(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167291
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】燃焼装置およびこれを備えた温水装置
(51)【国際特許分類】
F23D 14/82 20060101AFI20221027BHJP
F23N 1/02 20060101ALI20221027BHJP
F23N 5/00 20060101ALI20221027BHJP
F23N 5/24 20060101ALI20221027BHJP
F23D 14/08 20060101ALI20221027BHJP
F23C 99/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
F23D14/82 Z
F23N1/02 E
F23N5/00 N
F23N5/24 101A
F23D14/08 Z
F23C99/00 329
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073010
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】宮川 晴徳
【テーマコード(参考)】
3K003
3K017
3K065
【Fターム(参考)】
3K003AB03
3K003AC05
3K003CA04
3K003CB05
3K003CC04
3K003DA03
3K003EA02
3K003FA01
3K003FB04
3K003FC01
3K003GA03
3K017AA05
3K017AB02
3K017AB07
3K017AD03
3K017AE03
3K017AG02
3K017DE02
3K065TA19
3K065TB12
3K065TB13
3K065TB14
3K065TC02
3K065TD01
3K065TD05
3K065TE01
3K065TF03
3K065TH04
3K065TN01
3K065TN16
(57)【要約】
【課題】水素または水素含有ガスが燃料ガスとされている条件下において、消火時に逆火が発生する虞を適切に防止することが可能な燃焼装置を提供する。
【解決手段】水素または水素含有ガスが燃料ガスとして内部に供給され、互いに隣接した配置の主炎孔21aおよび保炎孔21b,21b’が設けられているバーナ2と、ファン3と、燃料ガス用バルブVa,Vbと、を備えている、燃焼装置Cであって、燃料ガス用バルブVa,Vbは、主炎孔21aおよび保炎孔21b,21b’のそれぞれへの燃料ガスの供給の停止を個別に行なうことが可能であり、ファン3が駆動し、バーナ2において燃料ガスが燃焼している状態において、この燃焼を消火する場合には、ファン3の駆動を継続したまま、まず主炎孔21aへの燃料ガスの供給を停止させ、かつその後に所定時間Taが経過してから保炎孔21b,21b’への燃料ガスの供給を停止させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素または水素含有ガスが燃料ガスとして内部に供給され、かつこの燃料ガスを燃焼させる炎孔として、互いに隣接した配置の主炎孔および保炎孔が設けられているバーナと、
前記バーナに空気を供給するファンと、
前記バーナへの前記燃料ガスの供給およびその停止を切り替え可能な燃料ガス用バルブと、
を備えている、燃焼装置であって、
前記燃料ガス用バルブは、前記主炎孔および前記保炎孔のそれぞれへの前記燃料ガスの供給の停止を個別に行なうことが可能な構成とされており、
前記ファンが駆動し、前記バーナにおいて前記燃料ガスが燃焼している状態において、この燃焼を消火する場合には、前記ファンの駆動を継続したまま、まず前記主炎孔への前記燃料ガスの供給を停止させ、かつその後に所定時間が経過してから前記保炎孔への前記燃料ガスの供給を停止させる構成とされていることを特徴とする、燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼装置であって、
前記所定時間は、前記燃焼を消火する際の前記バーナの温度が相対的に高い場合の方が、相対的に低い場合よりも長い時間とされるように構成されている、燃焼装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃焼装置であって、
前記所定時間は、前記バーナの駆動燃焼時間が相対的に長い場合には、相対的に短い場合よりも長い時間とされ、および/または前記バーナの駆動燃焼の出力が相対的に低い場合には、相対的に高い場合よりも長い時間とされるように構成されている、燃焼装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の燃焼装置であって、
前記所定時間は、この燃焼装置の設置箇所の気温が相対的に高い場合は、相対的に低い場合よりも長い時間とされるように構成されている、燃焼装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の燃焼装置であって、
排気閉塞が発生した場合に、その旨を判断可能な排気閉塞判断手段を、さらに備えており、
前記所定時間は、前記排気閉塞判断手段によって排気閉塞が発生していると判断されているときには、そうでないときよりも長い時間とされるように構成されている、燃焼装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の燃焼装置であって、
前記保炎孔には、前記燃料ガスと空気との混合気が供給される構成とされており、
前記ファンの駆動速度は、前記主炎孔への燃料ガスの供給を停止させてから前記保炎孔への燃料ガスの供給を停止させる迄の期間は、不変とされ、前記保炎孔への燃料ガスの供給を停止させた後には、増速するように構成されている、燃焼装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の燃焼装置であって、
前記保炎孔には、前記燃料ガスが空気とは非混合状態で供給される構成とされており、
前記ファンの駆動速度は、前記主炎孔への燃料ガスの供給を停止させた以降であって、前記保炎孔への燃料ガスの供給を停止させるよりも前に、増速するように構成されている、燃焼装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の燃焼装置を備えていることを特徴とする、温水装置。
【請求項9】
請求項8に記載の温水装置であって、
ポンプを利用して液体を一定の経路で循環流通させることが可能な液体循環路と、
この液体循環路に設けられ、かつ前記バーナの駆動燃焼により発生した燃焼ガスを利用して前記液体を加熱可能な第1の熱交換器と、
入水管および出湯管が接続され、かつ外部から前記入水管を介して送り込まれた湯水を、前記液体を利用して加熱し、前記出湯管から外部に出湯させることが可能な第2の熱交換器と、
を備えている、温水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置、およびこれを備えた給湯装置などの温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼装置の具体例として、特許文献1に記載のものがある。
同文献に記載の燃焼装置は、複数の扁平状のバーナと、このバーナに燃焼用の空気を供給するファンとを備えている。各バーナは、燃料ガスと空気(1次空気)との混合気を燃焼させる炎孔として、主炎孔と、その両側に位置する保炎孔とを有するタイプである。主炎孔は、空気比が1よりも大きい淡混合気を燃焼させ、主炎としての淡炎が発生し、希薄燃焼を生じる部位である。このため、低NOX化が可能である。一方、保炎孔は、空気比が1よりも小さい濃混合気を燃焼させ、主炎の両側に位置する保炎としての濃炎を発生させる部位である。このため、主炎の安定化、ひいては火炎全体の安定化を図ることが可能である。
【0003】
しかしながら、前記した燃焼装置においては、次に述べるように、解決すべき課題がある。
【0004】
近年においては、自然環境保護の観点から低炭素社会を実現する施策が促進されている実情がある。そのための施策として、燃焼装置の技術分野においては、燃料ガスとして水素を用いることが考えられる。ところが、水素は、燃料ガスとしてよく用いられる都市ガス(主成分:メタンCH
4)や、LPガス(主成分:プロパンC
3H
8)と比較して、燃焼速度はかなり速い(
図12にそれらの燃焼速度を示している)。このようなことから、水素を燃料ガスとして用いた場合には、逆火が発生する虞が大きい。
【0005】
より具体的に説明すると、前記したバーナにおいては、炎孔(主炎孔、保炎孔)に火炎が形成されるものの、火炎の形成位置は、厳密には、炎孔の内側奥部から炎孔の外側に噴出する燃料ガスの流速と、炎孔の内側奥部に伝搬する火炎伝搬速度(燃焼速度)とが均衡する位置である。ここで、燃料ガスとして水素を用い、これをバーナで燃焼させている場合において、この燃焼を終了すべく(消火させるべく)バーナへの水素の供給を停止した際に、水素の燃焼速度が速いことに起因し、炎孔からその内側奥部に火炎が進入する現象(逆火)を生じる虞が大きい。保炎は濃炎であり、主炎孔側よりも保炎孔側の方が燃料ガスの濃度が高く、燃焼速度が速いため、前記した逆火は、保炎孔の位置で発生し易い。
【0006】
前記した逆火は、機器損傷などの事故の要因となるため、適切に防止することが望まれる。また、前記した逆火は、燃料ガスが水素(水素(H2)が100%)である場合に限らず、水素(H2)を含む燃料ガスである場合にも発生する虞がある。
【0007】
なお、従来においては、逆火防止手段の一例として、特許文献2に記載の手段がある。この手段においては、保炎孔に水素と空気との混合気ではなく、水素のみ、または水素を含有する燃料のみを供給し、これを拡散燃焼させており、このことにより逆火を防止しようとしている。
ところが、このような手段においても、消火時における逆火を確実に防止することは難しいものとなっている。これは、消火時には、バーナの内部に滞留した燃料ガスが保炎孔側に拡散し、空気と混合されることに起因し、逆火が発生する虞があることによる。また、水素は、消火時において、空気と混合されることにより燃焼速度がさらに速くなる特性をもつことにもよる(
図12において、水素(H
2)の空気過剰率がたとえば同図矢印Naに示すように、P1からP2に変化する場合、燃焼速度は増速しており、逆火が発生し易
くなる)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-195516号公報
【特許文献2】特開2019-215127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、水素または水素含有ガスが燃料ガスとされている条件下において、消火時に逆火が発生する虞を適切に防止することが可能な燃焼装置、およびこれを備えた温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0011】
本発明の第1の側面により提供される燃焼装置は、水素または水素含有ガスが燃料ガスとして内部に供給され、かつこの燃料ガスを燃焼させる炎孔として、互いに隣接した配置の主炎孔および保炎孔が設けられているバーナと、前記バーナに空気を供給するファンと、前記バーナへの前記燃料ガスの供給およびその停止を切り替え可能な燃料ガス用バルブと、を備えている、燃焼装置であって、前記燃料ガス用バルブは、前記主炎孔および前記保炎孔のそれぞれへの前記燃料ガスの供給の停止を個別に行なうことが可能な構成とされており、前記ファンが駆動し、前記バーナにおいて前記燃料ガスが燃焼している状態において、この燃焼を消火する場合には、前記ファンの駆動を継続したまま、まず前記主炎孔への前記燃料ガスの供給を停止させ、かつその後に所定時間が経過してから前記保炎孔への前記燃料ガスの供給を停止させる構成とされていることを特徴としている。
【0012】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、バーナを利用して燃料ガスを燃焼させている状態において、この燃焼を消火する場合に、主炎孔および保炎孔への燃料ガスの供給停止は同時にはなされておらず、まず主炎孔への燃料ガスの供給停止がなされて、主炎が消火され、かつその後に所定時間が経過してから保炎孔への燃料ガスの供給停止がなされる。このため、前記所定時間の期間中に、バーナをファンからの空気供給によって積極的に冷却することができる。背景技術の欄で述べたように、消火時においては、主炎孔および保炎孔のうち、保炎孔において逆火を生じ易いが、この保炎孔における消火がなされるときに、バーナが冷却され、その温度が低下している。一方、逆火は、バーナの温度が低いほど発生し難い。したがって、本発明によれば、燃料ガスとして、逆火を生じ易い水素または水素を含有する燃料ガスが用いられているにも拘わらず、消火時における逆火を適切に防止し、逆火に起因する事故を効果的に防止することが可能である。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記所定時間は、前記燃焼を消火する際の前記バーナの温度が相対的に高い場合の方が、相対的に低い場合よりも長い時間とされるように構成されている。
【0014】
このような構成によれば、消火する際にバーナの温度が高い場合には、ファンからの空気供給によってバーナが冷却される時間が長くなり、バーナの温度を十分に低下させることができる。したがって、逆火を確実に防止する上で一層好ましいものとなる。一方、バーナの温度がさほど高くない場合には、ファンからの空気供給によってバーナが冷却される時間は短めとされるため、保炎孔への燃料ガスの供給停止の時期が過度に遅くならない
ようにし、保炎を消火するまでの所要時間が不必要に長くならないようにすることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記所定時間は、前記バーナの駆動燃焼時間が相対的に長い場合には、相対的に短い場合よりも長い時間とされ、および/または前記バーナの駆動燃焼の出力が相対的に低い場合には、相対的に高い場合よりも長い時間とされるように構成されている。
【0016】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、バーナの駆動燃焼時間が長いと、バーナは高温になり易い。また、バーナの駆動燃焼の出力が低い場合には、火炎がバーナの近くに存在するため、この場合においてもバーナは高温になり易い。一方、このようにバーナが高温になり易い場合には、そうでない場合と比べて、前記所定時間は長い時間とされる。したがって、燃焼を消火する際のバーナの温度が高い場合の方が、低い場合よりも前記所定時間が長い時間とされる構成について述べたのと同様な効果が得られ、逆火を確実に防止する上で一層好ましく、また保炎を消火するまでの所要時間が無駄に長くならないようにすることができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記所定時間は、この燃焼装置の設置箇所の気温が相対的に高い場合は、相対的に低い場合よりも長い時間とされるように構成されている。
【0018】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、燃焼装置の設置箇所の気温が高めである場合には、消火時において、ファンを利用した空気供給によってバーナの温度は低下し難くなり、バーナの温度を十分に低下させるには、空気供給時間を長めにとる必要がある。前記構成によれば、そのようなことに適切に対応することができ、気温が高めである場合には、バーナへの空気供給時間を長くとり、逆火を確実に防止し得る一方、気温が低めである場合には、保炎を消火するまでの所要時間が無駄に長くならないようにすることが可能である。
【0019】
本発明において、好ましくは、排気閉塞が発生した場合に、その旨を判断可能な排気閉塞判断手段を、さらに備えており、前記所定時間は、前記排気閉塞判断手段によって排気閉塞が発生していると判断されているときには、そうでないときよりも長い時間とされるように構成されている。
【0020】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、排気閉塞が発生した場合には、バーナの設置箇所周辺の圧力が上昇するため、いわゆるガスインプットが低下する。すると、火炎の高さが低くなり、バーナの表面温度が高くなり易くなる。この場合、前記構成によれば、前記所定時間が長くされるため、バーナをファンからの空気供給によって適切に冷却し、逆火防止を的確に図ることが可能である。排気閉塞が発生していない場合には、前記所定時間が短くされるため、保炎を消火するまでの所要時間が無駄に長くならないようにすることができる。
【0021】
本発明において、好ましくは、前記保炎孔には、前記燃料ガスと空気との混合気が供給される構成とされており、前記ファンの駆動速度は、前記主炎孔への燃料ガスの供給を停止させてから前記保炎孔への燃料ガスの供給を停止させる迄の期間は、不変とされ、前記保炎孔への燃料ガスの供給を停止させた後には、増速するように構成されている。
【0022】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、保炎孔に混合気が供給されて燃焼を生じている場合においては、消火前に多くの空気が供給されると、逆火し易くなる。これに対し、前記構成によれば、そのようなことが適切に回避されており、逆火が防止される。また、保炎孔への燃料ガスの供給(燃
料ガスと空気との混合気の供給)が停止されてからファンの駆動速度が増速されるため、バーナ内の残存混合気を保炎孔からバーナの外部に早期に排出することができる。
【0023】
本発明において、好ましくは、前記保炎孔には、前記燃料ガスが空気とは非混合状態で供給される構成とされており、前記ファンの駆動速度は、前記主炎孔への燃料ガスの供給を停止させた以降であって、前記保炎孔への燃料ガスの供給を停止させるよりも前に、増速するように構成されている。
【0024】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、逆火を適切に防止する上では、バーナを少しでも早いタイミングで冷却することが望まれるが、前記構成によれば、そのようなことに適切に対応することができる。前記構成によれば、保炎孔への燃料ガスの供給を停止させる迄に、ファンの駆動速度が増速されているものの、保炎孔への空気供給はなされないため、保炎孔において保炎が形成されている状態でファンの駆動速度を増速しても、なんら支障はない。
【0025】
本発明の第2の側面により提供される温水装置は、本発明の第1の側面により提供される燃焼装置を備えていることを特徴としている。
【0026】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される燃焼装置について述べた効果と同様な効果が得られる。
【0027】
本発明において、好ましくは、ポンプを利用して液体を一定の経路で循環流通させることが可能な液体循環路と、この液体循環路に設けられ、かつ前記バーナの駆動燃焼により発生した燃焼ガスを利用して前記液体を加熱可能な第1の熱交換器と、入水管および出湯管が接続され、かつ外部から前記入水管を介して送り込まれた湯水を、前記液体の熱を利用して加熱し、前記出湯管から外部に出湯させることが可能な第2の熱交換器と、を備えている。
【0028】
このような構成によれば、燃焼装置および第1の熱交換器を利用して、液体循環路中の液体を加熱することが可能である。このため、外部から入水管を介して第2の熱交換器に送り込まれた湯水を、前記液体を利用して加熱してから出湯管を介して外部に出湯させることが可能である。また、このような効果に加え、次のような効果がさらに得られる。
すなわち、燃焼装置は、バーナを利用した燃料ガスの燃焼を消火する場合、この消火は瞬時には完了されず、主炎孔での燃焼が終了した後に所定時間が経過してから保炎孔での燃焼が終了する。このため、前記構成とは異なり、燃焼装置によって発生された燃焼ガスが第1の熱交換器に作用するだけの構成にしたのでは、第1の熱交換器内に存在する液体が燃焼の消火が開始された後においても継続して加熱される結果、沸騰する虞が生じる。これに対し、前記構成によれば、燃焼装置を消火させる場合に、ポンプを利用して前記液体が液体循環路を循環流通する状態を継続させておくことにより、前記液体が沸騰する虞をなくすことが可能である。
【0029】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る燃焼装置の一例を示す要部概略断面図である。
【
図2】
図1に示す燃焼装置の複数のバーナを収容するバーナケースの概略斜視図である。
【
図4】
図1に示す燃焼装置で用いられているバーナの斜視図である。
【
図5】(a)は、
図4に示すバーナの一部破断側面図であり、(b)は、(a)の要部拡大断面図である。
【
図6】
図1に示す燃焼装置において実行される動作処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】(a)~(c)は、
図6に示すフローチャートで示された動作処理手順の一部を示すタイムチャートである。
【
図8】本発明に係る燃焼装置の他の例を示す要部概略断面図である。
【
図9】(a)~(c)は、
図8に示す燃焼装置において実行される動作処理手順の一部を示すタイムチャートである。
【
図10】本発明に係る温水装置の一例を示す概略説明図である。
【
図11】本発明に係る温水装置の他の例を示す概略説明図である。
【
図12】燃焼装置で用いられる複数種類の燃料ガスについての空気過剰率と燃焼速度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0032】
図1に示す燃焼装置Cは、後述する温水装置WH,WHaの構成要素として用いられるものであり、バーナケース1、このバーナケース1の内部に収容された複数のバーナ2、ファン3、複数のバーナ2に燃料ガスを供給する燃料ガス供給ヘッド4、および制御部5を備えている。
【0033】
バーナケース1は、たとえば上面部が開口した略直方体のケースである。複数のバーナ2は、
図2および
図3に示すように、バーナケース1内に並べられて収容されている。
図1に示すように、バーナケース1の上側には、熱交換器6が載設されているが、この熱交換器6は、複数のバーナ2により発生された燃焼ガスから熱回収を行なって湯水を加熱するためのものである。
【0034】
各バーナ2は、金属製であって、全体が扁平状であり、長手方向一端部の側部には、主炎用および保炎用の燃料ガス導入口20a,20bが設けられている(
図4も参照)。各バーナ2の上面部には、燃料ガスを燃焼させるための複数の炎孔が開口している。これら複数の炎孔としては、
図5によく表れているように、各バーナ2の短手方向の中央部に位置する保炎孔21b、その両外側に隣接する一対の主炎孔21a、およびさらにそれらの両外側に隣接する一対の保炎孔21b’がある。
【0035】
各バーナ2は、いわゆる濃淡バーナであり、燃料ガス供給ヘッド4からは燃料ガスとして水素が供給される。主炎孔21aは、空気比が1よりも大きい淡混合気が燃焼し、主炎として、淡炎が発生する部位である。保炎孔21b,21b’は、空気比が1よりも小さい濃混合気が燃焼し、保炎として、濃炎が発生する部位である。保炎は、主炎を安定させる役割を果たす。バーナ2の上側には、点火プラグ90および炎検知用センサ91が設けられている。
【0036】
燃料ガス供給ヘッド4は、各バーナ2の主炎用および保炎用の燃料ガス導入口20a,20bに、燃料ガスとしての水素を噴出する複数のガス噴出ノズル40a,40bを備えている。一方、ファン3は、バーナケース1に取付けられ、このバーナケース1内に燃焼用の空気を供給可能である。ガス噴出ノズル40a,40bから燃料ガス導入口20a,20bに燃料ガスが噴出される際には、この燃料ガスとともに、1次空気が燃料ガス導入口20a,20bに導入される。これら燃料ガスと1次空気との混合気は、バーナ2内に形成されている内部ガス流路22a,22bを介して主炎孔21aおよび保炎孔21b,21b’に到達するようになっている。ただし、主炎用の燃料ガス導入口20aは、保炎
用の燃料ガス導入口20bよりも開口面積が大きくされており、主炎孔21aに到達する混合気よりも保炎孔21bに到達する混合気の方が、空気過剰率が小さくなるように構成されている。
【0037】
各バーナ2は、複数の通気孔19が設けられた整流板18上に載せられている。ファン3からバーナケース1内に供給された空気のうち、一部の空気は、前記した1次空気として利用されるが、他の一部は、複数の通気孔19を通過してバーナ2の設置箇所に供給され、燃焼用の2次空気として利用される。ただし、ファン3から供給される空気は、後述するように、バーナ2を冷却する役割も果たす。
【0038】
燃料ガス供給ヘッド4は、バーナ2への燃料ガスの供給およびその停止を切り替え可能な主炎用および保炎用の燃料ガス用バルブVa,Vbを備えている。より具体的には、燃料ガス供給ヘッド4には、ガス噴出ノズル40a,40bに連通する燃料ガス流路として、主炎用および保炎用の燃料ガス流路41a,41bが設けられている。燃料ガス用バルブVa,Vbは、たとえば開閉電磁弁であり、燃料ガス流路41a,41bの開口部42a,42bに対向して往復動可能な弁体43a,43bを備えておりこの弁体43a,43bによって開口部42a,42bをそれぞれ個別に開閉自在である。このような構成により、ガス噴出ノズル40a,40bのそれぞれからバーナ2への燃料ガスの供給およびその停止は、個別に切り替え可能である。つまり、バーナ2の主炎孔21aおよび保炎孔21b,21b’への燃料ガスの供給およびその停止は、個別に切り替え可能となっている。ただし、バーナ2の駆動燃焼を開始すべくバーナ2に燃料ガスを供給する場合には、燃料ガス用バルブVa,Vbは閉状態から開状態に同時に切り替わる。
【0039】
制御部5は、マイクロコンピュータを用いて構成されており、燃焼装置Cの後述する各部の動作制御やデータ処理を実行可能である。この燃焼装置Cには、この燃焼装置Cが設置された箇所の気温を検出するための温度センサSaや、ファン3を駆動させるモータMの駆動電流を検出する駆動電流センサSbが具備されており、これらによる検出信号は、制御部5に入力するようになっている。
【0040】
次に、前記した燃焼装置Cの動作制御の一例およびその作用について、
図6に示したフローチャートを参照しつつ説明する。
【0041】
まず、各バーナ2が駆動燃焼している際には、ファン3が運転状態にあり、また主炎用および保炎用の燃料ガス用バルブVa,Vbは、ともに開状態とされ、各バーナ2の主炎孔21aおよび保炎孔21b,21b’において燃料ガスとしての水素が燃焼している状態にある。このような状態において、制御部5が前記燃焼を消火する処理を実行する場合には、まず主炎用の燃料ガス用バルブVaを閉状態に切り替え、主炎孔21aにおける主炎を消す(S1:YES,S2:YES,S3)。
【0042】
また、前記した動作に伴い、制御部5は、所定時間Taのカウント開始を行なう(S4)。所定時間Taは、主炎用の燃料ガス用バルブVaを閉状態に切り替えた時点から、保炎用の燃料ガス用バルブVbを閉状態に切り替えるまでの遅延時間に相当する。この所定時間Taは、一定の時間に固定されていてもよいが、本実施形態においては、可変とされており、制御部5が所定の状況に基づき決定するようになっている(S5)。ただし、この点の詳細については、後述する。
【0043】
主炎用の燃料ガス用バルブVaを閉状態に切り替えた時点から、前記した所定時間Taが経過すると、その時点で制御部5の制御により、保炎用の燃料ガス用バルブVbは閉状態に切り替えられる(S6:YES,S7)。このことにより、各バーナ2は主炎および保炎の双方が消えた状態となるが、前記した所定時間Taにおいては、主炎が消えており
、ファン3から供給される空気を利用してバーナ2を冷却し、バーナ2の温度を低下させることが可能である。バーナ2の冷却は、主炎用の燃料ガス導入口20aからバーナ2内に1次空気が継続して流入している作用、およびバーナ2の外面部に2次空気が接触する作用により得られる。本実施形態においては、所定時間Taが経過して保炎用の燃料ガス用バルブVbを閉状態に切り替える時点で、バーナ2の温度を低下させておくことが可能である。本来的には、主炎よりも保炎の方が消火時に逆火を生じ易いが、本実施形態によれば、保炎の消火時において逆火を生じないようにすることが可能である。
【0044】
前記した消火に伴い、制御部5は、ファン3を増速させる(S8)(
図7も参照)。このことにより、バーナ2内に残留する燃料ガスと空気との混合気を迅速にバーナ2の外部に排出するとともに、燃焼装置C内に存在する燃焼ガスを燃焼装置Cの外部に排出することが可能である。ファン3は、その後に適当な所定時間Tbが経過した時点で停止される。前記構成とは異なり、保炎孔21bが消火される前に、ファン3が増速され、保炎孔21bに多くの空気が供給されると、逆火し易くなるが(
図12を参照して先に説明した理由による)、前記構成によれば、保炎孔21bが消火されてからファン3の増速が図られているため、逆火が発生し易くなることはない。
【0045】
前記した一連の動作手順のうち、ステップS5において、所定時間Taは、次のような複数の条件の全部または一部に合致する時間とされる。
条件1:バーナ2の温度が高い場合には、低い場合よりも長い時間とされる。
条件2:バーナ2の駆動燃焼時間が長い場合には、短い場合よりも長い時間とされる。
条件3:バーナ2の駆動燃焼の出力が低い場合には、高い場合よりも長い時間とされる。条件4:温度センサSaを用いて検出される気温が高い場合には、低い場合よりも長い時間とされる。
条件5:駆動電流センサSbを用いて検出されるファン3のモータMの駆動電流値が所定の閾値を超え、排気閉塞が発生していると判断される場合には、そうでない場合よりも長い時間とされる。
【0046】
所定時間Taは、無段階で変化する値とすることが可能であるが、これに代えて、段階的に変化する値とすることも可能である。所定時間Taを段階的に変化する値とする場合、たとえば長・短の2段階の時間、長・中・短の3段階の時間、あるいはそれ以上の多段階の時間のうち、いずれの時間にするかを制御部5が選択するようにしてもよい。
【0047】
〔前記条件1について〕
前記条件1において、バーナ2の温度が高いか否かは、たとえば温度センサを用いるなどしてバーナ2の温度、またはバーナ2の温度が反映される部位の温度を直接または間接的に計測してもよいが、バーナ2の駆動燃焼の状況から制御部5が判断する構成としてもよい(前記条件2,3は、バーナ2の駆動燃焼の状況からバーナ2の温度が高いか否かを間接的に判断しており、前記条件1の具体的な態様ということができる)。前記条件1によれば、バーナ2の温度が高い場合に、低い場合よりも所定時間Taが長くされため、ファン3からの空気供給によって所定時間Ta内にバーナ2の温度を十分に低下させることが可能となり、逆火を確実に防止する上で一層好ましいものとなる。一方、バーナ2の温度がさほど高くない場合には、所定時間Taは短めの時間とされるため、保炎を消火するまでの所要時間が不必要に長くなることは適切に回避される。
【0048】
〔前記条件2,3について〕
バーナ2の駆動燃焼時間が長いと、バーナ2は高温になり易い。また、バーナ2の駆動燃焼の出力(火力)が低い場合には、火炎がバーナ2の近くに存在するため、この場合においてもバーナ2は高温になり易い。前記条件2,3によれば、前記したようにバーナ2が高温になり易い場合には、そうでない場合よりも所定時間Taは長い時間とされる。条
件1について述べた場合と同様に、バーナ2の冷却を十分に図り、逆火を確実に防止する上で一層好ましく、また保炎を消火するまでの所要時間が不必要に長くなることを適切に回避することが可能である。
【0049】
〔前記条件4について〕
燃焼装置Cの設置箇所の気温が高めであると、ファン3からの空気供給によってバーナ2の温度を迅速に低下させることは困難となり、バーナ2の温度を十分に低下させるには、空気供給の時間を長めにとる必要がある。前記条件4によれば、そのようなことに適切に対応することが可能であり、気温が高めである場合には、バーナ2への空気供給の時間を長くとってバーナ2の温度を十分に低下させ、逆火を確実に防止することができる。一方、気温が低めである場合には、保炎を消火するまでの所要時間が不必要に長くならないようにすることができる。
【0050】
〔前記条件5について〕
排気閉塞が発生した場合には、バーナ2の設置箇所周辺の圧力が上昇するため、いわゆるガスインプットが低下し、火炎の高さが低くなる。その結果、バーナ2の表面温度が高くなり易い。前記条件5によれば、そのような場合には、所定時間Taが長くされ、そうでない場合には所定時間Taは短くされるため、前記した条件1の場合と同様な作用が得られる。
【0051】
なお、排気閉塞が発生した場合には、ファン3のモータMの負荷が増加し、その駆動電流値が上昇する。制御部5は、そのような原理に基づき排気閉塞の有無を判断しており、この制御部5と駆動電流センサSbとの組み合わせは、本発明でいう排気閉塞判断手段の一例に相当する。なお、排気閉塞の有無は、モータMの駆動電流値とは異なるパラメータに基づいて判断することが可能である。たとえば、排気閉塞時には、燃焼装置C内の特定箇所の温度が異常上昇する場合があり、そのような温度検知によって排気閉塞の有無を判断することも可能である。
【0052】
図8は、本発明に係る燃焼装置の他の実施形態を示している。同図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付すこととし、重複説明は省略する。
【0053】
図8に示す燃焼装置Caにおいては、保炎用の燃料ガス導入口20bと、これに対応する燃料ガス噴出ノズル40bとの相互間に、空気が進入可能な隙間が設けられておらず、保炎用の燃料ガス導入口20bには、燃料ガスとしての水素のみが導入され、空気は導入されない構成とされている。したがって、バーナ2の駆動燃焼時には、保炎孔21bにおいて、空気が非混合の水素が拡散燃焼する保炎が形成される。
【0054】
本実施形態の燃焼装置Caにおいても、
図9(a),(b)に示すように、主炎孔21a側の燃料ガス供給を停止させてから所定時間Taが経過した時点で、保炎孔21b,21b’側の燃料ガス供給を停止させる。ただし、
図9(c)に示すように、ファン3の駆動速度は、主炎孔21a側への燃料ガスの供給を停止させた以降であって、保炎孔21b,21b’側への燃料ガス供給を停止させる迄の期間に、増速するように制御される。
【0055】
逆火を防止する上では、バーナ2を少しでも早いタイミングで冷却することが要望されるが、本実施形態によれば、保炎孔21b,21b’側への燃料ガス供給を停止する前に、ファン3を増速させているため、前記要望に的確に対応することができる。また、本実施形態よれば、保炎孔21b,21b’への空気供給はなされないため、保炎孔21b,21b’において保炎が形成されている状態でファン3を増速させても、支障はない。
【0056】
図10および
図11は、前記した燃焼装置C(または燃焼装置Ca)および熱交換器6を利用して構成された給湯装置としての温水装置WH,WHaを示している。
【0057】
図10に示す温水装置WHは、全体の基本構成は、一般のガス給湯器と同様であり、熱交換器6には、内部入水管70および内部出湯管71が接続され、外部から入水口70aに供給された湯水は、内部入水管70を介して熱交換器6に送り込まれ、燃焼装置Cにおいて発生された燃焼ガスにより加熱される。この加熱された湯水は、内部出湯管71を介して出湯口71aに到達し、この出湯口71aから所望の給湯先に供給される。
【0058】
図11に示す温水装置WHaは、ポンプPを利用し、湯水(液体)を熱交換器6(本発明でいう第1の熱交換器に相当)を含む一定の経路で循環流通させることが可能な液体循環路8、および熱交換器9(本発明でいう第2の熱交換器に相当)を備えている。熱交換器9は、内部入水管70および内部出湯管71が接続され、かつ外部から入水口70aに供給された湯水を、液体循環路8の湯水の熱を利用して加熱し、内部出湯管71を介して出湯口71aから外部に出湯させることが可能とされている。内部入水管71には、所定流量以上の入水があったときに、これを検出可能な流量センサScが設けられている。
【0059】
本実施形態の温水装置WHaによれば、
図10に示した温水装置WHと同様な給湯動作が可能であることは勿論のこと、燃焼装置Cの運転を停止させた場合には、温水装置WHとは異なり、熱交換器6内の湯水が沸騰することを適切に防止する機能を備えている。すなわち、燃焼装置Cは、既述したように、消火時においては主炎および保炎が所定時間Taの時間差を経て順次消火される。このため、
図10に示した温水装置WHにおいては、入水口70aへの入水が停止し、バーナ2の駆動燃焼を終了したとしても、所定時間Taの間はバーナ2の駆動燃焼は継続しているため、その期間中は熱交換器6内に静止している湯水は加熱され、沸騰する虞が生じる。
【0060】
これに対し、温水装置WHaにおいては、入水口70aへの入水が停止した場合であっても、ポンプPをその後も継続して運転させておき、バーナ2の駆動燃焼が完全に終了する迄の期間中、液体循環路8の湯水を循環流通させることが可能である。このことにより、熱交換器6内の湯水が沸騰しないようにすることが可能である。
【0061】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る燃焼装置および温水装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0062】
上述の実施形態においては、バーナ2が主炎孔21aおよび保炎孔21b,21b’を有する構成とされているが、主炎孔および保炎孔の具体的な数は限定されず、たとえば1つの主炎孔の両側に一対の保炎孔が設けられただけの構成とすることもできる。
燃料ガスとしては、水素に代えて、水素含有ガスとすることもできる。
【符号の説明】
【0063】
C 燃焼装置
WH,WHa 温水装置
Va,Vb 燃料ガス用バルブ
Sb 駆動電流センサ(排気閉塞判断手段)
2 バーナ
21a 主炎孔
21b,21b’ 保炎孔
3 ファン
4 燃料ガス供給ヘッド
5 制御部(排気閉塞判断手段)
6 熱交換器(第1の熱交換器)
8 液体循環路
9 熱交換器(第2の熱交換器)