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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167263
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/06 20060101AFI20221027BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20221027BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20221027BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01L29/78 652P
H01L29/78 652T
H01L29/78 652N
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/06 301M
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 652D
H01L29/78 652H
H01L29/78 652M
H01L29/78 652Q
H01L29/78 658J
H01L29/78 658E
H01L29/78 658A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072957
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】星 保幸
(72)【発明者】
【氏名】森谷 友博
(57)【要約】
【課題】作製(製造)が簡易であり、信頼性の高い半導体装置を提供すること。
【解決手段】エッジ終端領域2に耐圧構造としてFLR構造20が設けられている。FLR構造20は、活性領域2の周囲を同心状に囲む複数のFLR101~118で構成されている。FLR101~118の不純物濃度は、1×1018/cm3未満の範囲内であり、好ましくは3×1017/cm3以上9×1017/cm3以下の範囲内である。FLR101~118の厚さt10は、0.7μm以上1.1μm以下である。最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1は1.2μm以下程度の範囲内である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電流が流れる活性領域と、前記活性領域の周囲を囲む終端領域と、を有する半導体装置であって、
シリコンよりもバンドギャップの広い半導体からなる半導体基板と、
前記半導体基板の内部に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
前記活性領域において前記半導体基板の第1主面と前記第1半導体領域との間に設けられた第2導電型の第2半導体領域と、
前記活性領域において前記第2半導体領域と前記第1半導体領域とのpn接合で形成された所定の素子構造と、
前記第2半導体領域に電気的に接続された第1電極と、
前記半導体基板の第2主面に設けられた第2電極と、
前記終端領域における前記半導体基板の第1主面側の表面領域において前記第1半導体領域の内部に互いに離れて選択的に設けられ、前記活性領域の周囲を同心状に囲む複数の第2導電型耐圧領域と、
を備え、
前記第2導電型耐圧領域の不純物濃度は、1×1018/cm3未満の範囲内であり、
前記第2導電型耐圧領域の厚さは、0.7μm以上1.1μm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2導電型耐圧領域の不純物濃度は、3×1017/cm3以上9×1017/cm3以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2半導体領域と前記第1半導体領域との間に、前記第2半導体領域に接して選択的に設けられ、前記活性領域の周囲を囲む、前記第2半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型高濃度領域をさらに備え、
前記第2導電型高濃度領域は、前記活性領域と前記第2導電型耐圧領域との間に設けられ、前記半導体基板の第1主面に平行な方向に前記第2導電型耐圧領域に対向することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
最も内側の前記第2導電型耐圧領域と前記第2導電型高濃度領域との第1間隔は1.2μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
最も内側の前記第2導電型耐圧領域は前記第2導電型高濃度領域に接することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
最も内側の前記第2導電型耐圧領域と内側から2本目の前記第2導電型耐圧領域との第2間隔は2.1μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
内側から2本目の前記第2導電型耐圧領域と内側から3本目の前記第2導電型耐圧領域との第3間隔は、3.1μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項5または6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第3間隔は、1.0μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
内側から3本目の前記第2導電型耐圧領域と内側から4本目の前記第2導電型耐圧領域との第4間隔は2.0μm以下程度の範囲内であることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
内側から4本目以降の互いに隣り合う前記第2導電型耐圧領域間の間隔は前記第1間隔よりも広いことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項11】
複数の前記第2導電型耐圧領域は、すべて同じ幅であることを特徴とする請求項1~10のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項12】
内側から2番目以降の前記第2導電型耐圧領域の幅は、最も内側の前記第2導電型耐圧領域の幅よりも広いことを特徴とする請求項1~11のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第2導電型耐圧領域は、前記半導体基板の第1主面に達していることを特徴とする請求項1~12のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第2導電型耐圧領域は、前記半導体基板の第1主面から離れた深さ位置に設けられ、
前記半導体基板の第1主面と前記第2導電型耐圧領域との間に前記第1半導体領域が介在することを特徴とする請求項1~12のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第2導電型耐圧領域は、矩形状の断面形状、または、深さ方向の中心位置で相対的に幅の広い樽状の断面形状を有することを特徴とする請求項1~14のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項16】
前記終端領域において前記半導体基板の第1主面上に導電性膜が設けられていないことを特徴とする請求項1~15のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項17】
前記終端領域において前記半導体基板の第1主面は絶縁層で覆われていることを特徴とする請求項1~16のいずれか一つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高電圧や大電流を制御するパワー半導体装置には、例えば、バイポーラトランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属-酸化膜-半導体の3層構造からなる絶縁ゲート(MOSゲート)を備えたMOS型電界効果トランジスタ)など複数種類あり、これらは用途に合わせて使い分けられている。
【0003】
例えば、バイポーラトランジスタやIGBTは、MOSFETと比べて電流密度が高く大電流化が可能であるが、高速にスイッチングさせることができない。具体的には、バイポーラトランジスタは数kHz程度のスイッチング周波数での使用が限界であり、IGBTは数十kHz程度のスイッチング周波数での使用が限界である。一方、MOSFETは、バイポーラトランジスタやIGBTに比べて電流密度が低く大電流化が難しいが、数MHz程度までの高速スイッチング動作が可能である。
【0004】
また、MOSFETは、IGBTと異なり、半導体基板(半導体チップ)の内部にp型ベース領域とn-型ドリフト領域とのpn接合で形成される寄生ダイオード(ボディダイオード)を内蔵している。MOSFETは、自身を保護するための還流ダイオードとしての機能に、この半導体基板の内部に内蔵された寄生ダイオードを用いることができる。このため、MOSFETは、自身を保護するために外付けの還流ダイオードを追加接続する必要がなく、経済性の面でも注目されている。
【0005】
パワー半導体装置の構成材料としてシリコン(Si)が用いられているが、市場では大電流と高速性とを兼ね備えたパワー半導体装置への要求が強く、IGBTやMOSFETはその改良に力が注がれ、現在ではほぼ材料限界に近いところまで開発が進んでいる。このため、パワー半導体装置の観点からシリコンに代わる半導体材料が検討されており、低オン電圧、高速特性、高温特性に優れた次世代のパワー半導体装置を作製(製造)可能な半導体材料として炭化珪素(SiC)が注目を集めている。
【0006】
炭化珪素は、化学的に非常に安定した半導体材料であり、バンドギャップが3eVと広く、高温でも半導体として極めて安定的に使用することができる。また、炭化珪素は、最大電界強度もシリコンより1桁以上大きいため、オン抵抗を十分に小さくすることができる半導体材料として期待される。このような炭化珪素の特長は、炭化珪素だけでなく、シリコンよりもバンドギャップの広いすべての半導体(以下、ワイドバンドギャップ半導体とする)も同様に有する。
【0007】
また、高耐圧半導体装置では、素子構造が形成された活性領域だけでなく、活性領域の周囲を囲むエッジ終端領域にも高電圧が印加され、エッジ終端領域に電界が集中する。半導体装置の耐圧は半導体(ドリフト領域)の不純物濃度、厚さおよび電界強度で決定され、これら半導体固有の特長で決定される破壊耐量は活性領域からエッジ終端領域にわたって等しい。このため、エッジ終端領域に電界が集中することによって、エッジ終端領域に破壊耐量を超えた電気的負荷がかかり、エッジ終端領域で破壊に至る虞がある。
【0008】
そこで、エッジ終端領域に接合終端(JTE:Junction Termination Extension)構造や、フィールドリミッティングリング(FLR:Field Limiting Ring)構造などの耐圧構造を配置して、エッジ終端領域の電界を緩和または分散させることで半導体装置全体の耐圧を向上させた構造が公知である。また、FLRに接するフローティング(浮遊)電位の金属電極であるフィールドプレート(FP:Field Plate)をエッジ終端領域に配置し、エッジ終端領域に生じた電荷を放出させることで半導体装置の信頼性を向上させた構造が公知である。
【0009】
従来の炭化珪素半導体装置の構造について説明する。図18は、従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。図18には、FLR221,222を異なるハッチングで示す。図18に示す従来の半導体装置230は、炭化珪素からなる半導体基板210に、主電流が流れる活性領域201と、活性領域201の周囲を囲むエッジ終端領域202と、を備えたトレンチゲート構造の縦型MOSFETである。半導体基板210は、炭化珪素からなるn+型出発基板271上にn-型ドリフト領域232およびp型ベース領域234となる各エピタキシャル層272,273を順にエピタキシャル成長させてなる。
【0010】
p型エピタキシャル層273の、エッジ終端領域202の部分はエッチングにより除去され、半導体基板210のおもて面には、エッジ終端領域202に段差253が形成されている。半導体基板210のおもて面は、段差253を境にして、内側(チップ中央(半導体基板210の中央)側)の第1面210aよりも外側(チップ端部(半導体基板210の端部)側)の第2面210bでドレイン電極252側に凹んでいる。この段差253により、半導体基板210のおもて面(p型エピタキシャル層273側の主面)の中央側にp型エピタキシャル層273がメサ状に残っている。
【0011】
半導体基板210のおもて面の第1,2面210a,210bは、それぞれp型エピタキシャル層273およびn-型エピタキシャル層272で形成されている。活性領域201において半導体基板210のおもて面の第1面210a側に、トレンチゲート構造のMOSゲートが設けられている。エッジ終端領域202には、半導体基板210のおもて面の第2面210bの表面領域においてn-型エピタキシャル層272の内部に選択的に設けられた複数のp-型領域(FLR)221および複数のp--型領域(FLR)222で空間変調型のFLR構造220が構成される。フィールドプレートは設けられていない。
【0012】
空間変調型のFLR構造220とは、外側へ向かうほど単位体積当たりのp型不純物濃度を段階的に低くした耐圧構造である。具体的には、複数のFLR221は、互いに離れて配置され、活性領域201の周囲を同心状に囲む。外側に配置されたFLR221ほど、幅(法線方向の幅)が狭く、かつ内側に隣り合うFLR221との間隔が狭い。最も内側のFLR222はすべてのFLR221の周囲を囲み、互いに隣り合うすべてのFLR221間に配置される。最も内側のFLR221および最も内側のFLR222は、p型ベース領域234(234a)に電気的に接続されている。
【0013】
複数のFLR222は、互いに離れて配置され、活性領域201の周囲を同心状に囲む。外側に配置されたFLR222ほど、幅(法線方向の幅)が狭く、かつ内側に互いに隣り合うFLR222との間隔が狭い。複数のFLR222は、最も内側のFLR222を除いて、FLR221よりも外側に配置される。n-型ドリフト領域232はすべてのFLR221の周囲を囲み、互いに隣り合うすべてのFLR221間に配置される。これらFLR221およびFLR222の幅や配置の最適化された条件について開示されている(例えば、下記特許文献1,2参照。)。
【0014】
符号203は、活性領域201とエッジ終端領域202との間の中間領域である。符号210cは、半導体基板210のおもて面の第1面210aと第2面210bとをつなぐ第3面(段差のメサエッジ)である。符号231,233,235,236,238,239,240,240a,241,281~283は、それぞれ、n+型ドレイン領域、n型電流拡散領域、n+型ソース領域、p++型コンタクト領域、ゲート絶縁膜、ゲート電極、層間絶縁膜、コンタクトホール、金属シリサイド膜、フィールド酸化膜、ゲートポリシリコン配線層およびゲート金属配線層である。
【0015】
符号241~245は、バリアメタル246を構成する金属膜である。符号248,249は、それぞれ、ソースパッド247上の配線構造を構成するめっき膜および端子ピンである。符号250,251は、保護膜(パッシベーション膜)である。符号261,262は、トレンチ237の底面付近の電界緩和のためのp+型領域である。符号262a,234a,236aは、p+型領域262、p型ベース領域234およびp++型コンタクト領域236の、活性領域201から中間領域203に延在する部分である。符号223は、n+型チャネルストップ領域である。
【0016】
従来の炭化珪素半導体装置の構造の別例について説明する。図19は、従来の炭化珪素半導体装置の構造の別例を示す断面図である。図19に示す従来の半導体装置260が図18に示す従来の半導体装置230と異なる点は、エッジ終端領域202の耐圧構造を、空間変調型のFLR構造220に代えて、通常のFLR構造290をとした点である。図19に示す従来の半導体装置260においても、図18に示す従来の半導体装置230と同様にフィールドプレートは設けられておらず、半導体基板210のおもて面の第2面210bはフィールド酸化膜281および層間絶縁膜240等の絶縁層で覆われている。
【0017】
通常のFLR構造290は、半導体基板210のおもて面の第2面210bの表面領域においてn-型エピタキシャル層272の内部に選択的に設けられたフローティング電位の複数(ここでは18本)のp-型領域(FLR(ハッチング部分))291で構成される。最も内側のFLR291は、p+型領域262の、活性領域201から中間領域203に延在する部分(以下、外周p+型領域とする)262aよりも外側に、外周p+型領域262aと所定幅(第1間隔)w211で離れて配置されている。複数のFLR291は、互いに離れて配置され、中間領域203を介して活性領域201を同心状に囲む。
【0018】
すべてのFLR291は、略同じ幅w210、略同じ厚さt201および略同じ不純物濃度の同一構成の略矩形状の断面形状を有する。FLR291の不純物濃度は、外周p+型領域262aの不純物濃度よりも低く、例えば耐圧1200V以上程度とする場合5×1018/cm3以上程度である。複数のFLR291は略等間隔w212に配置されている。幅、厚さ、間隔および不純物濃度が略同じ(略等しい)とは、それぞれ、プロセスのばらつきによる許容誤差を含む範囲で同じ幅、同じ厚さ、同じ間隔および同じ不純物濃度であることを意味する。
【0019】
すべてのFLR291が外周p+型領域262aよりも半導体基板210のおもて面側に浅い位置で終端している。FLR291の厚さt201は、半導体基板210のおもて面の第2面210bから例えば0.4μm~0.5μm程度である。通常のFLR構造290で空間変調型のFLR構造220で得られる耐圧と同じ耐圧を得るには、エッジ終端領域202の長さ(中間領域203からチップ端部までの長さ)w202は、耐圧構造を空間変調型のFLR構造220とした場合のエッジ終端領域202の長さw201(図18参照)の2倍程度まで広くする必要があり、例えば300μm程度になる。
【0020】
JTE構造や通常のFLR構造についても種々開示されている(例えば、下記特許文献3~9参照。)。下記特許文献3には、2つのp型領域でJTE構造を構成する場合の位置や不純物濃度範囲について開示されている。下記特許文献4では、JTE構造を構成するp-型領域を、半導体基板のおもて面から離れた深い位置に配置することで、p型ベース領域の端部コーナー部にかかる電界を緩和させて耐圧を向上させている。下記特許文献5では、活性領域からエッジ終端領域に延在させたp型炭化珪素層の厚さを段階的に薄くすることで、外側へ向かって実効的な不純物濃度が減少するJTE構造を形成している。
【0021】
下記特許文献6には、フィールドプレートを備えた通常のFLR構造について開示されている。下記特許文献6では、通常のFLR構造を構成する各FLR上にそれぞれ層間絶縁膜を介して設けたフィールドプレートを、FLR上から互いに隣り合うFLR間の部分(n-型ドリフト領域)上にまで延在させている。層間絶縁膜の、FLRを覆う部分の厚さを、互いに隣り合うFLR間に挟まれたn-型ドリフト領域を覆う部分の厚さよりも薄くすることで、層間絶縁膜の静電容量の影響を抑制して、フィールドプレートの構造を最適化することなく信頼性を向上させている。
【0022】
下記特許文献7~9には、フィールドプレートを備えない通常のFLR構造について開示されている。下記特許文献7,8には、トレンチ底面付近の電界緩和のためのp+型領域とFLR(p+型領域)とを同時に形成することが開示されております。また、下記特許文献8では、FLR(p-型領域)を半導体基板のおもて面から離れた深い位置に配置して、FLRとn-型ドリフト領域とのpn接合を半導体基板のおもて面から離すことで、半導体基板のおもて面上の層間絶縁膜の最表面での電界強度の増加を抑制して、層間絶縁膜の最表面の沿面破壊の発生を抑制している。
【0023】
下記特許文献9では、活性領域のp型ウェル領域と最も内側のFLRとの間隔、および、互いに隣り合うFLR間の間隔、を活性領域から外側へ広がる空乏層に対して調整してこれら互いに隣り合うp型領域同士を十分に近づけて配置することで、p型ウェル領域やFLRとなるp型拡散領域が曲率をもつことによる形状効果で増加する電界強度を抑制している。下記特許文献9には、活性領域のp型ウェル領域と最も内側のFLRとの間隔を0μm以上1μm以下とし、互いに隣り合うFLR間の間隔を外側に配置されるほど0.5μmずつ広くすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特許第6323570号公報
【特許文献2】特許第6610786号公報
【特許文献3】特開2006-165225号公報
【特許文献4】特開2018-022851号公報
【特許文献5】特開2018-082056号公報
【特許文献6】特開2010-050147号公報
【特許文献7】特開2016-225455号公報
【特許文献8】特開2019-054087号公報
【特許文献9】特許第5011612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかしながら、上述した従来の空間変調型のFLR構造220(図18参照)では、イオン注入精度によってFLR構造220を構成するFLR221,222の位置や不純物濃度にばらつきが生じ、FLR構造220の完成度が低くなることで、半導体装置230の信頼性が低下する虞がある。一方、上述したように、通常のFLR構造290(図19参照)では、エッジ終端領域202の長さw202が長くなり、経済性に欠ける。また、互いに隣り合うFLR291間の間隔w212のマージン(余裕度)が小さく(図12の従来例を参照)、半導体装置の信頼性が低くなる。
【0026】
この発明は、上述した従来技術による課題を解消するため、作製(製造)が簡易であり、信頼性の高い半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、主電流が流れる活性領域と、前記活性領域の周囲を囲む終端領域と、を有する半導体装置であって、次の特徴を有する。シリコンよりもバンドギャップの広い半導体からなる半導体基板の内部に、第1導電型の第1半導体領域が設けられている。前記活性領域において前記半導体基板の第1主面と前記第1半導体領域との間に、第2導電型の第2半導体領域が設けられている。前記活性領域において前記第2半導体領域と前記第1半導体領域とのpn接合で、所定の素子構造が形成されている。
【0028】
第1電極は、前記第2半導体領域に電気的に接続されている。第2電極は、前記半導体基板の第2主面に設けられている。前記終端領域における前記半導体基板の第1主面側の表面領域において前記第1半導体領域の内部に互いに離れて、複数の第2導電型耐圧領域が選択的に設けられている。複数の前記第2導電型耐圧領域は、前記活性領域の周囲を同心状に囲む。前記第2導電型耐圧領域の不純物濃度は、1×1018/cm3未満の範囲内である。前記第2導電型耐圧領域の厚さは、0.7μm以上1.1μm以下である。
【0029】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第2導電型耐圧領域の不純物濃度は、3×1017/cm3以上9×1017/cm3以下の範囲内であることを特徴とする。
【0030】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第2半導体領域と前記第1半導体領域との間に、前記第2半導体領域に接して選択的に設けられ、前記活性領域の周囲を囲む、前記第2半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型高濃度領域をさらに備える。前記第2導電型高濃度領域は、前記活性領域と前記第2導電型耐圧領域との間に設けられ、前記半導体基板の第1主面に平行な方向に前記第2導電型耐圧領域に対向することを特徴とする。
【0031】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、最も内側の前記第2導電型耐圧領域と前記第2導電型高濃度領域との第1間隔は1.2μm以下の範囲内であることを特徴とする。
【0032】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、最も内側の前記第2導電型耐圧領域は前記第2導電型高濃度領域に接することを特徴とする。
【0033】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、最も内側の前記第2導電型耐圧領域と内側から2本目の前記第2導電型耐圧領域との第2間隔は2.1μm以下の範囲内であることを特徴とする。
【0034】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、内側から2本目の前記第2導電型耐圧領域と内側から3本目の前記第2導電型耐圧領域との第3間隔は、3.1μm以下の範囲内であることを特徴とする。
【0035】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第3間隔は、1.0μm以下の範囲内であることを特徴とする。
【0036】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、内側から3本目の前記第2導電型耐圧領域と内側から4本目の前記第2導電型耐圧領域との第4間隔は2.0μm以下程度の範囲内であることを特徴とする。
【0037】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、内側から4本目以降の互いに隣り合う前記第2導電型耐圧領域間の間隔は前記第1間隔よりも広いことを特徴とする。
【0038】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、複数の前記第2導電型耐圧領域は、すべて同じ幅であることを特徴とする。
【0039】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、内側から2番目以降の前記第2導電型耐圧領域の幅は、最も内側の前記第2導電型耐圧領域の幅よりも広いことを特徴とする。
【0040】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第2導電型耐圧領域は、前記半導体基板の第1主面に達していることを特徴とする。
【0041】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第2導電型耐圧領域は、前記半導体基板の第1主面から離れた深さ位置に設けられている。前記半導体基板の第1主面と前記第2導電型耐圧領域との間に前記第1半導体領域が介在することを特徴とする。
【0042】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第2導電型耐圧領域は、矩形状の断面形状、または、深さ方向の中心位置で相対的に幅の広い樽状の断面形状を有することを特徴とする。
【0043】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記終端領域において前記半導体基板の第1主面上に導電性膜が設けられていないことを特徴とする。
【0044】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記終端領域において前記半導体基板の第1主面は絶縁層で覆われていることを特徴とする。
【0045】
上述した発明によれば、互いに隣り合う第2導電型耐圧領域間の間隔のマージンを大きくすることができるため、耐圧構造の完成度が高くなる。また、互いに隣り合う第2導電型耐圧領域間の間隔のマージンを大きくすることで、第2導電型耐圧領域を形成するためのイオン注入の精度の悪影響を受けにくく、耐圧構造の設計が容易となる。
【発明の効果】
【0046】
本発明にかかる半導体装置によれば、作製が簡易であり、信頼性の高い半導体装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】実施の形態1にかかる半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図2図1の切断線A-A’における断面構造を示す断面図である。
図3】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図4】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図5】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図6】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図7】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図8】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図9】実施の形態2にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図10】実施の形態3にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図11】実施の形態4にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図12】実施例の主接合と最も内側のFLRとの第1間隔と耐圧との関係をシミュレーションした結果を示す特性図である。
図13】実験例のFLRの不純物濃度と耐圧との関係をシミュレーションした結果を示す特性図である。
図14】実験例の内側から1,2本目のFLR間の第2間隔の増加幅と耐圧との関係をシミュレーションした結果を示す特性図である。
図15】実験例の内側から2,3本目のFLR間の第3間隔の増加幅との関係をシミュレーションした結果を示す特性図である。
図16】実験例のFLRの厚さと耐圧との関係をシミュレーションした結果を示す特性図である。
図17】実験例のFLR構造のFLRの本数と耐圧との関係をシミュレーションした結果を示す特性図である。
図18】従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
図19】従来の炭化珪素半導体装置の構造の別例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0049】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる半導体装置の構造について説明する。図1は、実施の形態1にかかる半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。図2は、図1の切断線A-A’における断面構造を示す断面図である。図1,2に示す実施の形態1にかかる半導体装置30は、炭化珪素(SiC)からなる半導体基板(半導体チップ)10の活性領域1にトレンチゲート構造(素子構造)を備えた縦型MOSFETであり、活性領域1の周囲を囲むエッジ終端領域2に、耐圧構造としてフィールドリミッティングリング(FLR)構造20を備える。
【0050】
活性領域1は、MOSFET(半導体装置30)のオン時に主電流(ドリフト電流)が流れる領域である。活性領域1には、MOSFETの同一構造の複数の単位セル(素子の構成単位)が互いに隣接して配置される。活性領域1は、例えば、略矩形状の平面形状を有し、半導体基板10の略中央(チップ中央)に配置される。活性領域1は、最外周のコンタクトホール40bの外側(チップ端部側)の側壁(層間絶縁膜40の側面)よりも内側(チップ中央側)の領域である。活性領域1とエッジ終端領域2との間の中間領域3は、活性領域1に隣接して、活性領域1の周囲を囲む。
【0051】
中間領域3とエッジ終端領域2との境界は、後述する半導体基板10の第1,3面10a,10cの境界である。エッジ終端領域2は、活性領域1と半導体基板10の端部(チップ端部)との間の領域であり、中間領域3を介して活性領域1の周囲を囲み、半導体基板10のおもて面(第1主面)側の電界を緩和して耐圧を保持する機能を有する。エッジ終端領域2には、半導体基板10のおもて面側に、耐圧構造としてFLR構造20が形成されている。耐圧とは、pn接合でアバランシェ降伏を起こし、ソース-ドレイン間の電流を増加してもそれ以上ソース-ドレイン間の電圧が増加しない限界の電圧である。
【0052】
活性領域1において半導体基板10のおもて面側には、MOSゲートが設けられている。MOSゲートは、p型ベース領域34、n+型ソース領域35、p++型コンタクト領域36、ゲートトレンチ37、ゲート絶縁膜38およびゲート電極39で構成される。最外周のゲートトレンチ37の外側(後述する外周p型ベース領域34aの部分)は、n+型ソース領域35を有していない構成としている。半導体基板10は、炭化珪素からなるn+型出発基板71のおもて面上にn-型ドリフト領域(第1半導体領域)32およびp型ベース領域(第2半導体領域)34となる各エピタキシャル層72,73を順にエピタキシャル成長させてなる。
【0053】
半導体基板10の、p型エピタキシャル層73側の主面をおもて面とし、n+型出発基板71側の主面を裏面(第2主面)とする。n+型出発基板71は、n+型ドレイン領域31である。p型エピタキシャル層73の、エッジ終端領域2の部分はエッチングにより除去され、半導体基板10のおもて面に段差53が形成されている。半導体基板10のおもて面は、段差53を境にして、活性領域1および中間領域3の部分(第1面)10aよりもエッジ終端領域2の部分(第2面)10bでn+型ドレイン領域31側に凹んでいる。
【0054】
半導体基板10のおもて面の第2面10bは、p型エピタキシャル層73の除去により露出されたn-型エピタキシャル層72の露出面である。半導体基板10のおもて面の第1面10aと第2面10bとをつなぐ部分(第3面:段差53のメサエッジ)10cで、活性領域1および中間領域3とエッジ終端領域2とが素子分離される。半導体基板10のおもて面の第3面10cに、p型エピタキシャル層73の側面(後述する外周p++型コンタクト領域36aおよび後述する外周p型ベース領域34aの端部)が露出される。
【0055】
半導体基板10のおもて面の第3面10cに沿って、後述する外周p++型コンタクト領域36a、外周p型ベース領域34aおよび外周p+型領域62aを連結するようにp+型領域(不図示)が設けられていてもよい。段差53の形成時に、p型エピタキシャル層73のとともに下層のn-型エピタキシャル層72の表面領域が若干除去されてもよい。ゲートトレンチ37は、深さ方向Zに半導体基板10のおもて面の第1面10aからp型エピタキシャル層73を貫通してn-型エピタキシャル層72内に達する。
【0056】
ゲートトレンチ37は、例えば、半導体基板10のおもて面に平行な方向(ここでは第1方向X)にストライプ状に延在して、中間領域3に達する。ゲートトレンチ37の内部に、ゲート絶縁膜38を介してゲート電極39が設けられている。p型ベース領域34は、p型エピタキシャル層73の、n+型ソース領域35およびp++型コンタクト領域36を除く部分である。p型ベース領域34は、活性領域1から外側(チップ端部側)へ延在して、半導体基板10のおもて面の第3面10cに達する。
【0057】
p型ベース領域34は、活性領域1および中間領域3の全域に設けられている。p型ベース領域34の外周部分(以下、外周p型ベース領域とする)34aは、活性領域1の周囲を略矩形状に囲む。外周p型ベース領域34aとは、p型ベース領域34のうち、第1方向X(ゲートトレンチ37の長手方向)にn+型ソース領域35よりも外側の部分であって、かつ半導体基板10のおもて面に平行でかつ第1方向Xと直交する第2方向Y(ゲートトレンチ37の短手方向)に最外周のゲートトレンチ37よりも外側の部分である。
【0058】
+型ソース領域35およびp++型コンタクト領域36は、半導体基板10のおもて面の第1面10aとp型ベース領域34との間に、p型ベース領域34に接してそれぞれ選択的に設けられ、かつ半導体基板10のおもて面の第1面10aに露出されている。ここで、半導体基板10のおもて面の第1面10aに露出とは、n+型ソース領域35およびp++型コンタクト領域36が後述する層間絶縁膜40のコンタクトホール40aで後述するNiSi膜41に接することである。
【0059】
+型ソース領域35は、ゲートトレンチ37の側壁においてゲート絶縁膜38に接する。p++型コンタクト領域36は、n+型ソース領域35よりもゲートトレンチ37から離れて配置されている。p型ベース領域34、n+型ソース領域35およびp++型コンタクト領域36は、互いに隣り合うゲートトレンチ37間において、例えばゲートトレンチ37の長手方向に延在している(不図示)。p++型コンタクト領域36は、第1方向Xに点在していてもよい。
【0060】
また、p++型コンタクト領域36は、半導体基板10のおもて面の第1面10aと外周p型ベース領域34aとの間の全域に、外周p型ベース領域34aに接して設けられている。以下、このp++型コンタクト領域36の、半導体基板10のおもて面の第1面10aと外周p型ベース領域34aとの間の部分を外周p++型コンタクト領域36aとする。外周p++型コンタクト領域36aは、最外周のゲートトレンチ37の外側の側壁でゲート絶縁膜38に接する。
【0061】
外周p++型コンタクト領域36aは、半導体基板10のおもて面の第1面10aに露出されている。ここで、半導体基板10のおもて面の第1面10aに露出とは、外周p++型コンタクト領域36aが最外周のコンタクトホール40bでNiSi膜41に接することである。外周p++型コンタクト領域36aは、MOSFETのスイッチング等によりエッジ終端領域2に蓄積された正孔を、MOSFETのターンオフ時に外周p+型領域62aおよび外周p型ベース領域34aを介してソース電極へ引き抜く機能を有する。
【0062】
++型コンタクト領域36および外周p++型コンタクト領域36aは設けられていなくてもよい。この場合、p++型コンタクト領域36および外周p++型コンタクト領域36aに代えて、それぞれp型ベース領域34および外周p型ベース領域34aが半導体基板10のおもて面に達して露出される。半導体基板10の内部において、p型ベース領域34および外周p型ベース領域34aとn+型ドレイン領域31(n+型出発基板71)との間に、これらの領域に接して、n-型ドリフト領域32が設けられている。
【0063】
p型ベース領域34および外周p型ベース領域34aとn-型ドリフト領域32との間に、n型電流拡散領域33および第1,2p+型領域61,62がそれぞれ選択的に設けられている。n型電流拡散領域33および第1,2p+型領域61,62の下面は、ゲートトレンチ37の底面よりもn+型ドレイン領域31側に深い位置に配置されている。n型電流拡散領域33および第2p+型領域62の上面は、p型ベース領域34に接する。n型電流拡散領域33および第1,2p+型領域61,62は、ゲートトレンチ37の長手方向に、ゲートトレンチ37と略同じ長さで直線状に延在している。
【0064】
n型電流拡散領域33は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(Current Spreading Layer:CSL)である。n型電流拡散領域33は、互いに隣り合うゲートトレンチ37間において、第1,2p+型領域61,62に接する。n型電流拡散領域33は、活性領域1から中間領域3に延在してもよい。n型電流拡散領域33は設けられていなくてもよい。この場合、n-型ドリフト領域32が半導体基板10のおもて面側に延在してp型ベース領域34に接する。
【0065】
第1,2p+型領域61,62は、ゲートトレンチ37の底面のゲート絶縁膜38にかかる電界を緩和させる機能を有する。第1,2p+型領域61,62の深さは、適宜設定可能である。例えば、第1,2p+型領域61,62は、n型電流拡散領域33の内部で終端して、n型電流拡散領域33に周囲を囲まれてもよいし、深さ方向Zにn型電流拡散領域33と略同じ深さ位置か、もしくはn型電流拡散領域33よりもn+型ドレイン領域31側に深い位置に達して、n-型ドリフト領域32に接していてもよい。
【0066】
第1p+型領域61は、p型ベース領域34と離れて設けられ、深さ方向Zにゲートトレンチ37の底面に対向する。第1p+型領域61は、ゲートトレンチ37の底面に達してもよい。第1p+型領域61は、フローティング(浮遊)電位であってもよいが、第1,2p+型領域61,62間の所定箇所に他のp+型領域(不図示)を配置するか、または第1p+型領域61の一部を第2p+型領域62側へ延在させるか、によって第2p+型領域62に所定箇所で電気的に接続されてソース電極の電位に固定されていてもよい。
【0067】
第2p+型領域62は、互いに隣り合うゲートトレンチ37間に、第1p+型領域61およびゲートトレンチ37と離れて設けられ、かつ深さ方向Zにp型ベース領域34に隣接する。また、第2p+型領域62(以下、外周p+型領域(第2導電型高濃度領域)62aとする)は、最外周のゲートトレンチ37の外側に、第1p+型領域61および最外周のゲートトレンチ37と離れて設けられ、かつ深さ方向Zに外周p型ベース領域34aに隣接する。外周p+型領域62aは、活性領域1から外側へ延在し、中間領域3の全域に設けられている。
【0068】
外周p+型領域62aは、活性領域1の周囲を略矩形状に囲み、すべての第1,2p+型領域61,62の端部に連結されている。外周p+型領域62aは、中間領域3から段差53よりも外側に延在して、半導体基板10のおもて面の第2面10bに露出されている。外周p+型領域62aは、半導体基板10のおもて面の第3面10cに露出されてもよい。半導体基板10のおもて面の第2,3面10b,10cに露出とは、当該第2,3面10b,10c上の後述するフィールド酸化膜81に接することである。
【0069】
第1,2p+型領域61,62(外周p+型領域62aを含む)と後述するFLR101~118とが同時に形成される場合、第1,2p+型領域61,62(外周p+型領域62aを含む)の不純物濃度は、例えば、1×1018/cm3未満程度の範囲内であり、好ましくは例えば3×1017/cm3以上9×1017/cm3以下程度の範囲内であることがよい。また、第2p+型領域62の厚さ(深さ方向Zの長さ)を例えば0.7μm以上1.1μm以下程度の範囲内とすることで、第2p+型領域62(外周p+型領域62aを含む)を後述するFLR101~118と同時に形成することができる。
【0070】
-型エピタキシャル層72の、n型電流拡散領域33、第1,2p+型領域61,62(外周p+型領域62aを含む)、後述するFLR101~118および後述するn+型チャネルストッパ領域21を除く部分がn-型ドリフト領域32である。n-型ドリフト領域32は、これらの領域とn+型ドレイン領域31との間に設けられている。n-型ドリフト領域32は、活性領域1からチップ端部まで延在して、半導体基板10の端部(半導体基板10の側面)に露出されている。
【0071】
層間絶縁膜40は、半導体基板10のおもて面のほぼ全面に設けられ、すべてのゲート電極39を覆う。活性領域1において層間絶縁膜40には、深さ方向Zに層間絶縁膜40を貫通するコンタクトホール40a,40bが設けられている。コンタクトホール40aには、n+型ソース領域35およびp++型コンタクト領域36が露出される。コンタクトホール40bは、例えば、活性領域1の周囲を囲む略矩形状に設けられている。コンタクトホール40bには、外周p++型コンタクト領域36aが露出される。
【0072】
中間領域3およびエッジ終端領域2において半導体基板10のおもて面の第1~3面10a~10cは、外周p++型コンタクト領域36aよりも外側の全面を、フィールド酸化膜81および層間絶縁膜40を順に積層した絶縁層で覆われている。フィールドプレート(導電性膜)は設けられておらず、中間領域3およびエッジ終端領域2における半導体基板10のおもて面の第1~3面10a~10cの、外周p++型コンタクト領域36aよりも外側の全面がフィールド酸化膜81に接している。
【0073】
中間領域3においてフィールド酸化膜81上には、外周p++型コンタクト領域36aよりも外側に、ゲートランナーとなるゲートポリシリコン(poly-Si)配線層82およびゲート金属配線層83が順に積層されている。ゲートポリシリコン配線層82およびゲート金属配線層83は、深さ方向Zにゲートトレンチ37の端部に対向して、ゲートトレンチ37の端部においてゲート電極39に電気的に接続され、ゲート電極39とゲートパッド(不図示)とを電気的に接続する。
【0074】
半導体基板10のおもて面の第2面10bの表面領域においてn-型エピタキシャル層72の内部に、FLR構造20を構成するフローティング電位の複数のp-型領域(FLR(第2導電型耐圧領域):ハッチング部分)が選択的に設けられ、その外側にFLR構造20と離れてn+型チャネルストッパ領域21が選択的に設けられている。FLR構造20は、16本以上のFLRで構成されることがよい(ここでは18本とし、内側から符号101~118を付す)。FLR101~118およびn+型チャネルストッパ領域21は、半導体基板10のおもて面の第2面10bに露出されている。
【0075】
FLR101~118は、外周p+型領域62aの外側において、外周p+型領域62aとn+型チャネルストッパ領域21との間に互いに離れて設けられ、中間領域3を介して活性領域1の周囲を同心状に囲む。複数のFLR101~118のうちの最も内側のFLR101は、半導体基板10のおもて面に平行な方向に外周p+型領域62aに対向する。複数のFLR101~118のうちの最も外側のFLR118は、半導体基板10のおもて面に平行な方向にn+型チャネルストッパ領域21に対向する。
【0076】
すべてのFLR101~118は、n-型ドリフト領域32に周囲を囲まれている。最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの間と、互いに隣り合うFLR101~118間と、最も外側のFLR118とn+型チャネルストッパ領域21との間と、にn-型ドリフト領域32が配置されている。これらFLR101~118とn-型ドリフト領域32とのpn接合で、MOSFETのオフ時にエッジ終端領域2にかかる高電圧が負担され、エッジ終端領域2の所定耐圧が確保される。
【0077】
最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1は、例えば1.2μm以下程度の範囲内であることが好ましい。最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1とは、外周p+型領域62aとn-型ドリフト領域32とのpn接合(主接合)と、最も内側(内側から1本目)のFLR101と、の間隔である。最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1は、半導体装置30の耐圧を低くするほど狭く設定される。
【0078】
最も内側のFLR101は、外周p+型領域62aにちょうど接触する位置に設けてもよいし(w1=0.0μm)、外周p+型領域62aに重なって接触する位置(w1<0.0μm)に設けてもよい。例えば半導体装置30の耐圧が600Vである場合に、最も内側のFLR101は外周p+型領域62aと接触して配置される。最も内側のFLR101が外周p+型領域62aに接触する場合、最も内側のFLR101が外周p+型領域62aから離れている場合と比べて、互いに隣り合うFLR101~118間の第2~18間隔w2~w18が広めに設定される。
【0079】
互いに隣り合うFLR101~118間の第2~18間隔w2~w18は、半導体装置30の耐圧を低くするほど狭く設定される。互いに隣り合うFLR101~118間の第2~18間隔w2~w18は、外側に配置されるほど所定の増加幅(法線方向の幅)で一律に広くなっている。法線方向とは、活性領域1側(内側)からチップ端部へ向かう方向である。例えば当該増加幅が0.1μmである場合、互いに隣り合うFLR102~118間の第j間隔wjは、内側に隣り合うFLR101~117間の第k間隔wkに0.1μmを加算した値となる(j=2~18、k=j-1)。
【0080】
最も内側のFLR101が外周p+型領域62aと接触する場合、最も内側のFLR101から内側から4本目のFLR104までは次の条件で配置することがよい。最も内側のFLR101と内側から2本目のFLR102との第2間隔w2は、例えば2.1μm以下程度の範囲内とすることがよい。内側から2本目のFLR102と内側から3本目のFLR103との第3間隔w3は、例えば3.1μm以下程度の範囲内とすることがよく、好ましくは1.0μm以下程度の範囲内とすることがよい。
【0081】
内側から2本目のFLR102と内側から3本目のFLR103との第3間隔w3を1.0μm以下程度とした場合、内側から3本目のFLR103と内側から4本目のFLR104との第4間隔w4は、例えば2.0μm以下程度の範囲内とすることがよい。最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとが離れている場合、内側から4本目以降のFLR104~118間の第5~18間隔w5~w18は、最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1よりも広いことがよい。
【0082】
すべてのFLR101~118は、同一構成で形成され、略同じ幅(法線方向の幅)w21、略同じ厚さ(深さ方向Zの長さ)t10、および略同じ不純物濃度を有する。FLR101~118の幅w21は、例えば、従来のFLR構造290のFLR291の幅w210(図19参照)の1/2程度であり、具体的には例えば5μm以上15μm以下程度である(1200V耐圧)。FLR101~118の厚さt10は、例えば、従来のFLR構造290のFLR291の厚さt201(図19参照)の2倍程度であり、具体的には例えば0.7μm以上1.1μm以下程度である。
【0083】
FLR101~118の厚さt10を従来のFLR構造290のFLR291の厚さt201よりも厚くすることで、従来のFLR構造290と比べて、半導体基板30のオフ時にFLR101~118にかかる電界を緩和することができる。このため、従来のFLR構造290と比べて、FLR101~118の幅w21や、最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1、互いに隣り合うFLR101~118間の第2~18間隔w2~w18を狭くすることができる。
【0084】
エッジ終端領域2の長さ(中間領域3からチップ端部までの長さ)w20は、同じ本数(18本)でFLR291を有する従来のFLR構造290を配置したエッジ終端領域202の長さw202(図19参照)の1/2程度であり、空間変調型のFLR構造220を配置したエッジ終端領域202の長さw201(図18参照)と同程度(例えば耐圧1200Vの場合は100μm以上200μm以下程度)となる。各FLR101~118は、従来のFLR構造290のFLR291と略同じ断面積で、当該FLR291よりも深さ方向Zに長い縦長の略矩形状の断面形状となる。
【0085】
このように、すべてのFLR101~118を深さ方向Zに長い縦長の断面形状とすることで、MOSFETのオン状態が長時間続くことで半導体基板10のおもて面の第2面10b上の絶縁層(フィールド酸化膜81、層間絶縁膜40および第1保護膜50)に電荷が蓄積されたとしても、当該電荷の悪影響を受けにくくなる。内側から2番目以降のFLR102~118は、最も内側のFLR101の幅w21よりも広くてもよい。この場合、内側から2番目以降のFLR102~118はすべて略同じ幅w21とする。
【0086】
絶縁層中の電荷による悪影響とは、絶縁層が正(プラス)に帯電したときに、絶縁層中の正電荷によりエッジ終端領域2におけるn-型ドリフト領域32内の空乏層の広がりが抑制されることである。また、絶縁層が負(マイナス)に帯電したときに、エッジ終端領域2におけるn-型ドリフト領域32内の電位が絶縁層中の負電荷により外側へ引っ張られて外側へ延びやすくなることである。絶縁層中に蓄積される電荷の悪影響を受けにくいことで、FLR構造20の耐圧特性を安定させることができる。
【0087】
FLR101~118の不純物濃度は、従来のFLR構造290を構成するFLR291(図19参照)の不純物濃度よりも低く例えば1×1018/cm3未満程度の範囲内である。好ましくは、FLR101~118の不純物濃度は、例えば3×1017/cm3以上9×1017/cm3以下程度の範囲内であることがよく、例えば5×1017/cm3程度であってもよい。半導体装置30の耐圧を低くするほど、FLR101~118の不純物濃度を高く設定することがよい。
【0088】
FLR101~118の不純物濃度を従来のFLR構造290を構成するFLR291の不純物濃度よりも低くすることで、従来のFLR構造290と比べて、半導体基板30のオフ時にFLR101~118にかかる電界を緩和することができる。このため、従来のFLR構造290と比べて、FLR101~118の幅w21や、最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1、互いに隣り合うFLR101~118間の第2~18間隔w2~w18を狭くすることができる。
【0089】
FLR101~118は、第1,2p+型領域61,62(外周p+型領域62aを含む)と同時に形成されてもよい。FLR101~118は、第1,2p+型領域61,62(外周p+型領域62aを含む)よりもn+型ドレイン領域31側に深い位置に達してもよい。この場合、FLR101~118がn+型ドレイン領域31側に第1,2p+型領域61,62と同じ深さ位置である場合と比べて、互いに隣り合うFLR101~118間の第2~18間隔w2~w18が広めに設定される。
【0090】
+型チャネルストッパ領域21は、FLR構造20の外側に、FLR構造20と離れて設けられている。n+型チャネルストッパ領域21は、半導体基板10の端部に露出されている。n+型チャネルストッパ領域21を設けることで、n+型チャネルストッパ領域21を設けない場合と比べて、MOSFETのオフ時にn-型ドリフト領域32内を活性領域1から外側へ広がる空乏層を抑制することができる。チャネルストッパ電極(不図示)が設けられていない。
【0091】
+型チャネルストッパ領域21に代えて、p+型チャネルストッパ領域(不図示)を設けた場合においても、n+型チャネルストッパ領域21と同様の効果が得られる。半導体基板10のおもて面の第2面10b上の絶縁層にマイナス電荷(負電荷)が蓄積されていてもMOSFETのオフ時にn-型ドリフト領域32内を活性領域1から外側へ広がる空乏層がチップ端部に達しないようにFLR構造20の条件が設定されている場合には、n+型チャネルストッパ領域21は設けられていなくてもよい。
【0092】
半導体基板10のおもて面の第2,3面10b,10cは、上述したようにフィールド酸化膜81および層間絶縁膜40を順に積層した絶縁層で覆われている。当該絶縁層は、半導体基板10のおもて面の第2面10bで、FLR101~118と、n+型チャネルストッパ領域21と、これらの領域間に挟まれたn-型ドリフト領域32と、を覆う。第1保護膜50(パッシベーション膜)は、半導体基板10のおもて面の全面を覆って、半導体基板10のおもて面を保護する表面保護膜である。
【0093】
フィールド酸化膜81、層間絶縁膜40および第1保護膜50の総厚さt20は、ゲート絶縁膜38の厚さ以上であり、印加電圧に耐え得る厚さであればよく、具体的には例えばMOSFETの耐圧が1700Vである場合に1.7μm以上程度である。ニッケルシリサイド(NixSiy、ここでx,yは整数である:以下、まとめてNiSiとする)膜41は、コンタクトホール40a,40bの内部において半導体基板10にオーミック接触し、n+型ソース領域35およびp++型コンタクト領域36に電気的に接続される。
【0094】
NiSi膜41は、コンタクトホール40bにおいて外周p++型コンタクト領域36aに電気的に接続される。p++型コンタクト領域36および外周p++型コンタクト領域36aが設けられていない場合、p++型コンタクト領域36および外周p++型コンタクト領域36aに代えて、p型ベース領域34および外周p型ベース領域34aがそれぞれコンタクトホール40a,40bに露出され、NiSi膜41に電気的に接続される。活性領域1における層間絶縁膜40およびNiSi膜41の表面全体に、層間絶縁膜40およびNiSi膜41の表面に沿ってバリアメタル46が設けられている。
【0095】
バリアメタル46は、バリアメタル46の各金属膜間またはバリアメタル46を挟んで対向する領域間での相互反応を防止する機能を有する。バリアメタル46は、例えば、第1窒化チタン(TiN)膜42、第1チタン(Ti)膜43、第2TiN膜44および第2Ti膜45を順に積層した積層構造を有していてもよい。第1TiN膜42は、活性領域1における層間絶縁膜40の表面全体を覆う。第1Ti膜43は、第1TiN膜42およびNiSi膜41の表面全体に設けられている。
【0096】
第2TiN膜44は、第1Ti膜43の表面全体に設けられている。第2Ti膜45は、第2TiN膜44の表面全体に設けられている。第2Ti膜45の表面全体にアルミニウム(Al)電極膜47が設けられている。Al電極膜47は、バリアメタル46およびNiSi膜41を介してn+型ソース領域35、p++型コンタクト領域36および外周p++型コンタクト領域36aに電気的に接続される。Al電極膜47およびバリアメタル46は、中間領域3の後述するゲート金属配線層83よりも内側で終端している。
【0097】
Al電極膜47は、例えば、5μm程度の厚さのAl膜、アルミニウム-シリコン(Al-Si)膜またはアルミニウム-シリコン-銅(Al-Si-Cu)膜であってもよい。Al電極膜47、バリアメタル46およびNiSi膜41は、ソース電極(第1電極)として機能する。Al電極膜47の上には、めっき膜48およびはんだ層(不図示)を介して、端子ピン49の一方の端部が接合される。端子ピン49の他方の端部は、半導体基板10のおもて面に対向して配置された金属バー(不図示)に接合される。
【0098】
また、端子ピン49の他方の端部は、半導体基板10を実装したケース(不図示)の外側に露出し、外部装置(不図示)と電気的に接続される。端子ピン49は、半導体基板10のおもて面に対して略垂直に立てた状態でめっき膜48にはんだ接合される。端子ピン49は、MOSFETの電流能力に応じた所定直径を有する丸棒状(円柱状)の配線部材であり、外部の接地電位(最低電位)に接続される。端子ピン49は、Al電極膜47の電位を外部に取り出す外部接続用端子である。
【0099】
第1,2保護膜50、51は、例えばポリイミド(polyimide)等の耐熱性の高い有機高分子材料膜である。第1保護膜50は、Al電極膜47の表面のめっき膜48以外の部分を覆う。第1保護膜50は、Al電極膜47、層間絶縁膜40およびゲート金属配線層83を覆うようにチップ端部まで延在し、パッシベーション膜として機能する。Al電極膜47の、第1保護膜50の開口部に露出する部分はソースパッドとなる。第2保護膜51は、めっき膜48と第1保護膜50との境界を覆う。
【0100】
半導体基板10のおもて面は、エッジ終端領域2において半導体基板10のおもて面にn-型エピタキシャル層が露出されていればよく、段差53を設けずに活性領域1からチップ端部まで連続する平坦面としてもよい。ドレイン電極(第2電極)52は、半導体基板10の裏面(n+型出発基板71の裏面)全面にオーミック接触している。ドレイン電極52上には、例えば、Ti膜、ニッケル(Ni)膜および金(Au)膜を順に積層した積層構造でドレインパッド(電極パッド:不図示)が設けられている。
【0101】
半導体基板10のおもて面のAl電極膜47に端子ピン49を接合し、かつ裏面のドレインパッドを絶縁基板の金属ベース板に接合することで、半導体基板10は両主面それぞれに冷却構造を備えた両面冷却構造となっている。半導体基板10で発生した熱は、半導体基板10の裏面のドレインパッドに接合された金属ベース板を介して冷却フィンのフィン部から放熱され、かつ半導体基板10のおもて面の端子ピン49を接合した金属バーから放熱される。
【0102】
実施の形態1にかかる半導体装置30の動作について説明する。ソース電極(Al電極膜47)に対して正の電圧(順方向電圧)がドレイン電極52に印加された状態で、ゲート電極39にゲート閾値電圧以上の電圧が印加されると、p型ベース領域34のゲートトレンチ37に沿った部分にチャネル(n型の反転層)が形成される。それによって、n+型ドレイン領域31からチャネルを通ってn+型ソース領域35へ向かう電流が流れ、MOSFETがオンする。
【0103】
一方、ソース・ドレイン間に順方向電圧が印加された状態で、ゲート電極39にゲート閾値電圧未満の電圧が印加されたときに、活性領域1において、第1,2p+型領域61,62およびp型ベース領域34と、n型電流拡散領域33およびn-型ドリフト領域32と、のpn接合が逆バイアスされることで、電流が流れなくなるため、MOSFETはオフ状態を維持する。このとき、当該pn接合が逆バイアスされることで、当該pn接合から空乏層が広がり、活性領域1の耐圧が確保される。
【0104】
さらに、MOSFETのオフ時、活性領域1の上記pn接合から広がった空乏層は、エッジ終端領域2のFLR101~118とn-型ドリフト領域32とのpn接合によって、エッジ終端領域2を法線方向に外側(チップ端部側)へ向かって延びる。エッジ終端領域2を外側へ向かって空乏層が延びた分だけ、炭化珪素の絶縁破壊電界強度および空乏層幅(活性領域1からチップ端部へ向かう方向(同心状に配置されたFLR101~118の法線方向)の幅)に基づく所定耐圧を確保することができる。
【0105】
また、MOSFETのオフ時に、ソース電極(Al電極膜47)に対して負の電圧をドレイン電極52に印加することで、第1,2p+型領域61,62およびp型ベース領域34と、n型電流拡散領域33およびn-型ドリフト領域32と、のpn接合で形成される寄生のダイオードに順方向に電流を流すことができる。例えば、MOSFETがインバータ用デバイスである場合、MOSFET自身を保護するための還流ダイオードとして、この半導体基板10の内部に内蔵される寄生のダイオードを使用可能である。
【0106】
次に、実施の形態1にかかる半導体装置30の製造方法について説明する。図3~8は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。図3~8には活性領域1を示し、エッジ終端領域2および中間領域3については図2を参照する。ここでは、エッジ終端領域2および中間領域3の各部を、活性領域1に形成される各部と同じ不純物濃度および深さの各部と同時に形成する場合を例に説明する。
【0107】
まず、図3に示すように、炭化珪素からなるn+型出発基板(出発ウエハ)71を用意する。次に、n+型出発基板71のおもて面に、n+型出発基板71よりも低濃度に窒素がドープされたn-型エピタキシャル層72a(72)をエピタキシャル成長させる。n-型エピタキシャル層72の厚さt1は、耐圧3300Vクラスである場合に例えば30μm程度であり、耐圧1200Vクラスである場合に例えば10μm程度である。
【0108】
次に、図4に示すように、フォトリソグラフィおよび例えばAl等のp型不純物のイオン注入により、活性領域1においてn-型エピタキシャル層72の表面領域に、第1p+型領域61と、第2p+型領域62の一部となるp+型領域91と、を形成する。このとき、n-型エピタキシャル層72の表面領域に、第1p+型領域61と同時に、外周p+型領域62aおよびFLR101~118の一部となる各p+型領域91を形成する。
【0109】
次に、フォトリソグラフィおよび例えば窒素(N)等のn型不純物のイオン注入により、n-型エピタキシャル層72の表面領域に、n型電流拡散領域33の一部となるn型領域92を形成する。p+型領域61,91およびn型領域92を形成するための各イオン注入は、異なる条件で所定ドーズ量を複数回(多段)に分けて注入する多段イオン注入であってもよい。p+型領域61,91とn型領域92との形成順序を入れ替えてもよい。
【0110】
活性領域1において互いに隣り合うp+型領域61,91間の距離d2は例えば1.5μm程度である。p+型領域61,91は、例えば深さd1を0.5μm程度とし、上述したように不純物濃度を1.0×1018/cm3未満程度とする。n型領域92の深さd3および不純物濃度は、例えば、それぞれ0.4μm程度および1.0×1017/cm3以上5.0×1018/cm3以下程度である。
【0111】
次に、図5に示すように、n-型エピタキシャル層72a上にさらに例えば窒素等のn型不純物をドープしたn-型エピタキシャル層72b(72)を例えば0.5μm程度の厚さt2でエピタキシャル成長させて、n-型エピタキシャル層72を所定厚さにする。n-型エピタキシャル層72(72a,72b)の不純物濃度は、例えば3×1015/cm3程度である。
【0112】
次に、フォトリソグラフィおよびAl等のp型不純物のイオン注入により、活性領域1においてn-型エピタキシャル層72bに、第2p+型領域62の一部となるp+型領域93を形成する。このとき、n-型エピタキシャル層72bに、当該p+型領域93と同時に、外周p+型領域62aおよびFLR101~118の一部となる各p+型領域93を形成する。
【0113】
次に、フォトリソグラフィおよび例えば窒素などのn型不純物のイオン注入により、n-型エピタキシャル層72bに、n型電流拡散領域33の一部となるn型領域94を形成する。深さ方向Zに隣接するp+型領域91,93同士が連結されて、第2p+型領域62、外周p+型領域62aおよびFLR101~118が形成される。深さ方向Zに隣接するn型領域92,94同士が連結されて、n型電流拡散領域33が形成される。
【0114】
FLR101~118の厚さt10は、後の段差53の形成後にFLR101~118の表面領域が若干除去されたとしても、上述した範囲内(例えば0.7μm以上1.1μm以下程度)となるように設定される。p+型領域93およびn型領域94の不純物濃度等の条件は、例えばそれぞれp+型領域91およびn型領域92と同様である。p+型領域93とn型領域94との形成順序を入れ替えてもよい。
【0115】
次に、図6に示すように、n-型エピタキシャル層72上に、例えばアルミニウム等のp型不純物をドープしたp型エピタキシャル層73をエピタキシャル成長させる。p型エピタキシャル層73の厚さt3および不純物濃度は、例えば、それぞれ1.3μm程度および4×1017/cm3程度である。ここまでの工程で、n+型出発基板71上にエピタキシャル層72,73を順に積層した半導体基板(半導体ウエハ)10が完成する。
【0116】
次に、p型エピタキシャル層73の、エッジ終端領域2側の部分をエッチングにより除去して、半導体基板10のおもて面に、活性領域1および中間領域3の部分(第1面10a)よりもエッジ終端領域2の部分(第2面10b)で低くした段差53を形成する。このとき、エッジ終端領域2において半導体基板10のおもて面にFLR101~118が露出されたことを条件(ストッパ)としてエッチングを停止してもよい。
【0117】
この段差53を形成するためのエッチングを、半導体基板10のおもて面にFLR101~118が露出された直後に停止することで、FLR101~118を所定の厚さt10で残すことができる。このため、FLR構造の設計条件に基づく所定耐圧を安定して得ることができる。エッジ終端領域2において新たに半導体基板10のおもて面となった第2面10bには、n-型エピタキシャル層72が露出される。
【0118】
半導体基板10のおもて面の第1面10aと第2面10bとをつなぐ第3面10cは、例えば第1,2面10a,10bに対して鈍角(傾斜面)をなしてもよいし、略直角(垂直面)をなしていてもよい。半導体基板10のおもて面の第3面10cには、p型エピタキシャル層73が露出される。この段差53を形成するエッチングにより、p型エピタキシャル層73とともにn-型エピタキシャル層72の表面領域が若干除去されてもよい。
【0119】
次に、フォトリソグラフィおよび所定条件のイオン注入により、p型エピタキシャル層73の表面領域に、n+型ソース領域35、p++型コンタクト領域36および外周p++型コンタクト領域36aをそれぞれ選択的に形成する。イオン注入により、エッジ終端領域2において半導体基板10のおもて面の第2面10bに露出するn-型エピタキシャル層72の表面領域に、n+型チャネルストッパ領域21を選択的に形成する。
【0120】
+型ソース領域35、p++型コンタクト領域36、外周p++型コンタクト領域36aおよびn+型チャネルストッパ領域21の形成順序は入れ替え可能である。例えば、n+型ソース領域35およびn+型チャネルストッパ領域21を同時に形成してもよい。n+型ソース領域35、p++型コンタクト領域36および外周p++型コンタクト領域36aを段差53の形成前に形成してもよい。
【0121】
次に、エピタキシャル層72,73にイオン注入した不純物を活性化させるための熱処理(以下、活性化アニールとする)を行う。活性化アニールは、イオン注入によりすべての拡散領域を形成した後にまとめて1回行ってもよいし、イオン注入により拡散領域を形成するごとに行ってもよい。活性化アニールの温度および時間は、例えば、それぞれ1700℃程度および2分間程度であってもよい。
【0122】
この活性化アニールにより、イオン注入によるすべての拡散領域(n型電流拡散領域33、第1,2p+型領域61,62、外周p+型領域62a、n+型ソース領域35、p++型コンタクト領域36、外周p++型コンタクト領域36a、n+型チャネルストッパ領域21およびFLR101~118)で、不純物が活性化されるとともに、ガウス法則にしたがって各々の不純物濃度および不純物拡散係数に応じた不純物拡散が起きる。
【0123】
次に、図7に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、半導体基板10のおもて面からn+型ソース領域35およびp型ベース領域34を貫通して、n型電流拡散領域33の内部において第1p+型領域61に対向するゲートトレンチ37を形成する。p型ベース領域34は、p型エピタキシャル層73の、イオン注入されずにp型のまま残る部分である。ゲートトレンチ37を形成するためのエッチングを用いて段差53を形成してもよい。
【0124】
次に、図8に示すように、半導体基板10のおもて面の第1面10aおよびゲートトレンチ37の内壁(側壁および底面)に沿ってゲート絶縁膜38を形成する。ゲート絶縁膜38は、例えば、酸素(O2)雰囲気中において1000℃程度の温度で半導体表面を熱酸化することで形成した熱酸化膜であってもよいし、高温酸化(HTO:High Temperature Oxide)による堆積膜であってもよい。
【0125】
次に、ゲートトレンチ37の内部に埋め込むように、半導体基板10のおもて面に例えばリン(P)ドープのポリシリコン層を堆積(形成)する。次に、このポリシリコン層を選択的に除去し、ゲート電極39となる部分のみをゲートトレンチ37の内部に残す。また、上記ポリシリコン層の一部をゲート電極39として残すと同時に、当該ポリシリコン層の一部をゲートポリシリコン配線層82として残してもよい。
【0126】
ゲート電極39とゲートポリシリコン配線層82とを同時に形成する場合、ゲート絶縁膜38の形成後、リンドープのポリシリコン層の堆積前に、中間領域3およびエッジ終端領域2において半導体基板10のおもて面上にフィールド酸化膜81を形成する。図2には図示省略するが、半導体基板10のおもて面とフィールド酸化膜81との間にゲート絶縁膜38が残っていてもよい。
【0127】
次に、半導体基板10のおもて面全面に、ゲート電極39およびゲートポリシリコン配線層82を覆う例えばBPSG(Boro Phospho Silicate Glass)等やPSG等の層間絶縁膜40を例えば1μmの厚さで形成する。次に、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、深さ方向Zに層間絶縁膜40およびゲート絶縁膜38を貫通するコンタクトホール40a,40bを形成する。
【0128】
コンタクトホール40aには、n+型ソース領域35およびp++型コンタクト領域36が露出される。コンタクトホール40bには、外周p++型コンタクト領域36aが露出される。また、コンタクトホール40a,40bの形成と同時に、層間絶縁膜40に、ゲートポリシリコン配線層82が露出するコンタクトホールを形成する。次に、熱処理により層間絶縁膜40を平坦化(リフロー)する。
【0129】
次に、活性領域1において層間絶縁膜40のみを覆う第1TiN膜42を形成する。次に、コンタクトホール40a,40bの内部において半導体基板10のおもて面にオーミック接触するNiSi膜41を形成する。また、ドレイン電極52として、半導体基板10の裏面にオーミック接触するNiSi膜を形成する。NiSi膜は、ニッケル膜を、例えば970℃の温度での熱処理により半導体基板10と反応させることで形成される。
【0130】
次に、スパッタ法により、NiSi膜41および第1TiN膜42を覆うように、第1Ti膜43、第2TiN膜44および第2Ti膜45を順に積層して、活性領域1のほぼ全面を覆うようにバリアメタル46を形成する。次に、第2Ti膜45上にAl電極膜47を堆積する。また、Al電極膜47と同時に、Al電極膜47と離して層間絶縁膜40上にゲートパッド(不図示)を形成する。
【0131】
また、Al電極膜47と同時に、ゲートポリシリコン配線層82上にゲート金属配線層83を形成する。次に、ドレイン電極52の表面に、例えばTi膜、Ni膜および金(Au)膜を順に積層してドレインパッド(不図示)を形成する。次に、半導体基板10のおもて面全面にポリイミド等の有機高分子材料からなる第1保護膜50を形成し、第1保護膜50によってAl電極膜47、ゲートパッドおよびゲート金属配線層83を覆う。
【0132】
次に、第1保護膜50を選択的に除去して形成した異なる開口部にそれぞれAl電極膜47(ソースパッド)およびゲートパッドを露出させる。次に、一般的なめっき前処理後、一般的なめっき処理により第1保護膜50の各開口部にめっき膜48を形成する。次に、熱処理(ベーク)によりめっき膜48を乾燥させる。次に、ポリイミド等の有機高分子材料からなる第2保護膜51を形成し、めっき膜48と第1保護膜50との境界を覆う。
【0133】
次に、熱処理(キュア)により第1,2保護膜50,51の強度を向上させる。次に、めっき膜48上に、それぞれはんだ層により端子ピン49を接合する。ゲートパッド(不図示)の上にも、Al電極膜47上と同様に端子ピンを接合した配線構造を形成する。その後、半導体基板10(半導体ウエハ)をダイシング(切断)して個々のチップ状に個片化することで、図1,2に示すMOSFET(半導体装置30)が完成する。
【0134】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、エッジ終端領域に耐圧構造としてFLR構造を備え、当該FLR構造を構成する複数のFLRの不純物濃度は従来のFLR構造(図19参照)のFLRの不純物濃度よりも低く1×1018/cm3未満の範囲内であり、FLRの厚さは従来のFLR構造のFLRの厚さよりも厚く0.7μm以上1.1μm以下である。これによって、互いに隣り合うFLR間の間隔のマージンを大きくすることができるため、FLR構造の完成度が高くなり、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0135】
また、実施の形態1によれば、FLRの不純物濃度を低くすることで、オフ時にFLRにかかる電界が緩和される。FLRの厚さを厚くすることで、FLRが半導体基板のおもて面から深い位置に達するため、エッジ終端領域における半導体基板のおもて面上の絶縁層に蓄積される外部電荷の悪影響を受けにくい。これによって、エッジ終端領域の耐圧を向上させることができるため、従来のFLR構造と比べてエッジ終端領域の長さを1/2程度まで短くすることができる。
【0136】
また、実施の形態1によれば、耐圧構造を通常のFLR構造とすることで、耐圧構造を空間変調型のFLR構造(図18参照)とする場合と比べて耐圧構造の設計が容易となり、イオン注入精度の影響を受けにくい。また、上述したように、互いに隣り合うFLR間の間隔のマージンが大きくなるため、従来のFLR構造と比べても、イオン注入精度の影響を受けにくい。このため、耐圧構造として空間変調型のFLR構造や従来のFLR構造を形成する場合と比べて、半導体装置の作製(製造)が簡易となる。
【0137】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる半導体装置の構造について説明する。図9は、実施の形態2にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態2にかかる半導体装置100aを半導体基板10のおもて面側から見たレイアウトは図1と同様である。図9に示す実施の形態2にかかる半導体装置100aのFLR構造120が実施の形態1にかかる半導体装置30のFLR構造20(図2参照)と異なる点は、FLR構造120を構成するFLR(p-型領域)121~138が半導体基板10のおもて面に露出されていない点である。
【0138】
実施の形態2においては、半導体基板10のおもて面の第2面10bとFLR121~138との間に、n-型ドリフト領域32が設けられている。FLR121~138の上端部(半導体基板10のおもて面の第2面10b側の端部)は、半導体基板10のおもて面の第2面10bから例えば0.1μm以上0.2μm以下程度離れており、具体的には例えば第1p+型領域61の上端部と同じ深さ位置にあってもよい。FLR121~138の不純物濃度の条件は、実施の形態1のFLR101~118と同様である。
【0139】
FLR121~138のn+型ドレイン領域31側の端部(下端部)の深さ位置は、実施の形態1のFLR101~118と同様である。FLR121~138の厚さ(深さ方向Zの長さ)t11および幅w30の条件は、それぞれ実施の形態1のFLR101~118の厚さt10および幅w21と同様である。最も内側のFLR121と外周p+型領域62aとの第1間隔w1の条件、および、互いに隣り合うFLR121~138間の第2~18間隔w2~w18の条件は、実施の形態1のFLR101~118と同様である。
【0140】
実施の形態2にかかる半導体装置100aの製造方法は、実施の形態1にかかる半導体装置30の製造方法において、第1p+型領域61と同様に(図5参照)、FLR121~138を、n-型エピタキシャル層72aにのみ形成し、n-型エピタキシャル層72a上に堆積されるn-型エピタキシャル層72bに形成しなければよい。これによって、半導体基板10のおもて面の第2面10bとなるn-型エピタキシャル層72(72a,72b)の表(ひょう)面に達しない深い位置にFLR121~138を形成することができる。
【0141】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果をさらに得ることができる。また、実施の形態2によれば、FLRとn-型ドリフト領域とのpn接合が半導体基板のおもて面の第2面から離れた深い位置に配置されるため、エッジ終端領域における半導体基板のおもて面上の絶縁層に蓄積される外部電荷による悪影響を受けにくくなり、FLR構造の耐圧特性を安定させることができ、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0142】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる半導体装置の構造について説明する。図10は、実施の形態3にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態3にかかる半導体装置100bを半導体基板10のおもて面側から見たレイアウトは図1と同様である。図10に示す実施の形態3にかかる半導体装置100bが実施の形態1にかかる半導体装置30(図2参照)と異なる点は、FLR構造140を構成するFLR(p-型領域)141~158を、深さ方向Zの略中心位置で相対的に幅w40の広い樽状の断面形状とした点である。
【0143】
実施の形態3においては、FLR141~158は、例えば、深さ方向Zの略中心位置で活性化アニールによる不純物拡散を生じさせることで樽状の断面形状に形成される。このため、FLR141~158は、最も幅w40の広い部分で最も不純物濃度が高く、活性化アニールにより不純物拡散が起きる例えば1×1018/cm3程度である。FLR141~158の最も幅w40の広い部分を除く部分の不純物濃度は、活性化アニールにより不純物拡散が起きない例えば1×1017/cm3程度である。
【0144】
FLR141~158の平均不純物濃度の条件は、実施の形態1のFLR101~118の不純物濃度の条件と同様である。FLR141~158の最も幅w40の広い部分(最も不純物濃度が高い部分)は、エッジ終端領域2の長さw20が可能な限り短くなるように設定されることが好ましい。最も内側のFLR141の最も幅w40の広い部分と外周p+型領域62aとの第1間隔w41の条件は、実施の形態1の最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1と同様である。
【0145】
互いに隣り合うFLR141~158の最も幅w40の広い部分間の第2~18間隔w42~w58の条件は、実施の形態1の互いに隣り合うFLR101~118間の第2~18間隔w2~w18と同様である。FLR141~158の深さ方向Zの両端部(上端部および下端部)の深さ位置は、実施の形態1のFLR101~118と同様である。FLR141~158の厚さ(深さ方向Zの長さ)t12の条件は、実施の形態1のFLR101~118の厚さt10と同様である。
【0146】
実施の形態3にかかる半導体装置100bの製造方法は、実施の形態1にかかる半導体装置30の製造方法において、同じイオン注入マスクを用いて、n-型エピタキシャル層72(72a,72b)に異なる条件で所定ドーズ量を複数回(多段)に分けて多段イオン注入することでFLR141~158を形成すればよい。例えば9段に分けて多段イオン注入する場合、FLR141~158の上端部付近および下端部付近にそれぞれ2段ずつ、活性化アニール時に不純物拡散が起きない程度の低ドーズ量で多段イオン注入を行う。
【0147】
FLR141~158の深さ方向Zの略中心位置付近には、活性化アニール時に不純物拡散が起きる程度の高ドーズ量で5段の多段イオン注入を行う。この5段の多段イオン注入によるFLR141~158の深さ方向Zの略中心位置付近の不純物濃度を例えば1×1018/cm3程度にした場合、FLR141~158の深さ方向Zの略中心位置付近を、活性化アニール時の不純物拡散により法線方向に内側および外側にそれぞれ0.3μm程度ずつ(計0.6μm程度)の幅で相対的に広くすることができる。
【0148】
FLR141~158を第1,2p+型領域61,62(外周p+型領域62aを含む)と同時に形成してもよい。この場合、第1,2p+型領域61,62(外周p+型領域62aを含む)は、FLR141~158の深さ方向Zの中心位置と略同じ深さで相対的に幅の広い断面形状となる。FLR141~158と、第1,2p+型領域61,62(外周p+型領域62aを含む)と、を別工程で形成して、FLR141~158と第1,2p+型領域61,62とでの深さ方向Zの不純物濃度分布が異なっていてもよい。
【0149】
以上、説明したように、実施の形態3によれば、FLRの断面形状を種々変更した場合においても、FLRの不純物濃度および深さを実施の形態1と同じ所定条件とすることで、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0150】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4にかかる半導体装置の構造について説明する。図11は、実施の形態4にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態4にかかる半導体装置100cを半導体基板10のおもて面側から見たレイアウトは図1と同様である。図11に示す実施の形態4にかかる半導体装置100cは、実施の形態3にかかる半導体装置100bのFLR構造140(図10参照)に実施の形態2にかかる半導体装置100aのFLR構造120(図9参照)の構成を適用したFLR構造160を備える。
【0151】
すなわち、実施の形態4においては、FLR構造160を構成するFLR(p-型領域)161~178は、実施の形態3と同様に、深さ方向Zの略中心位置で相対的に幅w60の広い樽状の断面形状を有する。これに加えて、実施の形態2と同様に、半導体基板10のおもて面の第2面10bとFLR161~178との間に、n-型ドリフト領域32が設けられている。FLR161~178は、半導体基板10のおもて面の第2面10bに露出されていない。
【0152】
FLR161~178の不純物濃度の条件は、実施の形態3のFLR141~158の不純物濃度の条件と同じである。FLR161~178の最も幅w60の広い部分(最も不純物濃度が高い部分)は、実施の形態3と同様に、エッジ終端領域2の長さw20が可能な限り短くなるように設定されることが好ましい。最も内側のFLR161の最も幅w60の広い部分と外周p+型領域62aとの第1間隔w41の条件は、実施の形態1の最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1と同様である。
【0153】
互いに隣り合うFLR161~178の最も幅w60の広い部分間の第2~18間隔w42~w58の条件は、実施の形態1の互いに隣り合うFLR101~118間の第2~18間隔w2~w18と同様である。FLR161~178の深さ方向Zの両端部(上端部および下端部)の深さ位置は、実施の形態2のFLR121~138と同様である。FLR161~178の厚さ(深さ方向Zの長さ)t13の条件は、実施の形態1のFLR101~118の厚さt10と同様である。
【0154】
実施の形態4にかかる半導体装置100cの製造方法は、実施の形態3にかかる半導体装置100bの製造方法において、第1p+型領域61と同様に(図5参照)、FLR161~178を、n-型エピタキシャル層72aにのみ形成し、n-型エピタキシャル層72a上に堆積されるn-型エピタキシャル層72bに形成しなければよい。これによって、半導体基板10のおもて面の第2面10bとなるn-型エピタキシャル層72(72a,72b)の表(ひょう)面に達しない深い位置に、樽状の断面形状のFLR161~178を形成することができる。
【0155】
以上、説明したように、実施の形態4によれば、実施の形態1~3と同様の効果を得ることができる。
【0156】
(実施例)
最も内側(内側から1本目)のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1について検証した。図12は、実施例の主接合と最も内側のFLRとの第1間隔と耐圧との関係をシミュレーションした結果を示す特性図である。主接合とは、外周p+型領域62aとn-型ドリフト領域32とのpn接合である。図12の横軸は最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1であり、縦軸は耐圧である。
【0157】
図12において、第1間隔w1=0.0μmである場合、最も内側のFLR101が外周p+型領域62aとちょうど接触する位置に配置されている。第1間隔w1<0.0μmである場合、最も内側のFLR101が外周p+型領域62aと重なって接触する位置に配置されている。第1間隔w1>0.0μmである場合、最も内側のFLR101が外周p+型領域62aと離れて配置されている。
【0158】
上述した実施の形態1にかかる半導体装置30(以下、実施例とする:図2参照)について、最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1を種々変更して耐圧をシミュレーションした結果を図12に示す。図12には、従来の半導体装置260(以下、従来例とする:図19参照)について、最も内側のFLR291と外周p+型領域262aとの間隔w211を種々変更して耐圧をシミュレーションした結果も示す。
【0159】
実施例においては、FLR構造20のFLR101~118の不純物濃度および厚さt10をそれぞれ5×1017/cm3および1μmとした。耐圧1200Vクラスとなる条件で、FLR構造20のFLR101~118の幅w21や、互いに隣り合うFLR101~118間の第2~18間隔w2~w18を設定した。実施例のエッジ終端領域2の長さw20は100μmとなった。
【0160】
最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1を1.0μmとし、互いに隣り合うFLR101~118間の第2~18間隔w2~w18の増加幅を0.1μmとした。すなわち、互いに隣り合うFLR101~118間の第2~18間隔w2~w18を、w2=1.1μm、w3=1.2μm、…、wi=1.0μm+0.1μm×(i-1)とした(ここでi=4~18)。
【0161】
従来例においては、FLR構造290のFLR291の不純物濃度および厚さt201をそれぞれ1×1018/cm3および0.5μmとした。耐圧1200Vクラスとなる条件でFLR構造290のFLR291の幅w210や、互いに隣り合うFLR291間の間隔w212等を設定した。FLR構造290を構成する複数のFLR291は等間隔に配置されている。従来例のエッジ終端領域202の長さw202は200μmとなった。
【0162】
図12に示す結果から、実施例においては、従来例と比べて、最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1の、所定耐圧(1200V)を実現するマージンが大きく、かつ耐圧を向上させることができることが確認された。また、実施例は、従来例のエッジ終端領域2の長さw202と比べて、エッジ終端領域2の長さw20を1/2にすることができることが確認された。その理由は、次の通りである。
【0163】
従来例では、FLR291の不純物濃度が高いことで、最も内側のFLR291と外周p+型領域262aとの間隔w211のマージンが小さくなる。また、FLR291の不純物濃度が高いことと、FLR291の深さ(厚さt201)が浅いこととで、FLR291にかかる電界が高くなるため、互いに隣り合うFLR291間の間隔w212をある程度確保する必要があり、エッジ終端領域202の長さw202が長くなる。
【0164】
それに対して、実施例においては、FLR101~118の不純物濃度が従来例のFLR291の不純物濃度よりも1桁程度低く、FLR101~118の深さ(厚さt10)が従来例のFLR291の深さの2倍程度深くなっている。これによって、従来例と比べて、最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1のマージンを十分に大きくすることができる。
【0165】
また、実施例においては、FLR101~118の不純物濃度が低いことと、FLR101~118の深さが深いこととで、FLR101~118にかかる電界が低くなるため、従来例と比べて、互いに隣り合うFLR101~118間の第2~18間隔w2~w18を狭くすることができる。これにより、エッジ終端領域2の長さw20を、空間変調型のFLR構造220(図18参照)を配置した場合と同程度に短くすることができる。
【0166】
また、図12に示す結果から、実施例においては、最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1が1.2μmを超えると、所定耐圧を確保可能であるが、第1間隔w1が広くなるほど耐圧が低下することが確認された。一方、最も内側のFLR101が外周p+型領域62aと接触していたとしても(w1≦0.0μm)、耐圧が低下せず、十分な耐圧を確保することができることが確認された。
【0167】
(実験例)
FLR構造20の他の4つの条件について検証した。まず、1つ目の検証として、FLR101~118の不純物濃度について検証した。図13は、実験例のFLRの不純物濃度と耐圧との関係をシミュレーションした結果を示す特性図である。図13の縦軸および横軸は、図12と同様である。上述した実施の形態1にかかる半導体装置30(図2参照)について、FLR101~118の不純物濃度を変えて(以下、実験例1~3とする)、耐圧をシミュレーションした。
【0168】
実験例1~3について、最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1を種々変更して耐圧をシミュレーションした結果を図13に示す。実験例1~3は、それぞれFLR101~118の不純物濃度を3×1017/cm3、5×1017/cm3および9×1017/cm3とした。実験例1~3のFLR101~118の不純物濃度以外の構成は、図12の実施例と同様である。実験例2は、図12の実施例に相当する。
【0169】
図13に示す結果から、実験例1~3ともに、最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1が1.2μm以下であれば、所定耐圧(1200V)を十分に得ることができることが確認された。したがって、FLR101~118の不純物濃度を3×1017/cm3以上9×1017/cm3以下の範囲内とし、最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1を1.2μm以下の範囲内とすることで、所定耐圧を十分に得ることができる。
【0170】
2つ目の検証として、互いに隣り合うFLR101,102間の第2間隔w2の増加幅、および、互いに隣り合うFLR102,103間の第3間隔w3の増加幅、について検証した。図14は、実験例の内側から1,2本目のFLR間の第2間隔の増加幅と耐圧との関係をシミュレーションした結果を示す特性図である。図15は、実験例の内側から2,3本目のFLR間の第3間隔の増加幅との関係をシミュレーションした結果を示す特性図である。
【0171】
図14の横軸は互いに隣り合うFLR101,102間(最も内側のFLR101と内側から2本目のFLR102との間)の第2間隔w2の増加幅であり、縦軸は耐圧である。図15の横軸は互いに隣り合うFLR102,103間(内側から2本目のFLR102と内側から3本目のFLR103との間)の第3間隔w3の増加幅であり、縦軸は耐圧である。
【0172】
上述した実施の形態1にかかる半導体装置30(以下、実験例4とする:図2参照)について、互いに隣り合うFLR101,102間の第2間隔w2の増加幅を種々変更して、耐圧をシミュレーションした結果を図14に示す。上述した実施の形態1にかかる半導体装置30(以下、実験例5とする:図2参照)について、互いに隣り合うFLR102,103間の第3間隔w3の増加幅をシミュレーションした結果を図15に示す。
【0173】
互いに隣り合うFLR101,102間の第2間隔w2の増加幅とは、最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1からの増加幅(=w2-w1)である。互いに隣り合うFLR102,103間の第3間隔w3の増加幅とは、第2間隔w2からの増加幅(=w3-w2)である。実験例4の第2間隔w2以外の構成は、図12の実施例と同様である。実験例5の第3間隔w3以外の構成は、図12の実施例と同様である。
【0174】
図14,15に示す結果から、互いに隣り合うFLR101~118間の第2~18間隔w2~w18の増加幅が0.7μm以下であれば、FLRの本数の増加に伴って、互いに隣り合うFLR間の間隔が外側に配置されるほど所定の増加幅で広くなっても耐圧に悪影響しないことが確認された。なお、互いに隣り合うFLR103~118間の第4~18間隔w4~w18の増加幅と耐圧との関係(不図示)についても図14,15と同様の傾向となる。
【0175】
3つ目の検証として、FLR101~118の厚さ(深さ)t10について検証した。図16は、実験例のFLRの厚さと耐圧との関係をシミュレーションした結果を示す特性図である。図16の縦軸および横軸は、図12と同様である。上述した実施の形態1にかかる半導体装置30(図2参照)について、FLR101~118の厚さt10を変えて(以下、実験例6~8とする)、耐圧をシミュレーションした。
【0176】
これら実験例6~8について、最も内側のFLR101と外周p+型領域62aとの第1間隔w1を種々変更して耐圧をシミュレーションした結果を図16に示す。実験例6~8は、それぞれFLR101~118の厚さt10を0.5μm、0.7μmおよび0.9μmとした。実験例6~8のFLR101~118の厚さt10以外の構成は、図12の実施例と同様である。
【0177】
図16に示す結果から、FLR101~118の不純物濃度を5×1017/cm3とし、FLR101~118の厚さt10を0.5μm以上0.9μm以下程度の範囲とすることで、所定耐圧(1200V)を十分に得ることができることが確認された。図示省略するが、FLR101~118の不純物濃度を3×1017/cm3以上9×1017/cm3以下の範囲内とした場合においても、FLR101~118の厚さt10と耐圧との関係は図16と同様の傾向となる。
【0178】
4つ目の検証として、FLR構造20のFLRの本数について検証した。図17は、実験例のFLR構造のFLRの本数と耐圧との関係をシミュレーションした結果を示す特性図である。図17の横軸はFLR構造20のFLRの本数であり、横軸は耐圧である。図17は、FLR構造20のFLRの外部電荷依存性をシミュレーションした結果も含む。外部電荷とは、FLR上の絶縁層を正(プラス)に帯電させるプラス電荷、または負(マイナス)に帯電させるマイナス電荷である。
【0179】
上述した実施の形態1にかかる半導体装置30(図2参照)について、エッジ終端領域2における半導体基板10のおもて面の第2面10b上の絶縁層(FLR上のフィールド酸化膜81、層間絶縁膜40および第1保護膜50を順に積層した絶縁層)を、帯電させない場合(電荷ゼロ)、正に帯電させた場合(プラス電荷)、および負に帯電させた場合(マイナス電荷)(以下、実験例9~11とする)、で耐圧をシミュレーションした。
【0180】
これら実験例9~11について、FLR構造20のFLRの本数を種々変更して耐圧をシミュレーションした結果を図17に示す。実験例9~11のFLR構造20のFLRの本数以外の構成は、図12の実施例と同様である。実験例9は、図12の実施例に相当する。実験例9は、低湿度環境下(一般的な空調制御で換気等がなされた室内など)で使用する場合のシミュレーション結果であり、実使用に準じた一般的な電圧印加試験によって得られる結果に相当する。
【0181】
実験例10(絶縁層が正に帯電)は、高湿度環境下(例えば工場等の特殊環境下)で使用した場合のシミュレーション結果であり、THB(Temperature Humidity Bias:高温高湿バイアス)試験によって得られる結果に相当する。高湿度環境下では、エッジ終端領域2における半導体基板10のおもて面の第2面10b上の絶縁層が正に帯電して、活性領域1から外側へ空乏層が伸びにくくなり、耐圧およびリーク電流が変動する。このため、実験例10は、高湿度環境下での耐圧およびリーク電流の変動を検証するものである。
【0182】
実験例11(絶縁層が負に帯電)は、ドレイン-ソース間に高電圧を印加したときのシミュレーション結果であり、高電圧印加試験によって得られる結果に相当する。MOSFETのオフ時に活性領域1から外側へ向かって伸びる空乏層により、エッジ終端領域2における半導体基板10のおもて面の表面領域が空乏化すると、この空乏化した部分が正に帯電した状態と同じになる。これによって、エッジ終端領域2における半導体基板10のおもて面の第2面10b上の絶縁層に負電荷が蓄積される。
【0183】
当該絶縁層に蓄積された負電荷は、ドレイン-ソース間の電圧印加が短時間であれば放電され悪影響しないが、ドレイン-ソース間に耐圧以上の高電圧(例えば耐圧1200Vクラスの場合は1400Vや1500V程度の高電圧)が長時間(例えば3000時間程度)連続して印加されると放電されずに、空乏層をさらに外側へ伸ばすように機能し、耐圧およびリーク電流を変動させる。このため、実験例11は、ドレイン-ソース間への長時間の高電圧印加時における耐圧およびリーク電流の変動を検証するものである。
【0184】
図17に示す結果から、外部電荷の有無にかかわらす、FLR構造20のFLRの本数が16本以上であれば、所定耐圧(1200V)を十分に得ることができることが確認された。その理由は、従来例(図19参照)と比べて、FLRの厚さt10が厚く、FLRがエッジ終端領域2における半導体基板10のおもて面の第2面10bから深い位置に達することで、エッジ終端領域2における半導体基板10のおもて面の第2面10b上の絶縁層に蓄積される外部電荷の悪影響を受けにくいからである。
【0185】
図示省略するが、従来例においても、エッジ終端領域202における半導体基板210のおもて面の第2面210b上の絶縁層に蓄積される外部電荷による悪影響が図17と同様の傾向であらわれる。しかしながら、従来例では、最も内側のFLR291と外周p+型領域262aとの間隔w211のマージン(図12参照)と同様に、実験例9~11と比べて、所定耐圧を満たすFLR構造290のFLR291のマージンが小さいことが本発明者により確認されている。
【0186】
以上において本発明は、上述した各実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、実施の形態1,2において、ゲートトレンチの底面のゲート絶縁膜にかかる電界を緩和させるためにゲートトレンチの底面付近に設けられるp+型領域を、深さ方向の略中心位置で相対的に幅の広い樽状の断面形状としてもよい。炭化珪素を半導体材料にすることに代えて、炭化珪素以外のワイドバンドギャップ半導体とした場合においても本発明を適用可能である。また、本発明は、導電型(n型、p型)を反転させても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0187】
以上のように、本発明にかかる半導体装置は、高電圧や大電流を制御するパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0188】
1 活性領域
2 エッジ終端領域
3 中間領域
10 半導体基板
10a~10c 半導体基板のおもて面の第1~3面
20,120,140,160 FLR構造
21 n+型チャネルストッパ領域
30,100a~100c 半導体装置
31 n+型ドレイン領域
32 n-型ドリフト領域
33 n型電流拡散領域
34 p型ベース領域
34a 外周p型ベース領域
35 n+型ソース領域
36 p++型コンタクト領域
36a 外周p++型コンタクト領域
37 ゲートトレンチ
38 ゲート絶縁膜
39 ゲート電極
40 層間絶縁膜
40a,40b 層間絶縁膜のコンタクトホール
41 NiSi膜
42 第1TiN膜
43 第1Ti膜
44 第2TiN膜
45 第2Ti膜
46 バリアメタル
47 Al電極膜
48 めっき膜
49 端子ピン
50 第1保護膜
51 第2保護膜
52 ドレイン電極
53 段差
61,62,91,93 p+型領域
62a 外周p+型領域
71 n+型出発基板
72,72a,72b n-型エピタキシャル層
73 p型エピタキシャル層
81 フィールド酸化膜
82 ゲートポリシリコン配線層
83 ゲート金属配線層
92,94 n型領域
101~118,121~138,141~158,161~178 FLR
X 半導体基板のおもて面に平行な第1方向
Y 半導体基板のおもて面に平行でかつ第1方向と直交する第2方向
Z 深さ方向
d1 p+型領域の深さ
d2 互いに隣り合うp+型領域間の距離
d3 n型領域の深さ
t1,t2 n-型エピタキシャル層の厚さ
t3 p型エピタキシャル層の厚さ
t10~t13 FLRの厚さ
t20 エッジ終端領域における半導体基板のおもて面上(FLR上)の絶縁層の総厚さ
w1,w41 最も内側のFLRと外周p+型領域との第1間隔
wm 内側から(m-1)本目のFLRと内側からm本目のFLRとの第m間隔(ただしm=2~18)
wn 内側から(n-41)本目のFLRと内側から(n-40)本目のFLRとの第(n-40)間隔(ただしn=42~58)
w20 エッジ終端領域の長さ
w21,w30,w40,w60 FLRの幅
図1
図2
図3
図4
図5
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