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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167367
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】サージ防護素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01T 4/12 20060101AFI20221027BHJP
   H01T 21/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01T4/12 F
H01T21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073119
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】酒井 信智
(72)【発明者】
【氏名】藤原 和崇
(57)【要約】
【課題】封止電極との良好な接合性と、放電時の破壊に対する破壊強度の向上との両方を得ることができるサージ防護素子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 ガラス管2と、ガラス管の両端部に接合された一対の環状ガラス部材3と、一対の環状ガラス部材に接合されガラス管の両端開口部を自身で又は環状ガラス部材と共に閉塞して内部に放電ガスを封止する一対の封止電極4とを備え、封止電極の環状ガラス部材との接合面に亜酸化銅膜4cが形成され、環状ガラス部材が、PbOを含有する第1のガラス材料で形成され、ガラス管が、PbOを含有しない第2のガラス材料で形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス管と、
前記ガラス管の両端部に接合された一対の環状ガラス部材と、
前記一対の環状ガラス部材に接合され前記ガラス管の両端開口部を自身で又は前記環状ガラス部材と共に閉塞して内部に放電ガスを封止する一対の封止電極とを備え、
前記封止電極の前記環状ガラス部材との接合面に亜酸化銅膜が形成され、
前記環状ガラス部材が、PbOを含有する第1のガラス材料で形成され、
前記ガラス管が、PbOを含有しない第2のガラス材料で形成されていることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項2】
請求項1に記載のサージ防護素子において、
両端側に前記一対の封止電極を配して前記ガラス管内に収納されセラミックスで形成された碍子を備え、
前記第1のガラス材料が、前記第2のガラス材料よりも熱膨張係数が小さいことを特徴とするサージ防護素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のサージ防護素子において、
前記第2のガラス材料が、前記第1のガラス材料よりも軟化点が高いガラス材料であることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のサージ防護素子において、
前記一対の環状ガラス部材が、前記ガラス管の両端面に接合されていることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載のサージ防護素子において、
前記一対の環状ガラス部材が、前記ガラス管の両端部の内周面に接合されていることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項6】
請求項5に記載のサージ防護素子において、
前記ガラス管が、両端部の内周面に接合された環状の中間ガラス部材を備え、
前記中間ガラス部材の内周面に前記環状ガラス部材が接合されていることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のサージ防護素子において、
前記封止電極が、接合された前記環状ガラス部材よりも軸方向内方に突出していることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項にサージ防護素子の製造方法であって、
外周面に亜酸化銅膜を形成した一対の封止電極のうち一方の外周面に一対の環状ガラス部材のうち一方を接合させる下部電極側接合工程と、
前記一方の環状ガラス部材にガラス管の下端部を接合させるガラス管下端部接合工程と、
前記一対の環状ガラス部材のうち他方に前記一対の封止電極のうち他方を接合させる上部電極側接合工程と、
前記ガラス管の上端部に前記他方の環状ガラス部材を接合させるガラス部材上端側接合工程とを有し、
前記環状ガラス部材を、第1のガラス材料で形成し、
前記ガラス管を、前記第1のガラス材料よりも軟化点が高い第2のガラス材料で形成することを特徴とするサージ防護素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落雷等で発生するサージから様々な機器を保護し、事故を未然に防ぐのに使用するサージ防護素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電話機、ファクシミリ、モデム等の通信機器用の電子機器が通信線との接続する部分、電源線、アンテナ或いはCRT駆動回路等、雷サージや静電気等の異常電圧(サージ電圧)による電撃を受けやすい部分には、異常電圧によって電子機器やこの機器を搭載するプリント基板の熱的損傷又は発火等による破壊を防止するために、サージ防護素子が接続されている。
【0003】
従来、サージ防護素子として、例えば特許文献1には、中央部が膨らんだ構造をもつガラス管の内部にセラミックス素子を内包し、そのセラミックス素子の表面に導電性トリガ膜を形成した構造のサージアブソーバが記載されている。
また、特許文献2には、ガラス管と、ガラス管内に挿入された碍子であるサージ吸収素子と、ガラス管の両端に設けられガラス管を封止する封止電極とを有するサージアブソーバが記載されている。
【0004】
特許文献2に記載のサージアブソーバでは、放電時の熱による熱膨張係数差による破壊を抑制するために放電空間内に導電性材料の緩衝部材を介在させている。
これらのサージアブソーバは、円筒状のガラス管の両端にリード線を有する封止電極が高温加熱で封着された放電型サージ防護素子である。
【0005】
さらに、特許文献3では、封止電極と封止電極の外周に嵌合させたガラスビーズとを溶着させた封止体でガラス管の両端を封止したサージアブソーバが記載されている。なお、特許文献3では、ガラス管はガラスビーズよりも軟化点が高いものが好ましいとの記載があるが、ガラス管とガラスビーズとはどちらも鉛ガラスを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】意匠登録第1408215号公報
【特許文献2】特開2003-338353号公報
【特許文献3】特開平11-154585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
従来のサージ防護素子では、ジュメット材料を封止電極として用いているが、このジュメット材料の封止電極との親和性(濡れ性や熱膨張係数の整合性)を重視したガラス材料でガラス管を選定している。しかしながら、上記理由で選定したガラス材料のガラス管では、放電時の破壊に対する破壊強度が十分でない場合があり、また封止電極や碍子(サージ吸収素子)との熱膨張係数の整合性が十分でない場合があった。例えば、導電性材料の緩衝部材を用いない場合、必ずしも内部の碍子(サージ吸収素子)の熱膨張係数との整合性が十分ではない場合があった。
【0008】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、封止電極との良好な接合性と、放電時の破壊に対する破壊強度の向上との両方を得ることができるサージ防護素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明のサージ防護素子は、ガラス管と、前記ガラス管の両端部に接合された一対の環状ガラス部材と、前記一対の環状ガラス部材に接合され前記ガラス管の両端開口部を自身で又は前記環状ガラス部材と共に閉塞して内部に放電ガスを封止する一対の封止電極とを備え、前記封止電極の前記環状ガラス部材との接合面に亜酸化銅膜が形成され、前記環状ガラス部材が、PbOを含有する第1のガラス材料で形成され、前記ガラス管が、PbOを含有しない第2のガラス材料で形成されていることを特徴とする。
【0010】
このサージ防護素子では、環状ガラス部材が、PbOを含有する第1のガラス材料で形成され、ガラス管が、PbOを含有しない第2のガラス材料で形成されているので、PbOを含有することで環状ガラス部材と封止電極の亜酸化銅膜との親和性及び接合性が高くなると共に、PbOを含有しないことでガラス管が放電時の高い破壊強度を得ることができる。
【0011】
第2の発明に係るサージ防護素子は、第1の発明において、両端側に前記一対の封止電極を配して前記ガラス管内に収納されセラミックスで形成された碍子を備え、前記第1のガラス材料が、前記第2のガラス材料よりも熱膨張係数が小さいことを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、第2のガラス材料が、第1のガラス材料よりも熱膨張係数が大きいので、熱膨張係数が大きいセラミックスの碍子とガラス管との熱膨張係数の差が小さくなり、また熱膨張係数が小さい封止電極と環状ガラス部材との熱膨張係数の差が小さくなることで、部材間の熱応力が緩和され、全体の熱膨張係数の整合性が高くなって融着時の加熱処理の熱に起因する熱膨張係数の差による破壊を抑制することができる。
【0012】
第3の発明に係るサージ防護素子は、第1又は第2の発明において、前記第2のガラス材料が、前記第1のガラス材料よりも軟化点が高いガラス材料であることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、第2のガラス材料が、第1のガラス材料よりも軟化点が高いガラス材料であるので、軟化点が高いガラス管により放電時の優れた破壊強度を得ることができると共に、軟化点が低い環状ガラス部材により封止電極との良好な接合性を得ることができる。
【0013】
第4の発明に係るサージ防護素子は、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記一対の環状ガラス部材が、前記ガラス管の両端面に接合されていることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、一対の環状ガラス部材が、ガラス管の両端面に接合されているので、ガラス管の内径を封止電極の外径と同じに設定でき、環状ガラス部材を間に介在させていても全体として細くすることができる。
【0014】
第5の発明に係るサージ防護素子は、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記一対の環状ガラス部材が、前記ガラス管の両端部の内周面に接合されていることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、一対の環状ガラス部材が、ガラス管の両端部の内周面に接合されているので、封止電極の外径よりもガラス管の内径を大きく設定でき、放電空間を広くすることが可能になる。
【0015】
第6の発明に係るサージ防護素子は、第5の発明において、前記ガラス管が、両端部の内周面に接合された環状の中間ガラス部材を備え、前記中間ガラス部材の内周面に前記環状ガラス部材が接合されていることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、ガラス管が、両端部の内周面に接合された環状の中間ガラス部材を備え、中間ガラス部材の内周面に環状ガラス部材が接合されているので、さらにガラス管の内径を大きく設定でき、放電空間をより広くすることが可能になる。
【0016】
第7の発明に係るサージ防護素子は、第5又は第6の発明において、前記封止電極が、接合された前記環状ガラス部材よりも軸方向内方に突出していることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、封止電極が、接合された環状ガラス部材よりも軸方向内方に突出しているので、封止電極の内端部の角部が内方に突出することで、電界が集中し応答性が向上する。また、環状ガラス部材と封止電極との間にも空間が得られることで、放電空間が大きくなり、サージ耐量が向上する。
【0017】
第8の発明に係るサージ防護素子の製造方法は、第1から第7の発明のいずれかのサージ防護素子の製造方法であって、外周面に亜酸化銅膜を形成した一対の封止電極のうち一方の外周面に一対の環状ガラス部材のうち一方を接合させる下部電極側接合工程と、前記一方の環状ガラス部材にガラス管の下端部を接合させるガラス管下端部接合工程と、前記一対の環状ガラス部材のうち他方に前記一対の封止電極のうち他方を接合させる上部電極側接合工程と、前記ガラス管の上端部に前記他方の環状ガラス部材を接合させるガラス部材上端側接合工程とを有し、前記環状ガラス部材を、第1のガラス材料で形成し、前記ガラス管を、前記第1のガラス材料よりも軟化点が高い第2のガラス材料で形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法によれば、環状ガラス部材が、PbOを含有する第1のガラス材料で形成され、ガラス管が、PbOを含有しない第2のガラス材料で形成されるので、PbOを含有することで環状ガラス部材と封止電極の亜酸化銅膜との親和性及び接合性が高くなると共に、PbOを含有しないことでガラス管が放電時の高い破壊強度を得ることができる。
したがって、本発明のサージ防護素子及びその製造方法では、ガラス管と環状ガラス部材とを、互いにPbO含有の有無について異なる2種類のガラス材料で形成することで、封止電極との接合性と、放電時のガラス破壊に対する強度とを得られ、双方の効果によってサージ破壊耐量を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法の第1実施形態において、サージ防護素子を示す断面図である。
図2】第1実施形態において、サージ防護素子の製造方法を工程順に示す断面図である。
図3】本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法の第2実施形態において、サージ防護素子を示す断面図である。
図4】第2実施形態において、サージ防護素子の製造方法を工程順に示す断面図である。
図5】本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法の第3実施形態において、サージ防護素子を示す断面図である。
図6】第3実施形態において、ガラス管が膨らんだ状態のサージ防護素子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るサージ防護素子の第1実施形態を、図1及び図2を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能又は認識容易な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0021】
本実施形態のサージ防護素子1は、図1及び図2に示すように、ガラス管2と、ガラス管2の両端部に接合された一対の環状ガラス部材3と、一対の環状ガラス部材3に接合されガラス管2の両端開口部を自身で閉塞して内部に放電ガスを封止する一対の封止電極4とを備えている。
上記封止電極4の環状ガラス部材3との接合面には、亜酸化銅膜4cが形成されている。
本実施形態では、封止電極4の外周面に、亜酸化銅膜4cが形成されている。
【0022】
上記環状ガラス部材3は、PbOを含有する第1のガラス材料で形成され、ガラス管2は、PbOを含有しない第2のガラス材料で形成されている。
例えば、第1のガラス材料は、NaO・KO・PbO・Al・SiOであり、第2のガラス材料は、SiO・Al・B・NaO・LiO・KO・ROである。
また、本実施形態のサージ防護素子1は、両端側に一対の封止電極4を配してガラス管2内に収納されセラミックスで形成された碍子5を備えている。
上記第1のガラス材料は、第2のガラス材料よりも熱膨張係数が小さい材料である。
また、第2のガラス材料は、第1のガラス材料よりも軟化点が高いガラス材料である。
【0023】
本実施形態では、上記一対の環状ガラス部材3は、ガラス管2の両端面に接合され、一対の封止電極4は、一対の環状ガラス部材3の内周面に接合されている。
上記封止電極4は、円柱状の電極部4aと、該電極部4aに一端が埋め込まれたリード線4bとで構成されたスラグリードである。
上記電極部4aは、上述したように、少なくとも外周面が亜酸化銅膜4cで形成され内部がFeNi等のニッケル合金で形成されたジュメット線(ジュメット材料)を切断して使用したものである。
【0024】
なお、環状ガラス部材3は、電極部4aの外径よりも若干大きい内径に設定されている。
また、ガラス管2は、環状ガラス部材3と同じ外径及び内径に設定されている。
上記ガラス管2内に封入される放電ガスは、不活性ガス等であって、例えばHe,Ar,Ne,Xe,Kr,SF,CO,C,C,CF,H,N,大気等及びこれらの混合ガスが採用される。
【0025】
上記碍子5は、アルミナ(Al)、ムライト(3Al・2SiO)、フォルステライト(2MgO・SiO)等のセラミックス材料で薄板状に形成された放電素子である。
さらに、碍子5の表裏面の中間部には、カーボン等の導電性材料で形成されたトリガ部5aが設けられている。このトリガ部5aは、必要に応じて形成される。
上記ガラス管2は、略円筒状に形成されているが、環状ガラス部材3との融着時の加熱処理によって中央部が、半径方向外側に膨らんでいても構わない。
【0026】
上記環状ガラス部材3を形成する第1のガラス材料(PbOを含有するガラス材料)と上記ガラス管2を形成する第2のガラス材料(PbOを含有しないガラス材料)とは、それぞれ例えば表1に示す組成及び特性の材料で形成されている。なお、表1に示すように、同じ元素を用いたガラス材料でも、各元素の割合の違い等によって、熱膨張係数が異なる場合があるが、本実施形態では、第1のガラス材料として、第2のガラス材料よりも熱膨張係数が小さい材料を用いた。
また、本実施形態の碍子5は、表2に示す材質のフォルステライトで形成されており、ガラス管2との熱膨張係数の差が小さく、部材間の熱応力が緩和され、全体の熱膨張係数の整合性が高くなって融着時の加熱処理の熱に起因する熱膨張係数の差による破壊を抑制することができるため好適である。
【0027】
【表1】
【表2】
【0028】
次に、本実施形態のサージ防護素子1の製造方法について説明する。
【0029】
本実施形態のサージ防護素子1の製造方法は、図2に示すように、外周面に亜酸化銅膜4cを形成した一対の封止電極4のうち一方の外周面に、一対の環状ガラス部材3のうち一方を接合させる下部電極側接合工程と、一方の環状ガラス部材3にガラス管2の下端部を接合させるガラス管下端部接合工程と、一対の環状ガラス部材3のうち他方に一対の封止電極4のうち他方を接合させる上部電極側接合工程と、ガラス管2の上端部に他方の環状ガラス部材3を接合させるガラス部材上端側接合工程とを有している。
【0030】
下部電極側接合工程では、図2の(a)に示すように、まず一方の封止電極4の電極部4aの外周面に、封着に用いる環状ガラス部材3を被せ、熱処理により互いに溶着させる。なお、環状ガラス部材3を、上記第1のガラス材料で形成しておく。
次に、ガラス管下端部接合工程で、図2の(b)に示すように、溶着した環状ガラス部材3にガラス管2を載置し、図2の(c)に示すように、その状態で内部に碍子5を振り込む。なお、ガラス管2を、上記第1のガラス材料よりも軟化点が高い上記第2のガラス材料で形成しておく。
【0031】
この後、上部電極側接合工程で、下部電極側接合工程と同様に他方の封止電極4の電極部4aに環状ガラス部材3を熱処理により溶着させたものを、図1に示すように、ガラス部材上端側接合工程で、ガラス管2上に載せて、不活性ガス(放電ガス)雰囲気下で850℃により熱処理してガラス管2の下端部及び上端部にそれぞれ環状ガラス部材3を溶着・封着させることで、サージ防護素子1が作製される。
なお、第1実施形態においては、下部電極側接合工程および/またはガラス管下端部接合工程をガラス部材上端側接合工程と同時に行っても良い。
【0032】
このサージ防護素子1では、過電圧が侵入すると、まず碍子5のトリガ部5aと封止電極4との間でトリガ放電が行われ、このトリガ放電をきっかけに、さらに放電が進展して一対の封止電極4間で放電が行われることでサージが吸収される。
【0033】
このように第1実施形態のサージ防護素子1では、環状ガラス部材3が、PbOを含有する第1のガラス材料で形成され、ガラス管2が、PbOを含有しない第2のガラス材料で形成されているので、PbOを含有することで環状ガラス部材3と封止電極4の亜酸化銅膜4cとの親和性及び接合性が高くなると共に、PbOを含有しないことでガラス管2が放電時の高い破壊強度を得ることができる。
【0034】
また、第2のガラス材料が、第1のガラス材料よりも熱膨張係数が大きいので、熱膨張係数が大きいセラミックスの碍子5とガラス管2との熱膨張係数の差が小さくなり、また熱膨張係数が小さい封止電極4と環状ガラス部材3との熱膨張係数の差が小さくなることで、部材間の熱応力が緩和され、全体の熱膨張係数の整合性が高くなって融着時の加熱処理の熱に起因する熱膨張係数の差による破壊を抑制することができる。
さらに、一対の環状ガラス部材3が、ガラス管2の両端面に接合されているので、ガラス管2の内径を封止電極4の外径と同じに設定でき、環状ガラス部材3を間に介在させていても全体として細くすることができる。
【0035】
次に、本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法の第2及び第3実施形態について、図3から図6を参照して以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0036】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、一対の環状ガラス部材3が、ガラス管2の両端面に接合されているのに対し、第2実施形態のサージ防護素子21では、図3及び図4に示すように、一対の環状ガラス部材23が、ガラス管22の両端部の内周面に接合されている点である。
【0037】
なお、第2実施形態では、一対の封止電極24A,24Bのうち一方(封止電極24A)の電極部24aの内面側には、碍子5の下部が載置される凹部24cが形成されている。
第2実施形態のサージ防護素子21の製造方法は、下部電極側接合工程で、図3の(a)に示すように、まず一方の封止電極24Aの外周面に、封着に用いる環状ガラス部材23を被せ、熱処理により互いに溶着させる。なお、環状ガラス部材23を、第1実施形態と同様に、上記第1のガラス材料で形成しておく。
【0038】
次に、ガラス管下端部接合工程で、図3の(b)に示すように、溶着した環状ガラス部材23をガラス管22の下部開口部に挿入し、図3の(c)に示すように、その状態で内部に碍子5を振り込む。このとき、碍子5の下部を封止電極24Aの凹部24c内に挿入する。
なお、ガラス管22は、環状ガラス部材23の外径よりも若干大きい内径に設定されている。
また、ガラス管22を、第1実施形態と同様に、上記第1のガラス材料よりも軟化点が高い上記第2のガラス材料で形成しておく。
【0039】
この後、上部電極側接合工程で、下部電極側接合工程と同様に他方の封止電極24Bの電極部24aに環状ガラス部材23を熱処理により溶着させたものを、図1に示すように、ガラス管22の上部開口部に挿入させ、不活性ガス(放電ガス)雰囲気下で850℃により熱処理してガラス管22の下部内周面及び上部内周面にそれぞれ環状ガラス部材23を溶着・封着させることで、サージ防護素子21が作製される。
なお、第2実施形態においては、下部電極側接合工程および/またはガラス管下端部接合工程をガラス部材上端側接合工程と同時に行っても良い。
【0040】
このように第2実施形態のサージ防護素子21では、一対の環状ガラス部材23が、ガラス管22の両端部の内周面に接合され、一対の封止電極24A,24Bが、一対の環状ガラス部材23の内周面に接合されているので、封止電極24A,24Bの外径よりもガラス管22の内径を大きく設定でき、放電空間を広くすることが可能になる。
【0041】
次に、第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、ガラス管22の内周面が、一対の環状ガラス部材23に接合され、一対の環状ガラス部材23が対応する一対の封止電極24A,24Bに接合されているのに対し、第3実施形態のサージ防護素子31では、図5及び図6に示すように、ガラス管32が、両端部の内周面に接合された一対の環状の中間ガラス部材33を備え、一対の中間ガラス部材33の内周面に一対の環状ガラス部材23が接合されている点である。
【0042】
すなわち、第3実施形態では、ガラス管32と同じ第2のガラス材料で形成された中間ガラス部材33内に環状ガラス部材23に嵌め込み、さらにガラス管32内に中間ガラス部材33を嵌め込んだ状態で、熱処理によりこれらを互いに溶着、封着している。なお、中間ガラス部材33は、軟化点が第1のガラス材料よりも高く、第2のガラス材料以下のガラス材料であってもよい。
また、第3実施形態では、一対の封止電極34A,34B(電極部34a,34b)が、接合された一対の環状ガラス部材23よりも軸方向内方に突出している。
【0043】
なお、第3実施形態では、図6に示すように、上記組み立て状態のままでガラス管32の軟化点以上に加熱してガラス管32を軟化状態とすると共にガラス管32の内圧よりも外圧を低くして軟化したガラス管32の中間部を外側に膨出させている(膨出工程)。すなわち、ガラス管32の外部を減圧することで負圧状態を作り出し、このガラス管32の内部と外部との圧力差によって軟化状態のガラス管32を半径方向外方に膨らんだ状態とする。
【0044】
なお、上記膨出工程の際、碍子5の中間部が絞られた形状とされているので、碍子5の中間部がガラス管32の内面に接触しておらず、ガラス管32の膨出を妨げない。
この後、冷却することで、ガラス管32の中間部が膨出した状態で硬化されると共に上記溶着・封着が行われサージ防護素子31が作製される。
【0045】
このように第3実施形態のサージ防護素子31では、ガラス管32が、両端部の内周面に接合された環状の中間ガラス部材33を備え、中間ガラス部材33の内周面に環状ガラス部材23が接合されているので、さらにガラス管32の内径を大きく設定でき、放電空間をより広くすることが可能になる。
また、封止電極34A,34B(電極部34a,34b)が、接合された環状ガラス部材23よりも軸方向内方に突出しているので、封止電極34A,34B(電極部34a,34b)の内端部の角部が内方に突出することで、電界が集中し応答性が向上する。また、中間ガラス部材33と封止電極34A,34B(電極部34a,34b)との間にも空間が得られることで、放電空間が大きくなり、サージ耐量が向上する。
【0046】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1,21,31…サージ防護素子、2,22,32…ガラス管、3,23…環状ガラス部材、4,24A,24B,34A,34B…封止電極、4c…亜酸化銅膜、5…碍子、33…中間ガラス部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6