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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167347
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】エンジンの停止制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20221027BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20221027BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
F02D29/02 321C
F02D43/00 301K
F02D43/00 301N
F02D45/00 360A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073095
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】山川 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】谷村 兼次
(72)【発明者】
【氏名】菅野 宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 徹
【テーマコード(参考)】
3G093
3G384
【Fターム(参考)】
3G093AB01
3G093AB02
3G093BA20
3G093BA22
3G093DA05
3G093DA06
3G093EA09
3G384AA03
3G384BA05
3G384BA27
3G384CA21
3G384DA14
3G384FA04Z
3G384FA28Z
3G384FA48Z
(57)【要約】
【課題】自動停止したエンジンの再始動時に、着火性を確保しつつNOxの生成を抑制する。
【解決手段】EGR通路と吸気通路との接続部よりも上流側の吸気通路に開閉可能に設けられたスロットル弁と、気筒内の温度に関連する指標温度を検出する温度検出手段と、燃料カットが実行されてから出力軸の回転が停止するまでの間に、接続部よりも下流側の吸気通路内の酸素濃度である最終吸気酸素濃度が大気の酸素濃度よりも低くなるようにスロットル弁の開度とEGR弁の開度とを調整する濃度調整制御を実行可能な弁制御部とを設け、温度検出手段により検出された指標温度が所定の判定温度以上の場合は弁制御部によって濃度調整制御を実行させる一方、指標温度が判定温度未満の場合は濃度調整制御の実行を抑制する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気筒と、気筒での燃焼のエネルギーを受けて回転する出力軸と、気筒に導入される吸気が流通する吸気通路と、気筒から排出される排気ガスが流通する排気通路と、吸気通路と排気通路とを接続するEGR通路とを備えたエンジンに適用される停止制御装置であって、
前記気筒に燃料を供給するインジェクタと、
前記EGR通路に開閉可能に設けられたEGR弁と、
前記EGR通路と前記吸気通路との接続部よりも上流側の吸気通路に開閉可能に設けられたスロットル弁と、
気筒内の温度に関連する指標温度を検出する温度検出手段と、
エンジンを自動的に停止させる自動停止条件が成立したか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記自動停止条件が成立したことが確認された場合に前記インジェクタによる燃料の供給を停止する燃料カットを実行する燃料カット実行部と、
前記燃料カットが実行されてから前記出力軸の回転が停止するまでの間に、前記接続部よりも下流側の前記吸気通路内の酸素濃度である最終吸気酸素濃度が大気の酸素濃度よりも低くなるように前記スロットル弁の開度と前記EGR弁の開度とを調整する濃度調整制御を実行可能な弁制御部とを備え、
前記弁制御部は、前記温度検出手段により検出された前記指標温度が所定の判定温度以上の場合は前記濃度調整制御を実行し、前記指標温度が前記判定温度未満の場合は前記濃度調整制御の実行を抑制する、ことを特徴とするエンジンの停止制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの停止制御装置において、
前記温度検出手段は、エンジンを冷却する冷却水の温度を前記指標温度として検出する、ことを特徴とするエンジンの停止制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエンジンの停止制御装置において、
前記温度検出手段は、外気温を前記指標温度として検出する、ことを特徴とするエンジンの停止制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のエンジンの停止制御装置において、
前記濃度調整制御は、前記燃料カットの実行後に前記最終吸気酸素濃度が上昇するように前記スロットル弁を開弁状態にする第1の制御と、前記最終吸気酸素濃度が所定の目標値まで上昇した時点で前記スロットル弁を全閉にする第2の制御とを含む、ことを特徴とするエンジンの停止制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のエンジンの停止制御装置において、
前記弁制御部は、前記指標温度が前記判定温度未満の場合、前記第1の制御を実行し、前記第2の制御の実行を禁止する、ことを特徴とするエンジンの停止制御装置。
【請求項6】
請求項4に記載のエンジンの停止制御装置において、
前記弁制御部は、前記指標温度に関わらず前記第1の制御と前記第2の制御とを実行し、前記指標温度が前記判定温度未満の場合は前記判定温度以上の場合よりも前記目標値を高くする、ことを特徴とするエンジンの停止制御装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のエンジンの停止制御装置において、
前記弁制御部は、前記指標温度に関わらず前記出力軸の回転が停止したときに前記スロットル弁が閉弁状態となるように当該スロットル弁を制御し、前記指標温度が前記判定温度以上の場合は、前記出力軸の回転が停止した後も前記スロットル弁を閉弁状態に維持し、前記指標温度が前記判定温度未満の場合は、前記出力軸の回転が停止した後に前記スロットル弁を開弁する、ことを特徴とするエンジンの停止制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気筒と、気筒での燃焼のエネルギーを受けて回転する出力軸と、気筒に導入される吸気が流通する吸気通路と、気筒から排出される排気ガスが流通する排気通路と、吸気通路と排気通路とを接続するEGR通路とを備えたエンジンに適用される停止制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記停止制御装置の一例として、下記特許文献1のものが知られている。この特許文献1に記載のエンジンの停止制御装置は、吸気通路に設けられたスロットル弁と、EGR通路に設けられたEGR弁(EGRコントロールバルブ)と、スロットル弁およびEGR弁を制御するコントロールユニットを備える。エンジンを自動停止させる要求があると、コントロールユニットは、EGR弁を開きつつ気筒への燃料噴射を停止するとともに、当該噴射停止(燃料カット)によりエンジンが停止した時点でスロットル弁およびEGR弁を閉じる。このような制御により、特許文献1では、エンジンが停止する前にEGR通路を通じてEGRガス(排気ガス)が吸気通路に導入されるとともに、エンジンの停止後は吸気通路内にEGRガスが封じ込められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-100497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のエンジンの停止制御装置によれば、停止したエンジンを始動させる再始動時に、EGRガスを含む吸気が気筒に導入されることにより、再始動時の燃焼によるNOx生成量が抑制されるという効果が期待される。しかしながら、気筒内の温度が低い場合は、気筒内で生成される混合気の着火性が低くなりやすい。そのため、この場合に多量のEGRガスが気筒に導入されると、混合気が適切に燃焼せずエンジンの始動性が確保されないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、NOxの生成を抑制しつつエンジンの再始動時の始動性を確保可能なエンジンの停止制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するためのものとして、本発明は、気筒と、気筒での燃焼のエネルギーを受けて回転する出力軸と、気筒に導入される吸気が流通する吸気通路と、気筒から排出される排気ガスが流通する排気通路と、吸気通路と排気通路とを接続するEGR通路とを備えたエンジンに適用される停止制御装置であって、前記気筒に燃料を供給するインジェクタと、前記EGR通路に開閉可能に設けられたEGR弁と、前記EGR通路と前記吸気通路との接続部よりも上流側の吸気通路に開閉可能に設けられたスロットル弁と、気筒内の温度に関連する指標温度を検出する温度検出手段と、エンジンを自動的に停止させる自動停止条件が成立したか否かを判定する判定部と、前記判定部により前記自動停止条件が成立したことが確認された場合に前記インジェクタによる燃料の供給を停止する燃料カットを実行する燃料カット実行部と、前記燃料カットが実行されてから前記出力軸の回転が停止するまでの間に、前記接続部よりも下流側の前記吸気通路内の酸素濃度である最終吸気酸素濃度が大気の酸素濃度よりも低くなるように前記スロットル弁の開度と前記EGR弁の開度とを調整する濃度調整制御を実行可能な弁制御部とを備え、前記弁制御部は、前記温度検出手段により検出された前記指標温度が所定の判定温度以上の場合は前記濃度調整制御を実行し、前記指標温度が前記判定温度未満の場合は前記濃度調整制御の実行を抑制する、ことを特徴とするものである(請求項1)。
【0007】
本発明では、指標温度が高い場合、つまり、気筒内の温度が高いと考えられる場合に、燃料カットの実行から出力軸の回転停止(つまりエンジンの停止)までの間に濃度調整制御が実行されて、EGR通路と吸気通路の接続部よりも下流側の吸気通路内の酸素濃度である最終吸気酸素濃度が大気の酸素濃度よりも低くされる。そのため、気筒内の温度が高いことで混合気の着火性が高い場合に、エンジンの停止時およびその後の再始動時の最終吸気酸素濃度であって再始動時に気筒に導入される吸気の酸素濃度を大気の酸素濃度よりも低くできる。従って、エンジンの再始動時に、その始動性を確保しつつNOxの生成を抑えることができる。
【0008】
一方、指標温度が低いことで気筒内の温度が低いと考えられる場合には、最終吸気酸素濃度を大気の酸素濃度よりも低くする濃度調整制御の実行が抑制される。そのため、気筒内の温度が低いことで混合気の着火性が低い場合に、エンジンの再始動時の最終吸気酸素濃度を大気の酸素濃度に近い高い濃度にできる。従って、エンジンの再始動時に、混合気の着火性を高くしてその始動性を確保することができる。
【0009】
前記構成において、好ましくは、前記温度検出手段は、エンジンを冷却する冷却水の温度を前記指標温度として検出する(請求項2)。
【0010】
この構成によれば、気筒内の温度と相関の高い冷却水の温度に基づいて濃度調整制御の実行と実行抑制とが切り替えられることで、これらの切替を適切に行うことができ、始動性を確実に良好にできるとともにNOxの生成を確実に抑制できる。
【0011】
前記構成において、好ましくは、前記温度検出手段は、外気温を前記指標温度として検出する(請求項3)。
【0012】
この構成によれば、気筒内の温度と相関の高い外気温に基づいて濃度調整制御の実行と実行抑制とが切り替えられることで、これらの切替を適切に行うことができ、始動性を確実に良好にできるとともにNOxの生成を確実に抑制できる。
【0013】
前記構成において、好ましくは、前記濃度調整制御は、前記燃料カットの実行後に前記最終吸気酸素濃度が上昇するように前記スロットル弁を開弁状態にする第1の制御と、前記最終吸気酸素濃度が所定の目標値まで上昇した時点で前記スロットル弁を全閉にする第2の制御とを含む(請求項4)。
【0014】
燃料カット前は、EGR通路を通じた排気ガスの還流(EGR操作)が行われることによって、最終吸気酸素濃度が過度に低い濃度となりやすい。これに対して、本構成では、濃度調整制御の一環として燃料カット後にスロットル弁が開弁状態とされるので(第1の制御)、酸素を豊富に含んだ多量の新気をスロットル弁よりも下流側の吸気通路に導入できる。これより、最終吸気酸素濃度を目標値に向けて上昇させることができる。そして、最終吸気酸素濃度が目標値まで上昇した時点でスロットル弁が閉弁されることで(第2の制御)、スロットル弁を通じた新気の導入を停止して最終吸気酸素濃度を実質的に目標値に維持することができる。従って、本構成によれば、濃度調整制御の実行時において、エンジン再始動時の最終吸気酸素濃度をより確実に目標値にできる。
【0015】
前記構成において、好ましくは、前記弁制御部は、前記指標温度が前記判定温度未満の場合、前記第1の制御を実行し、前記第2の制御の実行を禁止する(請求項5)。
【0016】
この構成によれば、指標温度が判定温度未満の場合に、第1の制御によって最終吸気酸素濃度を高めることができるとともに、第2の制御が禁止されることにより最終吸気酸素濃度が目標値に到達した後もスロットル弁を開弁状態に維持して吸気通路に新気を導入できる。これより、指標温度が判定温度未満の場合のエンジンの再始動時の最終吸気酸素濃度をより確実に高めることができ、エンジンの始動性を確実に良好にできる。
【0017】
前記構成とは別の構成として、前記弁制御部は、前記指標温度に関わらず前記第1の制御と前記第2の制御とを実行し、前記指標温度が前記判定温度未満の場合は前記判定温度以上の場合よりも前記目標値を高くする、としてもよい(請求項6)。
【0018】
この構成では、指標温度が判定温度未満の場合に、濃度調整制御の目標値が指標温度が判定温度以上の場合の値よりも高くされつつ、前記の第1の制御および第2の制御を含む濃度調整制御が実行される。そのため、指標温度が判定温度未満の場合において、エンジン再始動時の最終吸気酸素濃度を始動に適した比較的高い濃度に調整できる。従って、この構成によっても、指標温度が判定温度未満の場合におけるエンジンの再始動時の最終吸気酸素濃度をより確実に高めることができ、エンジンの始動性を確実に良好にできる。
【0019】
前記構成において、好ましくは、前記弁制御部は、前記指標温度に関わらず前記出力軸の回転が停止したときに前記スロットル弁が閉弁状態となるように当該スロットル弁を制御し、前記指標温度が前記判定温度以上の場合は、前記出力軸の回転が停止した後も前記スロットル弁を閉弁状態に維持し、前記指標温度が前記判定温度未満の場合は、前記出力軸の回転が停止した後に前記スロットル弁を開弁する(請求項7)。
【0020】
この構成によれば、指標温度が判定温度以上の場合、エンジン停止後にスロットル弁が閉弁状態に維持される。そのため、吸気通路に新気が導入されるのを回避して、エンジンの再始動時の最終吸気酸素濃度を確実にエンジン停止時の濃度つまり目標値にできる。これより、指標温度が判定温度以上の場合において、エンジンの始動性を確保しつつNOxの生成を確実に抑えることができる。また、指標温度が判定温度未満の場合は、出力軸の回転停止後つまりエンジンの停止後にスロットル弁が開弁されて、吸気通路への新気の導入が許可される。これより、指標温度が判定温度未満の場合のエンジンの再始動時の最終吸気酸素濃度をより確実に高めることができ、エンジンの始動性をより一層確実に良好にできる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明のエンジンの停止制御装置によれば、NOxの生成を抑制しつつエンジンの始動性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の停止制御装置が適用されたエンジンの好ましい実施形態を示す概略システム図である。
図2】上記エンジンの制御系統を示す機能ブロック図である。
図3】第1実施形態に係る自動停止制御の前半部を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態に係る自動停止制御の後半部を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態に係る自動停止制御が実行された場合の各状態量の時間変化の一例を示すタイムチャートである。
図6図5とは異なる条件で第1実施形態に係る自動停止制御が行われた場合の各状態量の時間変化の一例を示すタイムチャートである。
図7】第2実施形態に係る自動停止制御の前半部を示すフローチャートである。
図8】第2実施形態に係る自動停止制御の後半部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
<エンジンの全体構成>
本発明の第1実施形態に係る停止制御装置について説明する。図1は、第1実施形態に係る停止制御装置が適用されたエンジンの好ましい実施形態を示す概略システム図である。本図に示されるエンジンは、走行用の動力源として車両に搭載される4サイクルのディーゼルエンジンである。エンジンは、軽油を含有する燃料の供給を受けて駆動されるエンジン本体1と、エンジン本体1に導入される吸気が流通する吸気通路30と、エンジン本体1から排出された排気ガスが流通する排気通路40と、排気通路40を通過する排気ガスにより駆動される過給機50と、排気通路40を流通する排気ガスの一部を吸気通路30に還流させる高圧EGR装置60および低圧EGR装置70とを備える。
【0024】
エンジン本体1は、図1の紙面に直交する方向に並ぶ複数の気筒2(図1ではそのうちの一つのみを示す)を有する直列多気筒型のものである。エンジン本体1は、複数の気筒2が内部に形成されたシリンダブロック3と、各気筒2の上端開口を塞ぐようにシリンダブロック3の上面に取り付けられたシリンダヘッド4と、各気筒2にそれぞれ往復摺動可能に収容された複数のピストン5とを備える。なお、本第1実施形態では、シリンダブロック3からシリンダヘッド4に向かう側を上、その逆を下として扱うが、これは説明の便宜のためであって、エンジンの据付姿勢を限定する趣旨ではない。
【0025】
各気筒2のピストン5の上方には、それぞれ燃焼室6が形成されている。各燃焼室6は、シリンダヘッド4の下面と、気筒2の側周面(シリンダライナ)と、ピストン5の冠面5aとによって画成された空間である。燃焼室6には、後述するインジェクタ15からの噴射によって燃料が供給される。供給された燃料と空気との混合気が燃焼室6で燃焼され、その燃焼による膨張力で押し下げられたピストン5が上下方向に往復運動する。
【0026】
シリンダブロック3の下部(ピストン5の下方)には、エンジン本体1の出力軸であるクランク軸7が設けられている。クランク軸7は、各気筒2のピストン5とコネクティングロッド8を介して連結され、ピストン5の往復運動(上下運動)に応じて中心軸回りに回転する。
【0027】
シリンダブロック3には、クランク角センサSN1および水温センサSN2が取り付けられている。クランク角センサSN1は、クランク軸7の回転角度であるクランク角と、クランク軸7の回転数であるエンジン回転数とを検出する。水温センサSN2は、シリンダブロック3およびシリンダヘッド4の内部を流通してエンジンを冷却する冷却水の温度つまりエンジン水温を検出する。
【0028】
シリンダヘッド4には、燃焼室6と連通する吸気ポート9および排気ポート10が、それぞれ気筒2ごとに形成されている。また、シリンダヘッド4には、吸気弁11、排気弁12、およびインジェクタ15の組合せが、それぞれ気筒2ごとに装備されている。吸気弁11は、吸気ポート9の燃焼室6側の開口を開閉するバルブである。排気弁12は、排気ポート10の燃焼室6側の開口を開閉するバルブである。インジェクタ15は、燃焼室6に燃料(軽油)を噴射する噴射弁であり、例えば燃焼室6の天井面中央からピストン5の冠面5aに向かって燃料を噴射するようにシリンダヘッド4に取り付けられる。
【0029】
シリンダヘッド4には、吸気弁11を開閉駆動する動弁機構13と、排気弁12を開閉駆動する動弁機構14とが組み付けられている。これら動弁機構13,14の組合せは、例えばクランク軸7に連係された一対のカムシャフトを含み、クランク軸7の回転に連動して各気筒2の吸気弁11および排気弁12を開閉駆動する。
【0030】
吸気通路30は、各気筒2の吸気ポート9と連通するようにシリンダヘッド4の一側面に接続されている。吸気通路30には、その上流側から順に、エアクリーナ31、スロットル弁32、インタークーラ33、およびサージタンク34が配置されている。エアクリーナ31は、吸気中の異物を除去するフィルターである。スロットル弁32は、吸気通路30を流通する吸気の流量を調整可能な電動式のバタフライ弁である。インタークーラ33は、過給機50(詳しくは後述するコンプレッサ51)により圧縮された吸気を冷却する熱交換器である。サージタンク34は、各気筒2に吸気を均等に配分するための空間を提供するタンクである。
【0031】
吸気通路30には、エアフローセンサSN3、外気温センサSN4および吸気圧センサSN5が配置されている。エアフローセンサSN3は、吸気通路30におけるエアクリーナ31と後述する第2EGR出口部71bの間の部分に配置され、当該部分を通過する吸気の流量つまり吸気流量を検出する。外気温センサSN4は、エンジンの外部環境の温度である外気温を検出するためのセンサである。吸気通路30におけるエアクリーナ31と後述する第2EGR出口部71bの間の部分を通過する吸気の温度は、外気温とほぼ同じであり、外気温センサSN4は、この部分に設けられてこの部分を通過する吸気の温度を外気温として検出する。吸気圧センサSN5は、サージタンク34に配置され、当該サージタンク34を通過する吸気の圧力つまり吸気圧を検出する。
【0032】
排気通路40は、各気筒2の排気ポート10と連通するようにシリンダヘッド4の一側面(吸気通路30と反対側の面)に接続されている。排気通路40には、排気ガスを浄化する触媒装置41が設けられている。触媒装置41は、排気ガス中のCOおよびHCを酸化して無害化する酸化触媒42と、排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するためのDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)43とを内蔵している。
【0033】
排気通路40には、排気OセンサSN6が取り付けられている。排気OセンサSN6は、排気通路40におけるタービン52と触媒装置41との間の部分に設けられ、当該部分を通過する排気ガスに含まれる酸素の濃度つまり排気酸素濃度を検出する。
【0034】
過給機50は、吸気通路30に配置されたコンプレッサ51と、排気通路40に配置されたタービン52と、これらを連結するタービン軸53とを備える。タービン52は、排気通路40を流れる排気ガスのエネルギーを受けて回転する。コンプレッサ51はタービン52により回転駆動されて吸気を圧縮しつつ送り出す(過給する)。コンプレッサ51は、エアクリーナ31とスロットル弁32との間の吸気通路30に配置されている。
【0035】
高圧EGR装置60は、タービン52に流入する前の比較的圧力の高い排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路30に還流するための装置である。高圧EGR装置60は、排気通路40と吸気通路30とを接続する第1EGR通路61と、第1EGR通路61に設けられた第1EGR弁62および第1EGRクーラ63とを備える。第1EGR弁62は、第1EGR通路61を流通するEGRガスの流量を調整可能な電動式のバルブである。第1EGRクーラ63は、第1EGR通路61を流通するEGRガスを冷却する熱交換器である。なお、第1EGR通路61および第1EGR弁62は、それぞれ本発明における「EGR通路」「EGR弁」に相当する。
【0036】
第1EGR通路61の上流側(排気通路40側)の端部が排気通路40に接続される箇所である第1EGR入口部61aは、排気通路40のうちタービン52よりも上流側に位置している。また、第1EGR通路61の下流側(吸気通路30側)の端部が吸気通路30に接続される箇所である第1EGR出口部61bは、吸気通路30におけるスロットル弁32とサージタンク34との間に位置している。なお、第1EGR出口部61bは、本発明における「EGR通路と吸気通路との接続部」に相当する。
【0037】
低圧EGR装置70は、タービン52を通過した後の比較的圧力の低い排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路30に還流するための装置である。低圧EGR装置70は、排気通路40と吸気通路30とを接続する第2EGR通路71と、第2EGR通路71に設けられた第2EGR弁72および第2EGRクーラ73とを備える。第2EGR弁72は、第2EGR通路71を流通するEGRガスの流量を調整可能な電動式のバルブである。第2EGRクーラ73は、第2EGR通路71を流通するEGRガスを冷却する熱交換器である。
【0038】
第2EGR通路71の上流側(排気通路40側)の端部が排気通路40に接続される箇所である第2EGR入口部71aは、排気通路40におけるタービン52および触媒装置41よりも下流側に位置している。また、第2EGR通路71の下流側(吸気通路30側)の端部が吸気通路30に接続される箇所である第2EGR出口部71bは、吸気通路30におけるエアクリーナ31とコンプレッサ51との間に位置している。
【0039】
<制御系統>
図2は、エンジンの制御系統を示す機能ブロック図である。本図に示されるECU100は、エンジンを統括的に制御するための装置であり、各種演算処理を行うプロセッサ(CPU)と、ROMおよびRAM等のメモリーと、各種の入出力バスとを含むマイクロコンピュータにより構成されている。
【0040】
ECU100には、エンジンの各センサによる検出情報が入力される。ECU100は、当該検出情報等に基づいて種々の判定や演算を実行して、インジェクタ15等のエンジンの各部を制御する。具体的に、ECU100は、クランク角センサSN1、水温センサSN2、エアフローセンサSN3、外気温センサSN4、吸気圧センサSN5、および排気OセンサSN6と電気的に接続されており、これらセンサSN1~SN6の検出情報(クランク角、エンジン回転数、エンジン水温、吸気流量、外気温、吸気圧、排気酸素濃度)等がECU100に逐次入力される。また、本第1実施形態では、エンジンが搭載される車両に、車速(車両の走行速度)を検出する車速センサSN7、車両に備わるアクセルペダルの開度であるアクセル開度を検出するアクセルセンサSN8、および、車両に備わるブレーキペダルの操作(ブレーキ操作)の有無を検出するブレーキセンサSN9が設けられている。ECU100には、これらセンサSN7~SN9による検出情報(車速、アクセル開度、およびブレーキ操作の情報)も逐次入力される。
【0041】
ECU100は、各種の判定を行う判定部101と、後述する燃料カットを実行する燃料カット実行部102と、後述する自動停止条件成立後にスロットル弁およびEGR弁を制御する弁制御部103とを機能的に有している。
【0042】
<自動停止制御>
次に、稼働中のエンジンを自動的に停止させる自動停止制御の詳細について説明する。図3は、第1実施形態に係る自動停止制御の具体的手順を示すフローチャートである。
【0043】
図3のフローチャートによる制御がスタートすると、判定部101は、所定の自動停止条件が成立したか否かを判定する(ステップS1)。自動停止条件は、エンジンの自動停止を許可する条件のことであり、車両の形式等によって種々の条件が設定され得る。
【0044】
例えば、走行用の動力源が実質的にエンジンのみである車両(いわゆるエンジン車)では、(i)車両が実質的に停止していること、(ii)アクセルペダルがオフ状態であること、(iii)プレーキペダルがオン状態であること、を含む複数の条件が全て揃った場合に、自動停止条件が成立し得る。この場合、判定部101は、車速センサSN7、アクセルセンサSN8、およびブレーキセンサSN9から入力される情報に基づいて、車速が実質的にゼロであるか否か、アクセル開度が実質的にゼロであるか否か、ブレーキペダルが踏み込み操作されているか否かをそれぞれ判定する。そして、これらの判定が全てYESであった場合(つまり上記(i)~(iii)の条件が全て成立した場合)に、自動停止条件が成立したと判定する。
【0045】
一方、走行用の動力源としてモータが併用される車両、つまりモータのみによるEV走行が可能ないわゆるハイブリッド車両では、車両の走行中であってもエンジンの駆動力が不要になる場合があり、このような状況が生じたときに自動停止条件が成立し得る。この場合、判定部101は、車速センサSN7により検出される車速や、アクセルセンサSN8により検出されるアクセル開度等から、エンジンおよびモータを含む駆動源の目標トルクを算出し、算出した目標トルクを含む各種条件からエンジン出力(走行に寄与する正の出力トルク)が必要か否かを判定する。そして、エンジン出力が不要と判定された場合に、自動停止条件が成立したと判定する。
【0046】
上記いずれのパターンによる自動停止条件であっても、これが成立する直前のエンジンの負荷は高くない。この状態において、エンジンは、第1EGR弁62および第2EGR弁72の少なくとも一方が開いた状態で運転される。つまり、自動停止条件が成立する前提として、エンジンは、排気通路40から吸気通路30に排気ガスを還流させるEGRの実行中にあり、しかもそのEGR率(吸気中に占めるEGRガスの割合)は比較的高い。このため、自動停止条件が成立するとき、吸気通路30内の酸素濃度は、少なくともエンジン本体1の近傍(詳しくは第1EGR出口部61bよりも下流側の部分)において大気中の酸素濃度に対し有意に低下しており、その値は後述するステップS13で用いられる最終吸気酸素濃度の基本目標値Dxよりも低くなっている。
【0047】
上記ステップS1でYESと判定されて自動停止条件が成立したことが確認された場合、弁制御部103は、スロットル弁32を全閉にする(ステップS2)。つまり、弁制御部103は、スロットル弁32の開度を当該弁を通じたガスの移動が実質的に生じない開度(0%等)まで低下させる。なお、第1EGR弁62および第2EGR弁72の開度は、自動停止条件が成立する以前の運転条件に応じて異なり得るが、少なくとも第1EGR弁62については、自動停止条件の成立時に開弁状態(全閉以外の状態)にあり、且つその状態が当該ステップS2においても維持されるものとする。言い換えると、当該ステップS2では、第1EGR弁62を開弁状態に維持しつつスロットル弁32を全閉にする制御が実行される。
【0048】
次いで、燃料カット実行部102は、各気筒2のインジェクタ15からの燃料噴射を停止する燃料カットを実行する(ステップS3)。燃料カットが実行されて以降は、各気筒2での燃焼が停止されることにより、エンジン回転数が徐々に低下していく。
【0049】
次いで、弁制御部103は、第1EGR弁62の開度が所定の停止用EGR開度になるように第1EGR弁62を制御する(ステップS4)。停止用EGR開度は、予め所定の中間開度に設定されて弁制御部103に記憶されている。中間開度とは、全閉(0%)でも全開(100%)でもない開度のことであり、ガスの流通を許容しながら流路を実質的に絞るような開度のことである。例えば、停止用EGR開度は、30%程度に設定される。なお、第2EGR弁72の開度は適宜の値に設定し得るが、例えば第1EGR弁62とは別に定められた特定の中間開度に設定することができる。
【0050】
次いで、判定部101は、指標温度が所定の判定温度未満であるか否かを判定する(ステップS5)。指標温度は、気筒2内の温度と関連する温度であって混合気の着火性の指標となる温度である。具体的にはエンジン水温が低いときは気筒2内の温度も低いことで混合気の着火性は低くなり、エンジン水温が高いときは気筒2内の温度も高いことで混合気の着火性は高くなる。これより、本第1実施形態では、指標温度としてエンジン水温が用いられる。つまり、ステップS4において、判定部101は、エンジン水温が所定の判定温度未満であるか否かを判定する。ステップS4の判定には、水温センサSN2の検出値が用いられる。つまり、本第1実施形態では、水温センサSN2が、指標温度を検出する「温度検出手段」に相当する。上記の判定温度は予め設定されて判定部101に記憶されている。
【0051】
ステップS5でNOと判定されて指標温度(エンジン水温)が判定温度以上であることが確認された場合、弁制御部103は、濃度調整制御を実行する(ステップS20)。濃度調整制御の詳細は後述する。
【0052】
一方、ステップS5でYESと判定されて指標温度(エンジン水温)が判定温度未満であることが確認された場合、弁制御部103は、スロットル弁32の開度を低温時停止用スロットル開度にする(ステップS6)。低温時停止用スロットル開度は、予め所定の中間開度に設定されて弁制御部103に記憶されている。例えば、低温時停止用スロットル開度は50%程度に設定される。このようにしてスロットル弁32が開弁状態とされることで吸気通路30には新気が導入される。また、ステップS4の実行により第1EGR弁62は開弁されているものの、燃料カット後は気筒2内での燃焼が停止されることでEGRガスの酸素濃度は、吸気通路30内の酸素濃度と同じ濃度に向かって上昇していく。これより、燃料カット後、吸気通路30内の酸素濃度は上昇していく。
【0053】
次いで、弁制御部103は、スロットル弁32および第1EGR弁62の各開度がエンジン回転数と連動して変化するように各弁32,62を制御する(ステップS7)。具体的に、弁制御部103は、スロットル弁32および第1EGR弁62が開弁状態に維持される範囲で、エンジン回転数が漸減するのに応じてスロットル弁32および第1EGR弁62の各開度をそれぞれ漸減させる。このとき、弁制御部103は、吸気圧を安定させ得る適宜の値になる速度で、スロットル弁32および第1EGR弁62の各開度を低減させていく。
【0054】
次いで、判定部101は、エンジン回転数が所定の基準回転数Nx未満まで低下したか否かを判定する(ステップS8)。基準回転数Nxは、ステップS2の燃料カット時のエンジン回転数よりも小さい値であって、今後の吸気圧の負圧化を適切なレベルに調整し得るような値に予め設定されて判定部101に記憶されている。具体的に、基準回転数Nxは、後述するステップS9以降に大きく負圧化する吸気圧の最小値Py(図5(d)参照)が所定の目標範囲Zに収まるような値に設定される。なお、目標範囲Zは、例えば50kPaを含むように設定することができ、基準回転数Nxは、例えば700~800rpm程度に設定することができる。
【0055】
弁制御部103は、スロットル弁32および第1EGR弁62の各開度の漸減(ステップS7)を継続しつつ、ステップS8の判定がYESになるのを待つ。そして、弁制御部103は、ステップS8でYESと判定されてエンジン回転数が基準回転数Nx未満になったことが確認されると、スロットル弁32と第1EGR弁62を全閉にする(つまり、閉弁状態にする)(ステップS9)。スロットル弁32と第1EGR弁62との双方が閉弁状態(全閉)とされることで、ステップS9以降、吸気圧の負圧化は進行する。
【0056】
次いで、判定部101は、エンジンEが完全停止したか否かを判定する(ステップS10)。判定部101は、エンジン回転数が実質的にゼロまで低下するとエンジンEが完全停止したと判定する。判定部101は、クランク角センサSN1の検出値に基づいてこの判定を行う。
【0057】
弁制御部103は、第1EGR弁62およびスロットル弁32の双方を閉弁状態に維持しつつ、ステップS10の判定がYESになるのを待つ。そして、弁制御部103は、ステップS10でYESと判定されてエンジンEが完全停止したことが確認されると、スロットル弁32を開いてその開度を所定の始動用スロットル開度にする(ステップS11)。このとき第1EGR弁62の開操作は行われず、第1EGR弁62は閉弁状態(全閉の状態)に維持されたままスロットル弁32が開弁される。始動用スロットル開度は、予め所定の中間開度に設定されて弁制御部103に記憶されている。始動用スロットル開度は、例えば、50%程度に設定される。なお、スロットル弁32を開弁させるステップS11は、エンジンEが完全停止した直後(ステップS10の判定がYESになった直後)に実行されてもよいが、本第1実施形態では、エンジンEが完全停止してから所定時間後に実行される。
【0058】
このように、指標温度(エンジン水温)が判定温度未満の場合は、燃料カットが実行されてからエンジン回転数が基準回転数Nx未満になるまでの間、スロットル弁32と第1EGR弁62とはともに開弁状態とされ、エンジン回転数が基準回転数Nx未満になると双方が閉弁状態とされる。そして、エンジンEが完全停止すると、その後、第1EGR弁62は閉弁状態に維持されたままスロットル弁32が開弁される。
【0059】
<濃度調整制御>
次に、上記ステップS5でNOと判定された場合に実行される濃度調整制御について、図4のフローチャートを用いて説明する。濃度調整制御では、第1EGR出口部61bよりも下流側の吸気通路30内に存在する吸気の酸素濃度(第1EGR出口部61bよりも下流側の吸気通路30内の酸素濃度)が所定の目標値になるようにスロットル弁および第1EGR弁62が制御されるようになっており、以下では、この制御の対象となる酸素濃度、つまり、第1EGR出口部61bよりも下流側の吸気通路30に存在する吸気の酸素濃度のことを、「最終吸気酸素濃度」という。
【0060】
濃度調整制御がスタートすると、つまり、上記ステップS5でNOと判定されて指標温度が判定温度以上であることが確認されると、弁制御部103は、スロットル弁32の開度を所定の停止用スロットル開度にする(ステップS21)。停止用スロットル開度は、上記の低温時停止用スロットル開度よりも小さい中間開度に予め設定されて弁制御部103に記憶されている。例えば、低温時停止用スロットル開度が50%程度とされるのに対して、停止用スロットル開度は30%程度とされる。ステップS21以降も、ステップS6以降と同様にスロットル弁32が開弁状態とされることにより、また、燃料カットが実行されていることにより、最終酸素濃度を含む吸気通路30内の酸素濃度は上昇する。
【0061】
次いで、弁制御部103は、ステップS7と同様に、スロットル弁32および第1EGR弁62の各開度をエンジン回転数と連動してそれぞれ漸減させる(ステップS22)。
【0062】
次いで、判定部101は、最終吸気酸素濃度の推定値がその目標値である基本目標値Dx以上になったか否か、つまり、最終吸気酸素濃度が基本目標値Dxまで上昇したか否かを判定する(ステップS23)。基本目標値Dxは、大気中の酸素濃度つまり吸気が全て新気で占められた場合の吸気酸素濃度よりも小さい値である。基本目標値Dxは予め上記のように設定されて判定部101に記憶されている。
【0063】
弁制御部103は、スロットル弁32および第1EGR弁62の各開度の漸減(ステップS22)を継続しつつ、ステップS13の判定がYESになるのを待つ。そして、ステップS13でYESと判定されて最終吸気酸素濃度が基本目標値Dx以上になったことが確認されると、弁制御部103は、スロットル弁32を全閉にする(ステップS24)。
【0064】
次いで、弁制御部103は、吸気圧が基準圧力Px(図5参照)を下回らないように第1EGR弁62の開度を調整する(ステップS25)。基準圧力Pxは、吸気圧センサSN5により検出されるサージタンク34内の圧力つまり吸気圧の基準値であって、大気圧をやや下回るような弱い負圧に相当する値に設定される。基準圧力Pxがこのような値(弱い負圧)であることから、当該ステップS25が開始されると、第1EGR弁62の開度はその直前の開度よりも増大させられる。つまり、上記ステップS24でのスロットル弁32の閉弁により、新たな吸気の導入が基本的に停止されるので、この状態で吸気圧を弱い負圧に留めるには、第1EGR弁62の開度を増大させて第1EGR通路61を通じたEGRガスの還流を促進する必要がある。そこで、当該ステップS25において、弁制御部103は、第1EGR弁62を開方向に駆動し、それによって吸気圧が基準圧力Pxを下回らないように(弱い負圧に留まるように)調整する。具体的に、弁制御部103は、第1EGR弁62の基本開度をエンジン回転数からマップ等を参照しつつ決定するとともに、決定した基本開度を、吸気圧センサSN5による検出圧力を用いて補正することにより、第1EGR弁62の目標開度を算出する。ステップS25では、このように算出される目標開度に従って第1EGR弁62の開度が制御されることにより、サージタンク34内の吸気圧が基準圧力Pxを下回らないように(弱い負圧に)調整される。
【0065】
次いで、判定部101は、エンジン回転数が上記の基準回転数Nx未満まで低下したか否かを判定する(ステップS26)。
【0066】
弁制御部103は、第1EGR弁62の開度調整(ステップS25)を継続しつつ、ステップS26の判定がYESになるのを待つ。そして、ステップS26でYESと判定されてエンジン回転数が基準回転数Nx未満になったことが確認されると、弁制御部103は、第1EGR弁62を全閉にする(ステップS27)。ここで、スロットル弁32は上記ステップS24の制御を経て既に閉弁状態にある。このため、当該ステップS27以降は、スロットル弁32と第1EGR弁62との双方が閉弁状態(全閉)とされ、これによって吸気圧の負圧化が進行する。
【0067】
このようにして、濃度調整制御では、最終吸気酸素濃度を目標値にするべく、燃料カットの実行後にスロットル弁32を開弁状態にして最終吸気酸素濃度を上昇させる制御(ステップS21~S23、第1の制御)が実行されるとともに、最終吸気酸素濃度が目標値まで上昇した時点でスロットル弁32を全閉にする制御(ステップS23~S24、第2の制御)が実行される。
【0068】
濃度調整制御が実行された後は、図4のフローチャートに戻り、判定部101は、ステップS10と同様にエンジンが完全停止したか否かを判定する(ステップS28)。
【0069】
弁制御部103は、第1EGR弁62およびスロットル弁32の双方を閉弁状態に維持しつつ、ステップS28の判定がYESになるのを待つ。そして、ステップS28でYESと判定されてエンジンが完全停止したことが確認されると、弁制御部103は、スロットル弁32を閉弁状態に維持しつつ第1EGR弁62を開弁して、第1EGR弁62の開度を始動用EGR開度にする(ステップS29)。このときスロットル弁32の開操作は行われず、スロットル弁32は閉弁状態に維持されたまま第1EGR弁62が開弁される。上記の始動用EGR開度は、予め所定の中間開度に設定されて弁制御部103に記憶されている。例えば、始動用EGR開度は、50%程度とされる。なお、ステップS29は、エンジンEが完全停止してから所定時間後に実行されてもよいが、本第1実施形態では、ステップS28の判定がYESとなった直後にステップS29が実行されて第1EGR弁62が開弁される。
【0070】
<自動停止制御による各部の動作例>
図5図6は、上記の自動停止制御が実行された場合の各状態量の時間変化の一例を示すタイムチャートであり、(a)は自動停止条件の成否を示すフラグ、(b)はインジェクタ15からの燃料噴射の要否を示すフラグ、(c)はエンジン回転数、(d)はサージタンク34内の吸気圧、(e)はスロットル弁32および第1EGR弁62の各開度、(f)はサージタンク34内の吸気酸素濃度(つまり最終吸気酸素濃度)の時間変化を、それぞれ示している。図5は、指標温度が判定温度以上の場合のタイムチャートである。図6は、指標温度が判定温度未満の場合のタイムチャートである。なお、自動停止条件の成否を示すフラグは自動停止条件が成立するとONになる。また、インジェクタ15からの燃料噴射の要否を示すフラグはインジェクタ15からの燃料噴射が必要な場合にONになるフラグであって、燃料カットの実行時はOFFになるフラグである。
【0071】
まず、図5を用いて指標温度が判定温度以上の場合の各状態量の変化を説明する。図5では、自動停止条件が成立した時点をt0としている。図5に示すように、時点t0にて自動停止条件が成立すると、まずスロットル弁32の開度が0%(全閉)まで低減される。次に、時点t0から遅れた時点t1において、燃料カットが実行される。
【0072】
燃料カットが実行されると、その直後に、第1EGR弁62の開度が停止用EGR開度にされるとともに、スロットル弁32の開度が停止用スロットル開度とされる。図5の例では、停止用EGR開度と停止用スロットル開度とは同じ開度α%に設定されており、時点t1直後において、第1EGR弁62およびスロットル弁32の開度は開度α%とされる。上記のように、スロットル弁32が開弁状態とされることで吸気通路30に新気が導入されること、および、燃料カットがなされてEGRガスの酸素濃度が上昇していくことにより、時点t1以降、最終吸気酸素濃度は徐々に増大していく。
【0073】
燃料カットの実行時点t1から遅れた時点t2において、エンジン回転数が実際に低下し始める。これを受けて、時点t2以降、スロットル弁32および第1EGR弁62の各開度は漸減される。
【0074】
その後、時点t3において最終吸気酸素濃度が基本目標値Dxまで上昇する。これより、時点t3において、スロットル弁32は全閉にされて、その開度は0%まで低減される。スロットル弁32が全閉になることで、吸気通路30内への新気の流入は停止する。これより、時点t3にて、最終吸気酸素濃度の上昇は停止し、時点t3以降、最終吸気酸素濃度は基本目標値Dx近傍に維持される。また、時点t3において、第1EGR弁62の開度がβ%(>α%)まで増大される。これにより、吸気圧は基準圧力Pxを下回らない値に維持される。
【0075】
基本目標値Dxの達成時点t3から遅れた時点t4において、エンジン回転数が基準回転数Nxイマンまで低下する。これを受けて、第1EGR弁62は全閉にされてその開度が0%まで低減される。当該制御により、第1EGR弁62およびスロットル弁32の双方が閉弁状態とされるので、時点t4以降、吸気圧は急激に低下していき、エンジン回転数も急速に低下していく。ここで、時点t3からしばらく後に吸気圧は最小値Pyとなる。上記のように、基準回転数Nxは、吸気圧の最小値Py(図5(d)参照)が所定の目標範囲Zに収まるような値に設定されており、時点t3からしばらく後して実現される吸気圧の最小値Pyは目標範囲Zに収まる。
【0076】
時点t4から遅れた時点t5において、エンジン回転数はゼロまで低下し、エンジンは完全停止に至る。図5の例では、指標温度が判定温度以上であることに伴い、時点t5後の時点t6において、第1EGR弁62が開弁されてその開度が0%から始動用EGR開度γ%まで増大される。図5の例では、始動用EGR開度γ%は、上述したα%およびβ%のいずれよりも大きい高開度(例えば全開に近い開度)に設定される。このように時点t6において第1EGR弁62が開弁することで、サージタンク34には第1EGR通路61内のEGRガスが流入する。そのため、時点t6以降、吸気圧は上昇する。一方、時点t6以降もスロットル弁32は閉弁状態に維持されることから、時点t6以降も、最終吸気酸素濃度は基本目標値Dx近傍に維持される。具体的には、燃料カットが実行されてからしばらく後には、気筒2に導入される吸気の成分と気筒2から導出される吸気の成分とはほぼ同じになり、第1EGR通路61内のEGRガスの酸素濃度は最終吸気酸素濃度とほぼ同じになる。そのため、時点t6における第1EGR通路61内のEGRガスの酸素濃度は最終吸気酸素濃度と同じつまり基本目標値近傍となっており、時点t6にて第1EGR弁62が開弁しても、最終吸気酸素濃度は基本目標値近傍に維持される。
【0077】
次に、図6を用いて指標温度が判定温度未満の場合の各状態量の変化を説明する。図6のタイムチャートにおける時点t10~t12は、図5の時点t0~t2と同じ意味をもつ。つまり、図6の例においても、時点t10にて自動停止条件が成立し、時点t11にて燃料カットが実行され、時点t12にてエンジン回転数が実際に低下し始める。これより、図6の例においても、時点t11での燃料カットの実行直後に、第1EGR弁62の開度が停止用EGR開度α%とされる。
【0078】
一方、図6の例では、指標温度が判定温度未満であることから、時点t11でのスロットル弁32の開度が、図5の時点t1で実現される停止用スロットル開度αよりも大きい低温時停止用スロットル開度δ%とされる。そして、時点t12以降、エンジン回転数が低下し始めると、図5と同様に第1EGR弁62は停止用EGR開度α%から漸減されるのに対して、スロットル弁32は低温時停止用スロットル開度δ%から漸減されることになる。
【0079】
また、指標温度が判定温度未満の場合は、最終酸素濃度が所定の目標値となることに伴ってスロットル弁32を全閉にする、という制御が実行されない。つまり、最終酸素濃度が上記の基本目標値になってもスロットル弁32の開弁状態が維持される。これより、最終酸素濃度が基本目標値Dxとなった後も吸気通路30への新気の流入が継続され、最終酸素濃度は上昇し続ける。この結果、時点t3からしばらく後、最終酸素濃度は大気の酸素濃度Dyに近い値まで上昇する。また、指標温度が判定温度未満の場合は、エンジン回転数が基準回転数Nx未満になるのに伴ってスロットル弁32と第1EGR弁62とが全閉にされる。これより、図6の例では、エンジン回転数が基準回転数未満になる時点t13にて、スロットル弁32と第1EGR弁62の双方が閉弁される。
【0080】
また、指標温度が判定温度未満の場合は、エンジンが完全停止に至った後、第1EGR弁62は閉弁状態に維持されたままスロットル弁32が開弁される。これより、図6の例では、エンジンが完全停止に至った時点t14の後の時点15において、第1EGR弁62が閉弁状態に維持されたままスロットル弁32が開弁されて、スロットル弁32の開度が0%から始動用スロットル開度ε%まで増大される。図6の例では、始動用スロットル開度ε%は、低温時停止用スロットル開度δ%と同程度の開度に設定される。
【0081】
時点t15においてスロットル弁32が開弁することで、サージタンク34にはスロットル弁32を通過した新気が流入する。これより、時点t15以降、吸気圧は上昇する。また、時点t15以降、最終吸気酸素濃度も増大する。図6の例では、上記のように、最終吸気酸素濃度は時点t13よりも前に大気の酸素濃度近傍まで上昇している。これより、時点t15以降において最終吸気酸素濃度はわずかに増大する。
【0082】
<第1実施形態の作用等>
上記のように、第1実施形態によれば、指標温度が判定温度以上のときは、濃度調整制御が実行されて、スロットル弁32と第1EGR弁62の各開度の調整によってエンジン停止時の最終吸気酸素濃度が大気の酸素濃度よりも低い基本目標値Dxとされる。そのため、指標温度が判定温度以上であって混合気の着火性が高くエンジンの始動性が確保される場合において、エンジンの再始動時の最終吸気酸素濃度であって再始動時に気筒2に導入される吸気の酸素濃度を大気の酸素濃度よりも低くできる。気筒に導入される吸気の酸素濃度が低ければ生成されるNOxの量は少なくなる。従って、第1実施形態によれば、エンジンの始動性を確保しつつエンジンの再始動時のNOxの生成を抑制できる。
【0083】
一方で、指標温度が判定温度未満であって混合気の着火性が低くなりやすい場合には、エンジン停止時の最終吸気酸素濃度が基本目標値Dxよりも高い濃度とされる。そのため、混合気の着火性を高めることができエンジンの始動性を確実に良好にできる。
【0084】
特に、上記第1実施形態では、指標温度が判定温度以上のときは、エンジンの完全停止後にスロットル弁32が閉弁状態に維持される。そのため、エンジン停止後にスロットル弁32を通じて新気が吸気通路30に導入されるのを回避できる。これより、エンジンの再始動時に気筒2に導入される吸気の酸素濃度を確実に基本目標値DxとしてNOxの生成量を確実に小さくできる。
【0085】
また、指標温度が判定温度未満のときは、エンジンの完全停止後にスロットル弁32が開弁されることで、スロットル弁32を通じて新気を吸気通路30に導入することができる。そのため、エンジン停止後においても最終吸気酸素濃度を高めることができ、エンジンの再始動時に気筒2に導入される吸気の酸素濃度を確実に高くしてエンジンの始動性をより確実に高めることができる。
【0086】
また、上記第1実施形態では、燃料カット後にスロットル弁32が開弁状態とされる(第1の制御)。これより、酸素を豊富に含んだ新気をスロットル弁32よりも下流側の吸気通路に流入させて、最終吸気酸素濃度を上昇させることができる。そのため、指標温度が判定温度未満の場合および判定温度以上の場合のいずれにおいても、最終吸気酸素濃度を適切な濃度に向けて確実に高めることができる。つまり、指標温度が判定温度未満の場合は、基本目標値Dxよりも高く大気の酸素濃度に近い値に向けて最終吸気酸素濃度を高めることができ、指標温度が判定温度以上の場合は基本目標値Dxに向けて最終吸気酸素濃度を高めることができる。
【0087】
そして、指標温度が判定温度以上の場合は、最終吸気酸素濃度が基本目標値Dxまで上昇した時点でスロットル弁32が閉弁されることで(第2の制御)、スロットル弁32を通じた新気の導入を停止して最終吸気酸素濃度を基本目標値Dxに維持することができる。一方、指標温度が判定温度未満の場合は、最終吸気酸素濃度が基本目標値Dxまで上昇した時点でスロットル弁32を閉弁するという第2の制御が実行されず(つまり、禁止されて)、最終吸気酸素濃度が基本目標値Dxまで上昇した後もスロットル弁32が開弁されることで、スロットル弁32の開弁期間を長くして最終吸気酸素濃度を確実に高くできる。
【0088】
また、仮に、エンジンの停止直前に吸気圧が急減してその最小値Pyが目標範囲Zを下回るような過度に小さい値まで低下すると、エンジン回転数の低下スピードが過度に速くなる結果、エンジンが完全停止したときに生じるショック(急停止の反動により車体に伝わるショック)が増大し易くなり、乗員が違和感を覚えるおそれがある。これに対して、上記第1実施形態では、燃料カット後においてスロットル弁32と第1EGR弁62の双方が開弁状態とされるとともに、これらの開度がエンジン回転数に連動して漸減される。また、上記第1実施形態では、濃度調整制御の実行時に、最終吸気酸素濃度が目標値に到達した後しばらくの間第1EGR弁62が開弁状態に維持される。そのため、吸気圧の急減を防止でき、吸気圧の最小値Pyが目標範囲Zに収まる確率を高めてエンジン停止時のショックをより確実に軽減できる。また、エンジンによっては、各気筒2のピストン5の停止位置を再始動に有利な位置に調整する停止位置制御が行われることがあり、このようなエンジンにおいてはエンジン回転数の低下スピードが過度に速くなるのが防止されることで、ピストン5の停止位置制御の精度を高めてエンジンの再始動性を向上させることができる。
【0089】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る停止制御装置について説明する。第2実施形態に係る停止用制御装置は、第1実施形態に対して自動停止制御の一部の内容のみが異なっており、その他の構成については第1実施形態と同様である。以下では、第2実施形態に係る自動停止制御の制御内容について説明する。図7図8は、第2実施形態に係る自動停止制御の具体的手順を示すフローチャートである。
【0090】
第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、まず、判定部101により上記の自動停止条件の成否が判定される(ステップS31)。そして、第2実施形態でも、ステップS31でYESと判定されて自動停止条件が成立したことが確認されると、弁制御部103によって、スロットル弁32の開度が全閉(0%)相当まで低下させられる(ステップS32)とともに、燃料カット実行部102によって燃料カットが実行される(ステップS33)。さらに、第2実施形態でも、燃料カット後に弁制御部103によって、第1EGR弁62の開度が上記の停止用EGR開度とされる(ステップS34)。
【0091】
また、第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、次いで、判定部101によって、指標温度(エンジン水温)が上記の判定温度未満であるか否かが判定される(ステップS35)。また、第2実施形態でも、ステップS35でNOと判定されて指標温度が判定温度以上の場合は、第1実施形態と同様の制御が実行される。一方、ステップS35でYESと判定されて指標温度が判定温度未満の場合、第2実施形態では第1実施形態と異なる制御が実行される。
【0092】
具体的に、ステップS35の判定がNOであって指標温度(エンジン水温)が判定温度以上であることが確認された場合、弁制御部103は、最終吸気酸素濃度の目標値を上記の基本目標値に設定する(ステップS36)。また、指標温度(エンジン水温)が判定温度以上であることが確認された場合、第1実施形態のステップS21と同様に、弁制御部103は、スロットル弁32の開度を上記の停止用スロットル開度にする(ステップS37)。
【0093】
一方、ステップS35の判定がYESであってエンジン水温が判定温度未満であることが確認された場合、弁制御部103は、最終吸気酸素濃度の目標値を上記の基本目標値よりも高い低温時目標値に設定する(ステップS38)。低温時目標値は予め設定されて弁制御部103に記憶されている。次いで、指標温度(エンジン水温)が判定温度未満であることが確認された場合、弁制御部103は、スロットル弁32の開度を上記の低温時停止用スロットル開度にする(ステップS39)。なお、このステップS39は、第1実施形態のステップS6と同様の制御である。
【0094】
ステップS37,S39のいずれかのステップが実行された後は、第1実施形態のステップS22~S28と同じステップS40~S46が実行される。具体的に、弁制御部103は、スロットル弁32および第1EGR弁62の各開度をエンジン回転数と連動してそれぞれ漸減させる(ステップS40)。次いで、判定部101は、最終吸気酸素濃度の推定値がその目標値以上になったか否かを判定する(ステップS41)。ここで、指標温度が判定温度未満の場合はこの判定に用いられる目標値は低温時目標値であり、指標温度が判定温度以上の場合はこの判定に用いられる目標値は基本目標値である。そして、最終吸気酸素濃度が目標値以上になったことが確認されると、弁制御部103は、スロットル弁32を全閉にする(ステップS42)。次いで、弁制御部103は、吸気圧が基準圧力Pxを下回らないように第1EGR弁62の開度を調整する(ステップS43)。次いで、判定部101は、エンジン回転数が基準回転数Nx未満まで低下したか否かを判定する(ステップS44)。そして、エンジン回転数が基準回転数Nx未満になったことが確認されると、弁制御部103は、第1EGR弁62を全閉にする(ステップS45)。次いで、判定部101は、エンジンが完全停止したか否かを判定する(ステップS46)。
【0095】
このように、第2実施形態では、最終吸気酸素濃度の目標値が指標温度に応じて変更されるもののエンジンが完全停止するまでの基本的な制御内容は指標温度に関わらず同じとされる。また、エンジンが完全停止した後の制御も第1実施形態と同様とされる。
【0096】
具体的に、ステップS46でYESと判定されてエンジンが完全停止したことが確認されると、判定部101は指標温度が判定温度未満であるか否かを判定する(ステップS47)。ステップS47でNOと判定されて指標温度が判定温度以上であることが確認された場合、第1実施形態のステップS29と同様に、弁制御部103は、スロットル弁32を閉弁状態に維持しつつ第1EGR弁62を開弁して、第1EGR弁62の開度を始動用EGR開度にする(ステップS48)。一方、ステップS47でYESと判定されて指標温度が判定温度未満であることが確認された場合、第1実施形態のステップS11と同様に、第1EGR弁62を閉弁状態に維持しつつスロットル弁32を開弁して、スロットル弁32の開度を始動用スロットル開度にする(ステップS4)。
【0097】
<第2実施形態の作用等>
以上のように、上記第2実施形態に係る自動停止制御では、指標温度が判定温度以上の場合は第1実施形態と同様の制御が実行される。そのため、第2実施形態によっても、上記第1実施形態と同様に、指標温度が判定温度以上の場合においてエンジンの再始動時にその始動性を確保しつつNOxの生成を抑えることができる。
【0098】
また、上記第2実施形態に係る自動停止制御では、第1実施形態と異なり、指標温度が判定温度未満の場合も最終酸素濃度を目標値にするための濃度調整制御が実行される。ただし、この目標値が、指標温度が判定温度以上の場合の目標値(基本目標値)よりも高くされる。そのため、第2実施形態においても、指標温度が判定温度未満の場合において、エンジンが停止したときの最終吸気酸素濃度ひいてはエンジンの再始動時に気筒2に導入される吸気の酸素濃度を基本目標値よりも高く大気の酸素濃度に近い高い濃度にでき、エンジンの始動性を確保できる。従って、第2実施形態によってもエンジンの始動性の確保とNOx生成量の抑制とを両立することができる。なお、第1実施形態と同様の構成を有することで得られるその他の作用効果は第2実施形態でも得ることができる。
【0099】
(他の実施形態)
上記第1、第2実施形態では、エンジン水温つまりエンジンを冷却する冷却水の温度が指標温度として用いられる場合を説明したが、本発明の停止用制御装置は、外気温が指標温度として用いられる装置であってもよい。つまり、外気温が低いときは気筒2内の温度も低いことで混合気の着火性が低くなりやすいことから、気筒2内の温度に関連する指標温度として外気温を用いることができ、本発明の第3、第4実施形態に係る停止用制御装置では、指標温度として外気温が用いられる。
【0100】
第3実施形態に係る停止用制御装置において、指標温度がエンジン水温ではなく外気温である点以外の構成は、上記第1実施形態と同様の構成が採用される。具体的には、第3実施形態では、指標温度を検出する温度検出手段として外気温センサSN4が用いられる。また、第3実施形態では、上記第1実施形態のステップS5の判定で用いられる指標温度として外気温センサSN4により検出された外気温が用いられ、判定温度として外気温に対応する温度が設定される。
【0101】
また、第4実施形態に係る停止用制御装置において、指標温度がエンジン水温ではなく外気温である点以外の構成は、上記第2実施形態と同様の構成が採用される。具体的には、第3実施形態と同様に、第4実施形態では、指標温度を検出する温度検出手段として外気温センサSN4が用いられる。また、第4実施形態では、上記第2実施形態のステップS35,S44の判定で用いられる指標温度として外気温センサSN4により検出された外気温が用いられ、判定温度として外気温に対応する温度が設定される。なお、外気温を検出するための具体的手段は、上記の外気温センサSN4であって吸気通路30に設けられたセンサに限られない。
【0102】
(変形例)
上記実施形態では、第1EGR出口部61bよりも下流側の吸気通路30に存在する吸気中の酸素濃度である最終吸気酸素濃度を演算により推定する場合を説明したが、最終吸気酸素濃度をセンサにより直接検出するようにしてもよい。例えば、酸素濃度を検出可能なセンサをサージタンク34に取り付け、当該センサにより最終吸気酸素濃度を検出してもよい。
【0103】
上記実施形態では、タービン52よりも上流側の排気通路40とスロットル弁32よりも下流側の吸気通路30とを互いに接続する第1EGR通路61を含む高圧EGR装置60に加えて、タービン52よりも下流側の排気通路40とスロットル弁32よりも上流側の吸気通路30とを互いに接続する第2EGR通路71を含む低圧EGR装置70をエンジンに設けたが、低圧EGR装置70は必須ではなく、省略してもよい。
【0104】
上記実施形態では、軽油を含有する燃料を圧着着火により燃焼させるディーゼルエンジンに本発明を適用した例について説明したが、本発明を適用可能なエンジンは、排気通路から吸気通路に排気ガスを還流するEGR操作が可能なエンジンであればよく、ディーゼルエンジン以外のエンジンに本発明を適用してもよい。例えば、ガソリンを含有する燃料を火花点火により燃焼させることが可能でかつEGR装置を備えたガソリンエンジンに本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 :エンジン本体
2 :気筒
7 :クランク軸(出力軸)
15 :インジェクタ
30 :吸気通路
32 :スロットル弁
40 :排気通路
61 :第1EGR通路(EGR通路)
61b :第1EGR出口部(EGR通路と吸気通路との接続部)
62 :第1EGR弁(EGR弁)
101 :判定部
102 :燃料カット実行部
103 :弁制御部
SN2 :水温センサ(温度検出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8