(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167358
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】ふろ給湯システム
(51)【国際特許分類】
F24H 15/196 20220101AFI20221027BHJP
【FI】
F24H1/00 602Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073109
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】吉川 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 由典
【テーマコード(参考)】
3L024
【Fターム(参考)】
3L024CC01
3L024CC30
3L024DD03
3L024EE02
3L024HH32
3L024HH39
3L024HH58
(57)【要約】
【課題】試運転の時間の短縮により作業者の負担を軽減することができるふろ給湯システムを提供すること。
【解決手段】貯湯槽(11)と湯水加熱手段(10)を有する給湯装置(2)と、給湯装置(2)から湯水供給を受ける浴槽(3)の自動排水栓(3b)の開閉を連動させるふろ給湯システム(1)において、ふろ給湯システム試運転は、給湯装置試運転によって給湯装置(2)内に水張りした後、浴槽(3)に水張りするふろ試運転が行われるように構成され、給湯装置試運転には給湯装置(2)内の水張り後に残留空気を排出するエア抜きが含まれ、給湯装置(2)内の水張り後に
自動排水栓(3b)を閉栓し、エア抜きの開始と共にふろ試運転を開始するように構成した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯槽と湯水加熱手段を有する給湯装置と、前記給湯装置から湯水供給を受ける浴槽の自動排水栓の開閉を連動させるふろ給湯システムにおいて、
給湯装置試運転によって前記給湯装置内に水張りした後、前記浴槽に水張りするふろ試運転が行われるようにふろ給湯システム試運転が構成され、
前記給湯装置試運転には前記給湯装置内の水張り後に残留空気を排出するエア抜きが含まれ、
前記給湯装置内の水張り後に前記エア抜きの開始と共に前記ふろ試運転を開始するように構成されたことを特徴とするふろ給湯システム。
【請求項2】
前記給湯装置試運転の開始時に前記自動排水栓を開栓し、前記ふろ試運転の開始前に前記自動排水栓を閉栓することを特徴とする請求項1に記載のふろ給湯システム。
【請求項3】
前記給湯装置試運転のエア抜き時の排水を利用して前記ふろ試運転を行うように構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のふろ給湯システム。
【請求項4】
前記給湯装置試運転の開始時に、前記ふろ試運転の終了後の浴槽の排水を行うか否か選択するように構成されたことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のふろ給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽に湯水を供給する給湯装置と、浴槽の自動排水栓を連動させるように構成されたふろ給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エネルギー効率に優れた熱源機として例えばヒートポンプ熱源機と、貯湯槽を有する給湯装置が広く利用されている。このような熱源機は、給湯に必要な湯水を瞬間的に加熱することが困難なので、予め加熱した湯水を貯湯槽に貯湯して、給湯時には貯湯槽の湯水を使用する。家庭用の給湯装置の貯湯槽の容量は、一般的に数十~300L程度であり、給湯に使用可能な温度の湯水が無くなる湯切れが発生しないようにしている。
【0003】
給湯装置の施工時には試運転を行い、給湯装置とその施工に不具合が無いことを確認する。試運転には、給湯装置単体の試運転と、給湯装置から湯水供給を受ける浴槽を含めたふろ試運転が含まれ、給湯装置が温水暖房装置に接続されている場合には暖房試運転も含まれる。
【0004】
給湯装置試運転では、給湯装置内に水張りした後、ポンプ、バルブ等を駆動して水を流動させながら、給湯装置内に残った空気(残留空気)を水と共に排出するエア抜きを行う。このとき容量が大きい貯湯槽にも水張りするので、給湯装置試運転は時間がかかる。そして、この給湯装置試運転の後に、給湯装置から浴槽に水張りして、給湯装置の湯水の供給量と浴槽の水位の相関関係を設定するふろ試運転を行う。
【0005】
このように給湯装置の施工時には、給湯装置試運転とその後のふろ試運転を行うので時間がかかり、作業者の負担が大きいものとなっていた。そのため、例えば特許文献1のように、給湯装置試運転の後にふろ試運転を連続して自動で行う技術が知られている。しかし、浴槽の排水栓を作業者が確認して開閉する必要があり、作業者の負担を軽減する余地がある。
【0006】
一方、例えば特許文献2のように、浴槽に湯水が無い状態で自動的に浴槽の排水栓を閉じて、浴槽に水張りする技術が知られている。このような自動排水栓が浴槽に装備されている場合には、特許文献1の試運転において、開始時の排水栓閉栓と終了時の排水栓開栓を自動で行うことにより、作業者の負担が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-12817号公報
【特許文献2】特開2021-42867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1のように、給湯装置試運転の終了後にふろ試運転を開始すると、給湯装置試運転の開始からふろ試運転の終了まで長い時間がかかる。また、特許文献1では、給湯装置試運転時には、排水栓を閉栓した浴槽と給湯装置の排水通路に空気と共に排水するので、浴槽に水が貯まるが、その量は検知できず不明である。
【0009】
それ故、給湯装置試運転後のふろ試運転において、浴槽への一定量の水の供給とふろ水用循環ポンプの駆動を、ふろ水が循環可能になるまで交互に繰り返し、ふろ水が循環可能になった水位を基準水位に設定している。そして、ここからさらに水を供給することによって、湯水の供給量と浴槽の水位の相関関係を設定している。従って、基準水位が定まるまでに時間がかかり、ふろ試運転時間が長くなる。そのため、給湯装置試運転とふろ試運転を含む試運転の時間を短縮して、作業者の負担を一層軽減することが求められていた。
【0010】
本発明の目的は、試運転の時間の短縮により作業者の負担を軽減することができるふろ給湯システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1のふろ給湯システムは、貯湯槽と湯水加熱手段を有する給湯装置と、前記給湯装置から湯水供給を受ける浴槽の自動排水栓の開閉を連動させるふろ給湯システムにおいて、給湯装置試運転によって前記給湯装置内に水張りした後、前記浴槽に水張りするふろ試運転が行われるようにふろ給湯システム試運転が構成され、前記給湯装置試運転には前記給湯装置内の水張り後に残留空気を排出するエア抜きが含まれ、前記給湯装置内の水張り後に前記エア抜きの開始と共に前記ふろ試運転を開始するように構成されたことを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、ふろ給湯システムは、ふろ給湯システム試運転において、給湯装置試運転によって給湯装置内に水張りし、水張り後に水を流動させて残留空気を追い出すエア抜きを行う。また、ふろ給湯システムは、ふろ給湯システム試運転において、ふろ試運転によって浴槽に水張りして、湯水供給量と浴槽の水位の相関関係を設定する。給湯装置試運転では、水張り時には、貯湯槽に水を貯めるので時間がかかり、水張り完了が確認できるまで浴槽に排水しながら水張りするので、浴槽の自動排水栓を開栓して浴槽から排水する。一方、ふろ試運転は、浴槽に水張りするために浴槽の自動排水栓を閉栓する。エア抜きでは、給湯装置内の残留空気を水と共に浴槽に排出するが、水張り後にはその排水量を検知できるので、エア抜きの開始と共にふろ試運転を開始する。従って、給湯装置試運転の完了前にエア抜きを開始すると共にふろ試運転を開始するので、ふろ給湯システム試運転の時間が短縮され、作業者の負担を軽減することができる。
【0013】
請求項2の発明のふろ給湯システムは、請求項1の発明において、前記給湯装置試運転の開始時に前記自動排水栓を開栓し、前記ふろ試運転の開始前に前記自動排水栓を閉栓することを特徴としている。
上記構成によれば、作業者が浴槽の自動排水栓の状態を確認して、この自動排水栓の開閉を操作する必要がないので、作業者の負担が軽減される。
【0014】
請求項3の発明のふろ給湯システムは、請求項1又は2の発明において、前記給湯装置試運転のエア抜き時の排水を利用して前記ふろ試運転を行うように構成されたことを特徴としている。
上記構成によれば、エア抜きの排水を利用してふろ試運転を行うので、水の使用量を減らすことができる。
【0015】
請求項4の発明のふろ給湯システムは、請求項1~3の何れか1項の発明において、前記給湯装置試運転の開始時に、前記ふろ試運転の終了後の浴槽の排水を行うか否か選択するように構成されたことを特徴としている。
上記構成によれば、ふろ試運転後の作業に応じて浴槽に水張した水を排水するか否かを、給湯装置試運転の開始時に選択できる。従って、排水する場合には作業者がふろ試運転の完了を待って自動排水栓を開く操作を行う必要がないので作業者の負担が軽減され、排水しない場合には浴槽の水を有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のふろ給湯システムによれば、試運転の時間の短縮により作業者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例に係るふろ給湯装置の説明図である。
【
図2】実施例に係る試運転開始操作のフローチャートである。
【
図3】実施例に係る試運転のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例0019】
図1に示すように、ふろ給湯システム1は、給湯装置2から浴槽3に湯水を供給するように構成されている。浴槽3は、循環アダプタ3aを介して給湯装置2から湯水の供給を受けると共に、浴槽3の湯水を給湯装置2で追焚き可能なように接続されている。この浴槽3は、給湯装置2に連動して開閉する電動式の自動排水栓3bを装備している。自動排水栓3bは、例えば浴槽3の縁に設けられた不図示の排水スイッチの操作によっても開閉可能である。
【0020】
給湯装置2は、ヒートポンプ熱源機10(湯水加熱手段)と、不図示の断熱材で覆われた貯湯槽11と、ガス燃焼式の補助熱源機12と、ふろ熱交換器13と、暖房熱交換器14と、自動排水栓3b及び給湯装置2を制御する制御ユニット15を有する。この制御ユニット15には、給湯装置2を操作するための操作リモコン16が接続されている。また、給湯装置2は、配管と機器で構成された流路系として、給水系A、加熱循環系B、給湯系C、浴槽注湯系D、ふろ熱交換器13及び暖房熱交換器14に湯水を供給する熱利用系Eを有する。
【0021】
給湯装置2は、ヒートポンプ熱源機10で加熱した湯水を貯湯槽11に貯留しておき、この貯湯槽11からカラン4、浴槽3に湯水を供給する。また、貯湯槽11に給湯可能な温度の湯水が無い場合には、貯湯槽11の湯水又は上水を補助熱源機12で加熱して供給する。給湯装置2は、この補助熱源機12と、ふろ熱交換器13、暖房熱交換器14との間で湯水を加熱循環させて、ふろの追焚き、温水暖房が可能である。貯湯槽11には上下方向に形成される温度成層の湯温を検出する複数の貯湯温度センサ11a~11fが付設されている。
【0022】
給水系Aは、貯湯槽11の底部に上水を供給するために給水元栓17を介して上水道に接続された給水通路18と、この給水通路18に介装された減圧弁19を有する。給水通路18には、貯湯槽11の排水用の排水バルブ20を備えた排水通路21が接続されている。
【0023】
加熱循環系Bは、貯湯槽11の湯水をヒートポンプ熱源機10で加熱して貯湯槽11に貯湯するために、貯湯槽11の底部からヒートポンプ熱源機10に接続された往き通路22と、ヒートポンプ熱源機10から貯湯槽11の上部に接続された戻り通路23と、往き通路22に介装された貯湯ポンプ24を有する。戻り通路23には貯湯切替弁25が配設され、この貯湯切替弁25で戻り通路23から分岐されたバイパス通路25aが往き通路22の貯湯ポンプ24下流側に接続されている。ヒートポンプ熱源機10の起動後に十分に加熱できない場合に、貯湯切替弁25をバイパス通路25a側に切り替えて、貯湯槽11に湯水を戻さないようにする。
【0024】
給湯系Cは、貯湯槽11の頂部から延びて混合弁26に接続された貯湯槽出湯通路27と、給水通路18から分岐されて混合弁26に接続された給水バイパス通路28と、混合弁26で混合された湯水をカラン4に供給する給湯通路29を有する。給湯通路29は、給湯流量を検知する給湯流量センサ30と、給湯流量を調整する給湯流量調整弁31を有する。給水バイパス通路28は、緊急時に給湯通路29に上水を供給して高温の給湯を回避するために、高温出湯回避電磁弁32を備えたバイパス通路33を有する。
【0025】
浴槽注湯系Dは、給湯流量調整弁31において給湯通路29から分岐した注湯通路34と、浴槽3の湯水を加熱循環させる追焚き通路35を有し、注湯通路34が追焚き通路35に接続されている。注湯通路34には、浴槽3に注湯(湯水供給)する際の注湯流量を検知する注湯流量センサ36と、注湯時に開ける注湯電磁弁37が介装されている。
【0026】
追焚き通路35には、浴槽3の湯水を循環させるためのふろポンプ38と、ふろポンプ38の下流側で湯水の流動を検知する水流スイッチ39と、ふろ熱交換器13が介装されている。注湯通路34を通って給湯装置2から供給される湯水は、追焚き通路35を介して浴槽3に供給される。追焚き通路35のふろポンプ38の上流側には、浴槽3の水位を検知するふろ水位センサ40と、浴槽3の湯水の温度を検知するふろ温度センサ41が配設されている。
【0027】
熱利用系Eは、補助熱源機12の出口と入口を接続する循環通路42と、補助熱源機12に湯水を供給するために補助熱源機12の入口側の循環通路42に介装された循環ポンプ43と、補助熱源機12で加熱された湯水との熱交換のために循環通路42に並列に設けられたふろ熱交換器13と暖房熱交換器14を有する。ふろ熱交換器13、暖房熱交換器14への湯水供給を制御するために、対応するふろ熱交出口電磁弁13a、暖房熱交出口電磁弁14aが各熱交換器の出口側に装備されている。
【0028】
循環ポンプ43と補助熱源機12の入口の間には、循環流量センサ44が配設されている。循環ポンプ43の上流側には流路を切り替える三方弁45が配設され、貯湯槽出湯通路27から分岐された再加熱通路46が三方弁45を介して循環通路42に接続されている。また、補助熱源機12で加熱された湯水を混合弁26に供給するために、補助熱源機12の出口側の循環通路42から流量調整弁47を備えた補助加熱出湯通路48が分岐され、再加熱通路46の分岐部よりも下流側の貯湯槽出湯通路27に接続されている。
【0029】
補助熱源機12は、燃料ガス供給部12aと、燃料ガスと空気の混合気を燃焼させるバーナ12bと、バーナ12bで発生させた燃焼ガスの顕熱及び潜熱を利用して湯水を加熱する熱交換器12cを有する燃焼式の熱源機である。この補助熱源機12は、熱交換器12cにおいて燃焼ガス中の水分が凝縮した酸性の凝縮水を中和して排出するために、中和装置12dを有する。
【0030】
浴槽3の湯水の追焚きは、制御ユニット15がふろ熱交出口電磁弁13aを開け、循環ポンプ43を駆動し、補助熱源機12を作動させて、補助熱源機12とふろ熱交換器13の間で湯水を加熱循環させる。これと同時に、ふろポンプ38を駆動して、浴槽3の湯水を追焚き通路35に流通させ、補助熱源機12で加熱された湯水と浴槽3の湯水をふろ熱交換器13で熱交換させて浴槽3の湯水を加熱し、浴槽3に戻す。
【0031】
暖房熱交換器14においても同様に、温水暖房は、制御ユニット15が暖房熱交出口電磁弁14aを開け、循環ポンプ43を駆動し、補助熱源機12を作動させて、補助熱源機12と暖房熱交換器14の間で湯水を加熱循環させる。そして、暖房ポンプ49を駆動して、暖房熱交換器14と不図示の暖房端末(例えば浴室暖房装置、床暖房装置)との間の暖房通路50を流れる熱媒を循環させ、暖房熱交換器14での熱交換によって熱媒を加熱する。
【0032】
次に、給湯装置2の施工時にふろ給湯システム1について行われるふろ給湯システム試運転(以下では省略して「試運転」と呼ぶ場合がある。)の開始操作について、
図2の開始操作フローチャートに基づいて説明する。図中のSi(i=1,2,・・・)はステップを表す。
試運転は、作業者が制御ユニット15に接続された操作端末(不図示のメンテナンス用端末又は操作リモコン16)で設定操作を行ってから開始される。最初にS1において、操作端末に表示されるメニューから試運転を選択してS2に進み、S2において試運転の内容を設定してS3に進む。ここでは、給湯装置試運転とふろ試運転を行う設定をする。
【0033】
S3において、試運転後の浴槽3の排水設定を行ってS4に進む。ふろ試運転を行う設定では浴槽3に水張りするので、試運転後の作業に応じて浴槽3の水を残すか否か設定するステップである。試運転の内容設定とその後の排水設定終了後、S4において試運転開始操作を行い、給湯装置試運転とふろ試運転を行うふろ給湯システム試運転が開始される。尚、作業者は、ふろ給湯システム1の試運転の開始操作の直前又は直後に、給水元栓17を開栓する。
【0034】
次に、給湯装置2の制御ユニット15による試運転の制御について、
図3のフローチャートに基づいて説明する。
ふろ給湯システム試運転が開始されると、S11において自動排水栓3bの状態を確認し開栓状態か否か判定する。S11の判定がNo(閉栓状態)の場合はS12に進み、S12において自動排水栓3bを開栓してS13に進む。S11の判定がYes(開栓状態)の場合にはS13に進む。
【0035】
S13において給湯装置試運転を開始してS14に進み、S14において注湯電磁弁37を開けて給湯装置2内の水張りを開始してS15に進む。給湯装置2は、給水系A~熱利用系Eの複数の流路系と貯湯槽11を有するので、水張りにはある程度時間がかかる。このとき供給される上水によって、給湯装置2の湯水が通る部分の空気が給湯通路29,注湯通路34、追い焚き通路35を介して浴槽3へ排出される。給湯流量センサ30、注湯流量センサ36は実際には水が流れていなくても流動する空気によって流量検知する場合もある。実際に水が流れるようになっても、空気が混ざっているので、しばらくの間は給湯流量センサ30、注湯流量センサ36の検知流量が安定しない。
【0036】
S15において、給湯流量センサ30、注湯流量センサ36が検知する流量が安定しているか否か判定する。流れる水に空気があまり混ざらなくなると、給湯流量センサ30、注湯流量センサ36の検知流量が安定するので、水張りが終わったことを判定できる。S15の判定がNoの場合は流量が安定するまでS15の判定を繰り返す。S15の判定がYesの場合はS16に進み、S16において注湯電磁弁37を閉じて水張りを終了し、S17に進む。
【0037】
S17において、自動排水栓3bの状態を確認して閉栓状態か否か判定する。S17の判定がNo(閉栓状態)の場合はS18に進み、S18において自動排水栓3bを開栓して水張り時に貯まった水を全部排水してS19に進む。水張り開始前に自動排水栓3bを開栓しているが、水張り中に不図示の排水スイッチの操作によって自動排水栓3bが閉栓する場合もあるので、貯まった水を排水してから閉栓する。S17の判定がYes(開栓状態)の場合はS19に進む。尚、S17の判定がNoの場合には、エラー発生を作業者に報知して試運転を一旦停止させ、作業者に対応を促すようにすることもできる。
【0038】
S19において、自動排水栓3bを閉栓してS20に進む。そしてS20において、水張りした給湯装置2内の残留空気を、水を流動させることによって浴槽3へ水と共に排出するエア抜きを開始させる。これと同時に、浴槽3への湯水の供給量と浴槽3の水位の相関関係を設定するふろ試運転を開始させてS21に進む。
【0039】
S21において、ふろ試運転の最初に所定量として少量の第1供給量(例えば10L)の上水を浴槽3に供給し、S22に進む。この第1供給量の供給は、エア抜き時の排水を利用するものである。水張りが終わっているので、給湯流量センサ30と注湯流量センサ36は、残留空気が多少混ざっていても夫々流量を検知でき、流量と時間に基づいて供給量を検知できる。
【0040】
第1供給量の供給時には、注湯電磁弁37を再度開け、循環ポンプ43、貯湯ポンプ24を駆動しながら、三方弁45、貯湯切替弁25、混合弁26、ふろ熱交出口電磁弁13a等を駆動することにより、水の流路を切り替えてエア抜きを行う。これにより、水張り時には排出できなかった残留空気を水と共に浴槽3へ排出する。給湯流量センサ30、注湯流量センサ36によって第1供給量の水が浴槽3に供給されたことを検知した場合に、注湯電磁弁37を閉じる。そして、例えば熱利用系Eの循環通路42に水を循環させた状態で、循環流量センサ44の検知流量が安定していることを確認して、エア抜きを終了(給湯装置試運転を終了)する。
【0041】
S22において、湯水供給量検知の異常の有無を判定する。例えば、ふろポンプ38を駆動して、浴槽3の水が追焚き通路35を循環可能か否か水流スイッチ39の検知状態によって判定する。第1供給量の供給では浴槽3の水量が少なすぎるため、追焚き通路35に浴槽3の水を循環させることができない状態である。これを利用して、水流スイッチ39が水流を検知した場合に給湯流量センサ30又は注湯流量センサ36に異常があると判定する。S22の判定がNo(異常あり)の場合はS23に進み、S23において流量エラー発生を報知してS29に進む。S22の判定がYes(異常なし)の場合はS24に進む。
【0042】
S24おいて、所定の第2供給量(例えば70L)の水を浴槽3に供給した後でふろポンプ38を駆動して浴槽3の水を追焚き通路35に循環させ、水流スイッチ39により追焚き可能な状態であることを確認する。このときのふろ水位センサ40が検知する浴槽3の水位を基準水位として設定して、S25に進む。
【0043】
S25において、所定の第3供給量(例えば40L)を浴槽3に追加供給し、このときふろ水位センサ40が検知する浴槽3の水位と基準水位の差と、追加供給した第3供給量に基づいて、供給量と水位の相関関係を設定してS26に進む。そしてS26において、設定した供給量と水位の相関関係に基づいて予め設定された現在の水位から設定水位とすることができる水量を算出し、算出した水量を追加供給してS27に進む。
【0044】
S27において、ふろ水位センサ40が検知する浴槽3の水位と設定水位のずれが許容範囲内であるか否か、即ち供給量と水位の相関関係が正常に設定されたか否か判定する。S27の判定がNoの場合はS28に進み、S28において設定エラー発生を報知してS29に進む。S27の判定がYesの場合はS29に進む。
【0045】
S29においてふろ試運転を終了してS30に進む。そしてS30において、
図2のS3で設定した排水設定に基づいて排水するか否か判定する。S30の判定がYesの場合(排水する場合)にはS31に進み、S31において自動排水栓3bを開栓してふろ給湯システム1の試運転を終了する。S30の判定がNoの場合(排水しない場合)にはそのままふろ給湯システム1の試運転を終了する。尚、S27の判定がYesの場合には、追い焚き運転の確認を行ってからふろ試運転を終了することも可能である。また、S27の判定がNoの場合には、S28で設定エラー発生を報知して試運転を停止してもよい。
【0046】
上記のふろ給湯システム試運転では、
図4に示すように、時刻t0において給湯装置試運転を開始し、時刻t1において水張りが終了すると、エア抜きを開始すると共にふろ試運転を開始する。その後、時刻t2においてエア抜きが終了し、時刻t3でふろ試運転が終了する。それ故、比較例のようにエア抜きを含む給湯装置試運転が終わった時刻t2からふろ試運転を開始して時刻t3’でふろ試運転を終了する場合よりも、試運転の時間を短縮することができる。
【0047】
エア抜き時の排水に含まれる残留空気はわずかであり、水張り後には、給湯流量センサ30、注湯流量センサ36が夫々流量を正しく検知することができる。従って、給湯流量センサ30、注湯流量センサ36によって第1供給量を正しく検知でき、エア抜き時の排水を有効に利用してふろ試運転を行うことができる。また、ふろ試運転における浴槽3への供給量をエア抜きのときから検知できるので、基準水位の設定までの水張り時間を短縮することができ、ふろ試運転の時間短縮も可能である。
【0048】
上記ふろ給湯システム1の作用、効果について説明する。
ふろ給湯システム1は、給湯装置試運転によって給湯装置2内に水張りし、水張り後に水を流動させて残留空気を追い出すエア抜きを行う。また、ふろ給湯システム1は、ふろ試運転によって浴槽3に水張りして、給湯装置2の湯水の供給量と浴槽3の水位の相関関係を設定する。給湯装置試運転では、水張り時には貯湯槽11に水を貯めるので時間がかかり、水張り完了が確認できるまで浴槽3に排水しながら水張りするので、浴槽3の自動排水栓3bを開栓して浴槽3から排水する。一方、ふろ試運転は、浴槽3に水張りするために浴槽3の自動排水栓3bを閉栓する。エア抜きでは、給湯装置2内の残留空気を水と共に浴槽3に排出するが、水張り後にはその排水量を検知できるので、エア抜きの開始と共にふろ試運転を開始する。従って、給湯装置試運転の完了前にエア抜きの開始と共にふろ試運転を開始するので、ふろ給湯システム試運転の時間が短縮され、作業者の負担を軽減することができる。
【0049】
また、ふろ給湯システム1は、給湯装置試運転の開始時に自動排水栓3bを開栓し、ふろ試運転の開始前に自動排水栓3bを閉栓する。従って、作業者が浴槽3の自動排水栓3bの状態を確認して、この自動排水栓3bの開閉を操作する必要がないので、作業者の負担が軽減される。
【0050】
ふろ給湯システム1は、給湯装置試運転のエア抜き時の排水を利用してふろ試運転を行うので、ふろ給湯システム1の試運転における水の使用量を減らすことができる。
【0051】
ふろ給湯システム1では、給湯装置試運転の開始時に、ふろ試運転後の作業に応じて浴槽3に水張した水を排水するか否かを選択することができる。従って、排水する場合には作業者がふろ試運転の完了を待って自動排水栓3bを開く操作を行う必要がないので、作業者の負担を軽減することがでる。また、排水しない場合にはそのまま浴槽3の水を有効に利用することができる。
【0052】
ふろ給湯システム1では、エア抜きの開始と同時にふろ試運転の開始だけでなく、暖房試運転を開始するも可能である。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。
前記給湯装置試運転の開始時に、前記ふろ試運転の終了後の浴槽の排水を行うか否か選択するように構成されたことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のふろ給湯システム。
請求項1のふろ給湯システムは、貯湯槽と湯水加熱手段を有する給湯装置と、前記給湯装置から湯水供給を受ける浴槽の自動排水栓の開閉を連動させるふろ給湯システムにおいて、給湯装置試運転によって前記給湯装置内に水張りした後、前記浴槽に水張りするふろ試運転が行われるようにふろ給湯システム試運転が構成され、前記給湯装置試運転には前記給湯装置内の水張り後に残留空気を排出するエア抜きが含まれ、前記給湯装置内の水張り後に前記自動排水栓を閉栓し、前記エア抜きの開始と共に前記ふろ試運転を開始するように構成されたことを特徴としている。