(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167286
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】直線部材による球形状構造体の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04H 7/14 20060101AFI20221027BHJP
E04B 1/32 20060101ALI20221027BHJP
B65D 88/04 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
E04H7/14
E04B1/32 102B
E04B1/32 102H
B65D88/04 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072999
(22)【出願日】2021-04-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】516047061
【氏名又は名称】犬飼 八重子
(74)【代理人】
【識別番号】715009178
【氏名又は名称】犬飼 晴雄
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 晴雄
【テーマコード(参考)】
3E170
【Fターム(参考)】
3E170AA04
3E170AB30
3E170JA01
3E170JA07
3E170KA01
3E170KB01
3E170KB02
3E170VA01
(57)【要約】
【課題】
従来技術による球形状構造体の構築方法について、事前作業、現場作業、高所作業を出来るだけ軽減し、従来以上に半径の大きい球形状構造体の構築を可能とする方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
直線部材3を放射状に配置し、真中を相互に固定し、外側端部を包囲ワイヤ5で連結して平面部材網N1を形成する。包囲ワイヤ5の両端部を引き寄せて縮径すると、直線部材3はアーチ状に変形しドーム状部材網N2が形成され、さらに縮径を進めると、球形状部材網N3が構築される。この球形状部材網N3を基にして、目的に沿うように鋼材等で補充・補強して、薄層構造やコンクリート構造の球形状構造体N4の構築を可能とするものである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨組み構造の球形状の構造体を構築する方法であって、基礎工上に放射状に配置した複数の直線部材の内側端部を水平状に固定し、前記直線部材の外側端部を包囲方向には移動ができ、中心方向には移動ができない包囲ワイヤで係止し、前記直線部材の中間部を持上げ凸状にして、凸状の平面部材網を設け、前記包囲ワイヤの両端部を引き寄せる方法、あるいは前記直線部材の端部に中心方向の力を作用させる方法、あるいはこの両者を併用する方法等によって、前記直線部材の直径を縮径することにより、高さと半径が同じ半円形状の半円形ドーム状部材網を形成し、更に、この半円形状ドーム状部材網の直径を縮径し、下側になった前記直線部材の外側端部を下部工に固定することによって球形状部材網を構築し、この球形状部材網を骨格にして、前記球形状部材網の表面を鋼板又はコンクリート等で被覆することによって、例えばタンクのような球形状構造体を構築する方法。
【請求項2】
請求項1記載の球形状部材網を構築する方法であって、前記半円形ドーム状部材網の形成後、更にこの半円形ドーム状部材網の下側になった前記直線部材の外側両端部が、一致するまで縮径し、閉球形になった前記直線部材の外側端部を、球形状にした状態で下部工に固定して、閉球形状部材網を形成して球形状部材網を構築する方法。
【請求項3】
請求項2記載の球形状部材網を構築する方法であって、閉球形になった前記直線部材の外側端部を、直線状にした状態で下部工に固定して、半閉球形状部材網を形成して球形状部材網を構築する方法。
【請求項4】
請求項1記載の球形状部材網を構築する方法であって、前記半円形ドーム状部材網の形成後、更にこの半円形ドーム状部材網の下側になった前記直線部材の外側両端部を、一致させず開いた状態の縮径をして、開球形になった前記直線部材の外側端部を、球形状にした状態で下部工に固定して、開球形状部材網を形成して球形状部材網を構築する方法。
【請求項5】
請求項4記載の球形状部材網を構築する方法であって、開球形になった前記直線部材の外側端部を、直線状にした状態で下部工に固定して、半開球形状部材網を形成して球形状部材網を構築する方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の球形状部材網を構築する方法で用いる直線部材であって、その直線部材の断面における縦軸部材に強度の大きい高強度鋼を使用し、その縦軸部材と直交する横軸部材に普通強度の普通鋼を使用し、前記縦軸部材の中心の両側面に前記横軸部材を溶接接合することにより、前記直線部材の断面を十字型断面にして、スパン方向の曲げに強くしかも曲げやすく、かつ横方向の座堀に強いことを特徴とする直線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球形状構造体を構築する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンク等の球形状構造体を構築する場合、現場で仮設足場、支保工、形枠を組みコンクリートを打設して構築する方法や、工期短縮、高所作業の軽減等をはかるため、事前に工場等で製作した各種部材を建設現場に運搬し、建設現場に仮設足場、支保工を組み、クレーン等により各種部材を持ち上げ、それらを接続・結合して構築する方法等が実施されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような従来の方法は、構築する球形状構造体の形状に合わせたコンクリート打設用形枠や、組み立て部材を製造・加工することが不可欠であるが、本方法は従来方法とは全く異にして、直線状部材を現場で円形状に強制変形させて球形状構造体を構築するものであり、直線部材を用いてドーム状部材網を構築する従来の方法(例えば特許文献2参照)に対して、直線部材をより強く強制変形させて球形状構造体を構築するもので、従来のタンクや球形状構造体の構築方法には無かった方法である。
【0004】
本方法によると、仮設足場、支保工、クレーン等の重機の使用が大幅に減少され、高所作業も軽減される。又、本方法は、技術面や工事費等から実現が難しいと考えられていたような半径の大きい球形状構造体を実現することが期待できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-062004号公報
【特許文献2】特許第6063086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は従来技術による球形状構造体の構築方法に関して、事前作業、現場作業、高所作業を出来るだけ軽減することを、さらに、従来以上に半径が大きい球形状構造体の構築を可能とする方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、半径Rの球形状構造体N4の構築に関して、始めに球形状部材網N3を構築し、この球形状部材網N3を骨格として、球形状構造体N4を構築する方法を提供するものである。その工程は概略以下となる。
【0008】
基礎工1上に、放射状に配置した、長さS0のほぼ半分の長さの複数の直線部材3の内側端部を剛性固定板4に水平状に固定し、その直線部材3の外側端部を包囲方向には移動ができ、中心方向には移動ができない包囲ワイヤ5で係止し、その直線部材3の中間部を高さδの支持台7等により持上げ、凸状にして、凸状の平面部材網N1が形成される(
図1参照)。長さS0は、構築する球形状部材網N3の周長である。
【0009】
凸状の平面部材網N1の形成後、前記包囲ワイヤ5の両端部を引き寄せる方法、あるいは前記直線部材5の端部に中心方向の水平力ΣH1を作用させる方法、あるいはこの両者を併用する方法等によって、前記直線部材3の外側端部を中心方向に幅寄せする縮径を行い、高さであるライズがfで、直径LがL=2fの半円形状のドーム状部材網N2が形成される(
図2参照)。
【0010】
次に、形成した前記半円形状のドーム状部材網N2の外周部を水平力ΣH2で縮径し、前記直線部材3を球形状にし、下側になった前記直線部材3の外側端部を下部工2aに固定することによって、球形状部材網N3が構築される(
図3(a)参照)。
【0011】
前記球形状部材網N3を骨格として、この球形状部材網N3の表面を鋼板又はコンクリート等で被覆することによって、例えばタンクのような球形状構造体N4を効率的に構築することが出来る。以上のような工程によって直線部材3による球形状構造体N4が構築される。
【0012】
図4は
図1、
図2及び
図3(a)を併記して比較したものである。長さS0の直線部材で形成された平面部材網N1が縮径によって、スパンL=4.2R、ライズf=2.1Rの半円形ドーム状部材網N2になり、更なる縮径によって半径R、高さH=2Rの球形状部材網N3が構築される。球形状部材網N3の高さHは半円形ドーム状部材網N2よりわずか低くなる。即ちf>Hである。ここで、
図3(a)と
図4では、球形状部材網の代表として以下で説明する閉球形状部材網であらわしている。
【0013】
ここで、球形状部材網N3の種類について説明する。
図3(a)の閉球形状部材網は、直線部材3の外側両端部が一致するまで縮径したものである。周長S0はS0=2πRである。これに対して、直線部材3の外側両端部を一致させず、開いた状態の縮径をすると、開球形状部材網が構築される(
図3(b)参照)。開球形状部材網の周長はS0=θRで、θは内角で、θ>πである。
【0014】
上記
図3で、閉球形と開球形の2種類の部材網を示したが、この2種の変形として、
図5の(a)と(b)に示す卵形状をした半閉球形状部材網と半開球形状部材網がある。
図3の球形状部材網における直線部材3は、下部工2に対して円形状を確保して固定されるのに対し、
図5の半球形状部材網では、直線状に固定されるという違いがある
【0015】
以上のように、球形状部材網N3は、閉球形状部材網、開球形状部材網と、半閉球形状部材網、半開球形状部材網、の4種類に大別される。
【0016】
球形状部材網の構築に関し、その具体例として閉球形部材網N3の構築について、
図6の平面図により説明する。基礎工1の中央部に、自重や外力に耐える円形の下部工2a(
図7参照)が構築される。また、この下部工2aから直線部材3の外側端部位置(
図6の円形のAライン)になるところまで、断面が凹型の平滑板6(
図8参照)が基礎工1にアンカ6aにより固定設置される。
【0017】
下部工2aから、長さS0/2の直線部材3が等間隔で放射状に配置される。この直線部材3の外側端部は、平滑板6(
図8参照)の凹状の中に据えられる。縮径中、直線部材3の端部はこの凹状の中を中央部に移行する。
【0018】
直線部材3は、その外側端部が平滑板6に置かれ、中間部が支持台7(
図9参照)で持上げ支持され、内側端部が剛性固定板4(
図10参照)に水平状に固定される。長さS0/2の直線部材3は、剛性固定板4に水平状に固定されることにより、長さS0の1本の直線部材に相当するものになる。
【0019】
前記直線部材3の外側端部が、包囲方向には移動ができ、中心方向には移動できない包囲ワイヤ5で固定されることによって、凸状の平面部材網N1が形成される。
図6の円形のAラインは凸状平面部材網N1の外周縁を示す。包囲ワイヤ5は両端部を操作することにより引き寄せることができるようになっている。
【0020】
凸状になっている平面部材網N1の外側端部を中心方向に幅寄せする縮径が行われる。縮径は、包囲ワイヤ5を引き寄せる方法、あるいは直線部材3の端部に中心方向の力を加える方法、あるいはこの両者を併用する方法等によって行われる。縮径中、直線部材3の端部位置は、平滑板6の凹の中を移動するため、包囲方向にずれずに中心方向に移動する。この縮径によって、支持台7で支持されていた直線部材3は支持台7から離れ、放物線状のアーチが形成される。縮径が進むと、高さがfで、直径がL=2fの半円形のドーム状部材網N2が形成される。
図6の円形のBラインは半円形のドーム状部材網N2の外周縁を示す。
図11は半円形のドーム状部材網N2の斜視図である。
【0021】
縮径をするために、直線部材3の外側端部に作用させる水平力ΣHは、ΣH=Hr+Hgで、Hrは直線部材を円曲化するための水平力で、Hgはアーチ自重による水平反力である。Hrは縮径の進行によって大きくなり、反対にHgは縮径によって小さくなるが、通常ΣHは縮径の開始時が最大で水平力はΣH1になる。開始時の最大水平力ΣH1を小さくするためには、特許第6557809号による方法で、平面部材網を持上げて非着地にする方式があるが、本願では、支持台7で持上げて凸状にする着地方式によるものとする。
【0022】
縮径により水平力ΣHは、開始時のΣH1から減少し、高さf、直径L=2fの半円形のドーム状部材網N2の形成時にはΣH2になる(
図13参照)。半円形のドーム状部材網N2の形成後、更に縮径を進めると、直線部材3は球形状になる。球形状になり下側になった直線部材3の外側端部を、下部工2に固定することによって、閉球形や開球形等の球形状部材網N3(
図3(a)(b)参照)が構築される。
図6の円形のCラインは球形状部材網N3の直径円を示す。この球形状部材網N3を構築するために必要な水平力ΣHは、前記ドーム状部材網N2形成時の水平力ΣH2とほぼ同じである。
【0023】
ここで、閉球形状部材網N3と半円形ドーム状部材網N2との関係を検討する。閉球形状部材網N3の高さHは、H=2Rで、縮径中に形成される半円形ドーム状部材N2の高さfも閉球形状部材網N3とほぼ同じ高さである。
【0024】
閉球形状部材網N3の曲げ作用は全域同じで、これは半円形ドーム状部材網N2の頂部の最大曲げとほぼ同じである。このため、使用する直線部材3の断面は半円形ドーム状部材網N2の断面と同一になる。また、閉球形状部材網N3の直線部材3に作用する水平力ΣHも、半円形ドーム状部材網N2に発生する水平力ΣH2と同等以下である。従って半円形ドーム状部材網N2を形成した時の水平力ΣH2を維持し、縮径量を制御する変位制御方法で閉球形状部材網N3を形成することができる(
図13参照)。
【0025】
使用する直線部材3の断面は、縮径時に作用する最大水平力ΣH1に対する横方向の座堀現象を防ぐために、縦軸部材h0の高さhに対して、横方向部材b0からなる横幅bが決定され十字型断面になる(
図12参照)。また、直線部材3は、強制変形させてアーチ形状にするため、直線部材3の前記縦軸部材h0には大きな力、即ち応力度が発生する。従って強度の大きい材料が必要であり、直線部材3の前記縦軸部材h0には高強度鋼や高張力鋼等が使用される。一方、前記横方向部材b0は、座堀耐力を大きくするための剛性を大きくすることが目的であり、普通強度の鋼材が使用される。
【0026】
水平力ΣHは
図13に示すように、凸型の平面部材網N1をアーチ化する開始時、直線部材3の端部が中心からπRの位置で最大の水平力ΣH1になり、縮径の進行によって減少し、中心からほぼ2Rの位置で半円形ドーム状部材網N2が形成され、水平力ΣH2になる。それ以後ほぼこの値を維持して半径Rの閉球形状部材網N3が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】凸状平面部材網N1の断面による説明図である。
【
図2】半円形のドーム状部材網N2の断面による説明図である。
【
図3】球形状部材網N3の閉断面(a)と開断面(b)の説明図である。
【
図4】平面部材網N1、半円形ドーム状部材網N2と球形状部材網N3の断面による比較図である。
【
図5】半球形状部材網N3の閉断面(a)と開断面(b)の説明図である。
【
図6】構築する閉球形状部材網N3の平面図による説明図である。
【
図7】円形下部工2aの平面(a)と断面(b)による説明図である。
【
図8】平滑板6の平面(a)と断面(b)による説明図である。
【
図10】剛性固定板4の平面(a)と断面(b)による説明図である。
【
図11】半円形ドーム状部材網N2の斜視図である。
【
図13】縮径による水平力ΣHの変化の説明図である。
【
図14】実施例における開球形状部材網N3(a)と半円形ドーム状部材網N2(b)の断面による説明図である。
【
図15】実施例における1次施工の平面(a)と断面(b)による説明図である。
【
図16】1次施工の直線部材の断面(a)と2次施工の断面(b)の説明図である。
【
図17】実施例における2次施工の平面(a)と断面(b)による説明図である。
【
図18】実施例で構築した開球形状部材網N3の斜視図である。
【
図19】開球形構造体の下部への球面板設置時(a)と上部への設置時(b)の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図14乃至
図18により、開球形状部材網N3の構築について説明する。
図14(a)は、構築する開球形状部材網N3の断面図で、半径がR、内角がθ=270度(4.71rad)である。このRとθにより他の諸数値は以下となる。
外角は、2θ’=360―270=90度(1.57rad)。
直径は、D=2R。
下方の開きである底長は、D’=2R*sinθ’=1.41R。
高さは、H=R(1+cosθ’)=1.707R。
周長は、S0=θR=4.71R。
【0029】
以上で求めた球形状部材網N3の周長S0の半分の直線部材3によって形成される
図14(b)表示の半円形ドーム状部材網N2の周長Sは
放物線の線長、 S=s/2+L^2/(8f)*IN((4f+s)/L)
s=(L^2+16f^2)^0.5
で、半円形ドーム状部材網N2ではL=2fより、
S=2.958f
S=S0より
f=1.592R
L=3.185R
周長S0により上記半円形ドーム状部材網N2が形成される。この半円形ドーム状部材網N2は、特許第6063086号あるいは、特許第6557809号等の方法によって構築される。このように形成された半円形ドーム状部材網N2を更に縮径して開球形状部材網N3が構築される。
【0030】
開球形状部材網N3の施工は1次と2次の2回に分けて行われる。1次施工では8本の直線部材3aを用いて球形状部材網N3が構築され、2次施工では1次施工で構築した前記球形状部材網N3を支保工として、8本の直線部材3bが追加され、直線部材3aと3bによる16本の直線部材により球形状部材網N3が構築される。以下1次施工と2次施工について説明する。
【0031】
図15(a)は1次施工の平面図で、8本の直線部材3aの内側端部は、中央部の剛性固定板4(
図10参照)に溶接等によって水平状に固定され、外側端部は平滑板6(
図8参照)の凹状の中に置かれ、中間部は支持台7により持上げられ、直線部材3aは凸状になり、凸状平面部材網N1が形成される。
【0032】
直線部材3aの外側端部は包囲ワイヤ5で包囲結合されており、包囲ワイヤの両端部を引き寄せることにより,水平力ΣH=Hr+Hgの縮径が行われる。
図15(a)で示す円形のAラインは平面部材網N1の包囲ワイヤ5による直径S0=4.71Rの外周縁を示し、円形のBラインは半円形ドーム状部材網N2の直径L=3.185Rの外周縁で、円形のCラインは構築する開球形状部材網N3の直径D=2Rを示している。球形状部材網N3の直線部材3aは環状型下部工2bに固定される。
【0033】
図15(b)は中央部の断面図で、直線部材3aが凸状に配置された平面部材網N1が、縮径により半円形ドーム状部材網N2になり、更なる縮径によって直線部材3aの外側端部が環状型下部工2bに固定され、開球形状部材網N3が構築されるまでの工程を示している。開球形状部材網N3の高さHは、ドーム状部材網N2の高さfよりわずか高くなる。
図16(3a)は、1次施工で使用される直線部材3aの十字型断面を示し、
図16(3b)は2次施工の直線部材3bの断面を示している。2次施工の横幅b2は1次施工のそれより小さくなっている。即ちb2<b1である。
【0034】
図17は2次施工の説明図で、
図17(a)が平面を、
図17(b)が中心位置の断面を示している。8本の直線部材3bの内側端部が剛性固定板4に水平状に固定され、中間部は1次施工の球形状部材網N3に支持される。しかし、外側端部は直線部材3bの剛性により、球形状部材網N3に支持されずに外側に張出し非着地状態になる(
図16(b)参照)。この非着地状態の直線部材3bの外側端部を、強制変形による水平力ΣH=Hrにより、環状型下部工2bに引寄せ固定することにより球形状部材網N3が構築される。
【0035】
このように、2次施工は1次施工に比べ施工が容易になり省力化が可能となる。
また、水平力も自重による水平反力Hgが発生せず、強制変形の水平力Hrだけで済むため横方向の座堀対策も小さくなり、前述のb2<b1になる。
【0036】
図18は1次施工と2次施工の16本の直線部材3aと3bにより構築された球形状部材網N3の斜視図である。球形状部材網N3の中間部を幅広な固定帯鋼8で捩じれを防止し、その上下の中央部を仮設の幅止め鋼9で、アーチ状の直線部材3aと3bの幅間隔を確保している。
【0037】
構築した球形状部材網N3を骨格にして、タンクのような球形状構造体N4を構築する方法について
図19と
図20により説明する。
施工の1例として、最初、球形状部材網N3の下側の球面を台形状の下側球面板10aで被覆する。下側球面板10aは直線部材3aと3bの横部材の間に固定される(
図20参照)。16枚の下側球面板10aの固定によって球形状部材網N3の下半部が被覆される。下側球面板10aを固定すると幅止め鋼9は順次撤去される(
図19(a)参照)。
【0038】
球形状部材網N3下側半分の下側球面板10aの固定終了後、同様にして上側半分が上側球面板10bによって被覆固定される(
図19(b)参照)。上下の球面板10aと10bは接合して結合される。このようにして、球形状部材網N3を骨格として球形状構造体N4が構築される。
【0039】
このように、球形状部材網N3の十字型断面の直線部材3の間に、球面板10を接合することにより球面を構築することができ、骨組み構造の無い状態で球面を構築する従来の方法に比べ、球形状構造体N4工事が格段に省力化される。
この例以外にも球形状部材網N3を利用して、規模や種別の多様な球形状構造体N4を構築することが出来る。
【符号の説明】
【0040】
1:基礎工
2a:円形下部工
2b:環状型下部工
3:直線部材
3a:1次施工の直線部材
3b:2次施工の直線部材
4:剛性固定板
5:包囲ワイヤ
6:平滑板
6a:平滑板のアンカ
7:支持台
8:固定帯鋼
9:幅止め鋼
10a:下側球面板
10b:上側球面板
N1:凸状平面部材網
N2:半円形ドーム状部材網
N3:球形状部材網
N4:球形状構造体
δ:支持台の高さ
h:直線部材の高さ
h0:直線部材の縦部材
b:直線部材の横幅
b0:直線部材の横方向部材
b01:1次施工の直線部材の横方向部材
b02:2次施工の直線部材の横方向部材
t;直線部材の縦軸及び横軸の厚さ
θ:開球形状部材網の内角
2θ’: 開球形状部材網の外角
f:半円形ドーム状部材網の高さ
S:半円形ドーム状部材網の周長
L:半円形ドーム状部材網のスパン
A:凸状平面部材網の外周縁
B:半円形ドーム状部材網の外周縁
C:球形状部材網の直径円
R:球形状部材網の半径
R’:開球形状部材網の下方高さ
H:球形状部材網の高さ
D:球形状部材網の直径(D=2R)
D’:開球形状部材網の底長
S0:球形状部材網の周長
ΣH:水平力(ΣH=Hr+Hg)
Hr:強制変形による水平力
Hg:自重による水平反力
ΣH1:縮径開始時の水平力
ΣH2:半円径ドーム状部材網構築時の水平力
【手続補正書】
【提出日】2021-09-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨組み構造の球形状の構造体を構築する方法であって、基礎工上に放射状に配置した複数の直線部材の内側端部を水平状に固定し、前記直線部材の外側端部を包囲方向には移動ができ、中心方向には移動ができない包囲ワイヤで係止し、前記直線部材の中間部を持上げ凸状にして、凸状の平面部材網を設け、前記包囲ワイヤの両端部を引き寄せる方法、あるいは前記直線部材の端部に中心方向の力を作用させる方法、あるいはこの両者を併用する方法等によって、前記直線部材の直径を縮径することにより、高さと半径が同じ半円形状の半円形ドーム状部材網を形成し、更に、この半円形状ドーム状部材網の直径を縮径し、下側になった前記直線部材の外側端部を下部工に固定することによって球形状部材網を構築し、この球形状部材網を骨格にして、前記球形状部材網の表面を鋼板又はコンクリート等で被覆することによって、例えばタンクのような球形状構造体を構築する方法。
【請求項2】
請求項1記載の球形状部材網を構築する方法であって、前記半円形ドーム状部材網の形成後、更にこの半円形ドーム状部材網の下側になった前記直線部材の外側両端部が、一致するまで縮径し、閉球形になった前記直線部材の外側端部を、球形状にした状態で下部工に固定して、閉球形状部材網を形成して球形状部材網を構築する方法。
【請求項3】
請求項2記載の球形状部材網を構築する方法であって、閉球形になった前記直線部材の外側端部を、直線状にした状態で下部工に固定して、半閉球形状部材網を形成して球形状部材網を構築する方法。
【請求項4】
請求項1記載の球形状部材網を構築する方法であって、前記半円形ドーム状部材網の形成後、更にこの半円形ドーム状部材網の下側になった前記直線部材の外側両端部を、一致させず開いた状態の縮径をして、開球形になった前記直線部材の外側端部を、球形状にした状態で下部工に固定して、開球形状部材網を形成して球形状部材網を構築する方法。
【請求項5】
請求項4記載の球形状部材網を構築する方法であって、開球形になった前記直線部材の外側端部を、直線状にした状態で下部工に固定して、半開球形状部材網を形成して球形状部材網を構築する方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の球形状部材網を構築する方法で用いる直線部材であって、その直線部材の断面における縦軸部材に強度の大きい高強度鋼を使用し、その縦軸部材と直交する横軸部材に普通強度の普通鋼を使用し、前記縦軸部材の中心の両側面に前記横軸部材を溶接接合することにより、前記直線部材の断面を十字型断面にして、スパン方向の曲げに強くしかも曲げやすく、かつ横方向の座屈に強いことを特徴とする直線部材。