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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167332
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2334 20110101AFI20221027BHJP
【FI】
B60R21/2334
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073069
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】松崎 尚生
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA13
3D054BB01
3D054CC04
3D054CC06
3D054CC11
3D054CC15
3D054EE19
(57)【要約】
【課題】乗員の状況や体格に応じて乗員を適切に保護するエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】エアバッグ装置1は、折り畳まれた状態からガスの流入により膨張して車両の乗員を保護するエアバッグ本体部10を備える。エアバッグ本体部10は、乗員の座席の設置側に向かう下側に、上側の主膨張部10aよりも膨張量が小さく、乗員の状態に応じて展開形状が変化する形状可変領域30を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれた状態からガスの流入により膨張して車両の乗員を保護するエアバッグ本体部を備え、
前記エアバッグ本体部は、前記乗員の座席の設置側に向かう下側に、上側の主膨張部よりも膨張量が小さく、前記乗員の状態に応じて展開形状が変化する形状可変領域を有する、エアバッグ装置。
【請求項2】
前記形状可変領域は、前記主膨張部と内部空間が連続し、前記主膨張部から前記座席の設置側に向かって延びる一対の棒状膨張部を含み、
一対の前記棒状膨張部は、前記エアバッグ本体部の展開時には、互いに対向する間の空間に折り込まれる形状に膨張する、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグ本体部は、
一方の前記棒状膨張部の先端に一端が接続され、他方の前記棒状膨張部の先端に他端が接続される連結材と、
一対の前記棒状膨張部が互いに対向する間の前記空間に面する前記主膨張部の一部に設けられ、前記連結材を挿通させる挿通穴を有する挿通保持部と、を有し、
一対の前記棒状膨張部は、前記エアバッグ本体部の展開時には、前記挿通穴を挿通した前記連結材が挿通方向に引かれることで、互いに対向する間の前記空間に折り込まれる、請求項2に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に設けられ、車両が衝突した際の衝撃から乗員を保護するエアバッグ装置がある。特許文献1は、自動車のハンドルに設置され、エアバッグ本体部の一部に自動車の床に向かうくぼみが設けられているエアバッグ装置に関する技術を開示している。このエアバッグ装置によれば、エアバッグ本体部の展開時に、エアバッグ本体部のくぼみに乗員の腹部が位置するので、特に腹部への負荷が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2013-529577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のエアバッグ装置では、エアバッグ本体部の展開形状が一定であるため、特定の条件下では、乗員の胸部への負荷を低減させることができる。しかしながら、それとは異なる条件下、例えば、乗員の状況や体格等の状態が変化した条件下では、負荷低減をより必要とする場合、又は、負荷低減を必要としない場合に、適切に対処することが求められている。
【0005】
そこで、本開示は、乗員の状況や体格に応じて乗員を適切に保護するエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエアバッグ装置は、折り畳まれた状態からガスの流入により膨張して車両の乗員を保護するエアバッグ本体部を備え、エアバッグ本体部は、乗員の座席の設置側に向かう下側に、上側の主膨張部よりも膨張量が小さく、乗員の状態に応じて展開形状が変化する形状可変領域を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、乗員の状況や体格に応じて乗員を適切に保護するエアバッグ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態におけるエアバッグ本体部の乗員側斜視図である。
図2】一実施形態におけるエアバッグ本体部の車体側斜視図である。
図3】一実施形態におけるエアバッグ本体部の装着前形状を示す斜視図である。
図4】一実施形態に係るエアバッグ装置の断面図である。
図5】一実施形態に係るエアバッグ装置の動作を説明する図である。
図6】ダミーの胸部への負荷を解析した結果を示すグラフである。
図7】ダミーの胸部への負荷を解析した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略し、本開示に直接関係のない要素については、図示を省略する。
【0010】
図1は、一実施形態に係るエアバッグ装置1(図4参照)に備えられるエアバッグ本体部10の乗員側斜視図である。図2は、エアバッグ本体部10の車体側斜視図である。ここで、以下の各図では、XYZの各方向を参照のために例示する。X方向は、エアバッグ装置1が採用される自動車等の車両の直進方向に概ね沿っている。Y方向は、XZ平面に対して垂直な方向であり、車幅方向に概ね沿っている。Z方向は、XY平面、すなわち、乗員の座席100(図5参照)が設置される床面に対して概ね垂直な方向である。
【0011】
エアバッグ本体部10は、通常時には、例えば自動車のステアリングホイール等に折り畳まれた状態で収納されている。そして、車両が衝突した際には、エアバッグ本体部10がガスの流入により膨張して展開することで、衝突の衝撃から乗員を保護する。なお、図1及び図2では、展開時のエアバッグ本体部10の状態が示されている。以下、本実施形態では、エアバッグ装置1は、自動車のステアリングホイール101(図5(b)参照)に設置される運転席用であるものとして説明する。つまり、保護対象は、運転席に座している乗員である。この場合、図1は、運転席に座している乗員側から見た図に相当する。一方、図2は、ステアリングホイール101側から見た図に相当する。
【0012】
図3は、エアバッグ本体部10の装着前形状を示す斜視図である。図3では、参考として、内部空間にガスが注入されて膨張した、エアバッグ本体部10の装着前の展開形状が示されている。図4は、図1のIV-IV断面に対応し、Y方向の中心位置を通るXZ平面で切断したエアバッグ装置1の断面図である。
【0013】
エアバッグ装置1は、エアバッグ本体部10と、インフレータ11と、リテーナ12と、バッグプレート13とを備える。
【0014】
エアバッグ本体部10は、単数又は複数の基布により形成される袋体である。本実施形態では、エアバッグ本体部10は、二枚の基布、すなわち、乗員側の基布である第1パネル20と、車体側の基布である第2パネル21とが、縫製、接着又は溶着などにより組み合わせて接合されることで、全体として袋状に形成される。第2パネル21は、インフレータ11を取り付ける取付口22と、膨張後のエアバッグ本体部10の内部空間から外部にガスを排出させる排出口23との二種の貫通穴を有する。排出口23のような貫通穴は、ベントホールと呼ばれることもある。
【0015】
まず、図3に示すエアバッグ本体部10の装着前形状を参照すると、エアバッグ本体部10は、主膨張部10aと、一対の棒状膨張部である第1棒状膨張部10b及び第2棒状膨張部10cとを含む。
【0016】
主膨張部10aは、エアバッグ本体部10のZ方向の上側に位置する膨張領域である。エアバッグ本体部10の展開時に主膨張部10aが拘束する乗員の身体部位としては、頭部、肩部、又は、胸部の一部等が想定される。
【0017】
第1棒状膨張部10b及び第2棒状膨張部10cは、エアバッグ本体部10のZ方向の下側に位置する膨張領域である。第1棒状膨張部10b及び第2棒状膨張部10cは、それぞれ、主膨張部10aと内部空間が連続し、エアバッグ本体部10の装着前の展開形状では、主膨張部10aからZ方向の下方に向かって延びる。ここでのZ方向の下方とは、乗員の座席100の設置側に向かう方向である。第1棒状膨張部10bと第2棒状膨張部10cとは、Y方向で互いに離間しつつ対向する。
【0018】
また、エアバッグ本体部10は、連結材14と、挿通保持部10eとを有する。
【0019】
連結材14は、第1棒状膨張部10bの先端に一端が接続され、第2棒状膨張部10cの先端に他端が接続されるストラップ(紐状部材)である。つまり、連結材14は、第1棒状膨張部10bの先端と第2棒状膨張部10cの先端とを連結する。本実施形態では、連結材14は、平型のストラップである。エアバッグ本体部10が装着前の展開形状にあるとき、連結材14は、弛みを有する。
【0020】
挿通保持部10eは、第1棒状膨張部10bと第2棒状膨張部10cとが互いに対向する間の空間Sに面する前記主膨張部の一部に設けられるタブ(札状部)である。挿通保持部10eは、図3に示すように、第1パネル20と第2パネル21とを接合した際に外周部に残存する残り代の一部として設けられてもよい。また、挿通保持部10eは、連結材14を挿通させる挿通穴10fを有する。挿通穴10fは、第1パネル20と第2パネル21との接合方向に沿って貫通する穴である。挿通穴10fは、少なくとも、折り畳まれた状態の連結材14の一部を挿通させることができる形状を有する。本実施形態では、挿通穴10fは、連結材14の幅よりも大きな長さを有するスリット状に形成される。
【0021】
インフレータ11は、エアバッグ本体部10の内部にガス(膨張ガス)を導入する装置である。例えば、インフレータ11は、点火器やガス発生剤等を備える。この場合、不図示の電子制御ユニットが自動車の衝突などを検知又は予測したときに発する電気信号に基づいて点火器がガス発生剤を燃焼させることで、エアバッグ本体部10の内部には、急速にガスが導入される。
【0022】
リテーナ12は、エアバッグ本体部10及びインフレータ11を車両側の設置部に取り付けるための枠体である。
【0023】
バッグプレート13は、リテーナ12を支持する部材である。バッグプレート13は、車両側の設置部、例えば、本実施形態でのステアリングホイール101の一部であってもよい。また、エアバッグ装置1は、エアバッグ本体部10、インフレータ11及びリテーナ12を不図示のケースに収納した状態でステアリングホイール101に設置される場合もある。この場合、バッグプレート13は、当該ケースの一部であってもよい。
【0024】
更に、エアバッグ装置1は、挿通保持部10eに設けられている挿通穴10fを挿通した連結材14を保持する連結材保持部15を備える。連結材14は、図2に示すように、第1パネル20側から第2パネル21側に向かう方向を挿通方向として挿通穴10fに挿通される。連結材14は、一端が第1棒状膨張部10bの先端に接続され、他端が第2棒状膨張部10cの先端に接続されているので、挿通穴10fを挿通した連結材14は、全体として環状となる。そこで、連結材保持部15は、図4に示すように、バッグプレート13に設置され、環状の連結材14の一部を引っ掛けて保持する棒状又は鉤状の突出部であってもよい。
【0025】
次に、図1図2及び図4を参照して、エアバッグ装置1の作動時のエアバッグ本体部10の展開形状について説明する。
【0026】
インフレータ11からエアバッグ本体部10の内部にガスが導入されると、主膨張部10aが膨張する。また、主膨張部10aの膨張に合わせて、エアバッグ本体部10の内部空間にある各々の連通口10gを通じてガスが導入された第1棒状膨張部10b及び第2棒状膨張部10cも膨張する。挿通穴10fを挿通した連結材14は、エアバッグ本体部10の展開以前より、車体側に設けられている連結材保持部15に保持されている。そのため、ガスが導入されてエアバッグ本体部10が膨張を開始すると、挿通穴10fを挿通した連結材14が挿通方向に引かれる。挿通穴10fは、第1棒状膨張部10bと第2棒状膨張部10cとが互いに対向する間の空間Sに面する主膨張部10aの一部に設けられている。したがって、第1棒状膨張部10bと第2棒状膨張部10cとの各々の先端が挿通穴10fに向かって引き寄せられ、第1棒状膨張部10b及び第2棒状膨張部10cは、図1及び図2に示すように、空間Sに折り込まれる形状に膨張する。結果として、装着前では、第1棒状膨張部10b及び第2棒状膨張部10cで形成された凹部を含む形状を有しているエアバッグ本体部10は、全体としては、円形状に展開する。
【0027】
このような膨張の結果、展開時のエアバッグ本体部10には、図1及び図4に示すように、乗員に対向する一部に形状可変領域30が形成される。形状可変領域30は、空間Sに折り込まれる形状に膨張した第1棒状膨張部10b及び第2棒状膨張部10cと、第1棒状膨張部10b及び第2棒状膨張部10cに連続する主膨張部10aの下部とを含む。エアバッグ本体部10の展開時に形状可変領域30が拘束する乗員の身体部位としては、胸部の一部又は腹部等が想定される。また、形状可変領域30における膨張量は、形状可変領域30の一部が第1棒状膨張部10b及び第2棒状膨張部10cが空間Sに折り込まれた領域である分、その上側に位置する主膨張部10aにおける膨張量よりも小さい。
【0028】
次に、エアバッグ装置1の作用について説明する。
【0029】
図5は、ダミーDを用いたエアバッグ装置1の動作の例を説明するための図である。図5では、自動車の前面衝突時を想定し、エアバッグ本体部10が展開したときのダミーDの拘束状態が示されている。図5(a)は、自動車の正面側からダミーDを見た場合の拘束状態を示す。図5(b)は、自動車の側面側からダミーDを見た場合の拘束状態を示す。このとき、ダミーDは、自動車の前面衝突に伴って、座席100から浮き上がり、ステアリングホイール101から展開されたエアバッグ本体部10に押し付けられる。
【0030】
エアバッグ本体部10が展開したとき、エアバッグ本体部10には、上記のとおり、形状可変領域30が形成される。形状可変領域30の膨張量は、その上側に位置する主膨張部10aよりも小さい。そのため、エアバッグ本体部10は、ダミーDを拘束するときには、主に、ダミーDの肩部を中心に受け止めることになる。つまり、エアバッグ本体部10は、ダミーDの胸部(又は腹部)D1を圧迫しづらい。
【0031】
図6及び図7は、エアバッグ本体部10による拘束によりダミーDの胸部D1にかかる負荷を解析した結果を示すグラフである。ここで、解析のために用いられるダミーDは、THOR(Test Device for Human Occupant Restraint)ダミーである。ダミーDは、図5に示すように、拘束に伴う胸部D1の変位量(以下、「胸変位」という。)を測定するために上下左右の4か所に設置された変位計を含む。このうち、第1変位計GULは、胸部D1の左上の位置に測定点を設定している。第2変位計GURは、胸部D1の右上の位置に測定点を設定している。第3変位計GLLは、胸部D1の左下の位置に測定点を設定している。第4変位計GLRは、胸部D1の右下の位置に測定点を設定している。
【0032】
図6(a)に示すグラフは、第1変位計GULにより得られた、衝突後の時間[ms]に対する胸変位[mm]の変化を示している。図6(b)に示すグラフは、第2変位計GURにより得られた、衝突後の時間[ms]に対する胸変位[mm]の変化を示している。図7(a)に示すグラフは、第3変位計GLLにより得られた、衝突後の時間[ms]に対する胸変位[mm]の変化を示している。図7(b)に示すグラフは、第4変位計GLRにより得られた、衝突後の時間[ms]に対する胸変位[mm]の変化を示している。
【0033】
また、各々のグラフでは、本実施形態に係るエアバッグ装置1が採用された場合の値が「エアバッグA」として表記されている。また、比較例として、従来の単純円形状のエアバッグ本体部を備えるエアバッグ装置が採用された場合の値が「エアバッグB」として表記されている。更に、比較例として、エアバッグ装置が採用されていない場合の値が「エアバッグなし」として表記されている。なお、ダミーDは、いずれの場合であっても、シートベルトを装着している。
【0034】
これらの解析結果を参照すると、従来のエアバッグBに関しては、エアバッグ本体部による拘束時に、胸変位が大きくなる傾向がある。これに対して、本実施形態のエアバッグAに関しては、各グラフにおいて白抜きの矢印で示したとおり、胸変位のピーク値がエアバッグBの場合よりも低下していることがわかる。つまり、本実施形態に係るエアバッグ装置1を採用することで、従来の一般的なエアバッグ装置を採用した場合よりも、乗員の胸部にかかる負荷を抑えることができる可能性が高い。
【0035】
また、形状可変領域30は、本実施形態では、互いに空間Sに折り込まれる形状に膨張した第1棒状膨張部10b及び第2棒状膨張部10cにより形成される。第1棒状膨張部10bと第2棒状膨張部10cとは、主膨張部10aを基準としつつ、互いに独立した膨張部である。そのため、エアバッグ本体部10の展開時には、第1棒状膨張部10b及び第2棒状膨張部10cの個々の形状は、主膨張部10aに対して常時一定とはならない。例えば、乗員の状況や体格等の状態によっては、第1棒状膨張部10bの方が第2棒状膨張部10cよりもX方向の前方に押し込まれたり、又は、第1棒状膨張部10bの方が第2棒状膨張部10cよりも空間Sに折り込まれる量が多くなったりすることもあり得る。つまり、形状可変領域30は、乗員の状態に応じて展開形状を変化させる。ここで、乗員の状態には、乗員の状況又は乗員の体格などが含まれる。乗員の状況には、自動車の衝突角度や衝撃の大きさにより変化する乗員の姿勢などが含まれる。乗員の体格には、身体の大きさのみならず、年齢差や性別差等が考慮される。
【0036】
次に、エアバッグ装置1の効果について説明する。
【0037】
本実施形態に係るエアバッグ装置1は、折り畳まれた状態からガスの流入により膨張して車両の乗員を保護するエアバッグ本体部10を備える。エアバッグ本体部10は、乗員の座席100の設置側に向かう下側に、上側の主膨張部10aよりも膨張量が小さく、乗員の状態に応じて展開形状が変化する形状可変領域30を有する。
【0038】
このエアバッグ装置1によれば、エアバッグ本体部10は、主膨張部10aよりも膨張量が抑えられた形状可変領域30を有するので、保護対象となる乗員の特に胸部にかかる負荷を抑えることができる。
【0039】
また、このエアバッグ装置1によれば、形状可変領域30は、乗員の状態に応じて展開形状が変化するので、乗員の状況や体格等の状態に合わせて乗員の胸部にかかる負荷を抑えることができる。
【0040】
このように、本実施形態によれば、乗員の状況や体格に応じて乗員を適切に保護するエアバッグ装置1を提供することができる。
【0041】
また、エアバッグ装置1では、形状可変領域30は、主膨張部10aと内部空間が連続し、主膨張部10aから座席100の設置側に向かって延びる一対の棒状膨張部としての第1棒状膨張部10b及び第2棒状膨張部10cを含んでもよい。一対の棒状膨張部は、エアバッグ本体部10の展開時には、互いに対向する間の空間Sに折り込まれる形状に膨張してもよい。
【0042】
このエアバッグ装置1によれば、エアバッグ本体部10に、形状可変領域30を簡易的に設けさせることができる。また、このような一対の棒状膨張部により形状可変領域30を形成させる場合、エアバッグ本体部10の容積は、同様の設置対象に設置される従来のエアバッグ装置に用いられるエアバッグ本体部の容積を超えない。したがって、エアバッグ装置1に採用されるインフレータ11は、従来のエアバッグ装置に採用されるインフレータと同等のものであってよく、すなわち、より大型化されたインフレータを採用する必要がないという利点もある。
【0043】
また、エアバッグ装置1では、エアバッグ本体部10は、一方の棒状膨張部である第1棒状膨張部10bの先端に一端が接続され、他方の棒状膨張部である第2棒状膨張部10cの先端に他端が接続される連結材14を有してもよい。また、エアバッグ本体部10は、一対の棒状膨張部が互いに対向する間の空間Sに面する主膨張部10aの一部に設けられ、連結材14を挿通させる挿通穴10fを有する挿通保持部10eを有してもよい。この場合、一対の棒状膨張部は、エアバッグ本体部10の展開時には、挿通穴10fを挿通した連結材14が挿通方向に引かれることで、互いに対向する間の空間Sに折り込まれてもよい。
【0044】
このエアバッグ装置1によれば、エアバッグ本体部10において、ガスの導入による膨張作用に伴って容易に形状可変領域30が形成されるので、結果として、形状可変領域30を安定的に形成させることができる。
【0045】
また、参考例として、内部に設けられたテサー(つなぎ綱)が基材の一部を内側に引っ張ることでエアバッグ本体部に凹部(くぼみ)を形成するようなエアバッグ装置では、凹部の上側に位置する膨張部の形状は、凹部の形成前と形成後とで変化しやすい。これに対して、本実施形態に係るエアバッグ装置1では、主膨張部10aの形状は、図3に例示したように一対の棒状膨張部が折り込まれていないときと、折り込まれて形状可変領域30が形成されたときとでは変化しにくく、安定している。つまり、エアバッグ装置1によれば、エアバッグ本体部10に形状可変領域30が形成されても、主膨張部10aの機能は低下しづらい。
【0046】
なお、本実施形態に係るエアバッグ装置1は、ステアリングホイール101に設置されるものに限定されず、例えば、自動車のインストルメントパネルに設置される助手席用として採用されてもよい。
【0047】
また、上記開示内容に基づいて、実施形態の修正又は変形をすることが可能である。また、上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 エアバッグ装置
10 エアバッグ本体部
10a 主膨張部
10b 第1棒状膨張部
10c 第2棒状膨張部
10f 挿通穴
10e 挿通保持部
14 連結材
30 形状可変領域
S 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7