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特開2022-167335機械学習装置及び開閉操作手順判定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167335
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】機械学習装置及び開閉操作手順判定装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20221027BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J13/00 301A
H02J13/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073072
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】山口 和宏
(72)【発明者】
【氏名】吉延 泰之
(72)【発明者】
【氏名】大塚 和彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 良雄
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC08
5G064CB06
5G064CB19
5G066AA03
5G066AA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より効率的に配電線事故時における区分開閉器の開閉操作手順を判定するための学習モデルを構築できる機械学習装置及び該学習モデルを用いた開閉操作手順判定装置を提供する。
【解決手段】配電線事故時における復旧作業を支援するための学習モデルを構築する機械学習装置1は、配電線事故の停電区間における配電線の位置情報と該配電線を区分する複数の区分開閉器の位置情報を含む配電系統情報を入力データとして取得する入力データ取得部11と、複数の区分開閉器の開閉操作手順をラベルとして取得するラベル取得部12と、入力データとラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、停電区間における複数の区分開閉器の開閉操作手順を判定するための学習モデルを構築する学習モデル構築部14と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線事故時における復旧作業を支援するための学習モデルを構築する機械学習装置であって、
配電線事故の停電区間における配電線の位置情報と該配電線を区分する複数の区分開閉器の位置情報を含む配電系統情報を入力データとして取得する入力データ取得部と、
複数の前記区分開閉器の開閉操作手順をラベルとして取得するラベル取得部と、
前記入力データと前記ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、前記停電区間における複数の前記区分開閉器の開閉操作手順を判定するための学習モデルを構築する学習モデル構築部と、を備える機械学習装置。
【請求項2】
前記入力データ取得部は、前記配電線事故の事故原因を前記入力データとして更に取得する請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の機械学習装置で構築した前記学習モデルを用いた開閉操作手順判定装置であって、
少なくとも前記配電系統情報を含む判定用データを取得する判定用データ取得部と、
前記判定用データと前記学習モデルとに基づいて、新たな配電線事故の停電区間における複数の前記区分開閉器の開閉操作手順を判定する開閉操作手順判定部と、を備える開閉操作手順判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習装置及び開閉操作手順判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配電線事故時における復旧作業を支援する技術が知られている。この種の技術が記載されているものとして特許文献1~3がある。特許文献1には、類似する過去の配電線事故データを検索及び抽出し、抽出した特定の配電線事故データに関して配電線事故の根本的原因、発生箇所及び損傷状況の情報が表す各事象の発生する確率を求める技術が記載されている。特許文献2には、配電線事故が発生した事故区間の電柱番号に、修理票、気象情報、過去の修理状況等に基づいて優先付けを行い、この優先付けされた電柱順に巡視ルートを設定する技術が記載されている。特許文献3には、事故原因が既知の過去の定量化された事故状況データからパターン認識を用いて各事故原因の特徴を抽出し、パターン認識を用いて定量化された事故状況データを予め抽出した各事故原因の特徴に照らして、最も類似度の大きい事故原因を求める技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-166848号公報
【特許文献2】特開2014-18024号公報
【特許文献3】特開2000-184593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、配電線が複数の区分開閉器によって区分される配電系統において配電線事故が発生した場合、停電区間における区分開閉器を遠隔操作等により開閉することで、電力供給を段階的に進めながら事故発生箇所を特定することがある。この場合、事故発生箇所の発見と事故発生箇所が存在する区分以外の停電区間への電力供給の再開を早期に行うことができる区分開閉器の開閉操作手順を決定することが望まれている。しかしながら、配電線事故時における復旧作業の作業者によっては、経験年数や知識量の不足により開閉操作手順の決定に時間や手間がかかる場合がある。特許文献1~3に記載の技術では、事故原因等を予測できるものの、区分開閉器の開閉操作手順等の具体的な復旧手順を定める技術について記載されていない。
【0005】
本発明は、より効率的に配電線事故時における区分開閉器の開閉操作手順を判定するための学習モデルを構築できる機械学習装置及び該学習モデルを用いた開閉操作手順判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、配電線事故時における復旧作業を支援するための学習モデルを構築する機械学習装置であって、配電線事故の停電区間における配電線の位置情報と該配電線を区分する複数の区分開閉器の位置情報を含む配電系統情報を入力データとして取得する入力データ取得部と、複数の前記区分開閉器の開閉操作手順をラベルとして取得するラベル取得部と、前記入力データと前記ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、前記停電区間における複数の前記区分開閉器の開閉操作手順を判定するための学習モデルを構築する学習モデル構築部と、を備える機械学習装置に関する。
【0007】
前記入力データ取得部は、前記配電線事故の事故原因を前記入力データとして更に取得する。
【0008】
また本発明は、前記機械学習装置で構築した前記学習モデルを用いた開閉操作手順判定装置であって、少なくとも前記配電系統情報を含む判定用データを取得する判定用データ取得部と、前記判定用データと前記学習モデルとに基づいて、新たな配電線事故の停電区間における複数の前記区分開閉器の開閉操作手順を判定する開閉操作手順判定部と、を備える開閉操作手順判定装置に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より効率的に配電線事故時における区分開閉器の開閉操作手順を判定するための学習モデルを構築できる機械学習装置及び該学習モデルを用いた開閉操作手順判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る開閉操作手順判定システムの全体構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る開閉操作手順判定システムが用いられる配電系統の停電区間の一例を示す概略図である。
図3】本発明の一実施形態に係る機械学習装置の機能ブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る開閉操作手順判定装置を示す機能ブロック図である。
図5】本発明の一実施形態に係る機械学習装置の動作のフローチャートを示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る開閉操作手順判定装置の動作のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、開閉操作手順判定システム100の全体構成を示す図である。図2は、本実施形態に係る開閉操作手順判定システム100が用いられる配電系統9の停電区間7の一例を示す概略図である。
【0012】
開閉操作手順判定システム100は、配電線事故の停電区間7の区分開閉器6の開閉操作手順を判定するためのシステムである。まず、開閉操作手順判定システム100について説明する前に、開閉操作手順判定システム100が用いられる配電系統9の一例について図2を参照しながら説明する。
【0013】
配電系統9は、例えば、図2に示すように、第1変電所4と第2変電所5の間に設けられる配電線3と、第1変電所4に設けられるフィーダ遮断器41と、第2変電所5に設けられるフィーダ遮断器51と、配電線3を区分する区分開閉器6を備える。
【0014】
図2に示す配電線3は、第1変電所4から第2変電所5に延びる1本の幹線31と、幹線31から分岐する2本の分岐線32,33を含んで構成される。
【0015】
図2に示す配電系統9には、5つの区分開閉器6である区分開閉器61~65が設けられる。具体的には、区分開閉器61,62,63は、第1変電所4から第2変電所5に向かってこの順に所定の間隔を空けて幹線31に設けられる。そして、区分開閉器64は分岐線32に設けられ、区分開閉器65は分岐線33に設けられる。即ち、配電線3は区分開閉器61~65によってフィーダ遮断器41と区分開閉器61の間の第1区間71と、区分開閉器61,62,64の間の第2区間72と、区分開閉器62,63,65の間の第3区間73と、区分開閉器63とフィーダ遮断器51の間の第4区間74と、区分開閉器64から幹線31とは反対側の分岐線32上の第5区間75と、区分開閉器65から幹線31とは反対側の分岐線33上の第6区間76に区分される。
【0016】
次に、配電線事故時の停電区間7における区分開閉器61~65の開閉操作手順の一例について図2を参照しながら説明する。なお、図2に示す配電系統9のフィーダ遮断器41,51及び区分開閉器61~65の開閉は、配電自動化システム(図示省略)によって制御される。
【0017】
まず、図2に示す配電系統9で配電線事故が発生すると、配電自動化システムによってフィーダ遮断器41が開放される。この結果、配電線3の第1区間71~第6区間76までの全区間が停電して停電区間7が発生する。
【0018】
停電区間7が発生すると、配電自動化システムによって区分開閉器63のみが開放され、フィーダ遮断器41が投入される。図2の例では配電線事故の事故発生箇所Xが第6区間76に存在するので、再びフィーダ遮断器41が開放される。この動作により、第5区間75には事故発生箇所Xが存在しないことが確認できる。そして、配電自動化システムによって区分開閉器63が開放され、フィーダ遮断器51が投入される。これにより、第2変電所5から第5区間75への電力の供給が再開される。
【0019】
次いで、配電自動化システムによって区分開閉器63に加えて区分開閉器62が開放され、フィーダ遮断器41が投入される。第1変電所4から電力が供給される第1区間71、第2区間72、第5区間75には事故発生箇所Xが存在しないため、フィーダ遮断器41が開放されず送電が成功する。この動作により、事故発生箇所Xが存在する区間が、第3区間73及び第6区間76に絞られる。事故発生箇所Xが存在する区間が第3区間73及び第6区間76に絞られた状態で、作業者は、事故発生箇所Xの位置を特定するために現場に行き、第3区間73及び第6区間76に事故点探査装置8を取り付ける。そして、事故点探査装置8によって第6区間76に存在する事故発生箇所Xが検出される。
【0020】
事故発生箇所Xが存在する区間が第3区間73及び第6区間76に絞られた状態で、さらに区分開閉器6の開閉操作を行ってもよい。例えば、配電自動化システムによって区分開閉器63に加えて区分開閉器65が開放され、区分開閉器62が投入される。第3区間73には事故発生箇所Xが存在しないため、フィーダ遮断器41が開放されず送電が成功する。この動作により、事故発生箇所Xが存在する区間が第6区間76に絞られる。そして、作業員は現場に行き、第6区間76の分岐線33に事故点探査装置8を取り付ける。このように、区分開閉器6の開閉操作により、停電区間7への電力の供給を段階的に進めながら、事故発生箇所Xを特定できる。
【0021】
図2に示す配電系統9の区分開閉器6の開閉操作手順は、上述した開閉操作手順以外に複数のパターンが存在する。また、配電線事故は、あらゆる場所に設けられる配電系統9で発生する可能性がある。停電区間7内の配電線3の幹線31や分岐線32,33の位置、周囲の地形等は様々なパターンや組み合わせが存在する。例えば、配電線3が市街地や山間部、海岸沿等に存在する場合、幹線31から分岐する分岐線32,33が1本の場合や3本以上の場合等様々なパターンが存在する。配電線事故後の事故発生箇所Xの発見と停電区間7への電力供給を早期に行うためには、様々な配電系統9に発生する停電区間7毎に適切な開閉操作手順のパターンを選択することが重要となる。
【0022】
この点に関し、本実施形態の開閉操作手順判定システム100は、配電線事故時における復旧作業の作業者がより効率的に停電区間7における区分開閉器6の開閉操作手順を判定できることを目的として案出されたものである。
【0023】
次に、開閉操作手順判定システム100の構成について説明する。図1に示すように、開閉操作手順判定システム100は、機械学習装置1及び開閉操作手順判定装置2を備える。
【0024】
ここで、機械学習装置1と開閉操作手順判定装置2とは1対1の組とされて、通信可能に接続されている。なお、図1では図示しないが、機械学習装置1と開閉操作手順判定装置2とはネットワークを介して、互いに接続されていてもよい。ネットワークは、例えば、LAN(Local Area Network)や、インターネット、公衆電話網、あるいは、これらの組み合わせである。ネットワークにおける具体的な通信方式や、有線接続及び無線接続のいずれであるか等については、特に限定されない。あるいは、機械学習装置1と開閉操作手順判定装置2とは、ネットワークを用いた通信ではなく、コネクタを介して直接接続してもよい。
【0025】
機械学習装置1について図3を参照しながら説明する。図3は機械学習装置1の機能ブロックを示す図である。
【0026】
機械学習装置1は、教師あり学習により、開閉操作手順判定装置2で用いる学習モデルを構築する。機械学習装置1によって構築される学習モデルは、配電線事故における復旧作業を支援するためのものであり、配電線事故の停電区間7における区分開閉器6の開閉操作手順を判定するために用いられる。図3に示すように、機械学習装置1は、入力データ取得部11と、ラベル取得部12と、記憶部13と、学習モデル構築部14を備える。
【0027】
入力データ取得部11は、配電線事故の停電区間7に関する各種情報を入力データとして取得する。入力データ取得部11が取得する入力データとしては、配電線事故の停電区間7における配電系統情報や配電線事故の事故原因等が挙げられる。
【0028】
配電系統情報としては、配電線3の位置情報と配電線3を区分する複数の区分開閉器6の位置情報を含む。配電線3の位置情報としては、配電線3の幹線から分岐する分岐線の位置、配電線3の周囲の地形情報等が挙げられる。配電線3の周囲の地形情報としては、例えば、市街地や山間部、海岸線沿等の配電線3の周囲の環境の種類、樹木等の配電系統9の設備以外の物体との位置関係等が挙げられる。区分開閉器6の位置情報としては、配電線3上に設けられる区分開閉器6の位置情報等が挙げられる。入力データ取得部11は、例えば、配電自動化システム等の配電系統9の管理システムから過去の配電線事故の停電区間7の配電系統情報を取得してもよい。
【0029】
配電線事故の事故原因としては、例えば、樹木接触、鳥獣害、機器不良等が挙げられる。入力データ取得部11によって取得される配電線事故の事故原因は、配電線自動化システム等の配電系統9の管理システム等に記憶された過去の配電線事故の事故原因であってもよく、配電線事故時に予測された事故原因であってもよい。
【0030】
ラベル取得部12は、配電線事故の停電区間7における複数の区分開閉器6の開閉操作手順をラベルとして取得する。ラベル取得部12は、例えば、配電自動化システム等の配電系統9の管理システムから過去の配電線事故の停電区間7における区分開閉器6の開閉操作手順をラベルとして取得してもよい。なお、区分開閉器6の開閉操作手順とは、複数の区分開閉器6のうちどの区分開閉器6をどのタイミングで入切するかという区分開閉器6の開閉操作の手順に関する情報である。
【0031】
ここで、入力データである配電系統情報及び配電線事故の事故原因とラベルである区分開閉器6の開閉操作手順の関係について説明する。例えば、配電系統情報が示す配電系統9が樹木の少ない市街地を通る幹線と該幹線から山間部に延び、樹木に囲まれた分岐線から構成される配電線3を含むものであり、配電線事故の事故原因が樹木接触であったとする。この場合、配電線事故の原因が樹木接触であるので、事故発生箇所Xが幹線上よりも山間部に延びる分岐線上である可能性が高いと予測できる。このため、例えば、山間部に延びる分岐線を優先的に確認できるような区分開閉器6の開閉操作手順をラベルとすることができる。
【0032】
記憶部13は、入力データ取得部11によって取得された配電系統情報及び配電線事故の事故原因を入力データとし、ラベル取得部12によって取得された区分開閉器6の開閉操作手順をラベルとして記憶する。具体的には、記憶部13は、配電系統情報と配電線事故の事故原因とを互いに紐づけられた1組のデータとして記憶する。そして、記憶部13は、互いに紐づいた配電系統情報と配電線事故の事故原因とを含む1組のデータである入力データと、該入力データに対する区分開閉器6の開閉操作手順であるラベルを互いに紐づけて1組の教師データとして記憶する。また、記憶部13は、学習モデル構築部14が構築した学習モデルも記憶する。
【0033】
学習モデル構築部14は、記憶部13に記憶された入力データと、ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、配電線事故の停電区間7における区分開閉器6の開閉操作手順を判定するための学習モデルを構築する。そして、学習モデル構築部14は、構築した学習モデルを開閉操作手順判定装置2に送信する。
【0034】
学習モデル構築部14は、例えば、サポート・ベクター・マシン(Support Vector Machine、以下SVMともいう)を用いて実現することが可能である。
【0035】
開閉操作手順判定装置2について図4を参照しながら説明する。図4は、開閉操作手順判定装置2の機能ブロック図である。開閉操作手順判定装置2は、制御部20と、記憶部26と、通信部27と、表示部28と、を備える。
【0036】
制御部20は、開閉操作手順判定装置2の全体を制御する部分であり、各種プログラムを、ROM、RAM、フラッシュメモリ又はハードディスク(HDD)等の記憶領域から適宜読み出して実行することにより、本実施形態における各種機能を実現している。制御部20は、CPUであってよい。制御部20は、判定用データ取得部21と、予測用データ取得部22と、事故原因予測部23と、開閉操作手順判定部24と、出力部25と、を備える。
【0037】
判定用データ取得部21は、新たな配電線事故の停電区間7における区分開閉器6の開閉操作手順を判定するための判定用データを取得する。判定用データには、少なくとも配電線事故の停電区間7の配電系統情報が含まれる。判定用データ取得部21は、配電系統情報取得部211と、事故原因取得部212を有する。
【0038】
配電系統情報取得部211は、機械学習した際に用いた教師データに含まれる配電線事故の停電区間7の配電系統情報とは別個に、新たな配電線事故の停電区間7の配電系統情報を取得する。具体的には、配電系統情報取得部211は、配電線3の位置情報と配電線3を区分する複数の区分開閉器6の位置情報を取得する。配電系統情報取得部211は、例えば、配電線事故により停電が発生した場合に、配電自動化システム等の配電系統9の管理システムから配電線事故の停電区間7の配電系統情報を取得してもよい。
【0039】
事故原因取得部212は、機械学習した際に用いた教師データに含まれる配電線事故の事故原因とは別個に、新たな配電線事故の事故原因を取得する。配電線事故の事故原因としては、例えば、樹木接触、鳥獣害、設備不良等が挙げられる。事故原因取得部212によって取得される事故原因は、例えば、作業者が予測し、開閉操作手順判定装置2に備わる入力デバイスを介して入力した事故原因であってもよく、事故原因予測部23によって予測された事故原因であってもよい。
【0040】
予測用データ取得部22は、事故原因予測部23が配電線事故の事故原因を予測するための予測用データを取得する。予測用データ取得部22は、気象情報取得部221と、時間情報取得部222と、零相電圧情報取得部223と、履歴情報取得部224と、を有する。
【0041】
気象情報取得部221は、配電線事故発生時の停電区間7における気象情報を予測用データとして取得する。気象情報としては、例えば、天候や風速、気温、湿度、降雨量、降雪量、落雷数等が挙げられる。これらの気象情報は、気象観測所の発表値であってもよく、風速や温度、湿度等を測定する測定機器等から得られる値であってもよい。
【0042】
時間情報取得部222は、配電線事故の発生日時に関する情報を予測用データとして取得する。
【0043】
零相電圧情報取得部223は、配電線事故による停電区間7における配電線3の零相電圧に関する情報を予測用データとして取得する。配電線3の零相電圧に関する情報は、例えば、配電線3の管理システム等から取得してもよい。
【0044】
履歴情報取得部224は、配電線事故の停電区間7における配電系統9に関連する伐採履歴情報や点検履歴情報、営巣履歴情報等の履歴情報を予測用データとして取得する。伐採履歴情報は、停電区間7の配電線3等の周囲に存在する樹木の伐採履歴の情報である。より具体的には、伐採履歴の情報とは、例えば伐採時からの経過年数や樹木と配電線3等の配電系統9の設備との離間距離等である。点検履歴情報は、停電区間7における配電系統9の点検日時や不良箇所、修理履歴等の情報である。営巣履歴情報は、停電区間7における配電系統9の配電線3等の設備に鳥類が作った巣に関する情報である。これらの履歴情報は、例えば、配電系統9を管理する管理システム等から取得される。
【0045】
事故原因予測部23は、予測用データ取得部22によって取得された配電線事故の時間帯や、気象情報、配電線3の零相電圧の値、伐採履歴情報等の履歴情報の少なくとも何れかと配電系統情報取得部211によって取得された配電系統情報に基づいて、配電線事故の事故原因を予測する。具体的には、事故原因予測部23は、過去の実績等に基づいて予め定められた予測用データ及び配電系統情報と配電線事故の事故原因との間の関係性に基づいて配電線事故の事故原因を予測する。例えば、事故原因予測部23は、配電線事故時の気象情報が強風や積雪等を示し、配電系統情報が山間部に配電線3が存在することを示し、伐採履歴情報が配電線3の周囲の樹木の伐採時経過年数が所定の期間よりも長いことを示す場合、事故原因を樹木接触と予測してもよい。また例えば、事故原因予測部23は、停電区間7内の配電線3の点検履歴情報が過去に頻繁に不良が発生していることを示す場合、事故原因を機器不良と予測してもよい。
【0046】
開閉操作手順判定部24は、判定用データ取得部21によって取得された配電系統情報及び配電線事故の事故原因と、機械学習装置1によって構築された学習モデルに基づいて、新たに発生した配電線事故の停電区間7における区分開閉器6の開閉操作手順を判定する。例えば、開閉操作手順判定部24は、配電線事故の事故原因が点検履歴情報に基づいて予測された機器不良であった場合に、機器不良があると予測された箇所を優先的に確認できるような区分開閉器6の開閉操作手順を判定することができる。
【0047】
出力部25は、開閉操作手順判定部24によって判定された配電線事故の停電区間7における区分開閉器6の開閉操作手順を表示部28に出力する。また、出力部25は、区分開閉器6の開閉操作手順の他に、事故原因予測部23によって予測された配電線事故の事故原因を表示部28に出力してもよい。
【0048】
記憶部26は、機械学習装置1から取得した学習モデルを記憶する。また、記憶部26は、判定用データ取得部21によって取得された配電線事故の停電区間7の配電系統情報と該配電線事故の事故原因とを1組の入力データとし、該入力データに対して判定された区分開閉器6の開閉操作手順をラベルとして記憶してもよい。
【0049】
通信部27は、機械学習装置1との間でデータを送受信する。例えば、開閉操作手順判定システム100は、機械学習装置1から開閉操作手順判定装置2に通信部27を介して学習モデル構築部14によって構築された学習モデルを送信できる。反対に開閉操作手順判定システム100は、開閉操作手順判定装置2から機械学習装置1に通信部27を介して判定用データ取得部21によって取得された新たな配電線事故の停電区間7の配電系統情報、事故原因、判定された開閉操作手順等を送信できる。
【0050】
表示部28は、制御部20の出力部25から出力された停電区間7における区分開閉器6の開閉操作手順の判定結果を表示するモニタである。
【0051】
次に、本実施形態に係る開閉操作手順判定システム100における機械学習時の動作について説明する。図5は、この機械学習時の機械学習装置1の動作を示すフローチャートである。
【0052】
ステップS11において、機械学習装置1の入力データ取得部11は、入力データとして配電線事故の停電区間7の配電系統情報と、該配電系統情報に紐づけられた配電線事故の事故原因を取得する。
【0053】
ステップS12において、機械学習装置1のラベル取得部12は、配電線事故の停電区間7における区分開閉器6の開閉操作手順をラベルとして取得する。
【0054】
ステップS13において、機械学習装置1の学習モデル構築部14は、入力データとラベルとの組を教師データとして受け付ける。
【0055】
ステップS14において、機械学習装置1の学習モデル構築部14は、この教師データを用いて機械学習を実行する。
【0056】
ステップS15において、学習モデル構築部14は、機械学習を終了するか機械学習を繰り返すかを判定する。学習モデル構築部14は、機械学習を繰り返すと判定した場合(ステップS15でNo)、処理をステップS11に戻す。そして、機械学習装置1は同じ動作を繰り返す。一方、学習モデル構築部14は、機械学習を終了すると判定した場合(ステップS15でYes)、処理をステップS16に進める。なお、機械学習を終了させる条件は任意に定めることができる。例えば、予め定められた回数だけ機械学習を繰り返した場合に、機械学習を終了させるようにしてもよい。
【0057】
ステップS16において、機械学習装置1は、その時点までの機械学習により構築した学習モデルを、ネットワーク等を介して開閉操作手順判定装置2に送信する。
【0058】
また、機械学習装置1の記憶部13は、この学習モデルを記憶する。これにより、開閉操作手順判定装置2から学習モデルを要求された場合に、その開閉操作手順判定装置2に学習モデルを送信することができる。また、新たな教師データを取得した場合に、学習モデルに対して更なる機械学習を行うこともできる。
【0059】
次に、開閉操作手順判定装置2による開閉操作手順を判定する処理の一例について図6を参照しながら説明する。図6は、開閉操作手順判定装置2による停電区間7における区分開閉器6の開閉操作手順判定の処理の流れを示すフローチャートである。
【0060】
ステップS21において、新たな配電線事故が発生すると、判定用データ取得部21の配電系統情報取得部211が、配電線事故の停電区間7の配電系統情報を取得する。
【0061】
ステップS22において、予測用データ取得部22が配電線事故発生時の停電区間7の気象情報や配電線事故の発生日時、配電線3の零相電圧に関する情報、伐採履歴情報、点検履歴情報、営巣履歴情報等の履歴情報等の予測用データを取得する。
【0062】
ステップS23において、事故原因予測部23が、ステップS21で取得された配電系統情報とステップS22で取得された予測用データに基づいて、配電線事故の事故原因を予測する。
【0063】
ステップS24において、判定用データ取得部21の事故原因取得部212がステップS23で予測された事故原因を事故原因予測部23から取得する。
【0064】
ステップS25において、開閉操作手順判定部24は、ステップS21で取得された配電系統情報及びステップS24で取得された事故原因と、機械学習装置1から送信された学習モデルとに基づいて停電区間7における区分開閉器6の開閉操作手順を判定する。
【0065】
ステップS26において、出力部25は、ステップS23で予測された配電線事故の事故原因と、ステップS25で判定された開閉操作手順を表示部28に出力する。この結果、新たに発生した配電線事故の事故原因と、該配電線事故の停電区間7における区分開閉器6の開閉操作手順が表示部28に表示される。
【0066】
以上説明した本実施形態に係る開閉操作手順判定システム100の機械学習装置1又は開閉操作手順判定装置2によれば、以下のような効果を奏する。
【0067】
本実施形態に係る機械学習装置1は、配電線事故時における復旧作業を支援するための学習モデルを構築する機械学習装置1であって、配電線事故の停電区間7における配電線3の位置情報と該配電線3を区分する複数の区分開閉器6の位置情報を含む配電系統情報を入力データとして取得する入力データ取得部11と、複数の区分開閉器6の開閉操作手順をラベルとして取得するラベル取得部12と、入力データとラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、停電区間7における複数の区分開閉器6の開閉操作手順を判定するための学習モデルを構築する学習モデル構築部14と、を備える。
【0068】
これにより、より効率的に配電線事故の停電区間7における区分開閉器6の開閉操作手順を判定するための学習モデルを構築できる。よって、配電線事故時における復旧作業を行う作業者はその経験年数や知識量にかかわらず、過去の実績を考慮した開閉操作手順を効率的に得ることができる。
【0069】
本実施形態に係る機械学習装置1において、入力データ取得部11は、配電線事故の事故原因を入力データとして更に取得する。
【0070】
これにより、配電線事故の事故原因を考慮して区分開閉器6の開閉操作手順を判定できるので、より早期に配電系統9を停電状態から復旧できるような開閉操作手順を判定する学習モデルを構築できる。
【0071】
また本実施形態に係る開閉操作手順判定装置2は、機械学習装置1で構築した学習モデルを用いた開閉操作手順判定装置2であって、少なくとも配電系統情報を含む判定用データを取得する判定用データ取得部21と、判定用データと学習モデルとに基づいて、新たな配電線事故の停電区間7における複数の区分開閉器6の開閉操作手順を判定する開閉操作手順判定部24と、を備える。
【0072】
これにより、本実施形態の学習モデルに新たな配電線事故の停電区間7における配電系統情報を入力することで区分開閉器6の開閉操作手順を判定するので、より効率的に配電線事故時における復旧作業を進めることができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく適宜変更が可能である。
【0074】
上記実施形態では、機械学習装置1は配電線事故の停電区間7における配電系統情報と配電線事故の事故原因を入力データとして取得して教師あり学習を行っていたが、配電線事故の事故原因を取得せずに、配電系統情報のみを入力データとして教師あり学習を行う構成であってもよい。
【0075】
上記実施形態では、開閉操作手順判定装置2は配電線事故の停電区間7における配電系統情報と配電線事故の事故原因を判定用データとして取得していたが、配電線事故の事故原因を取得せずに、配電系統情報と学習モデルとに基づいて、停電区間7における区分開閉器6の開閉操作手順を判定してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 機械学習装置
2 開閉操作手順判定装置
3 配電線
6 区分開閉器
7 停電区間
11 入力データ取得部
12 ラベル取得部
14 学習モデル構築部
21 判定用データ取得部
24 開閉操作手順判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6