(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016736
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】塗膜測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 7/06 20060101AFI20220118BHJP
G01N 22/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G01B7/06 Z
G01N22/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119624
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】519441523
【氏名又は名称】7Gaa株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000147350
【氏名又は名称】株式会社精工技研
(71)【出願人】
【識別番号】503180030
【氏名又は名称】山勝電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】黒川 悟
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 良和
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA16
2F063BA14
2F063BB08
2F063BC05
2F063BD13
2F063CA09
2F063DA01
2F063DA05
2F063DC08
2F063DD02
2F063LA04
2F063LA17
(57)【要約】
【課題】船舶を構成する金属板上の塗膜の膜厚測定において、十分な測定速度が得られ、測定膜厚の変化等に対して柔軟に対応可能な塗膜測定方法を提供する。
【解決手段】船舶を構成する金属板1上に塗装された塗膜の厚さを測定する方法であって、送受信アンテナであるホーンアンテナ5と、マイクロ波の電気信号を発生してホーンアンテナ5に供給し、ホーンアンテナ5により受信されたマイクロ波の電気信号が入力される送受信回路6と、を有するマイクロ波送受信装置3を備え、塗膜2の表面にほぼ垂直に周波数を掃引しながらマイクロ波7を入射して、塗膜2から反射される反射波8の強度が極小、又は極大となる周波数を検出し、その検出した周波数に基づいて塗膜2の厚さを算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶を構成する金属板上に塗装された塗膜の厚さを測定する方法であって、
電気信号を入力してマイクロ波を出力し、入力されるマイクロ波を受信して電気信号を出力する送受信アンテナと、マイクロ波の電気信号を発生して前記送受信アンテナに供給し、前記送受信アンテナにより受信されたマイクロ波の電気信号が入力される送受信回路と、を有するマイクロ波送受信装置を備え、
前記塗膜の表面にほぼ垂直に周波数を掃引しながらマイクロ波を入射して、前記塗膜から反射されるマイクロ波の強度が極小、又は極大となる周波数を検出し、
前記の検出した周波数に基づいて前記塗膜の厚さを算出することを特徴とする塗膜測定方法。
【請求項2】
前記マイクロ波が入射される前記塗膜上に所定の厚さの誘電体を設置して該誘電体の表面から前記マイクロ波を照射し、前記誘電体の厚さは、前記塗膜から反射されるマイクロ波の強度が、前記マイクロ波の掃引周波数の範囲内において極小、又は極大となるように設定されることを特徴とする請求項1に記載の塗膜測定方法。
【請求項3】
前記マイクロ波は、前記塗膜又は前記誘電体の表面に近接して配置された導波管の開口又はホーンアンテナの開口から放射されることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗膜測定方法。
【請求項4】
前記マイクロ波は、前記塗膜の表面に近接して配置された導波管の開口又はホーンアンテナの開口から放射され、前記誘電体は前記導波管又は前記ホーンアンテナの開口の内側に設置されることを特徴とする請求項2に記載の塗膜測定方法。
【請求項5】
前記送受信アンテナ及び前記送受信回路は、それぞれO/E変換器とE/O変換器とを備え、前記送受信アンテナと前記送受信回路との間は光ファイバで接続され、
前記送受信回路より出力されて前記送受信アンテナに供給されるマイクロ波の電気信号及び前記送受信アンテナにより受信されて前記送受信回路に入力されるマイクロ波の電気信号は、それぞれ光信号に変換されて前記光ファイバにより伝達されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の塗膜測定方法。
【請求項6】
前記マイクロ波送受信装置を制御する制御装置を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の塗膜測定方法。
【請求項7】
前記制御装置は、前記マイクロ波送受信装置と離れた場所に設置され、前記マイクロ波送受信装置との間の通信手段を有することを特徴とする請求項6に記載の塗膜測定方法。
【請求項8】
前記塗膜の表面に沿って、前記塗膜との間の距離をほぼ一定に保ちながら前記送受信アンテナを移動する走査手段を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の塗膜測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶を構成する金属板上に塗装された塗膜の厚さを測定する方法に関し、特にマイクロ波を用いた塗膜測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶には、船舶を構成する外板や船舶内の水を収容するバラストタンク、荷物や石油等を収容するカーゴタンク等の大きな面積を有する金属板が多く使用されている。それらの金属板は海上で運用されるため、防食性、耐水性、耐候性、等に対する対策が非常に重要であり、それらの性能を達成するため、特許文献1及び2に記載されているように、金属表面には用途に応じて様々な塗装が行われている。一般的には、数種類の重ね塗装が施されている。その塗装工程においては塗膜の膜厚の管理が必要である。
【0003】
従来の塗膜の膜厚管理は特許文献2に記載されているように、広い面積は目視で素地に対する隠蔽性や色調で管理していた。また、厚さを正確に把握するため、特定の個所のみを膜厚計で実測していた。従来、層状に形成された膜体の膜厚を測定する場合、磁気式、電磁式、渦電流式、超音波式、光学式等の方式を用いた測定器により測定されている。特許文献3には従来の電磁式膜厚計の一例が、特許文献4には超音波式膜厚計の一例が、特許文献5には光学式膜厚計の一例が、それぞれ記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-24781号公報
【特許文献2】特開2000-37658号公報
【特許文献3】特開平10-300412号公報
【特許文献4】特開平9-42950号公報
【特許文献5】特開平6-300529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
膜厚を制御しながら大面積の塗装を実施する場合には、塗膜の膜厚測定を高速に行い、塗装工程にフィードバックして制御する必要が生ずる。特に大面積の塗装を必要とする船舶においては重要である。また、設定膜厚が異なる表面を有する領域について連続して測定する際には、容易に異なる膜厚に対する設定変更の操作が行えることが望ましい。しかし、従来のいずれの方式の膜厚測定においても、船舶を構成する金属板の塗装工程に適合できるような膜厚の測定速度や測定膜厚の変化等への対応性については十分な性能は得られていない。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、船舶を構成する金属板上の塗膜の膜厚測定において、十分な測定速度が得られ、測定膜厚の変化等に対して柔軟に対応可能な塗膜測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の観点では、本発明による塗膜測定方法は、船舶を構成する金属板上に塗装された塗膜の厚さを測定する方法であって、電気信号を入力してマイクロ波を出力し、入力されるマイクロ波を受信して電気信号を出力する送受信アンテナと、マイクロ波の電気信号を発生して前記送受信アンテナに供給し、前記送受信アンテナにより受信されたマイクロ波の電気信号が入力される送受信回路と、を有するマイクロ波送受信装置を備え、前記塗膜の表面にほぼ垂直に周波数を掃引しながらマイクロ波を入射して、前記塗膜から反射されるマイクロ波の強度が極小、又は極大となる周波数を検出し、前記の検出した周波数に基づいて前記塗膜の厚さを算出することを特徴とする。
【0008】
本発明の塗膜測定方法において、一般的に、塗膜はマイクロ波を少なくとも一部透過するので、塗膜から反射されるマイクロ波は、その表面からの反射波と、その裏面と金属との境界からの反射波を含んでいる。また、塗膜の裏面はマイクロ波の反射率の大きな金属と接しているので、塗膜におけるマイクロ波の吸収があっても裏面からは大きな反射波が得られる。周波数を掃引しながらマイクロ波を入射することにより、表面からの反射波と裏面からの反射波が干渉し、特定の周波数において、反射されるマイクロ波の強度が極小、又は極大となる。
【0009】
具体的には、塗膜の厚さが塗膜中に入射されたマイクロ波の波長の1/4の奇数倍となるときには、塗膜中を往復したマイクロ波と塗膜の表面で反射するマイクロ波は互いに逆相となり、打ち消し合うので反射されるマイクロ波の強度が極小となる。一方、塗膜の厚さが上記マイクロ波の波長の1/4の偶数倍となるときには、塗膜中を往復したマイクロ波と塗膜の表面で反射するマイクロ波は同相となり、強め合うので反射されるマイクロ波の強度が極大となる。例えば、塗膜の厚さがマイクロ波の波長の1/4であるとき、塗膜中のマイクロ波は、表面と裏面との間を往復する間にπの位相変化を生じ、さらに裏面の金属の表面での反射によりπの位相変化を生じるので、塗膜の表面に戻るときの位相変化量は合計2πとなる。一方、塗膜の表面で反射するマイクロ波はπの位相変化を生ずる。この結果、塗膜中を往復したマイクロ波と塗膜の表面で反射するマイクロ波の間にはπの位相差が生じ、互いに逆相となる。
【0010】
本発明においては、塗膜の誘電率を予め把握しておくことにより各周波数における塗膜中のマイクロ波の波長を把握することができる。極小、又は極大となる周波数を検出し、その周波数に基づいて塗膜の厚さを算出することが可能となる。測定膜厚が変化した場合にもマイクロ波の周波数を変えるという簡単な手段により対応可能である。なお、本発明において、上記のマイクロ波はいわゆるミリ波帯の周波数領域を含んでいてもよい。送受信回路は、マイクロ波発信回路、周波数掃引回路、マイクロ波検出回路等を有している。
【0011】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点の塗膜測定方法において、前記マイクロ波が入射される前記塗膜上に所定の厚さの誘電体を設置して該誘電体の表面から前記マイクロ波を照射し、前記誘電体の厚さは、前記塗膜から反射されるマイクロ波の強度が、前記マイクロ波の掃引周波数の範囲内において極小、又は極大となるように設定されることを特徴とする。
【0012】
本観点の発明は、使用可能な最大のマイクロ波周波数においても、測定可能な厚さ、すなわち、マイクロ波の波長の1/4よりも塗膜の厚さが小さい場合、予めその誘電率と厚さが判明している誘電体を測定対象の塗膜上に設置することにより、塗膜の厚さを測定可能とするものである。すなわち、誘電体と塗膜の厚さの合計が誘電体及び塗膜中に入射されたマイクロ波の波長のほぼ1/4となるとき、誘電体の表面と金属の表面との間を往復したマイクロ波と誘電体の表面で反射するマイクロ波は互いに逆相となり、打ち消し合うので反射されるマイクロ波の強度が極小となる。塗膜上に設置する誘電体の誘電率は塗膜に近く、誘電体と塗膜の境界における反射波が小さいことが望ましいが、その境界からの反射波があっても、測定された周波数特性に基づく計算により塗膜の厚さを求めることができる。
【0013】
第3の観点では、本発明は、前記第1又は第2の観点の塗膜測定方法において、前記マイクロ波は、前記塗膜又は前記誘電体の表面に近接して配置された導波管の開口又はホーンアンテナの開口から放射されることを特徴とする。本観点の発明においては、マイクロ波を放射し、かつ、反射波が入力される導波管の開口又はホーンアンテナの開口を常に塗膜又は誘電体の表面に近接して配置することにより、塗膜又は誘電体との間の距離をほぼ0に、又は小さい一定の値に保ち、かつ、塗膜へのマイクロ波の入射角度及び反射波の導波管の開口又はホーンアンテナの開口への入射角度を一定に保つことが容易となる。これにより、測定精度の向上が図れる。導波管又はホーンアンテナを移動させながら塗膜の厚さ分布を測定する場合等には非常に有効である。
【0014】
第4の観点では、本発明は、前記第2の観点の塗膜測定方法において、前記マイクロ波は、前記塗膜の表面に近接して配置された導波管の開口又はホーンアンテナの開口から放射され、前記誘電体は前記導波管又は前記ホーンアンテナの開口の内側に設置されることを特徴とする。前記の第2の観点の発明のように誘電体を測定対象の塗膜上に設置して測定する場合、大きな領域を測定するためには、誘電体を測定の度に測定個所に移動するか、又はその領域全体に同じ厚さの誘電体シート等を貼り付けておく必要がある。しかし、本観点の発明では、その誘電体をアンテナに一体として設置することにより、同じ誘電体を用いて容易に異なる個所の測定を行うことができる。
【0015】
第5の観点では、本発明は、前記第1乃至第4の観点の塗膜測定方法において、前記送受信アンテナ及び前記送受信回路は、それぞれO/E変換器とE/O変換器とを備え、前記送受信アンテナと前記送受信回路との間は光ファイバで接続され、前記送受信回路より出力されて前記送受信アンテナに供給されるマイクロ波の電気信号及び前記送受信アンテナにより受信されて前記送受信回路に入力されるマイクロ波の電気信号は、それぞれ光信号に変換されて前記光ファイバにより伝達されることを特徴とする。
【0016】
本観点の発明では、送受信アンテナと送受信回路とを分離して配置し、光ファイバによりそれらの間を接続することにより、塗膜の複数の測定個所や広い面積を走査して測定する場合、送受信回路を移動させることなく、送受信アンテナのみを移動させて測定することが可能となる。光ファイバは軽量であり、かつ、マイクロ波信号を小さな損失で送信することができる。また、送受信アンテナにおいて、O/E変換により、測定に必要なマイクロ波の電力が得られることも発明者らにより確認されている。
【0017】
第6の観点では、本発明は、前記第1乃至第5の観点の塗膜測定方法において、前記マイクロ波送受信装置を制御する制御装置を備えることを特徴とする。本観点の発明において、制御装置は、放射されるマイクロ波の周波数、強度等を決定してマイクロ波の送信回路を制御し、マイクロ波の受信回路により受信されたマイクロ波の強度等の情報を受信する。また、制御装置は、マイクロ波の強度が極小、又は極大となる周波数を検出し、その検出した周波数に基づいて塗膜の厚さを算出する手段を有していてもよい。又は、上記の算出手段などは制御装置の情報に基づいて、他のパーソナルコンピュータ等により算出してもよい。
【0018】
第7の観点では、本発明は、前記第6の観点の塗膜測定方法において、前記制御装置は、前記マイクロ波送受信装置と離れた場所に設置され、前記マイクロ波送受信装置との間の通信手段を有することを特徴とする。本観点の発明では、マイクロ波送受信装置と制御装置とを分離して配置することにより、測定システムにおいて演算処理回路や表示装置等の出力装置等が必要な場合、それらの装置を備える制御装置を移動させることなく、マイクロ波送受信装置のみを移動させて広い面積の塗膜を測定することが可能となる。また、マイクロ波送受信装置と制御装置との間の通信手段としては、無線LANを利用した通信や、E/O変換器、O/E変換器を設置して光ファイバによる通信を行うことができる。
【0019】
第8の観点では、本発明は、前記第1乃至第7の観点の塗膜測定方法において、前記塗膜の表面に沿って、前記塗膜との間の距離をほぼ一定に保ちながら前記送受信アンテナを移動する走査手段を有することを特徴とする。塗膜の複数個所の厚さ、又はある程度の広い領域の厚さ分布等を測定する場合に、送受信アンテナを塗膜との間の距離をほぼ一定に保って移動させながら測定を行うことが必要であり、このような場合に本観点の発明は有効である。一定の制御により順次所定の位置に送受信アンテナを移動するための走査手段としては、電動の移動機構や工業用のロボット等を利用することができる。
【0020】
前記の第5の観点の発明のように、送受信アンテナと送受信回路とが分離されている場合は送受信アンテナのみを移動し、送受信アンテナと送受信回路が一体となっている場合は、マイクロ波送受信装置全体を移動することができる。また、その走査手段は、送受信アンテナ又はマイクロ波送受信装置を搭載し塗膜との間の距離をほぼ一定に保つように制御されて走行する車両等であってもよい。また、塗膜が曲面形状の金属板の表面に設置されている場合は、走査手段としては、その曲面形状に沿って移動する移動機構を用いることができる。
【発明の効果】
【0021】
上記のように、本発明により、船舶を構成する金属板上の塗膜の膜厚測定において、十分な測定速度が得られ、測定膜厚の変化等に対して柔軟に対応可能な塗膜測定方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施例1の塗膜測定方法の構成例を模式的に示す図。
【
図2】本発明の実施例2の塗膜測定方法の構成例を模式的に示す図。
【
図3】本発明の実施例3の塗膜測定方法の構成例を模式的に示す図であり、
図3(a)は送受信アンテナとしてホーンアンテナを使用した場合、
図3(b)は送受信アンテナとして導波管を使用した場合、
図3(c)は導波管の開口の内側に誘電体を設置した場合を示す。
【
図4】本発明の実施例4の塗膜測定方法の構成例を模式的に示す図。
【
図5】本発明の実施例5の塗膜測定方法の構成例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の塗膜測定方法を実施例により詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、その重複した説明を省略する。
【実施例0024】
図1は、本発明の実施例1の塗膜測定方法の構成例を模式的に示す図である。
図1は、ほぼ平坦な船舶の外板の一部を構成する金属板1上に塗装された塗膜2の厚さを塗膜測定装置10を用いて測定する場合の構成を示しており、塗膜測定装置10は、電気信号を入力してマイクロ波を出力し、入力されるマイクロ波を受信して電気信号を出力するホーンアンテナ5と、マイクロ波の電気信号を発生してホーンアンテナ5に供給し、ホーンアンテナにより受信されたマイクロ波の電気信号が入力される送受信回路6とを有するマイクロ波送受信装置3を備えている。ホーンアンテナ5により塗膜2にほぼ垂直にマイクロ波7を放射し、塗膜2から反射される反射波8を受信する。
【0025】
さらに、本実施例では、マイクロ波送受信装置3を制御し、マイクロ波送受信装置3から得られる受信データを用いて塗膜2の厚さを算出し表示する制御装置4を備えている。制御装置4は、パーソナルコンピュータを用いて構成し、送受信回路6の発信周波数や発信強度、マイクロ波ビーム幅等を制御する。
【0026】
発信強度をほぼ一定とし、発信周波数を掃引しながらホーンアンテナ5よりマイクロ波7を塗膜2に入射することにより、塗膜2の表面からの反射波とその裏面からの反射波が干渉し反射波8となってホーンアンテナ5に戻る。この結果、塗膜2の厚さdが塗膜2中に入射されたマイクロ波の波長の1/4の奇数倍となるときには反射されるマイクロ波の強度が極小となり、そのマイクロ波の波長の1/4の偶数倍となるときには反射されるマイクロ波の強度が極大となる。例えば、塗膜2は樹脂材料を主成分とする塗料の塗装によって形成された塗膜であって、その比誘電率を5.8とすると、塗膜2中でのマイクロ波の波長は空気中での波長の凡そ1/2.4となる。塗膜2の厚さdを390μmとし、マイクロ波7の周波数を75GHzから85GHzまで掃引したときに、周波数fc=79.8GHzにおいて、誘電体2中でのマイクロ波の波長λ1がdの値の4倍、すなわちdの値がλ1の1/4となる。この周波数fcにおいて送受信回路6により検出される反射波8の強度は最小となる。本実施例においては、制御装置4において送受信回路6より送られる受信データより受信強度が最小となるfcの値を判別し、その値から、塗膜2の厚さdを算出する。なお、塗膜2の誘電率は予め過去のデータや予備測定などにより把握しておく。
例えば、塗膜12の厚さd1を240μm、比誘電率を4とし、誘電体13の厚さd2を1100μm、比誘電率を4とし、マイクロ波7の周波数を25GHzから35GHzまで掃引したときに、周波数fc=28.0GHzにおいて、塗膜12及び誘電体13中でのマイクロ波7の波長λ2がd1+d2の値の4倍、すなわちd1+d2の値がλ2の1/4となる。この周波数fcにおいて反射波8の強度は最小となる。本実施例においても、制御装置において送受信回路より送られる受信データより受信強度が最小となるfcの値を判別し、その値から、塗膜12の厚さd1を算出する。誘電体13の厚さd2と誘電率、及び塗膜12の誘電率を予め把握しておけば、上記のd1の算出は可能である。
なお、誘電体13は、塗膜12と誘電率が同じ値でなくとも、近い値であれば誘電体13と塗膜12の境界での反射は小さいので、反射波8の極小値の判別は可能である。また、そのように塗膜12と誘電体13の誘電率が異なる場合、誘電体13の誘電率に基づく誘電体13内のマイクロ波7の波長、及び塗膜12内でのマイクロ波7の波長を用いた詳細な計算によりd1の値を求めることができる。