(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167317
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】トラックタイヤ若しくはバスタイヤ用ゴム組成物、並びにトラックタイヤ及びバスタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 7/00 20060101AFI20221027BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20221027BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20221027BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221027BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20221027BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/06
C08L9/00
C08K3/04
C08K5/3445
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073045
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 誠一
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA05
3D131AA06
3D131AA10
3D131AA14
3D131AA15
3D131BB03
3D131BB11
3D131BC12
3D131BC13
3D131BC18
3D131BC19
3D131BC31
3D131BC42
3D131BC44
4J002AC011
4J002AC032
4J002AC083
4J002DA036
4J002DE208
4J002EG058
4J002EQ018
4J002EQ028
4J002ER019
4J002ES008
4J002ET019
4J002EU128
4J002EV129
4J002FD328
4J002FD329
4J002GN01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた発泡倍率を有するトラックタイヤ若しくはバスタイヤ用ゴム組成物、並びに、トラックタイヤ若しくはバスタイヤを提供する。
【解決手段】下記成分(a)、(b)、(c)、及び(d)を含む、トラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物。
(a)天然ゴムを含むゴム成分
(b)化学発泡剤
(c)特定のピラゾロン化合物、及び該化合物の塩から選ばれる少なくとも一種の化合物
(d)カーボンブラック
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)、(b)、(c)、及び(d)を含む、トラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物。
(a)天然ゴムを含むゴム成分
(b)化学発泡剤
(c)下記式(1)で表される化合物、及び該化合物の塩から選ばれる少なくとも一種の化合物
(d)カーボンブラック
【化1】
〔式中、R
1は水素原子、アルキル基、又はアラルキル基を示し、R
2、R
3及びR
4は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基をさらに有していてもよい。〕
【請求項2】
成分(a)として、更にブタジエンゴム(BR)及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)からなる群より選択されるゴム成分の少なくとも一種を含む、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記式(1)において、R1、R3及びR4が水素原子であり、R2がメチル基である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
更に成分(e)発泡助剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載のゴム組成物を用いて作製されたトラックタイヤ又はバスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックタイヤ若しくはバスタイヤ用ゴム組成物、並びにトラックタイヤ及びバスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トラックタイヤ及びバスタイヤには、氷上若しくは雪上での走行の制動性能向上が求められている。これらの解決方法として、発泡ゴム組成物を用いる方法がある(特許文献1)。
【0003】
一般的に、発泡ゴム組成物は、ゴム成分に発泡剤を添加させることにより製造することができる。しかし、かかる方法では十分な発泡倍率が得られない。このため、製造効率、又は制動性能等のタイヤの最終物性等の観点から好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような事情に鑑み、本発明の目的とするところは、優れた発泡倍率を有するトラックタイヤ若しくはバスタイヤ用ゴム組成物、並びに、トラックタイヤ及びバスタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、化学発泡剤が含まれている天然ゴムを含むゴム成分にピラゾロン系の化合物を加えることにより、優れた発泡倍率を有するトラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物を得ることができることを見出した。本発明者らは、かかる知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、以下のトラックタイヤ若しくはバスタイヤ用ゴム組成物、並びにトラックタイヤ若しくはバスタイヤを提供する。
項1.
下記成分(a)、(b)、(c)、及び(d)を含む、トラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物。
(a)天然ゴムを含むゴム成分
(b)化学発泡剤
(c)下記式(1)で表される化合物、及び該化合物の塩から選ばれる少なくとも一種の化合物
(d)カーボンブラック
【化1】
〔式中、R
1は水素原子、アルキル基、又はアラルキル基を示し、R
2、R
3及びR
4は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基をさらに有していてもよい。〕
項2.
成分(a)として、更にブタジエンゴム(BR)及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)からなる群より選択されるゴム成分の少なくとも一種を含む、項1に記載のトラック又はバスタイヤ用ゴム組成物。
項3.
前記式(1)において、R
1、R
3及びR
4が水素原子であり、R
2がメチル基である、項1又は2に記載のゴム組成物。
項4.
更に成分(e)発泡助剤を含む、項1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
項5.
項1~4の何れかに記載のゴム組成物を用いて作製されたトラックタイヤ又はバスタイヤ。
【発明の効果】
【0008】
以上にしてなる本発明に係るトラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物は、優れた発泡倍率を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1.トラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物)
本発明のトラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物は、下記成分(a)、(b)、(c)、及び(d)を含む。
(a)天然ゴムを含むゴム成分
(b)化学発泡剤
(c)式(1)で表される化合物、及び該化合物の塩から選ばれる少なくとも一種の化合物
(d)カーボンブラック
【0010】
【化2】
〔式中、R
1は水素原子、アルキル基、又はアラルキル基を示し、R
2、R
3及びR
4は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を示し、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基をさらに有していてもよい。〕
【0011】
本発明のトラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物は、ただ単に成分(a)と(b)と(c)と(d)とを混合しただけのものであってもよいし、成分(a)と(b)と(c)と(d)とを混合後に成分(b)が発泡したものであってもよい。つまり、成分(a)、(b)、(c)、及び(d)を如何なる順序で混合した態様も含まれる。
【0012】
(1.1.成分(a):天然ゴムを含むゴム成分)
成分(a)は、天然ゴムを含むゴム成分である。本発明のトラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物の成分(a)は、天然ゴム単独でもよいし、天然ゴムに加えて、更に他のゴム成分を含んでいてもよく、成分(a)に含まれる天然ゴム量は、成分(a)100質量%中に、1~100質量%とすることが好ましく、40~100質量%とすることがより好ましい。
【0013】
天然ゴムとしては天然ゴムラテックス、技術的格付けゴム(TSR)、スモークドシート(RSS)、ガタパーチャ、杜仲由来天然ゴム、グアユール由来天然ゴム、ロシアンタンポポ由来天然ゴムなどが挙げられ、更にこれら天然ゴムを変性した、エポキシ化天然ゴム、メタクリル酸変性天然ゴム、ハロゲン変性天然ゴム、脱蛋白天然ゴム、マレイン酸変性天然ゴム、スルホン酸変性天然ゴム、スチレン変性天然ゴムなどの変性天然ゴムなどを使用することも好ましい。
【0014】
天然ゴムの二重結合部のシス/トランス/ビニルの比率については、特に制限はなく、いずれの比率においても好適に用いることができる。
【0015】
また、本発明のトラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物は、成分(a)としての天然ゴムに加えて、更に、ブタジエンゴム(BR)及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)からなる群より選択される少なくとも一種のゴム成分を含んでいても良い。成分(a)としては、天然ゴム及びブタジエンゴム(BR)、天然ゴム及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、並びに、天然ゴム、ブタジエンゴム(BR)、及びスチレンーブタジエン共重合体ゴム(SBR)を例示することができる。なお、これらのゴムには、主鎖変性、片末端変性、又は両末端変性などの変性手法による変性ゴムも含まれる。
【0016】
成分(a)が、天然ゴム及びブタジエンゴム(BR)を含む、又は、天然ゴム及びブタジエンゴム(BR)のみからなる場合、天然ゴムとブタジエンゴム(BR)の配合割合は、天然ゴム:ブタジエンゴム(BR)=99:1~1:99が好ましく、80:20~20:80が更に好ましく、60:40~40:60が特に好ましい。
【0017】
成分(a)が、天然ゴム及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を含む、又は、天然ゴム及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)のみからなる場合、天然ゴムとスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)の配合割合は、天然ゴム:スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)=99:1~1:99が好ましく、80:20~20:80が更に好ましく、60:40~40:60が特に好ましい。
【0018】
成分(a)が、天然ゴム、ブタジエンゴム(BR)及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を含む、又は、天然ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)のみからなる場合、天然ゴムとブタジエンゴム(BR)とスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)の配合割合は、天然ゴム:ブタジエンゴム(BR):スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)=98:1:1~1:50:49が好ましく、95:3:2~10:45:45が更に好ましく、90:5:5~50:30:20が特に好ましい。
【0019】
ゴム組成物中の成分(a)、(b)、(c)、及び(d)の合計100質量%中における成分(a)の含有量は、0.01~95質量%とすることが好ましく、0.1~70質量%とすることがより好ましい。成分(a)が0.01質量%以上含まれることにより、ゴム組成物に弾性を付与することができる。一方、ゴム組成物中に含まれる成分(a)を95質量%以下とすることにより、ゴム組成物のコストを低減させ、その結果、経済性を向上させることができる。ここで、好ましい成分(a)は、天然ゴム単独、又は天然ゴム、並びに、ブタジエンゴム(BR)及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)からなる群より選択されるゴム成分である。
【0020】
本発明のトラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物は、上記成分(a)の天然ゴム、ブタジエンゴム(BR)、及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)以外のゴム成分を含んでいても良い。
【0021】
かかるゴム成分としては、特に制限はなく、例えば、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴム、並びにジエン系ゴムと非ジエン系ゴムとの混合物等が挙げられる。
【0022】
ジエン系ゴムとしては、イソプレンゴム(IR)、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム(SIBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン-イソプレン-スチレン三元ブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(SBS)等、及びこれらの変性ジエン系ゴムが挙げられる。
【0023】
変性ジエン系ゴムには、主鎖変性、片末端変性、両末端変性などの変性手法によるジエン系ゴムが包含される。ここで、変性ジエン系ゴムの変性官能基としては、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基などの各種官能基が挙げられ、これら官能基は1種又は2種以上が変性ジエン系ゴムに含まれていてもよい。
【0024】
ジエン系ゴムの製造方法は、特に制限はなく、乳化重合、溶液重合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などが挙げられる。また、合成ジエン系ゴムのガラス転移点も、特に制限はない。
【0025】
非ジエン系ゴムとしては、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)、六フッ化プロピレン-フッ化ビニリデン共重合体(FKM)、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体(FEPM)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロビニルエーテル共重合体(FFKM)、メチルシリコーンゴム(MQ)、ビニル・メチルシリコーンゴム(VMQ)、フェニル・メチルシリコーンゴム(PMQ)、アクリルゴム(ACM)、多硫化ゴム(T)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)等、及びこれらの変性非ジエン系ゴムが挙げられる。中でも、ブチルゴム、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)が好ましい。
【0026】
変性非ジエン系ゴムには、主鎖変性、片末端変性、両末端変性などの変性手法による非ジエン系ゴムが包含される。ここで、変性非ジエン系ゴムの変性官能基としては、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基などの各種官能基が挙げられ、これら官能基は1種又は2種以上が変性合成非ジエン系ゴムに含まれていてもよい。
【0027】
非ジエン系ゴムの製造方法は、特に制限はなく、乳化重合、溶液重合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などが挙げられる。また、合成非ジエン系ゴムのガラス転移点においても、特に制限はない。
【0028】
また、ジエン系ゴムの二重結合部のシス/トランス/ビニルの比率については、特に制限はなく、いずれの比率においても好適に用いることができる。ジエン系ゴムの数平均分子量および分子量分布についても、特に制限はなく、数平均分子量500~3000000、分子量分布1.5~15が好ましい。非ジエン系ゴムとしては、公知のものを広く使用することができる。
【0029】
(1.2.成分(b);化学発泡剤)
化学発泡剤としては、特に限定はなく、公知の化学発泡剤を広く使用することが可能である。例えば、アゾジカルボンアミド、N,N´-ジニトロソペンタンメチレンテトラミン、p,p´-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、パラトルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、ジアゾアミノベンゼン、ヒドラゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート、アゾビスイソブチロニトリル、クエン酸モノナトリウムなど有機酸及びそれらの金属塩等の有機系化学発泡剤及び、重曹、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、酢酸アルミニウム、亜硝酸アンモニウム、ホウ化水素ナトリウム等の無機系化学発泡剤が挙げられる。
【0030】
上記化学発泡剤は、1種単独で、又は2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。
【0031】
上記化学発泡剤の中でも、アゾジカルボンアミド、p,p´-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、又は重曹が好ましい。
【0032】
成分(b)の配合量は、ゴム組成物中の上記成分(a)100質量部に対して、0.1~100質量部とすることが好ましく、0.1~80質量部とすることがより好ましく、0.5~60質量部とすることが更に好ましく、1~50質量部とすることが特に好ましい。ここで、好ましい成分(a)は、天然ゴム単独、又は天然ゴム、並びに、ブタジエンゴム(BR)及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)からなる群より選択されるゴム成分である。
【0033】
ゴム組成物中の成分(a)、(b)、(c)、及び(d)の合計100質量%中における成分(b)の含有量は、0.01~95質量%とすることが好ましく、0.05~90質量%とすることがより好ましく、0.1~50質量%とすることが更に好ましく、0.5~30質量%とすることが特に好ましい。成分(b)が0.01質量%以上含まれることにより、成分(a)の発泡倍率が向上する。一方、ゴム組成物中に含まれる成分(b)を95質量%以下とすることにより、ゴム組成物のコストが抑制され、経済性が向上する。ここで、好ましい成分(a)は、天然ゴム単独、又は天然ゴム、並びに、ブタジエンゴム(BR)及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)からなる群より選択されるゴム成分である。
【0034】
(1.3.成分(c):式(1)で表される化合物、あるいは該化合物の塩)
成分(c)は、下記式(1)で表される化合物もしくはその塩(以下、当該化合物及びその塩を総称して、単に「化合物(1)」ともいう。)である。
【0035】
【化3】
〔式(1)中、R
1は水素原子、アルキル基、又はアラルキル基を示し、R
2、R
3及びR
4は同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。〕
【0036】
化合物(1)における「アルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、更に、1-エチルプロピル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、5-プロピルノニル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等を加えた炭素数5~18の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の炭素数3~8の環状アルキル基等が挙げられる。
【0037】
化合物(1)における「アラルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ベンジル、フェネチル、トリチル、1-ナフチルメチル、2-(1-ナフチル)エチル、2-(2-ナフチル)エチル基等が挙げられる。
【0038】
化合物(1)における「アリール基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ジヒドロインデニル、9H-フルオレニル基等が挙げられる。
【0039】
これらアルキル基、アラルキル基、及びアリール基は、置換可能な任意の位置にそれぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。該「置換基」としては、特に限定はなく、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、ホルミル基、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。該置換基は、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個有していてもよい。
【0040】
化合物(1)における「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びアスタチン原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子である。
【0041】
化合物(1)における「アミノ基」としては、-NH2で表されるアミノ基だけでなく、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n-ブチルアミノ、イソブチルアミノ、s-ブチルアミノ、t-ブチルアミノ、1-エチルプロピルアミノ、n-ペンチルアミノ、ネオペンチルアミノ、n-ヘキシルアミノ、イソヘキシルアミノ、3-メチルペンチルアミノ基等の直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6程度のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジエチルアミノ基等の直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~2程度のアルキル基を2つ有するジアルキルアミノ基等の置換アミノ基も含まれる。
【0042】
化合物(1)における「アミノアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、アミノメチル、メチルアミノメチル、エチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、エチルメチルアミノメチル、ジエチルアミノメチル、2-アミノエチル、2-(メチルアミノ)エチル、2-(エチルアミノ)エチル、2-(ジメチルアミノ)エチル、2-(エチルメチルアミノ)エチル、2-(ジエチルアミノ)エチル、3-アミノプロピル、3-(メチルアミノ)プロピル、3-(エチルアミノ)プロピル、3-(ジメチルアミノ)プロピル、3-(エチルメチルアミノ)プロピル、3-(ジエチルアミノ)プロピル基等の炭素数1~7程度のアミノアルキル基、モノアルキル置換アミノアルキル基又はジアルキル置換アミノアルキル基等が挙げられる。
【0043】
化合物(1)における「アルコキシカルボニル基」としては、特に限定はなく、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0044】
化合物(1)における「アシル基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチル、プロピオニル、ピバロイル基等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキルカルボニル基が挙げられる。
【0045】
化合物(1)における「アシルオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、n-ブチリルオキシ基等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アシルオキシ基等が挙げられる。
【0046】
化合物(1)における「アミド基」としては、特に限定はなく、例えば、アセトアミド、ベンズアミド基等のカルボン酸アミド基;チオアセトアミド、チオベンズアミド基等のチオアミド基;N-メチルアセトアミド、N-ベンジルアセトアミド基等のN-置換アミド基;等が挙げられる。
【0047】
化合物(1)における「カルボキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシ-n-プロピル、カルボキシ-n-ブチル、カルボキシ-n-ペンチル、カルボキシ-n-ヘキシル基等のカルボキシアルキル基が挙げられる。
【0048】
化合物(1)における「ヒドロキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシ-n-プロピル、ヒドロキシ-n-ブチル基等のヒドロキシアルキル基が挙げられる。
【0049】
化合物(1)における「アルコキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ基の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基;シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシ基等の環状アルコキシ基等が挙げられる。
【0050】
化合物(1)における「アリールオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェノキシ、ビフェニルオキシ、ナフトキシ基等が挙げられる。
【0051】
化合物(1)における「アルキルチオ基」としては、特に限定はなく、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、及びn-プロピルチオ基等が挙げられる。
【0052】
化合物(1)における「アリールチオ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ビフェニルチオ基等が挙げられる。
【0053】
式(1)で表される化合物の中でも、R1が水素原子である化合物が好ましい。
【0054】
式(1)で表される化合物の中でも、R2が、水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、又はアラルキル基である化合物が好ましく、水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基である化合物がより好ましく、メチル基である化合物が更に好ましい。
【0055】
式(1)で表される化合物の中でも、R3及びR4の少なくとも一方が水素原子である化合物が好ましく、R3及びR4が共に水素原子である化合物がより好ましい。
【0056】
式(1)で表される化合物の中でも、R1が水素原子であり、R2が水素原子、炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、又はアラルキル基であり、R3及びR4が共に水素原子である化合物が好ましく、R1が水素原子であり、R2が水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基であり、R3及びR4が共に水素原子である化合物が更に好ましく、R1が水素原子であり、R2がメチル基であり、R3及びR4が共に水素原子である化合物が特に好ましい。
【0057】
式(1)で表される化合物としては、例えば、5-ピラゾロン、3-メチル-5-ピラゾロン、3-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-フェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-プロピル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-ウンデシル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-ベンジル-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)オン、及び、5-メチル-2-(4-ニトロフェニル)-1H-ピラゾール-3(2H)-オン、等が挙げられる。
【0058】
中でも、式(1)で表される化合物として好ましい化合物は、5-ピラゾロン、3-メチル-5-ピラゾロン、3-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-フェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、及び3-プロピル-1H-ピラゾール-5(4H)-オンがより好ましく、3-メチル-5-ピラゾロンが特に好ましい。
【0059】
本発明のトラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物における成分(c)としては、上記した化合物を一種のみ単独で含んでもよいし、二種以上を混合して含んでもよい。
【0060】
化合物(1)の中には、互変異性体を生じるものがある。互変異性化が可能である(例えば、溶液中である)場合に、互変異性体の化学平衡に達し得る。化合物(1)は、例えば、式(2)~(7)で表されるような互変異性体として存在することができる。
【0061】
前記式(1)において、R1及びR3が水素原子である化合物(化合物(1)-A)には、以下の式(2)~(4)で表される互変異性体が存在する。
【0062】
【化4】
〔式中、R
2及びR
4は前記に同じである。〕
【0063】
前記式(1)において、R3が水素原子である化合物(化合物(1)-B)には、以下の式(5)~(6)で表される互変異性体が存在する。
【0064】
【化5】
〔式中、R
1、R
2及びR
4は前記に同じである。〕
【0065】
前記式(1)において、R1が水素原子である化合物(化合物(1)-C)には、以下の式(7)で表される互変異性体が存在する。
【0066】
【化6】
〔式中、R
2、R
3及びR
4は前記に同じである。〕
【0067】
上記式(2)~(7)で表される互変異性体と、化合物(1)とは、何れの異性体も共存する平衡状態に達している。よって、別段の記載がない限り、本明細書において、化合物(1)のすべての互変異性体の形態は、本発明の範囲内である。
【0068】
また、式(1)で表される化合物の塩としては、特に限定はなく、あらゆる種類の塩が含まれる。このような塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;ジメチルアンモニウム、及びトリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩等が挙げられる。
【0069】
本発明のトラック・バスタイヤ用ゴム組成物における成分(c)としては、化合物(1)が任意の割合で含まれる混合物を含んでもよい。
【0070】
上記成分(c)の配合量は、ゴム組成物中の上記成分(a)100質量部に対して、0.01~50質量部とすることが好ましく、0.05~40質量部とすることがより好ましく、0.1~30質量部とすることが更に好ましく、0.5~10質量部とすることが特に好ましい。
【0071】
ゴム組成物中の成分(a)、(b)、(c)、及び(d)の合計100質量%中における成分(c)の含有量は、0.01~50質量%であることが好ましく、0.05~30質量%であることがより好ましく、0.1~20質量%であることが更に好ましく、0.2~5質量%であることが特に好ましい。成分(c)が0.01質量%以上含まれることにより、成分(a)の発泡倍率を向上させることができる。一方、ゴム組成物中に含まれる成分(c)が50質量%以下であることにより、ゴム組成物のコストを低減させ、経済性を向上することができる。ここで、好ましい成分(a)は、天然ゴム単独、又は天然ゴム、並びに、ブタジエンゴム(BR)及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)からなる群より選択されるゴム成分である。
【0072】
上記成分(b)と(c)との配合割合は、成分(b)と(c)との合計質量を100質量部としたときの上記成分(c)の割合は、1~80質量部とすることが好ましく、5~75質量部とすることがより好ましく、10~70質量部とすることが更に好ましく、15~65質量部とすることが特に好ましい。
【0073】
(1.4.成分(d):カーボンブラック)
成分(d)は、カーボンブラックである。なお、本明細書においては、無機充填材にカーボンブラックは含まれないものと定義する。
【0074】
カーボンブラックとしては、特に制限はなく、例えば、市販品のカーボンブラック、Carbon-Silica Dual phase filler等が挙げられる。ゴム成分にカーボンブラックを含有することにより、ゴムの電気抵抗を下げて、帯電を抑止する効果、更にゴムの強度を向上させる効果を享受できる。
【0075】
具体的に、カーボンブラックとしては、例えば、高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N110、N134、N220、N234、N330、N339、N375、N550、HAF、FEF、GPF、SRFグレードのカーボンブラック等が挙げられる。中でも、好ましいカーボンブラックは、SAF、ISAF、IISAF、N134、N234、N330、N339、N375、HAF、又はFEFグレードのカーボンブラックである。
【0076】
カーボンブラックのDBP吸収量としては、特に制限はなく、好ましくは60~200cm3/100g、より好ましくは70~180cm3/100g、特に好ましくは80~160cm3/100gである。
【0077】
また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA、JISK6217-2:2001に準拠して測定する)は、好ましくは30~200m2/g、より好ましくは40~180m2/g、特に好ましくは50~160m2/gである。
【0078】
上記成分(d)の配合量は、ゴム組成物中の上記成分(a)100質量部に対して、0.1~95質量部とすることが好ましく、0.5~90質量部とすることがより好ましく、1~85質量部とすることが更に好ましく、2~80質量部とすることが特に好ましい。ここで、好ましい成分(a)は、天然ゴム単独、又は天然ゴム、並びに、ブタジエンゴム(BR)及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)からなる群より選択されるゴム成分である。
【0079】
ゴム組成物中の成分(a)、(b)、(c)、及び(d)の合計100質量%中における成分(d)の含有量は、0.01~95質量%であることが好ましく、0.05~90質量%であることがより好ましく、0.1~85質量%であることが更に好ましく、0.5~80質量%であることが特に好ましい。成分(d)が0.01質量%以上含まれることにより、ゴム組成物に機械物性を付与させることができる。一方、ゴム組成物中に含まれる成分(d)が95質量%以下であることにより、ゴム組成物のコストを低減させ、経済性を向上することができる。ここで、好ましい成分(a)は、天然ゴム単独、又は天然ゴム、並びに、ブタジエンゴム(BR)及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)からなる群より選択されるゴム成分である。
【0080】
また、本発明のゴム組成物においては、上記成分(d)によるゴム組成物の靱性を高める目的、又はゴム組成物の引裂き強度と共に耐摩耗性を高める目的で、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤を配合してもよい。
【0081】
シランカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなシランカップリング剤として、例えばスルフィド系、ポリスルフィド系、チオエステル系、チオール系、オレフィン系、エポキシ系、アミノ系、アルキル系のシランカップリング剤が挙げられる。
【0082】
スルフィド系のシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド等が挙げられる。これらの内、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが特に好ましい。
【0083】
チオエステル系のシランカップリング剤としては、例えば、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0084】
チオール系のシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール等を挙げることができる。
【0085】
オレフィン系のシランカップリング剤としては、例えば、ジメトキシメチルビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-(メトキシジメトキシジメチルシリル)プロピルアクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート等を挙げることができる。
【0086】
エポキシ系のシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、トリエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0087】
アミノ系のシランカップリング剤としては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-エトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0088】
アルキル系のシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、メチルトリエトキシシランが好ましい。
【0089】
これらシランカップリング剤の中でも、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを特に好ましく使用することができる。
【0090】
チタネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなチタネートカップリング剤として、例えばアルコキシド系、キレート系、アシレート系のチタネートカップリング剤が挙げられる。
【0091】
アルコキシド系のチタネートカップリング剤としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラステアリルチタネート等を挙げることができる。これらの内、テトライソプロピルチタネートが好ましい。
【0092】
キレート系のチタネートカップリング剤としては、例えば、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、ドデシルベンゼンスルホン酸チタン化合物、リン酸チタン化合物、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンエタノールアミネート、チタンオクチレングリコレート、チタンアミノエチルアミノエタノレート等を挙げることができる。これらの内、チタンアセチルアセトネートが好ましい。
【0093】
アシレート系のチタネートカップリング剤としては、例えば、チタンイソステアレート等を挙げることができる。
【0094】
アルミネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなアルミネートカップリング剤として、9-オクタデセニルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブトキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート等が挙げることができる。これらの内、9-オクタデセニルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートが好ましい。
【0095】
ジルコネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなジルコネートカップリング剤として、例えばアルコキシド系、キレート系、アシレート系のジルコネートカップリング剤が挙げられる。
【0096】
アルコキシド系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート等を挙げることができる。この内、ノルマルブチルジルコネートが好ましい。
【0097】
キレート系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩等を挙げることができる。この内、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートが好ましい。
【0098】
アシレート系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム等を挙げることができる。この内、ステアリン酸ジルコニウムが好ましい。
【0099】
本発明においては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
本発明のゴム組成物におけるカップリング剤の配合量は、上記成分(d)100質量部に対して、0.1~20質量部とすることが好ましく、3~15質量部とすることがより好ましい。0.1質量部以上であれば、ゴム組成物の引裂き強度向上の効果をより好適に発現することができ、20質量部以下であれば、ゴム組成物のコストが低減し、経済性が向上する。
【0101】
(1.5.成分(e):発泡助剤)
本発明のトラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物は、さらに成分(e)として発泡助剤を含むことも好ましい。かかる発泡助剤としては、特に限定されず、従来から発泡助剤として汎用されているものを使用することができる。例えば、尿素化合物、亜鉛化合物、鉛化合物等が挙げられ、これらの中でも、尿素化合物が好ましい。
【0102】
尿素化合物としては、尿素、尿素と脂肪酸及び脂肪酸金属塩との混合物、チオウレア、テトラメチルウレア、ジメチルチオウレア、セミカルバジド、カルボヒドラジド等が挙げられ、中でも、尿素、チオウレアが好ましい。
【0103】
亜鉛化合物としては、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛、トルエンスルホン酸亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、炭酸亜鉛等が挙げられ、中でも、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛が好ましい。
【0104】
鉛化合物としては、二酸化鉛、三塩基性鉛等が挙げられる。
【0105】
上記尿素化合物は、上記成分(b)としてのアゾジカルボンアミド、N,N´-ジニトロソペンタンメチレンテトラミン、p,p´-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、パラトルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、ヒドラゾジカルボンアミドと併用することが好ましく、これらの中でも、アゾジカルボンアミドとの併用することが特に好ましい。
【0106】
また、本発明のゴム組成物は、尿素化合物100質量部に対して、上記成分(b)を1~1000質量部含有することが好ましい。
【0107】
上記亜鉛化合物は、上記成分(b)としてのアゾジカルボンアミド、N,N´-ジニトロソペンタンメチレンテトラミン、p,p´-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、パラトルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、ヒドラゾジカルボンアミドと併用することが好ましい。
【0108】
また、亜鉛化合物100質量部に対して、上記成分(b)を1~1000質量部とすることが好ましい。
【0109】
上記鉛化合物は上記成分(b)としてのアゾジカルボンアミド、N,N´-ジニトロソペンタンメチレンテトラミン、p,p´-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、パラトルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、ヒドラゾジカルボンアミドと併用することが好ましい。
【0110】
また、鉛化合物100質量部に対して、上記成分(b)を1~1000質量部とすることが好ましい。
【0111】
成分(e)の配合量は、ゴム組成物中の上記成分(a)100質量部に対して、0.01~90質量部とすることが好ましく、0.05~85質量部とすることがより好ましく、0.1~80質量部とすることが更に好ましく、0.5~50質量部とすることが特に好ましい。ここで、好ましい成分(a)は、天然ゴム単独、又は天然ゴム、並びに、ブタジエンゴム(BR)及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)からなる群より選択されるゴム成分である。
【0112】
ゴム組成物中の成分(a)、(b)、(c)、(d)、及び(e)の合計100質量%中における成分(e)の含有量は、0.01~95質量%とすることが好ましく、0.05~90質量%とすることがより好ましく、0.1~50質量%とすることが更に好ましい。成分(e)が0.01質量%以上含まれることにより、成分(a)の発泡倍率を向上させることができる。一方、ゴム組成物中に含まれる成分(e)を95質量%以下とすることにより、ゴム組成物のコストを低減させ、経済性を向上することができる。ここで、好ましい成分(a)は、天然ゴム単独、又は天然ゴム、並びに、ブタジエンゴム(BR)及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)からなる群より選択されるゴム成分である。
【0113】
(1.6.その他配合剤)
本発明のトラック・バスタイヤ用ゴム組成物には、上記成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)以外にも、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、無機充填剤、老化防止剤、オゾン防止剤、軟化剤、加工助剤、ワックス、樹脂、オイル、ステアリン酸等の炭素数8~30の脂肪酸、酸化亜鉛(ZnO)、加硫促進剤、加硫遅延剤、加硫剤(硫黄)等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0114】
無機充填材としては、ゴム工業界において、通常使用される無機化合物であれば、特に制限はない。使用できる無機化合物としては、例えば、シリカ;γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al2O3);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al2O3・H2O);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3];炭酸アルミニウム[Al2(CO3)3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al2O3)、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が挙げられる。これらの無機充填材は、ゴム成分との親和性を向上させるために、該無機充填材の表面が有機処理されていてもよい。
【0115】
無機充填材としては、ゴム強度を付与する観点からシリカが好ましく、より好ましくはシリカ単独で、又はシリカとゴム工業界で通常使用される無機化合物の1種以上とを併用することができる。無機充填材として、シリカ及びシリカ以外の上記無機化合物を併用する場合には、無機充填材の全成分の合計量が上記範囲となるように適宜調整すればよい。
シリカは、ゴム強度を付与することができるため添加することが好ましい。
【0116】
シリカとしては、市販のあらゆるものが使用できる。中でも、好ましいシリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ、又はコロイダルシリカであり、より好ましくは湿式シリカである。これらのシリカは、ゴム成分との親和性を向上させるために、シリカの表面が有機処理されていてもよい。
【0117】
シリカのBET比表面積としては、特に制限はなく、例えば、40~350m2/gの範囲が挙げられる。BET比表面積がこの範囲であるシリカは、ゴム靱性及びゴム成分中への分散性を両立できるという利点がある。該BET比表面積は、ISO5794/1に準拠して測定される。
【0118】
この観点から、好ましいシリカとしては、BET比表面積が80~300m2/gの範囲にあるシリカであり、より好ましくは、BET比表面積100~270m2/gであるシリカであり、特に好ましくは、BET比表面積110~270m2/gの範囲にあるシリカである。
【0119】
かかるシリカの市販品としては、Quechen Silicon ChemicalCo.,Ltd.製の商品名「HD165MP」(BET比表面積=165m2/g)、「HD115MP」(BET比表面積=115m2/g)、「HD200MP」(BET比表面積=200m2/g)、「HD250MP」(BET比表面積=250m2/g)、東ソー・シリカ株式会社製の商品名「ニップシールAQ」(BET比表面積=205m2/g)、「ニップシールKQ」(BET比表面積=240m2/g)、デグッサ社製の商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積=175m2/g)等が挙げられる。
【0120】
本発明のトラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物に無機充填材を配合する場合、無機充填材の配合量は、特に限定はなく、例えば、上記成分(a)100質量部に対して、通常0.01~95質量部であり、好ましくは0.05~90質量部であり、より好ましくは0.1~80質量部である。
【0121】
また、無機充填材が配合されたゴム組成物においては、シリカによるゴム組成物の靱性を高める目的、又はゴム組成物の引裂き強度と共に耐摩耗性を高める目的で、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤を配合してもよい。これらカップリング剤は、上記項目(1.4.成分(d):カーボンブラック)で述べたものと同じものを使用することができる。
【0122】
本発明のトラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物のシランカップリング剤の配合量は、無機充填材100質量部に対して、0.1~20質量部とすることが好ましく、3~15質量部とすることがより好ましい。0.1質量部以上であれば、ゴム組成物の引裂き強度向上の効果をより好適に発現することができ、20質量部以下であれば、ゴム組成物のコストが低減し、経済性が向上する。
【0123】
(2.トラックタイヤ及びバスタイヤ)
さらに本発明は、上記のトラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物より製造されたトラックタイヤ又はバスタイヤに係る発明を包含する。
【0124】
本発明のトラックタイヤ及びバスタイヤは、発泡倍率の高いゴム組成物から製造されるタイヤであるから、粉砕現場等の過酷な現場でも使用ができるような耐久性能(耐摩耗性、耐チッピング性、耐屈曲亀裂成長性、耐亀裂進展性、耐破壊性、耐偏摩耗性、耐一発カット性、耐クラック性、耐ゴム欠け(フィン折れ)、破断強度性向上、破断伸び性向上、引き裂き強度性向上等)、優れた制動性能(ドライ制動性能、ウェットグリップ性能、雪氷上制動性能等)、乗り心地性能、コーナリング性能、走行時の騒音低減化、タイヤの外観保持性能、タイヤの軽量化等が求められるトラックタイヤやバスタイヤとして有効に適用できる。
【0125】
本発明のトラックタイヤ又はバスタイヤの形状、構造、大きさ及び材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0126】
本発明のトラックタイヤ又はバスタイヤにおいて、上記ゴム組成物は、特にトレッド部、サイドウォール部、ビードエリア部、ベルト部、カーカス部及びショルダー部から選ばれる少なくとも一つの部材に用いられる。
【0127】
中でも、トラックタイヤ又はバスタイヤのタイヤトレッド部を当該ゴム組成物で形成するのが好ましい。
【0128】
トレッド部とは、トレッドパターンを有し、路面と直接接する部分で、カーカスを保護するとともに摩耗及び外傷を防ぐタイヤの外皮部分であり、タイヤの接地部を構成するキャップトレッド及び/又はキャップトレッドの内側に配設されるベーストレッドをいう。
【0129】
サイドウォール部とは、例えば、空気入りラジアルタイヤにおけるショルダー部の下側からビード部に至るまでの部分であり、カーカスを保護するとともに、走行する際に最も屈曲の激しい部分である。
【0130】
ビードエリア部とは、カーカスコードの両端を固定し、同時にタイヤをリムに固定させる役目を負っている部分である。ビードとは高炭素鋼を束ねた構造である。
【0131】
ベルト部とは、ラジアル構造のトレッドとカーカスとの間に円周方向に張られた補強帯である。カーカスを桶のたがの様に強く締付けトレッドの剛性を高めている。
【0132】
カーカス部とは、タイヤの骨格を形成するコード層の部分であり、タイヤの受ける荷重、衝撃、及び充填空気圧に耐える役割を果たしている。
【0133】
ショルダー部とは、タイヤの肩の部分で、カーカスを保護する役目を果たす。
【0134】
本発明のトラックタイヤ又はバスタイヤは、タイヤの分野において、これまでに知られている方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気;窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0135】
(3.トラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物の製造方法)
本発明のトラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物の製造方法としては、上記成分(a)、(b)、(c)、及び(d)を混合すればよく、必要に応じて加硫剤、及びその他配合剤を混合すればよい。配合する順序は適宜設定されれば良い。例えば、上記成分(a)、(b)、(c)、及び(d)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物及び加硫剤を混合する工程(B)を含む方法、上記成分(a)、(b)、及び(c)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、成分(d)及び加硫剤を混合する工程(B)を含む方法、上記成分(a)、(b)、及び(d)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、成分(c)及び加硫剤を混合する工程(B)を含む方法、上記成分(a)、(c)、及び(d)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、成分(b)及び加硫剤を混合する工程(B)を含む方法、上記成分(a)、及び(b)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、成分(c)及び(d)及び加硫剤を混合する工程(B)を含む方法、上記成分(a)、及び(c)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、成分(b)及び(d)及び加硫剤を混合する工程(B)を含む方法、上記成分(a)、及び(d)を含む原料成分を混合する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、成分(b)及び(c)及び加硫剤を混合する工程(B)を含む方法等が挙げられる。その中でも好ましい製造方法としては、上記成分(a)、(c)及び(d)を含む原料成分を混練する工程(A)、並びに、工程(A)で得られる混合物、成分(b)、及び加硫剤を混合する工程(B)を含む方法である。
【0136】
(3.1.工程(A))
工程(A)は、上記成分(a)、(c)及び(d)を含む原料成分を混合する工程である。
【0137】
工程(A)では、更に必要に応じて、上記のその他の配合剤等を配合することができる。本明細書において、「混合」には、単に混ぜ合わせるという態様のみならず、いわゆる「混練」という態様も含まれるものとする。
【0138】
工程(A)においては、上記成分(a)、(c)及び(d)を含む原料成分を混合する。この混合方法においては、各成分の全量を一度に混合してもよく、粘度調整等の目的に応じて、各成分を分割投入して混合してもよい。各成分を均一に分散させるために、混合操作を繰り返し行ってもよい。また、充填剤を予め湿式方法および又は乾式混合方法によりゴムに添加した充填剤マスターバッチゴムを使用しても良い。
【0139】
また、本発明のトラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物に、成分(d)単体、又は成分(d)及び無機充填剤を添加し、混合する場合における、工程(A)における別の混合方法としては、上記成分(a)及び(c)を混合する工程(A-1)、並びに工程(A-1)で得られた混合物と上記成分(d)と無機充填材とを含む原料成分とを混合する工程(A-2)を含む二段階の混合方法を挙げることができる
【0140】
工程(A)におけるゴム組成物を混合する際の温度としては、特に制限はなく、例えば、ゴム組成物の温度の上限が100~190℃であることが好ましく、110~175℃であることがより好ましく、120~170℃であることが更に好ましい。
【0141】
工程(A)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、1分間から8分間であることが更に好ましい。
【0142】
工程(A-1)における上記成分(a)及び(c)を混合する際の温度としては、60~190℃であることが好ましく、70~160℃であることがより好ましく、80~150℃であることが更に好ましい。該混合温度が60℃より低いと反応が進行せず、また、190℃以上になると、ゴムの劣化が進行するためである。
【0143】
工程(A-1)における混合時間としては、10秒間~20分間が望ましく、30秒間~10分間であることがより好ましく、60秒間~7分間であることがさらに好ましい。該混合時間を10秒以上とすることにより反応を充分に進行させることが可能である。一方、混合時間を20分間以内とすることにより、生産性の面で優れる。
【0144】
工程(A-2)における工程(A-1)で得られた混合物と上記成分(d)と無機充填材とを混合する際の温度としては、特に制限はなく、例えば、混合物の温度の上限が100~190℃であることが好ましく、110~175℃であることがより好ましく、130~170℃であることが更に好ましい。
【0145】
工程(A-2)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、1分間から8分間であることが更に好ましい。
【0146】
(3.2.工程(B))
工程(B)は、工程(A)で得られる混合物、上記成分(b)、及び加硫剤を混合する工程である。
【0147】
工程(B)では、さらに必要に応じて、加硫促進剤等を配合することができる。
【0148】
工程(B)は、加熱条件下で行うことができる。該工程の加熱温度としては、特に制限はなく、例えば、60~140℃であることが好ましく、80~120℃であることがより好ましく、90~120℃であることが更に好ましい。
【0149】
混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、60秒間から5分間であることが更に好ましい。
【0150】
工程(A)から工程(B)に進む際には、前段階の工程終了後の温度より、30℃以上低下させてから次の工程(B)へ進むことが好ましい。
【0151】
工程(A)においては、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機等を用いて混合される。その後、押出工程において押出して加工され、例えば、トレッド用部材、又はサイドウォール用部材として成形される。続いて、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
【0152】
本発明のトラック・バスタイヤ用ゴム組成物の製造方法において、通常、ゴム組成物に配合されるステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤等の各種配合剤を、必要に応じて、工程(A)又は工程(B)において添加することができる。
【0153】
上記した配合剤は、工程(A)又は工程(B)のどちらか一方で添加してもよいし、あるいは工程(A)及び工程(B)に分けて添加してもよい。
【0154】
(3.3.トラック・バスタイヤ用ゴム組成物の成形方法)
本発明のトラック・バスタイヤ用ゴム組成物は、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機等を用いて混合される。その後、押出工程において押出して加工され、例えば、トレッド用部材、又はサイドウォール用部材として成形される。続いて、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤを得ることができる。
【0155】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例0156】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0157】
実施例1~6、及び比較例1~2:トラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物の製造
下記表1の工程(A)に記載の各成分をその割合(質量部)で混合し、バンバリーミキサーで混合した。混合物の温度が60℃以下になるまで養生させた後、表1の工程(B)に記載の各成分をその割合(質量部)で投入し、混合物の最高温度が70℃以下になるよう調整しながら混合して、トラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物を製造した。
【0158】
実施例1~6及び比較例1~2:発泡倍率指数
発泡倍率は電子比重計(ALFA MIRAGE製MDS-300)を用いて発泡成形前後の比重を測定し、発泡倍率を算出した。比較するために、成分(c)を添加しない以外は、各実施例と同じ配合内容及び同じ製法でゴム組成物(比較例1及び2)を作製し、その発泡倍率をそれぞれ100とした指数により表し、下記式に基づいて発泡倍率指数を算出した。なお、発泡倍率指数の値が大きい程、発泡倍率が大きく、発泡体として優れている。
式:発泡倍率
=発泡成形前の比重/発泡成形後の比重×100
式:発泡倍率指数
=(各実施例1~4の発泡倍率)×100/(比較例1の発泡倍率)
式:発泡倍率指数
=(実施例5~6の発泡倍率)×100/(比較例2の発泡倍率)
【0159】
【表1】
尚、表1における各成分の詳細は、下記の通りである。
※1:成分(a):天然ゴム;GUANGKEN RUBBER社製 、TSR-20
※2:成分(a):ブタジエンゴム;宇部興産社製、UBEPOL 150B
※3:成分(d):カーボンブラック;東海カーボン社製、シースト7HM(N234)
※4:老化防止剤;大内新興化学社製、ノクラック6C
※5:ワックス;大内新興化学社製、サンノック
※6:オイル;出光昭和シェル社製、ダイアナプロセスオイルNR-26
※7:ステアリン酸;新日本理化社製、ステアリン酸50S
※8:酸化亜鉛;堺化学工業社製、「1種」
※9:成分(c):化合物A;大塚化学社製、3-メチル-5-ピラゾロン
※10:加硫促進剤A;大内新興化学社製、ノクセラーM-P
※11:加硫促進剤B;大内新興化学社製、ノクセラーCZ-G
※12:硫黄;細井化学工業社製、HK200-5
※13:成分(e):発泡助剤;大塚化学社製、ユニフォームAZ 01
※14:成分(b):発泡剤A;大塚化学社製、ユニフォームAZ VI-40(アゾジカルボンアミド)
【0160】
実施例7~15、及び比較例3~5:トラック・バスタイヤ用ゴム組成物の製造
下記表2の工程(A)に記載の各成分をその割合(質量部)で混合し、バンバリーミキサーで混合した。混合物の温度が60℃以下になるまで養生させた後、表2の工程(B)に記載の各成分をその割合(質量部)で投入し、混合物の最高温度が70℃以下になるよう調整しながら混合して、トラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物を製造した。
【0161】
実施例7~15及び比較例3~5:発泡倍率指数
発泡倍率は電子比重計(ALFA MIRAGE製MDS-300)を用いて発泡成形前後の比重を測定し、発泡倍率を算出した。比較するために、成分(c)を添加しない以外は、各実施例と同じ配合内容及び同じ製法でトラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物(比較例3~5)を作製し、その発泡倍率をそれぞれ100とした指数により表し、下記式に基づいて発泡倍率指数を算出した。なお、発泡倍率指数の値が大きい程、発泡倍率が大きく、発泡体として優れている。
式:発泡倍率
=発泡成形前の比重/発泡成形後の比重×100
式:発泡倍率指数
=(各実施例7~9の発泡倍率)×100/(比較例3の発泡倍率)
式:発泡倍率指数
=(各実施例10~12の発泡倍率)×100/(比較例4の発泡倍率)
式:発泡倍率指数
=(各実施例13~15の発泡倍率)×100/(比較例5の発泡倍率)
【0162】
【表2】
尚、表2における各成分の詳細は、下記の通りである。
※15:成分(a):スチレン-ブタジエン共重合体ゴム;JSR社製、JSR1502
※16:成分(b):発泡剤B;大塚化学社製、ユニフォームAZ P-5(重曹)
本発明のトラックタイヤ又はバスタイヤ用ゴム組成物は、天然ゴムを含むゴム成分、化学発泡剤、上記した式(1)で表される化合物又はその塩、及びカーボンブラックを含むことにより、優れた発泡倍率を有するトラックタイヤ又はバスタイヤを提供することができる。
本発明の組成物は、発泡倍率の高いゴム組成物であるから、粉砕現場等の過酷な現場でも使用ができるような耐久性能(耐摩耗性、耐チッピング性、耐屈曲亀裂成長性、耐亀裂進展性、耐破壊性、耐偏摩耗性、耐一発カット性、耐クラック性、耐ゴム欠け(フィン折れ)、破断強度性向上、破断伸び性向上、引き裂き強度性向上等)、優れた制動性能(ドライ制動性能、ウェットグリップ性能、雪氷上制動性能等)、乗り心地性能、コーナリング性能、走行時の騒音低減化、タイヤの外観保持性能、タイヤの軽量化等が求められるトラックタイヤやバスタイヤとして有効に適用できる。