IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウシオ電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-光源装置 図1
  • 特開-光源装置 図2A
  • 特開-光源装置 図2B
  • 特開-光源装置 図3A
  • 特開-光源装置 図3B
  • 特開-光源装置 図4
  • 特開-光源装置 図5
  • 特開-光源装置 図6
  • 特開-光源装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167281
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/08 20060101AFI20221027BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20221027BHJP
   B01J 20/08 20060101ALI20221027BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20221027BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20221027BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20221027BHJP
   H01J 65/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B01J19/08 C
A61L9/20
B01J20/08 A
B01J20/10 A
B01J20/10 C
B01J20/26 D
B01D53/26 200
H01J65/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072984
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳生 英昭
【テーマコード(参考)】
4C180
4D052
4G066
4G075
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH01
4C180HH17
4C180HH20
4D052CE00
4D052HA01
4D052HA02
4D052HA03
4D052HA49
4G066AA20B
4G066AA22B
4G066BA02
4G066BA09
4G066CA43
4G066DA01
4G075AA03
4G075AA22
4G075BB10
4G075CA33
4G075DA02
4G075EB31
4G075EC21
4G075EC25
4G075FB04
4G075FB12
4G075FC04
(57)【要約】
【課題】劣化の進行を抑制する光源装置を提供する。
【解決手段】本発明の光源装置は、筐体と、前記筐体の内部空間に配置され、紫外光を放射する光源と、前記光源から放射された前記紫外光を前記筐体の外へ導く光透過材と、前記内部空間に配置された水分吸着材と、を備える。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部空間に配置され、紫外光を放射する光源と、
前記光源から放射された前記紫外光を前記筐体の外へ導く光透過材と、
前記内部空間に配置された水分吸着材と、を備えることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記水分吸着材がペレット状の粒体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記水分吸着材が板状体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
前記水分吸着材が前記筐体の内壁に接する膜状体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項5】
前記水分吸着材の少なくとも一部は、前記筐体を構成することを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項6】
前記水分吸着材の少なくとも一部が、前記紫外光に耐性を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項7】
前記水分吸着材が、セラミック及びPTFEの少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記セラミックは、アルミナ及びシリカの少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項7に記載の光源装置。
【請求項9】
前記光源はエキシマランプであり、
当該エキシマランプの発光管の外面に外部電極が配置されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項10】
前記光源は、200nm以下の波長を含む紫外光を放射する固体光源であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、紫外光を利用して細菌又はウイルスを不活化させる技術が知られている。特に、近年は、人体への与える影響の小さい波長190~240nmの紫外光を放射する光源が注目されている。例えば、特許文献1には、エキシマランプから放射される上記波長帯域の紫外線で殺菌対象物又は殺菌対象空間を照射して、殺菌対象物の表面又は殺菌対象空間に存在する細菌及びウイルスを不活化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-115525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光源装置には、エキシマランプ等の光源のみならず、筐体、フィルタ及び電極など、様々な部材から構成される。これら様々な部材には、樹脂や金属などの材料が使用されている。
【0005】
本発明者は、光源近傍に位置し、かつ、樹脂又は金属を含む部材が、光源の長時間の使用により当該部材の表面が劣化し、以下に述べる問題が生じるおそれがあることを見出した。その問題とは、表面が劣化する部材が筐体の外部へ紫外光を取り出す窓に用いられる光透過材(波長選択フィルタ又は光拡散部材等)である場合には、光透過率が低下し、光源装置の照度が低下することである。表面が劣化する部材が紫外光反射部材である場合には、当該反射部材の反射効率が低下し、光源装置の照度が低下することである。表面が劣化する部材が光源装置の筐体である場合には、筐体からのパーティクルの発生に伴い、表面荒れが発生したり、筐体の剛性が低下したりすることである。さらに、発生したパーティクルが波長選択フィルタに付着し透過率を低下させたり、発生したパーティクルが紫外光の反射部材に付着し反射率を低下させたりすることがある。
【0006】
よって、上記の劣化の進行を抑制する光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光源装置は、筐体と、
前記筐体の内部空間に配置され、紫外光を放射する光源と、
前記光源から放射された前記紫外光を前記筐体の外へ導く光透過材と、
前記内部空間に配置された水分吸着材と、を備える。
【0008】
詳細は後述するが、本発明の光源装置では、筐体の内部空間が水分吸着材と接するので、当該内部空間に含まれる水分量を減少させることができる。水分量が減少すると、光源の放射光で200nm以下の紫外光で生成されるOHラジカルの生成量が減少し、又は、光源周囲で発生する沿面放電や大気放電を起点として生成されるOHラジカルの生成量が減少する。本発明者は、OHラジカルが、光源の近傍に位置する材料(光透過材、電極又は筐体等の部材に使用される樹脂又は金属)を劣化させることを突き止めた。よって、OHラジカルの生成量を減少させると、光源の近傍に位置する部材の劣化の進行を遅らせることができる。
【0009】
前記水分吸着材がペレット状の粒体を含んでも構わない。
【0010】
前記水分吸着材が板状体を含んでも構わない。
【0011】
前記水分吸着材が前記筐体の内壁に接する膜状体を含んでも構わない。
【0012】
前記水分吸着材の少なくとも一部は、前記筐体を構成しても構わない。
【0013】
前記水分吸着材の少なくとも一部が、前記紫外光に耐性を有しても構わない。
【0014】
前記水分吸着材が、セラミック及びPTFEの少なくとも一つを含んでも構わない。
【0015】
前記セラミックは、アルミナ及びシリカの少なくとも一つを含んでも構わない。
【0016】
前記光源はエキシマランプであり、
当該エキシマランプの発光管の外面に外部電極が配置されていても構わない。
【0017】
前記光源は、200nm以下の波長を含む紫外光を放射する固体光源であっても構わない。
【発明の効果】
【0018】
これにより、劣化の進行を抑制する光源装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第一実施形態の光源装置の外観斜視図である。
図2A図1におけるXZ面に平行なC1面における断面模式図である。
図2B】間隔を空けて第一筐体から第三筐体を示した断面模式図である。
図3A】第三筐体のみを示す斜視図である。
図3B】第二筐体のみを示す斜視図である。
図4】第二実施形態の光源装置の断面模式図である。
図5】第三実施形態の光源装置の断面模式図である。
図6】第四実施形態の光源装置の断面模式図である。
図7】二つの光源装置の照度維持率の積算使用時間による変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照しながら各実施形態を説明する。なお、本明細書に開示された各図面は、あくまで模式的に図示されたものである。すなわち、図面上の寸法比と実際の寸法比とは必ずしも一致しておらず、また、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
【0021】
以下において、各図面は、適宜、XYZ座標系を参照しながら説明される。なお、本明細書において、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「X方向」と記載されている場合には、「+X方向」と「-X方向」の双方が含まれる。Y方向及びZ方向についても同様である。
【0022】
<第一実施形態>
[光源装置の概要]
図1は光源装置10の外観の斜視図である。図2Aは、図1におけるXZ面に平行なC1面における断面模式図である。図1及び図2Aを参照して、光源装置10は、紫外光を放射する複数の光源3と、光源3を収容する筐体2と、光源3から放射された紫外光を透過して、光を筐体の外に導く光透過材4と、筐体2の内部空間1が接する水分吸着材7(図2A参照)と、を含む。光源3は、給電線(8a,8b)(図1参照)から電極9(図2A参照)を介して給電される。電極9は、光源3への給電機能だけでなく、光源3から放射された光を反射して光透過材4に向ける、光反射機能を有する。図1及び図2Aでは、光透過材4を透過した放射光の光軸L1を示している。さらに図2Aでは、光透過材4を透過した放射光の光線束F1も示している。
【0023】
本実施形態において、光源3はKrClエキシマランプである。KrClエキシマランプは、主たる発光波長(相対強度が最も高い波長)が222nmの紫外線を放射する光源装置である。KrClエキシマランプをはじめとする190nm~240nmの波長帯域の光を放射する光源は、細菌又はウイルスを不活化させる作用を有する。そして、当該光源を必要に応じて波長選択フィルタと組合せて、人体に対して影響を及ぼすおそれのある、出射光が240nm以上の波長帯域を含む光を遮断することで、人体に対する安全性を向上させた光源装置を形成できる。このような光源装置は、細菌又はウイルスの不活化装置として、人の居る空間で使用できる。
【0024】
図2Aでは図示されていないが、光源3を構成するランプの管軸方向(図2AにおけるY方向)に離間した位置に、一対の電極9が配置されている。この一対の電極9は、それぞれ給電線(8a,8b)に接続されている。図示しない点灯回路から給電線(8a,8b)を介して一対の電極9に電圧が印加されることで、誘電体であるランプの管体を介して管体内に封入された発光ガスに対して電圧が印加され、管体内でエキシマ発光する。
【0025】
本実施形態において、光源装置10の筐体は、3つの部材を積層して構成される。図2Bは、図2Aの光源装置10の断面模式図において、当該3つの部材を、それぞれ間隔を空けて示している。筐体2は、光源3に接する電極9を取り付ける第一筐体2aと、第一筐体2aよりも+X方向(光射出方向)に位置する第二筐体2bと、第二筐体2bよりも+X方向に位置し、YZ平面上で光透過材4を囲む第三筐体2cと、を含む。
【0026】
なお、図2Aでは示されていないが、第一筐体2a、第二筐体2b及び第三筐体2cは、積層されて、互いにネジで固定されている。また、接着剤など、ネジ以外の固定手段を使用しても構わない。後者の場合は、光源3から出射される紫外線に対する高い耐性を示す材料が用いられる。
【0027】
[筐体]
本実施形態において、第一筐体2a、第二筐体2b及び第三筐体2cは、主にPEI(ポリエーテルイミド)樹脂を含む材料で構成されるが、紫外光に耐性を有する他の樹脂を含む材料で構成されてもよい。また、筐体(2a,2b,2c)の一部または全部を、後述する水分吸着材7と同様の機能を実現する観点から、水分吸着作用のある材料(例えばアルミナなど)で構成しても構わない。この場合、筐体自体は水分吸着材としても機能するため、筐体とは別の水分吸着材を有していなくてもよい。
【0028】
[電極]
電極9は、アルミニウム系材料から構成されている。電極9には、光源3に給電する効果と、光源3からの放射光が電極9に入射したとき、電極9の表面で放射光を反射させて、光透過材4に導く効果とを有する。
【0029】
[光透過材]
図2Aを参照して、光透過材4は、紫外光を取出す開口に設けられた紫外光を透過する光透過材の総称である。本実施形態では、光透過材4として、波長選択フィルタと光拡散板とを含む。
【0030】
[水分吸着材]
図2Aに示すように、光源装置10は、筐体2の内部空間1が接するように配置された水分吸着材7を備える。この水分吸着材7は、内部空間1に含まれる水分を吸水することによって、光源装置10を構成する部材の劣化の進行を抑制する目的で設けられている。以下において、水分吸着材7が備えられていない場合には前記部材に対して劣化が進行すると考えられる理由について、説明する。
【0031】
光源装置10は、光源3の周囲に、筐体2、光透過材4及び電極9など、樹脂又は金属を含む部材を有する。
【0032】
上述したように、KrClエキシマランプで構成される、本実施形態の光源3から出射される紫外光は、ピーク波長が222nm近傍である。しかし、この紫外光は、ピーク波長の光強度に比べるとその強度は微弱ながらも、200nm以下の波長成分も含む。下記式(1)に示されるように、200nm以下の波長の紫外線(「hν(λ)」と記載することがある。)は、酸素分子に吸収されて、O(D)又はO(P)などの原子状酸素(「O」と記載することがある。)を生成しやすい。
+ hν(λ) → O+ O …(1)
【0033】
下記式(2)に示されるように、原子状酸素は、水と結合して、OHラジカル(「・OH」と記載することもある。)を生成する。
O・ + HO → 2・OH …(2)
【0034】
または、下記式(3)に示されるように、原子状酸素からオゾン(O)を生成し、下記式(4)に示されるように、オゾンが水と結合してOHラジカルを生成する。
+ O・ → O …(3)
+ HO → 2・OH +O …(4)
【0035】
また、エキシマランプのような、誘電体バリア放電により点灯するランプの場合、ランプの発光管の外面に外部電極が設けられているので、外部電極付近で沿面放電や大気放電が発生し、これによりオゾンが生成されることがある。上記式(4)に示されるように、沿面放電により生成されたオゾンが水分と結合してOHラジカルを生成することがある。
【0036】
OHラジカルは強い酸化力を有する。本発明者の鋭意研究の結果、光源3の近傍に位置する樹脂又は金属が、OHラジカルにより劣化することを突き止めた。光源3の近傍に位置する樹脂は、例えば、光透過材4及び筐体2を含む。光源3の近傍に位置する金属は、例えば、光反射機能を有する電極9を含む。光透過材4又は電極9が劣化すると、光源装置10から取り出される紫外光の出力が低下する。筐体2が劣化すると、筐体2からパーティクルが発生し、表面荒れが発生したり、筐体2の剛性が低下したりする。さらに、発生したパーティクルが波長選択フィルタに付着して透過率を低下させたり、発生したパーティクルが紫外光の反射部材に付着し、反射率を低下させたりすることがある。
【0037】
これに対し、本実施形態の光源装置10は、上述したように筐体2の内部空間1が接するように配置された水分吸着材7を備える。これにより、内部空間1に含まれる水分量が減少する。内部空間1に含まれる水分量が減少すると、上記式(2)及び上記式(4)の反応が起こりにくくなり、OHラジカルの生成量が減少する。よって、光源3の近傍に位置する部材の劣化を抑えることができる。
【0038】
水分吸着材7を構成する材料は、吸水機能を有する材料であればよく、好適にはセラミック系材料(例えば、アルミナ、シリカ又はゼオライトなど)や、樹脂系材料(例えば、PTFEなど)が利用される。また、水分吸着材7は多孔質体で構成されてもよい。水分吸着材7が多孔質体である場合、内部空間1との接する表面積を増やして、水分の吸着効率を高めることができる。
【0039】
図3Aは、第三筐体2cのみを示す斜視図である。第三筐体2cは、多数の水分吸着材7を収容する収容室21を備える。図3Aでは、収容室21を分かりやすく示すために、二つある収容室21のうち一方の収容室21には、水分吸着材7を描写していない。しかしながら、図2A及び図2Bに示されるように、水分吸着材7は、実際には、二つの収容室21それぞれに収容されている。
【0040】
本実施形態では、水分吸着材7は、特にペレット状(小さな粒体状)と言われる粒体である。この粒体は略円柱形状をしている。この形状は一例であって、角柱又は球状など、特に限定されるものでない。粒体のサイズ(直径)は、0.01mm~10mmであるとよく、特に好ましくは0.1mm~5mmであるとよい。粒体のサイズについて、粒体のサイズが小さくなるほど、内部空間1に接する表面積が増えて、水分吸着性能が高くなる傾向にある。
【0041】
図2A図2B及び図3Aでは、ペレット状の粒体の水分吸着材7が整列して収容室21に収容されている。しかしながら、水分吸着材7が整列した状態で収容されなくてもよい。水分吸着材7を収容室21にランダムに投入してもよい。水分吸着材7が収容室21内で、動かないよう固定しなくてもよい。
【0042】
図3Bは、第二筐体2bのみを示す斜視図である。第二筐体2bの中央は、内部空間1を形成するための開口25である。第二筐体2bは、第三筐体2cの収容室21付近に、Y軸方向に延びるスリット状の孔24を有する。図2Aに示されるように、第二筐体2bが、収容室21の蓋として機能する。孔24のZ方向の幅は、水分吸着材7の粒体よりも小さなサイズであり、これにより、水分吸着材7が内部空間1と接する状態を保ちつつ、光源装置10の搬送時でも、水分吸着材7が収容室21から脱しないようにできる。この孔24の形状は一例であり、他の形状であってもよい。また、水分吸着材7が何らかの網に覆われていれば、孔24の幅が水分吸着材7の粒体のサイズより大きくても、または、収容室21の蓋が無くても、水分吸着材7が収容室21から脱しないようにできる。
【0043】
図3Bを参照して、第二筐体2bは、光源3の延びる方向の両端に、光源を-X方向に押さえる押さえ部材26を有する。光源3は、電極9と押さえ部材26とにX方向に挟まれて固定される。
【0044】
水分吸着材7は、光源3が放射する紫外光に耐性を有する材料で構成されてもよい。このような材料としては、例えば、ゼオライトが挙げられる。光源3が放射する紫外光が水分吸着材7に到達した場合でも、当該紫外光による水分吸着材7の劣化を防ぐことができる。なお、光源3が放射する紫外光が、水分吸着材7に吸着された水分に到達し、吸着された水分からOHラジカルが生成されたとしても、生成されたOHラジカルの多くは水分吸着材7の近傍に留まるので、劣化を抑制したい光源装置10を構成する部材への影響は、問題となりにくい。
【0045】
また、水分吸着材7の収容室21に蓋を設けるとき、蓋に設ける孔24を紫外光が届かないような形状とすること、又は、紫外光の放射範囲外に収容室21を位置するようにすることにより、紫外光が水分吸着材7にほとんど到達しない場合には、水分吸着材7を、紫外光に耐性を有する材料で構成しなくても構わない。
【0046】
筐体2の内部空間1は、筐体2の外部から遮断された閉鎖空間である(図2A参照)。筐体2の外部から内部空間1に浸入する水分(水蒸気等)は、全くないか、又は、微量である。内部空間1に含まれる水分の多くは、光源装置10を製造する際に入り込んだ、製造現場の雰囲気に含まれる水蒸気である。閉鎖空間内の水分を一度吸着すれば、通常は、水分吸着材7を入れ替えることなく、内部空間1の低湿度環境を維持できる。時間の経過とともに、筐体2の外部より内部空間1に浸入する水分により、低湿度環境を維持できない場合には、大量の水分を吸着できる水分吸着材7を使用するか、光源装置10の水分吸着材7を取り換え可能な構造にしてもよい。
【0047】
<第二実施形態>
第一実施形態と異なる点を中心に第二実施形態を説明する。以下に述べる以外の事項は、第一実施形態と同様に実施できる。
【0048】
図4は、第二実施形態の光源装置である。図4を参照しながら第二実施形態を説明する。第二実施形態の光源装置20は、板形状の水分吸着材7を有する。本実施形態の水分吸着材7は、XY方向に延び、Z方向に薄い形状をなす。水分吸着材7のZ方向の厚みは、例えば、1mm~10mmである。光源装置20の筐体は、第一筐体2aと、第一筐体2aよりも+X方向(光射出方向)に位置する第二筐体2bとから構成される。本実施形態では、水分吸着材7の収容室21を有していない。板状の水分吸着材7は、第二筐体2bの内壁から-X方向に立設する。そのために、例えば、水分吸着材7のZ方向に対向する両面を挟んで固定する固定部(不図示)を、第二筐体2bに設けてもよい。変形例として、板状の水分吸着材7の一面を筐体2の内壁に接するように配置してもよい。
【0049】
このような板形状の水分吸着材7としては、例えばセラミックスを板状に加工したものを利用しても構わないし、他の部材で形成された基体の面上に、PTFE等の樹脂が配置されたものを利用しても構わない。
【0050】
<第三実施形態>
図5は、第三実施形態の光源装置である。図5を参照しながら第三実施形態を説明する。第三実施形態では、光源装置30の筐体は、第一筐体2aと、第一筐体2aよりも+X方向(光射出方向)に位置する第二筐体2bとから構成される。筐体(2a,2b)の内壁に、膜状の水分吸着材7が接して形成されている。膜状の水分吸着材7は、光源装置30の筐体(2a,2b)を積層する前に、筐体(2a,2b)の内壁に、個別に成膜して形成される。このような方法で形成可能な水分吸着材7の材料としては、例えば、ゼオライトと耐紫外光バインダーとの混合液が挙げられる。当該混合液を筐体(2a,2b)の内壁に塗布し、乾燥させて成膜する。
【0051】
<第四実施形態>
図6は、第四実施形態の光源装置である。図6を参照しながら第四実施形態を説明する。第四実施形態の光源装置40では、水分吸着材7が、主に粉体を含んでいる。粉体は水蒸気を透過し粉体を透過しない袋に収容され、当該袋は収容室21内に収容されている。
水分吸着材7が粉体である場合、水分吸着材7の表面積が大きいため、水分吸着効率が高い。
【0052】
以上で、光源装置の各実施形態及びその変形例を説明した。しかしながら、本発明は、上述の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、上記の各実施形態を組み合わせたり、各実施形態に種々の変更又は改良を加えたりすることができる。
【0053】
光源3としてKrClエキシマランプを使用することを説明したが、波長の異なる他のエキシマランプ(KrBrエキシマランプ、Xeエキシマランプ等)を使用した場合でも、水分吸着材7を使用できる。なぜなら、エキシマランプが放射する光の波長にかかわらず、オゾンを生成し得る沿面放電や大気放電を発生するおそれがあるためである。特に、発光管の外面に外部電極を配置する構造を有するエキシマランプの場合、外部電極と発光管の間で沿面放電や大気放電が発生する可能性が高い。
【0054】
固体光源(レーザダイオード又はLED)を使用した光源装置にも、水分吸着材7を使用できる。固体光源においても、放射される紫外光に波長200nm以下の紫外光が含まれる場合があり、波長200nm以下の紫外光によってオゾンが生成するからである。特に、ピーク波長が200~240nmの波長範囲である固体光源は、主として放射される紫外光が200nmより長波長であっても、200nm以下の波長成分を僅かに含む場合がある。この場合に、200nm以下の波長成分によってオゾンが生成される可能性がある。そのため、水分吸着剤を用いてOHラジカルの生成を抑制することが望ましい。
【実施例0055】
第一実施形態の光源装置10と同じタイプの装置(D1、D2)を準備した。つまり、装置(D1、D2)は、いずれも、第一筐体~第三筐体が積層されて閉鎖空間を形成している。そして、水分吸着材7を収容するための収容室21を有している。ただし、装置D1は、収容室21に円柱型ペレットの水分吸着材7を有しているのに対し、装置D2は、収容室21をはじめ、筐体2の内部のいずれにも水分吸着材7を有していない。よって、装置D1の内部空間1は低湿度環境を維持しているのに対し、装置D2の筐体2内の内部空間1は、水分量の高い状態にある。
【0056】
図7は、二つの装置(D1、D2)について、装置の使用を開始してから1000時間経過するまでの照度維持率の変化を示すグラフである。照度維持率は、以下の(5)式で算出される。
照度維持率(%)=(任意の積算使用時間における照度/光源装置10の使用開始直後の初期照度)×100 …(5)
【0057】
なお、照度については、図7においては、装置(D1,D2)の光透過材4に対して5cm離間して対向する位置に照度計を設置して測定した。なお、点灯回路から(D1,D2)のそれぞれの装置が備える光源3に対して印加される電圧の波高値は、常時一定とした。
【0058】
図7より、水分吸着材7の入っていない装置D2は、装置の積算使用時間が1000h(時間)に到達したとき、照度維持率は、使用開始直後の約70%にまで低下している。この照度の低下は、光透過材若しくは電極の劣化、又は光透過材又は電極へのパーティクル付着によるものと考えられる。
【0059】
他方、水分吸着材7の入っている装置D1は、装置の積算使用時間が1000h(時間)に到達したとき、照度維持率は、使用開始直後の約90%の低下に留まる。この結果は、水分吸着材7により筐体内の水分量が減少し、照度の低下を抑えられたことを示している。つまり、光透過材及び電極の劣化が小さいと考えられる。
【符号の説明】
【0060】
1 :内部空間
2 :筐体
2a :第一筐体
2b :第二筐体
2c :第三筐体
3 :光源
4 :光透過材
7 :水分吸着材
8 :給電線
9 :電極
10 :光源装置
20 :光源装置
21 :収容室
24 :孔
25 :開口
26 :押さえ部材
30 :光源装置
40 :光源装置
D1 :装置
D2 :装置
L1 :紫外光
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7