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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167384
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】組み付け治具
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/356 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
F01L1/356 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073146
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幹
(72)【発明者】
【氏名】中井 正芳
(72)【発明者】
【氏名】織田 健佑
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 久史
【テーマコード(参考)】
3G018
【Fターム(参考)】
3G018AB02
3G018BA09
3G018BA33
3G018DA84
3G018DA86
3G018FA01
3G018FA07
3G018GA17
(57)【要約】
【課題】第1部材の挿入孔に第2部材を挿入すると共に締付具を介して第2部材を第1部材に位置決めして固定する際の誤組み付けの発生を良好に抑制する組み付け治具の提供。
【解決手段】本開示の組み付け治具は、第2部材を保持する保持部材と、締付具の締付作業を妨げる妨害位置と、締付作業を妨げない非妨害位置との間で移動可能な第1移動部材と、保持部材により第1部材に対する第2部材の挿抜方向に移動自在に支持される第2移動部材とを含み、第2移動部材は、第1移動部材の妨害位置から非妨害位置への移動を規制すると共に、保持部材により保持された第2部材が挿入孔に挿入される際に第1部材に当接して第2部材から離間し、第1部材の第1嵌合部と第2部材の第2嵌合部とが嵌まり合うのに応じて第1移動部材の妨害位置から非妨害位置への移動の規制を解除する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材に形成された挿入孔に第2部材を挿入すると共に前記第1部材に形成された第1嵌合部と前記第2部材に形成された第2嵌合部とを嵌め合わせ、締付具を介して前記第1部材に前記第2部材を固定するのに用いられる組み付け治具であって、
前記第2嵌合部の位置が一定になるように前記第2部材を保持する保持部材と、
前記締付具の締付作業を妨げる妨害位置と、前記締付作業を妨げない非妨害位置との間で移動可能な第1移動部材と、
前記保持部材により前記第1部材に対する前記第2部材の挿抜方向に移動自在に支持され、前記第1移動部材の前記妨害位置から前記非妨害位置への移動を規制すると共に、前記保持部材により保持された前記第2部材が前記挿入孔に挿入される際に前記第1部材に当接して前記第2部材から離間し、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部とが嵌まり合うのに応じて前記第1移動部材の前記妨害位置から前記非妨害位置への移動の規制を解除する第2移動部材と、
を備える組み付け治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、第1部材に形成された挿入孔に第2部材を挿入すると共に、締付具を介して第1部材に第2部材を固定するのに用いられる組み付け治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のボルトを介して内燃機関のカムシャフトの端部に固定されるロータ(第1部材)と、当該ロータに作用する油圧を制御するためのオイルコントロールバルブ(第2部材)とを含む可変バルブタイミング機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。この可変バルブタイミング機構において、オイルコントロールバルブの外壁には、バルブ中心線から離間する方向に突出する突部が形成されている。また、ロータの中央部には、収容穴が形成されており、当該収容穴は、ロータの突部が挿入される溝を含む。これにより、突部と溝との側壁同士の接触により、オイルコントロールバルブがロータに対してバルブ中心線周りに位置決めされる。更に、ロータをカムシャフトに固定するための1つのボルト(締付具)の頭部で突部を介してオイルコントロールバルブを収容穴内に押し付けることで、オイルコントロールバルブがロータに対して固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-031899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の可変バルブタイミング機構において、オイルコントロールバルブの突部は、バルブ中心線の延在方向におけるバルブ外壁の全体から突出するものではなく、バルブ外壁の一部から突出する薄板状(フランジ状)の突部であると考えられる。この場合、オイルコントロールバルブをロータの収容穴に挿入した際に、当該突部が収容穴の溝に嵌まらずにロータの端面に当接してしまうことがある。そして、突部がロータの端面に当接した状態でボルトがカムシャフトに螺合されると、オイルコントロールバルブがバルブ中心線周りに位置決めされず、ロータに対して正常に固定されなくなってしまう。
【0005】
そこで、本開示は、第1部材の挿入孔に第2部材を挿入すると共に締付具を介して第2部材を第1部材に位置決めして固定する際の誤組み付けの発生を良好に抑制することができる組み付け治具の提供を主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の組み付け治具は、第1部材に形成された挿入孔に第2部材を挿入すると共に前記第1部材に形成された第1嵌合部と前記第2部材に形成された第2嵌合部とを嵌め合わせ、締付具を介して前記第1部材に前記第2部材を固定するのに用いられる組み付け治具であって、前記第2嵌合部の位置が一定になるように前記第2部材を保持する保持部材と、前記締付具の締付作業を妨げる妨害位置と、前記締付作業を妨げない非妨害位置との間で移動可能な第1移動部材と、前記保持部材により前記第1部材に対する前記第2部材の挿抜方向に移動自在に支持され、前記第1移動部材の前記妨害位置から前記非妨害位置への移動を規制すると共に、前記保持部材により保持された前記第2部材が前記挿入孔に挿入される際に前記第1部材に当接して前記第2部材から離間し、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部とが嵌まり合うのに応じて前記第1移動部材の前記妨害位置から前記非妨害位置への移動の規制を解除する第2移動部材とを含むものである。
【0007】
本開示の組み付け治具を用いて第1部材に第2部材を固定する際には、第2部材の第2嵌合部の位置が一定になるように保持部材に第2部材を保持させる。この際、第2移動部材は、第1移動部材の妨害位置から非妨害位置への移動を規制しており、第1移動部材は、締付具の締付作業を妨げる妨害位置に保持される。次いで、第1部材の第1嵌合部と第2部材の第2嵌合部とが嵌まり合うように保持部材により保持された第2部材を第1部材の挿入孔に挿入する。第2部材が第1部材の挿入孔に挿入されていくと、第2移動部材は、第1部材に当接して第2部材から離間していき、第1嵌合部と第2嵌合部とが嵌まり合うのに応じて第1移動部材の妨害位置から非妨害位置への移動の規制を解除する。これにより、第1移動部材が締付具の締付作業を妨げない非妨害位置へと移動することから、締付作業を実行して締付具により第2部材を第1部材に固定することが可能となる。すなわち、本開示の組み付け治具を用いた場合、第1嵌合部と第2嵌合部とが正常に嵌まり合っておらず、第1部材に対して第2部材が位置決めされていない場合、第2移動部材による第1移動部材の妨害位置から非妨害位置への移動の規制が解除されず、締付具の締付作業の実行が困難になる。この結果、本開示の組み付け治具によれば、第1部材に対して第2部材が位置決めされていない状態で締付具の締付作業が行われてしまうのを実質的に無くすことができるので、第1部材に対する第2部材の誤組み付けの発生を極めて良好に抑制することが可能となる。
【0008】
また、前記第1移動部材は、前記保持部材により前記第2部材の前記挿抜方向と直交する方向に移動自在に支持される棒材と、前記棒材に形成された拡径部とを含むものであってもよく、前記第2移動部材は、前記棒材および前記拡径部の進入を許容する開口を有するものであってもよく、前記拡径部が前記開口内に進入することなく前記第2移動部材の一部に当接している際に前記第1移動部材が前記妨害位置に保持されてもよく、前記第2移動部材が前記第2部材から離間するのに応じて前記拡径部が前記開口内に進入することで前記第1移動部材の前記非妨害位置への移動の規制が解除されてもよい。これにより、第2移動部材の移動に連動させて適正なタイミングで第1移動部材を妨害位置から非妨害位置へと移動させることが可能となる。この場合、前記保持部材は、前記第2移動部材を支持する底板を含むものであってもよく、前記底板は、前記第1移動部材の前記拡径部の進入を規制して前記棒材のみの進入を許容する開口を有するものであってもよい。
【0009】
更に、前記保持部材は、前記第2部材を部分的に支持する本体と、前記本体により前記第2部材の前記挿抜方向および前記第1移動部材の移動方向の双方と直交する軸の周りに回動自在に支持されたクランプ部材と、前記クランプ部材の一端を前記本体により支持された前記第2部材に押し付けるように前記クランプ部材を付勢する付勢部材とを含むものであってもよい。この場合、前記第2部材には、平坦面が形成されてもよく、前記クランプ部材の前記一端には、前記第2部材の前記平坦面を支持する平坦な支持面が形成されてもよい。これにより、第2嵌合部の位置を一定に保ちながら、第2部材を保持部材によってしっかりと保持することが可能となる。
【0010】
また、前記組み付け治具は、前記第1部材の一部と係合して前記保持部材により保持された前記第2部材の前記第2嵌合部と前記第1部材の前記第1嵌合部とを互いに対向させる位置決め係合部を有するものであってもよい。これにより、第1および第2嵌合部を確実に嵌め合わせることができるので、第1部材に対する第2部材の誤組み付けの発生を極めて良好に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の組み付け治具を示す斜視図である。
図2】本開示の組み付け治具を用いて互いに固定される第1および第2部材を示す斜視図である。
図3】本開示の組み付け治具を示す拡大斜視図である。
図4】本開示の組み付け治具を示す部分断面図である。
図5】本開示の組み付け治具を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0013】
図1は、本開示の組み付け治具1を示す斜視図である。同図に示す組み付け治具1は、車両に搭載される内燃機関の可変バルブタイミング機構を構成するロータ(第1部材)101に対して当該ロータ101の図示しない進角側油室および遅角側油室に供給される油圧を制御するオイルコントロールバルブ(第2部材)102を組み付けて固定するのに用いられるものである。
【0014】
ロータ101は、内燃機関の図示しないカムシャフトの端部に締結(固定)されるものである。図2に示すように、ロータ101の中心部には、オイルコントロールバルブ102が挿入される挿入孔(貫通孔)101oが形成されている。更に、ロータ101は、それぞれ軸方向に延在するように周方向に間隔おいて(等間隔に)挿入孔101oの周りに配設された複数(本実施形態では、例えば3個)のボルト孔101hを有する。各ボルト孔101hには、上記カムシャフトに螺合される締付具としてのボルトB(図1参照)が挿通される。また、ロータ101の端面には、何れか1つのボルト孔101hの近傍で挿入孔101oの外周の一部に沿って延びる略長方形状の平面形状をもった比較的浅い凹部(第1嵌合部)101rが形成されている。
【0015】
オイルコントロールバルブ102は、スリーブ102sや何れも図示しないスプール、スプリングおよび電磁部等を含む電磁弁であり、車両のオイルポンプやオイルの貯留部に接続される。図2に示すように、オイルコントロールバルブ102は、スリーブ102sの外周面から径方向外側に延出された薄板状の突出部(第2嵌合部)102pと、平坦面102fとを含む。突出部102pは、ロータ101の凹部101rに嵌まり込んで当該ロータ101の上記端面(ボルト孔101hの周囲)と面一になるようにスリーブ102sに形成されている。また、平坦面102fは、スリーブ102sの軸方向からみて当該スリーブ102s(オイルコントロールバルブ102)の軸心に関して突出部102pとは反対側に位置するように、例えばスリーブ102sの一端の一部を切り欠くことにより形成される。かかる平坦面102fは、オイルコントロールバルブ102を組み付け治具1に位置決めするのに用いられる。
【0016】
図3は、組み付け治具1を示す拡大斜視図であり、図4は、組み付け治具1を示す部分断面図である。これらの図面に示すように、組み付け治具1は、ロータ101に固定されるべきオイルコントロールバルブ102を保持する保持部材2と、それぞれ保持部材2により移動自在に支持される第1移動部材(邪魔ピン)3および第2移動部材4とを含む。また、保持部材2は、本体20と、端板21と、底板22と、本体20により回動自在に支持されるクランプ部材23とを含む。
【0017】
保持部材2の本体20は、オイルコントロールバルブ102(スリーブ102s)の端部が軸方向に挿入されるバルブ支持部20aを有する。図3および図4に示すように、バルブ支持部20aは、本体20の一端(図4における左端)に図3および図4におけるx軸方向に延在するように形成され、当該バルブ支持部20aの図中上側および下側は開放されている。すなわち、オイルコントロールバルブ102(スリーブ102s)は、当該バルブ支持部20aを形成する本体20の一対の内周面(凹曲面)により両側から部分的に支持される。
【0018】
更に、保持部材2の本体20は、支持孔20hと、工具逃げ部20rと、2本の位置決めピン(位置決め係合部)20pとを含む。支持孔20hは、バルブ支持部20aに挿入されたオイルコントロールバルブ102(スリーブ102s)の軸方向(図3および図4におけるx軸方向)と直交する方向(図3および図4におけるz軸方向)に本体20を貫通する。工具逃げ部20rは、本体20のバルブ支持部20aとは反対側で当該本体20の表面(図3および図4における上面)から窪む凹部である。2本の位置決めピン20pは、それぞれロータ101の凹部101rに近接していない2つのボルト孔101hの対応する一方に挿入(嵌合)可能となるように本体20の一端から図4におけるx軸方向に突出する。
【0019】
また、保持部材2の端板21は、本体20のバルブ支持部20aとは反対側の端部に複数のボルトを介して固定される。端板21には、本体20の工具逃げ部20rに連なる凹部が形成されている(図1および図4参照)。更に、保持部材2の底板22は、図3および図4における下側から本体20との間に端板21とは反対側が開放された空間を画成するように複数のボルトを介して当該本体20に固定される。
【0020】
クランプ部材23は、図3および図4におけるx軸方向に延在するように本体20と底板22との間に配置される。また、クランプ部材23の長手方向における中央部付近には、回転軸24が固定されている。回転軸24は、バルブ支持部20aに挿入されたオイルコントロールバルブ102の軸方向および支持孔20hの延在方向との双方に直交する方向(図3および図4におけるy軸方向)に延在するように保持部材2の本体20により回転自在に支持される。更に、クランプ部材23のバルブ支持部20a側の端部(一端)には、平坦な支持面23fがバルブ支持部20a(本体20)側に位置するように形成されている。
【0021】
図4に示すように、クランプ部材23のバルブ支持部20a(支持面23f)とは反対側の端部(他端)と本体20との間には、付勢部材としてのコイルスプリング(弾性体)25が圧縮された状態で配置される。これにより、クランプ部材23は、コイルスプリング25によって支持面23fがバルブ支持部20aに向けて押し出されるように回転軸24の周りに図4における時計方向に付勢される。また、クランプ部材23には、回動規制ピン26が図中z軸方向に延在するように固定されている。回動規制ピン26の先端(図4中上端)は、本体20の内面(図4中下面)に当接し、それにより、コイルスプリング25により付勢されたクランプ部材23は、バルブ支持部20aにオイルコントロールバルブ102が挿入されていない取付状態で、支持面23fが図3および図4におけるxy平面に対して図中時計回りに僅かに回動した姿勢に保持される。
【0022】
第1移動部材3は、図3および図4に示すように、本体20の支持孔20hにブッシュ等を介して摺動自在に挿通される棒材3bと、支持孔20hよりも大径の拡径部3eとを含む。第1移動部材3は、本体20(保持部材2)によってバルブ支持部20aに挿入されたオイルコントロールバルブ102(スリーブ102s)の軸方向と直交する方向(図3および図4におけるz軸方向)に移動自在に支持される。また、棒材3bの支持孔20hに挿通されていない部分(図3における支持孔20hよりも下側の部分)と拡径部3eとは、クランプ部材23に形成された貫通孔23hに挿通される。
【0023】
第2移動部材4は、保持部材2の底板22とクランプ部材23との間に配置される。第2移動部材4は、リニアガイド、プランジャ等を介して底板22に連結されると共に、当該底板22により図3および図4におけるx軸方向に摺動自在に支持される。これにより、第2移動部材4は、保持部材2によりバルブ支持部20aに挿入されたオイルコントロールバルブ102の軸方向に移動自在に支持される。また、第2移動部材4には、本体20の支持孔20hやクランプ部材23の貫通孔23hとz軸方向からみて重なり合うように開口4oが形成されている。開口4oは、第1移動部材3の棒材3bおよび拡径部3eの双方の進入を許容するように第2移動部材4に形成されている。更に、第2移動部材4を支持する保持部材2の底板22にも、本体20の支持孔20hやクランプ部材23の貫通孔23h、第2移動部材4の開口4oとz軸方向からみて重なり合うように開口22oが形成されている。開口22oは、第1移動部材3の拡径部3eの進入を規制して棒材3bのみの進入を許容するように底板22に形成されている。
【0024】
続いて、上述のように構成される組み付け治具1を用いてロータ101にオイルコントロールバルブ102を固定する手順について説明する。
【0025】
ロータ101へのオイルコントロールバルブ102の組み付けに際して、組み付け治具1の第2移動部材4は、端板21から離間するように本体20のバルブ支持部20a側に移動させられ、第2移動部材4の先端(図4における左端)は、図4に示すように、本体20のバルブ支持部20a側の端面から僅かに外方に突出する。また、この際、第1移動部材3の拡径部3eは、第2移動部材4の開口4o内に進入することなく当該第2移動部材4のクランプ部材23側の表面(図4における上面)の一部に当接する。これにより、第1移動部材3の棒材3bは、図4に示すように、支持孔20hから図中上方に突出する。本実施形態では、組み付け治具1の第1および第2移動部材3,4を図4に示す状態にするための治具置き場が用意されている。そして、作業者により組み付け治具1が治具置き場にセットされると、当該治具置き場に設けられている突起部等により第1および第2移動部材3,4が押圧されて図4に示す状態が形成される。
【0026】
次いで、作業者によりオイルコントロールバルブ102が組み付け治具1にセットされる。すなわち、オイルコントロールバルブ102のスリーブ102sは、平坦面102fがクランプ部材23の支持面23fに当接するように本体20のバルブ支持部20aに挿入される。スリーブ102sは、コイルスプリング25により付勢されたクランプ部材23(支持面23f)によりバルブ支持部20aを形成する本体20の一対の内周面に押し付けられ、スリーブ102sの突出部102pは、バルブ支持部20aから図4中上方に突出する。これにより、オイルコントロールバルブ102は、保持部材2によりしっかりと保持され、スリーブ102sの軸心周りにおける突出部102pの位置が一定に保たれる。
【0027】
また、オイルコントロールバルブ102が保持部材2により保持された際、スリーブ102sの突出部102pは、図4に示すように、本体20から突出した第1移動部材3の棒材3bとz軸方向からみて重なり合う。従って、この状態で、締付具としてのボルトBや締付工具50をオイルコントロールバルブ102に接近させようとすると、締付工具50等が本体20から突出する第1移動部材3の棒材3bと干渉し、当該第1移動部材3によりボルトBの締め付け作業が妨げられることになる。以下、図4に示す第1移動部材3の位置を当該第1移動部材3の「妨害位置」という。
【0028】
オイルコントロールバルブ102を組み付け治具1に保持させた後、作業者は、組み付け治具1を把持して保持部材2により保持されたオイルコントロールバルブ102(スリーブ102s)をロータ101の挿入孔101oに挿入すると共に、本体20の2本の位置決めピン20pをロータ101の対応するボルト孔101hに挿入する。これにより、保持部材2により保持されたオイルコントロールバルブ102(スリーブ102s)の突出部102pがロータ101の凹部101rと対向(正対)する。また、作業者によりオイルコントロールバルブ102(スリーブ102s)が挿入孔101oに挿入されていくと、図5に示すように、第2移動部材4の先端がロータ101の端面に当接し、第2移動部材4は、ロータ101により押圧されることでロータ101に対するオイルコントロールバルブ102の挿抜方向(x軸方向)に沿ってオイルコントロールバルブ102から離間する。
【0029】
そして、図5に示すように、保持部材2により保持されたオイルコントロールバルブ102(スリーブ102s)の突出部102pがロータ101の凹部101rに嵌まり込むと、それまで第2移動部材4のクランプ部材23側の表面に当接していた第1移動部材3の拡径部3eが第2移動部材4の開口4o内へと進入(落下)する。これにより、第1移動部材3は、拡径部3eが底板22の第2移動部材4側の表面に当たるまで本体20側から底板22側に移動し、本体20から突出していた棒材3bが、図5に示すように、支持孔20h内に完全に入り込む。以下、図5に示す第1移動部材3の位置を当該第1移動部材3の「非妨害位置」という。
【0030】
第1移動部材3が上記妨害位置から非妨害位置まで移動すると、締付具としてのボルトBや締付工具50をオイルコントロールバルブ102に接近させても、締付工具50等と第1移動部材3の棒材3bとが干渉することはない。従って、図5に示すように、締付工具50を用いてボルトBをロータ101の凹部101rに近接したボルト孔101hに挿通して図示しないカムシャフトに螺合させることができる。これにより、当該ボルトBの頭部でスリーブ102sの突出部102pを凹部101rの底面に押し付けてオイルコントロールバルブ102をロータ101に対して精度よく位置決めして固定することが可能となる。ボルトBをカムシャフトに螺合させた後、作業者は、組み付け治具1をロータ101から離間させ、当該組み付け治具1を上記治具置き場にセットする。これにより、第2移動部材4の移動に応じて第1移動部材3が妨害位置へと移動し、次のロータ101に対するオイルコントロールバルブ102の組み付けが実行可能となる。
【0031】
上述のように、組み付け治具1は、第2嵌合部としての突出部102pの位置が一定になるようにオイルコントロールバルブ(第2部材)102を保持する保持部材2と、締付具としてのボルトBの締付作業を妨げる妨害位置と、締付作業を妨げない非妨害位置との間で移動可能な第1移動部材3と、保持部材2によりロータ(第1部材)101に対するオイルコントロールバルブ102の挿抜方向(x軸方向)に移動自在に支持された第2移動部材4とを含む。オイルコントロールバルブ102が保持部材2により保持された際、第2移動部材4は、拡径部3eの開口4o内への進入を規制することで、第1移動部材3の上記妨害位置から上記非妨害位置への移動を規制する。また、第2移動部材4は、保持部材2により保持されたオイルコントロールバルブ102がロータ101の挿入孔101oに挿入される際に当該ロータ101に当接してオイルコントロールバルブ102から離間する。更に、第2移動部材4は、ロータ101の凹部(第1嵌合部)101rとスリーブ102sの突出部102pとが嵌まり合うのに応じて第1移動部材3の拡径部3eを開口4o内に進入(落下)させて当該第1移動部材3の妨害位置から非妨害位置への移動の規制を解除する。これにより、第1移動部材3がボルトBの締付作業を妨げない非妨害位置へと移動することから、締付作業を実行してボルトBによりオイルコントロールバルブ102をロータ101に固定することが可能となる。
【0032】
すなわち、組み付け治具1を用いた場合、凹部101rと突出部102pとが正常に嵌まり合っておらず、ロータ101に対してオイルコントロールバルブ102がスリーブ102sの軸心の周りに位置決めされていない場合、第2移動部材4の上記挿抜方向における移動量の不足に起因して当該第2移動部材4による第1移動部材3の妨害位置から非妨害位置への移動の規制が解除されず、ボルトBの締付作業の実行が困難になる。この結果、組み付け治具1によれば、ロータ101に対してオイルコントロールバルブ102が位置決めされていない状態でボルトBの締付作業が行われてしまうのを実質的に無くすことができるので、ロータ101に対するオイルコントロールバルブ102の誤組み付けの発生を極めて良好に抑制することが可能となる。
【0033】
更に、第1移動部材3は、保持部材2によりオイルコントロールバルブ102の挿抜方向と直交する方向(z軸方向)に移動自在に支持される棒材3bと、棒材3bに形成された拡径部3eとを含む。また、第2移動部材4は、棒材3bおよび拡径部3eの進入を許容する開口4oを有する。更に、拡径部3eが開口4oに進入することなく第2移動部材4の一部に当接している際に第1移動部材3が妨害位置に保持され、第2移動部材4が上記挿抜方向に沿ってオイルコントロールバルブ102から離間するのに応じて拡径部3eが開口4o内に進入することで第1移動部材3の非妨害位置への移動の規制が解除される。これにより、第2移動部材4の移動に連動させて適正なタイミングで第1移動部材3を妨害位置から非妨害位置へと移動させることが可能となる。
【0034】
また、保持部材2は、第2移動部材4を支持する底板22を含み、当該底板22には、第1移動部材3の拡径部3eの進入を規制して棒材3bのみの進入を許容する開口22oが形成されている。これにより、妨害位置から非妨害位置へと移動した第1移動部材3を脱落させることなく保持部材2に支持させておくことが可能となる。
【0035】
更に、保持部材2は、オイルコントロールバルブ102を部分的に支持する本体20と、当該本体20によりオイルコントロールバルブ102の挿抜方向および第1移動部材3の移動方向の双方と直交する回転軸24の周りに回動自在に支持されたクランプ部材23と、クランプ部材23の一端を本体20により支持されたオイルコントロールバルブ102に押し付けるようにクランプ部材23を付勢するコイルスプリング(付勢部材)25とを含む。加えて、クランプ部材23の一端には、オイルコントロールバルブ102の平坦面102fを支持する平坦な支持面23fが形成されている。これにより、オイルコントロールバルブ102をクランプ部材23(支持面23f)により本体20(バルブ支持部20a)に押し付けて、第2嵌合部としての突出部102pの位置を一定に保ちながら、オイルコントロールバルブ102を保持部材2によってしっかりと保持することが可能となる。
【0036】
また、組み付け治具1は、ロータ101のボルト孔101hに挿入(係合)されて保持部材2により保持されたオイルコントロールバルブ102の突出部102pとロータ101の凹部101rとを互いに対向させる2本の位置決めピン20pを有する。これにより、ロータ101に対するオイルコントロールバルブ102の組み付けに際して凹部101rと突出部102pとを確実に嵌め合わせることができるので、誤組み付けの発生を極めて良好に抑制することが可能となる。ただし、ロータ101におけるボルト孔101hの位置等によっては、組み付け治具1(保持部材2)から位置決めピン20pが省略されてもよい。
【0037】
更に、組み付け治具1の適用対象は、ロータ101およびオイルコントロールバルブ102に限られるものではない。すなわち、組み付け治具1は、挿入孔を有する第1部材および当該挿入孔に挿入されて締付具を介して第1部材に固定される第2部材であれば、任意の2つの部材に適用可能である。
【0038】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本開示の発明は、挿入孔を有する第1部材および当該挿入孔に挿入されて第1部材に固定される第2部材を含む製品の製造分野等において利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 組み付け治具、2 保持部材、20r 工具逃げ部、21 端板、22 底板、22o 開口、23 クランプ部材、23h 貫通孔、23f 支持面、24 回転軸、25 コイルスプリング、26 回動規制ピン、3 第1移動部材、3b 棒材、3e 拡径部、4 第2移動部材、4o 開口、20 本体、20a バルブ支持部、20h 支持孔、20p 位置決めピン、50 締付工具、101 ロータ(第1部材)、101h ボルト孔、101o 挿入孔、101r 凹部、102 オイルコントロールバルブ(第2部材)、102f 平坦面、102p 突出部、102s スリーブ、B ボルト。
図1
図2
図3
図4
図5