(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167368
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】サージ防護素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01T 4/12 20060101AFI20221027BHJP
H01T 21/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01T4/12 F
H01T21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073120
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】酒井 信智
(72)【発明者】
【氏名】藤原 和崇
(57)【要約】
【課題】高い絶縁性と、封止電極との良好な接合性と、放電時の破壊に対する破壊強度の向上とを得ることができるサージ防護素子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 セラミックス管2と、セラミックス管2の両端部に接合された一対の環状ガラス部材3と、一対の環状ガラス部材3に接合されセラミックス管2の両端開口部を自身で又は環状ガラス部材3と共に閉塞して内部に放電ガスを封止する一対の封止電極4とを備えている。また、封止電極と環状ガラス部材との接合面に亜酸化銅膜4cが形成されていることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス管と、
前記セラミックス管の両端部に接合された一対の環状ガラス部材と、
前記一対の環状ガラス部材に接合され前記セラミックス管の両端開口部を自身で又は前記環状ガラス部材と共に閉塞して内部に放電ガスを封止する一対の封止電極とを備えていることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項2】
請求項1に記載のサージ防護素子において、
前記封止電極と前記環状ガラス部材との接合面に亜酸化銅膜が形成され、
前記環状ガラス部材が、PbOを含有するガラス材料で形成されていることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のサージ防護素子において、
前記セラミックス管が、SiO2を含有していることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のサージ防護素子において、
両端側に前記一対の封止電極を配して前記セラミックス管内に収納されセラミックスで形成された碍子を備えていることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のサージ防護素子において、
前記一対の環状ガラス部材が、前記セラミックス管の両端面に接合されていることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載のサージ防護素子において、
前記一対の環状ガラス部材が、前記セラミックス管の両端部の内周面に接合されていることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項7】
請求項6に記載のサージ防護素子において、
前記セラミックス管が、両端部の内周面に接合された環状の中間ガラス部材を備え、
前記中間ガラス部材の内周面に前記環状ガラス部材が接合されていることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のサージ防護素子において、
前記封止電極が、接合された前記環状ガラス部材よりも軸方向内方に突出していることを特徴とするサージ防護素子。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項にサージ防護素子の製造方法であって、
一対の封止電極のうち一方の外周面に一対の環状ガラス部材のうち一方を接合させる下部電極側接合工程と、
前記一方の環状ガラス部材にセラミックス管の下端部を接合させるセラミックス管下端部接合工程と、
前記一対の環状ガラス部材のうち他方に前記一対の封止電極のうち他方を接合させる上部電極側接合工程と、
前記セラミックス管の上端部に前記他方の環状ガラス部材を接合させるセラミックス管上端側接合工程とを有していることを特徴とするサージ防護素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落雷等で発生するサージから様々な機器を保護し、事故を未然に防ぐのに使用するサージ防護素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電話機、ファクシミリ、モデム等の通信機器用の電子機器が通信線との接続する部分、電源線、アンテナ或いはCRT駆動回路等、雷サージや静電気等の異常電圧(サージ電圧)による電撃を受けやすい部分には、異常電圧によって電子機器やこの機器を搭載するプリント基板の熱的損傷又は発火等による破壊を防止するために、サージ防護素子が接続されている。
【0003】
従来、サージ防護素子として、例えば特許文献1には、中央部が膨らんだ構造をもつガラス管の内部にセラミックス素子を内包し、そのセラミックス素子の表面に導電性トリガ膜を形成した構造のサージアブソーバが記載されている。
このようなガラス管を用いたサージ防護素子では、ジュメット材料を封止電極として用いているが、ガラス管がジュメット材料の封止電極との親和性(濡れ性や熱膨張係数の整合性)に優れている。また、ガラス管は、高湿環境下での絶縁性に優れ、静電容量も小さい利点がある。
【0004】
また、特許文献2には、放電空間の形成をガラス封止ではなく、アルミナ等のセラミックス管(セラミックスパッケージ、筒状セラミックス)を用いたサージアブソーバが記載されている。
このようなセラミックス管を用いたサージ防護素子では、セラミックスの強度による高いサージ耐量が得られる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】意匠登録第1408215号公報
【特許文献2】特開2006-196294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
従来のガラス管を用いたサージ防護素子では、強力なサージが印加された場合にガラス管が破壊されるおそれがあり、サージ耐量が高くないという不都合があった。一方、従来のセラミックス管を用いたサージ防護素子では、高湿環境下の絶縁性が低く、静電容量も比較的大きいため、平時に電気回路に影響を及ぼすおそれがあった。また、セラミックス管と封止電極との封止には、ろう材を用い、セラミックス管側にメタライズを施す必要があり、高コストになってしまう問題もあった。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、高い絶縁性と、封止電極との良好な接合性と、放電時の破壊に対する破壊強度の向上とを得ることができるサージ防護素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明のサージ防護素子は、セラミックス管と、前記セラミックス管の両端部に接合された一対の環状ガラス部材と、前記一対の環状ガラス部材に接合され前記セラミックス管の両端開口部を自身で又は前記環状ガラス部材と共に閉塞して内部に放電ガスを封止する一対の封止電極とを備えていることを特徴とする。
【0009】
このサージ防護素子では、セラミックス管の両端部に接合された一対の環状ガラス部材と、一対の環状ガラス部材に接合されセラミックス管の両端開口部を自身で又は環状ガラス部材と共に閉塞して内部に放電ガスを封止する一対の封止電極とを備えているので、環状ガラス部材によって高い絶縁性が得られると共に封止電極との優れた親和性及び接合性が得られ、さらに放電空間を覆うセラミックス管により優れた破壊強度を得ることができる。すなわち、封止電極とセラミックス管との間に環状ガラス部材が介在するため、高湿環境下でも絶縁性に優れている。また、封止電極に対して環状ガラス部材のガラスの溶融による接着で接合できると共に、環状ガラス部材を介してセラミックス管も接合でき、ろう材とセラミックス管のメタライズが不要になる。また、セラミックス管と直列に接続されるため、静電容量も小さくすることができる。さらに、放電空間がセラミックス管で覆われていることで、環状ガラス部材に亀裂が生じても、セラミックス管内に進展し難く、高いサージ耐量を得ることができる。
【0010】
第2の発明に係るサージ防護素子では、第1の発明において、前記封止電極と前記環状ガラス部材との接合面に亜酸化銅膜が形成され、前記環状ガラス部材が、PbOを含有するガラス材料で形成されていることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、封止電極と環状ガラス部材との接合面に亜酸化銅膜が形成され、環状ガラス部材が、PbOを含有するガラス材料で形成されているので、PbOを含有することで環状ガラス部材と封止電極の亜酸化銅膜との親和性及び接合性がより高くなる。
【0011】
第3の発明に係るサージ防護素子では、第1又は第2の発明において、前記セラミックス管が、SiO2を含有していることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、セラミックス管が、SiO2を含有しているので、環状ガラス部材との接合性が高くなる。
【0012】
第4の発明に係るサージ防護素子では、第1から第3の発明のいずれかにおいて、両端側に前記一対の封止電極を配して前記セラミックス管内に収納されセラミックスで形成された碍子を備えていることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、両端側に一対の封止電極を配してセラミックス管内に収納されセラミックスで形成された碍子を備えているので、セラミックス管と碍子とが互いにセラミックス製であることで、熱膨張係数の差が小さく、熱膨張係数差による熱応力を低減することができる。
【0013】
第5の発明に係るサージ防護素子では、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記一対の環状ガラス部材が、前記セラミックス管の両端面に接合されていることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、一対の環状ガラス部材が、セラミックス管の両端面に接合されているので、セラミックス管の内径を封止電極の外径と同じに設定でき、環状ガラス部材を間に介在させていても全体として細くすることができる。
【0014】
第6の発明に係るサージ防護素子では、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記一対の環状ガラス部材が、前記セラミックス管の両端部の内周面に接合されていることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、一対の環状ガラス部材が、セラミックス管の両端部の内周面に接合されているので、封止電極の外径よりもセラミックス管の内径を大きく設定でき、放電空間を広くすることが可能になる。
【0015】
第7の発明に係るサージ防護素子では、第6の発明において、前記セラミックス管が、両端部の内周面に接合された環状の中間ガラス部材を備え、前記中間ガラス部材の内周面に前記環状ガラス部材が接合されていることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、セラミックス管が、両端部の内周面に接合された環状の中間ガラス部材を備え、中間ガラス部材の内周面に環状ガラス部材が接合されているので、さらにセラミックス管の内径を大きく設定でき、放電空間をより広くすることが可能になる。
【0016】
第8の発明に係るサージ防護素子では、第6又は第7の発明において、前記封止電極が、接合された前記環状ガラス部材よりも軸方向内方に突出していることを特徴とする。
すなわち、このサージ防護素子では、封止電極が、接合された環状ガラス部材よりも軸方向内方に突出しているので、封止電極の内端部の角部が内方に突出することで、電界が集中し応答性が向上する。また、環状ガラス部材と封止電極との間にも空間が得られることで、放電空間が大きくなり、サージ耐量が向上する。
【0017】
第9の発明に係るサージ防護素子の製造方法では、第1から第8の発明のいずれかのサージ防護素子の製造方法であって、一対の封止電極のうち一方の外周面に一対の環状ガラス部材のうち一方を接合させる下部電極側接合工程と、前記一方の環状ガラス部材にセラミックス管の下端部を接合させるセラミックス管下端部接合工程と、前記一対の環状ガラス部材のうち他方に前記一対の封止電極のうち他方を接合させる上部電極側接合工程と、前記セラミックス管の上端部に前記他方の環状ガラス部材を接合させるセラミックス管上端側接合工程とを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法によれば、セラミックス管の両端部に接合された一対の環状ガラス部材と、一対の環状ガラス部材に接合されセラミックス管の両端開口部を自身で又は環状ガラス部材と共に閉塞して内部に放電ガスを封止する一対の封止電極とを備えているので、環状ガラス部材によって高い絶縁性が得られると共に封止電極との優れた親和性及び接合性が得られ、さらに放電空間を覆うセラミックス管により優れた破壊強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法の第1実施形態において、サージ防護素子を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態において、サージ防護素子の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図3】本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法の第2実施形態において、サージ防護素子を示す断面図である。
【
図4】第2実施形態において、サージ防護素子の製造方法を工程順に示す断面図である。
【
図5】本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法の第3実施形態において、サージ防護素子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法の第1実施形態を、
図1及び
図2を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能又は認識容易な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0021】
本実施形態のサージ防護素子1は、
図1及び
図2に示すように、セラミックス管2と、セラミックス管2の両端部に接合された一対の環状ガラス部材3と、一対の環状ガラス部材3に接合されセラミックス管2の両端開口部を自身で又は環状ガラス部材3と共に閉塞して内部に放電ガスを封止する一対の封止電極4とを備えている。
上記封止電極4の環状ガラス部材3との接合面には、亜酸化銅膜4cが形成されている。
本実施形態では、封止電極4の外周面に、亜酸化銅膜4cが形成されている。
また、上記環状ガラス部材3は、PbOを含有するガラス材料で形成されている。
例えば、環状ガラス部材3のガラス材料は、Na
2O・K
2O・PbO・Al
2O
3・SiO
2である。
【0022】
上記セラミックス管2は、SiO2を含有している。
例えば、セラミックス管2は、SiO2を含有したAl2O3(アルミナ)で形成されている。
また、本実施形態のサージ防護素子1は、両端側に一対の封止電極4を配してセラミックス管2内に収納されセラミックスで形成された碍子5を備えている。
上記一対の環状ガラス部材3は、セラミックス管2の両端面に接合されている。
【0023】
上記封止電極4は、円柱状の電極部4aと、該電極部4aに一端が埋め込まれたリード線4bとで構成されたスラグリードである。
上記電極部4aは、上述したように、少なくとも外周面が亜酸化銅膜4cで形成され内部がFeNi等のニッケル合金で形成されたジュメット線(ジュメット材料)を切断して使用したものである。
【0024】
なお、環状ガラス部材3は、電極部4aの外径よりも若干大きい内径に設定されている。
また、セラミックス管2は、環状ガラス部材3と同じ外径及び内径に設定されている。
上記セラミックス管2内に封入される放電ガスは、不活性ガス等であって、例えばHe,Ar,Ne,Xe,Kr,SF6,CO2,C3F8,C2F6,CF4,H2,N2,大気等及びこれらの混合ガスが採用される。
【0025】
上記碍子5は、アルミナ(Al2O3)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、フォルステライト(2MgO・SiO2)等のセラミックス材料で薄板状に形成された放電素子である。
なお、本実施形態の碍子5は、アルミナ(Al2O3)で形成されており、セラミックス管2との熱膨張係数の差が小さく、部材間の熱応力が緩和され、全体の熱膨張係数の整合性が高くなって融着時の加熱処理の熱に起因する熱膨張係数の差による破壊を抑制することができるため好適である。
さらに、碍子5の表裏面の中間部には、カーボン等の導電性材料で形成されたトリガ部5aが設けられている。このトリガ部5aは、必要に応じて形成される。
【0026】
次に、本実施形態のサージ防護素子1の製造方法について説明する。
【0027】
本実施形態のサージ防護素子1の製造方法は、
図2に示すように、一対の封止電極4のうち一方の外周面に一対の環状ガラス部材3のうち一方を接合させる下部電極側接合工程と、一方の環状ガラス部材3にセラミックス管2の下端部を接合させるセラミックス管下端部接合工程と、一対の環状ガラス部材3のうち他方に一対の封止電極4のうち他方を接合させる上部電極側接合工程と、セラミックス管2の上端部に他方の環状ガラス部材3を接合させるセラミックス管上端側接合工程とを有している。
【0028】
下部電極側接合工程では、
図2の(a)に示すように、まず一方の封止電極4の電極部4aの外周面に、封着に用いる環状ガラス部材3を被せ、熱処理により互いに溶着させる。
次に、セラミックス管下端部接合工程で、
図2の(b)に示すように、溶着した環状ガラス部材3にセラミックス管2を載置し、
図2の(c)に示すように、その状態で内部に碍子5を振り込む。
【0029】
この後、上部電極側接合工程で、下部電極側接合工程と同様に他方の封止電極4の電極部4aに環状ガラス部材3を熱処理により溶着させたものを、
図1に示すように、セラミックス管上端側接合工程で、セラミックス管2上に載せて、不活性ガス(放電ガス)雰囲気下で700℃により熱処理してセラミックス管2の下端部及び上端部にそれぞれ環状ガラス部材3を溶着・封着させることで、サージ防護素子1が作製される。
なお、第1実施形態においては、下部電極側接合工程および/またはセラミックス管下端部接合工程をセラミックス管上端側接合工程と同時に行っても良い。
【0030】
このサージ防護素子1では、過電圧が侵入すると、まず碍子5のトリガ部5aと封止電極4との間でトリガ放電が行われ、このトリガ放電をきっかけに、さらに放電が進展して一対の封止電極4間で放電が行われることでサージが吸収される。
【0031】
このように第1実施形態のサージ防護素子1では、セラミックス管2の両端部に接合された一対の環状ガラス部材3と、一対の環状ガラス部材3に接合されセラミックス管2の両端開口部を自身で又は環状ガラス部材3と共に閉塞して内部に放電ガスを封止する一対の封止電極4とを備えているので、環状ガラス部材3によって高い絶縁性が得られると共に封止電極4との優れた親和性及び接合性が得られ、さらに放電空間を覆うセラミックス管2により優れた破壊強度を得ることができる。
【0032】
すなわち、封止電極4とセラミックス管2との間に環状ガラス部材3が介在するため、高湿環境下でも絶縁性に優れている。また、封止電極4に対して環状ガラス部材3のガラスの溶融による接着で接合できると共に、環状ガラス部材3を介してセラミックス管2も接合でき、セラミックス管2のメタライズが不要になる。また、セラミックス管2と直列に接続されるため、静電容量も小さくすることができる。さらに、放電空間がセラミックス管2で覆われていることで、環状ガラス部材3に亀裂が生じても、セラミックス管2内に進展し難く、高いサージ耐量を得ることができる。
【0033】
また、封止電極4の環状ガラス部材3との接合面には、亜酸化銅膜4cが形成され、環状ガラス部材3が、PbOを含有するガラス材料で形成されているので、PbOを含有することで環状ガラス部材3と封止電極4の亜酸化銅膜4cとの親和性及び接合性がより高くなる。
さらに、セラミックス管2が、SiO2を含有しているので、環状ガラス部材3との接合性が高くなる。
【0034】
また、両端側に一対の封止電極4を配してセラミックス管2内に収納されセラミックスで形成された碍子5を備えているので、セラミックス管2と碍子5とが互いにセラミックス製であることで、熱膨張係数の差が小さく、熱膨張係数差による熱応力を低減することができる。
また、一対の環状ガラス部材3が、セラミックス管2の両端面に接合されているので、セラミックス管2の内径を封止電極4の外径と同じに設定でき、環状ガラス部材3を間に介在させていても全体として細くすることができる。
【0035】
次に、本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法の第2及び第3実施形態について、
図3から
図5を参照して以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0036】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、一対の環状ガラス部材3が、セラミックス管2の両端面に接合されているのに対し、第2実施形態のサージ防護素子21では、
図3及び
図4に示すように、一対の環状ガラス部材23が、セラミックス管22の両端部の内周面に接合されている点である。
【0037】
なお、第2実施形態では、一対の封止電極24A,24Bのうち一方(封止電極24A)の電極部24aの内面側には、碍子5の下部が載置される凹部24cが形成されている。
第2実施形態のサージ防護素子21の製造方法は、下部電極側接合工程で、
図3の(a)に示すように、まず一方の封止電極24Aの外周面に、封着に用いる環状ガラス部材23を被せ、熱処理により互いに溶着させる。
【0038】
次に、セラミックス管下端部接合工程で、
図3の(b)に示すように、溶着した環状ガラス部材23をセラミックス管22の下部開口部に挿入し、
図3の(c)に示すように、その状態で内部に碍子5を振り込む。このとき、碍子5の下部を封止電極24Aの凹部24c内に挿入する。
なお、セラミックス管22は、環状ガラス部材23の外径よりも若干大きい内径に設定されている。
【0039】
この後、上部電極側接合工程で、下部電極側接合工程と同様に他方の封止電極24Bの電極部24aに環状ガラス部材23を熱処理により溶着させたものを、
図1に示すように、セラミックス管22の上部開口部に挿入させ、不活性ガス(放電ガス)雰囲気下で700℃により熱処理してセラミックス管22の下部内周面及び上部内周面にそれぞれ環状ガラス部材23を溶着・封着させることで、サージ防護素子21が作製される。
なお、第2実施形態においては、下部電極側接合工程および/またはセラミックス管下端部接合工程をセラミックス管上端側接合工程と同時に行っても良い。
【0040】
このように第2実施形態のサージ防護素子21では、一対の環状ガラス部材23が、セラミックス管22の両端部の内周面に接合され、一対の封止電極24A,24Bが、一対の環状ガラス部材23の内周面に接合されているので、封止電極24A,24Bの外径よりもセラミックス管22の内径を大きく設定でき、放電空間を広くすることが可能になる。
【0041】
次に、第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、セラミックス管22の内周面が、一対の環状ガラス部材23に接合され、一対の環状ガラス部材23が対応する一対の封止電極24A,24Bに接合されているのに対し、第3実施形態のサージ防護素子31では、
図5に示すように、セラミックス管32が、両端部の内周面に接合された一対の環状の中間ガラス部材33を備え、一対の中間ガラス部材33の内周面に一対の環状ガラス部材23が接合されている点である。
【0042】
すなわち、第3実施形態では、例えば環状ガラス部材23と同じガラス材料で形成された中間ガラス部材33内に環状ガラス部材23に嵌め込み、さらにセラミックス管32内に中間ガラス部材33を嵌め込んだ状態で、熱処理によりこれらを互いに溶着、封着してサージ防護素子31が作製される。なお、中間ガラス部材33は、軟化点が第1のガラス材料よりも高いPbOを含有しないガラス材料であってもよい。
また、第3実施形態では、一対の封止電極34A,34B(電極部34a,34b)が、接合された一対の環状ガラス部材23よりも軸方向内方に突出している。
【0043】
このように第3実施形態のサージ防護素子31では、セラミックス管32が、両端部の内周面に接合された環状の中間ガラス部材33を備え、中間ガラス部材33の内周面に環状ガラス部材23が接合されているので、さらにセラミックス管32の内径を大きく設定でき、放電空間をより広くすることが可能になる。
また、封止電極34A,34B(電極部34a,34b)が、接合された環状ガラス部材23よりも軸方向内方に突出しているので、封止電極34A,34B(電極部34a,34b)の内端部の角部が内方に突出することで、電界が集中し応答性が向上する。また、中間ガラス部材33と封止電極34A,34B(電極部34a,34b)との間にも空間が得られることで、放電空間が大きくなり、サージ耐量が向上する。
【0044】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1,21,31…サージ防護素子、2,22,32…セラミックス管、3,23…環状ガラス部材、4,24A,24B,34A,34B…封止電極、4c…亜酸化銅膜、5…碍子、33…中間ガラス部材