦の状態とを認識するための機能が備えられている。なお、本実施形態では、畦を形成する前後の状態を認識するための機能として、カメラが備えられた構成について説明する。カメラで旧畦及び新畦の画像を取得し、当該画像に対して画像解析を行うことで、旧畦及び新畦の各々の位置を認識してもよい。
【0072】
図8に示すように、作業者の指示に従って畦塗り機10Cの直進制御プログラムが実行される(ステップS601)。直進制御プログラムが実行されると、
図9に示すように、畦形成部410Cによって畦が形成される前の旧畦と、新たに形成された新畦の各々の上面視における形状が比較される(ステップS602)。
図9に示すように新畦と旧畦との上面視における形状に基づいて、新畦の位置と旧畦の位置との間に差Wがしきい値を超えた場合(S602における「Yes」)、進行方向を補正すべきであると判断する。一方、上記の差がしきい値以下の場合(S602における「No」)、進行方向を補正する必要はないと判断する。なお、上記の方法は一例であり、上記の方法に限定されない。例えば、上記のしきい値が設けられず、新畦の位置と旧畦の位置との間に差が生じた時点で進行方向を補正すべきであると判断してもよい。新畦の位置及び旧畦の位置は、それぞれの畦における畦肩部の位置とすることができる。以降のステップは第2実施形態(
図4のS405以降)と同様なので、説明を省略する。
【0073】
上記の構成の場合、旧畦の画像を取得するカメラを「目標検知部」という場合がある。また、旧畦の位置を「進行目標」という場合がある。上記の構成を換言すると、位置検出器500Cによって取得された位置情報と進行目標(旧畦の位置)との位置関係の変化に基づいて、畦形成部410Cの位置を補正するための第2情報が生成される。
【0074】
なお、本実施形態では、カメラを用いて新畦の位置と旧畦との位置との差を検知する構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、カメラの代わりに各種センサを用いて新畦の位置と旧畦の位置とを認識してもよい。具体的な例として、センシングアーム450と同様のセンシングアームを畦形成部410の前方に設けることで、新畦の位置と旧畦の位置とを認識することができる。また、旧畦が形成されていなくても、これから畦を形成する箇所にマーキング(例えば、石灰によって書かれた白線)が形成されていてもよい。当該マーキングは、新畦を形成する位置以外に形成されていてもよい。例えば、畦の上面にレール(例えば、棒状部材又は線状部材によって形成されたレール)が形成されており、当該レールと位置検出器500Cとの距離が一定に保たれるように畦の形成が行われてもよい。
【0075】
以上のように、本実施形態に係る畦塗り機10Cによると、予め形成された旧畦(又は、畦を形成する予定の位置)に沿って畦を形成することができる。したがって、事前に進行予定経路を設定する必要がなく、作業者の負担を軽減することができる。また、畦塗作業を行う場合、実際に圃場に出てから進行予定経路を変更する必要性が生じる場合があるが、そのような場合であっても迅速に対応することができる。
【0076】
〈第5実施形態〉
本実施形態に係る畦塗り機10Dの構成について、
図10を用いて説明する。
図10は、本発明の一実施形態に係る畦塗り機における畦角部の自動制御の一例を示す図である。
図10に示すように、畦角部の畦塗作業を行う場合、走行機体の進行方向に対して作業部400Dの向きを変えるように回動する、いわゆる作業部回動が行われる。本実施形態では、このような作業部回動が行われている間でも、作業部400Dを畦の辺に沿って直進させる構成について説明する。
【0077】
本実施形態に係る畦塗り機10Dは、第1実施形態に係る畦塗り機10と類似している。したがって、畦塗り機10と同様の構成について説明を省略し、主に畦塗り機10と相違する点について説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の形状及び機能を有する構成について、第1実施形態と同様の符号の後にアルファベット「D」を付して説明を省略する場合がある。
【0078】
図10に示すように、畦塗り機10Dでは、動力伝達部300Dの上方であり、作業部回動による作業部400Dの回動中心である回動軸213Dの位置に位置検出器590D(第2位置検出器)が設けられている。回動軸213Dの位置は、上記のオフセット回動及び作業部回動のいずれの回動が行われても、畦形成部410Dとの相対的な位置関係が変わらない。したがって、上記の回動が行われても、位置検出器500Dと位置検出器590Dとの相対的な位置関係は変わらない。上記の回動軸213Dを「第2点」という場合がある。「第2点」を用いて上記の構成を換言すると、畦形成部410D(又は、畦形成部410Dを含む作業部400D)は、第2点においてリンク機構部と接続されている、ということができる。
【0079】
つまり、作業部400Dがオフセット回動(第1点(回動軸211D)を中心とした回動)をした場合であっても、作業回動(第2点(回動軸213D)を中心とした回動)をした場合であっても、位置検出器500D及び590Dの相対的な位置関係は、作業部400Dが直進している場合のこれらの相対的な位置関係と同じである。したがって、位置検出器500Dによって取得された位置情報及び位置検出器590Dによって取得された位置情報に基づいて、走行機体が畦の延びる方向に直進しているときの、上面視における走行機体の進行方向に対する畦形成部410Dの傾きを算出し、その傾きに基づいて作業部400Dの進行方向を制御する。具体的には、畦角部において走行機体の進行方向が畦の延びる方向とは異なる方向に変わっても、位置検出器500D及び590Dの相対的な位置関係に基づいて、作業部400Dを畦の延びる方向に直進させることができる。
【0080】
本実施形態では、位置検出器590Dが動力伝達部300Dの上方、かつ、回動軸213Dの位置に設けられた構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、位置検出器590Dは、オフセット回動及び作業部回動を行っても畦形成部410Dとの相対的な位置関係が変わらない部材に取り付けることができる。
【0081】
以上のように、本実施形態に係る畦塗り機10Dによると、走行機体の進行方向が畦の辺が延びる方向とは異なる方向である場合であっても、畦形成部410Dを畦の辺が延びる方向に直進させることができる。
【0082】
〈第6実施形態〉
本実施形態に係る畦塗り機10Eの構成について、
図11及び
図12を用いて説明する。
図11は、収納状態における畦塗り機10Eを示す上面図である。
図12は、作業状態における畦塗り機10Eを示す上面図である。本実施形態に係る畦塗り機10Eは、第1実施形態に係る畦塗り機10と類似しているが、アーム部材510Eが取り付けられている位置が異なる。なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の形状及び機能を有する構成について、第1実施形態と同様の符号の後にアルファベット「E」を付して説明を省略する場合がある。
【0083】
図11及び
図12に示すように、アーム部材510Eは取付部511Eにおいてサポートフレーム250Eに固定されている。アーム部材510Eはサポートフレーム250Eに対して略直交する方向に延びており、その途中で屈折して畦形成部410Eに向かって延びている。上面視において畦形成部410Eと重なる位置で、アーム部材510Eの先端に位置検出器500Eが接続されている。本実施形態では、アーム部材510Eは、直線状の部材が途中で屈折した形状を有しているが、例えば、アーム部材510Eが湾曲した形状であってもよい。アーム部材510Eは、直線状の部材が途中で湾曲した形状であってもよく、取付部511Eから位置検出器500Eまで連続して湾曲した形状であってもよい。
【0084】
サポートフレーム250Eの一方は回動軸213Eにおいてリンクロッド220E及び動力伝達部300Eに対して回動可能に接続されており、他方はカバー部材431Eの上端部に固定されている。サポートフレーム250Eは、作業部400Eの回動に伴い、畦形成部410E、カバー部材420E、天場処理部430E、及び前処理部440Eと一体で回動する。つまり、上記のオフセット回動及び作業部回動が行われても、サポートフレーム250Eと畦形成部410Eとの上面視における相対的な位置関係は変わらない。その結果、収納状態(
図11)と作業状態(
図12)とで、位置検出器500Eと畦形成部410Eとの位置関係は同じである。
【0085】
上記のように、アーム部材510Eがサポートフレーム250Eに固定されてもよい。
【0086】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
10:畦塗り機、 100:装着部、 101:トップマスト、 107:入力軸、 110:ヒッチフレーム、 200:オフセット機構部、 211、213、221、223:回動軸、 220:リンクロッド、 230:支持フレーム、 240:動力部、 250E:サポートフレーム、 300:動力伝達部、 400:作業部、 401:部材、 410:畦形成部、 411:上面形成部、 412:法面形成部、 420:カバー部材、 430:天場処理部、 431:カバー部材、 440:前処理部、 441:カバー部材、 450:センシングアーム、 451:支持部材、 460:センササポート、 470:ドラムケース、 500:位置検出器、 510:アーム部材、 590D:位置検出器、 600:制御部